説明

超音波診断装置

【課題】表示部における医用画像の位置を変更可能とすることで、医用画像を使用者が観察しやすくできる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体H内に超音波信号を送受する圧電部32を備える超音波探触子2と、圧電部32が被検体Hからの超音波信号を変換した電気信号に基づき、被検体H内の超音波画像を生成する画像処理部15と、超音波画像と各種画像とを入力信号に応じた相対位置に設定して合成画像を生成する画像合成手段18と、入力信号を生成する入力手段20と、合成画像を表示する表示部16とで、超音波診断装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に超音波信号を送信し、反射波に基づいて被検体内部の超音波画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、通常、16000Hz以上の音波をいい、非破壊、無害および略リアルタイムでその内部を調べることが可能なことから、欠陥の検査や疾患の診断等の様々な分野に応用されている。その一つに、被検体内を超音波で走査し、被検体内からの超音波の反射波から生成した受信信号に基づいて該被検体内の内部状態を画像化する超音波診断装置がある。この超音波診断装置は、医療用では、他の医療用画像装置に較べて小型で安価であり、そしてX線等の放射線被爆が無く安全性が高いこと、また、超音波の反射波に対して包絡線検波処理を施すことによりBモード画像等の医用画像を得ることが可能であることなどの様々な特長を有している。このため、超音波診断装置は、循環器系(例えば心臓の冠動脈等)、消化器系(例えば胃腸等)、内科系(例えば肝臓、膵臓および脾臓等)、泌尿器系(例えば腎臓および膀胱等)および産婦人科系等で広く利用されている。
【0003】
この医用画像による診断は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示部を備えた画像表示装置に医用画像を表示させることで行われる。一般に表示部は超音波診断装置本体に搭載されており、使用者は被検体の被検部に超音波探触子を当接させて撮影を実施しつつ表示部を観察する。
【0004】
超音波診断装置は、被検体に近接して配置され、使用者は、被検体の被検部毎に超音波探触子を当接させやすい位置に自ら移動しながら撮影を実施する。一方、表示部に表示される医用画像は、表示部の所定の位置に固定して表示させている場合が多い。かかる場合には、使用者が表示部に向き合う方向によって、医用画像の観察しやすさが異なってくるという不具合が生じる。
【0005】
かかる不具合に対して、医用画像をその他の領域に比して強調させることで、観察しやすくする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−125440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、医用画像をその他の領域の画像に比して強調させるので、表示されている画像の中では相対的に観察しやすくなる。しかし、使用者が、被検体の被検部毎に超音波探触子を当接させやすい位置に自らの身体を移動させると、自らの身体の位置と超音波診断装置との相対位置が変わるために、医用画像が表示された表示部を斜めに観察する場合が生じ、表示部において使用者の身体の位置に対して反対側に医用画像が位置する場合には、使用者は医用画像を観察しにくいこととなる。
【0008】
本発明は、表示部における医用画像の位置を変更可能とすることで、医用画像を使用者が観察しやすくできる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0010】
1.被検体内に超音波信号を送受する圧電素子を備える超音波探触子と、
前記圧電素子が被検体からの超音波信号を変換した電気信号に基づき、被検体内の超音波画像を生成する画像処理部と、
前記超音波画像と各種画像とを入力信号に応じた相対位置に設定して合成画像を生成する画像合成手段と、
前記入力信号を生成する入力手段と、
前記合成画像を表示する表示部と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【0011】
2.前記圧電素子は被検体内に超音波信号を送信する複数の送信用の圧電素子と、被検体内において反射されて生成された超音波信号を受信して電気信号に変換する複数の受信用の圧電素子と、を備えることを特徴とする前記1に記載の超音波診断装置。
【0012】
3.前記入力手段は、前記超音波探触子に備えられていることを特徴とする前記1又は2に記載の超音波診断装置。
【0013】
4.前記入力手段は、前記超音波探触子に備えられ、加速度センサを有することを特徴とする前記1又は2に記載の超音波診断装置。
【0014】
5.前記入力手段は、
前記超音波探触子に備えられ、前記超音波探触子の位置情報を含む位置検出用信号を送信する位置検出用信号生成部と、
前記位置検出用信号を計測して前記超音波探触子の位置を検出する信号検出手段と、
を有し、
前記相対位置は、前記超音波画像が前記各種画像より前記超音波探触子に近い相対位置であることを特徴とする前記1又は2に記載の超音波診断装置。
【0015】
6.前記合成画像においては、前記超音波画像と前記各種画像とは左右に、又は上下に並べられていることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【0016】
