説明

超音波霧化装置およびこれを備えた洗濯乾燥機

【課題】超音波振動子によって水を霧化させて霧化粒子を作る超音波霧化装置およびこれを備えた洗濯乾燥機において、商用電源の電圧の変動や、振動子発振回路を構成するトランジスタの増幅率のバラツキで、発生する総霧化量が変化するという課題を解決し、総霧化量の安定を図る。
【解決手段】電流検知回路4で振動子発振回路5への電流を検知し、その電流に応じてマイクロコンピュータ6が入り切り回路3を制御するよう構成したものであり、商用電源1の電圧の変動や、振動子発振回路5を構成するトランジスタの増幅率のバラツキがあり、単位時間当たりの発生霧化量に変化があっても、発生する総霧化量の変動を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子によって水を霧化させて霧化粒子を作る、洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機などの用途に適した超音波霧化装置およびこれを備えた洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の霧化装置あるいは噴霧装置は超音波振動子の電流状態に応じて供給電圧の切り替え制御をしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、特許文献1に記載された従来の超音波霧化装置を示すものである。図13に示すように、超音波霧化装置は電池9、電池電圧を昇圧する定電圧電源としての振動子駆動用電圧昇圧回路10、振動子駆動用電圧昇圧回路10より直流電力の供給を受ける振動子駆動回路11、振動子駆動回路11により駆動される超音波振動子12、アナログ−デジタル変換機(ADC)13、中央演算処理器(CPU)14、超音波霧化装置を始動させるための始動スイッチ15、CPU14で制御されて振動子駆動用電圧昇圧回路10の出力電圧を切り替えるための電圧切り替えスイッチ16及びCPU14で点灯制御されるLED表示器17を具備して構成されている。
【0004】
以上のように構成された超音波霧化装置について、その動作を以下に説明する。CPU14は、始動スイッチ15のオン指令により起動し、CPU14が起動すると、まず、電池9の直流電圧を確認し、所望の値以上であれば定電圧電源としての振動子駆動用電圧昇圧回路10のスイッチ(図示せず)を入れ、振動子駆動用電圧昇圧回路10を動かす。通常、超音波振動子12の動作開始時は電圧切り替えスイッチ16を高電圧発生側に切り替えて、振動子駆動用電圧昇圧回路10で高電圧を振動子駆動回路11に供給して超音波振動子12を励振する。
【0005】
前記超音波振動子12による薬液、液体の霧化が正常に開始されて振動子電流検出値が所定値を超えたことを電流検出値から把握したら、CPU14は電圧切り替えスイッチ16を低電圧発生側に切り替えて、振動子駆動用電圧昇圧回路10で低電圧を振動子駆動回路11に供給するようにして超音波振動子12の電流値を所定値以内に制御する。
【0006】
なお、始動スイッチ15のオフ指令により、CPU14は振動子駆動回路11及び超音波振動子12を動作停止する。
【0007】
以上のように、超音波振動子12の動作制御を行うことで、定電流電源を用いたのと実質的に同じ動作を実現することが可能であった。
【特許文献1】特開2005−254218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、CPU14によって、超音波振動子12の電流状態に応じて振動子駆動回路11への供給電圧を複数段階で切り替え可能な構成にして、超音波振動子12の電流に着目した動作制御をし、定電流電源を用いたのと実質的に同様の安定した動作を実現することが可能ではあるが、供給電圧の切り替えが段階的である以上、超音波振動子の電流も段階的であり定電流とは言いがたいものであり、言い換えると超音波振動子12の駆動により発生する霧化量を一定とすることが困難であるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、交流電源の商用電源の電圧の変動や、振動子発振回路を構成するトランジスタの増幅率のバラツキによる単位時間当たりの発生霧化量に変化があっても、発生する総霧化量の変動の少ない超音波霧化装置およびこれを備えた洗濯乾燥機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波霧化装置およびこれを備えた洗濯乾燥機は、交流電源の電圧を降圧する降圧回路と、前記降圧回路の出力を入り切りする入り切り回路と、前記入り切り回路の出力の電流を検知する電流検知回路と、前記降圧回路の出力を整流する振動子発振回路