説明

超音波送受信器

【課題】部品点数が少なく、複数の超音波送受信器を1つの基板上に同時に作成でき、かつ、容易に個々の超音波送受信器を基板から着脱することができ、音圧が高く、安価な超音波送受信器を提供する。
【解決手段】外周に端子をもつ振動板8を圧電素子3に接着して、超音波送受信子を形成する。折り曲げられた端子の形状的特徴によって圧電素子の振動を妨げることなく、振動板8は容易に振動し、高い音圧の超音波を発生させる。振動板の端子の先を基板9に半田付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板に圧電素子を貼り付けてなる空中用の超音波送受信器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属からなる円盤状の板に、両面電極の施された圧電素子を接着することでユニモルフ振動子を形成する。圧電素子の両面に設けられた電極にユニモルフ振動子の固有振動数と同じ周波数のパルス電圧を引加することで、ユニモルフ振動子はベンディング振動を行い、超音波を発生させる。
【0003】
開放型の超音波送受信器として、金属からなる円盤状の金属板に両面電極の施された圧電素子を接着し、電極にリード線を半田付けした単純な構造のものと、円盤状の金属板に圧電素子を接着し、金属板の上に円錐形の共振子を接着した構造のものが広く使用されている。また、両面電極の施された圧電素子の両面に、中心の凹んだ円盤状(シンバル状)の金属板を接着し、両面電極にリード線を半田付けした超音波送受信器が開発されている。
【0004】
図1に金属板の上に円錐形の共振子を取り付けた開放型超音波送受信器の例を示す。
金属からなる円盤状の振動板2に、両面電極の取り付けられた円盤状の圧電素子3が接着剤によって接着されている。金属板2の上に金属からなる円錐形の共振子1が接着剤によって取り付けられている。圧電素子3とモールド5の間は、低い硬度のシリコーンで圧電素子3をモール5ドから浮かすように接着されている。圧電素子3の両面にはそれぞれリード線4が半田つけされている。リード線4の一端はモールド5の電極ピン6に半田つけされている。圧電素子3と金属板2によって生じたベンディング振動が、円錐形の共振子1によって増幅される。共振子1が無い場合に比べて、大きな音圧と感度を得ることができる。
【0005】
図2に、シンバル状の金属板を貼り合わせた超音波送受信器の例を示す。金属からなる中心の凹んだ2枚の円盤7が、凹み側が圧電素子側になるように円盤7と同じ外径の円盤状の圧電素子3の両面に接着剤によって接着されている。
圧電素子3の両面電極には、リード線4が半田付けされている。圧電素子3の伸縮が2つの円盤7の形状的特徴によって増幅され、単純なユニモルフ構造の超音波送受信器に比べて高い音圧を得ることができる。
【0006】
空中用の超音波送受信器は、これまで距離計用または物体検知用に多く使用されている。最近、超音波の特性を利用して指向性をもつスピーカー(パラメトリックスピーカー)の開発が盛んに行われている。パラメトリックスピーカー用の超音波送受信器として円錐形の共振子を用いた超音波送受信器が多く使用されている。パラメトリックスピーカーの音源としては、超音波送受信器の音圧が低い為に、10〜100個程度の複数個の超音波送受信器が並べて使用される。また、超音波は音源の面積が広いほど指向性が狭くなるという特徴を持つことから、指向性を狭くするためにも複数超音波送受信器が並べて使用されている。超音波送受信器を横に並べることで、広い面積の音源が得られ、より狭い範囲にのみ音を当てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許公開平5−153694
【特許文献2】特許公開平5−328496
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】内野研二、石井孝明著 「強誘電体デバイス」 森北出版株式会社 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
