説明

超音波診断装置

【課題】画像処理を施す領域を短時間で精度良く特定し、効果的な画像処理を行うことができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】自己相関処理を行って変調符号列を復号する整合フィルタと、整合フィルタよりサイドローブを抑制できる係数で変調符号列を復号する不整合フィルタと、整合フィルタが変調符号列を復号した出力と不整合フィルタが前記変調符号列を復号した出力との差分を算出しサイドローブを抽出する減算部と、画像構成部で生成された超音波画像に画像処理を行う画像処理部と、を有し、画像処理部は、減算部の出力に応じて画像処理を施す領域を特定することを特徴とする超音波診断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、被検体の画像をほぼリアルタイムでモニタに表示して観察でき、また、放射線を用いる画像診断装置のような放射線被爆を被検体に与えないことから安全性も高く、広く医療の分野で用いられている。
【0003】
超音波撮像装置の超音波探触子から生体に対して送波する超音波の波形は、その波形の長さが距離分解能を決めるので、できるだけ時間軸方向に短いパルス波を用いる方が良い。
【0004】
一方で、ノイズに対する信号の強度比であるS/N比を良くするには信号強度が大きい方が良いが、生体に与える影響を考慮して信号強度を一定値以下に制限する必要がある。
【0005】
そのため、時間軸方向に伸ばした符号化信号を送波し、被検体内で反射した信号を、受波し、電気信号に変換した後に、復号して時間軸方向に圧縮し、ピーク値の大きいパルス波形に戻す符号化送受信法が用いられている。
【0006】
符号としては、レーダー分野で広く知られたBarker符号やGolay符号等が用いられている。また、復号化フィルタとしては、自己相関処理を行う整合フィルタを用いることができる。
【0007】
しかしながら、整合フィルタでは、復号化させたパルス波形の、本来得るべきパルス波形の時間軸方向の前後に超音波エネルギーが残存し、サイドローブと呼ばれる不要信号が残ってしまうという問題がある。
【0008】
そのため、ピーク値をできるだけ保ちながらサイドローブを最小化するように最小自乗法を用いて係数が決定されている不整合フィルタを用いて、サイドローブを抑制する超音波診断装置が開示されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0009】
復号したパルスは検波後一つの画像に合成され、必要に応じて医師が注目領域を特定し診断しやすいように強調処理や認識処理などの画像処理を行った後、超音波診断装置のモニタに表示される。従来、強調処理や認識処理などの画像処理では、画像に含まれる高周波成分を基に輪郭を抽出し、画像処理を施す領域を特定する一般的な画像処理技術が用いられることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−309145号公報
【特許文献2】特開平11−309146号公報
【特許文献3】特開平11−309147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、超音波診断装置で取得される画像は画像データの特性上、スペックルのような微小点構造の重畳によって構成されており構造物とは異なるエッジ情報が多く含まれている。そのため、一般的な画像処理技術ではエッジや構造物だけの認識が難しい、という問題があった。
【0012】
また、一般的な画像処理技術では、画像処理を施す領域を特定するためにフィルタリング処理を行うので、画像表示までにフィルタリング処理ための時間が余分にかかり、画像表示のリアルタイム性が損なわれることがあった。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、画像処理を施す領域を短時間で精度良く特定し、効果的な画像処理を行うことができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明は以下のような特徴を有するものである。
【0015】
1.被検体に超音波を送波する超音波探触子と、前記超音波探触子を駆動するための変調符号列に対応した送信信号を出力する送信処理部と、前記超音波探触子が受信した受信信号を処理し前記変調符号列を復号する受信処理部と、前記受信処理部の出力する復号された信号を用いて超音波画像を生成する画像構成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、を備えた超音波診断装置であって、
自己相関処理を行って前記変調符号列を復号する整合フィルタと、
前記整合フィルタよりサイドローブの発生を抑制できる係数で前記変調符号列を復号する不整合フィルタと、