と、前記振動子発振回路の信号を受け水を霧化させる超音波振動子と、前記電流検知回路の信号を受け前記入り切り回路を制御するマイクロコンピュータとを備え、前記電流検知回路が前記振動子発振回路への電流を検知し、検知した電流に応じて前記マイクロコンピュータが前記入り切り回路を制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の超音波霧化装置およびこれを備えた洗濯乾燥機は、商用電源である交流電源の電圧の変動や、振動子発振回路を構成するトランジスタの増幅率のバラツキがあり、単位時間当たりの発生霧化量に変化があっても、発生する総霧化量の変動を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、交流電源の電圧を降圧する降圧回路と、前記降圧回路の出力を入り切りする入り切り回路と、前記入り切り回路の出力の電流を検知する電流検知回路と、前記降圧回路の出力を整流する振動子発振回路と、前記振動子発振回路の信号を受け水を霧化させる超音波振動子と、前記電流検知回路の信号を受け前記入り切り回路を制御するマイクロコンピュータとを備え、前記電流検知回路が前記振動子発振回路への電流を検知し、検知した電流に応じて前記マイクロコンピュータが前記入り切り回路を制御することにより、振動子発振回路を構成するトランジスタの増幅率のバラツキで、振動子発振回路に流れる電流が変化し、超音波振動子の単位時間当たりの発生霧化量が変化しても、振動子発振回路に流れる電流に応じてマイクロコンピュータで演算した入り時間、すなわち振動子発振回路の通電時間を入り切り回路の制御により調節して、発生する総霧化量の変動を少なくすることができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の降圧回路は電源変圧器である構成としたことにより、電源変圧器を絶縁型とすることで交流電源と振動子発振回路との間を絶縁することができ、超音波振動子に触れた水を介して人体が感電することがなくなる。さらに降圧回路に高周波を使ったスイッチング動作がないので、端子雑音電圧性能に対しても雑音を少なくすることができる。また降圧回路を1個の電源変圧器で構成でき、シンプルな構成で部品点数及びコストの削減や小型化を図ることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1の発明の降圧回路を定電圧化したスイッチング電源で構成したことにより、商用電源の電圧の変動による単位時間当たりの発生霧化量への影響を最小限にすると共に、スイッチング電源を絶縁型とすることで商用電源と振動子発振回路との間を絶縁することができ、超音波振動子に触れた水を介して人体が商用電源に感電することがなくなる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明のマイクロコンピュータは、振動子発振回路への電流に応じて入り切り回路の入り時間を変えることを特徴とするもので、
商用電源の電圧の変動による単位時間当たりの発生霧化量の変化や、振動子発振回路を構成するトランジスタの増幅率のバラツキで単位時間当たりの発生霧化量に変化があっても、振動子発振回路に流れる電流を電流検知回路で検知し、振動子発振回路を動作させる入り時間を変える制御をして発生する総霧化量の変動を少なくすることができる。
【0016】
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明の超音波霧化装置を備えた洗濯乾燥機としたことにより、回転ドラム内の隅々にまでミストを充満させ、衣類表面を効果的に湿らせて、乾燥状態にある衣類のしわを低減させるしわ低減効果を持たせた「しわのばし行程」を行うに際し、電流検知回路の電流の値に応じてマイクロコンピュータが入り切り回路の入り切りを制御することで、発生する総霧化量の変動を少なくし、総霧化量を適切に調節することができ、水槽内の洗濯物をミストで均一に湿らせることが、より精度良く実行することができ、その結果として、最適なしわ低減効果を得ることができる。また、商用電源の電圧変化により、回転ドラム内の衣類が不均一に濡れてしまい、ミストを用いる意味がなくなってしまったり、その結果、乾燥の時間が余分にかかってしまうといった問題も起こり難く、また洗濯物が充分に湿らずしわをのばすことができないといった問題も起こり難くなる。
【0017】
第6の発明は、上記第5の発明において、筐体内に懸吊された水槽と、前記水槽内に回転自在に設けられ、洗濯物を収納する回転ドラムと、前記水槽内に空気を送風する送風手段と、前記水槽から排気された空気を前記送風手段を経由して再び前記水槽に戻し送風する循環送風経路とを備え、超音波霧化装置は、前記循環送風経路に接続したことにより、比較的少量のミストを発生させるだけで回転ドラム内の衣類表面を万遍なく効果的に湿らせて、効率よくしわのばし効果を発揮することができる。
