超高感度シリコンセンサーのための2段階トランス結合
ボロメータ型超高感度シリコンセンサーは、検出段、中間段、及び熱浴段を含む。検出段、中間段、及び熱浴段の一部は、おおむね共面であり、かつI字形梁のブリッジで接続されていて、お互いに共面の回転を可能にする。マイクロアンテナと検出段の検出素子との間に連結された2段階トランスの組立部品によって、マイクロアンテナと検出段との間の機械的及び電気的結合が改良される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の関心
米国政府は、米国陸軍研究開発技術本部(RDECOM)取得センターからの契約番号W911QX-04-C-O0117に従って本発明に対する関心を有するものである。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、仮出願ではない出願番号11/239,275、公開番号2006-0076493 A1(ノースロップ グラマン 参照番号000775-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのセンサーインターフェースへの焦平面アンテナ”、出願日2005年9月30日;仮出願ではない出願番号11/239,297、公開番号2006-0081780 A1(ノースロップ グラマン 参照番号000776-078)、名称” 超高感度シリコンセンサー読み出し回路”、出願日2005年9月30日;仮出願ではない出願番号11/240,772、公開番号2006-0081781 A1(ノースロップ グラマン 参照番号000800-078)、名称” 高感度シリコンセンサー及び超高感度シリコンセンサーのためのテスト構造”、出願日2005年10月3日、及び、仮出願ではない出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのI字形梁ブリッジ接続”、出願日2005年12月14日に関係する。
【0003】
関連技術への相互参照
本出願は、更に、米国特許番号6,489,615 、名称” 超高感度シリコンセンサー”、発行日2002年12月3日、及び、米国特許番号7,064,328 、名称” 超高感度シリコンセンサーミリメータ波の受動イメージャ”、発行日2006年6月20日に関連する。これらの特許のどちらも本発明の譲受人に譲渡されている。米国特許番号6,489,615 、及び、7,064,328は、 いかなる及びあらゆる目的のために、更に、本出願への参照として組み入れられることを意図している。
【0004】
本発明の技術分野
本出願は、一般的には、熱的放射を検出するためのボロメータ型の放射センサーに関し、更に詳しくは、マイクロアンテナと熱的放射検出器との間の改善された信号結合を含む超高感度シリコンセンサーに関する。
【0005】
関連技術の説明
本技術においてはボロメータは技術的に良く知られたものであり、それは、熱的放射が吸収された時、電圧出力を発生する装置から構成される。これらの装置は、更に、電磁波スペクトルの長波赤外(LWIR)帯における赤外(IR)画像化のために成功裏に利用されていた。これらの装置を他の特定のスペクトル帯に拡張することは、過去においては相対的に困難だと分かっていた。しかしながら、この能力をミリメータ波(mm)及びテトラヘルツ波(THz)スペクトル帯に拡張する努力は現在も進行中であり、そのため、イメージャを、mm波、及び、テトラヘルツ波(THz)スペクトル帯にて動作させる必要性がある。そのような装置のための応用は、自国防衛の応用と同じく、たとえば、改良されたナビゲーション、目標認識、及び、検出のための多スペクトルの画像化を含む。そのような応用は、このボロメータ型の利用には、大いに有益であろう。
【0006】
米国特許番号6,489,615には、検出段(detector stage)、中間段(intermediate stage)及び熱浴段(heat bath stage)を含み、
その中間段は検出段と熱浴段の間に位置している、3段の連結されたシリコンセンサーの構造が開示されている。中間段は、中間段と検出段にそれぞれ位置している一対の背中合わせの温度検出シリコンダイオードにより与えられる検出温度間の温度差に比例する熱を発生する増幅器を含む、電気―熱的フィードバック・ループの一部を構成する。増幅器によって与えられる熱は、検出段と中間段との間の温度差を積極的に零にするように作用し、検出段と中間段との間ではいかなる正味の熱の流れを無くすようにする。
【0007】
関連出願番号11/239,275(ノースロップ グラマン 参照番号000775-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのセンサーインターフェースへの焦平面アンテナ”には、3段に連結された半導体センサー及び3段階すなわち、検出段、中間段及び熱浴段を含む2段に連結された半導体センサーの構造が開示されている。2段に連結されたシリコンセンサーでは、検出段と中間段は相互に共面であり、上部部分は熱浴段部分の上に位置している。
【0008】
関連出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのI字形梁ブリッジ接続”には、検出段、中間段及び熱浴段の一部がお互いに共面を有し、平面の曲がりと歪みを防止しつつ、共面の回転を相互に許すように接続されている、2段に連結されたシリコンセンサーが開示されている。3段のセンサー段階の相互接続は、比較的幅広い高さと比較的狭い幅寸法を含むほぼ長方形の断面を有する、伸張したI字形梁のブリッジ部材で構成され、このブリッジ部材は、比較的幅広い高さ寸法が共面段階の共通平面とは垂直をなす一方、比較的狭い幅寸法が共面段階の共通平面の方向にあるように傾斜している。
【0009】
要約
