説明

超音波診断装置

【課題】 血管の短軸方向(輪切り方向)を含む被検体の所定の領域の動きを追跡することにより、その所定の領域の位置変動から、正確に組織の追跡結果を表示する。
【解決手段】 超音波診断装置は、第1記憶部(115)に記憶された血管の短軸方向の超音波データに基づいて生成され、表示部に表示された所定の時刻の超音波画像における血管の内側の壁又は外側の壁に沿うように複数の関心領域を設定する関心領域設定部(125)と、所定の時刻から後に順次続くそれぞれの超音波画像において複数の関心領域にそれぞれ対応した被検体の組織の移動を追跡する追跡部(122)と、追跡部が追跡した組織の移動に基づいて所定の時間における組織の移動の情報を記憶する記憶部(115)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の状態を超音波によって診断する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳梗塞や心筋梗塞などの循環器系疾患に係る治療患者が急増している。これらの疾患を予防するには、動脈硬化の兆候を早期に察知して、生活習慣を改善することが重要である。動脈の診断に関してB(Brightness)モード画像で血管の径を計測する超音波診断装置が特許文献1に示されている。特許文献1は、モニターに表示されたBモード画像内にトレース用マークを操作者が設定し、設定されたトレース用マークを含む関心領域における画素値の輝度の相関を求めて、血管の径や血管壁を追跡する超音波診断装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−238903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に記載されるような、画素値の輝度の相関では、画像データの処理によって血管の径や血管壁が変わってしまうことがある。また、特許文献1では、血管の長軸方向(血液の流れる方向)のBモードの超音波画像が表示されているが、短軸方向(輪切り方向)にも血管の内径や血管壁の厚さなどが各種表示されることが好ましい。
【0005】
そこで上記問題点に鑑み、血管を含む被検体の所定の領域の動きを追跡することにより、その所定の領域の位置変動から、正確に組織の追跡結果を表示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の超音波診断装置は、被検体に超音波を順次送波し短軸方向の血管を含む被検体の所定の領域から受波した超音波を超音波データとして順次受信する送受信部と、順次受信された超音波データを記憶する第1記憶部と、順次受信された超音波データに基づいて血管の短軸方向の断層像を含む超音波画像を順次生成する画像生成部と、画像生成部によって生成された超音波画像を表示する表示部とを備えている。さらに装置は、第1記憶部に記憶された超音波データに基づいて生成され、表示部に表示された所定の時刻の超音波画像における血管の内側の壁又は外側の壁に沿うように複数の関心領域を設定する関心領域設定部と、所定の時刻から後に順次続くそれぞれの超音波画像において、複数の関心領域にそれぞれ対応した被検体の組織の移動を追跡する追跡部と、追跡部が追跡した組織の移動に基づいて所定の時間における組織の移動の情報を記憶する第2記憶部と、を備える。
【0007】
第2の観点の超音波診断装置では、血管の短軸方向の断層像を含む超音波画像がBモード画像である。
第3の観点では、追跡部は空間的輝度勾配を利用した勾配法で組織を追跡する。
【0008】
第4の観点の超音波診断装置では、関心領域設定部は血管の断面中心となるような中心点が設定されると中心点を中心とした円を表示させ、円上に複数の関心領域を設定する。
第5の観点では、関心領域設定部は血管の断面中心となるような中心点が設定されると中心点を中心とした半径が異なる2つの円を表示させ、中心点からの放射指標と2つの円との交点を含む領域を関心領域として設定するとともに、交点間を結んだ放射指標上の一部の直線を表示させる。
第6の観点では、関心領域設定部は交点以外に2つの円上の所定の点を関心領域として設定する。
【0009】
第7の観点の超音波診断装置では、表示部が第2記憶部が記憶した組織の移動の情報に基づいて、組織の経時的な移動の追跡結果を表示する。
第8の観点では、表示部が第2記憶部が記憶した組織の移動の情報に基づいて、血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への組織の経時的な移動の追跡結果を表示する。
第9の観点では、表示部が第2記憶部が記憶した組織の移動の情報に基づいて、血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への血管の壁の厚さの経時的な変化の追跡結果を表示する。
第10の観点では、表示部が第2記憶部が記憶した組織の移動の情報に基づいて、血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への血管の内径の経時的な変化の追跡結果を表示する。
