説明

超音波診断装置

【課題】超音波プローブの集積回路基板等が発する熱に対して、安定した超音波診断を可能にする超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブにおいて異なる方向に超音波の送受信を行い、診断装置本体において送受信方向の異なる複数の画像を合成して1つの超音波画像とする際に、超音波プローブの温度を測定して、この温度測定結果に応じて、合成する超音波画像の深度を調整することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、超音波プローブの発熱を抑制することができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。
一般に、この種の超音波診断装置は、超音波プローブ(超音波探触子 以下、プローブとする)と、診断装置本体とを有しており、プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーをプローブで受信して、その受信信号を診断装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置において、超音波画像の画質を劣化させる要因として、いわゆるスペックル(スペックルノイズ/スペックルパターン)が知られている。スペックルとは、被検体内に存在する超音波の波長より小さな無数の散乱源によって、散乱波が生じ、この散乱波が互いに干渉することによって生じる、白い点状のノイズである。
【0004】
超音波診断装置において、このようなスペックルを低減させる方法として、特許文献1や特許文献2に開示されるような、空間コンパウンドが知られている。
空間コンパウンドとは、図11に概念的に示すように、圧電素子ユニット100から、被検体に対して方向(走査角度)が互いに異なる複数種類(複数方向)の超音波の送受信を行い、この複数種類の送受信によって得られた複数の超音波画像を合成することにより、1つの合成超音波画像を生成する技術である。
【0005】
具体的には、図11に示す例においては、通常の超音波画像の生成と同様の超音波の送受信(通常の送受信)、通常に対して角度をθ傾けた方向の超音波の送受信、および、通常に対して角度を−θ傾けた方向の超音波の送受信の、3種類(3方向)の超音波の送受信を行なう。
この通常の送受信で得られた超音波画像A(実線)、角度をθ傾けた送受信で得られた超音波画像B(破線)、および、角度を−θ傾けた送受信で得られた超音波画像C(一点鎖線)を合成することで、実線で示す超音波画像Aの領域の合成超音波画像を生成する。
【0006】
ところで、このような超音波診断装置を構成するプローブは、被検体に超音波を送信し、かつ、被検体によって反射された超音波エコーを受信して、電気信号(受信信号)として出力する圧電素子ユニットを有する。
また、近年では、プローブは、圧電素子ユニットが出力した受信信号の増幅、A/D変換や処理、圧電素子ユニットにおける超音波の送受信のタイミングの切り換え、さらには、診断装置本体との無線通信によるコードレス化やノイズ低減等を行なうための、集積回路基板等を搭載する場合も有る。
【0007】
周知のように、圧電素子ユニットは、超音波の送受信を行なうことにより発熱する。また、圧電素子ユニットが送信する超音波の出力が高くなるほど、高画質な超音波画像が得られるが、その反面、圧電素子ユニットの発熱量も多くなる。
また、集積回路基板も、受信信号の処理等を行なうことによって発熱する。
【0008】
プローブが発熱すると、圧線素子ユニットの駆動が不安定になり、また、集積回路基板の各回路の動作も不安定になる。その結果、送信する超音波や、受信した超音波に対する出力信号が不安定になり、さらに、集積回路基板における信号処理も不安定になり、超音波画像の画質が低下してしまう。
そのため、高画質な超音波画像を安定して得るためには、超音波診断装置では、プローブ内部での温度上昇を、できるだけ抑制する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−58321号公報
【特許文献2】特開2003−70786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、空間コンパウンドによる超音波画像(合成超音波画像)の生成を行なう際に、超音波プローブ内で温度上昇を抑制すると共に、温度上昇が生じても、超音波画像の画質劣化を最小限に抑えることができる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の超音波診断装置は、超音波を送信し、被検体によって反射された超音波エコーを受信して受信した超音波に応じた受信信号を出力する圧電素子ユニット、前記圧電素子ユニットによる超音波の送信を制御する送信制御手段、前記圧電素子ユニットが出力した受信信号の処理を行なう信号処理手段、および、所定位置の温度を測定する温度測定手段を有する超音波プローブと、前記超音波プローブの信号処理手段が処理した受信信号に応じた超音波画像を生成する診断装置本体とを有し、前記診断装置本体は、所定数の前記超音波画像を合成して1つの合成超音波画像を生成する機能を有し、また、前記超音波プローブは、前記診断装置本体が合成超音波画像の生成を行なうために、超音波の送受信方向が互いに異なる前記所定数と同数の複数種類の超音波の送受信を行なう機能を有し、かつ、前記超音波プローブは、前記診断装置本体が合成超音波画像の生成を行なう際には、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、前記診断装置本体が合成する超音波画像の深度を変更するように、前記信号処理手段が処理する受信信号の深度を調整することを特徴とする超音波診断装置を提供する。
【0012】
このような本発明の超音波診断装置において、前記温度測定手段は、前記信号処理手段の温度を測定するのが好ましい。
また、温度の閾値として、温度T1と、この温度T1よりも高温の温度T2とが設定されており、さらに、前記信号処理手段が処理する受信信号の深度として、所定深度まで受信信号を処理する通常深度、受信信号の処理深度が最も浅い短深度、および前記所定深度と短深度との間の深度まで受信信号を処理する中間深度が設定されているのが好ましい。
【0013】
また、前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、この温度測定結果が前記温度T1未満である場合には、前記複数種類の超音波送受信における受信信号処理の全てを、前記通常深度で行なうのが好ましい。
また、前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、この温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、この温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記短深度で受信信号処理を行うのが好ましい。
