説明

超音波診断装置

【課題】特定の言語で被検体に指示を与えることにより検査効率を向上させること。
【解決手段】本実施形態に係る超音波診断装置は、複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声ファイルを記憶する音声ファイル記憶部と、前記複数の音声ファイルから、患者情報に基づいて一つの音声ファイルを選択する音声ファイル選択部と、前記選択された音声ファイルを音声出力する音声出力部と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、特定の言語で被検体に指示する機能を有する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置の一種である超音波診断装置によれば、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で、心臓の拍動、および胎児の動きの様子などが、リアルタイムで表示される。超音波診断装置は、放射線被曝がないため、高い安全性を有する。これにより、超音波診断装置は、繰り返して検査が行われること、産科、および在宅医療などに使用される。加えて、超音波診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置(Computed Tomography)、X線診断装置、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging)などの医用画像診断装置に比べて小型である。これにより、超音波診断装置をベッドサイドに移動させることができるため、被検体を検査室へ移動させることなく、超音波診断装置を使用することができる。また、携行可能な超音波診断装置は、被災地等で使用されることもある。
【0003】
超音波診断装置を使用した超音波検査では、操作者と被検体との対話が頻繁に行われる。例えば、被検体が筋肉または腱を損傷している場合、操作者は、被検体が痛みを訴える角度および動きなどを被検体に再現させる。操作者は、この角度および動きなどに対応した断層像を超音波診断装置に表示させる。また、心臓および肝臓などの臓器について超音波検査が実行されるとき、操作者は、呼吸調整および体位変換等に関する案内(以下ガイドと呼ぶ)を被検体に与える。被検体へのガイドは、超音波検査においては不可欠な手続きとなっている。ガイドに対する被検体の協力により、操作者が所望する的確な超音波画像が短時間で得られる。加えて、操作者は、被検体に痛みの個所および程度などを問診しながら超音波検査を進めることで、さらに詳細な超音波検査を実施することができる。
【0004】
しかしながら、近年、被検体の国籍および人種が多様化することにより、操作者と被検体との言語の不一致が発生し、ガイドおよび意思の疎通などが被検体に伝わりにくい問題がある。これにより、検査時間の延長、的確な超音波画像が得られないことによる診断への影響などが発生する問題がある。検査時間の延長は、操作者および被検体にとって負担となり、かつ検査効率が低下する。診断への影響は、診断の質を低下させる問題がある。また、救急により搬送される被検体には、付き添い人がいない場合が多い。このため、適切な検査が実施されないと被検体の生命にかかわる危険性がある。加えて、被災地または戦場などにおける携行可能な超音波診断装置を用いた救命活動において、被検体との意思の疎通ができない場合、被検体における疾患の重症度が特定できない問題がある。このとき、救急病院へ被検体を搬送する緊急度などが判定できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−75410号公報
【特許文献2】特開2008−67935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、特定の言語で被検体に指示を与えることにより、検査効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る超音波診断装置は、複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声ファイルを記憶する音声ファイル記憶部と、前記複数の音声ファイルから、患者情報に基づいて一つの音声ファイルを選択する音声ファイル選択部と、前記選択された音声ファイルを音声出力する音声出力部と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係り、被検体に対するガイドを、特定された言語で音声出力する手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、第1の実施形態に係り、被検体に対するガイドの音声出力に関する概要を示す概要図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の第1の変形例に係る超音波診断装置の構成を示す構成図である。
