説明

超音波診断装置

【課題】アーチファクトを防止しても超音波断層像の輝度が変化しない超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブ001の振動子からの超音波ビームの振動子の配列方向の平面の法線に対する射出角度が予め決められた許容角度を超える超音波ビームを検出する検出手段と、超音波プローブ001を介して超音波ビームを送受信する送受信部002と、許容角度を超える法線に対する射出角度を有する超音波ビームの振幅を小さくするゲイン調整手段と、ゲインの調整の行われた超音波エコーに基づくデータに信号処理を施しラスタデータを作成する信号処理部004と、作成されたラスタデータを直交座標系に変更して超音波断層像を生成する画像処理部005と、生成された超音波断層像を表示手段に表示させる表示制御部007とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元マルチプローブを有する超音波診断装置に関し、特にチルトや回転を加えた走査面に沿って走査を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波プローブに複数の超音波振動子がマトリクス状に配置された(以下では、この超音波振動子が配置された平面を「素子平面」という。)2次元マルチプローブを用いて、被検体の3次元領域内における、2つの異なる2次元平面の超音波断層像を生成するマルチプレーンモードを有する超音波診断装置が用いられている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。このマルチプレーンモードでは、これら2つの画像平面のうち、一方の画像平面は、素子平面に対してその方位が固定されている。この方位が固定された画像平面を「基準面」と呼ぶ。基準面としては、通常2次元プローブの超音波振動子の素子平面に対して直交しかつ素子平面の中央と交差する平面が選択されるのが普通である。そして、もう一方の画像平面は、その基準面に対して、チルト(素子平面に対する傾斜)及び、チルト後の回転(チルトした平面における、素子平面の中央からの法線に対応する直線を軸とした回転)が可能となっている。このような画像平面を「交差面」と呼ぶ。
【0003】
ここで、図2を参照して、チルト及び回転について具体的に説明する。図2はマルチプレーンモードでの超音波ビームの走査面を説明するための図である。素子平面201は2次元アレイプローブにおける振動子がマトリクス状に並んだ平面である。この素子平面201の中心206を基準に角度をつけて超音波ビームが射出される。また、法線204は素子平面の中心を通る法線である。そして、基準面202は素子平面201と直交し中心206を通る、すなわち法線204を含む平面である。さらに、基準面202とは異なる平面で、かつ法線204を含む平面208を角度θチルトさせた平面が交差面203である。この交差面203における素子平面201の法線204に対応する直線が直線205である。そして、チルトさせた交差面203を回転するとはこの直線205を回転軸として回転させることである。
【0004】
超音波診断装置ではこれらの基準面内及び交差面内の超音波ビームの走査線に対応するエコー信号を受信し、受信したエコー信号に対して所定の信号処理を行い、その信号処理結果に画像処理を施して、各面内の超音波断層像の画像データを得ている。
【0005】
ここで、超音波診断装置において高精度な診断を妨げるものの要因の1つに、グレーティングローブ(GratingLobe)がある。グレーティングローブとは、回析格子により発生する光の強度分布に似た現象であり、各超音波振動子から発せられる超音波ビームとは別の方向に超音波ビームが発生する現象であり、これにより、描画される超音波断層像上にアーチファクト(虚像)が発生する。
【0006】
このアーチファクト(虚像)は、グレーティングローブの性格上、2次元プローブの素子平面の法線からの超音波ビームの走査線の角度が大きい場合に発生しやすくなる。そこで従来、超音波診断装置では、グレーティングローブによるアーチファクトの発生を防止すべく、超音波ビームのスキャン角度を許容角度範囲内となるように制限している。
【0007】
この許容角度について図2を参照して説明する。基準面202は法線204を含む平面であり、このような法線204を含む平面において予めアーチファクトが発生しないように超音波ビームを射出する法線204からの角度θが許容角度として設定されている。つまり、法線204からの角度がこの許容角度θを超える超音波ビームではアーチファクトが発生してしまうことになる。言い換えるならば、頂点を中心206及び中心の軸を法線204として底面を円207とする円錐の中に含まれる超音波ビームであればアーチファクトの発生は抑えられるが、該円錐に含まれない超音波ビームではアーチファクトが発生することになる。例えば、許容角度θは一般的には45度に設定される。
【0008】
【特許文献1】特開2005−537075号公報
