説明

超音波診断装置及び超音波診断支援プログラム

【課題】超音波診断装置において、撮影スループットが向上し、また、オペレータの操作ミスによる画像データの表示設定のミスと、それに伴う誤診を軽減すること。
【解決手段】超音波診断装置10は、モニタに表示された超音波画像の3D画像データと、模型画像の3D画像データとの対応付けを行なう画像対応付部33と、模型画像の3D画像データを基に、超音波画像の3D画像データの視線方向を設定する視線方向設定部34と、ボリュームデータを基に視線方向設定部34によって設定された視線方向のレンダリング処理を実施して、視線方向設定部34によって設定された視線方向における超音波画像の3D画像データを生成するレンダリング処理部32と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D(dimension)表示を行なう超音波診断装置に係り、特に、産科・心臓領域における一般的な検査において形態診断や病変の大きさの計測や、産科領域における妊婦及びその家族に対する胎児の発育状況(顔)の提示等に使用される超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行なえる。加えて、超音波診断は、X線、X線CT(computerized tomography)及びMRI(magnetic resonance imaging)等の装置に比べて装置規模が小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行なえるなど簡便である。また、超音波診断はX線等のように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
また、超音波診断装置で表示される超音波画像は主として撮影対象の2D(dimension)の断層像であるが、3D画像を擬似的に2Dモニタに表示させる3D表示も知られている。一般に、CRT(cathode ray tube)及び液晶表示パネル等の表示装置は2D表示しかできないので、その表示装置を用いて3D的に見えるように表示するためには、3D画像を2D画像として表示させるためのアルゴリズム(レンダリング)が必要である。また、3D画像を動画として表示する4D表示も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特に産科領域での3D表示又は4D表示は、単に医師が妊婦の状態や胎児の発育具合を判定することに用いられるのみではなく、胎児の形状(特に顔)を家族に紹介するための有効な手段として用いられている。これらは現在、インターネット上のサーチエンジンで「産婦人科」及び「3D」等をキーとして検索することで、多数の医療関係ホームページを通じて見ることができる。
【特許文献1】特開2006−68245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波診断装置や、あるいは3D表示の表示ソフトウェア(レンダラ)に対して、複雑な操作であるか、又は、オペレータの熟練した技術を必要とするものが多い。
【0006】
一方、3D表示後は、オペレータが超音波診断装置やレンダラを操作して所望の撮影方向から見た画像データを表示したり、その画像データを見ながら視線方向を経験に基づいて調整したりしている。その調整作業によって、3D表示を用いた画像診断のスループットを悪化させる要因となっている。例えば、3D表示を用いた心臓内部の検査では、撮影を基に3D画像データを生成後、オペレータが適当な視線方向からのスライス像を指定して表示して、弁輪部等の検査対象となるべき部分を特定した後に、再度特定箇所の3D画像データを生成して検査に利用している。
【0007】
したがって、検査対象とすべき部位の特定に対しては、
1.超音波プローブの操作
2.スライス像表示
3.3D表示部位の特定
4.3D画像データの再構成
の4段階の工程を踏む必要があり、明らかな検査スループットの悪化につながっている。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、撮影スループットが向上できる超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、オペレータの操作ミスによる画像データの表示設定のミスと、それに伴う誤診を軽減できる超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る超音波診断装置は、上述した課題を解決するために請求項1に記載したように、被検体内の撮影対象に向けて超音波を送受波する超音波プローブによって受波されたエコーから生成された複数の2D画像データを基にボリュームデータを再構成し、前記撮影対象に関する超音波画像の3D画像データを生成してモニタに表示する超音波診断装置において、前記モニタに表示された前記超音波画像の3D画像データと、模型画像の3D画像データとの対応付けを行なう画像対応付部と、前記模型画像の3D画像データを基に、前記超音波画像の3D画像データの視線方向を設定する視線方向設定部と、前記ボリュームデータを基に前記視線方向のレンダリング処理を実施して、前記視線方向における超音波画像の3D画像データを生成するレンダリング処理部と、を設ける。