もしくは、前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、この温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、この温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、時間的に連続する前記合成超音波画像において、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記短深度で受信信号処理を行う処理と、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行う処理とを、交互に行なうのが好ましい。
【0014】
また、前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、前記複数種類の超音波送受信の少なくとも1種類で、前記中間深度で受信信号処理を行い、他の少なくとも1種類で、前記短深度で受信信号処理を行うのが好ましい。
また、前記温度測定結果が前記温度T2以上の場合に、時間的に連続する前記合成超音波画像において、前記中間深度で受信信号処理を行なう超音波画像と、前記短深度で受信信号処理を行なう超音波画像とが異なるのが好ましい。
【0015】
また、前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記複数種類の超音波送受信のうちの1回で、前記合成超音波画像として出力する全域を包含する超音波画像が得られる主画像の超音波の送受信を行い、かつ、この主画像の超音波の送受信で得られる受信信号の処理は、前記通常深度で行なうのが好ましい。
【0016】
また、前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、この温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2以上で、前記短深度で受信信号処理を行い、それ以外の全ての種類の超音波の送受信で、前記中間深度で受信信号処理を行なうのが好ましい。
【0017】
さらに、前記超音波プローブは、時間的に連続する前記合成超音波画像において、最も近接する超音波画像の超音波送受信方向を等しくするのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成を有する本発明の超音波診断装置は、超音波の送受信方向が異なる複数画像を合成する空間コンパウンドを行なう際に、超音波プローブ内の温度上昇が生じたら、その温度上昇に応じて、処理する受信信号の深度を調整して、空間コンパウンドにおいて合成する超音波画像の深度を浅くする。
そのため、本発明においては、空間コンパウンドを行なう際には、超音波プローブ内の温度に応じて、超音波プローブに搭載され、受信信号を処理するAFEなどの集積回路の駆動時間を短縮できる。従って、超音波プローブ内で発熱が生じた際に、この温度上昇を迅速に抑制することができる。また、超音波プローブが発熱した際にも、発熱を抑制して、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
従って、本発明の超音波診断装置によれば、空間コンパウンドによって、高画質な超音波画像を、安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の超音波診断装置を概念的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置で行なう空間コンパウンドを説明するための概念図である。
【図3】本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドでの受信信号処理を説明するための概念図である。
【図4】(A)〜(C)は、本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドでの受信信号処理を説明するための概念図である。
【図5】(A)〜(C)は、本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドの別の例を説明するための概念図である。
【図6】(A)〜(E)は、本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドの別の例を説明するための概念図である。
【図7】(A)〜(C)は、本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドの別の例を説明するための概念図である。
【図8】(A)〜(E)は、本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドの別の例を説明するための概念図である。
【図9】(A)〜(C)は、本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドの別の例を説明するための概念図である。
【図10】(A)〜(C)は、本発明の超音波診断装置で行なう空間コンパウンドの別の例を説明するための概念図である。
【図11】空間コンパウンドを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の超音波診断装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0021】
図1に、本発明の超音波診断装置の一例をブロック図で概念的に示す。
図1に示す超音波診断装置10は、超音波プローブ(超音波探触子)12と、この超音波プローブ12と無線通信で接続される診断装置本体14とを有して構成される。
【0022】
超音波プローブ12(以下、プローブ12とする)は、被検体に超音波を送信して、被検体によって反射された超音波エコーを受信し、受信した超音波エコーに応じた超音波画像の受信信号を出力するものである。
なお、本発明において、プローブ12の種類には、特に限定はなく、コンベックス型、リニア型、セクタ型等の各種の形式が利用可能である。また、体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。さらに、プローブ12は、ハーモニックイメージングに対応する、送信した超音波の二次以上の高調波を受信するための超音波振動子を有するものであってもよい。
【0023】
プローブ12は、超音波の送受信を行なう(超音波)トランスデューサ18を、一次元的もしくは二次元的に配列してなる圧電素子ユニット16を有する。また、圧電素子ユニット18には、個別信号処理部20aを有する信号処理部20が接続される。