【特許文献2】特開2005−537079号公報
【特許文献3】特開2005−537076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、マルチプレーンモードを有する超音波診断装置では、交差面のチルト量が大きくなると、素子平面の法線からの超音波ビームの走査線の角度が大きくなる。ここで、チルト量とは素子平面の法線を含む素子平面と直交する平面に対する交差面の傾きの大きさである。さらに、チルトを加えた後に回転が加わることで、よりいっそう素子平面の法線からの超音波ビームの走査線の角度が大きくなってしまう。そのため、チルトや回転を加えた交差面では、グレーティングローブが発生し易くなるため、上記許容角度をそのチルトや回転にあわせて変更する必要がある。
【0010】
ここで、マルチプレーンモードにおけるアーチファクトの発生について、図2を参照して説明する。上述のように、法線204を含む平面を基準に許容角度の範囲を決定しているため、チルト、又はチルトを加えた後に回転を行うと中心206を頂点とし円207を底面とする円錐からはみ出してしまう。たとえば、交差面203は、本来直線205から角度θまで超音波ビームを射出するはずであるが、その場合には領域209及び領域210の部分に射出される超音波ビームは前記円錐からはみ出すことになる。そのため、この部分の超音波ビームによりアーチファクトが発生してしまう。この円錐から超音波ビームがはみ出す現象はチルトによっても起こるが、チルトした平面に回転を加えた場合により大きな範囲がはみ出すことになる。そして、前記円錐からはみだす超音波ビームとは、法線204からの角度がθより大きな角度を有する超音波ビームである。
【0011】
ここで、グレーティングローブによるアーチファクトを防止しようとして、チルトや回転によって法線204からの角度が許容角度θより大きな角度を有する超音波ビームを走査しないようにするには、交差面内の超音波ビームの走査線の本数を減らす必要がある。しかし、走査線の本数を減らすと、時間当たりの生成される超音波断層像の枚数であるフレームレート(Hz)が変化してしまう。ここで、振動子の発熱などの理由により被検体に入射することができる超音波の送信パワーには制約がある。この超音波の送信パワーは超音波ビームの繰返し周期、すなわちフレームレートに依存する。具体的には、フレームレートが20Hzの場合における単位面積あたりの超音波ビームの送信パワーが決定されているとすると、フレームレートを20Hzより高くした場合、同じ本数の超音波ビームを被検体に射出するためには超音波の送信パワーを落とす必要があり、また、フレームレートを20Hzより低くした場合、より鮮明な画像を得るために超音波の送信パワーを上げることになる。このように、フレームレートが変化すると、超音波断層像の時間分解能が変化するうえ、超音波ビームの送信パワーが変化して画像の輝度も変化してしまう。そのため、従来の超音波診断装置では、交差面のチルト量が変更された場合、グレーティングローブによるアーチファクトを防止しようとすると、交差面のチルト量や回転量が変化して超音波断層像の見え方が変化してしまい、正確な診断を行うことが困難であった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、アーチファクトを防止しても超音波断層像の輝度が変化しない超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の超音波診断装置は、走査面の位置情報の入力を受けて、超音波プローブの複数の振動子からの超音波ビームの前記複数の振動子の配列方向の平面の法線に対する射出角度が予め決められた許容角度を超える超音波ビームを検出する検出手段と、前記超音波プローブを介して、前記超音波ビームを被検体に送信し被検体で反射した超音波エコーを受信する送受信手段と、前記許容角度を超える法線に対する射出角度を有する前記受信された超音波エコーの振幅を小さくするゲイン調整手段と、前記ゲイン調整手段により調整の行われた前記超音波エコーに基づくデータに信号処理を施しラスタデータを作成する信号処理手段と、前記作成されたラスタデータを直交座標系に変更して超音波断層像を生成する画像処理手段と、前記生成された超音波断層像を表示手段に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2に記載の超音波診断装置は、走査面の位置情報の入力を受けて、超音波プローブの複数の振動子からの超音波ビームの前記複数の振動子の配列方向の平面の法線に対する射出角度が予め決められた許容角度を超える超音波ビームを検出する検出手段と、前記超音波プローブを介して、前記超音波ビームを被検体に送信し被検体で反射した超音波エコーを受信する送受信手段と、前記超音波エコーに基づくデータに信号処理を施しラスタデータを作成する信号処理部と、前記作成されたラスタデータを直交座標系に変更して超音波断層像を生成する画像処理手段と、生成した超音波断層像における前記許容角度を超える法線に対する射出角度を有する前記超音波ビームに対応する画素にマスクを施すマスク手段と、前記マスクが施された超音波断層像を表示手段に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の超音波診断装置によると、素子平面の中心を通る法線からの角度が許容角度を超えている超音波ビームの超音波エコーの振幅を小さくするため、その超音波ビームによって作られる画像の表示を抑制することができる。