前記整合フィルタが前記変調符号列を復号した出力と前記不整合フィルタが前記変調符号列を復号した出力との差分を算出しサイドローブを抽出する減算部と、
前記画像構成部で生成された超音波画像に画像処理を行う画像処理部と、
を有し、
前記画像処理部は、
前記減算部で抽出されたサイドローブに応じて画像処理を施す領域を特定することを特徴とする超音波診断装置。
【0016】
2.前記画像処理部は、
前記抽出されたサイドローブのレベルを検出し、該レベルに基づいて画像処理を施す領域を特定することを特徴とする前記1に記載の超音波診断装置。
【0017】
3.前記抽出されたサイドローブと前記送信信号の変調符号列から予め想定されるサイドローブとの相関度を算出する相関信号生成部を有することを特徴とする前記1または2に記載の超音波診断装置。
【0018】
4.前記画像処理部は、
前記相関信号生成部の算出した前記相関度に基づいて画像処理を施す領域を特定することを特徴とする前記3に記載の超音波診断装置。
【0019】
5.前記画像処理部は、
前記相関度に応じて画像処理のレベルを変更することを特徴とする前記3または4に記載の超音波診断装置。
【0020】
6.前記送信処理部は、
前記変調符号列の符号化の次数を変えて送信できるように構成されていることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【0021】
7.前記画像処理部が施す画像処理は、
輪郭強調、ノイズ抑制、階調補正、および構造物検出の少なくとも一つであることを特徴とする前記1から6の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【0022】
8.前記変調符号列は、
Barker符号、Golay符号、Code符号、Chirp符号、およびM系列符号の何れかであることを特徴とする前記1から7の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、整合フィルタが受信変調符号列を復号した出力と不整合フィルタが受信変調符号列を復号した出力との差分を算出し、抽出したサイドローブに応じて、画像処理を施す領域を特定するとともに該領域に施す画像処理のレベルをそれぞれ設定する。
【0024】
したがって、画像処理を施す領域を短時間で精度良く特定し、効果的な画像処理を行うことができる超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態における送信処理部1の詳細な回路ブロック図である。
【図3】符号化の次数が13次のBarker符号を説明する図である。
【図4】受信信号の一例を説明する説明図である。
【図5】受信処理部3からレベル判定部43までの信号を説明する説明図である。
【図6】符号化の次数が2次のBarker符号の説明図である。
【図7】第2の実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図8】受信処理部3から相関信号生成部45までの信号を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0027】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図、図2は、実施形態における送信処理部1の詳細な回路ブロック図、図3は、符号化の次数が13のBarker符号を説明する図である。
【0028】
最初に図1、図2、図3を用いて超音波診断装置の構成の一例を説明する。
【0029】
超音波画像観察装置100は、超音波探触子2から図略の被検体である例えば妊婦の腹部に対して超音波(超音波信号)を送信し、被検体の内部から反射した超音波の反射波(エコー、超音波信号)から被検体内の胎児の状態を超音波画像として画像化し、表示部10に表示する。
【0030】
入力部13は、超音波画像観察装置100の電源を投入する電源スイッチや、例えばキーボード、タッチパネルなどの入力手段から構成されている。
【0031】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)と記憶部96等から構成され、記憶部96に記憶されているプログラムをRAM(Random Access Memory)に読み出し、当該プログラムに従って超音波画像観察装置100の各部を制御する。記憶部96は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等から構成される。
【0032】
超音波探触子2は、図示せぬ被検体に対して超音波を送波し、被検体で反射した超音波の反射波を受信する。超音波探触子2は、図1に示すように、送信処理部1、受信処理部3と電気的に接続されている。