7.超音波を受信する前記圧電素子を形成する圧電材料は有機圧電材料であることを特徴とする前記1から6の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【0017】
8.被検体からの超音波信号の周波数は、被検体に送信する超音波信号の周波数の高調波成分であることを特徴とする前記1から7の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【発明の効果】
【0018】
表示部における医用画像の位置を変更可能とすることで、医用画像を使用者が観察しやすくできる超音波診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態にかかる超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】実施形態にかかる超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】表示部に表示される合成画像の一例の模式図である。
【図4】実施形態にかかる超音波診断装置の超音波探触子の構成を示す図である。
【図5】図5(a)は、把持部に入力手段20を設けた超音波探触子2を正面から見た模式図であり、図5(b)は、把持部に入力手段20を設けた超音波探触子2を斜視した模式図であり、図5(c)は、入力手段20の原理を示す模式図である。
【図6】図6(a)は、図中左側に超音波画像が設けられる合成画像の模式図であり、図6(b)は、図中右側に超音波画像が設けられる合成画像の模式図である。
【図7】使用者Jの右手側に超音波診断装置Sが位置する場合に、超音波画像153が表示部16の使用者J側に配置された様子を示す模式図である。
【図8】使用者Jの左手側に超音波診断装置Sが位置する場合に、超音波画像153が表示部16の使用者J側に配置された様子を示す模式図である。
【図9】図9(a)は、加速度が課されていない場合の加速度センサ90の模式図であり、図9(b)は、加速度が課された場合の加速度センサ90の模式図である。図9(c)は、加速度センサ90を内蔵した超音波探触子2の模式図である。
【図10】実施形態にかかる超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図11】実施形態にかかる超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図12】平面アンテナ51の外観の概要を表す斜視図である。
【図13】平面アンテナ51の受信特性の指向性を表すグラフである。
【図14】平面アンテナ51の受信面511の方向をスキャン手段52がスキャンする概要を表す概要図である。
【図15】方向毎の受信特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面により説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限られるものではない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0021】
図1は、実施形態にかかる超音波診断装置の外観構成を示す図である。図2は、実施形態にかかる超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。図3は、表示部に表示される合成画像の一例の模式図である。図4は、実施形態にかかる超音波診断装置の超音波探触子の構成を示す図である。
【0022】
超音波診断装置Sは、図1および図2に示すように、図略の生体等の被検体Hに対して超音波(以後、第1超音波信号とも称す)を送信すると共に、被検体Hで反射した超音波の反射波(以後、第2超音波信号とも称す)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体Hに対して第1超音波信号を送信させると共に、超音波探触子2で受信された被検体H内からの第2超音波信号に応じて超音波探触子2で生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体H内の内部状態を超音波画像として医用画像に画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成される。超音波診断装置本体1には、超音波探触子2を使用しない時に、超音波探触子2を保持させておく超音波探触子フォルダ4が備えられている。
【0023】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、信号処理部14と、画像処理部15と、表示部16と、制御部17と、記憶部19と、本発明の画像合成部18と、を備えて構成されている。
【0024】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体Hの個人情報等のデータを入力するものであり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。
【0025】
送信部12は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を供給して超音波探触子2に第1超音波信号を発生させ、超音波探触子2を駆動する回路である。送信部12は、例えば、高電圧のパルスを生成する高圧パルス発生器等を備えて構成される。
【0026】
