説明

超音波診断装置及びプログラム

【課題】診断効率を向上させることができる超音波診断装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】実施の形態の超音波画像診断装置1は、超音波プローブ11とフレームレート調整部152とを備える。そして、実施の形態の超音波診断装置1のフレームレート調整部152は、実施の形態の超音波診断装置1の超音波プローブ11によって超音波の送信及び受信が実行される走査領域を、少なくとも被検体の関心領域を含む領域に縮小させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、超音波診断装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などの他の医用画像診断装置に比べ装置規模が小さく、また、超音波プローブを体表から当てるだけの簡便な操作により、例えば、心臓の拍動や胎児の動きといった検査対象の動きの様子をリアルタイムで表示可能な装置であることから、今日の医療において重要な役割を果たしている。
【0003】
ここで、超音波診断装置を用いた検査では、診断部位によってフレームレート(Frame Rate)の調整が行われる。なお、フレームレートとは、単位時間当たりの画像枚数である。例えば、心臓など、動きが速い循環器が診断部位である場合には、時間分解能を向上させるために、フレームレートを上げる調整が行われる。例えば、心臓を診断する場合には、フレームレートは少なくとも60fps(Frames Per second)以上に調整される。しかしながら、従来技術においては、操作者がモニタに描出された画像を参照しながら、手動でフレームレートを調整するため、診断効率が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07―023951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、診断効率を向上させることができる超音波診断装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の超音波画像診断装置は、調整手段を備える。調整手段は、超音波探触子によって超音波が送受信される走査領域を少なくとも被検体の関心領域を含む領域に縮小させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を説明するための図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る画像データ制御部の構成の一例を説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る領域抽出部による処理の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部による画角調整の一例を説明するための図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部による視野深度の一例を説明するための図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部による画角調整の処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部による視野深度調整の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、入力装置12と、モニタ13と、装置本体100とを有する。
【0009】
超音波プローブ(超音波探触子)11は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信部110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、さらに、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ11は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0010】
超音波プローブ11から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ11が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0011】
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ11や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
【0012】
入力装置12は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。入力装置12は、例えば、トラックボール、スイッチ、ボタン、タッチコマンドスクリーン、キーボード、マウスなどである。
【0013】
モニタ13は、超音波診断装置1の操作者が入力装置12を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像などを表示したりする。
【0014】
装置本体100は、超音波プローブ11が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図1に示すように、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像データ生成部140と、画像データ制御部150と、画像メモリ160と、制御部170と、内部記憶部180とを有する。