【0033】
超音波探触子2は、送信処理部1から送信された送信信号によって超音波を送波する。
【0034】
図2、図3を用いて、本実施形態の送信処理部1を説明する。
【0035】
送信処理部1は、タイミング信号発生部25、符号選択部26、符号記憶部23、PSK変調部22、送波アンプ21を備える。
【0036】
タイミング信号発生部25は、制御部99の指令により送信処理部1の各部にタイミングクロックを供給する。
【0037】
符号選択部26は、制御部99の指令により符号記憶部23に格納されている符号化の次数が複数種類の変調符号のうち何れか一つを選択する。医師など操作者は、入力部13から操作することにより符号選択部26が選択する変調符号の種類を設定することができる。
【0038】
符号記憶部23には、符号化の次数が複数種類の変調符号が予め格納されている。変調符号は、例えば公知のBarker符号、Golay符号、Code符号、Chirp符号、M系列符号などの各次数(符号要素数)のものであり、これらのうち所定の変調符号が予め符号記憶部23に格納されている。図2のcodeで示す矢印は、符号記憶部23が出力する変調符号列を示している。
【0039】
図3は、符号記憶部23に格納される、変調符号の一例である。図3の例は、符号要素数L=13、すなわち符号化の次数が13次のBarker符号(+1、+1、+1、+1、+1、−1、−1、+1、+1、−1、+1、−1、+1)である。符号選択部26は、この変調符号が格納されている符号記憶部23のアドレスを指定し、所定の時間間隔Tで出力するよう制御する。
【0040】
PSK(Phase Shift Keying)変調部22は、符号記憶部23から出力された符号要素の係数+1または−1に応じて、一定周波数の搬送波の位相を変化させて変調する。すなわち、基本波形(位相0°)と、基本波形に対して180°位相をずらした波形を出力する。
【0041】
送波アンプ21は、PSK変調された信号を増幅し、超音波探触子2を駆動する。
【0042】
次に、本実施形態の受信処理について図1、図4、図5を用いて説明する。
【0043】
図4は、受信信号の一例を説明する説明図、図5は、受信処理部3からレベル判定部43までの信号を説明する説明図である。
【0044】
図4(a)は、超音波診断装置100による撮影の対象である被検体の内部を模式的示す図である。図中、黒く丸い部分は模式的に図示した注目領域65であり、例えば癌、嚢胞、腫瘍などの疾患や、肝臓、胆嚢、腎臓、血管などに相当する。また、灰色で示す部分は、注目領域65以外の背景66である。
【0045】
図4(a)のDで示す矢印は体表からの深さ方向の距離を表している。
【0046】
送波アンプ21の駆動により超音波探触子2から送波した超音波は、被検体に送波され、被検体内部を伝播し、その途中にある音響インピーダンスの不連続面で反射し、エコーとして超音波探触子2に返ってくる。
【0047】
図4(a)のSで示す点は、超音波が反射する最も浅い位置であり、Eで示す点は、超音波が反射する最も深い位置を示している。
【0048】
図4(b)は、図4(a)のSからEまでの間の超音波を反射する強度を表すプロファイルを簡易なモデルで示している。図4(b)の横軸は体表からの深さ方向の距離であり、縦軸は反射強度である。図4(b)は、Sから注目領域65に到達する深さまでの間と、注目領域65より深いEまでの間とは反射強度が大きい一定の値であり、注目領域65に相当する区間は反射強度が小さい一定の値であることを示している。
【0049】
超音波を被検体に向けて送波した後、超音波探触子2に返ってきたエコーは、超音波探触子に配列された図示せぬ圧電素子を機械的に振動させ、微弱な受信信号を発生させる。
【0050】
受信回路31は、受信信号を受信して所定の信号レベルに増幅する。増幅された信号は、A/D変換器32によりデジタル値に変換される。
【0051】
図4(c)は、受信信号のプロファイルを模式的に示す説明図である。図4(c)の横軸は時間軸、縦軸Eは信号レベルである。被検体内に走波された超音波は符号化によって変調されているため、その反射波もしくは散乱波も符号化変調され図4(c)のようになっている。
【0052】
図4(c)のようなA/D変換器32の出力データは、不整合フィルタ38と整合フィルタ39にそれぞれ入力され、受信信号の復号化処理が行われる。
【0053】
不整合フィルタ38、整合フィルタ39は、FIRフィルタ等により構成され、送信処理部1の生成した変調符号に対応する復号符号の符号係数を予め保持している。
【0054】
例えば、送信処理部1の生成した変調符号がBarker符号の場合であれば、超音波送信時に制御部99から、Barker符号の係数を時間軸について反転させた整合フィルタ係数が整合フィルタ39に設定される。また、制御部99から不整合フィルタ38には、ピーク値をできるだけ保ちながらサイドローブを最小化するように決定された係数の大きさが1ではない不整合フィルタ係数が設定される。