これにより、グレーティングローブによるアーチファクトが発生し易い方向に射出された超音波エコーによって生成される画像の表示を抑制できる。さらに、射出する超音波ビーム本数は変化しないためフレームレートが変化することなく、超音波断層像毎の輝度も同じ輝度にすることが可能となる。したがって、アーチファクトによる乱れを抑制した高精度な見やすい超音波断層像の生成が可能となる。
【0016】
請求項2に記載の超音波診断装置によると、素子平面の中心を通る法線からの角度が許容角度を超えている超音波ビームによる走査線に対応する画素にマスクを施す(輝度を下げるなど)ことによって、その超音波ビームによって作られる画像の表示を抑制することができる。これにより、グレーティングローブによるアーチファクトが発生し易い方向に射出された超音波エコーによって生成される画像の表示を抑制できる。さらに、射出する超音波ビーム本数は変化しないためフレームレートが変化することなく、超音波断層像毎の輝度も同じ輝度にすることが可能となる。したがって、アーチファクトによる乱れをマスクによって抑制した高精度な見やすい超音波断層像の生成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図1は本発明に係る超音波診断装置の機能を表わすブロック図である。
【0018】
超音波プローブ001は、平面内にマトリクス状に配列された圧電セラミックなどの複数の圧電振動子を備えている。この圧電振動子は、送受信部002から入力された電圧パルスを受けてその電圧により振動し指向性のある超音波ビームを発生する。そして、圧電素子は被検体に対してその超音波ビームを送信する。また超音波プローブ001は、送信された超音波ビームが被検体の音響インピーダンスの不連続面で反射することにより得られる超音波エコーを圧電振動子で受信する。そして、圧電振動子は受信した超音波エコーを電気信号であるエコー信号に変換して、送受信部002へ出力する。
【0019】
次に図2を使用して、超音波プローブ001による走査面について説明する。図2における基準面202及び交差面203は、操作者が走査しようとする被検体の3次元領域内における2つの異なる2次元平面である。そして、超音波プローブ001の圧電振動子が並んだ平面が素子平面201である。図2ではこの素子平面201をXY平面に平行な面として示している。この素子平面201からは、Z側に超音波ビームが射出される。超音波プローブ001から射出される超音波ビームは2つの走査面内を所定角度で走査する。この2つの平面のうちXZ平面に平行な走査面が基準面202である。この基準面202は素子平面201の中心206を通過する平面であり、中心206からの法線204を含む平面である。超音波プローブ001から射出される超音波ビームは、この基準面202上で法線204からの角度±θの範囲内を走査する。このθが本発明における「許容角度」にあたる。ここで、許容角度はプローブ毎に予め決められているものであり、例えばθ=45°などと決められている。そして、法線204からの角度がθより大きくなる走査線においてはアーチファクトが発生してしまう。すなわち、中心206を頂点とし、円207を有する円錐に含まれない走査線ではアーチファクトが発生することになる。また、超音波プローブ001は、図3(A)に示すように、基準面202内に複数の走査線301(ラスタ)を形成する。図3(A)は基準面内の超音波ビームの走査線を示す図である。
【0020】
また、他方の走査面が交差面203である。この交差面203は素子平面201の中心206を通り法線204を含む平面208を素子平面201と交わったところの直線を中心に角度θ傾けたものである。角度θは法線204と直線205のなす角度である。平面208における法線204に対応する交差面203内の直線が直線205である。超音波プローブ001から射出される超音波ビームは、この交差面203上で直線205からの角度±θの範囲を走査する。そして、超音波プローブ001は図3(B)に示すように、交差面203内に複数の走査線302を形成する。図3(B)は交差面203内の超音波ビームの走査線を示す図である。ここで、本実施形態ではチルトのみをした場合で説明するが、角度θのチルト後に直線205を軸にして角度φの回転を加えた場合でも同様にチルト及び回転が加えられた交差面上で直線205からの角度±θの範囲を走査する。図2に示すように交差面203上の許容角度±θの範囲内を走査する場合、中心206を頂点とし円207を有する円錐から領域209及び領域210の部分がはみ出している。すなわち、領域209及び領域210の部分を走査する走査線ではアーチファクトが発生することになる。
