説明

超音波診断装置

【課題】超音波診断装置において、多重反射によるアーチファクトを減少させる。
【解決手段】主振動子12からの受信信号を受信波増幅回路44にて増幅し、この増幅された信号を、反転増幅器50にて更に反転、増幅する。この信号に基づき、高圧波形作成回路52にて、打消し用振動子13を駆動する駆動信号を作成する。主振動子12の表面で反射し、再び生体内へ向かう再送信波を、打消し用振動子13から送出される打消し送信波で打ち消し、多重反射を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に対し超音波を送受し、受信された超音波に基づき超音波画像を得る超音波診断装置に関し、特に超音波の送受に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に当接した探触子に備えられた振動子より、生体内に超音波を送信し、生体内で反射した超音波を振動子にて受信して、受信された信号に基づき超音波画像を形成する超音波診断装置が知られている。生体内で反射して振動子に達した反射波は、その一部が振動子表面で反射して再び生体内に送られる。この再送信波は、生体内で更に反射されて再度振動子に達し、受信され、また一部が反射される。このように、振動子の表面での反射により生体内に繰り返し超音波が送信される現象は、多重反射などと呼ばれている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−182749号公報
【特許文献2】特開2001−29345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の多重反射が生じると、超音波画像において、実際にはない物体の像、いわゆるアーチファクトが形成される。
【0005】
本発明は、この多重反射によるアーチファクトの減少を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる超音波診断装置は、生体内で反射して第1の振動子に達した反射波が振動子表面で反射し、再度生体に送信される再送信波を打ち消す打消し送信波を、第2の振動子より送出する。再送信波と打消し送信波が打ち消しあって、多重反射が抑制される。
【0007】
打消し送信波は、第1の振動子に達した反射波を受信して得た受信信号に基づき生成することができる。また、打消し送信波の生成は、得られた受信信号を所定量減衰し、位相を反転させた信号により第2の振動子を駆動することにより行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
再送信波を打消し送信波により打ち消すことにより、多重反射によるアーチファクトが減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。生体に当接する探触子10には、超音波を送受信する振動子12,13が複数配列されている。振動子12は通常の、超音波の送受信を行う振動子であり、振動子13は多重反射を防止するために設けられた振動子である。この振動子13については後に詳述する。各振動子12には、振動子を駆動し、また振動子が受信した信号を増幅する送受信ブロック14がそれぞれに接続されている。送受信ブロック14は、デジタルビーム形成部16に接続している。デジタルビーム形成部には、送信時のビーム形成に係る構成と受信時のビーム形成に係る構成を含む。送信時のビーム形成に係る構成は、超音波の送信タイミングの基準となる基準信号を生成する基準信号生成回路18と、基準信号に、各振動子12ごとに対応した遅延量を与える遅延回路20を含む。各遅延回路20に設定する遅延量は、送信フォーカスメモリ22に記憶された遅延情報に基づき、遅延量制御部24にて制御される。各振動子12から送信されるタイミングを相互にずらすことにより送信超音波の焦点の位置、深度等を任意に設定することができる。受信時のビーム形成に係る構成も、遅延回路26、遅延量制御部28、受信フォーカスメモリ30を含む。送信側と同様に、受信フォーカスメモリ30に記憶された遅延情報に基づき遅延量制御部28が各遅延回路26の遅延量を制御する。送受信ブロック14より送り出された受信信号は、A/D変換器32によりアナログ信号がデジタル信号に変換され、遅延回路26に送信され、ここで各振動子に対応して遅延されて加算回路34にて加算される。各振動子ごとの受信信号に所定の遅延量を与え、これらを加算することによって受信時の焦点が設定される。加算された受信信号は、デジタルスキャンコンバータ(DSC)36に送信され、さらに画面38に表示がなされる。
【0010】
図2には、探触子10および送受信ブロック14の詳細な構成を示すブロック図である。タイミング作成回路40は、すでに説明した基準信号生成回路18、遅延回路20および遅延量制御部24からなる。A/D変換器32は、図1で説明したように各振動子ごとに設けられ、その出力は遅延回路26に送られる。
【0011】
探触子10には、通常の、超音波の送受信に用いられる振動子12と、多重反射防止用に設けられた振動子13が備えられている。振動子13は、多重反射の原因となる振動子表面で反射して再度生体内に送信される再送信波を打ち消す打消し送信波を送信する振動子である。以降、この振動子13を打消し用振動子13と記し、一方通常の振動子12を主振動子12と記す。主振動子12に隣接して、この主振動子の受信信号に基づき打消し送信波を送信する打消し用振動子13が設けられ、主振動子12と打消し用振動子13が交互に配列されている。
【0012】
送受信ブロック14は、主振動子12を駆動する駆動信号を形成する送信波形作成回路42と、主振動子12が出力した受信信号を増幅する受信波増幅回路44と、超音波を送信してからの時間の経過と共にゲインを高くする感度制御回路(STC)46を含む。これらの回路42,44,46は、従来の超音波診断装置に備えられているものと同様のものである。
【0013】
送受信ブロック14は、更に、打消し信号送信するための打消し波形作成回路48を含む。打消し波形作成回路48は、受信波増幅回路44の出力信号を反転増幅する反転増幅器50と、反転増幅された信号に基づき、振動子を駆動するための高電圧の打消し波形信号を作成する高圧波形作成回路52を含む。この高電圧の打消し波形信号が、振動子13を駆動する駆動信号となる。