【0018】
第7の発明は、上記第6の発明において、超音波霧化装置の動作時には、送風手段を動作させることにより、送風に乗せて強制的にミストを充満、循環させることができるので、短時間で万遍なく衣類表面を湿らせてしわのばしを効率よく行うことができる。
【0019】
第8の発明は、上記第6または第7の発明において、超音波霧化装置の動作時には、回転ドラムを回転させることにより、衣類がかき混ぜられ、衣類に邪魔されずにミストを回転ドラム内に導入することができるとともに、衣類全体をさらに短時間で万遍なく湿らせてしわのばしを効率よく行うことができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における超音波霧化装置のブロック図、図2は同超音波霧化装置の主要部回路図を示すものである。図1において、交流電源である商用電源1から降圧回路2で例えばAC100VからAC48Vに降圧される。この降圧回路2の出力の48Vが入り切り回路3に接続、入力され、さらに電流検知回路4を経て出力の48Vを整流し超音波振動子7に信号を送る振動子発振回路5に接続している。入り切り回路3はマイクロコンピュータ6の指示で降圧回路2の出力の48Vを入り切りし、電流検知回路4を経て振動子発振回路5へ通電し、振動子発振回路5は超音波振動子7へ超音波を発生させるための信号を送り、超音波振動子7を駆動し、図示しない水溜め容器に貯留された水に超音波振動を加えこれを霧化させる。
【0022】
超音波振動子7が駆動して超音波振動を発生するとき、振動子発振回路5には電流が流れ、その電流を電流検知回路4で検知し、電流に応じた信号をマイクロコンピュータ6に入力する。そして、マイクロコンピュータ6では、その電流に応じた信号から入り切り回
路3の制御をするように構成している。
【0023】
降圧回路2は電源変圧器とし、その電源変圧器の入力の1次電圧をAC100Vとし、出力の2次電圧が定格2次電流でAC48Vになるように構成され、しかも1次と2次とは電気的に絶縁されている。しかも振動子発振回路5は2次電圧を整流しトランジスタで超音波振動子7に信号を送るように構成されている。
【0024】
図2に示すように、入り切り回路3は、リレーRY1と、トランジスタTR1および抵抗R1、R2で構成され、マイクロコンピュータ6からの入力信号によりリレーRY1への通電をオンオフするスイッチング回路とで構成され、電流検知回路4は、電流トランスCT1と、ダイオードD1、D2、D3およびD4より成る両波整流回路と、マイクロコンピュータ6に入力されるDC電圧を生成するための負荷抵抗R3とで構成されている。
【0025】
以上のように構成した超音波霧化装置について、その動作、作用を説明する。商用電源1の電圧が変動し、それに応じて降圧回路2の電圧が変動すると、振動子発振回路5のインピーダンスはほぼ一定であるので、振動子発振回路5に流れる電流も変化する。その電流に応じて超音波振動子7が水を霧化する。その単位時間当たりの発生霧化量は、振動子発振回路5を流れる電流に比例している。また、振動子発振回路5を構成するトランジスタの増幅率のバラツキで、振動子発振回路5に流れる電流が変化した場合も、その電流に比例して単位時間当たりの発生霧化量が変化する。
【0026】
本発明の実施の形態1では、電流検知回路4で振動子発振回路5を流れる電流を検知し、その電流に応じた信号をマイクロコンピュータ6に入力し、マイクロコンピュータ6が入り切り回路3の入り切りを制御することで、発生する総霧化量の変動を少なくしている。
【0027】
以下、本実施の形態の動作、作用について、図を用いてさらに詳しく述べる。図2において、降圧回路2で商用電圧100VがAC48Vに降圧される。入り切り回路3では、マイクロコンピュータ6からHighレベルの入力信号がトランジスタTR1のベースに入った場合は、トランジスタTR1と抵抗R1、R2で構成されたスイッチング回路がONとなり、トランジスタTR1のコレクタがLowレベルになる。するとリレーRY1のコイルが通電状態になり、リレーRY1のスイッチが閉じられ、上記AC48Vが電流検知回路4へと通電される。
【0028】
マイクロコンピュータ6からの入り信号がない場合は、スイッチング回路がOFFであり、トランジスタTR1のコレクタはHighレベルのままである。その場合はリレーRY1のコイルには通電されず、リレーRY1のコイルのスイッチは開いた状態である。
【0029】
