超音波診断装置
【課題】受信感度の向上と符号化サイドローブの低減をバランスよく行って正確な診断に寄与することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】送信部12は、駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して振動子2aに供給する。そして、画像処理部14は、受信部13によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化する。そして、画像処理部14は、復号化された受信信号に基づいて被検体内の画像データを生成する。そして、制御部18は、フレームの異なる複数の画像データから被検体内の体動情報を測定する。そして、制御部18は、体動情報の測定結果に基づいて、送信部12による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する。そして、送信部12は、駆動信号を制御部18によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化する。
【解決手段】送信部12は、駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して振動子2aに供給する。そして、画像処理部14は、受信部13によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化する。そして、画像処理部14は、復号化された受信信号に基づいて被検体内の画像データを生成する。そして、制御部18は、フレームの異なる複数の画像データから被検体内の体動情報を測定する。そして、制御部18は、体動情報の測定結果に基づいて、送信部12による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する。そして、送信部12は、駆動信号を制御部18によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の振動子(トランスデューサ)を配列して備える振動探触子(プローブ)を有し、生体等の被検体に対して超音波の送受信を行い、受信した超音波から得られたデータに基づいて超音波画像データをフレーム毎に生成し、これを画像表示装置に表示する超音波診断装置が知られている。
【0003】
このような超音波診断装置においては、受信感度を高める手段としてパルス信号の符号化技術が採用されている。この符号化技術は、パルス波を時間軸方向に伸ばして複数のパルス波を形成し、これにより発生する超音波を被検体に送波した後、受信した反射超音波から得られたパルス波を相関関数を用いて時間軸方向に圧縮して利得を増やすようにしたものである。
【0004】
そして、パルス波の圧縮の際には、サイドローブ(符号化サイドローブ)が表れることが知られているが、このような符号化サイドローブはアーチファクトとして画像に表れ、正確な診断の妨げになるばかりではなく、判断ミスの原因ともなってしまうため、できるだけ符号化サイドローブを抑制することが要求されている。
【0005】
このような問題に鑑み、従来の超音波診断装置は、例えば、符号化したコードと不整合なフィルタによってパルス圧縮を行って符号化サイドローブを減少させるようにしたものがある(例えば、特許文献1、2)。
また、符号化サイドローブを低減させるために、重み付けチャープ波を生成して送信するものがある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−309146号公報
【特許文献2】米国特許第7492312号公報
【特許文献3】特開2002−45359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記各特許文献の何れも、理論的には符号化サイドローブの減少が可能であっても、実際の使用においては、完全に符号化サイドローブを抑制するのは困難である。これは、受信感度をより高くするために、パルス数をできるだけ多くとるのが好ましいのであるが、パルス数が多いほど、被検体の動きや、ユーザによる振動探触子の操作等の影響を受けて反射超音波の波形が乱れやすくなり、パルス圧縮を行った際には狙い通りの符号化サイドローブの抑圧を行うことができないからである。
【0008】
本発明の課題は、受信感度の向上と符号化サイドローブの低減をバランスよく行って正確な診断に寄与することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、超音波診断装置において、
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波をパルス信号に変換して受信信号として出力する振動子を有する超音波探触子と、
前記駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して前記振動子に供給する送信部と、
前記振動子から出力された受信信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化し、該復号化された受信信号に基づいて前記被検体内の画像データを生成する画像処理部と、
フレームの異なる複数の画像データから前記被検体内の体動情報を測定する体動情報測定部と、
前記体動情報測定部による体動情報の測定結果に基づいて、前記送信部による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する制御部と、
を備え、
前記送信部は、前記駆動信号を前記制御部によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、バーカーコードによる符号化を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、ゴーレイコードによる符号化を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、時間に依存して周波数が変化するチャープパルスによる符号化を行い、
前記制御部は、周波数の変化幅を決定することによってパルス信号のパルス数を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受信感度の向上と符号化サイドローブの低減をバランスよく行って正確な診断に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】バーカーコードについて説明する図である。