【0055】
整合フィルタ39は、受信した信号の値と整合フィルタ係数との積和演算により自己相関処理を行って復号し、不整合フィルタ38は、受信した信号の値と不整合フィルタ係数との積和演算を行って復号する。
【0056】
図5(a)は、整合フィルタ39により復号した信号の信号レベルを示す図、図5(b)は、不整合フィルタ38により復号した信号の信号レベルを示す図である。図5に示す各図の横軸は時間軸であり、縦軸Eは信号レベルを表す。
【0057】
整合フィルタ39により復号した信号には、図5(a)のように超音波が注目領域65の反射強度が大きい部分で反射した信号レベルが大きい区間にはサイドローブ60a、60dが、注目領域65の反射強度の小さい部分で反射した信号レベルが小さい区間にはサイドローブ60b、60cが残っている。
【0058】
一方、不整合フィルタ38により復号した信号は、図5(b)のようにサイドローブ60が十分抑制され、ほとんどサイドローブの無い信号が復号されている。
【0059】
Bモード画像構成部42は、不整合フィルタ38で復号されたほとんどサイドローブの無い信号に基づいて2次元の超音波画像(Bモード画像)を生成する。
【0060】
減算部41は、整合フィルタ39が変調符号列を復号した出力と不整合フィルタ38が変調符号列を復号した出力との差分を算出し、サイドローブを抽出する。整合フィルタ39が変調符号列を復号した出力には図5(a)のようにサイドローブ60が含まれているのに対し、不整合フィルタ38が変調符号列を復号した出力には図5(b)のようにサイドローブがほとんど含まれていない。そのため、減算部41で差分を算出すると出力は図5(c)のようにサイドローブ60a、60b、60c、60dだけを含む信号になる。図5(c)のサイドローブ60a、60b、60c、60dは抽出されたサイドローブである。
【0061】
レベル判定部43は、減算部41の出力する差分信号を例えば平均化処理や検波処理を行った後、所定のレベルと比較して判定結果を出力する。図5(d)は、レベル判定部43の判定出力を示している。
【0062】
図5(d)のように、サイドローブ60aの立ち上がりのtのタイミングでレベル判定部43の判定出力は‘H’になり、サイドローブ60aの立ち下がりのtのタイミングでレベル判定部43の判定出力は‘L’になっている。次の、サイドローブ60bの立ち上がりのtのタイミングでレベル判定部43の判定出力は‘H’になり、サイドローブ60bの立ち下がりのtのタイミングでレベル判定部43の判定出力は‘L’になっている。
【0063】
とtの間のサイドローブの無い期間は背景66と注目領域65との境界領域であり、レベル判定部43の判定出力は‘L’になっている。サイドローブ60c、60dについても同様に、tとtの間のサイドローブの無い期間は背景66と注目領域65との境界領域であり、レベル判定部43の判定出力は‘L’になっている。
【0064】
画像処理部44は、画像メモリやCPUなどを有し、制御部99の指令により、Bモード画像構成部42で生成されたBモード画像に画像処理を施す。画像処理は、例えば、公知の輪郭強調、ノイズ抑制、階調補正、構造物検出などである。
【0065】
医師など操作者は、注目領域65を診断しやすくなるように入力部13から適切な画像処理を選択し、制御部99は画像処理部44に指令して画像処理を行った画像を表示部10に表示させる。
【0066】
画像処理部44は、レベル判定部43の判定出力から注目領域65の境界を求め、画像処理を施す領域を特定する。例えば、レベル判定部43の判定出力が‘H’の期間がtとtの間のように所定時間以上続いた後、tのタイミングで‘L’になり、tのタイミングのように所定の時間以内に‘H’になると、画像処理部44は背景66と注目領域65との境界と判定する。また、同様の手順で、画像処理部44はtのタイミングをもう一方の背景66と注目領域65との境界と判定する。
【0067】
このようにして、画像処理部44は注目領域65の領域を抽出し、その領域に輪郭強調、ノイズ抑制、階調補正などの画像処理を行ったり、抽出した領域から構造物検出を行う。
【0068】
画像処理部44で画像処理された画像は、デジタルスキャンコンバータ(DSC)9によってビデオ信号に変換され、表示部10に表示される。
【0069】
このように、減算部41が整合フィルタ39の出力と不整合フィルタ38の出力の差分から抽出したサイドローブに応じて画像処理を施す領域を特定するので雑音に強く、従来検出が難しかったエッジや構造物も精度良く検出することができる。また、整合フィルタ39の演算と不整合フィルタ38の演算は同時に並行して行われ、画像表示までの時間を短時間で行うことができるので画像表示のリアルタイム性を損なうことがない。