電流検知回路4では、入り切り回路3からAC48Vが通電された場合は、電流トランスCT1の入力コイルに振動子発振回路5への電流が流れる。そして、電流トランスCT1の入力コイルに流れる電流に応じて、電流トランスCT1の出力コイルに電流が流れる。電流トランスCT1の出力コイルの電流は、ダイオードD1、D2、D3、D4を介して整流され負荷抵抗R3に流れる。その電流値は、電流トランスCTの入力コイルと出力コイルの巻数比と負荷抵抗R3の抵抗値によって決まることは言うまでもない。
【0030】
負荷抵抗R3のDC電圧は、出力コイルCT1に流れる電流によって決まり、そのDC電圧がマイクロコンピュータ6に入力される。マイクロコンピュータ6は、そのDC電圧に応じて、入り切り回路3の入り切り時間を決めるようロジックが構成されている。
【0031】
図3は、商用電源1に接続された電源変圧器の1次電圧を変化させ、さらに振動子発振
回路5を構成するトランジスタの増幅率hfeを代表的な値に変化させて、横軸を1次電圧とし縦軸を2次電流すなわち振動子発振回路5を流れる電流とした関係を、トランジスタの増幅率hfe毎にグラフ化した本発明の実施の形態1における超音波霧化装置の特性図である。この特性図から判るように、いずれのトランジスタの増幅率hfeにおいても2次電流は1次電圧にほぼ一次的に正比例して増加し、さらにはトランジスタの増幅率hfeが増えるに従って2次電流が増加の傾向を示している。
【0032】
また図4は、商用電源1に接続された電源変圧器の1次電圧を変化させ、さらに振動子発振回路5を構成するトランジスタの増幅率hfeを代表的な値に変化させて、横軸を1次電圧とし縦軸を分当たりの発生霧化量とした関係を、トランジスタの増幅率のhfe毎にグラフ化したものである。この特性図から判るように、いずれのトランジスタの増幅率hfeにおいても分当たりの発生霧化量も1次電圧に一次比例して増加し、さらにはトランジスタの増幅率のhfeが増えるに従って分当たりの発生霧化量が増加する傾向を示している。
【0033】
図5は、この図3と図4のグラフから1次電圧を共通要素として、横軸を2次電流とし縦軸を分当たりの発生霧化量とした関係を、トランジスタの増幅率の代表的なhfe毎にグラフ化したものである。この特性図から判るように、分当たりの発生霧化量が2次電流に一次的に正比例して増加し、しかもトランジスタの増幅率hfeに関わらずに、分当たりの発生霧化量が2次電流に一次的に正比例する傾向を示している。つまり、トランジスタの増幅率hfeとは関係なく、2次電流さえ判れば、分当たりの発生霧化量が推定できるということになる。
【0034】
したがって、本発明の実施の形態1によれば、電流検知回路4で振動子発振回路5を流れる電流を検知し、その電流に応じた信号をマイクロコンピュータ6に入力し、マイクロコンピュータ6が入り切り回路3の入り切りを制御することで、トランジスタの増幅率hfeのバラツキによって振動子発振回路5に流れる電流が変化したとしても、発生する総霧化量の変動を少なくすることができる。
【0035】
また、降圧回路2を電源変圧器で構成したことにより、電源変圧器を絶縁型とすることで商用電源1と振動子発振回路5との間を絶縁することができ、超音波振動子7に触れた水を介して人体が感電することがなくなる。さらに降圧回路2に高周波を使ったスイッチング動作がないので、端子雑音電圧性能に対しても雑音を少なくすることができる。また降圧回路2を1個の電源変圧器で構成でき、シンプルな構成で部品点数及びコストの削減や小型化を図ることができる。
【0036】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における超音波霧化装置の主要部回路図を示すものである。本発明の実施の形態2においては、降圧回路2は定電圧化したスイッチング電源で構成されている。具体構成としては、この降圧回路2の入力側である電源トランスT1と、それに接続され、ダイオードD5、D6、D7およびD8より成る両波整流回路と、この両波整流回路で整流された波形を平滑化する電解コンデンサC1と、トランジスタTR2、TR3および抵抗R4、R5より成る誤差増幅器と、基準電圧比較用のツェナーダイオードZD1と、抵抗R6、R7および可変抵抗VR1より成り、可変抵抗VR1の中間端子がトランジスタTR3のベースに接続された分圧回路と、この降圧回路2の出力側にとなる電解コンデンサC2とで構成されている。他の構成は上記実施の形態1と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0037】
以上のように構成した超音波霧化装置について、その動作、作用を説明する。商用電源1から供給された商用電圧が降圧回路2に入力されると、その入力側である電源トランス