【図5】図5は、第1の変形例に係り、図2における言語の特定をパターンマッチングにより実行する手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第1の変形例に係り、被検体に対するガイドの音声出力に関する概要を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ11、超音波送受信部21、Bモード処理部23、ドプラ処理部25、画像発生部27、インターフェース部29、入力部31、画像データ記憶部32、音声ファイル記憶部33、制御プロセッサ(中央演算処理装置:Central Processing Unit:以下CPUと呼ぶ)35、音声ファイル選択部37、音声出力部39、文字列出力部40、表示部41を有している。加えて本超音波診断装置1には、心電計、心音計、脈波計、呼吸センサに代表される図示していない生体信号計測部およびネットワークが、インターフェース部29を介して接続されてもよい。
【0011】
超音波プローブ11は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子としての圧電振動子を有する。複数の圧電振動子は並列され、超音波プローブ11の先端に装備される。なお、一つの振動子が一チャンネルを構成するものとして説明する。
【0012】
超音波送受信部21は、図示しないレートパルス発生器、送信遅延回路、パルサ、アンプ回路、A/D変換器、ビームフォーマ、加算器等を有する。レートパルス発生器では、所定のレート周波数で送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。送信遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に収束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。パルサは、このレートパルスに基づくタイミングで、所定のスキャンラインに向けて超音波ビームが形成されるように、振動子毎に駆動パルスを印加する。アンプ回路は、超音波プローブ11を介して取り込まれた被検体からのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、アナログ信号である増幅されたチャンネル毎のエコー信号をディジタル信号に変換する。ビームフォーマは、ディジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、CPU35からの受信遅延パターンに従って複数のエコー信号を加算する。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される(この指向性により、いわゆる「超音波走査線」が決まる。)。
【0013】
Bモード処理部23は、超音波送受信部21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるBモードデータを生成する。生成されたBモードデータは、画像発生部27において、所定の処理を受ける。
【0014】
ドプラ処理部25は、超音波送受信部21からエコー信号に基づいてドプラ処理を行う。ドプラ処理とは、速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報の計算を含む処理である。ドプラ処理されたデータ(以下ドプラデータと呼ぶ)は、画像発生部27において、所定の処理を受ける。
【0015】
画像発生部27は、Bモード処理部23からのBモードデータまたは、ドプラ処理部25からのドプラデータを位置情報に従って専用のメモリに配置(配置処理)する。続いて、画像発生部27は、超音波走査線間のBモードデータもしくはドプラデータを補間する(補間処理)。配置処理と補間処理とによって、複数のピクセルから構成される超音波画像データが発生される。各ピクセルは、由来するBモードデータもしくはドプラデータの強度に応じたピクセル値を有する。なお、画像発生部27へ入力される前のデータを「生データ」と呼ぶ。
【0016】
インターフェース部29は、入力部31、音声出力部39、文字列出力部40、ネットワーク、図示していない外部記憶装置および生体信号計測部に関するインターフェースである。本超音波診断装置1によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェース部29を介して、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0017】