【0011】
本発明に係る超音波診断支援プログラムは、上述した課題を解決するために請求項11に記載したように、被検体内の撮影対象に向けて超音波を送受波する超音波プローブによって受波されたエコーから生成された複数の2D画像データを基にボリュームデータを再構成し、前記撮影対象に関する超音波画像の3D画像データを生成してモニタに表示する超音波診断装置を制御するコンピュータに、前記モニタに表示された前記超音波画像の3D画像データと、模型画像の3D画像データとの対応付けを行なう機能と、前記模型画像の3D画像データを基に、前記超音波画像の3D画像データの視線方向を設定する機能と、前記ボリュームデータを基に前記視線方向のレンダリング処理を実施して、前記視線方向における超音波画像の3D画像データを生成する機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムによると、撮影スループットが向上できる。
【0013】
さらに、本発明に係る超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムによると、オペレータの操作ミスによる画像データの表示設定のミスと、それに伴う誤診を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムの実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る超音波診断装置の実施形態を示す概略図である。
【0016】
図1は、本実施形態の超音波診断装置10を示し、その超音波診断装置10は、大きくは、超音波プローブ11及び超音波診断装置本体12から構成される。超音波プローブ11と超音波診断装置本体12とはプローブケーブル(図示しない)を介して互いに接続される。
【0017】
超音波プローブ11は、複数個の超音波振動子を先端部分に配置し、被検体Mの撮影対象に対してその先端部分を接触させ超音波の送受信を行なう。また、超音波振動子は電気音響変換超音波振動子であり、超音波送信時には電気パルスを超音波パルスに変換し、また超音波受信時には超音波信号を電気信号に変換する機能を有する。ここで、超音波プローブ11に超音波振動子が2D(dimension)配列される場合、走査が電子的に行なわれることになる。一方、超音波プローブ11に超音波振動子が1D配列される場合、走査が機械的に行なわれることになる。なお、電子走査方式としては、電子セクタ走査、電子リニア走査及び電子コンベックス操作等が挙げられるが、本発明は電子走査方式を問わない。
【0018】
超音波診断装置本体12には、送受信部21、信号処理部22、DSC(digital scan converter)23、記憶装置24、表示処理部25、モニタ26、制御装置(CPU:central processing unit)27及び入力装置28が設けられる。
【0019】
送受信部21は、送信部21a及び受信部21bからなる。送受信部21は、送信部21aからプローブケーブルを介して超音波プローブ11に電気信号を供給して超音波を発生させると共に、超音波プローブ11が受信したエコー信号を、プローブケーブルを介して受信部21bによって受信する。
【0020】
送受信部21の送信部21aは、図示しないクロック発生部、送信遅延部及びパルサを備えている。クロック発生部は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する。送信遅延部は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する。パルサは、各振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数分のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ11の各振動子に供給する。
【0021】
