説明

超音波診断装置

【課題】3Dプローブにおいて、それにイメージ表示機能を持たせる。
【解決手段】3Dプローブのケース内において振動子ユニットが機械走査される。振動子ユニットはアレイ振動子とともに発光素子列20を備える。発光素子列20は電子走査方向に並んだ複数の発光素子20aにより構成される。機械走査の各位置において、異なるラインデータに基づく表示が行われ、その結果として残像イメージとしての2次元イメージが生体当接膜上に現れる。装置の動作状況やプローブの使用状況に応じてイメージ内容を変えるのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、特に、可動体を内蔵する機械走査型超音波プローブを備えた超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、生体に対して超音波を送受波する超音波プローブ(超音波探触子)及びそれが接続される装置本体を有する。超音波プローブとしては今まで各種のプローブが実用化されている。その中で機械走査型3Dプローブは、プローブケース内において往復運動する振動子ユニットを備える。振動子ユニットは機械走査方向に直交する方向(電子走査方向)に配列されたアレイ振動子を有し、各機械走査位置においてアレイ振動子上において超音波ビームの電子走査が実行される。実際には超音波ビームの電子走査の繰り返し実行と並行して振動子ユニットが機械的に走査される。一回の電子走査で1つのビーム走査面を形成できるので、すなわち1つのフレームデータを得られるので、1回の機械走査で複数の走査面を形成して1つのボリュームデータが得られる。
【0003】
従来において、振動子ユニットは超音波の送受波のために単に機械走査されるだけのものであり、それがイメージ表示のための手段として機能することはなかった。なお、特許文献1には、LEDアレイを備えた超音波プローブが開示されている。LEDアレイはプローブケース側面上に設けられており、それは振動子ユニットの位置を表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008―253578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波プローブを使用する際にはユーザーの操作を支援するために様々な情報を提供することが望まれる。視覚的情報の提供手段としては表示装置が存在しているが、表示装置による情報提供の場合にはプローブから視線を外す必要があり、またプローブと表示内容との対応関係を認識し難いという問題がある。そこで超音波プローブそれ自体に表示機能をもたせて、ユーザーのプローブ操作を支援することが望まれるが、ユーザーがもつ部分に表示部を設けると、プローブを把持した際に表示内容が隠れてしまうという問題がある。また、広い表示面を確保することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は超音波プローブに新しい機能を搭載することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、超音波プローブにおいてそれを把持する手で隠れず、しかも比較的広い表示エリアを確保できる表示面を実現することにある。
【0008】
本発明の他の目的は超音波プローブがおかれている状況に応じて適切な情報をユーザーに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る超音波診断装置は、透明性を有する部材で構成された生体当接膜を有するプローブケースと、前記プローブケース内において機械走査経路上で往復運動する振動子ユニットと、を備えた超音波プローブを備え、前記振動子ユニットは前記機械走査経路と交差する方向に整列した発光素子列を有し、前記発光素子列に対して、前記振動子ユニットの機械走査位置に応じて変化するライン表示信号を供給する表示信号生成部が設けられ、前記振動子ユニットの往復運動に伴い、前記生体当接膜の外側に複数のライン表示が順番に現れ、これにより二次元残像を生じさせる、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、プローブケース内において振動子ユニットが機械的に往復運動する。振動子ユニットには機械走査方向に交差する方向に整列した複数の発光素子が搭載され、振動子ユニットの走査位置に応じて発光素子列の発光状態が変化する。よって、生体当接膜(柔らかい膜あるいは壁)の外側に文字、絵、図形等を表現することが可能となる。そのようなイメージは複数のライン表示からなるものであるが、実際には残像現象を利用して二次元的なイメージを生じさせるものである。往路走査及び復路走査のそれぞれにおいて同じイメージが表現されるようにしてもよいし、イメージの内容を時間的に変化させるようにしてもよい。視覚的に提供される情報としては、会社ロゴ(名称、商標)、機能説明(周波数、型式)、状態説明、何らかの模様(例えば小児に安心感や興味を与える動物像)、等であってもよい。白黒表示の他、カラー表示を行わせることが可能である。生体当接膜上にイメージを表現する場合の他、生体当接膜を通してイメージが生体表面上に描かれるようにしてもよい。