単品としての性能では円錐形の共振子を取り付けた超音波送受信器が優れている。しかしこの構造は、圧電素子、金属板、共振子の振動を妨げないように、部品を接合する必要がある為に強度が弱く。また部品点数も多く、小さな負荷でも特性に影響するためバラツキも大きい。この事から、同じ基板状にまとめて複数の超音波送受信器を作成するにはむかない。個々の超音波送受信器に問題が発生した場合に、個々の超音波送受信器を容易に取りはずす事が出来るようにカバーの取り付けられた超音波送受信器を個々に作成し、後で大きな基板に取り付けるこのが一般的である。この為に、超音波送受信器を100個程度並べたパラメトリックスピーカーは非常に高価なものになっている。
【0010】
部品点数が少なく、複数の超音波送受信器を1つの基板状の同時に作成でき、かつ容易に個々の超音波送受信器を基板から着脱する事がでいる、音圧の高い超音波送受信器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明では、
電極の設けられた基板と、金属からなる振動板と、振動板に接着された圧電素子と、基板に設けられた電極と圧電素子に設けられた電極を繋ぐリード線とからなる超音波送受信器において、振動板が、圧電素子との接着面側の中心に凹みのある円盤部と、円盤部の外周から延びた少なくとも2本以上の円盤に対して垂直な方向(上向きまたは下向き)に少なくとも1回曲げられた形状の端部をもち、端部の先を基板に取り付けることで振動板を保持することで、音圧が高く、部品点数が少なく、安価に複数個取付可能な超音波送受信器を実現する。
【0012】
請求項2に記載の発明では、金属からなる中心に凹みのある円盤を、前記圧電素子の前記振動板を接着した面と反対の面に接着することで、より音圧の高い超音波送受信器を実現する。
【0013】
請求項3に記載の発明では、
前記振動板の端部が、円盤に近い位置で、円盤の上または下の一方に曲げられ、さらにその先で曲げた方向とは逆の方向に曲げることで、端部がU字またはV字になるように加工されていることによって、
圧電素子の伸縮運度によって振動板が容易に変形し、音圧の高い超音波送受信器を実現する。基板への振動伝達を抑え、複数個並べた際の干渉を低減することが出来る。
【0014】
請求項4に記載の発明では、前記圧電素子が両面電極をもち、
前記振動板のバネ部の先と、前記基板の電極を半田付けまたは接着剤で接着することで、振動板の接着された面の電極と基板の電極を電気的に接続していることを
特徴とする請求項1から3に記載の超音波送受信器
【0015】
請求項5に記載の発明では、前記基板が、複数の振動板取付部をもち、複数の振動板を取り付けた、複数の音源を有することで、安価なパラメトリックスピーカー用の超音波送受信器を実現する。
【実地例1】
【0016】
本発明の実施例を示す。図3に圧電素子に接着する振動板の例を示す。
厚さ2mmの中央が凹んだφ8の円盤(シンバルのような形の円盤)の外周に4本の端子が伸びている、端子は円盤の近くで円盤から下向きに曲げられている。さらにその先で上向きに曲がられ、先端がまた曲げられている。U字状に曲げられている。振動板8は、厚さ2mmの金属板を所定の形状に打ち抜き、プレスすることで成形されている。
【0017】
図4に圧電素子のもう一方の面に接着する円盤の例を示す。
厚さ2mmの中央が凹んだφ7.5の円盤(シンバルのような形の円盤)形をしている。
円盤7は厚さ2mmの金属板を所定の形状に打ち抜き、プレスすることで成形される。
【0018】
図5に組立図を示す。前述振動板8と円盤7を両面電極の施された厚さφ7.5厚さ0.2mmの圧電素子3にエポキシ接着剤によって接着する。振動板8と圧電素子3の電極は接触しており、電気的に接続されている。振動板8を、基板9に設けられた貫通穴に入れる。基板9の両面には独立した電極が取り付けられている。図5(a)に分解部、図5(b)に取り付けた状態を示す。
基板9の表面電極と振動板8の端部の先を半田10で半田付けし、圧電素子3の一方の面に半田つけしたリード線4を基板9の裏面の電極に半田つけする。
図6(a)に振動板8の端部の先端と基板9の電極が半田付けされた面の斜面図を示す図6(b)に裏側からみた斜面図を示す。
振動板8を基板9に設けられた穴に差し込み、半田付けすることで、基板9に超音波送受信器を容易に取り付ける事ができる。また、容易に取り外すことが出来る。