【0015】
送受信部110は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ11に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ11から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0016】
また、送受信部110は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ11が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行ない、A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0017】
このように、送受信部110は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信部110は、後述する制御部170の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更においては、瞬時に値を切り替えることが可能であるリニアアンプ型の発振回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部110は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
【0018】
Bモード処理部120は、送受信部110からゲイン補正処理、A/D変換処理および加算処理が行なわれた処理済み反射波信号である反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0019】
ここで、Bモード処理部120は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。また、Bモード処理部120は、1つの受信データに対して、2つの検波周波数による検波処理を並列して行うことができる。
【0020】
このBモード処理部120の機能を用いることにより、超音波造影剤が注入された被検体Pの関心領域における1つの受信データから、関心領域を流動する超音波造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とする反射波データと、関心領域に存在する組織を反射源とする反射波データとを分離することができ、後述する画像データ生成部140は、流動するバブルを高感度に映像化した造影像および形態を観察するために組織を映像化した組織像を生成することができる。
【0021】
ドプラ処理部130は、送受信部110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0022】
画像データ生成部140は、Bモード処理部120が生成したBモードデータや、ドプラ処理部130が生成したドプラデータから、時系列に連続した超音波画像を生成する。そして、画像データ生成部140は、生成した超音波画像を画像メモリ160に格納する。
【0023】
画像データ制御部150は、画像データ生成部140によって生成された超音波画像を時系列に順次取得する。そして、画像データ制御部150は、取得した超音波画像を表示用画像に順次変換して、画像メモリ160に格納する。具体的には、画像データ制御部150は、画像データ生成部140によって生成された超音波画像を画像メモリ160から読み出し、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、表示用画像(Bモード画像やドプラ画像)を生成し、生成した表示用画像を画像メモリ160に再度格納する。なお、画像データ制御部150は、画像データの収集に関する制御も実行する。第1に実施形態に係る画像データ制御部150による画像データの収集に関しては、後に詳述する。
【0024】
画像メモリ160は、Bモード処理部120及びドプラ処理部130によって生成されたRawデータ(Bモードデータ及びドプラデータ)、画像データ生成部140によって生成された超音波画像及び画像データ制御部150によって生成された表示用画像を記憶する。また、画像メモリ160は、画像データ制御部150による処理結果を記憶する。さらに、画像メモリ160は、送受信部110を経た直後の出力信号(RF:Radio Frequency)や画像の輝度信号、種々の生データなどを必要に応じて記憶する。
【0025】
制御部170は、超音波診断装置1における処理全体を制御する。具体的には、制御部170は、送受信部110、Bモード処理部120、ドプラ処理部130、画像データ生成部140及び画像データ制御部150の各種処理を制御する。例えば、制御部170は、入力装置12を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部180から読込んだ各種制御プログラムおよび各種設定情報や、後述する画像データ制御部150から受信した各種設定情報に基づき、各種処理を制御したり、画像メモリ160が記憶する表示用画像をモニタ13にて表示するように制御したりする。
【0026】