受信部13は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路であり、この受信信号を信号処理部14へ出力する。受信部13は、例えば、受信信号を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器、および、この増幅器で増幅された受信信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するアナログ−デジタル変換器等を備えて構成される。
【0027】
信号処理部14は、制御部17の制御に従って、受信部3からの電気信号に、所定の信号処理を施す回路であり、その信号処理した反射受信信号を画像処理部15へ出力する。
【0028】
画像処理部15は、制御部17の制御に従って、信号処理部14で信号処理された反射受信信号に基づいて、例えばハーモニックイメージング技術等を用いて被検体H内の内部状態の超音波画像を生成する回路である。例えば、反射受信信号に対して包絡線検波処理を施すことにより、第2超音波信号の振幅強度に対応したBモード信号を生成する。
【0029】
記憶部19はRAMやROMで構成され、制御部17に用いられるプログラムが記録され、また、表示部16で表示する各種画像のテンプレートが記録されている。
【0030】
本発明の画像合成部18は、画像処理部15で生成した例えばBモード画像と、操作入力部11から入力された情報や、記憶部19に記憶されている被検体の過去のBモード画像等の情報などについての各種画像とを合成した合成画像を生成する機能を有する。合成画像を構成する画像の例としては、図3に示すように、超音波画像153,画像のタイトル画像151,表示する画像の内容等を選択するメニュー画像152,過去の超音波画像を並列したサムネイル画像154,被検体の名前等の情報を表示した被検体情報画像156,ファンクションキー等を表示したソフトメニュー画像157等である。
【0031】
表示部16は、制御部17の制御に従って、画像合成部18で合成された合成画像を表示する装置である。表示部16は、例えば、CRTディスプレイ、LCD、ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0032】
制御部17は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11、送信部12、受信部13、信号処理部14、画像処理部15、画像合成部18、及び記憶部19を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置Sの全体制御を行う回路である。
【0033】
一方、超音波探触子2は、振動部30と、本発明の入力手段20とを備える。
【0034】
本発明の入力手段20は、合成画像の中におけるBモード画像と各種画像との相対位置を、使用者が指示入力して変更できる機能を有する。具体的には、Bモード画像が表示部16における左右方向のどの位置に設けられるか使用者が指示入力する機能を有する。詳しくは後述する。
【0035】
振動部30は、図略の生体等の被検体Hに対して第1超音波信号を送信すると共に、被検体Hからの第2超音波信号を受信する。振動部30は、例えば、図4に示すように、音響制動部材31と、圧電部32と、音響整合層33と、音響レンズ34とを備えて構成される。
【0036】
音響制動部材31は、超音波を吸収する材料から構成された平板状の部材であり、圧電部32から音響制動部材31方向へ放射される超音波を吸収するものである。
【0037】
圧電部32は、圧電材料を備えた圧電素子であり、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換するものである。圧電部32は、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して入力された送信の電気信号を第1超音波信号へ変換して第1超音波信号を送信すると共に、受信した第2超音波信号を電気信号へ変換してこの電気信号(受信信号)をケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。超音波探触子2が被検体Hに当接されることによって圧電部32で生成された第1超音波信号が被検体H内へ送信され、被検体H内からの第2超音波信号が圧電部32で受信される。
【0038】
本実施形態における圧電部32は送受別体のタイプとして説明するが、送受同一のタイプであってもよい。圧電部32は、例えば、本実施形態では、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる第1圧電部321および第2圧電部323を備え、第1圧電部321および第2圧電部323は、互いに積層されている。
【0039】
本実施形態では、第1圧電部321および第2圧電部323は、中間層322を介して互いに積層されている。この中間層322は、第1圧電部321と第2圧電部323とを積層するための部材であり、第1圧電部321と第2圧電部323との音響インピーダンスを整合させるものである。
【0040】
このように圧電部が2層の第1圧電部321および第2圧電部323を備える。第1圧電部321は第1超音波信号を送信する複数の送信用の圧電素子(送信用圧電素子)からなる。第2圧電部323は第2超音波信号を受信する複数の受信用の圧電素子(受信用圧電素子)からなる。
【0041】