【図4】画像生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】バーカーコードによる符号化を行ったときのパルスパターンについて説明する図である。
【図6】パルス圧縮を行った結果について説明する図である。
【図7】体動情報測定処理について説明するフローチャートである。
【図8】動きベクトルの計測について説明する図である。
【図9】送信パルスパターン選択テーブルについて説明する図である。
【図10】送信パルスパターン選択テーブルの他の例について説明する図である。
【図11】ゴーレイコードについて説明する図である。
【図12】送信パルスパターン選択テーブルの他の例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0016】
本発明の実施の形態に係る超音波診断装置Sは、図1及び図2に示すように、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信された被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成している。
【0017】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、方位方向(走査方向あるいは上下方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、n個(例えば、128個)の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0018】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリ部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0019】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0020】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備えている。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、駆動信号の送信タイミングを振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。
また、送信部12は、送信パルスパターンメモリ121を備えており、この送信パルスパターンメモリ121には、複数のバーカーコード(Barker Cord)が記憶されている。これらのバーカーコードは、コード長(N)がそれぞれ「2」,「3」,「4」,「5」,「7」,「11」,「13」となっており、これらの符号要素は図3に示す通りとなっている。
送信部12は、制御部18から符号化の指示があった場合は、指定されたバーカーコードを送信パルスパターンメモリ121から読みだし、パルスを時間軸方向に伸張してN等分割し、読みだしたバーカーコードの符号要素に従って各分割された部分にそれぞれ正負の位相が与えられたパルスパターンであるパルス信号をパルス発生回路に発生させる。例えば、符号長が「13」であるバーカーコードによって生成されるパルスパターンは図5に示すようになる。
なお、本実施の形態では、バーカーコードを位相の変化によって表したものを使用しているが、周波数の変化や振幅の変化によって表したものを使用してもよい。
【0021】
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、TGC(Time Gain Control)、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。TGCは、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、時間の経過に応じて増幅率を変化させながら受信信号を増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングを行い、A/D変換するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0022】
画像生成部14は、図4に示すように、復号部141、デコード用テンプレート記憶部142、包絡線検波部143、対数増幅部144、γ補正部145等を備えている。
復号部141は、送信部12によって送信されたパルス信号のパルスパターンに対応するデコード用テンプレートをデコード用テンプレート記憶部142から読み出し、受信部13から受信した音線データとの相関処理による復号化(パルス圧縮)を行う。このデコード用テンプレートは、バーカーコードから特定されるパルスパターンを反転させて得た参照データである。つまり、復号部141は、音線データと参照データとの自己相関関数によってパルス圧縮を行う。例えば、図5に示すような符号長が「13」であるバーカーコードによって符号化されたパルス信号から得られた音線データについて復号化したときは、図6に示すような波形のデータが得られる。すなわち、符号長を大きくするほど、符号化メインローブの利得が大きくなり、符号化サイドローブが抑圧される。なお、受信信号が符号化されていない場合は、復号部141をスルーする。
そして、画像生成部14は、復号部141によってパルス圧縮が行われた音線データに対して包絡線検波部143による包絡線検波処理、対数増幅部144による対数増幅、γ補正部145によるγ補正などを実施し、Bモード画像データを生成する。このようにして生成されたBモード画像データは、メモリ部15に送信される。
【0023】
メモリ部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、フレーム画像データとして記憶することができる。そして、記憶されたフレーム画像データは、制御部18の制御に従って、DSC16に送信される。
また、本実施の形態では、後述する体動情報の測定を行うため、メモリ部15に、1フレーム前の画像データをさらに記憶している。
【0024】
DSC16は、メモリ部15より受信したフレーム画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0025】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に画像の表示を行う。