内部記憶部180は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部180は、必要に応じて、画像メモリ160が記憶する画像の保管などにも使用される。
【0027】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下、詳細に説明する画像データ制御部150の処理により、診断効率を向上させることが可能となるように構成されている。具体的には、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、画像データ制御部150が、画像データ生成部140によって生成された超音波画像を用いて、フレームレート及び画質の自動調整を実行することにより、診断部位が循環器などの動きの速い部位であっても効率よく診断することを可能にする。
【0028】
以下、第1の実施形態に係る画像データ制御部150の処理について、図2などを用いて詳細に説明する。図2は、第1の実施形態に係る画像データ制御部150の構成の一例を説明するための図である。図2に示すように、画像データ制御部150は、領域抽出部151と、フレームレート調整部152と、画質調整部153とを有し、画像メモリ160と接続される。
【0029】
領域抽出部151は、時系列で連続する複数の超音波画像それぞれに描出された同一部位をそれぞれ検出し、当該同一部位を含む領域を前記関心領域として抽出する。具体的には、領域抽出部151は、画像データ生成部140によって生成された時系列で連続した超音波画像を用いて、フレームレートを調整するための基準点であるトラッキングポイントを決定する。そして、領域抽出部151は、決定したトラキングポイントに基づいて、関心領域を設定する。
【0030】
より具体的には、領域抽出部151は、画像データ生成部140によって生成された超音波画像から時系列で連続した任意の2枚の超音波画像を取得する。そして、領域抽出部151は、取得した2枚の超音波画像間の差異を算出することで動きの速い部位を検出し、検出した部位の所定の位置をトラッキングポイントとして決定する。さらに、領域抽出部151は、検出した部位を含む所定の領域を関心領域として設定する。
【0031】
図3は、第1の実施形態に係る領域抽出部151による処理の一例を説明するための図である。図3においては、時系列で連続した任意の2枚の超音波画像をNフレーム目の画像(N frame image)とNフレーム目の次の超音波画像(N+1 frame image)として示す。
【0032】
例えば、領域抽出部151は、図3の(A)に示すように、時系列で連続した2枚の超音波画像「N frame image」と「N+1 frame image」を画像メモリ160から取得する。そして、領域抽出部151は、取得した2枚の画像間の差異を算出する。例えば、領域抽出部151は、図3の(B)に示すように、「N frame image」における各座標の輝度から「N+1 frame image」における各座標の輝度を減算することで、2枚の画像の差異21を算出する。同様に、領域抽出部151は、図3の(B)に示すように、「N+1 frame image」における各座標の輝度から「N frame image」における各座標の輝度を減算することで、2枚の画像の差異22を算出する。
【0033】
このように、領域抽出部151は、時系列で連続した2枚の超音波画像の一方から他方を減算する処理を相互に実行することによって、超音波画像に描出された領域の中で動きのある部位を検出する。なお、領域抽出部151は、画像間の差異を算出する際に、パターンマッチングなどを用いて、2枚の超音波画像にそれぞれ描出された部位が同一部位であるか否かを判定する。すなわち、領域抽出部151は、同一部位であると判定した部位の画像間差異を算出する。
【0034】
そして、領域抽出部151は、2つの画像間差異の対応関係を算出する。具体的には、領域抽出部151は、時系列で先の画像に描出された動きのある部位に含まれる各座標が、時系列で後の画像のどの座標に対応するのかを算出する。そして、領域抽出部151は、算出した座標の対応関係において最も変化量が大きい座標の組をトラッキングポイントとして決定する。例えば、領域抽出部151は、図3の(C)に示すように、差異21において深さ方向の座標が最も小さい座標23と、差異22において深さ方向の座標が最も大きい座標24とをトラッキングポイントとして決定する。
【0035】
領域抽出部151は、上記した処理を複数回実行する。具体的には、領域抽出部151は、時系列で連続した2枚の超音波画像を複数組取得して、取得した複数組の超音波画像に対して上記した処理を実行する。そして、領域抽出部151は、トラッキングポイントとして決定した座標の組の変化量が最も大きい2枚の超音波画像を抽出する。このことにより、診断部位の可動域を考慮した処理が可能となる。
【0036】
なお、時系列で連続した2枚の超音波画像を複数組取得する処理は、時系列で連続した超音波画像から2枚ずつ取得する場合であっても、無作為に任意の2枚を取得する場合であってもよい。例えば、N枚目の超音波画像からN+10枚目の超音波画像を2枚ずつ取得する場合であってもよく、N枚目とN+1枚目、N+10枚目とN+11枚目などのように、無作為に任意の2枚を取得する場合であってもよい。また、2枚の超音波画像の組数は、設計者や操作者によって任意に決定される。
【0037】