検出段、中間段及び熱浴段を含むボロメータ型の超高感度シリコンセンサーの改良を提供するのが、本発明の目的である。検出段、中間段及び熱浴段の一部がほぼ共面を有し、これらは共面の回転を相互に許すようにI字形梁のブリッジ部材により相互接続されている。2段階のトランスの組立部品を含ませることによって、マイクロアンテナと検出段との間に誘導的結合ができるため、マイクロアンテナと検出段との間の機械的及び電気的結合が改善される。この場合、1つのトランス段の1次巻線がマイクロアンテナの上に位置し、それの2次巻線と第2のトランス段の1次巻線が中間段部材の上に位置し、第2のトランスの2次巻線が、検出段部材の上に位置している。第1のトランスの2次巻線と第2のトランスの1次巻線とは、中間段部材の上に位置する一対の誘導素子によって結合されている。一対の容量素子が共振のために更に使用されており、第1の容量素子はマイクロアンテナと第1のトランス段の1次巻線と直列に結合され、第2の容量素子は、共に中間段部材の上に位置する、第1のトランス段の2次巻線と第2のトランス段の1次巻線の相互に結合された端部と交差して結合されている。更に頑丈な機械的構造を提供するため、マイクロアンテナのオーバーハングはかなり減少させる。
【0010】
本発明の更なる応用範囲は、以下の詳細な説明により明確になるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲に含まれる種々の変更や変形が、以下の詳細な説明により当業者には明白であることから、本発明の好適な実施例を示す詳細な説明や特別な例は、例示としてのみ示したものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、例示としてのみ示され、限定的な意味に考えるよう意図してはいない、添付する図面を参照して考察されると十分に理解される。ここで、
【図1】従来のボロメータ型のセンサーを一般的に示す電気的ブロック図である。
【図2】本発明に関係する超高感度シリコンセンサー・ミリメータ波の受動イメージャを示す断面図であり、検出段と中間段の上に設けられるマイクロアンテナを例示している。
【図3】関連技術として、検出段、中間段と熱浴段を機械的及び電気的に接続する”I” 字形梁ブリッジの概念を示す上面図である。
【図4】図3に示す関連技術の超高感度シリコンセンサーの電気的な概要図である。
【図5】本発明の好適な実施例を示すボロメータ型のセンサーを示す断面図である。
【図6】図5に示す本発明の実施例を一般的に示し、熱浴段、中間段及び検出段の機械的及び電気的関係を示した上面図である。
【図7】図7A及び7Bは、図6に示すセンサーの熱浴段、中間段及び検出段を相互接続するために用いられるI字形梁のブリッジの2つの断面図である。
【図8】図5と6に示す本発明の実施例に関し使用されるマイクロアンテナの上面図である。
【図9】図8に示すマイクロアンテナに接続されるトランス素子の詳細を示した図面である。
【図10】図5と6に示す本発明の実施例を一般的に示す電気的な概要図である。
【図11】図10に示す概要図を更に例証する詳細な電気的な概要図である。
【図12】本発明の動作を理解する上で有益な特性曲線を示すものである。
【図13】本発明の動作を理解する上で有益な特性曲線を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
図面を参照すれば、同一の符号は同一の部品を示しており、特に図1を参照すると、上記した関連する米国特許第6,489,615号に開示された積極的な熱的分離を含む超高感度シリコンセンサー10の実施例が示されている。ボロメータ10は、アンテナ12により熱型の電磁エネルギーを直接受信するもので、それは検出段(detector stage)14、中間段(intermediate stage)16及び熱浴段(heat bath stage)18の3つの主たる段階を含む。2つの温度センサー20と22は、検出段と中間段16のそれぞれ中ほどに位置しており、中間段16に位置した増幅器24に対し背中合わせの関係で接続された一対の半導体ダイオードからなる。増幅器24は、電気―熱フィードバックループに熱を発生し、検出段14における温度TDと中間段16における温度TINとの間の温度差を零にするもので、これは、検出段14と中間段16を連結しているブリッジ部材G1AとG1Bによって達成される。検出段の温度DDが変化した時、電気―熱フィードバックにより、中間段の温度TINは同じ量だけ変化させられる。もし、検出段16が、中間段16よりも高い(低い)温度であって、その温度差が熱を発生する増幅器24で増幅される場合、温度センサー20と22の背中合わせの接続は、正の(負の)電圧信号を発生する。これらの結合の熱的伝導性は、温度段14と中間段16との温度差の減少に比例して減少する。また中間段16は、一対のブリッジ部材G2AとG2Bによって、熱浴段18にも結合されていることが示されている。ブリッジ部材G2AとG2Bを介して、熱浴段18から与えられる一定の冷却と調整可能な熱でのパワーの組み合わせは、中間段により検出段の相反する温度追従を与える。
【0013】
図2を参照すると、能動素子、すなわち、検出段14、中間段16と熱浴段18の上部部分17が共通の平面に配置されたボロメータ型のセンサー10を構造的に示す断面図が示されている。検出段14は、環状の中間段素子16によって囲まれた固体回路検出素子からなる。検出段14と中間段16は、熱浴段18の平坦な低部部分19の上に位置している。熱浴段18の上部部分17は、共面の検出段14と中間段16が位置しているほぼ円形の空洞28を含む。熱浴部分17の上面の平らな表面21は、アンテナ素子12を配置するために使用され、熱的エネルギーを受信し能動的なセンサー段14および16と容易に統合できる受動素子からなっている。
【0014】
センサー10の3つの段階14、16と18は典型的には、シリコンで製造されており、酸化物とニクロムでサンドイッチされた層からなるブリッジ部材を接続することによって相互接続される。製造温度とこれらの材料の異なる熱的膨張係数を仮定すると、これらの相違を調整する準備をしなければならない。このことは、図3に示しており、関連出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのI字形梁ブリッジ接続”に更に開示されている。
【0015】