このため、第1圧電部321を送信用により適したものとすることができると共に、第2圧電部323を受信用により適したものとすることができる。従って、第1圧電部321および第2圧電部323がそれぞれ第1超音波信号の送信用圧電素子、および第2超音波信号の受信用圧電素子として最適化が可能となり、より高精度な画像を得ることが可能となる。さらに、第1圧電部321および第2圧電部323が積層されているので、小型化が可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、例えば、圧電部32における第1圧電部321は、無機圧電材料を材料とする無機圧電素子から構成されており、無機圧電素子は両面に一対の電極を備えて構成されている。この無機圧電素子の厚さは、例えば、送信すべき超音波の周波数や無機圧電材料の種類等によって適宜に設定される。無機圧電材料は、例えば、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO)等である。本実施形態では、このように送信パワーを大きくすることが可能な無機圧電素子が第1圧電部321に用いられている。
【0043】
そして、本実施形態では、例えば、圧電部32における第2圧電部323は、有機圧電材料を材料とする有機圧電素子から構成されており、有機圧電素子は両面に一対の電極を備えて構成されている。この有機圧電素子の厚さは、例えば、受信すべき超音波の周波数や有機圧電材料の種類等によって適宜に設定されるが、例えば、中心周波数8MHzの超音波を受信する場合では、この有機圧電素子の厚さは、約50μmである。
【0044】
有機圧電材料には、例えば、フッ化ビニリデンの重合体や、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体を用いることができる。フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体の場合、共重合比によって厚み方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化するので、例えば、前者の共重合比が60〜99モル%が好ましいが、無機圧電素子と有機圧電素子を重ねる時に使用する有機結合剤の使用方法にもよるので、その最適値は変化する。最も好ましい前者の共重合比の範囲は70〜90モル%である。フッ化ビニリデンを85〜99モル%にして、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルコキシエチレン、パーフルオロヘキサエチレン等を1〜15モル%にしたポリマーは、送信用無機圧電素子と受信用有機圧電素子との組み合わせにおいて、送信における基本周波波を抑制して、高調波受信の感度を高めることができる。
【0045】
フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体は、薄膜化、大面積化等の加工性に比較的優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、高周波特性、広帯域特性を必要とするハーモニックイメージング技術における圧電材料として適している。
【0046】
また、本実施形態では、圧電部32の第1圧電部321は、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して電気信号が入力され、この電気信号を第1超音波信号へ変換し、この変換した第1超音波信号を中間層322、第2圧電部323、音響整合層33および音響レンズ34を介して被検体Hへ送信する。そして、圧電部32の第2圧電部323は、第2超音波信号が音響レンズ34および音響整合層33を介して被検体Hから受信され、この受信された第2超音波信号を電気信号へ変換し、この変換した電気信号を受信信号としてケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。本実施形態では、上述したように第1圧電部321が無機圧電素子であり、送信パワーを比較的簡単な構造で大きくすることが可能となるため、このような圧電部32を備えた超音波探触子2は、高調波の反射波を得るために比較的大きなパワーで基本波の第1超音波信号を送信することが必要なハーモニックイメージング技術に好適であり、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。そして、本実施形態では、上述したように第2圧電部323が有機圧電素子であり、周波数帯域を比較的簡単な構造で広帯域にすることが可能となるため、このような圧電部32を備えた超音波探触子2は、高調波の第2超音波信号を受信することが必要なハーモニックイメージング技術に好適であり、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。
【0047】
そして、本実施形態では、圧電部32における第1圧電部321および第2圧電部323は、第1圧電部321上に第2圧電部323が積層され、第2圧電部323の前方に超音波信号の送受信面が在る。より具体的には、第1圧電部321上に中間層322を介して第2圧電部323が積層されている。このように、被検体Hに第1超音波信号を送信する方向であって、第1圧電部321上に第2圧電部323が積層されて一体化することで、小型の超音波探触子2を構成することができる。
【0048】
次に、入力手段20について詳細に説明する。入力手段20は、合成画像の中で、Bモード画像と各種画像との相対位置を、使用者が指示入力して変更する機能を有する。図5は、入力手段20の一例の模式図である。図5(a)は、把持部に入力手段20を設けた超音波探触子2を正面から見た模式図であり、図5(b)は、把持部に入力手段20を設けた超音波探触子2を斜視した模式図であり、図5(c)は、入力手段20の原理を示す模式図である。