【0070】
なお、図3では送信処理部1の出力する変調符号の一例として符号化の次数が13のBarker符号を説明したが、特にこの次数に限られるものではない。
【0071】
符号化の次数を大きな値にすると不整合フィルタ38を通過後のサイドローブ60がより低減されるのでBモード画像の画質は向上するが、減算部41から出力されるサイドローブ60の信号レベルは小さくなってしまう。
【0072】
そのため、大きなサイドローブが発生するコントラストが大きい検出対象の場合は符号化の次数を大きくし、サイドローブがほとんど発生しないコントラストが小さい検出対象の場合は符号化の次数を小さくすることが好ましい。
【0073】
例えば、操作者は、入力部13の操作で注目領域65と背景66のコントラストが大きい場合(例えば、石灰化病変)は、符号化の次数が13次のBarker符号を、注目領域65と背景66のコントラストが小さい場合(例えば、腫瘤のような淡い病変)は2次のBarker符号に設定すれば良い。図6は、符号化の次数が2次のBarker符号の説明図である。
【0074】
このようにすると、検出対象のコントラストが小さい場合も減算部41から画像処理を施す領域を特定可能なレベルのサイドローブ出力が得られるとともに、検出対象のコントラストが大きい場合もサイドローブが抑制された高画質なBモード画像が得られる。
【0075】
次に、第2の実施形態について図7、図8を用いて説明する。
【0076】
図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図、図8は、受信処理部3から相関信号生成部45までの信号を説明する説明図である。
【0077】
図1で説明した第1の実施形態のブロック図と図7に示す本実施形態との違いは、減算部41の後にレベル判定部43に代えて相関信号生成部45を設けている点である。その他の構成要素は第1の実施形態と同じであり説明を省略する。
【0078】
相関信号生成部45は、送信処理部1の生成した変調符号から発生が想定されるサイドローブの値を予め求めて格納している。相関信号生成部45は、減算部41から実際に出力されたサイドローブの値と格納している想定されるサイドローブの値との自己相関処理を行って相関度を算出し、相関度を出力する。
【0079】
図8を用いて本実施形態の受信処理部3から相関信号生成部45までの信号処理を説明する。なお、図4と同じ受信信号が受信処理部3に入力されるものとする。また、図8に示す各図の横軸は時間軸であり、縦軸Eは信号レベルを表す。
【0080】
整合フィルタ39により復号した信号には、図8(a)のように超音波が注目領域65の反射強度が大きい部分で反射した信号レベルが大きい区間にはサイドローブ60a、60dが、注目領域65の反射強度の小さい部分で反射した信号レベルが小さい区間にはサイドローブ60b、60cが残っている。
【0081】
一方、不整合フィルタ38により復号した信号は、図8(b)のようにサイドローブ60が十分抑制され、本来の信号だけが復号されている。
【0082】
Bモード画像構成部42は、不整合フィルタ38で復号された信号に基づいて2次元の超音波画像(Bモード画像)を生成する。
【0083】
減算部41は、整合フィルタ39が変調符号列を復号した出力と不整合フィルタ38が変調符号列を復号した出力との差分を算出する。減算部41で差分を算出すると出力は図8(c)のようにサイドローブ60a、60b、60c、60dだけを含む信号になる。図8(c)のサイドローブ60a、60b、60c、60dは抽出されたサイドローブである。
【0084】
図8(d)は相関信号生成部45の出力する相関度の信号レベルの変化を説明する図である。図8(d)のように、相関度の信号レベルは、図8(a)、(b)の信号レベルの立ち下がり部と立ち上がり部、すなわち注目領域65と背景66との境界でピーク値Eを示す。したがって、相関信号生成部45の相関度のピークのタイミングt、tを求めれば注目領域65と背景66との境界を精度良く求めることができる。
【0085】
画像処理部44は、相関信号生成部45の出力する相関度がピークを示すタイミングt、tから注目領域65の境界を求め、画像処理を施す領域を特定する。画像処理を施す領域を特定した後、画像処理部44は、画像処理部44に記憶されているBモード画像から注目領域65の領域を抽出し、その領域に輪郭強調、ノイズ抑制、階調補正などの画像処理や、抽出した領域から構造物検出を行う。
【0086】
また、相関度は、図8(d)のように、注目領域65と背景66との境界に近づくにつれて増加して境界でピーク値Eを示し、境界から離れると減少する。この特性を利用して相関度に応じて画像処理のレベルを変更するようにしても良い。
