説明

超音波診断装置及びその制御プログラム

【課題】手間をかけずにスキャン部位毎に異なるパラメータを設定することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、この超音波プローブの移動を検出する距離算出部82と、この距離算出部82の検出信号に基づいて、被検体における前記超音波プローブのスキャン部位を予め記憶されたスキャン部位の中から特定するスキャン部位特定部83と、このスキャン部位特定部83によって特定されたスキャン部位に応じたパラメータを設定するパラメータ設定部84と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャン(scan)位置に応じてパラメータ(parameter)が自動的に設定される超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置では、被検体に対して超音波のスキャンを行なってエコー信号を取得し、このエコー信号に基づくリアルタイムの超音波画像が表示される。超音波画像の撮影を行なう際には、超音波診断装置の操作部において種々のパラメータが設定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−85220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このパラメータの中には、スキャン部位に応じて異なる値を設定するものがある。例えば、血流の動態を観察することができるカラーフロー画像を表示させる際には、流速レンジを適切な範囲に設定する。下肢において、足の付け根、膝、足首のカラーフロー画像を表示させる際、足の付け根、膝、足首で血流速が異なっているため、それぞれの部位について適切な流速レンジの設定をする必要がある。この流速レンジの設定は、操作者が操作部を操作して設定することが一般的である。
【0005】
しかし、足の付け根、膝、足首とスキャン部位を変える度に、操作部を操作して流速レンジを設定する必要があり煩雑である。特に、下肢についてスキャンを行なう場合、操作部まで操作者の手が届かない位置でスキャンを行なうことが多く、スキャン位置と操作部との間を行ったり来たりしなければならない。従って、手間をかけずにスキャン部位毎に異なるパラメータを設定することができる超音波診断装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するためになされた発明は、被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、この超音波プローブの移動を検出する移動検出部と、この移動検出部の検出信号に基づいて、被検体における前記超音波プローブのスキャン部位を予め記憶されたスキャン部位の中から特定するスキャン部位特定部と、このスキャン部位特定部によって特定されたスキャン部位に応じたパラメータを設定するパラメータ設定部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記観点の発明によれば、前記スキャン部位特定部によって特定されたスキャン部位に応じたパラメータが設定されるので、手間をかけずにスキャン部位毎に異なるパラメータを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】第一実施形態の超音波診断装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】第一実施形態の超音波診断装置におけるリアルタイムの撮影時に設定されるパラメータの自動設定モードの処理フローを示すフローチャートである。
【図4】第二実施形態の超音波診断装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】第二実施形態の超音波診断装置におけるリアルタイムの撮影時に設定されるパラメータの自動設定モードの処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)9を備える。
【0010】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。前記超音波プローブ2は、本発明における超音波プローブの実施の形態の一例である。
【0011】
前記超音波プローブ2には、例えばホール素子で構成される前記磁気センサ10が設けられている。この磁気センサ10により、例えば磁気発生コイルで構成される磁気発生部11から発生する磁気が検出されるようになっている。前記磁気センサ10における検出信号は、前記制御部8へ入力されるようになっている。前記磁気センサ10における検出信号は、図示しないケーブルを介して前記制御部8へ入力されてもよいし、無線で前記制御部8へ入力されてもよい。前記磁気発生部11及び前記磁気センサ10は、後述のように前記超音波プローブ2の位置及び傾き(プローブ位置情報)を検出するためのものであり、本発明における位置センサの実施の形態の一例である。
【0012】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、前記制御部8からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2に供給する。また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0013】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための処理を行なう。例えば、前記エコーデータ処理部4は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成する。また、前記エコーデータ処理部4は、Bモード処理を行なうとともに、直交検波処理及びフィルタ処理等のドプラ(doppler)処理を行なってドプラデータを作成してもよい。