個別信号処理部20aは、圧電素子ユニット16のトランスデューサ18の個々に対応して接続される。また、個別信号処理部20aには、パラレル/シリアル変換部24を介して無線通信部26が接続されている。さらに、無線通信部26には、アンテナ28が接続される。
また、各トランスデューサ18には、送信駆動部30を介して送信制御部32が接続され、各個別信号処理部20aは受信制御部34が接続され、無線通信部26に通信制御部36が接続されている。そして、パラレル/シリアル変換部24、送信制御部32、受信制御部34および通信制御部36に、プローブ制御部38が接続されている。
さらに、本発明の超音波診断装置では、プローブ12に、信号処理部20の温度を測定する温度測定手段42が設けられる。温度測定手段42による温度測定結果は、受信制御部34に供給される。
【0024】
なお、プローブ12には、図示を省略するバッテリが内蔵されており、このバッテリから、各部位に駆動のための電力が供給される。
【0025】
圧電素子ユニット16は、超音波を被検体に送信し、被検体に反射された超音波エコーを受信して、受信した超音波エコーに応じた電気信号(超音波エコーの受信信号)を出力するトランスデューサ18を一次元的もしくは二次元的に配列して、バッキング層、音響整合層および音響レンズを積層してなる、公知のものである。
【0026】
トランスデューサ18は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)やPVDF(ポリフッ化ビニリデン)等からなる圧電体の両端に電極を形成した超音波振動子である。
超音波振動子の電極に、パルス状の電圧(または連続波の電圧)を印加すると、圧電体が伸縮して、それぞれの振動子からパルス状の超音波(または連続波の超音波)が発生して、それぞれの超音波の合成により、超音波ビームが形成される。
また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、この電気信号が超音波の受信信号として出力される。
【0027】
トランスデューサ18は、送信駆動部30から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、電気信号(受信信号)に変換して個別信号処理部20aに出力する。
送信駆動部30は、デシタル/アナログコンバータ、ローパスフィルタ、アンプ、パルサ等を有して構成され、パルス状の駆動電圧(送信パルス)を各トランスデューサ18(超音波振動子の電極)に供給することにより、超音波振動子を振動させて、超音波を送信させる。
また、送信駆動部30は、送信制御部32によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ18から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、それぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ18に供給する。
【0028】
圧電素子ユニット16の各トランスデューサ18には、信号処理部20の個別信号処理部20aが接続される。
個別信号処理部20aは、LNA(Low-Noise Amplifier)、VCA(Voltage-Controlled Attenuator)、PGA(Programmable Gain Amplifier)、ローパスフィルタ、アナログ/デシタルコンバータ等からなるAFE(Analog Front End)を有する。個別信号処理部20aは、受信制御部34の制御の下、対応するトランスデューサ18から出力される受信信号をAFEで処理して、デジタルの受信信号に変換する。さらに、個別信号処理部20aでは、AFEで生成したデジタルの受信信号に、直交検波処理または直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成して、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部24に供給する。
パラレル/シリアル変換部24は、複数チャンネルの個別信号処理部20aによって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0029】
プローブ12には、信号処理部20(受信信号処理回路部)の温度を測定する温度測定手段42が設けられる。温度測定手段42による信号処理部20の温度測定結果は、受信制御部34に送られる。
温度測定手段42には、特に限定はなく、公知の温度測定手段が利用可能である。
また、温度測定手段42による温度の測定対象は、信号処理部20に限定はされず、プローブ12の内部であればよい。しかしながら、プローブ12内において、最も発熱が大きいのは、トランスデューサ18が出力した受信信号を処理する信号処理部20(特にAFE)である。そのため、温度測定手段42が温度を測定するのは、信号処理部20とするのが好ましい。
【0030】
ここで、超音波診断装置10は、互いに方向が異なる超音波の送受信によって得られた複数の超音波画像を合成して、合成超音波画像を生成する、空間コンパウンドを行なう機能を有している。一例として、超音波診断装置10は、空間コンパウンドにおいて3つの超音波画像を合成する。これに応じて、受信制御部34および送信制御部32は、空間コンパウンドを行なう際には、前記合成する超音波画像の数に応じた、互いに送受信の方向が異なる、3種類(3方向)の超音波の送受信を行なうように、送信駆動部30および各個別信号処理部20aの駆動を制御する。
また、受信制御部34は、空間コンパウンドを行なう際には、温度測定手段42が測定した信号処理部20の温度に応じて、信号処理部20で処理する受信信号の深度を調整して、空間コンパウンドで合成する超音波画像の深度を変更する。この点に関しては、後に詳述する。
【0031】
無線通信部26は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナ28に供給してアンテナ28から電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。
変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部26は、診断装置本体14との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部36に出力する。通信制御部36は、プローブ制御部38によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部26を制御すると共に、無線通信部26が受信した各種の制御信号をプローブ制御部38に出力する。
【0032】
無線通信部26は、アンテナ28によって、診断装置本体14との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部36に出力する。