【0010】
第11の観点では、表示部は第2記憶部が記憶した組織の移動の情報に基づいて、血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への血管の外径の経時的な変化の追跡結果を表示する。
第12の観点では、表示部は、第2記憶部が記憶した組織の移動の情報に基づいて、血管の断面積の経時的な変化の追跡結果を表示する。
第13の観点では、表示部が第2記憶部が記憶した組織の移動の情報に基づいて、被検体の組織間の距離の経時的な変化の追跡結果を表示する。
第14の観点では、複数の関心領域が同じ移動量で同じ方向に移動していると追跡部が判断した際には、関心領域の全体が移動したとして、表示部に関心領域を移動させて表示させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の超音波診断装置は、短軸方向の血管を含む被検体の所定の領域の動きを追跡し、被検体の組織の移動を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る血管計測方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】濃淡画像の輝度勾配について説明した図である。
【図4】血管BVにオペレータが関心領域ROIを設定し終えた図である。
【図5】関心領域設定部125の支援を受けて関心領域ROIを設定する第1例である。
【図6】関心領域設定部125の支援を受けて関心領域ROIを設定する第2例である。
【図7】表示部127に表示された一連の超音波画像に第1円CC1、第2円CC2及び8本の放射指標RLが設定された状態を示した図である。
【図8】血管BVの関心領域ROIの追跡結果を示したグラフである。
【図9】血管壁の厚さ及び血流領域104の断面積を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<超音波診断装置100の構成>
図1は、本実施の形態に係る超音波診断装置100の構成を示すブロック図である。超音波診断装置100は、パラレルバスに接続された送受信部110、メモリ115、CPU(central processing unit)120、マウス又はキーボード等の入力部126及び液晶画面等の表示部127を有している。
【0014】
送受信部110は超音波プローブ111、送信回路112及び受信回路113を有する。超音波プローブ111は、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサを備えている。これらの超音波トランスデューサは、印加される駆動信号に基づいて被検体に向けて超音波を送波すると共に、被検体において反射された超音波エコーを受波することにより受信信号を出力する。
【0015】
送信回路112は、複数のチャンネルを備えており、複数の超音波トランスデューサにそれぞれ印加される複数の駆動信号を生成する。その際に、送信回路112は、複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するように、複数の駆動信号の遅延量を調節して超音波プローブ111に供給するようにしても良い。また、送信回路112は、複数の超音波トランスデューサから一度に送信される超音波が被検体の撮像領域全体に届くようにした複数の駆動信号を超音波プローブ111に供給するようにしても良い。
【0016】
受信回路113は、複数のチャンネルを備えており、複数の超音波トランスデューサからそれぞれ出力される複数のアナログの受信信号を受波して増幅し、ディジタルの受信信号に変換する。さらに、送受信部110によって選択された受信遅延パターンに基づいて、複数の受信信号にそれぞれの遅延時間を与え、それらの受信信号を加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理によって、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線データが形成される。
【0017】
本実施形態では、超音波プローブ111は、被検体の表面から被検体内の血管BVに向けて超音波を送波する。また、超音波プローブ111は血管BVを含む被検体からの超音波エコーを受波する。送受信部110は超音波の送波及び超音波エコーの受波を繰り返し、順次音線データを出力する。音線データは受信回路113でLog圧縮、ゲイン調整等の処理又はローパスフィルタ処理等が施され、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰補正が施される。処理された音線データは、パラレルバスを介してメモリ115に順次格納される。
【0018】
メモリ115は複数フレーム分の音線データ116又は画像生成部121で生成される断層画像データ117を蓄積するための容量を有する。
【0019】
CPU120は、画像生成部121、追跡部122、移動量計測部123、画像合成部124及び関心領域設定部125を有する。
