説明

超音波診断装置及び超音波診断装置の制御プログラム

【課題】所望の部位を含む超音波画像を自動的に表示装置に表示することが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】撮影計画記憶部91には、超音波プローブ2を設置する位置(撮影箇所)の順番と、各順番で撮影を行う撮影領域に含まれる部位とが対応付けて示された撮影計画が記憶されている。その撮影計画が示す撮影箇所の順番に従って、各撮影領域を超音波で撮影することで、各撮影領域の超音波画像データを取得する。部位情報付加部7は、各撮影領域の超音波画像データのそれぞれに、各撮影領域のそれぞれに含まれる部位を特定するための部位情報を付加して画像記憶部92に記憶する。所望の部位が指定されると、表示制御部6は、指定された部位を特定する部位情報が付加された超音波画像データを画像記憶部92から取得し、超音波画像を表示部81に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体内に超音波を送信し、被検体内からの反射波を受信することにより被検体内の診断情報を得る超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、虚血性心疾患の診断においては、超音波診断装置を用いた、心臓の負荷診断(ストレス・エコー法)という手法が行われている(例えば特許文献1)。ストレス・エコー法では、被検体の心臓に負荷を加えていない状態で撮影を行うことにより、通常状態における超音波画像データ(動画像データ)を取得し、さらに、所定の負荷を加えた状態で撮影を行うことにより、負荷状態における超音波画像データ(動画像データ)を取得する。そして、医師が、通常状態で取得された超音波画像(動画像)と、負荷状態で取得された超音波画像(動画像)を観察し、それぞれの状態における心臓の左心室の心筋の伸縮運動を評価し、心筋の動きから心筋への血液の環流異常を推測する。
【0003】
血流の環流異常を評価する場合、例えば、アメリカ心エコー図学会(ASE:American Society of Echocardiography)の16分割法が採用されている。この16分割法は、心臓における動脈の枝分れに基づいて左心室の心筋を16の領域(セグメント)に分割し、各領域の動きを評価する方法である。
【0004】
また、ストレス・エコー法で心筋の動きを評価する場合、点数化(WMS:Wall Motion Scoring)という方法が採用されている。この点数化は、16分割法で心筋を16の領域に分割し、医師が超音波画像(動画像)上の各領域の動きを観察して各領域に点数を付けることで、各領域の動きを評価する方法である。例えば、所定の基準に従って1点を正常とし、5点を異常とした場合、医師が各領域の動きを観察して、各領域に1点〜5点の点数を付けることで各領域の動きを評価する。このように、ストレス・エコー法における点数化では、表示装置に表示されている超音波画像(動画像)を医師が目視によって観察することで、左心室の心筋の動きを評価している。
【0005】
また、心筋の点数化を行う場合、心臓を複数の異なる位置から撮影することで、複数の断面における超音波画像データ(動画像データ)を取得する。例えば、超音波プローブを、被検体の体表上の複数の異なる位置に当てて撮影を行うことにより、各位置における超音波画像データ(動画像データ)を取得する。そして、複数の断面における超音波画像(動画像)を表示装置の画面に同時に表示し、複数の異なる方向から心筋の動きを観察することで、心筋の点数化が行われている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−285066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、超音波画像(動画像)を表示装置に表示した際のサイズにより、表示装置に超音波画像(動画像)を同時に表示できる数に限りがある。つまり、目視による点数化が可能な程度の大きさで、超音波画像(動画像)を表示装置に表示する必要があるため、表示装置に同時に表示できる超音波画像(動画像)の数には限りがある。また、心臓を診察する場合、複数の異なる位置で撮影された超音波画像(動画像)を組み合わせて表示装置に表示するが、その組み合わせは診察の目的に応じて複数ある。
【0008】
そのため、表示装置に表示されている超音波画像(動画像)に、観察したい領域(セグメント)が含まれていない場合がある。例えば、ある位置で撮影された超音波画像(動画像)には、観察したい領域(セグメント)が含まれているが、他の位置で撮影された超音波画像(動画像)には、観察したい領域(セグメント)が含まれていない場合がある。
【0009】
このような場合、表示装置に複数の超音波画像(動画像)が表示されているにもかかわらず、それら複数の超音波画像(動画像)には、観察したい領域(セグメント)が含まれているものもあれば、含まれていないものもある。その結果、観察したい領域(セグメント)を複数の方向から観察するために、手順に手間を要することがある。