そして、領域抽出部151は、抽出した2枚の超音波画像から算出した2つの差異を含む領域を関心領域として設定して、設定した関心領域及び2つの差異に関する情報を画像メモリ160に格納する。例えば、領域抽出部151は、図3の(C)に示すように、座標23と、座標24と、差異21及び22において変化量が最小となる座標25とから決まる矩形を関心領域26として設定して、関心領域26及び差異21、22に関する情報を画像メモリ160に格納する。なお、関心領域は、矩形に限定されるものではなく、例えば、座標23と、座標24と、座標25とから決まる円を用いる場合であってもよい。
【0038】
図2に戻って、フレームレート調整部152は、超音波探触子によって超音波が送受信される走査領域を少なくとも被検体の関心領域を含む領域に縮小させる。具体的には、フレームレート調整部152は、領域抽出部151によって設定された関心領域が走査領域(スキャン領域)外にならないように走査領域を縮小する。より具体的には、フレームレート調整部152は、関心領域が走査領域(スキャン領域)に含まれることを条件に、画角(スキャンレンジ:scan range)と視野深度(デプス:depth)を調整する。
【0039】
図4は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部152による画角調整の一例を説明するための図である。例えば、フレームレート調整部152は、図4の(A)の点線31に示すように、画角を1段階狭くする。そして、フレームレート調整部152は、画角を1段階狭くした状態で、関心領域がスキャン領域に含まれているか否かを判定する。ここで、関心領域がスキャン領域に含まれている場合には、フレームレートレート調整部152は、図4の(A)の点線32に示すように、画角をさらに1段階狭くする。
【0040】
このように、フレームレート調整部152は、関心領域の一部がスキャン領域から外れるまで、画角を段階的に狭くする。例えば、フレームレート調整部152は、図4の(A)の点線31、32、33、34に示すように、画角を段階的に狭くする。
【0041】
そして、フレームレート調整部152は、関心領域の一部がスキャン領域から外れた場合に、画角を1段階広くして、画角の調整を終了する。例えば、フレームレート調整部152は、図4の(B)に示すように、関心領域の一部がスキャン領域から外れるまで段階的に画角を狭くしていき、関心領域の一部がスキャン領域から外れた画角よりも1段階広い画角に調整する。なお、画角を調整する幅は設計者や操作者によって任意に設定される。また、画角を狭くする幅と、画角を広くする幅とで異なる幅に設定することも可能である。
【0042】
図5は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部152による視野深度調整の一例を説明するための図である。なお、図5においては、図5の(A)が図4の(B)に対応する。例えば、フレームレート調整部152は、図5の(A)に示す画角調整後のスキャン領域の視野深度を、図5の(B)に示すように、1段階浅くする。そして、フレームレート調整部152は、視野深度を1段階浅くした状態で、関心領域がスキャン領域に含まれているか否かを判定する。ここで、関心領域がスキャン領域に含まれている場合には、フレームレートレート調整部152は、図5の(C)に示すように、視野深度をさらに1段階浅くする。
【0043】
このように、フレームレート調整部152は、関心領域の一部がスキャン領域から外れるまで、視野深度を段階的に浅くする。そして、フレームレート調整部152は、関心領域の一部がスキャン領域から外れた場合に、視野深度を1段階深くして、視野深度の調整を終了する。
【0044】
上述したように、フレームレート調整部152は、関心領域に応じてスキャン領域を縮小させることにより、1フレームに要するスキャン時間を短縮することを可能にする。その結果、フレームレート調整部152は、フレームレートを向上させる。すなわち、画角を狭くすることにより、送信する超音波ビームの本数が減少し、その結果、フレームレートが向上する。また、視野深度を浅くすることにより、反射波を受信するまでの時間が短縮され、その結果、フレームレートが向上する。
【0045】
図2に戻って、画質調整部153は、フレームレート調整部152によって縮小された走査領域に超音波を送受信することにより生成された複数の超音波画像において、時系列で連続する複数の超音波画像それぞれに描出された同一部位が関心領域に含まれることを条件に、フレームレートと相互に影響しあう画質調整パラメータを変更する。具体的には、画質調整部153は、フレームレート調整部152によってフレームレートが調整されたことに伴って変化する画質を調整する。より具体的には、画質調整部153は、フレームレートの調整に伴って劣化した画質を向上させる。
【0046】
例えば、画質調整部153は、フレームレートと相互に影響しあう画質調整パラメータとしてラスタ密度を調整することで、画質を向上させる。ラスタ密度を調整することで画質を調整する場合には、画質調整部153は、まず、フレームレート調整部152によって縮小されたスキャン領域で、ラスタ密度を最高値に設定した超音波画像を生成させる。そして、画質調整部153は、領域抽出部151にトラッキングポイントを決定させる。なお、ラスタ密度は、操作者が所望するフレームレートを下回らない範囲で最高となるように設定される。
【0047】