T1により100Vから40Vに降圧された後、ダイオードD5、D6、D7、D8で両波整流され、トランジスタTR2のコレクタに入力される。トランジスタTR2のコレクタの電位は電解コンデンサC1にて平滑されて48Vより少し高めの約50Vになる。この降圧回路2に、定電圧回路を組み込んだ場合には、電流検知回路4は必ずしも設けなくてもよい。
【0038】
降圧回路2の出力側となる電解コンデンサC2の両端には、入り切り回路3を経て電流負荷となる振動子発振回路5が繋がり、この負荷のインピーダンスによって電解コンデンサC2両端の出力電圧が決まる。その出力電圧が抵抗R6、R7と可変抵抗VR1で構成した分圧回路で分圧され、この分圧電圧はツェナーダイオードZD1の基準電圧と比較して、出力電圧の変動分を検出している。そして、その出力電圧の変動分は、トランジスタTR3と抵抗R4からなる誤差増幅器により増幅されて、トランジスタTR2へ送られる。
【0039】
いま、商用電圧変動または負荷のインピーダンス変動によって電解コンデンサC2両端の出力電圧が低下したとすると、この電圧の変化は分圧回路を介して誤差増幅器であるトランジスタTR2のベースに送られる。ツェナーダイオードZD1によって定まる基準電圧が一定であることから、TR2のベース・エミッタ間電圧Vbeが低下して、コレクタ電流が減少し、コレクタ電圧が上昇する。それによって、トランジスタTR2のベース電位が上昇して、出力電圧の低下を打ち消すことになる。
【0040】
このように、降圧回路2を定電圧化することにより、商用電圧変動または負荷のインピーダンス変動にもかかわらず、負荷電圧を一定にすることができる。
【0041】
以上のように、降圧回路2は定電圧化したスイッチング電源で構成されているので、商用電源1の電圧が変動しても、スイッチング電源の出力の電圧は定電圧化されている。したがって振動子発振回路5へ供給される電圧も定電圧化されている。
【0042】
図7は、スイッチング電源の1次電圧をAC100Vとし、振動子発振回路5を構成するトランジスタの増幅率のhfeを代表的な値に変化させて、縦軸を2次電流すなわち振動子発振回路5を流れる電流とした関係をグラフ化した本発明の実施の形態2における超音波霧化装置の特性図である。この特性図から判るように、2次電流がトランジスタの増幅率hfeに一次的に正比例して増加する傾向を示している。
【0043】
また図8はスイッチング電源の1次電圧をAC100Vとし、振動子発振回路5を構成するトランジスタの増幅率hfeを代表的な値に変化させて、縦軸を分当たりの発生霧化量とした関係をグラフ化したものである。この特性図から判るように、分当たりの発生霧化量もトランジスタの増幅率hfeに一次的に正比例して増加する傾向を示している。
【0044】
図9は、この図7と図8のグラフからトランジスタの増幅率hfeを共通要素として、横軸を2次電流とし縦軸に分当たりの発生霧化量とした関係をグラフ化したものである。この特性図から判るように、分当たりの発生霧化量が2次電流に正比例して増加し、しかもトランジスタの増幅率hfeに関わらずに、分当たりの発生霧化量が2次電流に一次的に正比例する傾向を示している。言い換えると、トランジスタの増幅率hfeとは関係なく、2次電流さえ判れば、分当たりの発生霧化量が推定できると言う事になる。
【0045】
したがって、本発明の実施の形態2によれば、電流検知回路4で振動子発振回路5を流れる電流を検知し、その電流に応じた信号をマイクロコンピュータ6に入力し、マイクロコンピュータ6が入り切り回路3の入り切りを制御することで、トランジスタの増幅率hfeのバラツキによって振動子発振回路5に流れる電流が変化したとしても、発生する総
霧化量の変動を少なくすることができる。
【0046】
また、降圧回路2を定電圧化したスイッチング電源で構成することにより、商用電源1の電圧の変動による単位時間当たりの発生霧化量への影響を最小限にすると共に、スイッチング電源を絶縁型とすることで商用電源1と振動子発振回路5との間を絶縁することができ、超音波振動子7に触れた水を介して人体が商用電源1に感電することがなくなる。
【0047】
(実施の形態3)
実施の形態3では、入り切り回路3の制御は、マイクロコンピュータ6が振動子発振回路5への電流に応じて入り切り回路3の入り時間を変える、すなわち振動子発振回路5を動作させる入り時間を変える制御としている。他の構成は上記実施の形態1と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施の形態の具体構成およびその動作、作用について説明する。入り時間を変えるロジックはマイクロコンピュタ6に組み込まれており、まず最初にマイクロコンピュータ6から入り信号が入り切り回路3に入力され、振動子発振回路5が通電される。その時の降圧回路2の2次電流が電流検知回路4で検知され、その検知信号がマイクロコンピュータ6に入力される。マイクロコンピュータ6にはあらかじめ決められた2次電流に応じた入り時間の関係、すなわち図10に示すような特性を有するように、降圧回路2の2次電流に応じて入り切り回路3の入り時間が決められ、振動子発振回路5に通電するものである。