【0010】
上述したように、点数化は、医師が超音波画像(動画像)を目視で観察して行うものであるため、評価が医師の判断に依存する。従って、1方向からの超音波画像(動画像)を観察するのみでは、適切に心臓の動きを評価することは困難である。
【0011】
そのため、観察対象の領域が含まれる複数の異なる超音波画像を見比べることで、より多くの情報を得て、適切に評価(点数化)したいという要望がある。例えば、表示装置に表示されている複数の異なる超音波画像に観察対象の領域が含まれていれば、様々な角度からその領域を観察して見比べることができるため、より多くの情報が得られ、適切に評価(点数化)することが可能であると考えられる。
【0012】
この発明は上記の問題点を解決するものであり、所望の領域(セグメント)を含む超音波画像を自動的に表示装置に表示することが可能な超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、被検体の所定の撮影領域を超音波で撮影することで、前記撮影領域の超音波画像データを取得する画像取得手段と、前記撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報を、前記超音波画像データに付加して記憶手段に記憶する部位情報付加手段と、所望の部位の読み出し指示を受け付けて、前記所望の部位を特定する部位情報が付加されている超音波画像データを前記記憶手段から読み出し、その超音波画像データに基づく超音波画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、を有することを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、コンピュータに、被検体の所定の撮影領域を超音波で撮影することで取得された超音波画像データを受け付けて、前記撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報を、前記受け付けた超音波画像データに付加して記憶手段に記憶する部位情報付加機能と、所望の部位の読み出し指示を受け付けて、前記所望の部位を特定する部位情報が付加されている超音波画像データを前記記憶手段から読み出し、その超音波画像データに基づく超音波画像を表示手段に表示させる表示制御機能と、を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、所定の撮影領域を撮影することで取得された超音波画像データに、その撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報を付加することで、所望の部位が指定されると、その所望の部位を含む超音波画像を表示装置に表示させることが可能となる。そのことにより、複数の撮影領域を撮影して超音波画像データを取得した場合、所望の部位が含まれる複数の超音波画像を表示装置に表示することができるため、複数の方向から所望の部位を観察することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(構成)
この発明の実施形態に係る超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御プログラムについて説明する。まず、この実施形態に係る超音波診断装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
超音波プローブ2は、複数の超音波振動子が所定方向(走査方向)に1列に配列された1次元超音波プローブ、又は、複数の超音波振動子がマトリックス(格子)状に配置された2次元超音波プローブからなり、被検体に対して超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信する。
【0018】
送受信部3は送信部と受信部とを備え、制御部10の指示の下、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、超音波プローブ2が受信したエコー信号を受信する。送受信部3から出力されるデータは信号処理部4に出力される。
【0019】
送信部の具体的な構成について説明すると、送信部は、図示しないクロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路を備えている。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する回路である。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する回路である。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数分のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ2の各超音波振動子に供給するようになっている。