【0049】
図5に示した入力手段20は、使用者が押圧することで釦部201を左右に位置変更するスイッチ80である。使用者は、入力手段20の釦部201を、例えば位置S1と位置S2の間で切り替えることにより、表示部16における超音波画像の位置を変更することができる。図6は、表示部16において超音波画像153の位置が変更された合成画像の模式図である。図6(a)は、図中左側に超音波画像153が設けられる合成画像の模式図であり、図6(b)は、図中右側に超音波画像153が設けられる合成画像の模式図である。
【0050】
入力手段20の構成としては、例えば、釦部201が移動する左右の位置に各々電極を内蔵し、釦部201の移動により、電極が選択され、選択された電極に応じた電圧を画像合成部18に送るスイッチタイプが好ましい。
【0051】
また、例えば、図5(c)に示すように、入力手段20はポテンショメータであり、釦部201が、位置S1にあるか位置S2にあるかに応じて発生する電圧Vを変化させるスイッチタイプが好ましい。画像合成部18は、送られた電圧Vに応じて、表示部16における超音波画像153の位置を変更する。かかるポテンショメータを用いた入力手段20を採用し、釦部201の位置を位置S1と位置S2の間に設定して、画像合成部18へ送る電圧Vの値が複数とり得るようにし、表示部16における各種画像に対する超音波画像153の位置を左右方向に段階的に変更することも可能となる。
【0052】
このような入力手段20と画像合成部18を用いれば、使用者が超音波診断を行う際に、超音波診断装置Sに対する自らの身体の位置に依らず、表示部16における超音波画像153の位置を、自らが観察しやすい位置に変更できるので、超音波画像153を観察しやすくなる。図7は、使用者Jの右手側に超音波診断装置Sが位置する場合に、超音波画像153が表示部16の使用者J側に配置された様子を示す模式図である。図8は、使用者Jの左手側に超音波診断装置Sが位置する場合に、超音波画像153が表示部16の使用者J側に配置された様子を示す模式図である。
【0053】
超音波診断装置Sが、使用者Jのどちら側に配置されている場合にも、使用者Jは超音波探触子2の入力手段20を用いて、表示部16における超音波画像153の位置を左右方向どちらにも変更できる。従って、使用者Jは例えば無理に首を大きく回転させたりする必要が無く、超音波画像153を観察することができる。
【0054】
超音波探触子2に取り付ける入力手段20には、上記のようなスイッチ80を用いてもよし、加速度センサを用いてもよい。加速度センサは、取り付けた超音波探触子2に課された加速度を計測できる。課される加速度の方向と、表示部16における超音波画像153の位置を予め対応付けておき、実際に課される加速度の方向を加速度センサに計測させ、その結果を画像合成部18に出力することで、表示部16における超音波画像153の位置を変更する。
【0055】
以下、加速度センサについて説明する。加速度センサは、加速度を計測するセンサである。図9は、加速度センサの一例であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた半導体ピエゾ抵抗型の加速度センサ90の模式図である。図9(a)は、加速度が課されていない場合の加速度センサ90の模式図であり、図9(b)は、加速度が課された場合の加速度センサ90の模式図である。図9(c)は、加速度センサ90を内蔵した超音波探触子2の模式図である。
【0056】
加速度センサ90は、錘93を備えたピエゾ抵抗器92と、ピエゾ抵抗器92の上面に備えられたダイヤフラム91を有する。
【0057】
図9(b)に示すように、加速度センサ90に、図中矢印方向に加速度が課されると、錘93は当該矢印方向へ移動する。錘93にはダイヤフラムの一部が形成されているので、ダイヤフラムの一部に応力が発生し、加速度により錘93に発生する力と当該応力とが釣り合った場所で錘93は静止する。錘93が移動することで、ピエゾ抵抗器に発生する抵抗値が変化するので、この変化値を画像合成部18へ出力することで、表示部16における超音波画像153の位置を変更する。
【0058】
かかる加速度センサ90を用いた入力手段20を、図9(c)に示すように、例えば、加速度を計測する方向を、超音波探触子2に対して左右方向になるように内蔵させ、使用者Jが超音波探触子2を左右所望の方向に振ることで、表示部16における超音波画像153の位置を変更することができる。
【0059】
入力手段20としては、上記のようなスイッチ80や加速度センサ90のように、超音波探触子2に搭載するタイプの他、超音波診断装置本体1の位置を基準として、超音波探触子2がどの方向に存在するかが分かるセンサを用いてもよい。超音波診断装置本体1の位置を基準として、超音波探触子2がどの方向に存在するか分かれば、使用者Jが操作する必要がなく、使用者Jの位置する方向に、表示部16における超音波画像153の位置を変更することができる。
【0060】
以下、超音波探触子2に搭載するタイプの他、超音波診断装置本体1の位置を基準として、超音波探触子2がどの方向に存在するかが分かるセンサの例を説明する。
【0061】