入力部31は、インターフェース部29に接続され操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本超音波診断装置1に取り込む。入力部31は、図示していないトラックボール、被検体への複数種類のガイドにそれぞれ対応する複数のスイッチボタン、被検体が使用している言語(以下使用言語と呼ぶ)を選択するためのスイッチボタン(以下言語選択スイッチと呼ぶ)、マウス、キーボード等の入力デバイスを有する。被検体へのガイドの種類とは、例えば、「息を吸う」、「息を吐く」、「息を止める」、「横になる」、「起き上がる」などの超音波検査に必要な被検体への案内である。入力部31は、操作者の操作により複数のスイッチボタンのうちいずれかが操作されると、操作されたスイッチボタンに関する被検体へのガイドの情報を、音声ファイル選択部37へ出力する。
【0018】
複数のスイッチボタンの表面には、被検体への複数のガイドにそれぞれ対応した文字が表記されている。具体的には、スイッチ上の表記は、上記「息を吸う」等の表記、または被検体に話し掛ける言葉である「息を吸ってください」等の表記である。スイッチ上に表記された文字の言語は、本超音波診断装置1が設置されている病院で標準的に使用されている言語である。なお、スイッチ上に表記された文字の言語は、操作者が使用する言語であってもよい。例えば図3のcは、被検体へのガイド「息止め」が記されたスイッチボタンの一例である。
【0019】
入力デバイスは、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標をCPU35に出力する。なお、入力デバイスは、表示画面を覆うように設けられたタッチスクリーン(touch screen)でもよい。この場合、入力部31は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標をCPU35に出力する。また、操作者が入力部31の終了ボタンまたはFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、本超音波診断装置1は一時停止状態となる。
【0020】
入力部31は、被検体に関する患者情報を入力する。患者情報は、所定の言語特定項目を有する。所定の言語特定項目とは、例えば、被検体の使用言語、被検体の国籍、被検体の出生地、被検体の居住地の変遷、居住地それぞれの居住期間、氏名の特徴などである。なお、患者情報は、個人識別情報(例えば患者ID)、氏名、年齢、性別をさらに含んでいてもよい。具体的には、患者情報は、入力部31を介して、磁気カードまたはIC(Integrated Circuit)チップから収集される。なお、患者情報は、カルテなどに基づいて、操作者により手入力で本超音波診断装置1に入力されてもよい。入力部31入力された患者情報は、図示していない記憶部に記憶されてもよい。
【0021】
入力部31は、使用言語を決定するためのボタン(以下決定ボタンと呼ぶ)を有してもよい。なお、言語選択スイッチ、決定ボタンおよび複数種類のガイドにそれぞれ対応する複数のスイッチボタンは、タッチスクリーンを用いることで、後述する表示部41に表示させることも可能である。
【0022】
画像データ記憶部32は、Bモード処理部23とドプラ処理部25とにおいて走査方向単位でそれぞれ発生されたBモードデータとドプラデータ、画像発生部27で発生された超音波画像のデータ等を記憶する。なお、図示していない記憶部は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、本超音波診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群、患者情報、氏名の特徴のデータなどを記憶する。氏名の特徴のデータとは、国に応じた典型的な氏名に関するデータである。例えば、被検体の氏名がTadashi Yamadaである場合、氏名の特徴のデータとして、「日本人」および「日本語」が被検体の氏名のデータと関連付けられて記憶される。
【0023】
音声ファイル記憶部33は、複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声ファイルを記憶する。複数の音声ファイルは、被検体への一つのガイドと対応している。この一つのガイドに対応した複数の音声ファイルを音声ファイルセットと呼ぶ。複数の音声ファイルセットは、被検体への複数種類のガイドにそれぞれ対応する。音声ファイルそれぞれは、出力される音声に対応する文字列(以下ガイド文字列と呼ぶ)のデータを有する。ガイド文字列における言語は、対応する音声ファイルにおける言語と同一である。なお、ガイド文字列のデータは、音声ファイルと関連付けて図示していない記憶部に記憶されてもよい。