【0049】
以上のように、商用電源1の電圧の変動による単位時間当たりの発生霧化量の変化や、振動子発振回路5を構成するトランジスタの増幅率のバラツキで単位時間当たりの発生霧化量に変化があっても、超音波振動子7が超音波を発生するために振動子発振回路5に流れる電流を電流検知回路4で検知し、入り切り回路3の入り時間を変える、すなわち振動子発振回路5を動作させる入り時間を変えるよう制御することによって、発生する総霧化量の変動を少なくすることができる。
【0050】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4における洗濯乾燥機の側面断面図、図12は同洗濯乾燥機の背面側から見た斜視図である。実施の形態4における洗濯乾燥機は、上記実施の形態1〜3のいずれの超音波霧化装置も用いることができる。ここでは、実施の形態1の超音波霧化装置を用いたものとして説明する。
【0051】
本発明の実施の形態4に係る洗濯乾燥機はドラム式の洗濯乾燥機であり、洗濯乾燥機筐体51内に図示しないサスペンション構造によって水槽52が宙吊り状態に配設され、水槽52内に有底円筒形に形成された回転ドラム53がその軸心方向を正面側から背面側に向けて下向きに傾斜させて配設されている。
【0052】
水槽52の正面側に回転ドラム53の開口端に通じる衣類出入口52aが形成され、洗濯乾燥機筐体51の正面側に形成された上向き傾斜面に設けられた開口部51aを開閉可能に閉じる扉54を開くことにより、衣類出入口52aを通じて回転ドラム53内に対して洗濯物を出し入れすることができる。
【0053】
扉54で洗濯乾燥機筐体51の開口部51aを閉じたとき、水槽52の衣類出入口52aは扉54で直接、水密かつ気密に閉じられる構造とはしていないが、水槽52内の空間が閉空間となるよう、パッキング等を用いて水槽52を洗濯乾燥機筐体51に宙吊り状態に取り付けてある。
【0054】
回転ドラム53には、その周壁および底壁に水槽52内に通じる多数の透孔53aが形成されるとともに、その底壁には、水槽52底面に形成された導風口52bに対向する円周方向に沿った複数位置に底面開口53bが形成されており、さらに周壁内面の複数位置に撹拌突起53cが設けられている。この回転ドラム53は、水槽52の背面側に取り付けられたモータ55によって正転および逆転方向に回転駆動される。
【0055】
また、水槽52には、給水管路61および排水管路62が配管接続され、図示しない給水弁および排水弁の制御によって水槽52内への給水および水槽52内からの排水がなされる。
【0056】
また、本実施の形態の洗濯乾燥機には、水槽52内の空気を排気して除湿し、加熱した乾燥空気を再び水槽52内に戻して送風する循環送風経路56が設けられている。この循環送風経路56の途中には、洗濯乾燥機筐体51内の下位の位置に、蒸発器57などの除湿手段、凝縮器58などの加熱手段および送風ファン59などの送風手段が設けられている。循環送風経路56は、水槽52から送風ファン59に至る間の循環空気導入管路56aと、送風ファン59から水槽52に至る間の乾燥空気送風管路56bとで構成されており、乾燥空気送風管路56bにおける水槽52底面に形成された導風口52bに近接した上方の位置に実施の形態1として説明した超音波霧化装置60が接続されている。
【0057】
以上のように構成した超音波霧化装置を備えた洗濯乾燥機について、その動作、作用を説明する。扉54を開いて開口部51aから回転ドラム53内に洗濯物および洗剤を投入して洗濯乾燥機の運転を開始すると、水槽52内には給水管路61から所定量の注水がなされ、モータ55により回転ドラム53が回転駆動されて洗濯行程が開始される。回転ドラム53の回転により、回転ドラム53内に収容された洗濯物は回転ドラム53の内周壁に設けられた撹拌突起53cによって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた高さ位置から落下する撹拌動作が繰り返されるので、洗濯物には叩き洗いの作用が及んで洗濯がなされる。
【0058】