【0026】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリ等により構成され、超音波診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な、後述する、体動情報測定処理等の各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0027】
次に、以上のようにして構成された超音波診断装置Sにおいて実行される体動情報測定処理について図7を参照しながら説明する。この体動情報測定処理は、例えば、1フレームの画像データが生成される毎に実行される処理である。ここで、体動情報とは、例えば、超音波探触子2の操作や、被検体内の診断部位自体の動作といった内部状態の変化等により、表示される画像に位置変化が生じた場合において、その変化量を示す情報である。本実施の形態では、制御部18がこの体動情報測定処理を実行することにより、体動情報測定部として機能する。なお、この体動情報測定部を、ハードウエアによって構成するようにしてもよい。
【0028】
制御部18は、メモリ部15より1フレーム前のフレーム画像データを読み出す(ステップS101)。
そして、制御部18は、読みだした1フレーム前のフレーム画像データにおける動きベクトル計測領域の設定を行う(ステップS102)。この計測領域の設定は、例えば、診断部位により予め定められた領域とする。なお、設定する計測領域は1か所であっても、複数個所であっても何れでもよい。また、フレーム画像データを均等の面積に分割し、それぞれの領域を計測領域に設定するようにしてもよい。
【0029】
次に、制御部18は、メモリ部15より最新のフレームのフレーム画像データを読み出す(ステップS103)。
そして、制御部18は、読みだした最新のフレームのフレーム画像データにおける探索領域を設定する(ステップS104)。この探索領域の大きさは、診断部位の動く速度とフレームレートなどを考慮して適宜設定することができる。
【0030】
そして、制御部18は、設定された計測領域及び探索領域に対して帯域制限フィルタ処理を行い、ノイズの平滑を行う(ステップS105)。
そして、制御部18は、計測領域を探索領域上において走査させ、計測領域における画像データと最も整合のとれる位置を相互相関演算や最小二条法などによって探索し、両画像間に生じた、体動情報としての動きベクトルを計測する(ステップS106)。例えば、図8を参照して説明すると、制御部18は、設定された計測領域Mを、最新のフレームのフレーム画像データFにおける探索領域S上を走査しながら、最も整合のとれる位置を探索し、その結果、整合位置Cが最も整合のとれる位置と判定する。そして、制御部18は、1フレーム前のフレーム画像データにおける計測領域Mの位置が図8に示す位置である場合には、その位置と整合位置Cとのずれ量Vを動きベクトルとして計測する。なお、動きベクトルの計測方法は上述したものに限定されず、公知の様々な方法が適用できる。また、他の方法によって画像の変化量を測定するようにしてもよく、例えば、画素値の分布を示すヒストグラムを分析して画像の変化量を測定してもよい。また、画像に対して2次元FFT(Fast Fourier Transform)を行い、これに基づいて得られる空間周波数の振幅や位相の変化により変化量を測定するようにしてもよい。また、隣り合った画素によって2次元ベクトルを構成し、その分布を分析して画像の変化量を測定するようにしてもよい。また、本実施の形態では、画像の変化量の他、画像の変化方向についても特定可能な動きベクトルの測定により計測領域Mと整合位置Cとのずれ量Vの計測を行ったが、画像の変化量のみ特定できる測定方法を適用してもよい。
【0031】
そして、制御部18は、動きベクトルの計測結果からパルスの符号化の際の符号長を決定する(ステップS107)。具体的には、ROMに記録された、図9に示される送信パルスパターン選択テーブルを参照し、計測結果に対応する符号長をテーブルから選択する。この送信パルスパターン選択テーブルにより、動きベクトルが大きいほど、選択される符号長が小さくなるように設定されている。選択された符号長は、RAMに記憶され、送信部12における駆動信号の送信タイミングに応じて送信部12に対して符号長の指定を行う。なお、動きベクトルと符号長との関係については、例えば、診断部位などに応じて変更してもよく、任意に設定することができる。また、符号長の設定数も任意に設定してもよく、例えば、「13」の符号長と「2」の符号長のみ設定するようにしてもよいし、図9に示されたものよりも多くの符号長を設定してもよい。また、本実施の形態では、13ピクセル以上の動きベクトルが測定されたときはコード化を行わないようにしているが、コード化するようにしても問題ない。この場合、なるべく符号長の小さいものを使用するのが好ましい。また、複数の計測領域について動きベクトルの計測を行う場合は、最も動きベクトルの大きいものを計測結果として採用するようにしてもよく、また、動きベクトルの平均値を求め、これを計測結果として採用するようにしてもよい。また、動きベクトルの示す変化量をピクセルにて表すようにしたが、ミリメートルやインチ等によって表すようにしてもよい。
【0032】
以上のように構成された超音波診断装置Sによれば、動きベクトルが大きいほど、符号長が小さくなるように設定されているので、体動の小さい場合は符号長を大きくして受信感度を向上させることができる一方、体動が大きい場合は符号長を小さくして、波形の乱れをできるだけ抑えることにより符号化サイドローブを低減させることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、バーカーコードによる符号化を行ったが、ゴーレイコード(Golay Code)による符号化を行うようにしてもよい。この場合、制御部18のROMに記憶される送信パルスパターン選択テーブルは、例えば、図10に示すように構成することができる。なお、動きベクトルと符号長との関係については、任意に設定することができることは言うまでもない。そして、送信部12における送信パルスパターンメモリ21には、例えば、図11に示すように、複数のゴーレイコードが記憶され、これらのゴーレイコードは、コード長(N)がそれぞれ「4」,「8」,「16」,「32」となっている。なお、これらの符号要素は図11に示す通りとなっている。