【0014】
前記表示制御部5は、前記エコーデータ処理部4から入力されたデータを、スキャンコンバータ(Scan Converter)によって走査変換して超音波画像データを作成する。例えば、前記表示制御部5は、前記Bモードデータを走査変換してBモード画像データを作成する。また、前記表示制御部5は、Bモード画像データとともに、前記ドプラデータを走査変換してカラードプラ画像データを作成してもよい。
【0015】
また、前記表示制御部5は、前記Bモード画像データに基づくBモード画像や前記カラードプラ画像データに基づくカラードプラ画像等を前記表示部6に表示させる。
【0016】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などである。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0017】
前記制御部8は、特に図示しないがCPU(Central Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、前記HDD9に記憶された制御プログラムを読み出し、後述の移動検出機能、スキャン部位特定機能、パラメータ設定機能を始めとする前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0018】
前記制御部8は、図2に示すように、位置算出部81、距離算出部82、スキャン部位特定部83及びパラメータ設定部84を有している。前記位置算出部81は、前記磁気センサ10からの磁気検出信号に基づいて、前記磁気発生部11を原点とする三次元空間の座標系における前記超音波プローブ2の位置及び傾きの情報(以下、「プローブ位置情報」と云う)を算出する。
【0019】
前記距離算出部82は、前記位置算出部81で算出されたプローブ位置情報に変化があったかどうかを検出して、前記超音波プローブ2が移動したか否かを判定する(移動検出機能)。また、前記距離算出部82は、プローブ位置情報に基づいて、前記超音波プローブ2の移動距離を算出する。さらに、前記距離算出部82は、後述するように前記プローブ位置情報に基づいて、前記超音波プローブ2の位置及び傾きの少なくとも一方の変化を検出して、前記超音波プローブ2によるパラメータの調節操作が行なわれたか否かを判定する。前記距離算出部82は、本発明における移動検出部の実施の形態の一例である。
【0020】
前記スキャン部位特定部83は、後述するように前記HDD9に記憶されたスキャン部位間の距離(後述の距離情報DI)を参照して、前記距離算出部82で算出された前記超音波プローブ2の移動距離に基づいてスキャン部位を特定する(スキャン部位特定機能)。詳細は後述する。前記スキャン部位特定部83は、本発明におけるスキャン部位特定部の実施の形態の一例である。
【0021】
前記パラメータ設定部84は、スキャン部位に応じたパラメータを設定する(パラメータ設定機能)。前記パラメータ設定部84は、本発明におけるパラメータ設定部の実施の形態の一例である。
【0022】
例えば、前記パラメータ設定部84は、前記スキャン部位特定部83によってスキャン部位が特定されると、このスキャン部位に対して前記HDD9に記憶されているパラメータを設定する。また、前記パラメータ設定部84は、前記操作部7において入力されたパラメータの設定も行なう。さらに、前記パラメータ設定部84は、後述するように、前記超音波プローブ2によるパラメータの調節操作に基づいてパラメータを再設定する。
【0023】
前記パラメータは、超音波診断装置においてリアルタイム(real time)の撮影時に設定されるパラメータであって、なおかつスキャン部位に応じて設定されるパラメータである。このようなパラメータには、観察深度やフォーカス深度、さらには後述の作用で説明するカラードプラ画像の流速レンジ(range)などが挙げられる。
【0024】
前記HDD9には、前記制御プログラムの他、下肢や腹部などの超音波検査の検査適用部位、被検体の年齢、性別ごとに、各検査適用部位においてスキャンを行なう対象である一のスキャン部位と他のスキャン部位との間の距離の情報(以下、「距離情報DI」と云う)が記憶されている。ちなみに、検査適用部位毎に定型的な検査フローが決まっており、各検査適用部位においてスキャン部位が決まっている。スキャン部位が三か所以上ある場合には、各スキャン部位間の距離の情報が前記距離情報DIとして記憶されている。もちろん、前記距離情報DIとして二か所のスキャン部位間の距離が記憶されていてもよい。スキャン部位間の距離は、年齢、性別ごとの平均値Avを算出し、この平均値Av±αの範囲で設定されていてもよい。
【0025】
前記HDD9には、前記距離情報DIのほか、スキャン部位ごとのパラメータやこのパラメータの調節量(後述)が記憶されている。また、前記HDD9には、検査適用部位ごとのパラメータ(後述のステップS2で設定されるパラメータ)が記憶されていてもよい。
【0026】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。ここでは、前記超音波診断装置1におけるリアルタイムの撮影時に設定されるパラメータの自動設定モードの処理フローについて、図3に基づいて説明する。ここでは、パラメータとしてカラードプラ画像の流速レンジを挙げて説明する。