画像生成部121は、画像データ生成機能を備えており、供給される音線データを入力しB(Brightness)モードの断層画像データを生成する。画像生成部121はBモードの断層画像データを通常のテレビジョン信号の走査方式に従う断層画像データに変換し、階調処理等の必要な画像処理を施して画像合成部124又は表示部127に伝送したり、メモリ115に順次格納する。また画像生成部121は関心領域設定部125で設定される交点109を表示部127に表示させる。
【0020】
また、ライブモードにおいては画像生成部121は直接供給される音線データを走査方式に従う断層画像データに変換し、フリーズモードにおいてはメモリ115に記憶された断層画像データ117を走査方式に従う断層画像データに変換する。なお、フリーズモードにおいてメモリ115が断層画像データ117ではなく音線データ116を記憶している場合には画像生成部121はBモードの断層画像データを生成する。
【0021】
関心領域設定部125は、オペレータがマウス等の入力部126を用いて超音波画像の関心領域(ROI:Region Of Interest)を指定するための交点109を表示する。オペレータはマウス等で第1円CC1と第2円CC2とを移動させ、第1円CC1及び第2円CC2と放射指標RLとの交点109を表示部127上で移動させる。そして関心領域設定部125は、オペレータが指定した交点109の信号に基づいて、超音波画像に対して指定された交点109を含む周囲の領域を関心領域ROIとして設定する。関心領域ROIの大きさは関心領域設定部125が自動的に設定する。そして、関心領域設定部125は関心領域ROIにおける画像データを抽出する。一度、関心領域ROIが設定されると、関心領域設定部125は、メモリ115に記憶されている断層画像データ117(又はメモリ115に記憶されている音線データ116)に対しても関心領域ROIにおける断層画像データを抽出する。関心領域設定部125が設定した関心領域ROIについて抽出された断層画像データは追跡部122に供給される。
【0022】
なお、図1に示された被検体内の血管BVの短軸方向の図には、関心領域ROIとが表示されているが、必ずしも関心領域ROIは表示部127に表示されなくてもよい。また、以下に説明する追跡部122から血管BVが全体として移動しているとの追跡結果を受けると、表示部127はポイント109、関心領域ROIを血管全体の移動に追従させて表示することもできる。
【0023】
追跡部122は、所定時刻から関心領域ROIがどのベクトル方向に移動しているかを追跡する。関心領域ROIを追跡する手法には、動画像における運動物体の見かけの速度場(オプティカルフロー:Optical Flow)を計算する手法が用いられる。オプティカルフローにはいろいろな手法があるが、発明者の実験によると、血管壁の追跡には勾配法が適していた。勾配法は微細な動きを追跡するのに適しており、特に勾配法が血管壁の微細な追跡に適していた。追跡部122が関心領域ROIを追跡した結果は、画像合成部124、移動量計測部123及びメモリ115に伝送される。
【0024】
移動量計測部123は、追跡部122が追跡した関心領域ROIの組織の移動に基づいて所定の時間の組織の移動距離を求める。すなわち、移動量計測部123は、組織の移動距離に基づいて血管BVの径の変化や血管BVの弾性率などを求めることができる。移動量計測部123が計測した追跡結果は、画像合成部124、メモリ115及び表示部127に伝送される。メモリ115に伝送された追跡結果は移動情報118として記憶される。表示部127に伝送された追跡結果は、関心領域ROI内の組織の移動量としてリアルタイムに表示される。
【0025】
画像合成部124は、画像生成部121から供給された断層画像データ、追跡部122で追跡された移動情報118及び移動量計測部123が計測した追跡結果を画像合成したり、そのうちの2つを画像合成したりする。画像合成部124は、必要に応じてメモリ115に記憶された音線データ116又は断層画像データ117を読み出すことができる。
【0026】
ここで、図1に示された被検体内の血管BVの短軸方向の図について説明する。
血管BVは、血液が流れる血流領域104を囲むように構成された血管壁103を有している。第1円CC1及び第2円CC2と放射指標RLとの交点109は、図1では、16箇所ある。そのそれぞれの交点109に対して関心領域設定部125は関心領域ROIを設定している。関心領域ROIは必ずしも表示部127に表示される必要は無く、図1では1箇所の関心領域ROIが点線で示されている。なお短軸方向とは血管BVの輪切り方向を意味する。
【0027】
<血管の計測方法>
図2は、本実施形態に係る血管計測方法の手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、オペレータは表示部127に表示された超音波画像の動画像が安定して取得できていることを確認し、フリーズボタン(不図示)を押す。
ステップS12において、フリーズボタンが押されると、フリーズボタンを押した数秒もしくは十数秒前から現在までの音線データ116又は断層画像データ117がメモリ115に保存され、保存された最初のフレームの超音波画像が表示部127に表示される。フリーズボタンを押してから数秒もしくは十数秒後までの音線データ116又は断層画像データ117がメモリ115に保存されてもよい。