【0014】
図3には、本実施形態の超音波診断装置の多重反射防止の原理説明図が記載されている。(a)において、探触子10の主振動子12から超音波(送信波)60が送信される。この超音波送信は通常の送信である。送信波60は観察対象54、例えば所定の臓器に向かい、(b)にて観察対象54に達して反射される。観察対象54に反射された反射波62の一部が、探触子10へ向かう。(c)は、反射波62が探触子10に到達した時点の状態を示している。反射波62は、探触子10の主振動子12の表面で、その一部が反射される。この再度送信された超音波が再送信波64であり、多重反射の原因となる。
【0015】
一方、(c)で主振動子12に到達した反射波62は、主振動子12を振動させ、これにより主振動子12より受信信号が送出される。この受信信号は、前述したように、受信波増幅回路44で増幅され、更にこの増幅された受信信号に基づき打消し波形作成回路48で打消し用振動子13を駆動するための信号が生成される。この駆動信号により打消し用振動子13から打消し送信波66が送信される。この打消し送信波66は、再送信波64と振幅が等しく、反転した波形であり、これら二つの送信波は互いに打ち消しあって相殺し、送信波がなくなる。言い換えれば、打消し波形作成回路48においては、再送信波64を打ち消すような波形の打消し波形を形成するべく、反転増幅器50のゲインが設定されている。このゲインは、あらかじめ探触子の特性を求めて設定してもよく、また得られた超音波画像を見ながら、多重反射によるアーチファクトが減少するように、ゲイン設定を変更するようにしてもよい。打消し送信波66により再送信波64が多重反射が防止され、超音波画像に多重反射によるアーチファクトが減少する。
【0016】
図4には、振動子の他の配列例が示されている。この例では、一つの主振動子に対して二つの打消し用振動子が配置されている。すなわち、第1のチャンネルの主振動子12-1の受信信号に基づく打消し送信波を送信する第1のチャンネルの打消し用振動子13-1は、主振動子12-1を挟むようにその両側に配置されている。第2のチャンネルの主振動子12-2の両側にも、第2のチャンネルの打消し用振動子13-2が配置されている。
【0017】
また、逆に打消し用振動子を1チャンネルごとではなく、2チャンネルに1個など複数チャネルに1個配置するようにしてもよい。近傍のチャンネルで受信した超音波の波形は、類似しており、一つの打消し送信波により近似しても多重反射の防止効果が得られる。また、隣接するチャンネルの振動子の受信信号を加算し、その加算された信号に基づき打消し波形を作成することもできる。この場合、打消し用振動子は隣接するチャネルの主振動子の間に配置する。
【0018】
図5には、振動子のさらに他の配列例が示されている。この例は、主振動子12-1,12-2,12-3,・・・が一列に配列され、この列に隣接するように打消し用振動子13-1,13-2,13-3,・・・が一列に配列されている。図6には、図5に示す振動子配列がなされた探触子70を示す図である。図中下段が主振動子12-1,12-2,12-3,・・・、上段が打消し用振動子13-1,13-2,13-3,・・・となっている。このように配列することで、実際に超音波画像の形成に係る主振動子が粗にならないようにしている。
【0019】
図7には、セクタ形の探触子80における振動子の配列例が示されている。図示されるように主振動子と打消し用振動子は、市松模様状に縦横に交互に配置されている。図中左端の縦の列が第1のチャンネルに係る主振動子12-1と打消し用振動子13-1であり、次の列が第2のチャンネルに係る主振動子12-2と打消し用振動子13-2である。
【0020】
以上のように、本実施形態においては、生体からの反射波が主振動子12に到達して反射した再送信波を打ち消すように打消し送信波を送信する。これにより再送信波と打消し送信波が打ち消しあって、多重反射が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の超音波診断装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の動作説明図である。
【図4】振動子配列の他の例を示す図である。
【図5】振動子配列のさらに他の例を示す図である。
【図6】振動子配列のさらに他の例を示す図である。
【図7】振動子配列のさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 探触子、12 主振動子、13 打消し用振動子、14 送受信ブロック、48 打消し波形作成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に対して超音波の送受信を行う振動子を有し、受信信号に基づき超音波画像を得る超音波診断装置において、
生体内にて反射し第1の振動子に達した反射波が第1の振動子表面で反射して再度生体に送信される再送信波を打ち消す打消し送信波を、第2の振動子より送出する、
超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、打消し送信波は、第1の振動子に達した反射波を受信して得た受信信号に基づき生成される、超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、打消し送信波は、得られた受信信号を反転させた信号に基づき第2の振動子を駆動し、送出される、超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−117165(P2007−117165A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309629(P2005−309629)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(502183212)アロカシステムエンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】