通信制御部36は、プローブ制御部38によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部26を制御すると共に、無線通信部26が受信した各種の制御信号をプローブ制御部38に出力する。
【0033】
プローブ制御部38は、診断装置本体14から送信される各種の制御信号に基づいて、プローブ12の各部の制御を行う。
【0034】
前述のように、本発明の超音波診断装置10は、空間コンパウンドによる画像(合成超音波画像)を生成する機能を有する。
周知のように、空間コンパウンドとは、被検体に対して、超音波の送受信の方向(走査角度/走査方向)が互いに異なる、複数種類(複数方向)の超音波の送受信(以下、「送受信とする」)を行い、この複数種類の送受信によって得られた複数の超音波画像を合成することにより、1つの合成超音波画像を生成する技術である。このような空間コンパウンドを行なうことで、超音波画像において、スペックルを低減することができる。
【0035】
図示例の超音波診断装置10において、空間コンパウンドを行なう際には、図2に概念的に示すように、プローブ12は、基本的に、通常の超音波画像を得る場合と同様の送受信(主画像を得るための超音波の送受信 以下、通常の送受信とする)、通常の送受信に対して、送受信の方向を角度θ傾けた送受信(角度θ偏向した送受信)、および、通常の送受信に対して、送受信の方向を角度−θ傾けた送受信の、3種類の送受信を行なう。
すなわち、図示例においては、空間コンパウンドを行なう際には、この3種類の送受信を、1つの合成超音波画像を得るための1つのフレーム(単位)として、フレームレートを変更することなく、この1フレームの送受信を繰り返し行なう(図5参照)。
【0036】
また、診断装置本体14(後述する画像合成部80)は、通常の送受信で得られた超音波画像A(実線)、通常の送受信に対して、角度をθ傾けた送受信で得られた超音波画像B(破線)、および、角度を−θ傾けた送受信で得られた超音波画像C(一点鎖線)の、3つの超音波画像を合成して、超音波画像Aの領域の合成超音波画像を生成する。
従って、図示例においては、空間コンパウンドで合成する超音波画像の数(所定数)は、3となる。
【0037】
なお、本発明において、空間コンパウンドによって合成する超音波画像の所定数は、3に限定はされず、2でもよく、あるいは、4以上であってもよい。
また、このような方向が異なる(超音波)送受信の方法は、図2に概念的に示すような、超音波送受信の遅延による方法に限定はされず、例えば前記特許文献1や特許文献2に記載される方法など、公知の方法が、各種、利用可能である。
さらに、図示例では、リニア型を例に説明をしているが、本発明は、コンベックス型やセクタ型等の各種の形式のプローブに利用可能であるのは、前述のとおりである。
【0038】
ここで、前述のように、プローブ12には、信号処理部20の温度を測定する、温度測定手段42が配置されており、その温度測定結果が受信制御部34に供給される。
また、プローブ12(受信制御部34)には、温度の閾値として、第1の温度であるT1[℃]と、このT1よりも高温の第2の温度であるT2[℃]とが設定されている。なお、本発明の超音波診断装置10においては、T1<T2の関係が保たれていれば、このT1およびT2は、固定でもよく、あるいは、可変としてもよい。
【0039】
前述のように、超音波診断装置10においては、空間コンパウンドを行なう際には、温度測定手段42による温度測定結果に応じて、超音波の送受信における個別信号処理部20aでの受信信号の処理の深度を変更する。
図示例においては、図3に概念的に示すように、プローブ12(受信制御部34)には、空間コンパウンドで合成する各超音波画像を得るための超音波の送受信における、個別信号処理部20aでの受信信号の処理の深度(超音波送受信方向の深度)として、3種の深度が設定されている。
すなわち、空間コンパウンドで合成する超音波画像は、3種の深度の超音波画像が設定されている。言い換えれば、空間コンパウンドで合成する超音波画像は、深度方向にサイズが異なる3種の超音波画像が設定されている。
【0040】
1つ目は、空間コンパウンドで生成する合成超音波画像と同じ深度である深度L1(通常深度)までの受信信号の処理で、所定深度(深度方向に所定のサイズ)の超音波画像が生成される。
2つ目は、空間コンパウンドで合成する最も浅い深度である深度L3(短深度)までの受信信号の処理で、最も浅い深度(深度方向に最短サイズ)の超音波画像が生成される。
3つ目は、深度L1と深度L3との間の深度である深度L2(中間深度)までの受信信号の処理で、中間の深度(深度方向に中間サイズ)の超音波画像が生成される。
【0041】
図示例において、受信信号の処理深度の調整(超音波画像の深度の調整)は、信号処理部20の個別信号処理部20a(そのAFE)の駆動のon/offによって行なう。
すなわち、個別信号処理部20aにおいて、深度L1まで受信信号を処理する場合には、図4(A)に概念的に示すように、送信パルスのonと同時に個別信号処理部20aの駆動もonして、深度L1(合成超音波画像に対応する深度)に対応する時間となったら、個別信号処理部20aの駆動をoffする。
また、個別信号処理部20aにおいて、深度L2まで受信信号を処理する場合には、図4(B)に概念的に示すように、送信パルスのonと同時に個別信号処理部20aの駆動もonして、深度L1よりも短い深度L2に対応する時間となったら、個別信号処理部20aの駆動をoffする。
さらに、個別信号処理部20aにおいて、深度L3まで受信信号を処理する場合には、図4(C)に概念的に示すように、送信パルスのonと同時に個別信号処理部20aの駆動もonして、深度L2よりも短い、最短の深度L3に対応する時間となったら、個別信号処理部20aの駆動をoffする。
【0042】
前述のように、図示例の超音波診断装置10においては、図3および図5に概念的に示すように、空間コンパウンドを行なう際には、互いに超音波の送受信方向が異なる、3種類(3画像分)の超音波の送受信を、1つの合成超音波画像を得るための1つのフレーム(単位)として、この1フレームの送受信を繰り返し行なう。
【0043】
一例として、図3および図5に示すように、送信制御部32および受信制御部34は、まず、超音波画像Aを得るための通常の送受信を行なうように、送信駆動部30および各個別信号処理部20aの駆動を制御する。以下、便宜的に、この通常の送受信を「画像Aの送受信」とする。
次いで、送信制御部32および受信制御部34は、超音波画像Bを得るための、通常の送受信に対して、角度をθ傾けた方向の送受信を行なうように、送信駆動部30および各個別信号処理部20aの駆動を制御する。以下、便宜的に、この角度をθ傾けた送受信を「画像Bの送受信」とする。
