説明

超高圧水銀ランプ

【課題】石英バルブの破裂する恐れが少なく、信頼性の高い超高圧水銀ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】この発明に係る超高圧水銀ランプは、石英バルブ内に一対の電極システムを封止した発光管を有する超高圧水銀ランプにおいて、前記一対の電極システムは、夫々、電極溶接部21a−2,21b−2を有する電極21a,21bと、一端が前記電極溶接部21a−2,21b−2に箔溶接部22a−1,22b−1が溶接される箔22a,22bと、前記箔22a,22bの他端に接続されるリード線とを備え、前記箔溶接部22a−1,22b−1を略長方形の平板とし、前記箔溶接部22a−1,22b−1の前記発光管の中心軸に直交する方向の幅Wsと、前記電極溶接部21a−2,21b−2の直径dとの関係を、1.0≦Ws/d≦1.4としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクター用光源に使用される超高圧水銀ランプに関するもので、更に詳しくは発光管の電極芯線と箔との溶接部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター用光源に使用される超高圧水銀ランプ(以下、ランプと呼ぶ場合もある)の発光管は、石英ガラスチューブの中に電極システムを挿入し、これらを封止する。超高圧水銀ランプの発光管の内部圧力は非常に高く、200気圧に達する場合もある。
【特許文献1】特開平11−067156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、ランプの点灯中に発光管の石英ガラスチューブが、内圧に耐えきれずに破裂することがある。特に、電極溶接部の石英ガラスチューブと箔との密着性が悪くその間に隙間が生じる。その隙間に高圧の水銀が入り込み、石英ガラスチューブが破裂することがある。尚、以下この明細書では、石英ガラスチューブを石英バルブと呼ぶことにする。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、石英バルブの破裂する恐れが少なく、信頼性の高い超高圧水銀ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る超高圧水銀ランプは、石英バルブ内に一対の電極システムを封止した発光管を有する超高圧水銀ランプにおいて、
前記一対の電極システムは、夫々、電極溶接部を有する電極と、一端が前記電極溶接部に箔溶接部が溶接される箔と、前記箔の他端に接続されるリード線とを備え、
前記箔溶接部を略長方形の平板とし、前記箔溶接部の前記発光管の中心軸に直交する方向の幅Wsと、前記電極溶接部の直径dとの関係を、
1.0≦Ws/d≦1.4
としたことを特徴とする。
【0006】
前記箔溶接部の根元と前記電極溶接部の先端との間の距離Lと、前記電極溶接部の直径dとの関係を、
L>d
としたことを特徴とする。
【0007】
前記箔は、前記箔溶接部付近の角部を丸く面取りしたことを特徴とする。
【0008】
前記箔溶接部の先端の面取りR1、前記箔溶接部の根元の面取りR2、前記箔の前記箔溶接部側端部の面取りR3を、
R1,R2,R3≧0.1mm
としたことを特徴とする。
【0009】
前記電極溶接部と前記箔溶接部とを1点の溶接により固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る超高圧水銀ランプは、箔溶接部を略長方形の平板とし、箔溶接部の発光管の中心軸に直交する方向の幅Wsと、電極溶接部の直径dとの関係を、
1.0≦Ws/d≦1.4
としたことにより、箔の封止後の石英バルブ、電極溶接部、箔溶接部の間に生じる隙間を、従来の超高圧水銀ランプの封止後の隙間よりも小さくすることができるため、超高圧水銀ランプの点灯中の箔と石英バルブとの剥離を抑制できる。そのため、石英バルブが破裂する恐れが少なく、信頼性の高い超高圧水銀ランプを提供することができる。
【0011】
箔溶接部の根元と電極溶接部の先端との間の距離Lと、電極溶接部の直径dとの関係を、
L>d
としたことにより、封止後の隙間を確実に小さくすることができる。
【0012】