【0027】
先ず、ステップS1では前記操作部7において検査適用部位を選択する入力を行なう。ここでは検査適用部位として下肢の検査が選択されるものとする。また、前記ステップS1では、被検体の年齢、性別を入力する。
【0028】
次に、ステップS2では、前記パラメータ設定部84は、前記ステップS1において選択された検査適用部位に対して予め設定されている流速レンジを前記HDD9から読み出して設定する。ここで設定される流速レンジは、下肢のスキャンを行なう場合に最適な流速レンジに近いものである。ただし、いずれかのスキャン部位に最適な流速レンジであるとは限らない。
【0029】
次に、ステップS3では、下肢におけるスキャン部位のうち、最初にスキャンを行なうスキャン部位を前記操作部7において入力する。ここでは、スキャン部位として足の付け根が選択されるものとする。
【0030】
ステップS4では、前記パラメータ設定部84が、前記ステップS3において入力されたスキャン部位の流速レンジを前記HDD9から読み出して設定する。
【0031】
ステップS5では、前記超音波プローブ2によって被検体に対する超音波のスキャンを開始する。ここでは、被検体の足の付け根に対するスキャンを開始する。
【0032】
次に、ステップS6では、前記超音波プローブ2が移動したか否かの判定が行われる。具体的には、前記距離算出部82は、前記位置算出部81で算出されるプローブ位置情報に変化があったか否かにより、前記超音波プローブ2が移動したか否かを判定する。前記距離算出部82は、前記超音波プローブ2の移動距離が所定の距離に達しない場合は、前記超音波プローブ2が移動していないと判定するようにしてもよい。
【0033】
前記ステップS6において、前記超音波プローブ2の移動があったと判定された場合(ステップS6において「YES」)、ステップS7へ移行する。一方、前記ステップS6において、前記超音波プローブ2の移動がないと判定された場合(ステップS6において「NO」)、ステップS8へ移行する。
【0034】
例えば、足の付け根のスキャンを終了して、次のスキャン部位へ前記超音波プローブ2を移動させた場合、前記ステップS6において前記超音波プローブ2が移動したと判定され、ステップS7へ移行する。
【0035】
ステップS7では、前記距離算出部82が、前記超音波プローブ2の移動距離を算出する。前記距離算出部82は、移動前のプローブ位置情報と、移動後のプローブ位置情報とに基づいて、前記超音波プローブ2の移動距離を算出する。
【0036】
前記ステップS7において前記超音波プローブ2の移動距離が算出されると、ステップS9では、前記パラメータ設定部84は、すでに設定されていた流速レンジ(ここでは足の付け根に対応して設定された流速レンジ)を、新たなスキャン部位に対応する流速レンジに更新する。具体的に説明する。先ず、前記スキャン部位特定部83が、前記HDD9に記憶されたスキャン部位間の距離情報DIを参照して、前記ステップS7で算出された前記超音波プローブ2の移動距離に基づいて、前記距離情報DIに含まれるスキャン部位の中から、新たなスキャン部位を特定する。ここで参照される前記距離情報DIは、前記ステップS1で入力された検査適用部位、年齢及び性別について記憶されたものである。
【0037】
例えば、前記距離情報DIにおいて、足の付け根から膝までの距離Xとして、X≦X≦Xが記憶されており、足の付け根から足首までの距離Yとして、Y≦Y≦Yが記憶されているものとする。前記ステップS7で算出された前記超音波プローブ2の移動距離Dが、X≦D≦Xである場合、前記スキャン部位特定部83は新たなスキャン部位を膝と特定する。また、前記ステップS7で算出された前記超音波プローブ2の移動距離Dが、Y≦D≦Yである場合、前記スキャン部位特定部83は新たなスキャン部位を足首と特定する。
【0038】
スキャン部位が特定されると、前記パラメータ設定部84は、特定されたスキャン部位について前記HDD9に記憶されている流速レンジを設定し、流速レンジの更新が完了する。
【0039】
前記ステップS9において流速レンジの更新が行われると、ステップS10へ移行する。このステップS10では、流速レンジの自動設定モードを終了するか否かが判定される。前記操作部7において流速レンジの自動設定モードを終了させる入力があった場合、処理を終了する(ステップS10において「YES」)。一方、処理を終了しない場合(ステップS10において「NO」)、前記ステップS6へ戻る。
【0040】
一方、ステップS6において前記超音波プローブ2が移動していないと判定された場合、ステップS8では前記超音波プローブ2による流速レンジの調節操作が行われたか否かが判定される。
【0041】
ここで、前記超音波プローブ2による流速レンジの調節操作について説明する。この調節操作は、すでに設定されている流速レンジを調節する操作である。例えば、前記超音波プローブ2を新たなスキャン部位(膝や足首)に移動させて前記ステップS9で新たな流速レンジが設定された場合において、この新たに設定された流速レンジを調節するために、ステップS8の調節操作が行なわれる。
【0042】
具体的には、流速レンジの調節操作としては、前記超音波プローブ2をスキャン部位から所定方向へ短い距離移動させた後、元の位置の方へ戻す動作や、スキャン部位において前記超音波プローブ2を所定方向へ所定角度傾けた後に元の方へ戻す動作などが挙げられる。前記距離算出部82は、前記位置算出部81で算出されるプローブ位置情報に基づいて、上述の動作を検出して流速レンジの調節操作が行なわれたかを判定する。