所要の洗濯時間が経過した後、汚れた洗濯液は排水管路62から排出され、回転ドラム53を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた洗濯液を脱水し、その後、水槽52内に給水管路61から給水してすすぎ・脱水行程が実施される。このすすぎ・脱水行程においても、回転ドラム53内に収容された洗濯物は、回転ドラム53の回転により撹拌突起53cにより持ち上げられて落下する撹拌動作が繰り返され、すすぎ洗いが実施される。そして、すすぎ洗いを実施した後、再度、回転ドラム53を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた水を脱水して、すすぎ・脱水行程を終了する。
【0059】
次に乾燥行程が開始される。乾燥行程においては、送風ファン59が高速で回転駆動することにより、循環送風経路56に空気の流れが発生して、洗濯物を収容した回転ドラム53内の湿った空気は、周壁に設けられた透孔53aを通じて、水槽52から送風ファン59側への循環空気導入管路56aに排気され、送風ファン59の上流に位置する蒸発器57により水分を結露させて除湿されるとともに、凝縮器58との熱交換により加熱されることにより、高温の乾燥空気とされる。
【0060】
この加熱された乾燥空気は、送風ファン59から水槽52への乾燥空気送風管路56bに送り出されて、水槽52内に設けられた導風口52bを介して水槽52内に送り込まれる。水槽52内に送り込まれた高温の乾燥空気は、回転ドラム53の底壁に設けられた底面開口53bおよび透孔53aを通じて回転ドラム53内に導入され、衣類などの洗濯物の間を流通し、乾燥させながら湿った空気となって周壁に設けられた透孔53aから水槽52へと抜け、再度、循環空気導入管路56aへと導入される。このような循環送風経路56での空気の循環により乾燥行程が実施される。
【0061】
さらに、本実施の形態4に係る超音波霧化装置を備えた洗濯乾燥機は、開口部51aを閉じた状態で回転ドラム53を回転させながら乾いた衣類のしわをのばして低減させることを目的とした「しわのばしコース」が設けられている。
【0062】
この「しわのばしコース」においては、蒸発器57および凝縮器58を停止させ、開口部51aを閉じた状態で回転ドラム53および送風ファン59の回転速度を通常の乾燥行程におけるよりも低速で回転させるとともに、超音波霧化装置60を起動させることにより、超音波霧化装置60で微細な液滴からなるミストを発生させ、このミストを乾燥空気送風管路56bを流通する乾燥空気流に落とし込んで、ミストを水槽52内に送り込む。このようにして、回転ドラム53内の隅々にまでミストを充満させ、衣類表面を効果的に湿らせて、乾燥状態にある衣類のしわを低減させるしわ低減効果を持たせた行程が実行される。
【0063】
このとき、本実施の形態においては、実施の形態1に係る超音波霧化装置を用いているので、「しわのばしコース」を行うに際し、電流検知回路4の電流の値に応じてマイクロコンピュータ6が入り切り回路3の入り切りを制御することで、発生する総霧化量の変動を少なくし、総霧化量を適切に調節することができるので、水槽52内の洗濯物を乾燥率90%〜96%、より好ましくは95%にミストで均一に湿らせることが、より精度良く実行することができ、その結果として、最適なしわ低減効果を得ることができる。なお、ここでいう乾燥率とは、洗濯する前の状態での洗濯物の重量を、湿らせた後の洗濯物の重量で除した値に、100を掛けて%表示したものである。
【0064】
また、この「しわのばしコース」は、扉54で開口部51aを閉じた状態で行われるので、水槽52と循環送風経路56とで構成される容積が限定された閉空間内にミストを充満、循環させれば良く、比較的少量のミストを発生させるだけで回転ドラム53内の衣類表面を万遍なく効果的に湿らせて、しわのばし効果を及ぼすことができる。さらに、この「しわのばしコース」において、送風ファン59を動作させることにより、強制的にミストを充満、循環させることができるので、短時間で万遍なく衣類表面を湿らせてしわのばしを効率よく行うことができる。
【0065】
また、この「しわのばしコース」においては、回転ドラム53を回転させなくても、衣類のしわ低減効果を得ることはできるが、本実施の形態では、回転ドラム53を回転させるようにしている。超音波霧化装置60の動作時に回転ドラム53を回転させることにより、衣類がかき混ぜられ、衣類に邪魔されずにミストを回転ドラム53内に導入することができるとともに、衣類全体をさらに短時間で万遍なく湿らせてしわのばしを効率よく行うことができる。
【0066】
また、家庭内での一般的な使用環境下においては、数ボルトの電圧変化が実際に起こり得るため、本実施の形態1に係る超音波霧化装置を用いることにより、不均一に濡れてしまい、ミストを用いる意味がなくなってしまったり、その結果、乾燥の時間が余分にかかってしまうといった問題も起こり難く、また洗濯物が乾燥率99%程度にしか湿らずしわをのばすことができないといった問題も起こり難くなる。