ここで、画質調整パラメータとしてラスタ密度を用いた場合に、例えば、画角や視野深度が大きくなってしまう場合がある。そこで、画質調整部153は、領域抽出部151によって決定されたトラッキングポイントが画像メモリ160によって記憶された関心領域内に納まるか否かを判定する。具体的には、画質調整部153は、トラッキングポイントの変化量と変化の向き(ベクトル)とを用いて、トラッキングポイントが関心領域内に納まるか否かを判定する。例えば、画質調整部153は、領域抽出部151によって決定されたトラッキングポイントが関心領域26に納まるか否かを判定する。
【0048】
ここで、トラッキングポイントが関心領域内に納まった場合には、画質調整部153は、画質の調整を終了する。一方、トラッキングポイントが関心領域内に納まらなかった場合には、画質調整部153は、ラスタ密度を1段階下げて、再度、超音波画像を生成させる。そして、画質調整部153は、再度生成された超音波画像のトラッキングポイントが関心領域内に納まるか否かを判定する。このように、画質調整部153は、トラッキングポイントが関心領域内に納まるまで、段階的にラスタ密度を下げる。そして、画質調整部153は、トラッキングポイントが関心領域内に納まると、スキャン領域及びラスタ密度が調整された画像がモニタ13から表示されるように制御する。
【0049】
すなわち、画質調整部153は、まず、ラスタ密度を最高値に設定することで、画質を可能な限り向上させる。そして、画質調整部153は、ラスタ密度を高めることによって生じる画角及び視野深度の変化を補正するために、トラッキングポイントが関心領域内に納まるまで段階的にラスタ密度を下げる。このことにより、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、関心領域が確実に描出された超音波画像を良質な画質で提供することを可能にする。
【0050】
例えば、従来技術においては、操作者は、所望の画像が得られるまで、フレームレートの調整とラスタ密度の調整とを繰り返し行っていた。この操作は、所望の画像が得られるまで時間を要するため、診断効率を低下させる要因の1つであった。第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、上述した操作者の操作を自動で行い、短時間で良質な画質の超音波画像を提供することが可能である。すなわち、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、診断効率を向上させることを可能にする。
【0051】
なお、上述した画像データ制御部150による処理の説明では、画像を用いて説明したが、実際には、上述した処理は、モニタには表示されずに装置内部のみで実行され、フレームレートの自動調整が終了した後に、初めてモニタ13に画像が表示される。
【0052】
次に、図6〜8を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。なお、図6〜8においては、被検体Pの体表に超音波プローブ11が当てられ、診断が開始された後の処理について示す。
【0053】
図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。図6に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、児童調整機能が起動されていると(ステップS101肯定)、領域抽出部151は、画像データ生成部140によって生成された超音波画像から時系列で連続する2枚の画像を取得する(ステップS102)。
【0054】
そして、領域調整部151は、取得した2枚の超音波画像間の差分を算出して、画像間の変化量を算出する(ステップS103)。続いて、領域調整部151は、変化量の算出を所定の回数行ったか否かを判定する(ステップS104)。ここで、変化量の算出を所定の回数行っていない場合には(ステップS104否定)、領域調整部151は、ステップS102に戻って、時系列で連続する2枚の画像を取得する。
【0055】
一方、変化量の算出を所定の回数行った場合には(ステップS104肯定)、領域調整部151は、トラッキングポイントを決定して、変化量が最大となる2枚の画像を抽出する(ステップS105)。そして、領域抽出部151は、抽出した2枚の画像を用いて、関心領域を設定する(ステップS106)。
【0056】
その後、フレームレート調整部152は、設定された関心領域に基づいて、スキャン領域を調整する(ステップS107)。そして、画質調整部153は、ラスタ密度を最高値に設定させ(ステップS108)、設定されたスキャン領域及びラスタ密度で超音波画像を生成させる(ステップS109)。
【0057】
その後、領域抽出部151は、生成された超音波画像から時系列で連続する2枚の画像を取得して、画像間の変化量を算出する(ステップS110)。そして、画質調整部153は、領域抽出部151によって算出された画像間の変化量と変化の向きに基づいて、トラッキングポイントが関心領域内に納まっているか否かを判定する(ステップS111)。
【0058】
ここで、トラッキングポイントが関心領域内に納まっていない場合には(ステップS111否定)、画質調整部153は、ラスタ密度を1段階下げた画像を生成させ(ステップS112)、領域抽出部151は、再度画像間の変化量を算出する(ステップS110)。
【0059】
一方、トラッキングポイントが関心領域内に納まっている場合には(ステップS111肯定)、画質調整部153は、調整したスキャン領域及びラスタ密度で生成した画像を診断画像としてモニタ13に表示させて(ステップS113)、処理を終了する。なお、自動調整機能が起動されるまで、超音波診断装置1は、待機状態である(ステップS101否定)。