さらに、送信制御部32および受信制御部34は、超音波画像Cを得るための、通常の送受信に対して、角度を−θ傾けた方向の送受信をを行なうように、送信駆動部30および各個別信号処理部20aの駆動を制御する。以下、便宜的に、この角度を−θ傾けた送受信を「画像Cの送受信」とする。
【0044】
ここで、図5においては、深度L1(通常深度)までの受信信号処理を白抜きで、深度L2(中間深度)までの受信信号処理を粗いハッチ(斜線)で、深度L3(短深度)までの受信信号処理を密なハッチで、それぞれ示す。
【0045】
超音波診断装置10のプローブ12は、空間コンパウンドを行なう際に、温度測定手段42による温度測定結果がT1未満の場合には、受信制御部34は、図5(A)に示すように、1つのフレームにおいて、画像Aの送受信、画像Bの送受信、および画像Cの送受信における全ての受信信号処理を深度L1まで行なうように、個別信号処理部20aの駆動を制御する。
温度測定手段42による温度測定結果がT1未満の場合とは、すなわち、プローブ12(信号処理部20)の温度が定常状態である場合である。
【0046】
また、温度測定手段42による温度測定結果がT1以上T2未満の場合には、受信制御部34は、図5(B)に示すように、1つのフレームにおいて、画像Aの送受信における受信信号処理を深度L1まで行い、画像Bおよび画像Cの送受信における受信信号処理を深度L2まで行なうように、個別信号処理部20aの駆動を制御する。
すなわち、この処理では、圧電素子ユニット16から遠い領域(深度L2よりも深い領域)は、空間コンパウンドは行なわれず、合成超音波画像の深い領域は、超音波画像Aのみからなる画像となる。
【0047】
さらに、温度測定手段42による温度測定結果がT2以上の場合には、受信制御部34は、図5(C)に示すように、1つのフレームにおいて、画像Aの送受信における受信信号処理を深度L1まで行い、画像Bおよび画像Cの送受信における受信信号処理を深度L3まで行なうように、個別信号処理部20aの駆動を制御する。
すなわち、この処理では、圧電素子ユニット16の近傍の領域のみ、空間コンパウンドによって3つの超音波画像を合成した、高画質な画像となる。
【0048】
以上の説明より明らかなように、本発明の超音波診断装置10では、空間コンパウンドを行なう際に、プローブ12の温度が上昇した場合には、合成超音波画像となる超音波画像を得るための超音波送受信での受信信号の処理において、処理の深度を低減する。すなわち、本発明の超音波診断装置10では、プローブ12の温度が上昇した場合には、その温度に応じて、超音波エコーの受信信号を処理する個別信号処理部20aの駆動時間を短縮する。
従って、本発明においては、空間コンパウンドを行なっている際に、プローブ12の温度が上昇しても、最も大きな発熱部である信号処理部20を休止させることで、プローブ12内の温度を速やかに低下することができる。また、プローブ12内の温度上昇を抑制し、かつ、速やかに低下させることにより、プローブ12の温度上昇が生じても、画質劣化を最小限に抑えることができる。
【0049】
図5に示す例では、合成超音波画像となる1フレームは、全て受信信号の処理深度は同じであるが、本発明は、これに限定はされず、各フレーム(各合成超音波画像)において、1以上の超音波画像の受信信号の処理深度が異なってもよい。
【0050】
一例として、図6に概念的に示す受信信号の処理が例示される。
図6に示す例においては、温度測定手段42による温度測定結果がT2以上の場合には、図6(C)に示すように、画像Aの送受信における受信信号の処理(以下、これを『画像xの受信信号処理』とする)は、全てのフレームで深度L1までであるが、奇数フレームにおいては、画像Bおよび画像Cの受信信号処理を深度L3まで行ない、偶数フレームにおいては、画像Bおよび画像Cの受信信号処理を深度L2までとする。
なお、図6において、温度測定結果がT1未満である図6(A)、および、温度測定結果がT1以上T2未満である図6(B)は、共に、前述の図5(A)および図5(B)と同様である。
【0051】
従って、この例においては、温度測定手段42による温度測定結果がT2以上の場合には、奇数フレームでは、図6(D)に示す超音波画像A〜Cを合成した合成超音波画像が得られ、偶数フレームでは、図6(E)に示す超音波画像A〜Cを合成した合成超音波画像が得られる。
この例によれば、1フレームおきに、空間コンパウンドで合成する画像の深度を深くできるので、図5に示す例と比べて、空間コンパウンドで生成される画像を連続画像として観察した際に、深度L2〜L3の区間の画質劣化を、低減できる。
【0052】
なお、前述の図5に示す例では、図5(B)に示す温度がT1以上T2未満の場合には、超音波画像は図6(E)と同様になり、図5(C)に示す温度がT2以上の場合には、超音波画像は図6(D)と同様になる。
【0053】
以上の例においては、温度測定手段42による温度測定結果が、T1以上T2未満の場合、ならびに、T2以上の場合には、1つのフレームの中で、受信信号の処理深度を深度L1から変更する画像は、共に同じ深度であるが、本発明は、これに限定はされない。
すなわち、1フレームの中で、深度L2までの受信信号処理と、深度L3までの受信信号処理とが、混在してもよい。また、1フレームの中で、深度L1までの受信信号処理と、深度L2までの受信信号処理と、深度L3までの受信信号処理とが、混在してもよい。
【0054】
一例として、図7に概念的に示す受信信号の処理が例示される。
この例では、温度測定手段42による温度測定結果がT1未満の場合には、図5(A)と同様、図7(A)に示すように、画像Aの送受信、画像Bおよび画像Cの受信信号処理を、全て深度L1まで行なう。また、温度測定手段42による温度測定結果がT1以上T2未満の場合にも、図5(B)と同様、図7(B)に示すように、画像Aの受信信号処理を深度L1まで行い、画像Bおよび画像Cの受信信号処理を深度L2まで行なう。
これに対し、この例では、温度測定手段42による温度測定結果がT2以上である場合には、図7(C)に示すように、画像Aの受信信号処理を深度L1まで行い、画像Bの受信信号処理を深度L2まで行い、画像Cの受信信号処理を深度L3まで行なう。あるいは、画像Aを深度L1、画像Bを深度L3、画像Cを深度L2としてもよい。
この例によれば、図5に示す例に比して、発熱防止効果は低減するが、合成超音波画像の画質的には有利である。
【0055】
また、この例においては、温度測定手段42による温度測定結果が、T2以上である場合には、画像Bと画像Cとで、深度L2までの受信信号処理と深度L3までの受信信号処理とを、交互に行なってもよい。
【0056】
図8に、その一例を示す。
図8に示す例においては、温度測定手段42による温度測定結果がT2以上の場合には図8(C)に示すように、奇数フレームでは、画像Aは受信信号処理を深度L1まで、画像Bは受信信号処理を深度L2まで、画像Cの受信信号処理を深度L3までとする(図7(C)と同様)。これに対し、偶数フレームでは、画像Aは受信信号処理を深度L1までで同様とするが、画像Bは受信信号処理を深度L3までとし、画像Cの受信信号処理を深度L2までとする。