【0028】
ステップS13において、オペレータは、表示部127に表示された最初のフレームの超音波画像に対して、パラレルバスを介して接続されたマウス等の入力部126を使って交点109を指定する。関心領域設定部125は交点109を含むその周囲の領域に関心領域ROIを設定する。オペレータは、関心領域設定部125を介して、容易に表示部127に表示された被検体内の血管BVに対して関心領域ROIを設定することができる。本実施形態では少なくとも2以上の関心領域ROIが設定される。
【0029】
ステップS14において、追跡部122が、最初のフレームの超音波画像から所定時間経過した時点までのフレームの超音波画像を使って、少なくとも2か所の関心領域ROIに含まれる組織の移動を追跡する。関心領域の追跡については勾配法を使う。
ステップS15において、移動量計測部123が、例えば2か所の関心領域ROIに含まれる組織の移動を追跡する。例えば、2か所の関心領域ROIが血管BVの中心に対して対称な血管壁103の2箇所の内壁であれば、血管BVの内径が最初のフレームの超音波画像からどのように変化しているかが分かる。
【0030】
ステップS16において、表示部127は移動量計測部123が計測した追跡結果、例えばグラフを表示する。すでに表示されている超音波画像に隣接してグラフを表示してもよいし、別のウィンドウでグラフを表示してもよい。
【0031】
<勾配法による関心領域の追跡>
ここで、ステップS14で追跡部122が関心領域ROIに含まれる組織の移動を追跡するオプティカルフロー法について説明する。オプティカルフロー法には大別して画像の特徴と比較照合し移動量を求める特徴照合法と、画像の濃淡(明るさ)の勾配を求め画像の濃淡の差から移動量を求める勾配法とがある。本発明者はBモードで表示された血管BVを含む超音波画像に対して、特徴照合法及び勾配法による追跡誤差を実験した。その結果、勾配法は追跡誤差が極めて小さかった。勾配法は、処理が高速で信頼度の高い最も良い手法の一つである。
【0032】
図3に示されるように濃淡画像F(p,t)は濃淡の勾配(輝度勾配)を有している。勾配法はこの濃淡の勾配を利用して関心領域ROIに含まれる組織の移動を追跡する。
【0033】
図3に示されるように、ある時刻tの濃淡画像F(p,t)が微小時間後(δt)にその濃淡分布を一定に保ったまま移動した時の画像を濃淡画像G(p+δp,t+δt)とする。このとき以下の式で移動量が求められる。
【数1】


…数式1
この数式1を反復演算すると、関心領域ROIに含まれる組織の移動量(ベクトル)を求めることができる。
なお、hは移動推定量、w(p)は重み付け係数、F(p)は移動前の濃淡画像、G(p)は移動後の濃淡画像である。F’(p)は一回微分を示している。
【0034】
勾配法は、心拍による血管壁の移動などの小さな動きに対して優れた追跡を発揮する。勾配法を使って、関心領域ROIに含まれる組織の移動を追跡すると、心拍による血管BVの壁の微細な動きを正確に追跡することができる。
【0035】
<関心領域の設定>
図4は、表示部127に表示された短軸方向(輪切り方向)の血管BVにオペレータが関心領域ROIを設定し終えた図である。図2のステップS13で関心領域ROIが設定される工程である。
【0036】
オペレータは、表示部127に表示された最初のフレームの超音波画像を確認する。そしてオペレータは、短軸方向の血管BVが関心領域ROIを設定しやすい断層像であるかを確認し、関心領域ROIを設定しやすい断層像であれば、ROI設定ボタン(不図示)を入力部126を介してマウスポインタMPでクリックする。すると関心領域設定部125(図1を参照)は、表示部127に血管壁用のROI設定ウィンドウ131を表示させる。
【0037】
血管壁用のROI設定ウィンドウ131は、中心指標ボタン133、放射指標ボタン134、確定ボタン137、第1支援ボタン138及び第2支援ボタン139を有している。
【0038】
中心指標ボタン133がマウスポインタMPでクリックされると、十字状の十字指標CPが表示部127に表示される。また、十字指標CPを中心とした第1円CC1及び第1円CC1よりも大きな直径の第2円CC2が表示される。オペレータは十字状の十字指標CPをマウスポインタMPで適切な位置、例えば血管BVの断面中心に移動させることができる。十字指標CPの移動に伴って第1円CC1及び第2円CC2も移動する。さらにオペレータは第1円CC1及び第2円CC2の直径もマウスポインタMPで適切な位置に移動させることができる。
【0039】
放射指標ボタン134がマウスポインタMPでクリックされると、十字指標CPを通る放射線状の放射指標RLが表示部127に表示される。放射指標ボタン134が複数回クリックされると、最初に表示された放射線状の指標RLと重ならない角度で放射指標RLが表示される。図4では十字指標CPを原点として、0度及び180度方向に伸びる放射指標RL、90度及び270度方向に伸びる放射指標RLが表示されている。また、十字状の指標CPを通り、45度及び225度方向並びに135度及び315度に伸びる放射指標RLも表示されている。これらの放射指標RLは指標CP付近では消えて表示されていない。短軸方向の血管BVに対して中心に配置された十字指標CP付近には関心領域ROIが設定されることが稀であるからである。
