説明

超音波送受波器

【課題】有底状のケースの内部に、小さな有底状のケースの開口部を接着した事を特徴とする超音波送受信器の残響を短くする。
【解決手段】大きなケース2aと小さなケース2bの間に、シリコーンまたはウレタンまたはゴムの発泡材料からなる遮音体8を入れる。2つのケースの天面の間にある空間を介して、他方の天面に伝達する超音波を遮断する事で、残響特性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波周波数帯の送受信を行う超音波送受波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電素子を金属または樹脂からなる有底状のケースの底面に貼り付けた構造体からなる超音波送受信装置が、自動車(車両)のバックソナー用として大量に生産されている。これらの超音波送受信装置は、多くの場合、超音波送受信器を構成するケースの固有振動によって超音波を発生させるために、それぞれの超音波送受信器が送受信できる超音波の周波数は特定の1つに限られている。
【0003】
1つの超音波送受信器で、2つの異なる周波数の超音波を送受信することが出来る超音波送受信器が開発されている。特許文献1に記載の超音波送受信器は、有底状ケースの底面に、そのケースの内径よりも小さな外径をもつ有底状ケースの開口部を接着することで、2つの異なる周波数の超音波を送受信することを可能にしている。それぞれの周波数で発生させることの出来る超音波の音圧は比較的大きく、現在車両用として使用されている超音波送受信器と同程度の音圧が得られている。
【特許文献1】特許公開2008−111020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の超音波送受信器は、その構造的特性によって2つの共振周波数を持ち、2つの異なる周波数の超音波の送受信が可能である。しかし、残響が長いという問題がある。
【0005】
そこで、この発明では、有底状の大きさケースと、そのケースの内径より小さい外径を持つ有底状の小さなケースと、圧電素子とからなり、大きなケースの底面部に小さなケースの開口部を固着し、小さなケースの天面に圧電素子を固着してなる、異なる2つの共振周波数をもつ事を特徴とする超音波送受信器において、2つの異なる周波数のどちらで駆動させた場合でも残響の短い超音波送受信器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、有底状の大きなケースと、そのケースの内径より小さい外径を持つ有底状の小さなケースと、圧電素子とからなり、大きなケースの底面部に小さなケースの開口部を固着し、小さなケースの天面に圧電素子を固着してなる、異なる2つの共振周波数をもつ事を特徴とする超音波送受信器において、小さなケースと大きなケースとの間の空間に、シリコーンおよびウレタンおよびゴムの少なくともいずれか1つからなる発泡材料を成形してなる遮音体を入れる事で、2つの異なる周波数のどちらで駆動させた場合でも残響の短い超音波送受信器を実現する。
【実地例】
【0007】
図1に本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の実施例を示す。図1において、アルミニウム材からなる外径φ14の有底筒状ケース2a内部にアルミケース材からなる有底筒状ケース2bの開口部を接着剤によって接着し、有底筒状ケース2bの天面に圧電素子1を接着剤によって接着する。大きなケース2aと小さなケース2bと圧電素子1とは、52kHzと65kHzに共振周波数を持つように寸法が設計されている。有底筒状ケース2aと2bの間の空間7は例えばシリコーン材からなる発泡材料を成形してなる遮音体8で埋められている。遮音体8は、例えば厚さ1mmに成形されたシリコーン材からなる発泡材料のシートを、成形用の金型で押し抜く事で成形されている。遮音体8は大きなケース2aと小さなケース2bを接着する際に、入れることができる。または、例えば発泡シリコーンを、小さなケース2bに充填し発泡させて遮音体8を作成、その後に小さなケース2bと大きなケース2aを接着することも出来る。圧電素子1から入出力リード5a、有底筒状ケース2a又は2bの側面内側より入出力リード5bを半田付け等して取り出す。圧電素子1有底筒状ケース2a及び2bは、固着面で電気的に接続されている。入出力リード線5aおよび5bはPVC被覆ワイヤ付きコネクタ6のワイヤにそれぞれ半田付けされている。圧電素子1の上面に吸音材3を設置し、更にその上からシリコーン材、ウレタン材等の弾性体から成る封止剤4を有底筒状ケース2内に充填する。
【0008】
比較の為に、図2と図3に従来の実施形態に関わる超音波送受信機の略図を示す。図2に示す実施例では、有底筒状ケース2aと2bの空間7は空洞になっている。その他は図1と同じである。図3に示す実施例では、有底筒状ケース2aと2bの空間7が弾性体、例えば硬度40のシリコーン9によって充填されている。その他は図1と同じである。
【0009】
本発明を実施した形態(図1の場合)と、従来の形態(図2の場合)を実施した場合の残響波形を図4にしめす。図4−aに本発明の形態を実施した場合の波形、図4−bに従来の形態を実施した場合の波形を示す。従来の形態を実施した場合に比べて、本発明の形態を実施した場合は、残響が短い。本発明を実施した形態では、残響が大きく改善される事がわかる。
【0010】
図5に有限要素法を用いて計算したモーダル解析の結果を示す。図5−aに52kHzの振動モード、図5−bに65kHzの振動モードでの変形を示す。振動数が低い方の振動モードでは大きなケースの天面と小さなケースの天面が同位相で振動し、一方、振動数が高い方の振動モードは大きさケースの天面と小さなケースの天面が逆位相で振動している。この結果から、一方の天面で発生した超音波がもう一方に天面に当たる事が残響を長くしている原因であると考えられる。図4に示した遮音体8による残響改善の効果は、一方の天面で発生した超音波が遮音体8によって遮断された事によると考えられる。
【0011】
従来の形態(図3の場合)では、有底筒状ケース2aと2bの空間7に充填されたシリコーン9の影響が大きく、2つの周波数での振動が大きく抑制されるため、反射感度が大幅に低下してしまう。一方、本発明を実施した形態では、弾性体に比べてはるかに密度の低い発泡体を内部に埋め込むことで、超音波送受信器の特性を損なうことなく、残響の短い超音波送受信器を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に関わる有底筒状ケースの概略図
【図2】従来の実施の形態に関わる有底筒状ケースの概略図(空洞の場合)
【図3】従来の実施の形態に関わる有底筒状ケースの概略図(弾性体の場合)
【図4】残響波形(本発明と従来の実施形態の比較)
【図5】モーダル解析の結果(本発明と従来の実施形態の比較)
【符号の説明】
【0013】
1 圧電素子
2a 大きなケース
2b 小さなケース
3 吸音材
4 封止剤
5a 入出力リード
5b 入出力リード
6 PVC被覆ワイヤ付きコネクタ
7 空間
8 遮音体
9 シリコーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底状のケースと、そのケースの内径より小さい外径を持つ有底状のケースと、圧電素子とからなり、大きなケースの底面部に小さなケースの開口部を固着し、小さなケースの天面に圧電素子を接着してなる、異なる2つの共振周波数をもつ事を特徴とする超音波送受信器において、小さなケースと大きなケースとの間の空間に、シリコーンおよびウレタンおよびゴムの少なくともいずれか1つからなる発泡材料を成形してなる遮音体を入れたことを特徴とする超音波送受信器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−278594(P2010−278594A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127194(P2009−127194)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】