なお、図8においても、温度測定結果がT1未満である図8(A)、および、温度測定結果がT1以上T2未満である図8(B)は、共に、前述の図7(A)および図7(B)と同様である。
【0057】
従って、この態様においては、温度測定手段42による温度測定結果がT2以上の場合には、奇数フレームでは、図8(D)に示す3つの深さが異なる超音波画像A〜Cを合成した合成超音波画像が得られ、偶数フレームでは、図8(E)に示す3つの深さが異なる超音波画像A〜Cを合成した合成超音波画像が得られる。
この態様によれば、1フレームおきに、図8(D)に示す合成超音波画像と8(E)に示す合成超音波画像とが、置き換わるので、図中に斜線で示す1画像となってしまう領域において、1画像合成と2画像合成とが1フレームおきに入れ換わる。そのため、空間コンパウンドで生成される画像を連続画像として観察した際に、連続的かつ部分的に画質が劣る部分を無くすことができ、合成超音波画像の画質劣化を、低減できる。
【0058】
なお、以上の例では、プローブ12内の温度が上昇した場合に、受信信号処理の深度をL2やL3に変更するのは、画像Bの送受信および/または画像Cの送受信であるが、本発明は、これに限定はされない。すなわち、温度上昇に応じて、画像Aの送受信における受信信号処理の深度をL2やL3に変更してもよい。
しかしながら、診断装置本体14で生成する合成超音波画像は、超音波画像Aの領域の画像で、すなわち空間コンパウンドにおける主画像は超音波画像A(画像Aの送受信)である。従って、1つのフレームの中に深度L1までの受信信号処理が含まれる場合には、画像Aの送受信(すなわち合成超音波画像の全域を包含する送受信)の受信信号処理は、深度L1まで行なった方が、安定して適正な合成超音波画像を得ることができる。
【0059】
また、以上の例では、少なくとも1画像(画像Aの受信信号処理)は、全ての温度において、深度L1までとしたが、本発明は、これに限定はされず、温度に応じて、全ての画像の受信信号処理を、深度L2や深度L3としてもよい。
【0060】
一例として、図9に概念的に示す超音波の送受信が例示される。
この例では、温度測定手段42による温度測定結果がT1未満の場合には、図5(A)と同様、図9(A)に示すように、画像Aの送受信、画像Bの送受信および画像Cの受信信号処理を、全て、深度L1まで行なう。また、温度測定手段42による温度測定結果が、T1以上T2未満の場合にも、図5(B)と同様、図9(B)に示すように、画像Aの受信信号処理を深度L1まで、画像Bおよび画像Cの受信信号処理をL2まで行なう。
これに対し、この例では、温度測定手段42による温度測定結果が、T2以上である場合には、図9(C)に示すように、画像Aの受信信号処理を深度L2までとし、画像Bのおよび画像Cの受信信号処理を、深度L3までとする。
この例によれば、得られる合成超音波画像の深さは短くなるが、発熱防止効果は大きくなる。
【0061】
以上の例では、温度測定手段42による温度測定結果に応じて、温度T1以上となった場合には、2つの画像の受信信号処理の深さを深度L1から変更したが、本発明は、これに限定はされない。すなわち、温度測定手段42による温度測定結果に応じて、1画像のみの受信信号処理の深さを深度L1から変更してもよく、3画像以上で受信信号処理の深さを深度L1から変更してもよい。
ただ、プローブ12内の温度上昇を抑制し、かつ、温度上昇に起因する画質劣化を最小限にするという目的を考慮すると、温度が閾値以上となった場合には、2画像以上で受信信号処理の深さを深度L1から変更するのが好ましく、さらに、画像A(主画像)以外の全画像の受信信号処理の深さを、温度に応じて深度L1から変更するのが好ましい。
【0062】
さらに、以上の例では、空間コンパウンドを行なう場合の所定数が3であるので、温度の閾値を2点にしたが、本発明は、これに限定はされず、所定数が4以上の場合には、閾値を3点以上設けてもよい。
また、温度に応じた受信信号処理の設定深度も、3つに限定はされない。例えば、通常深度(L1)と短深度(L3)との2つであってもよく、通常深度と短深度との間に、深度L2−1、深度L2−2…のように、複数点の中間深度を設定して、受信信号処理の深度を4以上としてもよい。
【0063】
図5〜図9に示す例においては、1つのフレームにおける送受信の順序は、全てのフレームで同一であるが、本発明は、これに限定はされず、各フレームで、各画像の送受信の順序が異なってもよい。
例えば、図10に一例を示すように、1フレーム目を「画像Aの送受信(以下、省略)→画像B→画像C」、2フレーム目を「画像C→画像B→画像A」、3フレーム目を「画像A→画像B→画像C」、4フレーム目を「画像C→画像B→画像A」………のようにしてもよい。
【0064】
すなわち、本発明においては、連続するフレーム(すなわち、時間的に連続する合成超音波画像)において、最も近接する超音波画像の送受信方向を、同方向にしてもよい。
このような送受信の順序によれば、同方向の送受信が連続するので、送信駆動部30や個別信号処理部20aの制御を、簡略化することができる。
【0065】
前述のように、プローブ12が出力する受信信号は、無線通信によって、診断装置本体14に供給される。
診断装置本体14は、アンテナ50が接続される無線通信部52を有し、この無線通信部52にシリアル/パラレル変換部54を介してデータ格納部56が接続され、データ格納部56に画像生成部58が接続されている。さらに、画像生成部58に表示制御部62を介して表示部64が接続されている。
また、無線通信部52に通信制御部68が接続され、シリアル/パラレル変換部54、画像生成部58、表示制御部62および通信制御部68に本体制御部70が接続されている。本体制御部70は、診断装置本体14内の各部の制御を行うものであり、空間コンパウンドの実施の有無等の各種の入力操作を行うための操作部72が接続されている。
【0066】
なお、診断装置本体14は、図示を省略する電源部が内蔵されており、この電源部から、各部位に駆動のための電力が供給される。
また、診断装置本体14には、プローブ12に内蔵されるバッテリに充電を行なうための、充電手段を有してもよい。
【0067】
無線通信部52は、プローブ12との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号をプローブ12に送信する。また、無線通信部52は、アンテナ50によって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部68は、本体制御部70によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように、無線通信部52を制御する。