一方、送受信部21の受信部21bは、図示しないプリアンプ、A/D(analog/digital)変換部及び受信遅延・加算部を備えている。プリアンプは、超音波プローブ11の各振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネル毎に増幅する。A/D変換部は、増幅されたアナログのエコー信号をデジタルのエコー信号に変換する。受信遅延・加算部は、デジタル変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。受信遅延・加算部による加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、この送受信部21によって加算処理された信号を「生データ」と称する。
【0022】
信号処理部22は、送受信部21から出力される生データを基に、超音波画像(Bモード像、ドプラ像及びカラードプラ像)の走査線データを生成する。Bモード処理部22a、ドプラ処理部22b及びカラードプラ処理部22cを備えている。送受信部21から出力された生データは、Bモード処理部22a、ドプラ処理部22b又はカラードプラ処理部22cにて所定の処理を施される。
【0023】
Bモード処理部22aは、エコーの振幅情報の映像化を行ない、エコー信号からBモード超音波ラスタデータを生成する。具体的には、生データに対してバンドパスフィルタ処理を行ない、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。その他、エッジ強調等の処理が行なわれる場合もある。Bモード処理部22aによって生成されるデータをBモード超音波ラスタデータという。
【0024】
ドプラ処理部22bは、図示しない位相検波部及びFFT(fast fourier transform)演算部等から構成され、生データからドプラ偏移周波数成分を取り出し、さらにFFT処理等を施して血流情報を有するデータを生成する。
【0025】
カラードプラ処理部22cは、動いている血流情報の映像化を行ない、カラー超音波ラスタデータを生成する。血流情報には、速度、分散及びパワー等の情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。具体的には、カラードプラ処理部22cは、図示しない位相検波部、MTI(moving target indication)フィルタ、自己相関器及び流速・分散演算器から構成されている。カラードプラ処理部22cは、組織信号と血流信号とを分離するためのハイパスフィルタ処理(MTIフィルタ処理)が行なわれ、自己相関処理により血流の移動速度、分散及びパワー等の血流情報を多点について求める。その他、組織信号を低減及び削減するための非線形処理が行なわれる場合もある。
【0026】
DSC23は、信号処理部22から出力された走査線データをデジタル信号に変換し、フレームメモリ(図示しない)内の走査線の位置に相当する場所に蓄える。そして、DSC23は、超音波プローブ11が1フレーム分の全ての走査線について超音波の送受信を行なうことで、2D画像データを生成する。
【0027】
記憶装置24としては、半導体メモリやHD(hard disk)等が挙げられる。記憶装置24は、本発明に係る超音波診断支援プログラムやOS(operating system)等のプログラムを記憶する他、CPU27のワークメモリとして機能する。なお、超音波診断支援プログラムは、図示しないCD−ROM(compact disk read only memory)等の記録媒体によって、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。また、OSによって、オペレータに対する情報の表示にグラフィックを多用し、大半の基礎的な操作を入力装置28によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供することができる。さらに、記憶装置24は、DSC23から出力された2D画像データの記憶や、後述する3D画像データの生成・記憶を行なう。
【0028】
また、記憶装置24は、前記視線方向毎に、被検体Mの撮影対象に関する模型画像(ボディマーク)の3D画像データの3D的な位置情報を対応させた模型画像情報をデータベースとして記憶する。3D的な位置情報は、模型画像上のマーカ(特徴点)の3D座標として表現される。医師等のオペレータは、入力装置28を用いて模型画像情報に含まれる模型画像の方向を選択入力することで、3D表示される超音波画像の視線方向を設定する。なお、模型画像情報は、観察部位毎に設定される。また、模型画像情報は、オペレータ毎に、また、疾患毎に設定されるものであってもよい。
【0029】
図2は、模型画像情報の一例を表として示す図である。
【0030】