【0067】
さらに、その後、超音波霧化装置60を停止させ、回転ドラム53おより送風ファン59の回転速度を通常の乾燥行程と同じ速度にまで上昇させるとともに、蒸発器57および凝縮器58を動作させて、通常の乾燥運転を実施して、衣類を乾燥させながらその衣類のしわをのばすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかる超音波霧化装置およびこれを備えた洗濯乾燥機は、交流電源の電圧の変動や、振動子発振回路を構成するトランジスタの増幅率のバラツキがあり、単位時間当たりの発生霧化量に変化があっても、超音波振動子が超音波を発生するために振動子発振回路に流れる電流を電流検知回路で検知し、その電流に応じてマイクロコンピュータで演算した入り時間、すなわち振動子発振回路の通電時間を入り切り回路の制御により調節することで、発生する総霧化量の変動を少なくすることができる。
【0069】
したがって本発明は、超音波振動子によって水を霧化させて霧化粒子を作る、洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機などの用途にきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1における超音波霧化装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における超音波霧化装置の主要部回路図
【図3】本発明の実施の形態1における超音波霧化装置の特性図
【図4】本発明の実施の形態1における超音波霧化装置の他の特性図
【図5】本発明の実施の形態1における超音波霧化装置の他の特性図
【図6】本発明の実施の形態2における超音波霧化装置の主要部回路図
【図7】本発明の実施の形態2における超音波霧化装置の特性図
【図8】本発明の実施の形態2における超音波霧化装置の他の特性図
【図9】本発明の実施の形態2における超音波霧化装置の他の特性図
【図10】本発明の実施の形態3における超音波霧化装置の特性図
【図11】本発明の実施の形態4における洗濯乾燥機の側面断面図
【図12】本発明の実施の形態4における洗濯乾燥機の背面側から見た斜視図
【図13】従来の超音波霧化装置のブロック図
【符号の説明】
【0071】
1 商用電源(交流電源)
2 降圧回路
3 入り切り回路
4 電流検知回路
5 振動子発振回路
6 マイクロコンピュータ
7 超音波振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の電圧を降圧する降圧回路と、前記降圧回路の出力を入り切りする入り切り回路と、前記入り切り回路の出力の電流を検知する電流検知回路と、前記降圧回路の出力を整流する振動子発振回路と、前記振動子発振回路の信号を受け水を霧化させる超音波振動子と、前記電流検知回路の信号を受け前記入り切り回路を制御するマイクロコンピュータとを備え、前記電流検知回路が前記振動子発振回路への電流を検知し、検知した電流に応じて前記マイクロコンピュータが前記入り切り回路を制御する超音波霧化装置。
【請求項2】
降圧回路は電源変圧器である請求項1に記載の超音波霧化装置。
【請求項3】
降圧回路は定電圧化したスイッチング電源で構成した請求項1に記載の超音波霧化装置。
【請求項4】
マイクロコンピュータは、振動子発振回路への電流に応じて入り切り回路の入り時間を変える請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波霧化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の超音波霧化装置を備えた洗濯乾燥機。
【請求項6】
筐体内に懸吊された水槽と、前記水槽内に回転自在に設けられ、洗濯物を収納する回転ドラムと、前記水槽内に空気を送風する送風手段と、前記水槽から排気された空気を前記送風手段を経由して再び前記水槽に戻し送風する循環送風経路とを備え、超音波霧化装置は、前記循環送風経路に接続した請求項5に記載の洗濯乾燥機。
【請求項7】
超音波霧化装置の動作時には、送風手段を動作させる請求項6に記載の洗濯乾燥機。
【請求項8】
超音波霧化装置の動作時には、回転ドラムを回転させる請求項6または7に記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−262091(P2009−262091A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116817(P2008−116817)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】