【0019】
電極に超音波送受信器の固有振動と一致する周波数のパルス電圧を加えると、超音波送受信器の振動面が振動し、超音波を発生させる。
図7に超音波送受信器の振動の様子を示す。圧電素子3は加えられた電圧によって収縮し、収縮した圧電素子3によって振動板8と円盤7が内側に引っぱられる。振動板8と円盤7の形状的特徴によって、振動板8と円盤7は、凹み部を大きくたわませて振動する。振動板8が上下に振動することで、大きな超音波が発生する。この時、圧電素子3の収縮によって、振動板8の外周にある端部が一緒に引っぱられる。しかし、端部に施されたU字状の湾曲によって、端部は容易に変形し、端部が大きな負荷となることなく圧電素子3の振動は効率的に超音波へ変化される。
【0020】
円盤7に対して垂直な方向とは、円盤7に対して垂直な方向を示すが、かならず振動板8の端子を90度曲げることを示すものでは無い。45度またはもっと低い角度でも良い。振動板8の端子を曲げる方向はどちらでの良いが、圧電素子3の伸縮を妨げないように、バネ状に曲げることが望ましい。
【0021】
圧電素子3に円盤7を接着しなくとも、超音波を送受信することができる。円盤7を接着した方が、音圧が高い。
【0022】
振動板7の材料としてアルミ合金やインバー材などの金属が考えられる。または、金属にニッケルメッキなどを施し、半田付け性を上げた材料でも良い。
【0023】
基板9に複数の取付部を設け、複数の超音波送受信器を取り付けることができる。振動板の構造的特徴によって、1つ1つの超音波送受信器の音圧が大きく、超音波送受信器の着脱が容易で、部品点数が少なく、安価な超音波送受信器を実現している。図8に超音波送受信器の例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の開放型の超音波送受信器の例
【図2】従来のシンバル構造の超音波送受信器の例
【図3】本発明を実施した振動板の例
【図4】シンバル状の円盤の例
【図5】本発明の実施した超音波送受信器の組み付け例
【図6】本発明を実施した超音波送受信器への電極構造の例
【図7】振動の様子
【図8】複数の超音波送受信器を取り付けた超音波送受信器
【符号の説明】
【0025】
1 円錐形の共振体
2 金属板
3 圧電素子
4 リード線
5 樹脂モールド
6 金属ピン
7 シンバル型の金属板
8 振動板
9 基板
10 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の設けられた基板と、金属からなる振動板と、振動板に接着された圧電素子と、基板に設けられた電極と圧電素子に設けられた電極を繋ぐリード線とからなる超音波送受信器において、振動板が、圧電素子との接着面側の中心に凹みのある円盤部と、円盤部の外周から延びた少なくとも2本以上の円盤に対して垂直な方向(上向きまたは下向き)に少なくとも1回曲げられた形状の端部をもち、端部の先を基板に取り付けることで振動板を保持することを特徴とする超音波送受信器
【請求項2】
金属からなる中心に凹みのある円盤を、前記圧電素子の前記振動板を接着した面と反対の面に、接着した事を特徴とする請求項1に記載の超音波送受信器
【請求項3】
前記振動板の端部が、円盤に近い位置で、円盤の上または下の一方に曲げられ、さらにその先で曲げた方向とは逆の方向に曲げることで、端部がU字またはV字になるように加工されている事を特徴とする請求項1と2に記載の超音波送受信器
【請求項4】
前記圧電素子が両面電極をもち、
前記振動板の端部の先と、前記基板の電極を半田付けまたは接着剤による接着の少なくとも1つの方法で接続する事で、圧電素子の振動板の接着された面の電極と基板の電極を電気的に接続した事を特徴とする請求高1から3に記載の超音波送受信器
【請求項5】
前記基板が、複数の振動板取付部をもち、複数の振動板を取り付けた、複数の音源を有する超音波送受信器である事を特徴とする請求項1から4に記載の超音波送受信器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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