図2は、被検体Mの撮影対象、例えば、胎児の顔に関する模型画像の3D画像データの視線方向毎のマーカの位置に関する模型画像情報を示している。また、模型画像の視線方向毎に、少なくとも3点のマーカの各3D座標(X,Y,Z)が対応されている。
【0031】
具体的には、胎児の顔に関する模型画像の視線方向を表す“正面”に、マーカ“右目”の3D座標(30,65,40)と、マーカ“左目”の3D座標(70,65,40)と、マーカ“鼻の頂点”の3D座標(50,100,25)と、マーカ“口”の3D座標(50,120,30)が対応されている。また、胎児の顔に関する模型画像の視線方向を表す“右30°”に、マーカ“右目”の3D座標(50,65,40)と、マーカ“左目”の3D座標(70,65,50)と、マーカ“鼻の頂点”の3D座標(80,110,35)と、マーカ“口”の3D座標(60,120,40)が対応されている。
【0032】
また、図1に示す表示処理部25は、DSC23から出力される2D画像データをアナログ変換してモニタ26に出力する。また、表示処理部25は、CPU27から出力される3D画像データをアナログ変換してモニタ26に出力する。なお、表示処理部25は、2D画像データと3D画像データとを同期させ、同時にモニタ26に出力してもよい。
【0033】
モニタ26は、CRT(cathode ray tube)や液晶表示パネル等から構成される。モニタ26は、表示処理部25の出力によって2D画像データを表示して、超音波画像の2D表示を行なう。また、モニタ26は、表示処理部25の出力によって3D画像データを表示して、超音波画像の3D表示を行なう。さらに、モニタ26は、表示処理部25の出力によって複数の3D画像データを連続的に表示して、動画表示(4D表示)を行なったり、その4D表示の並列表示を行なったりすることもできる。
【0034】
CPU27は、記憶装置24に記憶している超音波画像診断プログラムを実行する。また、入力装置28を介して入力されたオペレータからの指示に応じて、超音波診断装置本体12内の送受信部21、画像処理部22、DSC23及び記憶装置24に制御信号を与えることにより超音波診断装置本体12を統括制御する。
【0035】
入力装置28は、キーボード、マウス、トラックボール又はTCS(touch command screen)等から構成される。オペレータの操作によってボクセルデータに対して投影光線の投影方向(視線方向)や関心領域の設定等が行なわれる。
【0036】
図3は、本実施形態の超音波診断装置10に含まれる超音波診断支援装置の機能を示すブロック図である。なお、以下、超音波診断支援装置の各構成要素が、アプリケーションプログラムである超音波診断支援プログラムを実行することによって実現されるものとして説明するが、各構成要素の全部又は一部を回路等のハードウェアによって構築されるものであってもよい。
【0037】
超音波診断装置10のCPU27が超音波診断支援プログラムを実行することによって、超音波診断装置10は、超音波診断支援装置30として機能する。超音波診断支援装置30は、3D再構成部31、レンダリング処理部32、画像対応付部33、視線方向設定部34及び分割表示処理部35を設ける。
【0038】
3D再構成部31は、記憶装置24に記憶された複数の2D画像データを基に、ボリュームデータを再構成(リサンプリング)する機能を有する。複数の2D画像データはスタックデータであり、各々異なる3D座標系上にあるので、それらに共通に使用できる3D座標系を導入するために、3D再構成部31は、方的なボクセルとしてボリュームデータを再構成する。
【0039】
レンダリング処理部32は、ボリュームデータを2D面上に投影表示するためのレンダリング処理を実施して3D画像データを生成する機能を有する。一般に、モニタ26は2D表示しかできない。よって、モニタ26を用いて超音波画像を3D的に見えるように表示するためには、ボリュームデータを3D的に表示させるためのアルゴリズム(レンダリング)、例えばボリュームレンダリングが必要である。
【0040】
ボリュームレンダリングは、ボリュームデータに対して所定の視線方向(投影光線の投影方向)を決めて、任意の視点から光線追跡処理を行ない、視線上のボクセル値(輝度値等)の積分値や重み付き累積加算値を投影面上の画像ピクセルに出力することによって、臓器等を立体的に抽出して3D画像データを生成するものである。
【0041】
ボリュームレンダリングによって生成される3D画像データは、ボリュームデータセットを特定の視点を基に特定の方向を有する投影光線を貫くことによって、その投影光線に垂直な投影面に投影されたピクセルに基づいて生成される。投影光線によって貫かれた各ボクセル値により積分値や重み付き累積加算値が計算され、この得られた積分値や重み付け加算値がピクセルに格納される。そして、最終的には、ボクセル値が格納されたピクセルが複数個集まることによって、3D画像データが生成される。