【0020】
また、送受信部3内の受信部は、図示しないプリアンプ回路、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を備えている。プリアンプ回路は、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延・加算回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、この送受信部3によって加算処理された信号を「RFデータ(または、生データ)」と称する。
【0021】
なお、超音波プローブ2と、送信部及び受信部との間の接続は、超音波の送信時と受信時において、図示しないT/Rスイッチによって切り替えられる。
【0022】
送受信部3から出力されるRFデータは、信号処理部4に出力される。信号処理部4は、Bモード処理部やCFM処理部などを備えて構成されている。
【0023】
信号処理部4のBモード処理部は、エコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号から超音波ラスタデータを生成する。具体的には、RFデータに対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。
【0024】
また、信号処理部4のCFM処理部は、動いている血流情報の映像化を行い、カラー超音波ラスタデータを生成する。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。具体的には、CFM処理回路5は、位相検波回路、MTIフィルタ、自己相関器、及び流速・分散演算器から構成されている。このCFM処理回路は、組織信号と血流信号とを分離するためのハイパスフィルタ処理(MTIフィルタ処理)が行われ、自己相関処理により血流の移動速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0025】
DSC5(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)は、直交座標系で表される画像を得るために、超音波ラスタデータを直交座標で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。例えば、DSC5は、Bモード超音波ラスタデータに基づいて2次元情報としての断層像データを生成する。その断層像データは表示制御部6を介して表示部81に出力され、表示部81はその断層像データに基づく断層像を表示する。
【0026】
なお、超音波プローブ2、送受信部3、信号処理部4、及びDSC5がこの発明の「画像取得手段」に相当する。
【0027】
表示制御部6は、DSC5から出力された断層像データに基づく断層像などの超音波画像を表示部81に表示させる。また、表示制御部6は、制御部10の制御の下、様々な表示制御を行なうようにしてもよい。例えば、表示制御部6は、ボリュームデータに対してボリュームレンダリングやMPR処理(Multi Plannar Reconstruction)などの画像処理を施すことで、3次元画像データや任意断面のMPR画像データなどの医用画像データを生成する。
【0028】
画像記憶部92は、超音波による走査(スキャン)によって取得された超音波画像データを保存する。表示制御部6が、画像記憶部92に記憶されている超音波画像データを連続表示することで、表示部81に動画像を表示させることができる。なお、画像記憶部92が記憶するデータは、DSC5によって実施されるスキャンコンバージョン前のいわゆる生データであってもよい。
【0029】
撮影計画記憶部91には、予め作成された撮影計画が記憶されている。この撮影計画は、ある診断において予め決定された複数の断層像を取得する場合に、それら複数の断層像を撮影する順番を示している。具体的には、撮影計画には、予め決定された超音波プローブ2を設置する位置(撮影箇所)の順番が示されている。例えば、心筋の動きを診断する場合、予め決められた複数の位置で撮影された断層像が用いられる。撮影計画には、その撮影を行う位置の順番が示されている。また、予め決定された各位置で撮影する撮影領域には、どのような部位が含まれているかが予め判明している。従って、超音波プローブ2を設置する位置(撮影箇所)の順番と、各位置で撮影する撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報とが対応付けられて、撮影計画として撮影計画記憶部91に記憶されている。
【0030】
例えば、心臓の動きを点数化によって評価する場合、アメリカ心エコー図学会の16分割法に従った分割方法によって、心筋を16の領域(セグメント)に分割して、各領域の動きを評価する。従って、心臓の動きを評価するための撮影計画には、超音波プローブ2を設置する位置(撮影箇所)の順番と、各位置で撮影する撮影領域に含まれる領域(セグメント)を特定するための部位情報とが対応付けられて示されている。