シリアル/パラレル変換部54は、無線通信部52から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部56は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部54によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0068】
画像生成部58は、データ格納部56から読み出した1画像毎のサンプルデータに受信フォーカス処理等を施して、超音波画像を表す画像信号を生成する。この画像生成部は、整相加算部76と、画像処理部78と、画像合成部80とを有する。
【0069】
整相加算部76は、本体制御部21において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0070】
画像処理部78は、整相加算部76によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報である超音波画像(Bモード画像)の画像信号を生成する。
画像処理部78は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、超音波画像信号を生成する。
【0071】
画像合成部80は、空間コンパウンドを行なう際に、画像処理部78が生成した超音波画像の合成を行なう。
前述のように、プローブ12では、空間コンパウンドを行なう際には、画像Aの送受信、画像Bの送受信、および画像Cの送受信の、3画像分(3種類)の超音波の送受信を行なう。
これに応じて、空間コンパウンドを行なう際には、画像合成部80は、画像Aの送受信による超音波画像A、画像Bの送受信による超音波画像B、および画像Cの送受信の送受信による超音波画像Cの合成を行い、合成超音波画像の画像信号を生成する。
ここで、前述のように、超音波診断装置10では、空間コンパウンドを行なう際には、プローブ12は、温度測定手段42による測定温度結果に応じて、合成する超音波画像を得るための、超音波エコーの受信信号処理の深度を変更する。従って、それに応じて、空間コンパウンドで合成する超音波画像の深度(深さ方向のサイズ)は、深度L1に応じた深度、深度L2に応じた深度、および深度L3に応じた深度に、変わる。
【0072】
表示制御部62は、画像生成部58によって生成される画像信号に基づいて、表示部64に超音波画像を表示させる。
表示部64は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部62の制御の下で、超音波画像を表示する。
【0073】
以下、図1に示す超音波診断装置10の作用を説明する。
超音波診断装置10において、診断時には、まず、プローブ12の送信駆動部30から供給される駆動電圧に従って、複数のトランスデューサ18から超音波が送信される。
この超音波は、被検体によって反射され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ18から出力された受信信号がそれぞれ対応する個別信号処理部20aに供給されてサンプルデータが生成される。
【0074】
ここで、プローブ12では、空間コンパウンドを行なう場合には、温度測定手段42による信号処理部20の温度測定結果が受信制御部34に送られる。
前述のように、超音波診断装置10では、空間コンパウンドを行なう際には、プローブ12は、温度測定手段42による受信処理部20の測定温度結果に応じて、合成する超音波画像を得るための受信信号処理の深度を調整する。具体的には、プローブ12は、温度測定手段42による測定温度結果に応じて、温度が閾値を一段階上がる毎に合成する超音波画像の何れかの深度が浅くなるように、合成する超音波画像の受信信号の処理深度を、深度L1、深度L2および深度L3の何れかとして、受信信号を処理する個別信号処理部20aの駆動を制御する。
一例として、処理の受信制御部34は、温度測定手段42による測定温度が温度がT1未満の場合には、図5(A)に示すように、画像A、画像Bおよび画像Cの受信信号の処理を、全て深度L1まで行なうように、信号処理部20(個別信号処理部20a)の動作を制御する。
また、受信制御部34は、温度測定手段42による測定温度がT1以上T2未満の場合には、図5(B)に示すように、画像Aの受信信号処理を深度L1まで、画像Bおよび画像Cの受信信号処理を深度L2までとするように、信号処理部20の動作を制御する。
さらに、受信制御部34は、温度測定手段42による測定温度がT2以上の場合には、図5(C)に示すように、画像Aの受信信号処理を深度L1まで、画像Bおよび画像Cの受信信号処理を深度L3までとするように、信号処理部20の動作を制御する。
【0075】
個別信号処理部20aで生成されたサンプルデータは、パラレル/シリアル変換部24に送られて、シリアル化された後に無線通信部26(アンテナ28)から診断装置本体14へ無線伝送される。
【0076】
診断装置本体14の無線通信部52で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部54でパラレルのデータに変換され、データ格納部56に格納される。
さらに、データ格納部56から1画像毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部58で超音波画像の画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部62により超音波画像が表示部64に表示される。
【0077】
ここで、空間コンパウンドを行なう場合には、画像生成部58の画像合成部80において、超音波画像の合成が行なわれる。
すなわち、前述のように、空間コンパウンドを行なう場合には、画像合成部80は、画像Aの送受信による超音波画像A、画像Bの送受信による超音波画像B、および画像Cの送受信による超音波画像Cの合成を行い、合成超音波画像の画像信号を生成し、表示制御部62に出力する。
ここで、前述のように、超音波診断装置10は、空間コンパウンドを行なう場合には、プローブ12は、温度測定手段42による測定温度結果に応じて、温度が閾値を一段階上がる毎に、合成する超音波画像の何れかの深度が浅くなるように個別信号処理部20aの駆動を制御する。従って、画像合成部80が合成する各超音波画像も、温度測定手段42による温度測定結果に応じた、通常深度、中間深度および短深度の画像による、各種の組み合わせとなる。
例えば、前述の図5に示す例であれば、プローブ12の温度測定手段42による測定温度がT1未満の場合には、画像合成部80が合成する超音波画像A、超音波画像Bおよび超音波画像Cは、全て通常の深度までの画像である。また、また、プローブ12の温度測定手段42による測定温度がT1以上T2未満の場合には、画像合成部80が合成する超音波画像は、通常深度の超音波画像Aと、中間深度の超音波画像Bおよび超音波画像Cとなる。さらに、プローブ12の温度測定手段42による測定温度がT2以上の場合には、画像合成部80が合成する超音波画像は、通常深度の超音波画像Aと、短深度の超音波画像Bおよび超音波画像Cとなる。