【0042】
画像対応付部33は、入力装置28による入力を基に、3D表示された超音波画像と模型画像とを対応付ける機能を有する。具体的には、画像対応付部33は、入力装置28によってモニタ26に3D表示された超音波画像上に少なくとも3点のマーカがプロットされると、それら少なくとも3点のマーカを基に3D表示された超音波画像と模型画像とを対応付ける。なお、3D画像データが対応付けの対象となることから、プロットされるマーカは少なくとも3点を要する。対応付けの精度を向上させるためには、より多くのマーカをプロットすることが望ましい。
【0043】
図4及び図5は、レンダリングの視線方向の設定例を説明するための図である。図4は、被検体Mの撮影対象としての胎児の顔に関する3D表示の超音波画像上のマーカを示す図である。図5は、被検体Mの撮影対象としての胎児の顔に関する模型画像上のマーカを示す図である。
【0044】
図4に示す3D表示された超音波画像上には、入力装置28によって、モニタ26に3D表示された超音波画像上の胎児の顔を構成する特徴点である目の位置に2点、鼻の頂点の位置に1点のマーカがそれぞれプロットされている。なお、3点のマーカは表示上区別されることが望ましく、図4では、3点のうち“右目”のマーカを“●”と、“左目”のマーカを“▲”、“鼻の頂点”のマーカを“■”として区別する。なお、プロットを3点を色彩の差異で表示上区別するようにしてもよい。
【0045】
図5に示す模型画像上には、予め、超音波画像上にプロットされたマーカに対応する“右目”の位置にマーカ“●”が、“左目”の位置にマーカ“▲”が、“鼻の頂点”の位置にマーカ“■”がそれぞれプロットされている。又は、模型画像上には、超音波画像上にプロットされたマーカに対応して、“右目”の位置にマーカ“●”が、“左目”の位置にマーカ“▲”が、“鼻の頂点”の位置にマーカ“■”がそれぞれ自動的にプロットされる。
【0046】
画像対応付部33は、図5に示す模型画像を自動的に又は手動的に3D的に回転させて、図4に示した超音波画像上の3点のマーカの相対位置関係と、図5に示す模型画像上の3点のマーカの相対位置関係とを比較しながら、模型画像を超音波画像に対応付ける(キャリブレーション)。画像対応付部34による模型画像と超音波画像との対応付けによって、超音波画像の視線方向を、模型画像の視線方向として定義することができる。
【0047】
視線方向設定部34は、入力装置27による入力に従って、レンダリング処理の視線方向を設定する機能を有する。視線方向設定部34は、オペレータによって模型画像情報(図2に示す)に含まれる視線方向が選択入力されることで、3D表示された超音波画像に対応付けられた模型画像の視線方向を決定することで、レンダリング処理の視線方向を設定する。そして、視線方向設定部34は、設定された視線方向によるレンダリング処理を行なうようにレンダリング処理部32に指示し、視線方向設定部34によって設定された視線方向に対応する位置情報によって超音波画像の3D画像データを表示する構成なっている。また、視線方向設定部34によって設定された視線方向に対応する位置情報によって表示された超音波画像の3D画像データに対して、オペレータによる位置情報の微調整が行なわれてもよい。その場合、図2に示す模型画像情報が更新され、模型画像には微調整後の3D的な位置情報が対応される。
【0048】
ここで、視線方向設定部34は、モニタ26上に6分割及び9分割のように複数分割の超音波画像を3D表示することができる。その場合、視線方向設定部34は、入力装置27による入力に従って、レンダリング処理の複数の視線方向を設定する。
【0049】
分割表示処理部35は、視線方向設定部34によってレンダリング処理の複数の視線方向が設定されると、レンダリング処理された複数の超音波画像の3D画像データを、複数分割表示する分割表示フォーマットに従って整列する機能を有する。図6は、分割表示フォーマットの一例を示す図である。なお、分割表示フォーマットは、観察部位毎に設定される。また、分割表示フォーマットは、オペレータ毎に、また、疾患毎に設定されるものであってもよい。また、分割表示フォーマットは、データベースとして記憶装置24に記憶されている。
【0050】
断面像生成部36は、3D再構成部31によって再構成されたボリュームデータを基に、視線方向設定部34によって設定された視線方向の2D画像データを生成する機能を有する。断面像生成部36は、所要断面の近傍のボクセル値を補間することで画素値を求める。断面像生成部36によって2D画像データを生成されると、分割表示処理部35は、複数分割表示する分割表示フォーマットに従って2D画像データ及び3D画像データを整列させる。