【0031】
そして、診断が開始されると、表示制御部6は、撮影計画記憶部91に記憶されている撮影計画が示す順番に従って、撮影箇所(超音波プローブ2を設置する位置)を表示部81に表示させる。操作者は、表示部81に表示されている指示に従って、その指示が示す位置に超音波プローブ2を設置して撮影を行う。
【0032】
部位情報付加部7は、ある撮影領域を撮影することによって取得された超音波画像データ(動画像データ)に、その撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報を付加し、部位情報が付加された超音波画像データを画像記憶部92に記憶させる。
【0033】
撮影計画には、超音波プローブ2を設置する位置(撮影箇所)の順番と、各位置で撮影する撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報とが対応付けられて示されている。従って、部位情報付加部7は、その撮影計画が示す撮影の順番と部位情報との対応付けに従って、撮影計画が示す撮影の順番に従って撮影された超音波画像データ(動画像データ)のそれぞれに、各順番に対応する部位を特定するための部位情報を付加する。
【0034】
ここで、部位情報付加部7による処理の具体例について、図2及び図3を参照して説明する。図2及び図3は、超音波画像を示す画面の図である。ここでは、1例として、心臓を撮影対象として説明する。
【0035】
図2に示す画面81aには、4つの断層像(動画像)が示されている。断層像21は、四腔断層像であり、被検体の心臓に負荷を加えていない状態(通常状態)で撮影された断層像である。断層像22は、四腔断層像であり、被検体の心臓に負荷を加えた状態(負荷状態)で撮影された断層像である。
【0036】
また、断層像23は、二腔断層像であり、被検体の心臓に負荷を加えていない状態(通常状態)で撮影された断層像である。この断層像23(二腔断層像)は、心尖部に超音波プローブ2を設置して撮影することで得られた断層像である。断層像23に表されている領域23aは、左心室の下壁の中央部分である。この領域23aは、心筋をアメリカ心エコー図学会(ASE:American Society of Echocardiography)の16分割法に適用した場合、右冠動脈により筋肉の栄養が提供されている1領域(1セグメント)として割り付けられる。また、断層像24は、二腔断層像であり、被検体の心臓に負荷を加えた状態(負荷情報)で撮影された断層像である。
【0037】
なお、図2には示していないが、例えば左心室の後壁と称される領域は、心尖部に超音波プローブ2を設置して撮影された三腔断層像(長軸像)、心臓側面に超音波プローブ2を設置して撮影された短軸像、および、三腔断層像(長軸像)の3種類の画像に含まれることになる。
【0038】
心筋の筋肉の状態を目視で診断する場合、複数の視点から撮影された画像を用いて総合的に判断した方が好ましいと考えられる。
【0039】
そこで、この実施形態では、部位情報付加部7が、ある撮影領域を撮影することで取得された超音波画像データに、その撮影領域に含まれる領域(セグメント)を特定するための部位情報を付加し、部位情報が付加された超音波画像データを画像記憶部92に記憶させる。
【0040】
例えば、断層像23(二腔断層像)には、下壁心尖部(APICAL INF)、下壁中央部(MID INF)、下壁基部(BASAL INF)、前壁心尖部(APICAL ANT)、前壁中央部(MID ANT)、前壁基部(BASAL ANT)の6つの領域(セグメント)が表されている。この場合、部位情報付加部7は、撮影計画が示す撮影の順番と部位情報との対応付けに従って、断層像23のデータに、断層像23に表されている領域(セグメント)を特定するための部位情報を付加する。
【0041】
また、図3に示す断層像30は、下壁中央部(MID INF)、中隔中央部(MID SEPT)、中隔および前壁中央部(MID ANT SEPT)、前壁中央部(MID ANT)、側壁中央部(MID LAT)、後壁中央部(MID POST)の6つの領域(セグメント)が表されている。この断層像30は、心臓側面に超音波プローブ2を設置して撮影された断層像である。断層像30に表されている領域30aは、下壁中央部(MID INF)であり、図2に示す断層像23の領域23aと同じ部位である。部位情報付加部7は、撮影計画が示す撮影の順番と部位情報との対応付けに従って、断層像30のデータに、断層像30に表されている領域(セグメント)を特定するための部位情報を付加する。
【0042】
そして、部位情報付加部7によって部位情報が付加された断層像データは、画像記憶部92に記憶される。
【0043】