【0060】
図7は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部152による画角調整の処理の手順を示すフローチャートである。なお、図7における処理は、図6に示すステップS107の処理に対応する。
【0061】
図7に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、フレームレート調整部152は、超音波画像の画角を1段階狭くして(ステップS201)、領域抽出部151によって設定された関心領域がスキャン領域に納まっているか否かを判定する(ステップS202)。
【0062】
ここで、関心領域がスキャン領域に納まっている場合には(ステップS202肯定)、フレームレート調整部152は、ステップS201に戻って、画角を1段階狭くする。一方、関心領域がスキャン領域に納まっていない場合には(ステップS202否定)、フレームレート調整部152は、1段階広げた画角を適用して(ステップS203)、画角調整の処理を終了する。
【0063】
図8は、第1の実施形態に係るフレームレート調整部152による視野深度調整の処理の手順を示すフローチャートである。なお、図8における処理は、図6に示すステップS107の処理に対応する。
【0064】
図8に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、フレームレート調整部152は、超音波画像の視野深度を1段階浅くして(ステップS301)、領域抽出部151によって設定された関心領域がスキャン領域に納まっているか否かを判定する(ステップS302)。
【0065】
ここで、関心領域がスキャン領域に納まっている場合には(ステップS302肯定)、フレームレート調整部152は、ステップS301に戻って、画角を1段階狭くする。一方、関心領域がスキャン領域に納まっていない場合には(ステップS302否定)、フレームレート調整部152は、1段階深くした視野深度を適用して(ステップS303)、視野深度調整の処理を終了する。
【0066】
上述したように、第1の実施形態によれば、フレームレート調整部152は、超音波プローブ11によって超音波が送受信されるスキャン領域を少なくとも被検体の関心領域を含む領域に縮小させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、フレームレートを自動で調整することができ、診断効率を向上させることを可能にする。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、領域抽出部151は、時系列で連続する複数の超音波画像それぞれに描出された同一部位をそれぞれ検出し、超音波画像において、検出した同一部位それぞれが描出される位置を含む領域を前記関心領域として抽出する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、動きのある部位を自動的に関心領域として設定することができ、関心領域の設定に係る操作者の作業を低減させることを可能にする。
【0068】
また、第1の実施形態によれば、フレームレート調整部152は、関心領域がスキャン領域に含まれることを条件に、超音波画像の画角を狭くすることでスキャン領域を縮小させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、関心領域を確実に含むように画角を狭くすることを可能にする。
【0069】
また、第1の実施形態によれば、フレームレート調整部152は、関心領域がスキャン領域に含まれることを条件に、超音波画像の視野深度を浅くすることで前記走査領域を縮小させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、関心領域を確実に含むように視野深度を狭くすることを可能にする。
【0070】
また、第1の実施形態によれば、画質調整部153は、フレームレート調整部152によって縮小されたスキャン領域に超音波を送受信することにより生成された複数の超音波画像において、時系列で連続する複数の超音波画像それぞれに描出された同一部位が関心領域に含まれることを条件に、フレームレートに影響を与えるラスタ密度を変更する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、関心領域が確実に描出された画像の画質を向上させることを可能にする。
【0071】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0072】
(1)関心領域の設定
上述した第1の実施形態では、領域抽出部151が関心領域を設定する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、操作者によって関心領域が設定される場合であってもよい。かかる場合には、フレームレート調整部152が操作者によって設定された関心領域を用いてスキャン領域を縮小させる。
【0073】
(2)処理対象
上述した第1の実施形態では、2次元の超音波画像を用いる場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、3次元の超音波画像を用いる場合であってもよい。かかる場合には、フレームレート及び画質が調整された超音波画像は、例えば、ある視点方向からのレンダリング画像として表示されたり、或いは、所定の断面で切断したMPR(Multi Planar Reformation)画像で表示されたりする。