【0051】
続いて、本実施形態の超音波診断装置10の動作について、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0052】
オペレータは、超音波診断装置10の超音波プローブ11を被検体Mの撮影対象、例えば胎児に当て、胎児に対してその先端部分を接触させ超音波の送受信を行なう(ステップS1)。送受信部21は、送信部21aからプローブケーブルを介して超音波プローブ11に電気信号を供給して超音波を発生させると共に、超音波プローブ11が受信したエコー信号を、プローブケーブルを介して受信部21bによって受信する。
【0053】
信号処理部22は、送受信部21から出力された生データに対して、Bモード処理部22a、ドプラ処理部22b又はカラードプラ処理部22cにて所定の処理を施す。DSC23は、信号処理部22から出力された走査線データをデジタル信号に変換し、フレームメモリ内の走査線の位置に相当する場所に蓄える。そして、DSC23は、超音波プローブ11が1フレーム分の全ての走査線について超音波の送受信を行なうことで、2D画像データを生成する(ステップS2)。記憶装置24は、DSC23から出力された2D画像データを記憶する。
【0054】
次いで、記憶装置24に記憶された2D画像データを基に3D再構成が行なわれてボリュームデータが生成され、記憶装置24に記憶される。また、ボリュームデータに対してプリセットの視線方向にてレンダリング処理が施されて3D画像データが生成される。表示処理部25が3D画像データをアナログ変換してモニタ26に出力することで、モニタ26には、胎児に関する超音波画像が3D表示される(ステップS3)。
【0055】
ここで、入力装置28からの入力に従って、モニタ26に3D表示された超音波画像と模型画像とが対応付けられる(ステップS4)。具体的には、オペレータがモニタ26に3D表示された超音波画像上に、少なくとも3点のマーカをプロットすることで、超音波画像と模型画像とが対応付けられる。ここで、ステップS4の処理を図4及び図5を用いて説明する。オペレータがモニタ26に3D表示された超音波画像上に、胎児の顔を構成する“右目”、“左目”及び“鼻の頂点”の3点のマーカをプロットする場合、図5に示す模型画像上の“右目”、“左目”及び“鼻の頂点”の位置に自動的に“●”、“▲”及び“■”がそれぞれプロットされる。オペレータは、入力装置28を用いて、図4に示す超音波画像上の“右目”と思われる位置に“●”を、“左目”と思われる位置に“▲”を、“鼻の頂点”と思われる位置に“■”をそれぞれプロットする。
【0056】
そして、図5に示す模型画像を自動的に又は手動的に3D的に回転させて、図4に示した超音波画像上の3点の相対位置関係と、図5に示す模型画像上の3点の相対位置関係とを比較しながら、模型画像を超音波画像に対応付ける。
【0057】
次いで、入力装置27による入力に従って、レンダリング処理の視線方向を設定する(ステップS5)。ステップS5は、オペレータによって模型画像情報(図2に示す)に含まれる視線方向が選択入力されることで、3D表示された超音波画像に対応付けられた模型画像の視線方向を決定することで、レンダリング処理の視線方向を設定する。また、3D表示された超音波画像に対応付けられた模型画像の視線方向を決定する際、オペレータによって模型画像情報に含まれる視線方向が選択された後、オペレータによる視線方向の微調整が行なわれてもよい。
【0058】
ここで、ステップS5では、入力装置27による入力に従って、レンダリング処理の6つの視線方向を設定する。次いで、記憶装置24に記憶されたボリュームデータに対してステップS5によって設定された6つの視線方向にてレンダリング処理が施されて3D画像データが生成される(ステップS6)。
【0059】
次いで、ステップS5によってレンダリング処理の6つの視線方向が設定されると、ステップS6によってレンダリング処理された複数の超音波画像の3D画像データを分割表示する分割表示フォーマットに従って整列する(ステップS7)。また、ステップS7では、ボリュームデータを基にステップS5によって設定された視線方向の2D画像データを生成されると、分割表示フォーマットに従って2D画像データを、また、2D画像データ及び3D画像データを整列させる。
【0060】
次いで、表示処理部25は、分割表示フォーマットに従って整列された6つの3D画像データをアナログ変換してモニタ26に出力することで、モニタ26には、胎児に関する6つの超音波画像が分割表示にて3D表示される(ステップS8)。