【0011】
望ましくは、前記振動子ユニットは、前記機械走査経路と直交する方向に整列した複数の振動素子からなるアレイ振動子を有し、前記発光素子列を構成する各発光素子は前記アレイ振動子に隣接しつつ前記生体当接膜の内側に向けて設けられる。発光素子を設けるに当たっては超音波伝搬に影響を与えないようにその配設を行うのが望ましい。
【0012】
望ましくは、前記表示信号生成部は複数のイメージデータを有する記憶部を有し、前記各イメージデータは複数のラインデータにより構成され、前記複数のイメージデータの中から選択された特定のイメージデータを構成する複数のラインデータに基づいて複数のライン表示信号が順番に生成される。表示すべき複数のイメージを用意しておき、状況やニーズに応じて表示するイメージを選択するのが望ましい。すなわち、望ましくは、前記表示信号生成部は当該超音波診断装置の動作状況に応じて表示対象となるイメージデータを選択する。
【0013】
望ましくは、前記超音波プローブを上向き状態で保持するホルダを備え、前記表示信号生成部は前記超音波プローブが前記ホルダによって上向き保持されている場合に前記表示対象となるイメージデータとしてユーザーへ提供する操作支援情報を有するイメージデータを選択する。上向き状態は加速度センサ等を利用して判定可能であり、またホルダにマイクロスイッチ等を設けてそれを用いてプローブ保持を判定するようにしてもよい。例えば、複数のプローブが接続されている場合にアクティブプローブに発光表示を行わせれば取り間違いを防止できる。
【0014】
望ましくは、前記表示信号生成部は、前記超音波プローブを生体へ当接する直前の状態において、前記表示対象となるイメージデータとして体表面上に投影する投影用イメージデータを選択する。発光素子はLEDであるのが望ましいが、EL素子その他の発光器を利用することができる。発光制御部やイメージデータ生成部は、超音波診断装置本体内に設けるのが望ましいが、プローブ内や中継ボックス内に設けることも可能である。なお、可動体を有するプローブ一般に本発明を応用可能である。振動子の走査方式としては、直線走査、円弧走査、回転走査等をあげることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超音波プローブに新しい機能を搭載できる。あるいは、超音波プローブを把持する手で隠れず、しかも比較的広い表示エリアを確保できる表示面を実現できる。あるいは、超音波プローブがおかれている状況に応じて適切な情報をユーザーに提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る超音波探触子(3Dプローブ)の構造を示す図である。
【図3】発光素子列を示す斜視図である。
【図4】生体当接膜上に現れるイメージの例を示す図である。
【図5】装置の状態に応じたイメージ変更を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。図1に示す超音波診断装置は医療の分野において用いられ生体に対する超音波の送受波により超音波画像を形成する装置である。
【0019】
超音波診断装置は大別して3Dプローブ10とそれが接続されている装置本体12とにより構成される。3Dプローブは生体表面上に当接して用いられ、生体内の3次元空間に対して超音波を送受波し、これによりボリュームデータを取得するものである。具体的には、ボリュームデータは複数のフレームデータにより構成され、各フレームデータは1つの走査面(ビーム走査面)に対応している。1つの走査面は1回の超音波ビームの電子走査により構成される。
【0020】
3Dプローブ10は、可動体としての振動子ユニット14を備えている。振動子ユニット14は本実施形態において直線的に機械走査される。もちろん円弧状に機械走査され、あるいは回転走査されてもよい。アレイ振動子18は電子走査方向すなわちX方向に配列された複数の振動素子からなるアレイ振動子18を備えている。また振動子ユニット14は、本実施形態において、電子走査方向に並んだ複数の発光素子からなる発光素子列20を備えている。それはアレイ振動子18に隣接配置されている。各発光素子は本実施形態においてLEDによって構成されている。単色のLEDが利用されているが、カラーのLEDを用いるようにしてもよい。その場合においてはR、G、Bの3色のLEDで1つの発光体が構成される。