箔の箔溶接部付近の角部を丸く面取りしたことにより、石英バルブの応力集中を避けることができる。石英バルブに亀裂が発生して剥離が進行する恐れが少ない。
【0013】
箔溶接部の先端の面取りR1、箔溶接部の根元の面取りR2、箔の箔溶接部側端部の面取りR3を、
R1,R2,R3≧0.1mm
としたことにより、石英バルブの応力集中を避けることができる。石英バルブに亀裂が発生して剥離が進行する恐れが少ない。
【0014】
電極溶接部と箔溶接部とを1点の溶接により固定することにより、溶接により箔が劣化し、点灯中の箔切れを起こす恐れを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
図1乃至図6は実施の形態1を示す図で、図1は超高圧水銀ランプ100の一部を破断した側面図、図2は発光管2の断面図、図3は箔22bの平面図、図4は箔22bを電極21bに溶接した状態を示す図、図5は図4のA−A断面図で、封止後の箔22bと電極21bとの溶接部付近の断面図である。図6は比較のために示す従来の超高圧水銀ランプ100の封止後の溶接部付近の断面図である。
【0016】
本実施の形態は、発光管2の内部に配置される電極と箔との溶接部に特徴がある。従って、超高圧水銀ランプ100の全体構成については、簡単に説明する。
【0017】
図1に示すように、超高圧水銀ランプ100は、反射鏡3(図1の例は、放物型)の内部に発光管2が収納される。発光管2は、反射鏡3のネック部3bにセメント18により固定される。発光管2の中心軸2aが、反射鏡3の開口部3aとネック部3bを結ぶ中心軸に一致し、発光部11の中心が反射鏡3の焦点となる状態で固定される。セメント18の主成分は、シリカである。
【0018】
発光管2については後述するが、発光管2の電極システム24aの電極21aに接続するリード線23aが、発光管2の前面側端面(反射鏡3の開口部3a側)から引き出される。リード線23aは、第1の端子15aに接続される。
【0019】
また、発光管2の電極システム24bの電極21bに接続するリード線23bが、発光管2の背面側端面(反射鏡3のネック部3b側)から引き出される。リード線23bは、第2の端子15bに接続される。
【0020】
石英バルブ20のモリブデン箔22aの周囲を覆う部分に、トリガーコイル17が巻かれる。トリガーコイル17は、第2の端子15bに接続する。
【0021】
反射鏡3の前面の開口部3aに、透光性の前面ガラス19が取り付けられる。
【0022】
発光管2の発光部11の中心が、球面、楕円面、放物面等の碗状の反射鏡3の焦点に位置する。放射された光は、反射鏡3の内面に施された反射膜によって反射され、ランプ前方に放射される。放射された光はランプ前方に設けられ光学系に入射する。
【0023】
図2により、発光管2の構成を説明する。発光管2は、一対の電極システム24aと電極システム24bとが石英バルブ20内に配置される。電極システム24aは、電極21a、箔22a、リード線23aを備える。同様に、電極システム24bは、電極21b、箔22b、リード線23bを備える。発光管2内には、水銀25と希ガスが封入される。そして、発光管2の両端部は、石英バルブ20を加熱・溶融することで封止られる。
【0024】
以下、電極システム24a及び電極システム24bの構成を、電極システム24bを例に説明する。電極システム24aの構成も、電極システム24bと同じである。電極システム24aも、放電部21a−1、電極溶接部21a−2、芯線21a−4を有する電極21aに箔溶接部22a−1を有する箔22aの一端が固定され、箔22aの他端にリード線23aが接続される。
【0025】
図3に示すように、電極システム24bの箔22bの電極21b側端部に、箔22bの幅Woよりも小さい幅Wsの箔溶接部22b−1を設ける。箔溶接部22b−1は、略長方形の平板である。幅Wsは箔溶接部22b−1の発光管2の中心軸2aに直交する方向の幅である。
【0026】
図4に示すように、箔22bの箔溶接部22b−1に電極21bの電極溶接部21b−2を合わせて溶接する。電極溶接部21b−2は、芯線21b−4の一方の端部(放電部21b−1の反対側)である。
【0027】
電極溶接部21b−2は、一例では、略円柱形状である。ここで、電極溶接部21b−2の直径dと、箔溶接部22b−1の幅Wsとは、以下に示す関係を満たす。