【0040】
第1円CC1及び第2円CC2と放射指標RLとが設定されたことにより、図4では合計16点の交点109が指定された。関心領域設定部125は交点109を含むその周囲の領域に関心領域ROIを設定する。16点の関心領域ROIが設定されているが、図4では、90度に伸びる放射指標RLと第1円CC1及び第2円CC2との交点109に、関心領域ROI(R1,R2)が表示されている。なお、図4では第1円CC1及び第2円CC2は真円で描かれているが、これに限られず円の形状は楕円であってもよい。
【0041】
図4では関心領域設定部125が、放射指標RLを使って0度方向、90度方向、180度方向及び270度方向の血管BVの内壁及び外壁に、関心領域ROIのR1〜R8を設定している。オペレータがさらに任意の位置に関心領域ROIを設定したい場合には、そのような関心領域の追加設定ボタン等をROI設定ウィンドウ131に設けてもよい。オペレータが設定したい関心領域ROIがすべて設定できていたら、オペレータは確定ボタン137をクリックする。また、オペレータは第1支援ボタン138又は第2支援ボタン139をクリックすると関心領域ROIの設定を支援する放射指標等を表示させることができる。
【0042】
例えば超音波プローブ111と被検体との接触などがずれてしまい、血管BVの全体が移動してしまったうことがある。このため追跡部122は、16点の関心領域ROIの組織の移動量がほぼ同じで同じ方向に移動している場合には、個々の関心領域ROIの組織が移動したとは判断せず血管BVの全体が移動したと判断する。このような場合には、表示部127は放射指標RLと第1円CC1と第2円CC2とは、最初に指定又は設定した箇所に追従して移動した状態で表示される。また移動量計測部123は各関心領域ROIの組織の移動を、全体の移動量を差し引いた移動量で表示する。16点の関心領域ROIの組織の移動量を平均化して算出する。
【0043】
<関心領域の設定支援:第1例>
図5は、関心領域設定部125(図1を参照)の支援を受けて関心領域ROIを設定する説明図である。左側のフローチャートに対して右側にその状況を図示している。図5では、関心領域ROIを血管BVの水平方向の内壁と外壁とに設定する第1例を示す。このため、図4で設定した関心領域ROIのR5〜R8を図示している。なお、水平方向とは表示部127に表示された超音波画像の水平方向を意味する。
【0044】
ステップS111にて、オペレータは第1支援ボタン138(図4を参照)をクリックすると、関心領域設定部125は、血流領域104のほぼ中心に十字指標CPを表示させる。血流領域104はBモード画像で輝度の暗いほぼ円形で表示されていることが多い。このため、関心領域設定部125は画像を二値化して画像処理して血管BVのほぼ中心を求めて、そこに十字指標CPを表示させる。オペレータが十字指標CPが血管BVの中心でないと判断すれば入力部126を介してマウスポインタMPで十字指標CPを中心に移動させることも可能である。その後、オペレータが確定ボタン137をクリックする。
【0045】
すると関心領域設定部125は、ステップS112にて、十字指標CPを中心とした第1円CC1及び第1円CC1よりも直径が大きい第2円CC2を表示させる。第1円CC1と第2円CC2とは同心円である。なお、図5では第1円CC1及び第2円CC2は真円で描かれているが、これに限られず円の形状は楕円であってもよい。
【0046】
ステップS113にて、オペレータはマウスポインタMPで第1円CC1を血管BVの内壁に沿うように移動させ、第2円CC2を血管BVの外壁に沿うように移動させる。その後オペレータは確定ボタン137をクリックする。
【0047】
すると関心領域設定部125は、ステップS114にて、十字指標CPから放射状に伸びる8本の放射指標RLを表示する。放射指標RLは、第1円CC1と第2円CC2と間で伸びており、十字指標CPを中心として0度から315度まで45度ずつ表示される。なお、本実施形態では8本の放射指標が表示されているが、これに限定されず6本の放射指標RLであってもよい。
【0048】
これにより第1円CC1、第2円CC2及び8本の放射指標RLとの交点109が16箇所に形成され、関心領域設定部125は交点109を含むその周囲の領域に関心領域ROIを設定する。
【0049】
血管BVがほぼ真円であっても血管BVの内径を計測する場合に、血管BVの中心を通らない位置に関心領域ROIを設定してしまっては正しい内径を計測できない。心拍等によって血管壁が変形していると、さらに関心領域ROIを設定し難い。そこで、上述したように十字指標CPを中心とした第1円CC1及び第2円CC2並びに放射指標RLを表示させて交点109を指定する。これにより複数の関心領域ROIが設定しやすくなる。