そして、送信部12は、制御部18から符号化の指示があった場合は、指定されたゴーレイコードを送信パルスパターンメモリ121から読み出し、パルスを時間軸方向に伸張してN等分割し、読みだしたゴーレイコードの符号要素(A)と符号要素(B)に従って各分割された部分にそれぞれ正負の位相が与えられたパルスパターンであるパルス信号をパルス発生回路に発生させる。
そして、画像生成部14の復号部141は、上述した通り、相関処理による復号化を行う。ここで、ゴーレイコードによる復号化は、パルスパターンを符号要素(A)に対応するものと符号要素(B)に対応するものとに分け、それぞれについて自己相関関数による相関処理を行い、得られた結果を加算することによって行われる。
なお、本実施の形態では、ゴーレイコードを位相の変化によって表したものを使用しているが、周波数の変化や振幅の変化によって表したものを使用してもよい。
【0034】
また、チャープ(Chirp)パルスによる符号化を行うようにしてもよい。この場合、制御部18のROMに記憶される送信パルスパターン選択テーブルは、例えば、図12に示すように構成することができる。チャープパルスによる符号化を行う場合には、動きベクトルに応じた周波数変化幅を送信パルスパターン選択テーブルから選択する。なお、動きベクトルと周波数変化幅長との関係については、任意に設定することができることは言うまでもない。
チャープパルスは、時間の経過に応じて周波数を線形的に変化させたものである。すなわち、周波数変化幅が小さいほど、パルス数は少なく、パルス幅も短くなる。したがって、周波数変化幅が大きい場合には、符号化メインローブの利得を向上させることができるが、体動による影響を受けやすくなる。一方、周波数変化幅が小さい場合には、体動による影響を低減でき、符号化サイドローブを抑圧させることができる。
そして、送信部12は、制御部18から符号化の指示があった場合は、指定された周波数変化幅によって形成されたチャープパルスであるパルス信号をパルス発生回路に発生させる。
そして、画像生成部14の復号部141は、上述した通り、自己相関関数による相関処理による復号化を行う。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、超音波探触子2は、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波をパルス信号に変換して受信信号として出力する振動子2aを有する。そして、送信部12は、駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して振動子2aに供給する。そして、受信部13は、振動子2aから出力された受信信号を受信する。そして、画像処理部14は、受信部13によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化する。そして、画像処理部14は、復号化された受信信号に基づいて被検体内の画像データを生成する。そして、制御部18は、フレームの異なる複数の画像データから被検体内の体動情報を測定する。そして、制御部18は、体動情報の測定結果に基づいて、送信部12による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する。そして、送信部12は、駆動信号を制御部18によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化する。その結果、被検体の体動の測定結果に応じてパルス信号のパルス数が変更されるので、体動の影響による符号化サイドローブの発生を抑制することができ、受信感度の向上と符号化サイドローブの低減をバランスよく行って正確な診断に寄与することができるようになる。
【0036】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、バーカーコードによる符号化を行うので、符号化サイドローブを効果的に抑圧することができる。
【0037】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、ゴーレイコードによる符号化を行うので、符号化サイドローブを効果的に抑圧することができる。
【0038】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、時間に依存して周波数が変化するチャープパルスによる符号化を行う。そして、制御部18は、周波数の変化幅を決定することによってパルス信号のパルス数を決定する。その結果、符号化サイドローブを効果的に抑圧することができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0040】
また、本実施の形態では、バーカーコード、ゴーレイコード、あるいは、チャープパルスによる符号化を行ったが、符号化の手法はこれらに限定されず、他の手法によって行うようにしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0042】
S 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
2a 振動子
12 送信部
121 送信パルスパターンメモリ
13 受信部
14 画像生成部
141 復号部
142 デコード用テンプレート記憶部
18 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の振動子(トランスデューサ)を配列して備える振動探触子(プローブ)を有し、生体等の被検体に対して超音波の送受信を行い、受信した超音波から得られたデータに基づいて超音波画像データをフレーム毎に生成し、これを画像表示装置に表示する超音波診断装置が知られている。
【0003】
このような超音波診断装置においては、受信感度を高める手段としてパルス信号の符号化技術が採用されている。この符号化技術は、パルス波を時間軸方向に伸ばして複数のパルス波を形成し、これにより発生する超音波を被検体に送波した後、受信した反射超音波から得られたパルス波を相関関数を用いて時間軸方向に圧縮して利得を増やすようにしたものである。
【0004】