【0024】
なお、音声ファイル記憶部33は、被検体の使用言語を特定するための複数の音声ファイル(以下言語特定音声ファイルと呼ぶ)を記憶してもよい。言語特定音声ファイルは、複数の言語にそれぞれ対応付けられている。言語特定音声ファイルとは、被検体の出生国、被検体の国籍、被検体の使用言語などに関する質問に対応する音声ファイルである。言語特定音声ファイルそれぞれは、出力される音声に対応する文字列(以下言語特定文字列と呼ぶ)のデータを有する。言語特定文字列における言語は、対応する言語特定音声ファイルにおける言語と同一である。音声ファイル記憶部33は、言語特定文字列のデータを、言語特定音声ファイルと関連付けて記憶する。
【0025】
CPU35は、操作者により入力部31から入力されたモード選択、ROI設定、受信遅延パターンリストの選択、送信開始・終了に基づいて、図示していない記憶部に記憶された送受信条件と装置制御プログラムを読み出し、これらに従って、本超音波診断装置1を制御する。
【0026】
音声ファイル選択部37は、入力部31により入力された被検体へのガイドの種類に対応した複数の音声ファイルを特定する。音声ファイル選択部37は、入力部31により入力された患者情報に基づいて、複数の音声ファイルから一つの音声ファイルを選択する。具体的には、音声ファイル選択部37は、入力部31により入力された患者情報から、所定の言語特定項目を抽出する。音声ファイル選択部37は、所定の言語特定項目に基づいて、言語を特定する。抽出された言語特定項目に被検体の使用言語が含まれている場合、音声ファイル選択部37により特定される言語は、使用言語そのものである。音声ファイル選択部37は、特定された言語に基づいて、複数の音声ファイルから一つの音声ファイルを選択する。
【0027】
患者情報に使用言語が含まれていない場合、音声ファイル選択部37は、患者情報に含まれる被検体の出生地の情報に基づいて、言語を特定する。このとき特定される言語は、出生地を含む国の公用語である。なお、音声ファイル選択部37は、複数の公用語がある場合、公用語を使用している人口が最も多い言語を選択する。また、被検体の出生地が患者情報に含まれていない場合、音声ファイル選択部37は、出生地の代わりに被検体の国籍を用いることも可能である。患者情報に使用言語、被検体の出生地の情報、被検体の国籍の情報が含まれていない場合、音声ファイル選択部37は、患者情報に含まれる被検体の居住地の変遷に関して、最も長い居住期間に対応する居住地に基づいて、言語を特定する。このとき特定される言語は、最も長い居住期間に対応する居住地を有する国の公用語である。なお、出生地、国籍、居住地の変遷の情報が患者情報に含まれずに、被検体の氏名の特徴が国名と関連している場合、音声ファイル選択部37は、被検体の氏名の特徴を用いて言語を決定することも可能である。
【0028】
また、複数の言語特定項目に複数の言語が対応する場合、音声ファイル選択部37は、これら複数の言語に、特定される言語の候補の番号(以下、候補番号と呼ぶ)を付与する。候補番号は、例えば、被検体の国籍に関する言語を第1候補、被検体の出生地に関する言語を第2候補、被検体の居住地に関する言語を第3候補、被検体の氏名の特徴に関する言語を第4候補とする。なお、被検体の居住地が複数ある場合には、音声ファイル選択部37は、居住期間の長い順に候補番号を付与することも可能である。音声ファイル選択部37は、候補番号とともに複数の言語を、表示部41に表示させる。音声ファイル選択部37は、操作者による決定ボタンの操作に従って、複数の言語から一つの言語を特定する。
【0029】
抽出された所定の言語特定項目から言語を特定できない場合、音声ファイル選択部37は、言語特定音声ファイルに関する音声出力に対する被検体の反応に基づいて言語を特定してもよい。具体的には、音声ファイル選択部37は、言語が決定されるまで、言語特定音声ファイルを、後述する音声出力部39から順次音声出力させる。言語特定音声ファイルに関する音声出力は、例えば、「生まれた国はどこですか」、「どこの国の人ですか」、または「使用言語は何ですか」という内容である。音声ファイル選択部37は、言語特定音声ファイルの音声出力を契機として、言語特定文字列を、後述する文字列出力部40に出力させてもよい。音声ファイル選択部37は、操作者による決定ボタンの操作に対応して、言語を特定する。
【0030】