1.0≦Ws/d≦1.4 (1)
【0028】
箔溶接部22b−1の幅Wsを箔22bの幅Woよりも小さくし、電極溶接部21b−2の直径dとの関係を上記(1)式を満たすようにすることにより、箔22bの封止後の石英バルブ20、電極溶接部21b−2、箔溶接部22b−1の間に生じる隙間26(図5参照)を、従来の超高圧水銀ランプ100の封止後の隙間26(図6参照)よりも小さくすることができる。隙間26が小さくなるため、超高圧水銀ランプ100の点灯中の箔22bと石英バルブ20との剥離を抑制できる。そのため、石英バルブ20が破裂する恐れが少なく、信頼性の高い超高圧水銀ランプ100を提供することができる。
【0029】
Ws/d<1.0では、箔22bの製造工程、並びに点灯時の箔切れが発生する恐れがある。
【0030】
また、1.4<Ws/dでは、隙間26が大きくなり、超高圧水銀ランプ100の点灯中の箔22bと石英バルブ20との剥離を抑制する効果が少なくなる。
【0031】
尚、図4において、箔溶接部22b−1の根元と電極溶接部21b−2の先端との間の距離Lは、
L>d (2)
の関係とする。(2)を満たすことにより、封止後の隙間26を確実に小さくすることができる。(2)式を満たさない場合には、箔22bの幅Woの影響を受けて隙間26が小さくならない可能性があるので、好ましくない。
【0032】
以上のように、この実施の形態によれば、箔溶接部22b−1の幅Wsを箔22bの幅Woよりも小さくし、電極溶接部21b−2の直径dとの関係を、上記(1)式を満たすようにすることにより、箔22bの封止後の石英バルブ20、電極溶接部21b−2、箔溶接部22b−1の間に生じる隙間26を、従来の超高圧水銀ランプ100の封止後の隙間26よりも小さくすることができるため、隙間26が小さくなり、超高圧水銀ランプ100の点灯中の箔22bと石英バルブ20との剥離を抑制できる。そのため、石英バルブ20が破裂する恐れが少なく、信頼性の高い超高圧水銀ランプ100を提供することができる。
【0033】
また、箔溶接部22b−1の根元と電極溶接部21b−2の先端との間の距離Lを、上記(2)式を満たすようにすることにより、封止後の隙間26を確実に小さくすることができる。
【0034】
実施の形態2.
図7は実施の形態2を示す図で、箔22bの部分平面図である。
【0035】
以下の説明は、電極システム24bについて行うが、電極システム24aの構成も、電極システム24bと同じである。
【0036】
実施の形態1の図3に示すように、箔22bの箔溶接部22b−1付近の角部が直角であると、角部の石英バルブ20に応力集中が起こる。応力が集中すると、石英バルブ20に亀裂が発生して剥離が進行する恐れがある。
【0037】
そこで、本実施の形態では、図7に示すように、箔22bの箔溶接部22b−1付近の角部を丸く面取りしている。
【0038】
箔溶接部22b−1の先端の面取りR1は、一例では、Wsが0.6mmのとき、0.3mmである。
【0039】
箔溶接部22b−1の根元の面取りR2は、一例では、Woが2.5mmのとき、0.7mmである。
【0040】
箔22bの箔溶接部22b−1側端部の面取りR3は、一例では、Woが2.5mmのとき、0.2mmである。
【0041】
箔溶接部22b−1の先端の面取りR1、箔溶接部22b−1の根元の面取りR2、箔22bの箔溶接部22b−1側端部の面取りR3は、
R1,R2,R3≧0.1mm (3)
であれば、箔22bの箔溶接部22b−1付近の角部による石英バルブ20の応力集中を避けることができる。
【0042】
以上のように、この実施の形態によれば、箔22bの箔溶接部22b−1付近の角部を丸く面取りすることにより、石英バルブ20の応力集中を避けることができる。石英バルブ20に亀裂が発生して剥離が進行する恐れが少ない。
【0043】
また、箔溶接部22b−1の先端の面取りR1、箔溶接部22b−1の根元の面取りR2、箔22bの箔溶接部22b−1側端部の面取りR3を、R1,R2,R3≧0.1mmとすることにより、箔22bの箔溶接部22b−1付近の角部による石英バルブ20の応力集中を避けることができる。石英バルブ20に亀裂が発生して剥離が進行する恐れが少ない。
【0044】
実施の形態3.