【0050】
<関心領域の設定支援:第2例>
図6は、関心領域設定部125(図1を参照)の支援を受けて関心領域ROIを設定する第2例の説明図である。
【0051】
オペレータは第2支援ボタン139(図4を参照)をクリックする。
すると、ステップS211にて、関心領域設定部125は、0度−180度方向に伸びる放射指標RL及び90度―270度方向に伸びる放射指標RLを表示する。
【0052】
ステップS212にて、オペレータは入力部126を介してマウスポインタMPで2本の放射指標RLを血管BVの中心に移動させる。なお2本の放射指標RLは一体として移動する。
【0053】
ステップS213にて、オペレータが確定ボタン137をクリックすると、関心領域設定部125は、2本の放射指標RLの交点を中心とした第1円CC1及び第1円CC1よりも直径が大きい第2円CC2を表示させる。第1円CC1と第2円CC2とは同心円である。なお、図6では第1円CC1及び第2円CC2は真円で描かれているが、これに限られず円の形状は楕円であってもよい。
【0054】
ステップS214にて、オペレータはマウスポインタMPで第1円CC1を血管BVの内壁に沿うように移動させ、第2円CC2を血管BVの外壁に沿うように移動させる。その後オペレータは確定ボタン137をクリックする。
【0055】
確定ボタン137がクリックされると、関心領域設定部125は、第1円CC1、第2円CC2及び8本の放射指標RLとの交点109を含むその周囲の領域に関心領域ROIを設定する。
【0056】
ステップS212にて、オペレータが2本の放射指標RLを血管BVの中心に移動させたが、図5のステップS111で説明したように、関心領域設定部125が画像処理で2本の放射指標RLの交点を血管BVのほぼ中心に表示させてもよい。また、2本の放射指標RLは、45度−225度方向に伸びる放射指標RL及び135度―315度方向に伸びる放射指標RLであってもよく、4本の放射指標RLを表示させるようにしてもよい。
【0057】
<関心領域の追跡情報>
図7は、表示部127に表示された一連の超音波画像に第1円CC1、第2円CC2及び8本の放射指標RLが設定された状態を示した図である。図7の左側は、所定時刻T1から所定時間経過した時刻T2までの複数のフレームの超音波動画像を再生している状態を示しており、図7の右側には連続フレームのうちの時刻T1のフレームの超音波画像と時刻T2のフレームの超音波画像とを抜粋したものである。交点109のうち、図7から図9で説明したい関心領域ROI(R1〜R8)を表示させている。説明のために関心領域ROI(R1〜R8)が描かれているのであって必ずしも表示される必要はない。
【0058】
血管BVは心拍により、時刻T1の血管BVと時刻T2の血管BVの長軸方向の断面形状が変わる。そして、関心領域ROI(R1〜R8)で示された組織は、それぞれ画面水平方向及び垂直方向に移動する。本実施形態では、8つの関心領域ROIが設定されているため、そのうちの1つの関心領域ROI(R1)を選択すれば、移動量計測部123(図1参照)はその関心領域ROI(R1)の垂直方向及び水平方向の移動量を計測することができる。
【0059】
また8つの関心領域ROIの少なくとも2つを選択すれば、移動量計測部123はその2つの関心領域ROIの距離情報を計測することができる。垂直指標VLには、関心領域ROI(R5〜R8)が正確に水平方向に設定されている。このため、関心領域ROI(R5)及び(R6)に基づいて血管壁103の厚さを、もしくは関心領域ROI(R7)及び(R8)に基づいて血管壁103の厚さを正確に確認できる。また関心領域ROI(R5)及び(R8)に基づいて血管壁103の外径を、もしくは関心領域ROI(R6)及び(R7)に基づいて血管壁103の内径を正確に確認できる。
【0060】
図8及び図9は、図2のステップS16において、移動量計測部123が計測した追跡結果をグラフ表示した例である。これらのグラフは移動量計測部123は図7に示した関心領域ROI(R1〜R8)の移動量に基づいて表示されている。
【0061】
図8は、血管BVの関心領域ROIの追跡結果を示したグラフである。
図8(a)は、移動量計測部123が関心領域ROI(R8)の水平方向の追跡結果を表示部127に表示させた例である。縦軸に位置(mm)、横軸に時間を採っている。関心領域ROI(R8)の垂直方向の追跡結果を示したグラフ201は、関心領域ROI(R8)である血管壁103の外壁が心拍によって血管BVの断面中心から放射方向(外側から内側へ及び内側から外側へ)大きく変動していることを示している。
【0062】
図8(b)は、移動量計測部123が関心領域ROI(R2)と関心領域ROI(R3)との垂直方向の追跡結果を表示部127に表示させた例である。関心領域ROI(R2)は血管壁103の上側の内壁であり関心領域ROI(R3)が下側の内壁である。関心領域ROI(R2)の追跡結果を示したグラフ203及び関心領域ROI(R3)の追跡結果を示したグラフ204は、血管壁103の内壁が心拍によって垂直方向に変動していることを示している。また、グラフ203とグラフ204との差が血管BVの垂直方向の内径であることを示している。移動量計測部123は内径指標225を表示させて、オペレータがマウスポインタMPを使って内径指標225を移動させることで、任意の時間の血管BVの内径を表示させることも可能である。