また、部位情報付加部7は、操作者の指示に従って各断層像データに部位情報を付加してもよい。例えば、ある撮影領域を撮影して断層像データを取得している際に、操作者がユーザインタフェース8の入力部82を用いて、その撮影領域に含まれる領域(セグメント)を特定するための部位情報を入力する。部位情報付加部7は、入力部82にて入力された部位情報をその断層像データに付加し、部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92に記憶させる。
【0044】
なお、この実施形態では、断層像データ(動画像データ)に部位情報を付加したが、信号処理部4による処理後の信号に部位情報を付加してもよい。また、部位情報を付加する画像データは、動画像データであってもよく、静止画像データであってもよい。
【0045】
[点数化]
そして、点数化(WMS)によって心臓の動きを評価する場合、操作者がユーザインタフェース8の入力部82にて、所望の領域(セグメント)を特定するための部位情報を入力する。表示制御部6は、その部位情報を検索キーとして画像記憶部92を検索し、その部位情報が付加された断層像データ(動画像データ)を取得して表示部81に表示させる。
【0046】
また、患者を特定するための患者情報(患者名や患者IDなど)が断層像データに付加されて画像記憶部92に記憶されている場合、入力部82から患者情報と部位情報が入力されると、表示制御部6は、入力された患者情報と部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92から取得して表示部81に表示させる。
【0047】
点数化(WMS)を行う場合、図2に示すように、表示制御部6は、心臓の模式的な画像25〜28を表示部81に表示させる。これら模式的な画像25〜28のデータは、記憶部9に予め記憶させておき、表示制御部6は、そのデータに基づいて模式的な画像25〜28を表示部81に表示させる。
【0048】
画像25は断層像21(四腔断層像)に対応し、画像26は断層像22(四腔断層像)に対応し、画像27は断層像23(二腔断層像)に対応し、画像28は断層像(二腔断層像)に対応している。つまり、表示制御部6は、表示部81に表示させる断層像に対応する模式的な画像を表示部81に表示させる。
【0049】
心臓の模式的な画像25〜28は、アメリカ心エコー図学会(ASE)の16分割法に従って、複数の領域(セグメント)に分けられており、その領域(セグメント)を示す番号が示されている。
【0050】
例えば、模式的な画像27は、二腔断層像に対応する画像であり、下壁心尖部(APICAL INF)、下壁中央部(MID INF)、下壁基部(BASAL INF)、前壁心尖部(APICAL ANT)、前壁中央部(MID ANT)、前壁基部(BASAL ANT)の6つの領域(セグメント)が表されている。各領域には、それぞれ固有の番号が付されている。1例として画像27について説明すると、下壁心尖部には(15)、下壁中央部には(10)、下壁基部には(4)、前壁心尖部には(13)、前壁中央部には(7)、前壁基部には(1)が割り当てられている。
【0051】
そして、操作者が、入力部82のポインタなどによって模式的な画像27に含まれる領域(セグメント)のうち、点数化の対象とする領域(セグメント)を指定すると、表示制御部6は、ポインタによって指定された領域(セグメント)を特定するための部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92から取得し、表示部81に表示させる。
【0052】
指定された領域(セグメント)を特定するための部位情報が付加された断層像データが複数、画像記憶部92に記憶されている場合は、表示制御部6は、それら複数の断層像データを画像記憶部92から取得し、それら複数の断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。
【0053】
複数の断層像を表示部81に表示する場合、表示制御部6は、画像記憶部92から取得した複数の断層像データのうち、例えば、4つの断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させ、それら以外の断層像については、サムネイル表示などのように、表示サイズを縮小して表示部81に表示させる。目視による点数化が可能な程度の大きさで、断層像を表示部81に表示させるためである。
【0054】
例えば、操作者が、入力部82のポインタなどによって模式的な画像27に含まれる領域のうち、下壁中央部(10)に対応する部分27aが指定された場合、表示制御部6は、下壁中央部(10)を特定するための部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92から取得し、表示部81に表示させる。図3に示す断層像30にも、下壁中央部(10)が含まれているため、表示制御部6は、断層像30のデータを画像記憶部92から取得して表示部81に表示させる。なお、図3に示す画像31は、断層像30に対応する模式的な画像であり、部分31aは下壁中央部(10)に対応する。
【0055】