【0043】
流速レンジの調節操作が、上述の前記超音波プローブ2を移動させて戻す動作である場合、前記距離算出部82は、スキャン位置から前記超音波プローブ2が所定の方向へ所定の距離d以上移動してから反対方向(元の位置の方)へ移動し、なおかつスキャン位置から移動を開始してから所定の時間t1内に所定時間t2以上前記超音波プローブ2が静止している場合に、流速レンジの調節操作が行なわれたと判定してもよい。この場合、前記所定の距離d及び前記所定の時間t1,t2は、前記操作部7における入力によって設定できるようになっていてもよい。
【0044】
また、流速レンジの調節操作が、上述の前記超音波プローブ2を傾ける操作である場合、前記距離算出部82は、スキャン位置の角度から所定の方向へ所定の角度θ以上傾けてから反対方向(元の角度の方向)へ傾き、なおかつスキャン位置の角度から移動を開始してから所定の時間t3内に所定時間t4以上前記超音波プローブ2が静止している場合に、流速レンジの調節操作が行なわれたと判定してもよい。この場合においても、前記所定の角度θ及び前記所定の時間t3,t4は、前記操作部7における入力によって設定できるようになっていてもよい。
【0045】
前記超音波プローブ2を移動させる方向及び傾ける方向によって、流速レンジを広げるのか狭めるのかが設定されていてもよい。例えば、スキャン部位が膝である場合、前記超音波プローブ2を足首の方向へ移動又は傾けて元に戻した場合、流速レンジが狭まり、前記超音波プローブ2を足の付け根の方向へ移動又は傾けて元に戻した場合、流速レンジが広がるようになっていてもよい。
【0046】
前記ステップS8において流速レンジの調節操作がない場合(ステップS8において「NO」)、前記ステップS10へ移行する。一方、前記ステップS8において流速レンジの調節操作があった場合(ステップS8において「YES」)、ステップS11へ移行する。このステップS11では、前記パラメータ設定部84は、流速レンジの調節量を読み込む。この調節量は、例えば前記HDD9に記憶されている。調節量は、前記操作部7において操作者が入力して設定できるようになっていてもよい。
【0047】
前記ステップS11で流速レンジの調節量が読み込まれると、前記ステップS9へ移行する。このステップS9では、前記パラメータ設定部84は読み込まれた調節量の分だけ、流速レンジを広げるか狭める。
【0048】
本例によれば、前記超音波プローブ2を移動した場合に、前記スキャン部位特定部83によって特定されたスキャン部位に応じた流速レンジが自動的に設定されるので、前記操作部7において流速レンジを設定する必要がない。従って、前記操作部7とこの操作部7から離れた下肢との間を行ったり来たりする必要もなく、手間をかけずにスキャン部位毎に異なる流速レンジを設定することができる。
【0049】
また、スキャン部位が移動して、新たに設定された流速レンジを調節したい場合には、前記ステップS8において前記超音波プローブ2によって調節操作を行なえばよいので、前記操作部7から離れた位置でスキャンを行なっている場合であっても、容易に調節することができる。
【0050】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。ただし、第一実施形態と同一事項については説明を省略する。
【0051】
本例では、前記制御部8は、図4に示すように、前記位置算出部81、前記距離算出部82、前記スキャン部位特定部83及び前記パラメータ設定部84のほか、速度算出部85及び移動判定部86を有している。この速度算出部85は、前記距離算出部82で算出された距離を時間微分して前記超音波プローブ2の移動速度を算出する。また、前記移動判定部86は、前記距離算出部82で算出された距離及び前記速度算出部85で算出された速度に基づいて、前記超音波プローブ2の移動があったか否かを判定する。本例では、前記移動判定部86が本発明における移動検出部の実施の形態の一例である。
【0052】
本例の作用について図5のフローチャートに基づいて説明する。図5において、図3のフローチャートと同じ処理を行なうステップについては同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
本例では、ステップS6′において、前記距離算出部82が前記超音波プローブ2の移動距離を算出し、前記速度算出部85が前記超音波プローブ2の移動速度を算出する。そして、前記超音波プローブ2が所定の距離以上及び所定の速度以上で移動した場合に、前記移動判定部86は前記超音波プローブ2が移動したと判定する。
【0054】
ステップS6′において、前記超音波プローブ2が移動したと判定された場合、ステップS9′へ移行する。このステップS9′では、先ず前記スキャン部位特定部83が、予め設定されたスキャン順序に従ってスキャン部位を特定する。例えば、予め設定されたスキャン順序が、足の付け根、膝、足首の順序である場合、前記スキャン部位特定部83は、一回目の移動であればスキャン部位を膝と特定し、二回目の移動であればスキャン部位を足首と特定する。スキャン順序は例えば前記HDD9に記憶されていてもよい。
【0055】
このようにしてスキャン部位が特定されると、上述のステップS9と同様に、前記パラメータ設定部84は、特定されたスキャン部位について前記HDD9に記憶されている流速レンジを設定し、流速レンジの更新が完了する。
【0056】