出願番号11/302,229に開示されているものは、検出段14を中間段16と接続し、かつ中間段16を図2に示す熱浴段18の上部部分17とを接続する、4つの連結ブリッジG2A、G2B、G2C 及びG2Dに接続するための2組の伸長された曲線のブリッジG1AとG1Bからなる3段階14、16と18のための相互接続されたブリッジ部材である。図3に示すセンサー10の典型的な実施例における検出段14は直径約8μmの円形の検出素子であり、中間段16は約10μmの幅の環状の素子である。
【0016】
接続ブリッジG1A、G1B、G2A、G2B、G2C、及びG2Dは、センサー構造の物理的歪みを防止するI字形梁である。このセンサー構造では、もしこの梁がなければ、ストレスや緊張が引き起こした曲がりが、アンテナ素子12に対して、検出段及び/又は中間段の平面外の歪や非平面化を生じさせる。そのようなことは、図示していない外部的状況からマイクロアンテナ12(図2)により検出される信号を減少させる。更に、曲がりは、アンテナ12を、分離されていることが前提とされる段階14と16と機械的な接触状態となるようにさせうる。
【0017】
従って、2組の伸長された曲線のブリッジ部材G1A、G1Bと、G2A、・・・G2Dは、約0.03μmの厚さの薄いニクロム層に覆われた約2μmの高さと0.2μmの幅と測定される長方形の断面を有する。I字形梁のブリッジ素子を用いると、構造が平面外の動きに対し強化され、ブリッジ長さにおける収縮(ストレス)または拡張(緊張)は、中間段16を介した検出段14と熱浴段との間での相対的な回転として現される細い平面の長さの変化によって調整される。回転は、平面外の曲がりを生じさせることがなく、それ故、アンテナ12、検出段14及び中間段16との間の必要な電気的結合と機械的分離を維持することができる。製造や温度変化もストレス及び/又は緊張を含むので、平面外の曲がりではなく、回転によるストレスや緊張を軽減する手段を設けることは、非常に重要である。製造技術により、ストレスや緊張を制御することは、非常に困難である。従って、回転による機械的な緩和のための手段を設けることは更に実用的なことである。
【0018】
出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)に開示されたような関連技術においては、アンテナ構造12は、実際は、図2に示すように横たわっている中間段16及び検出段14の上にオーバーハングしているマイクロアンテナからなる。実際の実施例では、オーバーハング部分は約18μmである。マイクロアンテナ12を検出段14と中間段16の上部表面から分離する空間は、約1.5μmである。熱的な分離を維持し、マイクロアンテナ12と検出器14との間に適当なAC結合を達成するためには、この小さな分離が必要である。
【0019】
図2に示す関連技術のデバイスの製造において、マイクロアンテナ12のオーバーハング部分は、製造している間、マイクロアンテナ12の下の構造をキセノンデイフルオロライド(XeF2)エッチング剤から解放するために使用される、堀領域(trench area)と称される環状空間30と32を部分的に保護する。マイクロアンテナ12によって与えられていた保護は、従来、マイクロアンテナ12にある穴を切断することにより部分的に和らげられていた。そのような解決は、マイクロアンテナ12の支持部材を弱め、マイクロアンテナ12と、検出段14及び/又は中間段16との間の物理的な接触の可能性を増加させたため、理想以下であることが分かった。
【0020】
更に図2に示すように、外側空間又は掘30はマイクロアンテナ12でマスクされている一方、内部空間又は堀32はマイクロアンテナ12でマスクされていない。図2に示すように、容量C1は中間段16に結合されている。図3では、容量C1は、2次巻線L2が検出段14に位置する単一段トランス34の1次巻線L1と交差して結合していることが示されている。中間段16と検出段14との間の堀32は、ブリッジ部材G1AとG1Bを含み、図3に示すように、1次巻線L1と2次巻線L2との間に環状ギャップを与える。
【0021】
更に図2と3に示す関連技術の実施例の電気的概要図を、図4に示す。ここで、EAは、マイクロアンテナ12に現れる信号電圧に対応し、RAはそれに関係する電気抵抗である。容量C1はマイクロアンテナ12と1次巻線L1に交差して結合していることが示されている。1次巻線L1は、抵抗RDを有する検出素子14に接続された2次巻線L2に電磁誘導的に結合している。
【0022】
図5と6を参照すると、また、内部と外部の環状空間又は掘30と32をマスクされることを含む、図2と3に示す実施例に関連した内在する制限を、マイクロアンテナ12から検出段14へのAC結合を、単一トランスの信号結合から2段階トランスの信号結合へと変更することによって、最小化することができる。
【0023】
図5と6においては、本発明の2段階トランスの実施例が示されており、それは、熱浴段素子(heat bath element)18の上部部分17に位置する1次巻線L1を含む第1のトランス段からなり、この1次巻線L1は、マイクロアンテナ12と、空間(堀)30によって分離された中間段(intermediate stage)16の上に位置する2次巻線L2とに接続されている。第2のトランス段は、中間段16の上に位置する1次巻線L5を含み、このトランス段は、検出段素子(detector element)14の上に位置する2次巻線L6と電磁誘導的に結合し、空間(堀)32によってそれらとは分離されている。2つの巻線L2とL5は、例えば、図6に示されたような誘導子L3とL4によって、お互いに結合された隣接した対の端部を有する。
【0024】
図6に示された2段階トランスの実施例においては、第1のトランス段は、第1のトランス段の1次巻線L1と直列である容量C1により、アンテナ12と容量的に結合しており、容量C2は、L2とL5の共通の接続点を交差して、誘導子L3とL4と結合している。
【0025】