【0061】
図8は、超音波画像の分割表示例を示す図である。
【0062】
図8は、ステップS8によって分割表示される胎児に関する6つの超音波画像(全て3D表示)を示している。6つの超音波画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。なお、超音波診断装置10は、オペレータが入力装置28を用いて、ステップS8によってモニタ26に分割表示された複数の超音波画像から所要の超音波画像を選択して、表示設定を変更できる。例えば、選択された所要の超音波画像を拡大表示することができ、また、胎児の頭の3D的な位置情報を超音波画像の3D画像データ上で調整することができる。
【0063】
よって、オペレータが視線方向を明示しなくても、画像データを表示に適した視線方向及び大きさ(拡大率)によって表示することができる。また、オペレータは、同時に複数の視線方向から、且つ最も検査に効率のよい画像データのみを選択的に表示できるようになる。さらに、オペレータ毎の設定を自由に変えられることで、より診断しやすい画像データを提供することができる。加えて、オペレータは、煩わしい表示設定の作業から解放されると共に、効率的な画像データの活用が可能になる。
【0064】
図9は、レンダリングの視線方向の設定例を説明するための図である。
【0065】
図9は、模型画像の三面図と、3D表示された超音波画像(図中右下の画像)とを示している。超音波画像と模型画像の三面図との対応付けによると、対応付けの操作手順は増加するが、対応付けの微調整を行なうことが容易となる。オペレータは超音波画像上のマーカにプロットし、そのマーカを三面図上に存在する各々の模型画像上で位置を変更する。なお、三面図上のマーカについては、各々連動して移動するものとし、3D上で矛盾が生じないようにする必要がある。
【0066】
図10は、レンダリングの視線方向の設定例を説明するための図である。
【0067】
図10は、例えば、心臓を撮影対象とする場合におけるレンダリングの視線方向の設定例を示している。心臓検査における3D表示については、身体構造の都合上、撮影方向が程度限定されており、また撮影対象も極めて限定的である。よって、超音波診断装置10を、3D画像データの断面像を順次3D的な奥行方向に変えながら表示する構成とすることで、オペレータは心臓の断面像上にマーク(図中の円)、例えば心尖部、僧帽弁弁輪部及び大動脈弁輪部をプロットすることができる。その指定操作によって、オペレータは直感的に超音波画像の3D画像データと3D的な位置情報との対応付けを行なうことができる。
【0068】
本実施形態の超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムによると、撮影スループットが向上できる。
【0069】
さらに、本実施形態の超音波診断装置及び超音波診断支援プログラムによると、オペレータの操作ミスによる画像データの表示設定のミスと、それに伴う誤診を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態を示す概略図。
【図2】模型画像情報の一例を表として示す図。
【図3】本実施形態の超音波診断装置に含まれる超音波診断支援装置の機能を示すブロック図。
【図4】レンダリングの視線方向の設定例を説明するための図。
【図5】レンダリングの視線方向の設定例を説明するための図。
【図6】分割表示フォーマットの一例を示す図。
【図7】本実施形態の超音波診断装置の動作を示すフローチャート。
【図8】超音波画像の分割表示例を示す図。
【図9】レンダリングの視線方向の設定例を説明するための図。
【図10】レンダリングの視線方向の設定例を説明するための図。
【符号の説明】
【0071】
10 超音波診断装置
11 超音波プローブ
12 超音波診断装置本体
21 送受受信部
22 信号処理部
23 DSC
24 記憶装置
25 表示処理部
26 モニタ
27 CPU
28 入力装置
30 超音波診断支援装置
31 3D再構成部
32 レンダリング処理部
33 画像対応付部
34 視線方向設定部
35 分割表示処理部
36 断面像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の撮影対象に向けて超音波を送受波する超音波プローブによって受波されたエコーから生成された複数の2D画像データを基にボリュームデータを再構成し、前記撮影対象に関する超音波画像の3D画像データを生成してモニタに表示する超音波診断装置において、
前記モニタに表示された前記超音波画像の3D画像データと、模型画像の3D画像データとの対応付けを行なう画像対応付部と、