音声出力部39は、音声ファイル選択部37より選択された音声ファイルを音声出力する。なお、音声出力部39は、言語特定音声ファイルを音声出力してもよい。また、音声出力部39から音声出力される言語は、入力部31における言語選択スイッチにより、変更可能である。
【0031】
文字列出力部40は、音声出力部39から出力される音声を契機として、文字列を表示する。具体的には、文字列出力部40は、音声ファイルの音声出力を契機として、この音声ファイルに対応するガイド文字列を表示する。このときガイド文字列における言語は、音声出力における言語と同一である。文字列出力部40は、言語特定音声ファイルの音声出力を契機として、この言語特定音声ファイルに対応する言語特定文字列を表示する。このとき言語特定文字列における言語は、音声出力における言語と同一である。
【0032】
表示部41は、画像発生部27で発生された超音波画像を表示する。なお、表示部41は、タッチスクリーンを有していてもよい。このとき、表示部41は、複数のスイッチボタンおよび決定ボタンを表示する。なお、表示部41は、複数の言語特定項目に対応する複数の言語を、候補番号とともに表示してもよい。このとき表示部41は、複数の言語にそれぞれ対応する複数の言語選択スイッチを表示することも可能である。また、表示部41は、上記複数の言語以外の言語に対応する言語選択スイッチを、サブメニューとして表示させることも可能である。
【0033】
(音声出力機能)
音声出力機能とは、患者情報に基づいて複数の音声ファイルから一つの音声ファイルを選択し、選択された音声ファイルを音声出力する機能である。以下、音声出力機能に従う処理(以下音声出力処理と呼ぶ)を説明する。
【0034】
図2は、音声出力処理の流れを示すフローチャートである。
被検体に対する超音波送受信に先立って、磁気カード、ICチップ、または入力部31を介した操作者により、被検体の患者情報が入力される(ステップSa1)。加えて、送受信条件、種々の超音波データ収集条件の設定および更新などが実行される。被検体の情報、これらの設定および更新は、図示していない記憶部に記憶される。
【0035】
入力された患者情報から所定の言語特定項目が抽出される(ステップSa2)。抽出された所定の言語特定項目に基づいて、言語が特定される(ステップSa3)。なお、患者情報に使用言語が含まれている場合、特定される言語は使用言語そのものである。患者情報に使用言語が含まれていない場合、ステップSa3の処理は、例えば以下のようなものとなる。複数の言語特定項目に対応する複数の言語が、複数の言語選択スイッチとそれぞれ対応付けられて表示部41に表示される。表示された複数の言語選択スイッチから、言語が特定される。
【0036】
なお、言語を特定するための処理として、以下のような処理が実行されてもよい。まず、複数の言語特定音声ファイルが複数の言語それぞれについて順次音声出力される。被検体の反応または回答に基づいて、入力部41における決定ボタンが、操作者により操作される。決定ボタンの操作に基づいて、音声出力された言語特定音声ファイルに対応する言語が特定される。
【0037】
被検体へのガイドの種類が、入力部31を介して入力される(ステップSa4)。具体的には、ステップSa4は、入力部31における複数のスイッチボタンの操作に対応する。被検体へのガイドの種類が入力部31を介して入力されない場合(ステップSa4)、後述する超音波スキャンが実行される(ステップSa7)。ステップSa4で入力されたガイドの種類に対応する複数の音声ファイルが特定される。ステップSa3で特定された言語に基づいて、特定された複数の音声ファイルから一つの音声ファイルが選択される(ステップSa5)。
【0038】
選択された一つの音声ファイルが音声出力部39から音声出力される(ステップSa6)。このとき、文字列出力部40は、音声出力を契機として、この音声ファイルに対応するガイド文字列を表示してもよい。音声出力後、操作者は超音波プローブ11を被検体体表面の所定の位置に当接する。次いでCPU35が、ECG波形と同期しながら複数心拍に亘って、超音波を送信し、送信された超音波に対応する反射波の受信(すなわち超音波スキャン)を実行する(ステップSa7)。超音波スキャンが終了するまで、ステップSa4からステップSa7までの処理が繰り返される(ステップSa8)。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係り、被検体に対するガイドの音声出力に関する概要を示す概要図である。図3のaは、表示部41で表示される被検体のIDと名前と国籍を示している。図3のbは、音声ファイル記憶部33に記憶された複数の音声ファイルを複数の言語で表した一例を示している。図3のcは、入力部31における被検体へのガイドの種類「息止め」が記されたスイッチボタンの一例である。図3のaにおける国籍のタイに基づいて、音声ファイル選択部37は、タイ語を特定する。図3のcの入力部31において、被検体へのガイドの種類「息止め」が操作者opにより選択されると、「息止め」に関する複数の音声ファイルが特定される。特定された複数の音声ファイルから、タイ語の音声ファイルが選択される。選択された「息止め」に関するタイ語の音声ファイルが、音声出力部39からタイ語で音声出力される。