そして、パルス波の圧縮の際には、サイドローブ(符号化サイドローブ)が表れることが知られているが、このような符号化サイドローブはアーチファクトとして画像に表れ、正確な診断の妨げになるばかりではなく、判断ミスの原因ともなってしまうため、できるだけ符号化サイドローブを抑制することが要求されている。
【0005】
このような問題に鑑み、従来の超音波診断装置は、例えば、符号化したコードと不整合なフィルタによってパルス圧縮を行って符号化サイドローブを減少させるようにしたものがある(例えば、特許文献1、2)。
また、符号化サイドローブを低減させるために、重み付けチャープ波を生成して送信するものがある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−309146号公報
【特許文献2】米国特許第7492312号公報
【特許文献3】特開2002−45359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記各特許文献の何れも、理論的には符号化サイドローブの減少が可能であっても、実際の使用においては、完全に符号化サイドローブを抑制するのは困難である。これは、受信感度をより高くするために、パルス数をできるだけ多くとるのが好ましいのであるが、パルス数が多いほど、被検体の動きや、ユーザによる振動探触子の操作等の影響を受けて反射超音波の波形が乱れやすくなり、パルス圧縮を行った際には狙い通りの符号化サイドローブの抑圧を行うことができないからである。
【0008】
本発明の課題は、受信感度の向上と符号化サイドローブの低減をバランスよく行って正確な診断に寄与することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、超音波診断装置において、
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波をパルス信号に変換して受信信号として出力する振動子を有する超音波探触子と、
前記駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して前記振動子に供給する送信部と、
前記振動子から出力された受信信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化し、該復号化された受信信号に基づいて前記被検体内の画像データを生成する画像処理部と、
フレームの異なる複数の画像データから前記被検体内の体動情報を測定する体動情報測定部と、
前記体動情報測定部による体動情報の測定結果に基づいて、前記送信部による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する制御部と、
を備え、
前記送信部は、前記駆動信号を前記制御部によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、バーカーコードによる符号化を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、ゴーレイコードによる符号化を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、時間に依存して周波数が変化するチャープパルスによる符号化を行い、
前記制御部は、周波数の変化幅を決定することによってパルス信号のパルス数を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受信感度の向上と符号化サイドローブの低減をバランスよく行って正確な診断に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】バーカーコードについて説明する図である。
【図4】画像生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】バーカーコードによる符号化を行ったときのパルスパターンについて説明する図である。
【図6】パルス圧縮を行った結果について説明する図である。
【図7】体動情報測定処理について説明するフローチャートである。
【図8】動きベクトルの計測について説明する図である。
【図9】送信パルスパターン選択テーブルについて説明する図である。
【図10】送信パルスパターン選択テーブルの他の例について説明する図である。
【図11】ゴーレイコードについて説明する図である。
【図12】送信パルスパターン選択テーブルの他の例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0016】
本発明の実施の形態に係る超音波診断装置Sは、図1及び図2に示すように、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信された被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成している。
【0017】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、方位方向(走査方向あるいは上下方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、n個(例えば、128個)の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0018】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリ部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0019】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0020】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備えている。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、駆動信号の送信タイミングを振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。
また、送信部12は、送信パルスパターンメモリ121を備えており、この送信パルスパターンメモリ121には、複数のバーカーコード(Barker Cord)が記憶されている。これらのバーカーコードは、コード長(N)がそれぞれ「2」,「3」,「4」,「5」,「7」,「11」,「13」となっており、これらの符号要素は図3に示す通りとなっている。