【0021】
図3(B)には、この交差面203内の超音波ビームの走査線302が示されている。上述のように、基準面202と交差面203との許容角度は±θで同一であり、図3(A)に示される走査線301の本数及び密度と、図3(B)で示される走査線302の本数及び密度は同じである。なお、図3(A)及び図3(B)では、図面の錯綜を避けるために走査線301及び走査線302の数を少なめに記載しているが、実際には基準面202及び交差面203にはより多くの走査線が形成され、走査線密度は密になる。また、図3における点線部分の領域209及び領域210は交差面203上を許容角度±θの範囲内を走査する場合において中心206を頂点とし円207を有する円錐からはみ出す領域である。
【0022】
なお、超音波プローブ001からは、基準面202に沿った超音波ビームと、交差面203に沿った超音波ビームが交互に時分割で射出される。
【0023】
システム制御部008は、送受信部002、信号処理部004、画像処理部005、表示制御部007を統括制御する。システム制御部008は、ユーザインタフェース009を介して医師や検査技師(以下では、単に「操作者」という。)によって入力された基準面202及び交差面203の2つの走査面の位置情報を受信する。ここで、交差面203の位置情報は、素子平面の法線を含む交差面のチルト及び回転の基となる平面208の位置情報、すなわち基準面202からの角度や平面を表す座標など、該平面208からのチルトの角度(例えば図2における角度θ°)、及び回転の角度(例えば、図2における直線205を軸とした交差面203の回転角度。ここではφとする。)を指定することで決定される。システム制御部008は、特定の交差面203内の走査線の直線205からの角度、受信したチルト角度θ、及び回転角度φを基に、各角度の回転行列を使用して法線204から該走査線までの角度αを求める。そして、システム制御部はこの角度αが許容角度θを超えるか否かを求める。システム制御部008は、特定の走査線の射出方向の法線204からの角度αがθを超えるか否かを送受信部002へ出力する。このシステム制御部008が本発明における「検出手段」を含むものである。
【0024】
送受信部002は、送信パルス発生器、送信遅延回路、パルサ、受信遅延回路、加算器(いずれも不図示)、及びゲイン調整部003(プリアンプ)が設けられている。この送受信部002が本発明における「送受信手段」にあたる。
【0025】
送信パルス発生器は、一定のパルス繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Freaqency)によるレートパルス(超音波送受信基準レート)毎に超音波ビームを形成するための送信パルス信号を発生する。送信パルス発生器は、所望の超音波ビームを形成するための送信パルス信号を発生する。送信パルス信号とは、超音波パルスを射出するための制御パルス信号である。この送信パルス信号は、送信チャンネル数分に分配されて送信遅延回路に送られる。送信遅延回路には、遅延時間を決めるタイミング制御データがシステム制御部008から送信チャンネル毎に入力されるようになっている。このタイミング制御データに基づいて、送信遅延回路は、送信チャンネル毎に送信パルス信号を遅延させる。遅延された送信パルス信号は、送信チャンネル毎にパルサに入力される。パルサは、送信パルス信号を受けたタイミングで、圧電振動子(送信チャンネル)毎に電圧パルスを印加する。これにより、超音波ビームが超音波プローブ001から射出される。この超音波ビームの射出方向はシステム制御部008からの入力により決定され、これにより走査線の方向が決定する。
【0026】
ゲイン調整部003はプリアンプであり、超音波プローブ001の各圧電素子(各受信チャンネル)によって受信されたエコー信号を増幅する。ゲイン調整部003は、超音波送受信基準レートを受けたタイミングで、走査線の射出方向の法線204からの角度αが許容角度θを超えるか否かがシステム制御部008より入力される。すなわち超音波送受信基準レートのタイミングで対応する走査線が許容角度θを超えるか否かが判断できる。このとき、ゲイン調整部003は、システム制御部008から入力された走査線の射出方向の法線204からの角度αが許容角度θを超えるという情報を基に、該走査線に対応するエコー信号のゲイン調整の設定値を小さくする(例えば乗算する値を小さくする。)ことで、該エコー信号の輝度を下げる。これにより、画像が生成されたときに画像上その走査線に対応する画像が操作者に見えないようになる。このゲイン調整部003が本発明における「ゲイン調整手段」にあたる。
【0027】
ここで、本実施形態ではゲイン調整部003は送受信部002に配置されているが、これは信号処理部004に配置されてもよく、さらに、送受信部002及び信号処理部004とは別に配置されてもよい。
【0028】
加算器は、受信遅延回路によって遅延させられた各受信チャンネルの信号を整相加算して、単一信号を生成する。