【0040】
(第1の変形例)
第1の変形例における構成要素において、第1の実施形態と重複しない構成要素と、第1の実施形態と重複する構成要素のうち異なる処理を行う構成要素とについて説明する。第1の実施形態との相違は、言語を特定する機能にある。
【0041】
図4は、第1の変形例に係る超音波診断装置の構成を示す構成図である。
【0042】
音声入力部30は、被検体が発した音声の音声信号を入力する。
【0043】
音声パターン記憶部34は、複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声パターンを記憶する。音声パターンは、複数の音素(母音および子音など)にそれぞれ対応する複数の音声波形から構成される。音素は、言語ごとに異なる。なお、音声波形の代わりに音声波形をフーリエ変換した周波数スペクトルを用いることも可能である。複数の音声パターンそれぞれは、言語ごとに異なる。一つの音声パターンは、一つの言語における単語、句、文のうち少なくともひとつに対応する。音声パターン記憶部34は、複数の音声パターンにそれぞれ対応する複数の文字列を記憶する。なお、音声パターンは、うめき声などの間投詞を用いることも可能である。音声パターン記憶部34に記憶される複数の音声パターンは、操作者により適宜追加、削除、更新されてもよい。
【0044】
文字列出力部40は、操作者の指示に従って、複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声パターンに関する文字列を表示する。
【0045】
音声解析部45は、音声入力部30により入力された音声信号を、音声パターン記憶部34に記憶された複数の音声パターンと照合する(以下、パターンマッチングと呼ぶ)。音声解析部45は、パターンマッチングにより、音声信号に対応する言語を特定する。音声パターンが音声波形のスペクトルである場合、音声解析部45は、音声信号をフーリエ変換する。音声解析部45は、フーリエ変換された音声信号を、複数の音声パターンと照合することにより、言語を特定する。
【0046】
なお、音声解析部45は、音声信号を複数の音声パターンそれぞれと照合することにより、複数の音声パターンにそれぞれ対応する複数の類似度を計算してもよい。類似度は、例えば、動的時間伸縮法などにより計算される。音声解析部45は、計算された複数の類似度のうち、最も高い類似度に対応する音声パターンを選択する。音声解析部45は、選択された音声パターンに対応する言語を特定する。
【0047】
(言語特定機能)
言語特定機能とは、音声入力部30により入力された音声信号を、音声パターン記憶部34に記憶された複数の音声パターンと照合することにより、音声信号に対応する言語を特定する機能である。
【0048】
以下、言語特定機能に従う処理(以下言語特定処理と呼ぶ)を説明する。
【0049】
図5は、第1の変形例に係り、図2における言語の特定をパターンマッチングにより実行する手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、図2のフローチャートにおけるステップSa1からステップSa3に対応する。
【0050】
被検体に対する超音波送受信に先立って、操作者の指示により、複数の音声パターンに対応する複数の文字列が、音声パターン記憶部34から読み出される。読み出された複数の文字列が、複数の音声パターンにそれぞれ対応する複数の言語で文字列出力部40に表示される(ステップSb1)。文字列出力部40に表示された複数の文字列の少なくとも一つに従って、被検体が発した音声の音声信号が入力される(ステップSb2)。入力された音声信号を複数の音声パターンと照合することにより、入力された音声信号に対応する言語が特定される(ステップSb3)。
【0051】
図6は、第1の変形例に係り、被検体に対するガイドの音声出力に関する概要を示す概要図である。図6のaは、音声パターン記憶部34に記憶された音声パターンの一例を示している。図6のbは、音声ファイル記憶部33に記憶された複数の音声ファイルを複数の言語で表した一例を示している。図6のcは、入力部31における被検体へのガイドの種類「息止め」が記されたスイッチボタンの一例である。音声入力部30を介して入力された被検体の音声の音声信号が音声解析部45に入力されると、音声パターン記憶部34から複数の音声パターンが読み出される。音声解析部45により特定された言語の情報が、音声ファイル選択部37に出力される。図3のcの入力部31において、被検体へのガイドの種類「息止め」が操作者opにより選択されると、「息止め」に関する複数の音声ファイルが特定される。特定された複数の音声ファイルから、特定された言語の情報に基づいて、音声ファイルが選択される。選択された音声ファイルが、音声出力部39から特定された言語で音声出力される。