2段階トランスの構造はまた、図3に示した単一トランスの実施例にて示されたのと同様のI字形梁のブリッジを含み、図6に示すように、中間段16を検出段(detector stage)14に機械的に結合する2つの内部側I字形梁部材G1AとG2Bと、中間段16を熱浴段(heat bath stage)18の部分17と機械的に結合する4つの外部側I字形梁部材G2A、G2B、G2C、及びG2Dを含む。I字形梁部材G1A・・・G2Dは、図7に示すように、頂上部と底部に1.5μm幅のつまみを有し、代表的には幅寸法1.1μmの本体部分36を有する。あるいは、I字形梁のブリッジは、例えば、図7Bに示したような、幅が変化する本体部分36を有してよく、この場合、頂上の幅は約1.1μmで、底部の幅は約0.7μmである。
【0026】
図5と6に示した本発明の2段階トランスの実施例では、図2に示したマイクロアンテナ素子12の中間段16への実質的なオーバーハングを無くしている。
【0027】
本発明によるマイクロアンテナ12の実施例は図8に示しており、これは、図9に示したように、円形セグメント151、152、153及び154に終端し、サイズが増加するような角状の部分に沿って外側に拡張している4つのアーム131、132、133及び134からなる。
【0028】
円形セグメント151と153の2つは、角状セグメント171と172を介して1次巻線L1の端部に接続されている。この場合、セグメントの1つ、たとえば171は、図6に示す容量C1を介し1次巻線L1に接続されている。図9は、図6に示す2つのトランス巻線L2とL5を示したものであり、ここでは、第2の容量C2は誘導子L3とL4の接続点に交差して、L2およびL5と結合している。
【0029】
図8と図9は、マイクロアンテナ12と、中間段16と検出段14の2段階トランス巻線の物理的配列を示し、図10と図11は、図5と図6に示した2段階トランス実施例のそれぞれ簡略な及び詳細な電気的な概要図を示したものである。
【0030】
図11の詳細な概要図は、巻線L1が5つの巻線セグメントL1A,L1B,L1C、L18及びL19からなることを示している。図10のトランス巻線L2は、3つの巻線セグメントL2A,L2B及びL2Cからなるものとして、図11に示している。図10の誘導子L3とL4は、容量C2がそこに接続されている回路節点38と40にて、巻線L2に結合されている単一の素子からなるものとして、図11に示す。図10の内部トランス巻線L5は、3つの巻線セグメントL5A,L5B及びL5Cからなるものとして、図11に示す。図10の第2のトランス段の第2の巻線L6は、検出器14の抵抗GBに全て直列に接続されている、3つのセグメントL6A,L6B及びL6Cからなるものとして示す。
【0031】
図11は、第1の段のトランス巻線L1の3つのセグメント、すなわち、L1A,L1B及びL1Cが、M15、M12及びM16を介し巻線L5A,L2A及びL6Cに相互に結合されている事実を更に図示している。更に、巻線L2Bは、M26を介し巻線L6Bに相互に結合されている。L3とL4と同様に、相互結合M25とM34が、トランスセグメントL2CとL5Cとの間にも確立されている。最後に、相互結合M56が、2次巻線L6Aと1次巻線部分L5Bとの間にも確立されている。
【0032】
図5と図6に示した2段階トランスの構造の入力インピーダンスと結合効率は、比較的幅広いものである。更に、開始周波数は、図10と図11に示した容量C2の値を変化することによって変えることができる。
【0033】
2段階トランスの構造は、更に、マイクロアンテナ12の抵抗に一致するように検出段14の抵抗を増加させる手段を備える。2段階での抵抗増加において、回路の“Q”値は減少し、そのことによって、動作バンド幅を最大にすることとなる。更に追加して、マイクロ波の入力節点での並列共振が、直列共振回路となる。第1及び第2のトランス段との間の磁気的結合も必要となる。
【0034】
図12と図13に示された特性曲線を参照すると、図12は、周波数の関数としての入力インピーダンスを示す特性曲線であり、図13は、マイクロアンテナ12と、検出段14の抵抗RDからなる負荷との間のパワー転送効率の特性曲線を示している。図12と図13とを比較すれば、相対的に一定なパワー結合効率が、15GHz以上の非常に広いバンド幅に亘って達成可能であることが示されている。
【0035】
以上に示し、説明してきたことは、2段階トランス結合の配置を実施することによる超高感度シリコンセンサーにおける改良である。これは、マイクロ波アンテナのオーバーハングを実質的に排除する故に、更に頑丈な機械的構造となる。更に、2段階トランスの実施例は、検出段14、中間段16及び熱浴段18に最適の空間を与える。また、上記したように、非常に低い“Q”値の回路が達成でき、そのことで、最適のインピーダンス結合と、マイクロアンテナ12と検出段14とのパワー結合を持った広い動作バンド幅を提供することとなる。
【0036】
以上のように、現在、本発明の好適な実施例と考えられるものを示し説明してきたが、上記の詳細と説明は単に本発明の原理を示したものとして認識すべきである。かくて、当業者にとっては、ここでは明白には説明し示さなかったが、本発明の原理を具体化しそれ故本発明の趣旨と範囲に含まれる、種々の配置を実現することが可能であると理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
政府の関心
米国政府は、米国陸軍研究開発技術本部(RDECOM)取得センターからの契約番号W911QX-04-C-O0117に従って本発明に対する関心を有するものである。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、仮出願ではない出願番号11/239,275、公開番号2006-0076493 A1(ノースロップ グラマン 参照番号000775-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのセンサーインターフェースへの焦平面アンテナ”、出願日2005年9月30日;仮出願ではない出願番号11/239,297、公開番号2006-0081780 A1(ノースロップ グラマン 参照番号000776-078)、名称” 超高感度シリコンセンサー読み出し回路”、出願日2005年9月30日;仮出願ではない出願番号11/240,772、公開番号2006-0081781 A1(ノースロップ グラマン 参照番号000800-078)、名称” 高感度シリコンセンサー及び超高感度シリコンセンサーのためのテスト構造”、出願日2005年10月3日、及び、仮出願ではない出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのI字形梁ブリッジ接続”、出願日2005年12月14日に関係する。