【0078】
以上、本発明の超音波診断装置について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
医療現場等で各種の診断に用いられる超音波診断装置に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 超音波診断装置
12 (超音波)プローブ
14 診断装置本体
16 圧電素子ユニット
18 トランスデューサ
20 信号処理部
20a 個別信号処理部
24 パラレル/シリアル変換部
26,52 無線通信部
28,50 アンテナ
30 送信駆動部
32 送信制御部
34 受信制御部
36 通信制御部
38 プローブ制御部
42 温度測定手段
54 シリアル/パラレル変換部
56 データ格納部
58 画像生成部
62 表示制御部
64 表示部
68 通信制御部
70 本体制御部
72 操作部
76 整相加算部
78 画像処理部
80 画像合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信し、被検体によって反射された超音波エコーを受信して受信した超音波に応じた受信信号を出力する圧電素子ユニット、前記圧電素子ユニットによる超音波の送信を制御する送信制御手段、前記圧電素子ユニットが出力した受信信号の処理を行なう信号処理手段、および、所定位置の温度を測定する温度測定手段を有する超音波プローブと、
前記超音波プローブの信号処理手段が処理した受信信号に応じた超音波画像を生成する診断装置本体とを有し、
前記診断装置本体は、所定数の前記超音波画像を合成して1つの合成超音波画像を生成する機能を有し、また、前記超音波プローブは、前記診断装置本体が合成超音波画像の生成を行なうために、超音波の送受信方向が互いに異なる前記所定数と同数の複数種類の超音波の送受信を行なう機能を有し、
かつ、前記超音波プローブは、前記診断装置本体が合成超音波画像の生成を行なう際には、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、前記診断装置本体が合成する超音波画像の深度を変更するように、前記信号処理手段が処理する受信信号の深度を調整することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記温度測定手段は、前記信号処理手段の温度を測定する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
温度の閾値として、温度T1と、この温度T1よりも高温の温度T2とが設定されており、
さらに、前記信号処理手段が処理する受信信号の深度として、所定深度まで受信信号を処理する通常深度、受信信号の処理深度が最も浅い短深度、および、前記通常深度と短深度との間の深度まで受信信号を処理する中間深度が設定されている請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、この温度測定結果が前記温度T1未満である場合には、前記複数種類の超音波送受信における受信信号処理の全てを、前記通常深度で行なう請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、
この温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、
この温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記短深度で受信信号処理を行う請求項3または4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、
この温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、
この温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、時間的に連続する前記合成超音波画像において、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記短深度で受信信号処理を行う処理と、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行う処理とを、交互に行なう請求項3または4に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、
温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、
温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、前記複数種類の超音波送受信の少なくとも1種類で、前記中間深度で受信信号処理を行い、他の少なくとも1種類で、前記短深度で受信信号処理を行う請求項3または4に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記温度測定結果が前記温度T2以上の場合に、時間的に連続する前記合成超音波画像において、前記中間深度で受信信号処理を行なう超音波画像と、前記短深度で受信信号処理を行なう超音波画像とが異なる請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記複数種類の超音波送受信のうちの1種類で、前記合成超音波画像として出力する全域を包含する超音波画像が得られる主画像の超音波の送受信を行ない、
かつ、この主画像の超音波の送受信で得られる受信信号の処理は、前記通常深度で行なう請求項3〜8のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記診断装置本体が合成超音波画像を生成する際には、前記超音波プローブは、前記温度測定手段による温度測定結果に応じて、
この温度測定結果が前記温度T1以上温度T2未満の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記中間深度で受信信号処理を行い、
温度測定結果が前記温度T2以上の場合には、前記複数種類の超音波送受信のうちの2種類以上で、前記短深度で受信信号処理を行い、それ以外の全ての種類の超音波送受信で、前記中間深度で受信信号処理を行なう請求項3または4に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記超音波プローブは、時間的に連続する前記合成超音波画像において、最も近接する超音波画像の超音波送受信方向を等しくする請求項1〜10のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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