【0021】
機械走査機構16は、駆動モータやギア機構などを有し、振動子ユニット14を機械走査方向すなわちY方向に往復運動させる機構である。位置検出器22には機械走査方向における振動子ユニット14の位置を検出するセンサである。姿勢検出器24は3Dプローブ10の姿勢を検出するものであり、加速度センサ等によって構成される。姿勢検出器24は必要に応じて設けられるものである。
【0022】
装置本体12について説明すると、制御部26は図1に示される各構成の動作制御を行っており、制御部26は、CPUと動作プログラムによって構成される。送受信部28は送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマとして機能するものであり、アレイ振動子18に対して複数の送信信号を供給し、またアレイ振動子18からの複数の受信信号を処理する。画像形成部30は、ボリュームデータに基づいてボリュームレンダリング処理を実行することにより三次元超音波画像を形成する。その画像データは表示部32に送られており、表示部32の画面上には三次元超音波画像が表示される。もちろん、断層画像その他の画像が表示されてもよい。イメージメモリ36は、3Dプローブ10における生体当接膜の外面上に表示するイメージのデータを格納したメモリであり、本実施形態においてイメージメモリ36内には、選択的に利用される複数のイメージデータが格納されている。各イメージデータは複数のラインデータにより構成され、各ラインデータが順番に読み出される。走査方向に応じて読み出し順が定められる。
【0023】
表示コントローラ34は、発光素子列20に対して順番にラインデータを供給する回路であり、特に、位置検出器22において検出された角度に対応するラインデータを発光素子列20に供給している。図1においてラインデータが符号100で表されている。
【0024】
本実施形態の超音波診断装置においては、3Dプローブ10内において振動子ユニット14が往復運動し、その際において各位置において発光素子列20においてラインデータに基づく発光が行われ、そのような過程が順番に繰り返されると、生体当接膜の外面上に残像としての二次元イメージが浮かび上がることになる。よって、従来のプローブには備わっていない表示機能をプローブにもたせることが可能となる。
【0025】
図2には図1に示した3Dプローブ10の一例が示されている。3Dプローブ10は本体ケース38を有し、その一部は広がりをもった生体当接膜40である。本実施形態においてその生体当接膜40は透明性を有する部材により構成されている。本体ケース38の内部には媒体槽42が形成されており、その媒体槽42内において機械走査方向に振動子ユニット14が駆動される。振動子ユニット14はアレイ振動子を備え、1つの振動子素子が符号18aで表されている。また、振動子ユニット14は発光素子列を備え、そのうちの1つの発光素子が符号20aで表されている。符号100は超音波ビームを示しており、符号102は発光素子20aにより生じた光を表している。
【0026】
図3には振動子ユニットの斜視図が示されており、上述したように振動子ユニット14は発光素子列20を有し、それは複数の発光素子20aによって構成されている。振動子ユニット14は上述したようにアレイ振動子を有しているが、図3においてその具体的な構成は示されていない。図3においてはアレイ振動子の生体側に設けられている音響レンズあるいは整合層19が示されている。図においてX方向は電子走査方向であり、Y方向は機械走査方向である。
【0027】
各機械走査位置に応じてそれに対応する発光を行わせることにより、そしてそれを繰り返すことにより、図4に示すような残像イメージを生体当接膜上に表すことが可能である。ここにおいて横方向にはYアドレスが表されており、縦方向にはXアドレスが表されている。各Yアドレス上に並ぶ複数のXアドレス上の輝点が1つのラインデータに相当する。そのようなラインデータは図1に示した表示コントローラを経由してイメージメモリから供給される。往路走査と復路走査で別のイメージが表示されるようにしてもよい。またイメージの内容を段階的に変化させれば動画像を表示することももちろん可能である。本実施形態においては白黒表示が行われているが、上述したようにカラー表示を行うようにしてもよい。
【0028】