【0003】
関連技術への相互参照
本出願は、更に、米国特許番号6,489,615 、名称” 超高感度シリコンセンサー”、発行日2002年12月3日、及び、米国特許番号7,064,328 、名称” 超高感度シリコンセンサーミリメータ波の受動イメージャ”、発行日2006年6月20日に関連する。これらの特許のどちらも本発明の譲受人に譲渡されている。米国特許番号6,489,615 、及び、7,064,328は、 いかなる及びあらゆる目的のために、更に、本出願への参照として組み入れられることを意図している。
【0004】
本発明の技術分野
本出願は、一般的には、熱的放射を検出するためのボロメータ型の放射センサーに関し、更に詳しくは、マイクロアンテナと熱的放射検出器との間の改善された信号結合を含む超高感度シリコンセンサーに関する。
【0005】
関連技術の説明
本技術においてはボロメータは技術的に良く知られたものであり、それは、熱的放射が吸収された時、電圧出力を発生する装置から構成される。これらの装置は、更に、電磁波スペクトルの長波赤外(LWIR)帯における赤外(IR)画像化のために成功裏に利用されていた。これらの装置を他の特定のスペクトル帯に拡張することは、過去においては相対的に困難だと分かっていた。しかしながら、この能力をミリメータ波(mm)及びテトラヘルツ波(THz)スペクトル帯に拡張する努力は現在も進行中であり、そのため、イメージャを、mm波、及び、テトラヘルツ波(THz)スペクトル帯にて動作させる必要性がある。そのような装置のための応用は、自国防衛の応用と同じく、たとえば、改良されたナビゲーション、目標認識、及び、検出のための多スペクトルの画像化を含む。そのような応用は、このボロメータ型の利用には、大いに有益であろう。
【0006】
米国特許番号6,489,615には、検出段(detector stage)、中間段(intermediate stage)及び熱浴段(heat bath stage)を含み、
その中間段は検出段と熱浴段の間に位置している、3段の連結されたシリコンセンサーの構造が開示されている。中間段は、中間段と検出段にそれぞれ位置している一対の背中合わせの温度検出シリコンダイオードにより与えられる検出温度間の温度差に比例する熱を発生する増幅器を含む、電気―熱的フィードバック・ループの一部を構成する。増幅器によって与えられる熱は、検出段と中間段との間の温度差を積極的に零にするように作用し、検出段と中間段との間ではいかなる正味の熱の流れを無くすようにする。
【0007】
関連出願番号11/239,275(ノースロップ グラマン 参照番号000775-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのセンサーインターフェースへの焦平面アンテナ”には、3段に連結された半導体センサー及び3段階すなわち、検出段、中間段及び熱浴段を含む2段に連結された半導体センサーの構造が開示されている。2段に連結されたシリコンセンサーでは、検出段と中間段は相互に共面であり、上部部分は熱浴段部分の上に位置している。
【0008】
関連出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのI字形梁ブリッジ接続”には、検出段、中間段及び熱浴段の一部がお互いに共面を有し、平面の曲がりと歪みを防止しつつ、共面の回転を相互に許すように接続されている、2段に連結されたシリコンセンサーが開示されている。3段のセンサー段階の相互接続は、比較的幅広い高さと比較的狭い幅寸法を含むほぼ長方形の断面を有する、伸張したI字形梁のブリッジ部材で構成され、このブリッジ部材は、比較的幅広い高さ寸法が共面段階の共通平面とは垂直をなす一方、比較的狭い幅寸法が共面段階の共通平面の方向にあるように傾斜している。
【0009】
要約
検出段、中間段及び熱浴段を含むボロメータ型の超高感度シリコンセンサーの改良を提供するのが、本発明の目的である。検出段、中間段及び熱浴段の一部がほぼ共面を有し、これらは共面の回転を相互に許すようにI字形梁のブリッジ部材により相互接続されている。2段階のトランスの組立部品を含ませることによって、マイクロアンテナと検出段との間に誘導的結合ができるため、マイクロアンテナと検出段との間の機械的及び電気的結合が改善される。この場合、1つのトランス段の1次巻線がマイクロアンテナの上に位置し、それの2次巻線と第2のトランス段の1次巻線が中間段部材の上に位置し、第2のトランスの2次巻線が、検出段部材の上に位置している。第1のトランスの2次巻線と第2のトランスの1次巻線とは、中間段部材の上に位置する一対の誘導素子によって結合されている。一対の容量素子が共振のために更に使用されており、第1の容量素子はマイクロアンテナと第1のトランス段の1次巻線と直列に結合され、第2の容量素子は、共に中間段部材の上に位置する、第1のトランス段の2次巻線と第2のトランス段の1次巻線の相互に結合された端部と交差して結合されている。更に頑丈な機械的構造を提供するため、マイクロアンテナのオーバーハングはかなり減少させる。
【0010】
本発明の更なる応用範囲は、以下の詳細な説明により明確になるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲に含まれる種々の変更や変形が、以下の詳細な説明により当業者には明白であることから、本発明の好適な実施例を示す詳細な説明や特別な例は、例示としてのみ示したものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、例示としてのみ示され、限定的な意味に考えるよう意図してはいない、添付する図面を参照して考察されると十分に理解される。ここで、
【図1】従来のボロメータ型のセンサーを一般的に示す電気的ブロック図である。