図10は、実施形態にかかる超音波診断装置の外観構成を示す図である。図11は、実施形態にかかる超音波診断装置Sの電気的な構成を示すブロック図である。図12は、平面アンテナ51の外観の概要を表す斜視図である。図13は、平面アンテナ51の受信特性の指向性を表すグラフである。図14は、平面アンテナ51の受信面511の方向をスキャン手段52がスキャンする概要を表す概要図である。図15は、方向毎の受信特性を表すグラフである。
【0062】
図10における超音波診断装置Sにおいては、超音波探触子2の位置を検知する信号検出手段50を有する。
【0063】
図11の超音波診断装置Sの電気的な構成を示すブロック図と、図2に示す超音波診断装置Sの電気的な構成を示すブロック図との相違は、位置検出用信号生成部48と信号検出手段50とを有する点である。位置検出用信号生成部48と信号検出手段50とが入力手段としての機能を有する。
【0064】
位置検出用信号生成部48は超音波探触子2の位置情報を含む位置検出用信号を生成し、生成された位置検出用信号を信号検出手段50が計測することで、超音波探触子2の存在する方向を検知し、表示部16における超音波画像153の位置を変更することができる。
【0065】
信号検出手段50は、平面アンテナ51、スキャン手段52、方向算出手段53からなる。
【0066】
平面アンテナ51は、受信する電波を電気信号に変換する変換効率が、受信する角度に依存する指向性アンテナである。指向性アンテナであればアンテナの方式は問わない。例えば、パラボラアンテナを採用してもよい。平面アンテナは受信面が平面であるので、取り付け場所を選ばないという長所を有し、パラボラアンテナは低コストであるという長所を有する。
【0067】
平面アンテナ51は図12に示すように電波信号を受信する受信面511が備えられている。
【0068】
平面アンテナ51は図13のグラフで示す受信特性の指向性を有する。x座標とy座標が0の方向において、電波を受信して電気信号に変換する効率(受信感度)が最も高いという指向性を有する。受信特性を受信面511からの方向(θ方向、φ方向)で表すことも可能である。受信面511の法線方向からの電波信号の受信感度が最も高いので、平面アンテナ51は、受信面511の法線方向に位置検出用信号を送信する超音波探触子2が存在する場合に、最も大きな電気信号を出力することとなる。
【0069】
スキャン手段52は、図14に示すように、平面アンテナ51の受信面511の受信方向(θ方向とφ方向)をスキャンする機能を有する。スキャン手段52には、例えばモータを用いて回転する機構を採用することができる。
【0070】
方向算出手段53は、平面アンテナ51の位置に対して、位置検出用信号を送信する超音波探触子2がどの方向に存在するかを検出する機能を有する。スキャン手段52が平面アンテナ51をスキャンするに従い、平面アンテナ51から出力される方向毎の出力から、どの方向における電波信号の大きさが最大となるかを判断する電気回路である。
【0071】
図15は、方向毎の受信特性を表すグラフである。スキャン手段52が平面アンテナ51をスキャンするに従い、図15に示すような出力を得る。出力とθ方向との関係を計測する際には、φ方向は一定の角度(例えば0度)にしておき、同じく出力とφ方向との関係を計測する際には、θ方向は一定の角度(例えば0度)にしておく。方向算出手段53には、θに対応する出力を記憶できる記憶手段(例えばRAM)を設け、θ方向に平面アンテナ51を一通りスキャンした後に、最も出力が大きなθの値を計測し、位置検出用信号を送信する超音波探触子2がどのθ方向に存在するかを判断する。φ方向についても、同様の方法で、位置検出用信号を送信する超音波探触子2が存在する方向を検出することができる。
【0072】
位置検出用信号生成部48は、超音波探触子2が自己の位置する方向を超音波診断装置本体1に検出させるための位置検出用電波信号を生成する電気回路である。
【0073】
位置検出用信号は、例えば、超音波探触子2毎に所定の時間プロファイルを有していてもよい。具体的には、超音波探触子2毎に異なる発生時間を有するようなプロファイルにしてもよい。
【0074】
このように位置検出用信号生成部48は位置検出用信号を生成し、生成された位置検出用信号を信号検出手段50が計測することで、超音波探触子2の存在する方向を検知し、検知結果を画像合成部18に出力することで、表示部16における超音波画像153の位置を変更する。超音波画像と各種画像との相対位置は、超音波画像が各種画像より超音波探触子2に近くなるような相対位置である。また、超音波探触子2が、表示部16に対して上下方向に位置する場合には、超音波画像と各種画像との相対位置は、上下方向に並べた相対位置であってもよい。
【0075】
なお、本実施形態においては、超音波探触子2は超音波診断装置本体1と有線接続されていても、無線接続されていてもよい。
【0076】
以上のように本実施形態にかかる超音波診断装置においては、被検体H内に超音波信号を送受する圧電部32を備える超音波探触子2と、圧電部32が被検体Hからの超音波信号を変換した電気信号に基づき、被検体H内の超音波画像を生成する画像処理部15と、超音波画像と各種画像とを入力信号に応じた相対位置に設定して合成画像を生成する画像合成部18と、入力信号を生成する入力手段20と、合成画像を表示する表示部16と、で、超音波診断装置を構成することで、表示部16における各種画像に対する医用画像の相対位置を変更可能とし、使用者が医用画像を観察しやすくすることができる超音波診断装置を提供できる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、圧電部32は、被検体H内に超音波信号を送信する複数の送信用圧電素子と、被検体H内において反射されて生成された超音波信号を受信して電気信号に変換する複数の受信用圧電素子と、を備えることで、超音波信号の送受に各々適した圧電素子を選択できる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、入力手段20は、超音波探触子に備えられていることで、使用者が任意に表示部16における各種画像に対する医用画像の相対位置を変更可能とし、使用者が医用画像を観察しやすくすることができる超音波診断装置を提供できる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、入力手段20に、超音波探触子に備えられた加速度センサを採用することで、使用者がスイッチを押さず、超音波探触子2を所望の方向に振ることで簡単に表示部16における各種画像に対する医用画像の相対位置を変更可能とし、使用者が医用画像を観察しやすくすることができる超音波診断装置を提供できる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、超音波探触子2は、所定の位置検出用信号を送信する位置検出用信号生成部を有し、位置検出用信号を計測して超音波探触子2の位置を検出する位置検出手段を有することで、使用者は何の操作をすることなく、表示部16における各種画像に対する医用画像の相対位置を変更可能とし、使用者が医用画像を観察しやすくすることができる超音波診断装置を提供できる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、合成画像においては、超音波画像と各種画像とは左右に、又は上下に並べられているので、使用者が医用画像を観察しやすくすることができる超音波診断装置を提供できる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、受信用素子の材料に有機圧電材料を採用することで、第2超音波信号のような高周波の超音波信号を広帯域に受信することができるので、鮮明な超音波画像を得ることができる。
【0083】
本実施の形態によれば、被検体Hからの超音波信号の周波数には、被検体Hに送信する超音波信号の周波数の高調波成分を採用することで、より鮮明な超音波画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
4 超音波探触子フォルダ
11 操作入力部
12 送信部
13 受信部
14 信号処理部
15 画像処理部
16 表示部
17 制御部
18 画像合成部
19 記憶部
20 入力手段
30 振動部
31 音響制動部材
32 圧電部
33 音響整合層
34 音響レンズ
48 位置検出用信号生成部
50 信号検出手段
51 平面アンテナ
52 スキャン手段
53 方向算出手段
80 スイッチ
90 加速度センサ
151 タイトル画像
152 メニュー画像
153 超音波画像
154 サムネイル画像
156 被検体情報画像
157 ソフトメニュー画像
201 釦部
321 第1圧電部
322 中間層
323 第2圧電部
511 受信面
S 超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に超音波信号を送受する圧電素子を備える超音波探触子と、
前記圧電素子が被検体からの超音波信号を変換した電気信号に基づき、被検体内の超音波画像を生成する画像処理部と、
前記超音波画像と各種画像とを入力信号に応じた相対位置に設定して合成画像を生成する画像合成手段と、
前記入力信号を生成する入力手段と、
前記合成画像を表示する表示部と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記圧電素子は被検体内に超音波信号を送信する複数の送信用の圧電素子と、被検体内において反射されて生成された超音波信号を受信して電気信号に変換する複数の受信用の圧電素子と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記入力手段は、前記超音波探触子に備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記入力手段は、前記超音波探触子に備えられ、加速度センサを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記入力手段は、
前記超音波探触子に備えられ、前記超音波探触子の位置情報を含む位置検出用信号を送信する位置検出用信号生成部と、
前記位置検出用信号を計測して前記超音波探触子の位置を検出する信号検出手段と、
を有し、
前記相対位置は、前記超音波画像が前記各種画像より前記超音波探触子に近い相対位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記合成画像においては、前記超音波画像と前記各種画像とは左右に、又は上下に並べられていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波を受信する前記圧電素子を形成する圧電材料は有機圧電材料であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
被検体からの超音波信号の周波数は、被検体に送信する超音波信号の周波数の高調波成分であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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