このように、点数化の対象となる領域(セグメント)が表された複数の断層像を表示部81に表示することにより、多角的に心臓の動きを評価することが可能となる。つまり、複数の断層像を見比べることで、より適切な評価が可能となる。これによって、診断の信頼性を向上させることができる。また、同じ領域(セグメント)が表されている断層像を操作者が検索する必要がないため、検索の手間が省け、効率的に診断を行うことができる。
【0056】
ユーザインタフェース(UI)8は、表示部81と入力部82を備えている。表示部81はCRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成され、表示制御部6からのビデオ信号に基づいて、画面上に断層像、3次元画像又は血流情報などを表示する。
【0057】
入力部82は、操作者からの各種指示、関心領域(ROI)の設定指示、画質条件の設定指示、又は画像処理条件の設定指示などの各種指示の入力を受け付ける。この入力部82は、ジョイスティックやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチ、各種ボタン、キーボード又はTCS(Touch Command Screen)などで構成されている。
【0058】
また、制御部10は、超音波診断装置1の各部に接続され、超音波診断装置1の動作を制御する。この制御部10は、図示しないCPUと、ROMやRAMなどの記憶装置を備えて構成されている。記憶装置には、超音波診断装置1の各部の動作を制御するための制御プログラムが記憶されている。そして、CPUが、記憶装置からその制御プログラムを読み込んで実行することで、超音波診断装置1の動作を制御する。
【0059】
また、図示しない記憶装置に、部位情報付加プログラムと表示制御プログラムを記憶させておき、CPUが、記憶装置から部位情報付加プログラムを読み込んで実行することで、部位情報付加部7の動作を実行し、記憶装置から表示制御プログラムを読み込んで実行することで、表示制御部6の動作を実行するようにしてもよい。
【0060】
(動作)
次に、この発明の実施形態に係る超音波診断装置1による一連の動作について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、断層像データに部位情報を付加するための動作を示すフローチャートである。図5は、点数化の対象となる部位が含まれる断層像を表示するための動作を示すフローチャートである。
【0061】
[断層像データの取得]
まず、図4を参照しながら、断層像データを取得し、その断層像データに部位情報を付加するための動作について説明する。
【0062】
(ステップS01)
診断を開始すると、表示制御部6は、撮影計画記憶部91に記憶されている撮影計画に従って、撮影の順番(超音波プローブ2を設置する位置の順番)を表示部81に表示させる。
【0063】
(ステップS02)
操作者は、表示部81に表示されている撮影の順番に従って、超音波プローブ2を被検体の体表に設置する。
【0064】
(ステップS03)
そして、超音波プローブ2から超音波を被検体に送信し、受信波を送受信部3、信号処理部4、及びDSC5にて処理することで、断層像データ(動画像データ)を生成する。
【0065】
(ステップS04)
部位情報付加部7は、撮影計画が示す撮影の順番と部位情報との対応付けに従って、生成された断層像データに、その断層像データを取得した撮影領域に含まれる領域(セグメント)を特定するための部位情報を付加し、部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92に記憶させる。
【0066】
(ステップS05)
そして、撮影計画に従った撮影が終了しない場合は(ステップS05、No)、ステップS02からステップS04を実行する。つまり、撮影計画が示す撮影の順番に従い、複数の異なる撮影箇所で撮影を行って複数の断層像データを取得する。そして、部位情報付加部7は、撮影計画が示す撮影の順番と部位情報との対応付けに従って、各断層像データ(動画像データ)に、各順番に対応する部位情報を付加する。
【0067】
[点数化]
次に、図5を参照しながら、点数化(WMS)の対象となる部位が含まれる断層像を表示部81に表示するための動作について説明する。
【0068】
(ステップS10)
操作者がユーザインタフェース8の入力部82を用いて、点数化の対象となる領域(セグメント)を指定する。例えば、図2に示すように、表示部81に、断層像23と、その断層像23に対応する模式的な画像27が表示されている状態で、操作者が入力部82を用いて、点数化対象となる領域(セグメント)を指定する。
【0069】
例えば、下壁中央部(10)について点数化を行う場合、操作者は、入力部82のポインタなどによって、模式的な画像27に含まれる下壁中央部(10)に対応する部分27aを指定する。
【0070】
また、操作者は入力部82を用いることで、点数化対象の領域を特定するための部位情報を入力してもよい。