【図2】本発明に関係する超高感度シリコンセンサー・ミリメータ波の受動イメージャを示す断面図であり、検出段と中間段の上に設けられるマイクロアンテナを例示している。
【図3】関連技術として、検出段、中間段と熱浴段を機械的及び電気的に接続する”I” 字形梁ブリッジの概念を示す上面図である。
【図4】図3に示す関連技術の超高感度シリコンセンサーの電気的な概要図である。
【図5】本発明の好適な実施例を示すボロメータ型のセンサーを示す断面図である。
【図6】図5に示す本発明の実施例を一般的に示し、熱浴段、中間段及び検出段の機械的及び電気的関係を示した上面図である。
【図7】図7A及び7Bは、図6に示すセンサーの熱浴段、中間段及び検出段を相互接続するために用いられるI字形梁のブリッジの2つの断面図である。
【図8】図5と6に示す本発明の実施例に関し使用されるマイクロアンテナの上面図である。
【図9】図8に示すマイクロアンテナに接続されるトランス素子の詳細を示した図面である。
【図10】図5と6に示す本発明の実施例を一般的に示す電気的な概要図である。
【図11】図10に示す概要図を更に例証する詳細な電気的な概要図である。
【図12】本発明の動作を理解する上で有益な特性曲線を示すものである。
【図13】本発明の動作を理解する上で有益な特性曲線を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
図面を参照すれば、同一の符号は同一の部品を示しており、特に図1を参照すると、上記した関連する米国特許第6,489,615号に開示された積極的な熱的分離を含む超高感度シリコンセンサー10の実施例が示されている。ボロメータ10は、アンテナ12により熱型の電磁エネルギーを直接受信するもので、それは検出段(detector stage)14、中間段(intermediate stage)16及び熱浴段(heat bath stage)18の3つの主たる段階を含む。2つの温度センサー20と22は、検出段と中間段16のそれぞれ中ほどに位置しており、中間段16に位置した増幅器24に対し背中合わせの関係で接続された一対の半導体ダイオードからなる。増幅器24は、電気―熱フィードバックループに熱を発生し、検出段14における温度TDと中間段16における温度TINとの間の温度差を零にするもので、これは、検出段14と中間段16を連結しているブリッジ部材G1AとG1Bによって達成される。検出段の温度DDが変化した時、電気―熱フィードバックにより、中間段の温度TINは同じ量だけ変化させられる。もし、検出段16が、中間段16よりも高い(低い)温度であって、その温度差が熱を発生する増幅器24で増幅される場合、温度センサー20と22の背中合わせの接続は、正の(負の)電圧信号を発生する。これらの結合の熱的伝導性は、温度段14と中間段16との温度差の減少に比例して減少する。また中間段16は、一対のブリッジ部材G2AとG2Bによって、熱浴段18にも結合されていることが示されている。ブリッジ部材G2AとG2Bを介して、熱浴段18から与えられる一定の冷却と調整可能な熱でのパワーの組み合わせは、中間段により検出段の相反する温度追従を与える。
【0013】
図2を参照すると、能動素子、すなわち、検出段14、中間段16と熱浴段18の上部部分17が共通の平面に配置されたボロメータ型のセンサー10を構造的に示す断面図が示されている。検出段14は、環状の中間段素子16によって囲まれた固体回路検出素子からなる。検出段14と中間段16は、熱浴段18の平坦な低部部分19の上に位置している。熱浴段18の上部部分17は、共面の検出段14と中間段16が位置しているほぼ円形の空洞28を含む。熱浴部分17の上面の平らな表面21は、アンテナ素子12を配置するために使用され、熱的エネルギーを受信し能動的なセンサー段14および16と容易に統合できる受動素子からなっている。
【0014】
センサー10の3つの段階14、16と18は典型的には、シリコンで製造されており、酸化物とニクロムでサンドイッチされた層からなるブリッジ部材を接続することによって相互接続される。製造温度とこれらの材料の異なる熱的膨張係数を仮定すると、これらの相違を調整する準備をしなければならない。このことは、図3に示しており、関連出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)、名称” 超高感度シリコンセンサーのためのI字形梁ブリッジ接続”に更に開示されている。
【0015】
出願番号11/302,229に開示されているものは、検出段14を中間段16と接続し、かつ中間段16を図2に示す熱浴段18の上部部分17とを接続する、4つの連結ブリッジG2A、G2B、G2C 及びG2Dに接続するための2組の伸長された曲線のブリッジG1AとG1Bからなる3段階14、16と18のための相互接続されたブリッジ部材である。図3に示すセンサー10の典型的な実施例における検出段14は直径約8μmの円形の検出素子であり、中間段16は約10μmの幅の環状の素子である。
【0016】
接続ブリッジG1A、G1B、G2A、G2B、G2C、及びG2Dは、センサー構造の物理的歪みを防止するI字形梁である。このセンサー構造では、もしこの梁がなければ、ストレスや緊張が引き起こした曲がりが、アンテナ素子12に対して、検出段及び/又は中間段の平面外の歪や非平面化を生じさせる。そのようなことは、図示していない外部的状況からマイクロアンテナ12(図2)により検出される信号を減少させる。更に、曲がりは、アンテナ12を、分離されていることが前提とされる段階14と16と機械的な接触状態となるようにさせうる。
【0017】
従って、2組の伸長された曲線のブリッジ部材G1A、G1Bと、G2A、・・・G2Dは、約0.03μmの厚さの薄いニクロム層に覆われた約2μmの高さと0.2μmの幅と測定される長方形の断面を有する。I字形梁のブリッジ素子を用いると、構造が平面外の動きに対し強化され、ブリッジ長さにおける収縮(ストレス)または拡張(緊張)は、中間段16を介した検出段14と熱浴段との間での相対的な回転として現される細い平面の長さの変化によって調整される。回転は、平面外の曲がりを生じさせることがなく、それ故、アンテナ12、検出段14及び中間段16との間の必要な電気的結合と機械的分離を維持することができる。製造や温度変化もストレス及び/又は緊張を含むので、平面外の曲がりではなく、回転によるストレスや緊張を軽減する手段を設けることは、非常に重要である。製造技術により、ストレスや緊張を制御することは、非常に困難である。従って、回転による機械的な緩和のための手段を設けることは更に実用的なことである。