【0052】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置1によれば、患者情報に含まれる言語特定項目に基づいて言語を特定し、特定された言語で被検体へのガイドを音声出力することができる。また、被検体が発した音声に基づいて、言語を特定することも可能である。これにより、操作者と被検体との間で使用言語が異なる場合においても、被検体へのガイドを円滑に行うことができ、操作者と被検体との意思の疎通が向上する。このことから、操作者および被検体への負担の軽減、超音波検査の効率化、および診断の質の向上などの効果を得ることができる。また、携行可能な本超音波診断装置1が使用される被災地、戦場などにおいても、被検体へのガイドが使用言語で音声出力されるため、被検体における疾患の重症度の特定および救急病院へ被検体を搬送する緊急度の判定ができるようになる。
【0053】
上記第1の実施形態の変形例として、本超音波診断装置1の技術的思想を医用画像診断装置で実現する場合には、例えば図1の構成図における点線内の構成要素を有するものとなる。音声出力機能における各処理は、第1の実施形態と同様である。第1の変形例における技術的思想を医用画像診断装置で実現する場合には、例えば図4の構成図における点線内の構成要素を有するものとなる。言語特定機能における各処理は、第1の変形例と同様である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…超音波診断装置、11…超音波プローブ、21…超音波送受信部、23…Bモード処理部、25…ドプラ処理部、27…画像発生部、29…インターフェース部、30…音声入力部、31…入力部、32…画像データ記憶部、33…音声ファイル記憶部、34…音声パターン記憶部、35…制御プロセッサ(CPU)、37…音声ファイル選択部、39…音声出力部、40…文字列出力部、41…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声ファイルを記憶する音声ファイル記憶部と、
前記複数の音声ファイルから、患者情報に基づいて一つの音声ファイルを選択する音声ファイル選択部と、
前記選択された音声ファイルを音声出力する音声出力部と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記音声ファイル選択部は、前記患者情報に含まれる被検体の居住地の変遷の中で、最も長い居住期間に対応する居住地に基づいて、前記複数の音声ファイルから一つの音声ファイルを選択すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記音声ファイル選択部は、前記患者情報に含まれる被検体の使用言語に基づいて、前記複数の音声ファイルから一つの音声ファイルを選択すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声パターンを記憶する音声パターン記憶部と、
前記複数の言語にそれぞれ対応する複数の音声ファイルを記憶する音声ファイル記憶部と、
前記複数の音声パターンにそれぞれ対応する複数の文字列を表示する文字列表示部と、
前記表示された複数の文字列のひとつに従って発せられた被検体の音声の音声信号を入力する音声入力部と、
前記複数の音声パターンを用いて、前記音声信号を解析する音声解析部と、
前記複数の音声ファイルから、前記音声解析部の出力に基づいて、一つの音声ファイルを選択する音声ファイル選択部と、
前記選択された音声ファイルを音声出力する音声出力部と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
前記音声解析部は、前記音声信号を前記複数の音声パターンと照合することにより、一つの言語を特定し、
前記音声ファイル選択部は、前記特定された言語に基づいて、前記複数の音声ファイルから一つの音声ファイルを選択すること、
を特徴とする請求項4記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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