【0029】
信号処理部004は、ローパスフィルタ、包絡線検波回路、対数圧縮部(いずれも不図示)を備えており、2次元画像を生成する信号処理を実行する。ローパスフィルタは、送受信部002より受信した信号の高周波成分を除去する。包絡線検波回路は、包絡線を検波し包絡線検波信号を求める。対数圧縮部は、包絡線検波信号に対して対数変換を施す。以上のような処理を行うことで、信号処理部は超音波エコーに基づくデータからラスタデータを作成する。この作成されたラスタデータは、画像処理部005へ送信される。この信号処理部004が本発明における「信号処理手段」にあたる。
【0030】
画像処理部005は、スキャンコンバータ(SC)006を含み、信号処理部004より入力されたデータを直交座標系の画像データに変換する。この画像処理部005が本発明における「画像処理手段」にあたる。
【0031】
表示制御部007は、画像処理部005によって生成された画像データを表示部(不図示)に表示させる。すなわち、表示制御部007は、表示部の画面上に図3(A)及び図3(B)に模式的に示される基準面202及び交差面203を表示させる。この表示制御部007が本発明における「表示制御手段」にあたる。
【0032】
ユーザインタフェース009は、操作者の操作を入力する入力ユーザインタフェースである。ユーザインタフェース009を介して入力された操作内容に関する情報は、システム制御部008に送られる。
【0033】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置における超音波断層像表示の動作について図4を参照して説明する。ここで、図4は本実施形態に係る超音波診断装置における超音波断層像表示のフローチャートの図である。
【0034】
ステップS001:操作者は、ユーザインタフェース009を使用して、交差面の情報(チルト及び回転の基となる平面、チルト角、及び回転角)を入力する。
【0035】
ステップS002:システム制御部008は、ユーザインタフェース009より入力された交差面の情報を基に、交差面上を走査する各走査線の素子平面の法線からの角度を求め、その角度と許容角度を比較し、許容角度を超える走査線を求める。さらに、システム制御部008は、許容角度を超える走査線の情報を送受信部002のゲイン調整部003へ出力する。
【0036】
ステップS003:送受信部002は、超音波プローブ001を介して超音波ビームを被検体に向けて送信し、さらに被検体で反射された超音波エコーを受信する。
【0037】
ステップS004:ゲイン調整部003は、システム制御部008から受信した情報をもとに、受信した超音波エコー毎に、対応する走査線の法線204からの角度αが許容角度θを超えるか否かを判断する。角度αが許容角度θを超える場合にはステップS005に進み、角度αが許容角度θを超えない場合にはステップS006に進む。
【0038】
ステップS005:ゲイン調整部003は、許容角度を超える走査線に対応する超音波ビームによって得られた信号データの振幅を小さくする。送受信部002は、ゲイン調整をおこなった信号データを信号処理部004に出力する。
【0039】
ステップS006:信号処理部004は、送受信部002から入力された信号データに対し包絡線検波などの信号処理を行いラスタデータを生成する。信号処理部004は、信号処理を施しラスタデータを画像処理部005へ出力する。
【0040】
ステップS007:画像処理部005は、信号処理部004から入力されたラスタデータに直交座標系への座標変換などを施し超音波断層像を生成する。画像処理部005は、生成した超音波断層像を表示制御部007へ出力する。
【0041】
ステップS008:表示制御部007は、画像処理部005から入力された超音波断層像を表示手段に表示させる。
【0042】
上述した動作を繰り返すことにより、本実施形態に係る超音波診断装置では交差面のチルト角又は回転角が変更させるたびに、許容角度を超える走査線が求められ、その走査線に対応する信号データの振幅を抑えることができ、その走査線に対応する画像が表示部の画面上に表示されなくなる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置は、許容角度を超える走査線に対応した超音波エコーに基づく信号データの振幅を小さくすることができる。これにより、射出する超音波ビームの本数を変えずに、すなわちフレームレートを変えることなく、許容角度を超える走査線によるアーチファクトの発生を抑制することが可能となる。このため、操作者はアーチファクトの発生を抑えた画像でかつ、どの画像も同じ輝度を有する画像を参照して診断することができ、本実施形態に係る超音波診断装置は正確な超音波診断に寄与することができる。
【0044】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置の構成は、図1に示される第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成と同一であり、ゲイン調整部003、及び画像処理部005の動作が異なる。