図5には装置の動作状況に応じて表示イメージを変更する場合の制御内容が概念図として示されている。まず表示機能付き3Dプローブが装置に接続されており、またデフォルトとして当該プローブが選択されている場合において、装置の電源をオンすると、制御部の作用により3Dプローブ上に初期イメージが表示される。それがS10で示されている。この場合の初期イメージはREADYといった情報の表示である。次に動作モードの選択等に基づくイベント#1が発生すると、フォルダに上向き保持されている3Dプローブ上に機能説明用イメージが表示される。それがS12で示されている。その場合の表示内容は周波数、メーカー名、型名等であってもよい。次に、ユーザーが3Dプローブを保持してそれを下向きの姿勢にすると、イベント#2の発生が検知され、自動的に、S14において投影用イメージが表示されることになる。この場合においてはスキャンエリアに相当するイメージが表示され、それは生体当接膜を通じて生体表面上に投影されることになる。すなわち、ユーザはそのような表示を確認することによりスキャンエリアを視認することが可能である。そのようなイメージ表示はタイマーの作用によって一定時間のみ継続し、その後発光が停止される。次に、例えば姿勢センサの出力信号に基づいてプローブが上向きにされたと判定された場合、すなわちイベント#3が発生した場合には、S16において操作説明用のイメージが表示される。例えば「プローブをホルダに戻して下さい」といった表示がなされることになる。その後そのような表示はタイマーの作用によって一定時間継続した後(イベント#4)に終了する。あるいはイベント#4の発生が確認されると、再びS12に示したような機能説明のイメージが表示されることになる。
【0029】
このように装置の動作状況あるいはユーザによるプローブの使用状況に応じて表示内容を変化させることにより、プローブの使い勝手を良好にすることができ、また誤った操作等を防止できるという利点がある。さらに小児の超音波診断においてはプローブに動物の絵などを表示し小児に対する恐怖感を和らげるといった使い方も考えられる。またメンテナンス等の都合からイメージを表示させることも可能である。複数の3Dプローブが接続されている場合においては、アクティブとなっているプローブとそれ以外とでイメージ内容を異ならせればプローブの誤選択といった問題を未然に防止できる。
【符号の説明】
【0030】
10 3Dプローブ、12 装置本体、14 振動子ユニット、18 アレイ振動子、20 発光素子列、34 表示コントローラ、36 イメージメモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する部材で構成された生体当接膜を有するプローブケースと、前記プローブケース内において機械走査経路上で往復運動する振動子ユニットと、を備えた超音波プローブを備え、
前記振動子ユニットは前記機械走査経路と交差する方向に整列した発光素子列を有し、
前記発光素子列に対して、前記振動子ユニットの機械走査位置に応じて変化するライン表示信号を供給する表示信号生成部が設けられ、
前記振動子ユニットの往復運動に伴い、前記生体当接膜の外側に複数のライン表示が順番に現れ、これにより二次元残像を生じさせる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記振動子ユニットは、前記機械走査経路と直交する方向に整列した複数の振動素子からなるアレイ振動子を有し、
前記発光素子列を構成する各発光素子は前記アレイ振動子に隣接しつつ前記生体当接膜の内側に向けて設けられた、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、
前記表示信号生成部は複数のイメージデータを有する記憶部を有し、
前記各イメージデータは複数のラインデータにより構成され、
前記複数のイメージデータの中から選択された特定のイメージデータを構成する複数のラインデータに基づいて複数のライン表示信号が順番に生成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記表示信号生成部は当該超音波診断装置の動作状況に応じて表示対象となるイメージデータを選択する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記超音波プローブを上向き状態で保持するホルダを備え、
前記表示信号生成部は前記超音波プローブが前記ホルダによって上向き保持されている場合に前記表示対象となるイメージデータとしてユーザーへ提供する操作支援情報を有するイメージデータを選択する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置において、
前記表示信号生成部は、前記超音波プローブを生体へ当接する直前の状態において、前記表示対象となるイメージデータとして体表面上に投影する投影用イメージデータを選択する、ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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