図8は実施の形態3を示す図で、溶接部付近の側面図(a)と平面図(b)である。
【0045】
以下の説明は、電極システム24bについて行うが、電極システム24aの構成も、電極システム24bと同じである。
【0046】
電極溶接部21b−2と箔溶接部22b−1とは、溶接により固定される。但し、溶接により箔22bが劣化し、点灯中の箔切れを起こす恐れがある。
【0047】
そのため、図8に示すように、電極溶接部21b−2と箔溶接部22b−1との溶接は、1点での溶接が好ましい。
【0048】
以上のように、この実施の形態によれば、電極溶接部21b−2と箔溶接部22b−1とを1点の溶接により固定するので、溶接により箔22bが劣化し、点灯中の箔切れを起こす恐れを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態1を示す図で、超高圧水銀ランプ100の一部を破断した側面図。
【図2】実施の形態1を示す図で、発光管2の断面図。
【図3】実施の形態1を示す図で、箔22bの平面図。
【図4】実施の形態1を示す図で、箔22bを電極21bに溶接した状態を示す図。
【図5】実施の形態1を示す図で、図4のA−A断面図で、封止後の箔22bと電極21bとの溶接部付近の断面図。
【図6】比較のために示す従来の超高圧水銀ランプ100の封止後の溶接部付近の断面図。
【図7】実施の形態2を示す図で、箔22bの部分平面図。
【図8】実施の形態3を示す図で、溶接部付近の側面図(a)と平面図(b)。
【符号の説明】
【0050】
2 発光管、2a 中心軸、3 反射鏡、3a 開口部、3b ネック部、11 発光部、15a 第1の端子、15b 第2の端子、17 トリガーコイル、18 セメント、19 前面ガラス、20 石英バルブ、21a 電極、21a−1 放電部、21a−2 電極溶接部、21a−4 芯線、21b 電極、21b−1 放電部、21b−2 電極溶接部、21b−4 芯線、22a 箔、22a−1 箔溶接部、22b 箔、22b−1 箔溶接部、23a リード線、23b リード線、24a 電極システム、24b 電極システム、25 水銀、26 隙間、100 超高圧水銀ランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英バルブ内に一対の電極システムを封止した発光管を有する超高圧水銀ランプにおいて、
前記一対の電極システムは、夫々、電極溶接部を有する電極と、一端が前記電極溶接部に箔溶接部が溶接される箔と、前記箔の他端に接続されるリード線とを備え、
前記箔溶接部を略長方形の平板とし、前記箔溶接部の前記発光管の中心軸に直交する方向の幅Wsと、前記電極溶接部の直径dとの関係を、
1.0≦Ws/d≦1.4
としたことを特徴とする超高圧水銀ランプ。
【請求項2】
前記箔溶接部の根元と前記電極溶接部の先端との間の距離Lと、前記電極溶接部の直径dとの関係を、
L>d
としたことを特徴とする請求項1記載の超高圧水銀ランプ。
【請求項3】
前記箔は、前記箔溶接部付近の角部を丸く面取りしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の超高圧水銀ランプ。
【請求項4】
前記箔溶接部の先端の面取りR1、前記箔溶接部の根元の面取りR2、前記箔の前記箔溶接部側端部の面取りR3を、
R1,R2,R3≧0.1mm
としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超高圧水銀ランプ。
【請求項5】
前記電極溶接部と前記箔溶接部とを1点の溶接により固定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の超高圧水銀ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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