送信部12は、制御部18から符号化の指示があった場合は、指定されたバーカーコードを送信パルスパターンメモリ121から読みだし、パルスを時間軸方向に伸張してN等分割し、読みだしたバーカーコードの符号要素に従って各分割された部分にそれぞれ正負の位相が与えられたパルスパターンであるパルス信号をパルス発生回路に発生させる。例えば、符号長が「13」であるバーカーコードによって生成されるパルスパターンは図5に示すようになる。
なお、本実施の形態では、バーカーコードを位相の変化によって表したものを使用しているが、周波数の変化や振幅の変化によって表したものを使用してもよい。
【0021】
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、TGC(Time Gain Control)、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。TGCは、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、時間の経過に応じて増幅率を変化させながら受信信号を増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングを行い、A/D変換するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0022】
画像生成部14は、図4に示すように、復号部141、デコード用テンプレート記憶部142、包絡線検波部143、対数増幅部144、γ補正部145等を備えている。
復号部141は、送信部12によって送信されたパルス信号のパルスパターンに対応するデコード用テンプレートをデコード用テンプレート記憶部142から読み出し、受信部13から受信した音線データとの相関処理による復号化(パルス圧縮)を行う。このデコード用テンプレートは、バーカーコードから特定されるパルスパターンを反転させて得た参照データである。つまり、復号部141は、音線データと参照データとの自己相関関数によってパルス圧縮を行う。例えば、図5に示すような符号長が「13」であるバーカーコードによって符号化されたパルス信号から得られた音線データについて復号化したときは、図6に示すような波形のデータが得られる。すなわち、符号長を大きくするほど、符号化メインローブの利得が大きくなり、符号化サイドローブが抑圧される。なお、受信信号が符号化されていない場合は、復号部141をスルーする。
そして、画像生成部14は、復号部141によってパルス圧縮が行われた音線データに対して包絡線検波部143による包絡線検波処理、対数増幅部144による対数増幅、γ補正部145によるγ補正などを実施し、Bモード画像データを生成する。このようにして生成されたBモード画像データは、メモリ部15に送信される。
【0023】
メモリ部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、フレーム画像データとして記憶することができる。そして、記憶されたフレーム画像データは、制御部18の制御に従って、DSC16に送信される。
また、本実施の形態では、後述する体動情報の測定を行うため、メモリ部15に、1フレーム前の画像データをさらに記憶している。
【0024】
DSC16は、メモリ部15より受信したフレーム画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0025】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に画像の表示を行う。
【0026】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリ等により構成され、超音波診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な、後述する、体動情報測定処理等の各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0027】
次に、以上のようにして構成された超音波診断装置Sにおいて実行される体動情報測定処理について図7を参照しながら説明する。この体動情報測定処理は、例えば、1フレームの画像データが生成される毎に実行される処理である。ここで、体動情報とは、例えば、超音波探触子2の操作や、被検体内の診断部位自体の動作といった内部状態の変化等により、表示される画像に位置変化が生じた場合において、その変化量を示す情報である。本実施の形態では、制御部18がこの体動情報測定処理を実行することにより、体動情報測定部として機能する。なお、この体動情報測定部を、ハードウエアによって構成するようにしてもよい。
【0028】
制御部18は、メモリ部15より1フレーム前のフレーム画像データを読み出す(ステップS101)。
そして、制御部18は、読みだした1フレーム前のフレーム画像データにおける動きベクトル計測領域の設定を行う(ステップS102)。この計測領域の設定は、例えば、診断部位により予め定められた領域とする。なお、設定する計測領域は1か所であっても、複数個所であっても何れでもよい。また、フレーム画像データを均等の面積に分割し、それぞれの領域を計測領域に設定するようにしてもよい。
【0029】
次に、制御部18は、メモリ部15より最新のフレームのフレーム画像データを読み出す(ステップS103)。
そして、制御部18は、読みだした最新のフレームのフレーム画像データにおける探索領域を設定する(ステップS104)。この探索領域の大きさは、診断部位の動く速度とフレームレートなどを考慮して適宜設定することができる。
【0030】
そして、制御部18は、設定された計測領域及び探索領域に対して帯域制限フィルタ処理を行い、ノイズの平滑を行う(ステップS105)。