【0087】
例えば、画像処理部44が図示せぬ内部の画像メモリに記憶されている画像にローパスフィルタによる処理を行って高周波成分を除去し、ノイズ抑制の処理を行う場合について説明する。このような場合、画像処理部44は、相関度の信号レベルが小さい領域ではローパスフィルタのカットオフ周波数を下げ、相関度の信号レベルが大きい領域ではローパスフィルタのカットオフ周波数を上げるようにする。
【0088】
すると、境界部の情報が多く含まれる相関度の大きい領域ではローパスフィルタのカットオフ周波数が高いので境界部の高周波成分を多く残すとともに、境界部ではない相関度の小さい領域ではローパスフィルタのカットオフ周波数が低いのでノイズを低減することができる。このようにして、多くの境界部の情報を残しながらノイズ低減を図ることができる。
【0089】
なお、第2の実施形態では相関信号生成部45だけを備える例を説明したが、レベル判定部43を併設し、画像処理部44で相関信号生成部45の出力とレベル判定部43の出力の両方を用いて境界の判定を行っても良い。また、画像処理の種類に応じて何れかの出力を用いて画像処理を行うようにしても良い。
【0090】
以上このように、本発明によれば、画像処理を施す領域を短時間で精度良く特定し、効果的な画像処理を行うことができる超音波診断装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 送信処理部
2 超音波探触子
3 受信処理部
9 デジタルスキャンコンバータ
10 表示部
13 入力部
31 受信回路
32 A/D変換器
38 不整合フィルタ
39 整合フィルタ
41 減算部
42 Bモード画像構成部
43 レベル判定部
44 画像処理部
45 相関信号生成部
60 サイドローブ
65 注目領域
66 背景
96 記憶部
98 CPU
99 制御部
100 超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送波する超音波探触子と、前記超音波探触子を駆動するための変調符号列に対応した送信信号を出力する送信処理部と、前記超音波探触子が受信した受信信号を処理し前記変調符号列を復号する受信処理部と、前記受信処理部の出力する復号された信号を用いて超音波画像を生成する画像構成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、を備えた超音波診断装置であって、
自己相関処理を行って前記変調符号列を復号する整合フィルタと、
前記整合フィルタよりサイドローブの発生を抑制できる係数で前記変調符号列を復号する不整合フィルタと、
前記整合フィルタが前記変調符号列を復号した出力と前記不整合フィルタが前記変調符号列を復号した出力との差分を算出しサイドローブを抽出する減算部と、
前記画像構成部で生成された超音波画像に画像処理を行う画像処理部と、
を有し、
前記画像処理部は、
前記減算部で抽出されたサイドローブに応じて画像処理を施す領域を特定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、
前記抽出されたサイドローブのレベルを検出し、該レベルに基づいて画像処理を施す領域を特定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記抽出されたサイドローブと前記送信信号の変調符号列から予め想定されるサイドローブとの相関度を算出する相関信号生成部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、
前記相関信号生成部の算出した前記相関度に基づいて画像処理を施す領域を特定することを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、
前記相関度に応じて画像処理のレベルを変更することを特徴とする請求項3または4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記送信処理部は、
前記変調符号列の符号化の次数を変えて送信できるように構成されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記画像処理部が施す画像処理は、
輪郭強調、ノイズ抑制、階調補正、および構造物検出の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記変調符号列は、
Barker符号、Golay符号、Code符号、Chirp符号、およびM系列符号の何れかであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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