【0063】
図8(c)は、移動量計測部123が関心領域ROI(R6)と関心領域ROI(R7)との水平方向の追跡結果を表示部127に表示させた例である。関心領域ROI(R6)は血管壁103の左側内壁であり関心領域ROI(R7)が右側の内壁である。関心領域ROI(R6)のグラフ205及び関心領域ROI(R7)のグラフ206は、血管壁103の内壁が心拍によって水平方向に変動していることを示している。また関心領域ROI(R6)と関心領域ROI(R7)とは血管BVの水平方向であるため、グラフ205とグラフ206との差が血管BVの水平方向の内径であることを示している。
【0064】
図9は、追跡結果の一つである血管壁の厚さ及び血流領域104の断面積を示したグラフである。
図9(a)は、心拍信号のグラフ210である。被検体にセンサ(不図示)を取り付け、その心拍信号を表示させている。
【0065】
図9(b)は、移動量計測部123が関心領域ROI(R1)と関心領域ROI(R2)との垂直方向の差、すなわち上側の血管壁103の厚さのグラフ211を表示部127に表示させた例である。心拍信号のグラフ210に同期させて血管壁103の厚さのグラフ211が表示されている。
【0066】
図9(c)は、移動量計測部123が関心領域ROI(R3)と関心領域ROI(R4)との垂直方向の差、すなわち下側の血管壁103の厚さのグラフ212を表示部127に表示させた例である。心拍信号のグラフ210に同期させて血管壁103の厚さのグラフ212が表示されている。
【0067】
同様に、図9(d)は、移動量計測部123が関心領域ROI(R5)と関心領域ROI(R6)との水平方向の差から左側の血管壁103の厚さを示したグラフ213であり、図9(e)は関心領域ROI(R7)と関心領域ROI(R8)との水平方向の差から右側の血管壁103の厚さを示したグラフ214である。
【0068】
図9(f)は、移動量計測部123が血流領域104の断面積のグラフ215を表示部127に表示させた例である。図7では、関心領域ROI(R2)、(R3)、(R6)及び(R7)、さらに図示されていない4つの関心領域ROIが血管壁103の内壁に設定されている。そのため移動量計測部123はこれらの移動量から血流領域104の断面積を計測する。図7では8つの関心領域ROIが血管壁103の内壁に設定されていたが、より多くの関心領域ROIを血管壁103の内壁に設定すれば、さらに正確な血流領域104の断面積を計測することができる。
【0069】
上記実施形態では、移動量計測部123が血管壁の厚さの変化、血管BVの内径の変化などを表示した例を示した。しかしこれに限られるものではなく、血管BVの外径の変化、血管壁103の断面積の変化などを計測し表示させることも可能である。また、図9(a)で示されたように、心拍又は血圧が測定されれば、移動量計測部123はスティッフネスパラメータ又は血管壁径方向平均弾性率なども計測することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 … 超音波診断装置
103 … 血管壁
104 … 血流領域
110 … 送受信部、111 … 超音波プローブ
112 … 送信回路、113 … 受信回路
115 … メモリ、116 … 記憶された音線データ、
117 … 記憶された断層画像データ、118 … 記憶された移動情報
120 … CPU、121 … 断層画像生成部
122 … 追跡部、123 … 移動量計測部、124 … 画像合成部
125 … 関心領域設定部、126 … 入力部、127 … 表示部
131 … 設定ウィンドウ
132 … サイズボタン、133 … 中心指標ボタン、
134 … 放射指標ボタン、135 … 追加ボタン、136 … 削除ボタン
137 … 確定ボタン、138 … 第1支援ボタン、139 … 第2支援ボタン
201,203,204,205,206,210,211,212,213,214,215 … グラフ
225 … 内径指標
BV … 血管
CP … 十字指標、CC1 … 第1円、CC2 … 第2円
F,G … 画像 画像(21,23,25 … 画像)
MPマウスポインタ
RL … 放射指標
ROI(R1〜R8) … 関心領域
T1,T2 … 所定時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を順次送波し、短軸方向の血管を含む前記被検体の所定の領域から受波した超音波を超音波データとして順次受信する送受信部と、
前記順次受信された超音波データを記憶する第1記憶部と、
前記順次受信された超音波データに基づいて前記血管の短軸方向の断層像を含む超音波画像を順次生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって生成された超音波画像を表示する表示部と、