そして、制御部18は、計測領域を探索領域上において走査させ、計測領域における画像データと最も整合のとれる位置を相互相関演算や最小二条法などによって探索し、両画像間に生じた、体動情報としての動きベクトルを計測する(ステップS106)。例えば、図8を参照して説明すると、制御部18は、設定された計測領域Mを、最新のフレームのフレーム画像データFにおける探索領域S上を走査しながら、最も整合のとれる位置を探索し、その結果、整合位置Cが最も整合のとれる位置と判定する。そして、制御部18は、1フレーム前のフレーム画像データにおける計測領域Mの位置が図8に示す位置である場合には、その位置と整合位置Cとのずれ量Vを動きベクトルとして計測する。なお、動きベクトルの計測方法は上述したものに限定されず、公知の様々な方法が適用できる。また、他の方法によって画像の変化量を測定するようにしてもよく、例えば、画素値の分布を示すヒストグラムを分析して画像の変化量を測定してもよい。また、画像に対して2次元FFT(Fast Fourier Transform)を行い、これに基づいて得られる空間周波数の振幅や位相の変化により変化量を測定するようにしてもよい。また、隣り合った画素によって2次元ベクトルを構成し、その分布を分析して画像の変化量を測定するようにしてもよい。また、本実施の形態では、画像の変化量の他、画像の変化方向についても特定可能な動きベクトルの測定により計測領域Mと整合位置Cとのずれ量Vの計測を行ったが、画像の変化量のみ特定できる測定方法を適用してもよい。
【0031】
そして、制御部18は、動きベクトルの計測結果からパルスの符号化の際の符号長を決定する(ステップS107)。具体的には、ROMに記録された、図9に示される送信パルスパターン選択テーブルを参照し、計測結果に対応する符号長をテーブルから選択する。この送信パルスパターン選択テーブルにより、動きベクトルが大きいほど、選択される符号長が小さくなるように設定されている。選択された符号長は、RAMに記憶され、送信部12における駆動信号の送信タイミングに応じて送信部12に対して符号長の指定を行う。なお、動きベクトルと符号長との関係については、例えば、診断部位などに応じて変更してもよく、任意に設定することができる。また、符号長の設定数も任意に設定してもよく、例えば、「13」の符号長と「2」の符号長のみ設定するようにしてもよいし、図9に示されたものよりも多くの符号長を設定してもよい。また、本実施の形態では、13ピクセル以上の動きベクトルが測定されたときはコード化を行わないようにしているが、コード化するようにしても問題ない。この場合、なるべく符号長の小さいものを使用するのが好ましい。また、複数の計測領域について動きベクトルの計測を行う場合は、最も動きベクトルの大きいものを計測結果として採用するようにしてもよく、また、動きベクトルの平均値を求め、これを計測結果として採用するようにしてもよい。また、動きベクトルの示す変化量をピクセルにて表すようにしたが、ミリメートルやインチ等によって表すようにしてもよい。
【0032】
以上のように構成された超音波診断装置Sによれば、動きベクトルが大きいほど、符号長が小さくなるように設定されているので、体動の小さい場合は符号長を大きくして受信感度を向上させることができる一方、体動が大きい場合は符号長を小さくして、波形の乱れをできるだけ抑えることにより符号化サイドローブを低減させることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、バーカーコードによる符号化を行ったが、ゴーレイコード(Golay Code)による符号化を行うようにしてもよい。この場合、制御部18のROMに記憶される送信パルスパターン選択テーブルは、例えば、図10に示すように構成することができる。なお、動きベクトルと符号長との関係については、任意に設定することができることは言うまでもない。そして、送信部12における送信パルスパターンメモリ21には、例えば、図11に示すように、複数のゴーレイコードが記憶され、これらのゴーレイコードは、コード長(N)がそれぞれ「4」,「8」,「16」,「32」となっている。なお、これらの符号要素は図11に示す通りとなっている。
そして、送信部12は、制御部18から符号化の指示があった場合は、指定されたゴーレイコードを送信パルスパターンメモリ121から読み出し、パルスを時間軸方向に伸張してN等分割し、読みだしたゴーレイコードの符号要素(A)と符号要素(B)に従って各分割された部分にそれぞれ正負の位相が与えられたパルスパターンであるパルス信号をパルス発生回路に発生させる。
そして、画像生成部14の復号部141は、上述した通り、相関処理による復号化を行う。ここで、ゴーレイコードによる復号化は、パルスパターンを符号要素(A)に対応するものと符号要素(B)に対応するものとに分け、それぞれについて自己相関関数による相関処理を行い、得られた結果を加算することによって行われる。
なお、本実施の形態では、ゴーレイコードを位相の変化によって表したものを使用しているが、周波数の変化や振幅の変化によって表したものを使用してもよい。
【0034】
また、チャープ(Chirp)パルスによる符号化を行うようにしてもよい。この場合、制御部18のROMに記憶される送信パルスパターン選択テーブルは、例えば、図12に示すように構成することができる。チャープパルスによる符号化を行う場合には、動きベクトルに応じた周波数変化幅を送信パルスパターン選択テーブルから選択する。なお、動きベクトルと周波数変化幅長との関係については、任意に設定することができることは言うまでもない。
チャープパルスは、時間の経過に応じて周波数を線形的に変化させたものである。すなわち、周波数変化幅が小さいほど、パルス数は少なく、パルス幅も短くなる。したがって、周波数変化幅が大きい場合には、符号化メインローブの利得を向上させることができるが、体動による影響を受けやすくなる。一方、周波数変化幅が小さい場合には、体動による影響を低減でき、符号化サイドローブを抑圧させることができる。
そして、送信部12は、制御部18から符号化の指示があった場合は、指定された周波数変化幅によって形成されたチャープパルスであるパルス信号をパルス発生回路に発生させる。