【0071】
(ステップS11)
入力部82にて点数化対象の部位が指定されると、表示制御部6は、指定された領域を特定するための部位情報が付加された断層像データ(動画像データ)を画像記憶部92から取得し、断層像データに基づく断層像(動画像)を表示部81に表示させる。同じ部位情報が付加された断層像データが複数、画像記憶部92に記憶されている場合、表示制御部6は複数の断層像データを取得し、それら断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。
【0072】
例えば、下壁中央部(10)が指定された場合、表示制御部6は、下壁中央部(10)を特定するための部位情報が付加された断層像データ(動画像データ)を画像記憶部92から取得して、その断層像データに基づく断層像(動画像)を表示部81に表示させる。例えば、図2に示す断層像23のデータや、図3に示す断層像30のデータには、下壁中央部(10)を特定するための部位情報が付加されて画像記憶部92に記憶されているため、表示制御部6は、断層像23のデータや断層像30のデータを画像記憶部92から取得して、断層像23や断層像30を表示部81に表示させる。これにより、下壁中央部(10)が異なる方向から表された複数の断層像(動画像)を、表示部81に表示させることが可能となる。その結果、点数化対象の部位(この例では、下壁中央部)を異なる方向から観察することができるため、多角的に点数化対象の部位の動きを評価することが可能となる。
【0073】
(ステップS12)
操作者は、表示部81に表示されている断層像(動画像)を観察することで、点数化対象の領域(セグメント)に点数を付していく。
【0074】
例えば図2に示すように、表示制御部6は、1点から5点までの点数を表した点数表29を表示部81に表示させる。操作者は表示部81に表示されている複数の断層像を観察し、入力部82のポインタなどを用いて点数表29が示す点数を指定することで、観察中の部位(この例では下壁中央部)に点数を付けることができる。
【0075】
以上のように、点数化対象の部位(この例では下壁中央部)が表された複数の断層像(動画像)を表示部81に表示させることが可能となるため、操作者は、点数化対象の部位を異なる方向から観察することが可能となる。その結果、操作者は、点数化対象の部位が表された複数の断層像を見比べることで、多角的に点数化対象の部位の動きを評価することが可能となるため、より適切な評価(点数化)が可能となる。
【0076】
また、点数化を行う部位の順番を予め決めておき、その順番を記憶部9に予め記憶しておいてもよい。この場合、表示制御部6は、記憶部9に記憶されている順番に従って、その順番に対応する部位を特定する部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92から取得し、その断層像データに基づく断層像を順番に表示部81に表示させる。
【0077】
例えば、点数化を行う部位の順番が、下壁心尖部(APICAL INF)、下壁中央部(MID INF)、下壁基部(BASAL INF)の順番であった場合、表示制御部6は、まず、下壁心尖部(APICAL INF)を特定するための部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92から取得し、その断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。そして、操作者が表示部81に表示されている断層像を観察して点数化を行うと、表示制御部6は、次に、下壁中央部(MID INF)を特定するための部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92から取得し、その断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。そして、操作者が表示部81に表示されている断層像を観察して点数化を行うと、表示制御部6は、次に、下壁基部(BASAL INF)を特定するための部位情報が付加された断層像データを画像記憶部92から取得し、その断層像データに基づく断層像を表示部81に表示させる。そして、操作者が表示部81に表示されている断層像を観察して点数化を行う。このように、点数化を行う領域の順番を予め決めておくことで、自動的に、点数化対象が含まれる断層像を表示部81に表示させて、点数化を行うことが可能となる。
【0078】
また、この実施形態では、超音波診断装置を用いたストレス・エコー法を対象として説明したが、この実施形態に係る手法は、ストレス・エコー法以外の診断にも用いることができる。例えば、腹部を撮影した場合、部位情報付加部7は、その撮影で取得された断層像に、その断層像に含まれる臓器の名称を付加して画像記憶部92に記憶させることもできる。この場合、撮影後、操作者が入力部82を用いて臓器の名称を指定することで、表示制御部6は、その臓器の名称が付加された画像データを画像記憶部92から取得して、表示部81に表示させることができる。