前記第1記憶部に記憶された超音波データに基づいて生成され、前記表示部に表示された所定の時刻の前記超音波画像における前記血管の内側の壁又は外側の壁に沿うように複数の関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記所定の時刻から後に順次続くそれぞれの前記超音波画像において、前記複数の関心領域にそれぞれ対応した前記被検体の組織の移動を追跡する追跡部と、
前記追跡部が追跡した前記組織の移動に基づいて所定の時間における前記組織の移動の情報を記憶する第2記憶部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記血管の短軸方向の断層像を含む超音波画像は、Bモード画像である請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記追跡部は、空間的輝度勾配を利用した勾配法で前記組織を追跡する請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記関心領域設定部は、前記血管の断面中心となるような中心点が設定されると前記中心点を中心とした円を表示させ、前記円上に前記複数の関心領域を設定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記関心領域設定部は、前記血管の断面中心となるような中心点が設定されると前記中心点を中心とした半径が異なる2つの円を表示させ、前記中心点からの放射指標と前記2つの円との交点を含む領域を前記関心領域として設定するとともに、前記交点間を結んだ前記放射指標上の一部の直線を表示させる請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記関心領域設定部は、前記交点以外に、前記2つの円上の所定の点を前記関心領域として設定する請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記第2記憶部が記憶した前記組織の移動の情報に基づいて、前記組織の経時的な移動の追跡結果を表示する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記第2記憶部が記憶した前記組織の移動の情報に基づいて、前記血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への前記組織の経時的な移動の追跡結果を表示する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記第2記憶部が記憶した前記組織の移動の情報に基づいて、前記血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への前記血管の壁の厚さの経時的な変化の追跡結果を表示する請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記第2記憶部が記憶した前記組織の移動の情報に基づいて、前記血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への前記血管の内径の経時的な変化の追跡結果を表示する請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記第2記憶部が記憶した前記組織の移動の情報に基づいて、前記血管の断面中心側から放射方向へ及びその逆への前記血管の外径の経時的な変化の追跡結果を表示する請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記表示部は、前記第2記憶部が記憶した前記組織の移動の情報に基づいて、前記血管の断面積の経時的な変化の追跡結果を表示する請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記表示部は、前記第2記憶部が記憶した前記組織の移動の情報に基づいて、前記被検体の組織間の距離の経時的な変化の追跡結果を表示する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記追跡部が前記複数の関心領域が同じ移動量で同じ方向に移動していると判断した際には、前記関心領域の全体が移動したとして、前記表示部に前記関心領域を移動させて表示させる請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−90821(P2012−90821A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241317(P2010−241317)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔発行者名〕 社団法人日本超音波医学会 〔刊行物名〕 日本超音波医学会 関東甲信越地方会 第22回学術集会 抄録集 〔該当ページ〕 137ページ 〔発行年月日〕 平成22年10月8日
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】