【0018】
出願番号11/302,229(ノースロップ グラマン 参照番号001101-078)に開示されたような関連技術においては、アンテナ構造12は、実際は、図2に示すように横たわっている中間段16及び検出段14の上にオーバーハングしているマイクロアンテナからなる。実際の実施例では、オーバーハング部分は約18μmである。マイクロアンテナ12を検出段14と中間段16の上部表面から分離する空間は、約1.5μmである。熱的な分離を維持し、マイクロアンテナ12と検出器14との間に適当なAC結合を達成するためには、この小さな分離が必要である。
【0019】
図2に示す関連技術のデバイスの製造において、マイクロアンテナ12のオーバーハング部分は、製造している間、マイクロアンテナ12の下の構造をキセノンデイフルオロライド(XeF2)エッチング剤から解放するために使用される、堀領域(trench area)と称される環状空間30と32を部分的に保護する。マイクロアンテナ12によって与えられていた保護は、従来、マイクロアンテナ12にある穴を切断することにより部分的に和らげられていた。そのような解決は、マイクロアンテナ12の支持部材を弱め、マイクロアンテナ12と、検出段14及び/又は中間段16との間の物理的な接触の可能性を増加させたため、理想以下であることが分かった。
【0020】
更に図2に示すように、外側空間又は掘30はマイクロアンテナ12でマスクされている一方、内部空間又は堀32はマイクロアンテナ12でマスクされていない。図2に示すように、容量C1は中間段16に結合されている。図3では、容量C1は、2次巻線L2が検出段14に位置する単一段トランス34の1次巻線L1と交差して結合していることが示されている。中間段16と検出段14との間の堀32は、ブリッジ部材G1AとG1Bを含み、図3に示すように、1次巻線L1と2次巻線L2との間に環状ギャップを与える。
【0021】
更に図2と3に示す関連技術の実施例の電気的概要図を、図4に示す。ここで、EAは、マイクロアンテナ12に現れる信号電圧に対応し、RAはそれに関係する電気抵抗である。容量C1はマイクロアンテナ12と1次巻線L1に交差して結合していることが示されている。1次巻線L1は、抵抗RDを有する検出素子14に接続された2次巻線L2に電磁誘導的に結合している。
【0022】
図5と6を参照すると、また、内部と外部の環状空間又は掘30と32をマスクされることを含む、図2と3に示す実施例に関連した内在する制限を、マイクロアンテナ12から検出段14へのAC結合を、単一トランスの信号結合から2段階トランスの信号結合へと変更することによって、最小化することができる。
【0023】
図5と6においては、本発明の2段階トランスの実施例が示されており、それは、熱浴段素子(heat bath element)18の上部部分17に位置する1次巻線L1を含む第1のトランス段からなり、この1次巻線L1は、マイクロアンテナ12と、空間(堀)30によって分離された中間段(intermediate stage)16の上に位置する2次巻線L2とに接続されている。第2のトランス段は、中間段16の上に位置する1次巻線L5を含み、このトランス段は、検出段素子(detector element)14の上に位置する2次巻線L6と電磁誘導的に結合し、空間(堀)32によってそれらとは分離されている。2つの巻線L2とL5は、例えば、図6に示されたような誘導子L3とL4によって、お互いに結合された隣接した対の端部を有する。
【0024】
図6に示された2段階トランスの実施例においては、第1のトランス段は、第1のトランス段の1次巻線L1と直列である容量C1により、アンテナ12と容量的に結合しており、容量C2は、L2とL5の共通の接続点を交差して、誘導子L3とL4と結合している。
【0025】
2段階トランスの構造はまた、図3に示した単一トランスの実施例にて示されたのと同様のI字形梁のブリッジを含み、図6に示すように、中間段16を検出段(detector stage)14に機械的に結合する2つの内部側I字形梁部材G1AとG2Bと、中間段16を熱浴段(heat bath stage)18の部分17と機械的に結合する4つの外部側I字形梁部材G2A、G2B、G2C、及びG2Dを含む。I字形梁部材G1A・・・G2Dは、図7に示すように、頂上部と底部に1.5μm幅のつまみを有し、代表的には幅寸法1.1μmの本体部分36を有する。あるいは、I字形梁のブリッジは、例えば、図7Bに示したような、幅が変化する本体部分36を有してよく、この場合、頂上の幅は約1.1μmで、底部の幅は約0.7μmである。
【0026】
図5と6に示した本発明の2段階トランスの実施例では、図2に示したマイクロアンテナ素子12の中間段16への実質的なオーバーハングを無くしている。
【0027】
本発明によるマイクロアンテナ12の実施例は図8に示しており、これは、図9に示したように、円形セグメント151、152、153及び154に終端し、サイズが増加するような角状の部分に沿って外側に拡張している4つのアーム131、132、133及び134からなる。
【0028】
円形セグメント151と153の2つは、角状セグメント171と172を介して1次巻線L1の端部に接続されている。この場合、セグメントの1つ、たとえば171は、図6に示す容量C1を介し1次巻線L1に接続されている。図9は、図6に示す2つのトランス巻線L2とL5を示したものであり、ここでは、第2の容量C2は誘導子L3とL4の接続点に交差して、L2およびL5と結合している。
【0029】
図8と図9は、マイクロアンテナ12と、中間段16と検出段14の2段階トランス巻線の物理的配列を示し、図10と図11は、図5と図6に示した2段階トランス実施例のそれぞれ簡略な及び詳細な電気的な概要図を示したものである。