【0079】
さらに、この実施形態に係る手法は、超音波診断装置の他、X線CT装置、MRI装置、X線診断装置、又は核医学診断装置などの医用画像診断装置にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】超音波画像を示す画面の図である。
【図3】超音波画像を示す画面の図である。
【図4】断層像データに部位情報を付加するための動作を示すフローチャートである。
【図5】点数化の対象となる部位が含まれる断層像を表示するための動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信部
4 信号処理部
5 DSC
6 表示制御部
7 部位情報付加部
8 ユーザインタフェース
9 記憶部
10 制御部
81 表示部
82 入力部
91 撮影計画記憶部
92 画像記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定の撮影領域を超音波で撮影することで、前記撮影領域の超音波画像データを取得する画像取得手段と、
前記撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報を、前記超音波画像データに付加して記憶手段に記憶する部位情報付加手段と、
所望の部位の読み出し指示を受け付けて、前記所望の部位を特定する部位情報が付加されている超音波画像データを前記記憶手段から読み出し、その超音波画像データに基づく超音波画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記画像取得手段は、複数の撮影領域を超音波で撮影することで、各撮影領域の超音波画像データを取得し、
前記部位情報付加手段は、前記各撮影領域の超音波画像データに、前記各撮影領域のそれぞれに含まれる部位を特定するための部位情報を付加して前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記複数の撮影領域を撮影する順番と、各撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報とを対応付けた撮影計画を予め記憶する撮影計画記憶手段を更に有し、
前記画像取得手段は、前記撮影計画に従って、複数の撮影領域を超音波で前記順番に撮影することで、各撮影領域の超音波画像データを順番に取得し、
前記部位情報付加手段は、前記画像取得手段によって順番に取得された複数の超音波画像データのそれぞれに、前記撮影計画が示す撮影の順番に対応する部位を特定するための部位情報を付加して前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記撮影計画が示す撮影の順番を前記表示手段に表示させ、
前記画像取得手段は、前記表示手段に表示されている撮影の順番に従って、前記複数の撮影領域を超音波で撮影することで、前記各撮影領域の超音波画像データを順番に取得することを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記部位情報付加手段は、操作者の指示に従って、前記各撮影領域の超音波画像データに、前記各撮影領域のそれぞれに含まれる部位を特定するための部位情報を付加して前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像取得手段は、前記被検体の心臓の左心室についての複数の撮影領域を超音波で撮影することで、各撮影領域の超音波画像データを取得し、
前記部位情報付加手段は、左心室の心筋を16の部位に分割し、前記各撮影領域の超音波画像データに、前記各撮影領域のそれぞれに含まれる左心室の部位を特定するための部位情報を付加して前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、異なる部位情報が付加された超音波画像データを前記記憶手段から順番に読み出し、その超音波画像データに基づく超音波画像を前記表示手段に順番に表示させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
コンピュータに、
被検体の所定の撮影領域を超音波で撮影することで取得された超音波画像データを受け付けて、前記撮影領域に含まれる部位を特定するための部位情報を、前記受け付けた超音波画像データに付加して記憶手段に記憶する部位情報付加機能と、
所望の部位の読み出し指示を受け付けて、前記所望の部位を特定する部位情報が付加されている超音波画像データを前記記憶手段から読み出し、その超音波画像データに基づく超音波画像を表示手段に表示させる表示制御機能と、
を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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