本例によっても、第一実施形態と同様に、手間をかけずにスキャン部位毎に異なる流速レンジを設定することができるとともに、設定された流速レンジの調整も容易である。
【0057】
次に、第二実施形態の変形例について説明する。この変形例では、スキャン順序が予め設定されていなくてもよい。そして、前記ステップS6′において、前記移動判定部86は、前記距離情報DIを参照して、前記超音波プローブ2の移動距離がスキャン部位間の距離に達するまでの時間が所定時間内であった場合に、前記超音波プローブ2が移動したと判定してもよい。
【0058】
具体的に説明すると、例えば、足の付け根から膝までの距離Xとして、X≦X≦Xが記憶されている場合において、前記超音波プローブ2の移動距離DがX≦D≦Xに達するまでの時間が所定の時間内である場合に、前記移動判定部86は、前記超音波プローブ2が移動したと判定する。また、足の付け根から足首までの距離Yとして、Y≦Y≦Yが記憶されている場合において、前記超音波プローブ2の移動距離DがY≦D≦Yに達するまでの時間が所定の時間内である場合に、前記移動判定部86は、前記超音波プローブ2が移動したと判定する。
【0059】
前記ステップS6′で前記超音波プローブ2が移動したと判定されると、ステップS9′では、前記スキャン部位特定部83は、前記距離情報DIを参照して、前記超音波プローブの移動距離に基づいてスキャン部位を特定する。例えば、前記ステップS6′で算出された移動距離DがX≦D≦Xである場合、スキャン部位を膝と特定する。また、前記ステップS6′で算出された移動距離DがY≦D≦Yである場合、スキャン部位を足首と特定する。
【0060】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、パラメータは流速レンジに限られるものではなく、スキャン部位に応じて超音波診断装置に設定されるパラメータであればどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
81 位置算出部
82 距離算出部(移動検出部)
83 スキャン部位特定部
84 パラメータ設定部
86 移動判定部(移動検出部)
10 磁気センサ(位置センサ)
11 磁気発生部(位置センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、
該超音波プローブの移動を検出する移動検出部と、
該移動検出部の検出信号に基づいて、被検体における前記超音波プローブのスキャン部位を予め記憶されたスキャン部位の中から特定するスキャン部位特定部と、
該スキャン部位特定部によって特定されたスキャン部位に応じたパラメータを設定するパラメータ設定部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記移動検出部は、前記超音波プローブの移動距離を算出し、
前記スキャン部位特定部は、予め記憶されたスキャン部位間の距離を参照して、前記移動検出部で算出された前記超音波プローブの移動距離に基づいてスキャン部位を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブの位置情報を検出するための位置センサと、
該位置センサの位置検出情報に基づいて、三次元空間における前記超音波プローブの位置を算出する位置算出部と、
を備え、
前記移動検出部は、前記位置算出部で算出される前記超音波プローブの位置情報に基づいて該超音波プローブの移動距離を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記スキャン部位特定部は、前記移動検出部によって前記超音波プローブの移動が検出された場合に、予め設定されたスキャン順序に従ってスキャン部位を特定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記スキャン部位特定部は、前記移動検出部により、所定の距離以上及び所定の速度以上で前記超音波プローブが移動したことが検出された場合に、予め設定されたスキャン順序に従ってスキャン部位を特定することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記パラメータ設定部は、前記超音波プローブの操作に基づいて、スキャン部位に応じて設定されたパラメータを調節することを特徴とする請求項1〜5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波プローブの操作は、該超音波プローブの位置及び傾きの少なくとも一方を変化させる動作であることを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
移動検出部は、前記超音波プローブの位置及び傾きの少なくとも一方を変化させる動作を検出する請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
コンピュータに、
被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブの移動を検出する移動検出機能と、
該移動検出機能による検出に基づいて、被検体における前記超音波プローブのスキャン部位を予め記憶されたスキャン部位の中から特定するスキャン部位特定機能と、
該スキャン部位特定機能によって特定されたスキャン部位に応じたパラメータを設定するパラメータ設定機能と、
を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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