【0045】
上述の第1の実施形態では、送受信部002の信号データのゲインを調整したが、本実施形態では、生成された超音波断層像に対しマスク処理を施すことで、アーチファクトの表示を抑える。
【0046】
システム制御部008は、超音波送受信基準レートを送るタイミングを基に、その超音波送受信基準レートに対応する走査線が素子平面201の中心206を通る法線204からの角度αが許容角度θを超えるか否かの情報を送受信部002へ出力する。
【0047】
送受信部002は、超音波送受信基準レートを受けたタイミングを基に、その超音波送受信基準レートに対応する走査線に対し許容角度θを超えるか否かという情報を付加し信号処理部004へ出力する。
【0048】
ゲイン調整部003は、送受信部002で受信された超音波エコーに基づく信号データの全てに同様のゲインの調整を行う。
【0049】
画像処理部005に含まれるSC006は、走査線に付加された該走査線が許容角度θを超えるか否かの情報を参照して、システム制御部008から受信した素子平面201の中心206における法線204からの角度αが許容角度θを超える走査線に対応する画素に対しマスク処理を施す。ここでのマスクとは、例えば、対応する画素における輝度を暗くするなどである。これは、もともと画像処理部005は各走査線に対応する画素の位置を記憶しているので、走査線が特定されればその走査線に対応する画素を求めることができる。これにより、該走査線に対応する画像が表示されなくなる。このSC006が本発明における「マスク手段」を含む。
【0050】
以上で説明したように、本実施形態に係る超音波診断装置では、生成した超音波断層像に対しマスクを施し画像として表示することを抑えることができる。これにより、射出する超音波ビームの本数を変えずに、すなわちフレームレートを変えることなく、許容角度を超える走査線によるアーチファクトの発生を抑制することが可能となる。このため、操作者はアーチファクトの発生を抑えた画像でかつ、どの画像も同じ輝度を有する画像を参照して診断することができ、本実施形態に係る超音波診断装置は正確な超音波診断に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る超音波診断装置のブロック図
【図2】マルチプレーンモードでの超音波ビームの操作面を説明するための図
【図3】(A)基準面内の超音波ビームの走査線を示す図、(B)交差面内の超音波ビームの走査線を示す図
【図4】第1の実施形態に係る超音波診断装置の画像生成のフローチャートの図
【符号の説明】
【0052】
001 超音波プローブ
002 送受信部
003 ゲイン調整部
004 信号処理部
005 画像処理部
006 SC(スキャンコンバータ)
007 表示制御部
008 システム制御部
009 ユーザインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査面の位置情報の入力を受けて、超音波プローブの複数の振動子からの超音波ビームの前記複数の振動子の配列方向の平面の法線に対する射出角度が予め決められた許容角度を超える超音波ビームを検出する検出手段と、
前記超音波プローブを介して、前記超音波ビームを被検体に送信し被検体で反射した超音波エコーを受信する送受信手段と、
前記許容角度を超える法線に対する射出角度を有する前記受信された超音波エコーの振幅を小さくするゲイン調整手段と、
前記ゲイン調整手段により調整の行われた前記超音波エコーに基づくデータに信号処理を施しラスタデータを作成する信号処理手段と、
前記作成されたラスタデータを直交座標系に変更して超音波断層像を生成する画像処理手段と、
前記生成された超音波断層像を表示手段に表示させる表示制御手段と
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
走査面の位置情報の入力を受けて、超音波プローブの複数の振動子からの超音波ビームの前記複数の振動子の配列方向の平面の法線に対する射出角度が予め決められた許容角度を超える超音波ビームを検出する検出手段と、
前記超音波プローブを介して、前記超音波ビームを被検体に送信し被検体で反射した超音波エコーを受信する送受信手段と、
前記超音波エコーに基づくデータに信号処理を施しラスタデータを作成する信号処理部と、
前記作成されたラスタデータを直交座標系に変更して超音波断層像を生成する画像処理手段と、
生成した超音波断層像における前記許容角度を超える法線に対する射出角度を有する前記超音波ビームに対応する画素にマスクを施すマスク手段と、
前記マスクが施された超音波断層像を表示手段に表示させる表示制御手段と
を備えることを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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