そして、画像生成部14の復号部141は、上述した通り、自己相関関数による相関処理による復号化を行う。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、超音波探触子2は、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波をパルス信号に変換して受信信号として出力する振動子2aを有する。そして、送信部12は、駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して振動子2aに供給する。そして、受信部13は、振動子2aから出力された受信信号を受信する。そして、画像処理部14は、受信部13によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化する。そして、画像処理部14は、復号化された受信信号に基づいて被検体内の画像データを生成する。そして、制御部18は、フレームの異なる複数の画像データから被検体内の体動情報を測定する。そして、制御部18は、体動情報の測定結果に基づいて、送信部12による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する。そして、送信部12は、駆動信号を制御部18によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化する。その結果、被検体の体動の測定結果に応じてパルス信号のパルス数が変更されるので、体動の影響による符号化サイドローブの発生を抑制することができ、受信感度の向上と符号化サイドローブの低減をバランスよく行って正確な診断に寄与することができるようになる。
【0036】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、バーカーコードによる符号化を行うので、符号化サイドローブを効果的に抑圧することができる。
【0037】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、ゴーレイコードによる符号化を行うので、符号化サイドローブを効果的に抑圧することができる。
【0038】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、時間に依存して周波数が変化するチャープパルスによる符号化を行う。そして、制御部18は、周波数の変化幅を決定することによってパルス信号のパルス数を決定する。その結果、符号化サイドローブを効果的に抑圧することができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0040】
また、本実施の形態では、バーカーコード、ゴーレイコード、あるいは、チャープパルスによる符号化を行ったが、符号化の手法はこれらに限定されず、他の手法によって行うようにしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0042】
S 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
2a 振動子
12 送信部
121 送信パルスパターンメモリ
13 受信部
14 画像生成部
141 復号部
142 デコード用テンプレート記憶部
18 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波をパルス信号に変換して受信信号として出力する振動子を有する超音波探触子と、
前記駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して前記振動子に供給する送信部と、
前記振動子から出力された受信信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化し、該復号化された受信信号に基づいて前記被検体内の画像データを生成する画像処理部と、
フレームの異なる複数の画像データから前記被検体内の体動情報を測定する体動情報測定部と、
前記体動情報測定部による体動情報の測定結果に基づいて、前記送信部による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する制御部と、
を備え、
前記送信部は、前記駆動信号を前記制御部によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信部は、バーカーコードによる符号化を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信部は、ゴーレイコードによる符号化を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信部は、時間に依存して周波数が変化するチャープパルスによる符号化を行い、
前記制御部は、周波数の変化幅を決定することによってパルス信号のパルス数を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項1】
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波をパルス信号に変換して受信信号として出力する振動子を有する超音波探触子と、
前記駆動信号を複数のパルス数からなるパルス信号に符号化して前記振動子に供給する送信部と、
前記振動子から出力された受信信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信した受信信号に対してパルス圧縮を行って復号化し、該復号化された受信信号に基づいて前記被検体内の画像データを生成する画像処理部と、
フレームの異なる複数の画像データから前記被検体内の体動情報を測定する体動情報測定部と、
前記体動情報測定部による体動情報の測定結果に基づいて、前記送信部による駆動信号の符号化を行うためのパルス信号のパルス数を決定する制御部と、
を備え、
前記送信部は、前記駆動信号を前記制御部によって決定されたパルス数のパルス信号に符号化することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信部は、バーカーコードによる符号化を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信部は、ゴーレイコードによる符号化を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信部は、時間に依存して周波数が変化するチャープパルスによる符号化を行い、
前記制御部は、周波数の変化幅を決定することによってパルス信号のパルス数を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−24438(P2012−24438A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167834(P2010−167834)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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