【0074】
(3)処理順
上述した第1の実施形態では、画角が調整された後に視野深度が調整される場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、視野深度が調整された後に画角が調整される場合であってもよい。
【0075】
(4)画質調整パラメータ
上述した第1の実施形態では、フレームレートと相互に影響しあう画質調整パラメータとしてラスタ密度を用いる場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、コントラスト分解能を高めるためのコンパウンドに係る設定、フォーカス段数、カラー画像のデータサイズなどを用いる場合であってもよい。
【0076】
例えば、コンパウンドに係る設定を用いる場合には、画質調整部153は、空間コンパウンド及び周波数コンパウンドそれぞれに係る設定を調整する。空間コンパウンドに係る設定を調整する場合には、画質調整部153は、例えば、超音波画像を生成する際に合成する超音波ビームの本数を調整する。また、周波数コンパウンドを調整する場合には、画質調整部153は、例えば、高周波及び低周波それぞれの周波数で得られる画像を調整する。また、カラー画像のデータサイズを用いる場合には、画質調整部153は、例えば、ドプラデータを生成するために送信する超音波ビームの送信回数を調整する。
【0077】
(5)関心領域の自動設定
上述した第1の実施形態では、画像間差異を含む任意の領域を関心領域として設定する場合ついて説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、フレームレートが変化する他の要素を考慮して関心領域を設定する場合であってもよい。例えば、領域抽出部151は、関心領域を設定する際に、被検体の体表から位置を考慮して、体表から深い位置に設定する場合には、関心領域を可能な限り小さく設定する。
【0078】
(6)フレームレートの変化に係る要素
上述した第1の実施形態では、フレームレートの変化に係る要素として画角と視野深度、そして、画質調整パラメータとしてラスタ密度を例に挙げて説明した。しかしながら、例えば、PS−THI(Pulse subtraction tissue Harmonic imaging)やAPSなどを設定するサブモード設定、ズームの際のビューポートの位置、フレームレートコントロール機能、ドプラスキャンを実行する際の速度、或いは、1回の超音波ビームの送信により得られる各圧電振動子の反射波信号から複数の受信フォーカスの反射波データを生成するP−Sel(並列同時受信処理)の設定などでもフレームレートは変化する。本願の開示する超音波診断装置1は、上記した各要素の設定状態などを考慮して、フレームレートの自動調整を行うことも可能である。
【0079】
以上説明したとおり、第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、本実施形態の超音波診断装置は、フレームレート及び画質の調整を自動で行うことができ、診断効率を向上させることを可能にする。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 超音波診断装置
11 超音波プローブ
12 入力装置
13 モニタ
100 装置本体
150 画像データ制御部
151 領域抽出部
152 フレームレート調整部
153 画質調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子によって超音波が送受信される走査領域を少なくとも被検体の関心領域を含む領域に縮小させる調整手段、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
時系列で連続する複数の超音波画像それぞれに描出された同一部位をそれぞれ検出し、前記複数の超音波画像それぞれに検出された当該同一部位を含む領域を前記関心領域として抽出する領域抽出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記関心領域が前記走査領域に含まれることを条件に、前記超音波画像の画角を狭くすることで前記走査領域を縮小させることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記関心領域が前記走査領域に含まれることを条件に、前記超音波画像の視野深度を浅くすることで前記走査領域を縮小させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記調整手段によって縮小された走査領域に超音波を送受信することにより生成された複数の超音波画像において、時系列で連続する複数の超音波画像それぞれに描出された前記同一部位が前記関心領域に含まれることを条件に、フレームレートと相互に影響しあう画質調整パラメータを変更する画質調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
超音波探触子によって超音波が送受信される走査領域を少なくとも被検体の関心領域を含む領域に縮小させる調整手順、
をコンピュータに実行させることを特徴とする調整プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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