前記模型画像の3D画像データを基に、前記超音波画像の3D画像データの視線方向を設定する視線方向設定部と、
前記ボリュームデータを基に前記視線方向のレンダリング処理を実施して、前記視線方向における超音波画像の3D画像データを生成するレンダリング処理部と、を設けることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記視線方向毎に前記模型画像の3D的な位置情報を対応させて記憶する記憶装置を設け、前記視線方向設定部によって設定された前記視線方向に対応する前記3D的な位置情報によって前記視線方向における超音波画像を表示する構成とすることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記モニタに表示された前記超音波画像上に少なくとも3点のマーカをプロットする入力装置を設け、前記画像対応付部は、前記プロットに従って前記模型画像上の対応点にもプロットを行なうことで、前記模型画像を自動的に又は手動的に3D的に回転させて、前記超音波画像上のマーカの相対位置関係と、前記模型画像上のマーカの相対位置関係とを比較しながら、前記模型画像を前記超音波画像に対応付けることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記モニタに表示された前記超音波画像上にマーカをプロットする入力装置を設け、前記画像対応付部は、前記プロットに従って前記模型画像を表現する三面図上の対応点にもプロットを行なうことで、前記超音波画像と前記模型画像とを対応付けることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記視線方向における超音波画像の3D画像データの断面像を順次3D的な奥行方向に変えながら前記モニタに表示する構成とすることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記視線方向設定部は、前記模型画像の3D画像データを基に、複数の視線方向を設定し、前記モニタに、前記複数の視線方向における超音波画像の3D画像データを分割表示させることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記視線方向設定部は、前記模型画像の3D画像データを基に、複数の視線方向を設定し、前記モニタに、前記超音波画像の3D画像データを基に前記複数の視線方向の所要断面像を分割表示させることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記モニタに分割表示された複数の超音波画像から所要の超音波画像を選択可能な入力装置を設け、前記所要の超音波画像を拡大表示する構成とすることを特徴とする請求項6及び7のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記モニタに分割表示された複数の超音波画像から所要の超音波画像を選択可能な入力装置を設け、前記模型画像の3D的な位置情報を前記所要の超音波画像上で調整する構成とすることを特徴とする請求項6及び7のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記模型画像の3D的な位置情報を前記所要の超音波画像上で調整した場合、前記模型画像には前記調整後の3D的な位置情報が対応される構成とすることを特徴とする請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
被検体内の撮影対象に向けて超音波を送受波する超音波プローブによって受波されたエコーから生成された複数の2D画像データを基にボリュームデータを再構成し、前記撮影対象に関する超音波画像の3D画像データを生成してモニタに表示する超音波診断装置を制御するコンピュータに、
前記モニタに表示された前記超音波画像の3D画像データと、模型画像の3D画像データとの対応付けを行なう機能と、
前記模型画像の3D画像データを基に、前記超音波画像の3D画像データの視線方向を設定する機能と、
前記ボリュームデータを基に前記視線方向のレンダリング処理を実施して、前記視線方向における超音波画像の3D画像データを生成する機能と、を実現させることを特徴とする超音波診断支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−68956(P2010−68956A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238585(P2008−238585)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】