【0030】
図11の詳細な概要図は、巻線L1が5つの巻線セグメントL1A,L1B,L1C、L18及びL19からなることを示している。図10のトランス巻線L2は、3つの巻線セグメントL2A,L2B及びL2Cからなるものとして、図11に示している。図10の誘導子L3とL4は、容量C2がそこに接続されている回路節点38と40にて、巻線L2に結合されている単一の素子からなるものとして、図11に示す。図10の内部トランス巻線L5は、3つの巻線セグメントL5A,L5B及びL5Cからなるものとして、図11に示す。図10の第2のトランス段の第2の巻線L6は、検出器14の抵抗GBに全て直列に接続されている、3つのセグメントL6A,L6B及びL6Cからなるものとして示す。
【0031】
図11は、第1の段のトランス巻線L1の3つのセグメント、すなわち、L1A,L1B及びL1Cが、M15、M12及びM16を介し巻線L5A,L2A及びL6Cに相互に結合されている事実を更に図示している。更に、巻線L2Bは、M26を介し巻線L6Bに相互に結合されている。L3とL4と同様に、相互結合M25とM34が、トランスセグメントL2CとL5Cとの間にも確立されている。最後に、相互結合M56が、2次巻線L6Aと1次巻線部分L5Bとの間にも確立されている。
【0032】
図5と図6に示した2段階トランスの構造の入力インピーダンスと結合効率は、比較的幅広いものである。更に、開始周波数は、図10と図11に示した容量C2の値を変化することによって変えることができる。
【0033】
2段階トランスの構造は、更に、マイクロアンテナ12の抵抗に一致するように検出段14の抵抗を増加させる手段を備える。2段階での抵抗増加において、回路の“Q”値は減少し、そのことによって、動作バンド幅を最大にすることとなる。更に追加して、マイクロ波の入力節点での並列共振が、直列共振回路となる。第1及び第2のトランス段との間の磁気的結合も必要となる。
【0034】
図12と図13に示された特性曲線を参照すると、図12は、周波数の関数としての入力インピーダンスを示す特性曲線であり、図13は、マイクロアンテナ12と、検出段14の抵抗RDからなる負荷との間のパワー転送効率の特性曲線を示している。図12と図13とを比較すれば、相対的に一定なパワー結合効率が、15GHz以上の非常に広いバンド幅に亘って達成可能であることが示されている。
【0035】
以上に示し、説明してきたことは、2段階トランス結合の配置を実施することによる超高感度シリコンセンサーにおける改良である。これは、マイクロ波アンテナのオーバーハングを実質的に排除する故に、更に頑丈な機械的構造となる。更に、2段階トランスの実施例は、検出段14、中間段16及び熱浴段18に最適の空間を与える。また、上記したように、非常に低い“Q”値の回路が達成でき、そのことで、最適のインピーダンス結合と、マイクロアンテナ12と検出段14とのパワー結合を持った広い動作バンド幅を提供することとなる。
【0036】
以上のように、現在、本発明の好適な実施例と考えられるものを示し説明してきたが、上記の詳細と説明は単に本発明の原理を示したものとして認識すべきである。かくて、当業者にとっては、ここでは明白には説明し示さなかったが、本発明の原理を具体化しそれ故本発明の趣旨と範囲に含まれる、種々の配置を実現することが可能であると理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射を受信するアンテナ;
検出段と熱浴段、及び検出段と熱浴段との間に位置する中間段を含む複数のセンサー段;及び
アンテナにより受信された熱的放射を検出段に結合する多段階トランスの組立部品とを備えたボロメータ型の熱的放射センサー。
【請求項2】
検出段、熱浴段及び中間段は他の段から相互に分離しており、アンテナは、熱浴段の上部本体部分の外表面に位置するマイクロアンテナからなる請求項1のセンサー。
【請求項3】
多段階トランスの組立部品は、アンテナ近傍の熱浴段の前記上部本体部分の上に位置する第1トランス段の1次巻線と、中間段の上に位置する第1トランス段の2次巻線と、中間段の上に位置する第2トランス段の1次巻線と、検出段の上に位置する第2トランス段の2次巻線とを含む2段階のトランスの組立部品を備えた請求項2のセンサー。
【請求項4】
2段階のトランスの組立部品に結合された、少なくとも1つの容量素子を共振を与えるために付加的に含む請求項3のセンサー。
【請求項5】
前記少なくとも1つの容量素子は、アンテナと第1トランス段の1次巻線との間に直列に接続されたキャパシターからなる請求項4のセンサー。
【請求項6】
前記少なくとも1つの容量素子は、中間段に位置するトランス巻線の一つを交差して接続されたキャパシターからなる請求項4のセンサー。
【請求項7】
前記少なくとも1つの容量素子は、マイクロアンテナと第1トランス段の1次巻線との間で直列に接続されたキャパシターと、中間段に位置するトランス巻線の1つを交差して接続されたキャパシター素子とからなる請求項4のセンサー。
【請求項8】
第1及び第2の誘導素子を付加的に含み、第1トランス段の2次巻線は、前記第1及び第2の誘導素子によって第2トランス段の1次巻線の隣接する一対の端部にそれぞれ接続された一対の端部を含む請求項7のセンサー。
【請求項9】
熱浴段の上部本体部分は、アンテナに隣接する空洞を含み、中間段と検出段は前記空洞の中に配置される請求項8のセンサー。
【請求項10】
熱浴段の前記上部本体部分に位置する空洞は円形の空所からなり、中間段は、中央の円形開口を含むほぼ環状の素子からなり、検出段は環状の中間段素子の前記中央の円形開口に位置するほぼ円形の素子からなる請求項9のセンサー。
【請求項11】
中間段の環状の素子と、検出段の円形の素子は、熱浴段の上部本体部分にある空洞の前記円形の空所において相互に共面である請求項10のセンサー。
【請求項12】
第1の環状の空間が、熱浴段の上部本体部分と中間段の環状部材との間に位置し、第2の環状の空間が、中間段の中央の円形開口と検出段の円形の部材との間に位置する請求項11のセンサー。
【請求項13】
熱浴段の上部本体部分と中間段の環状部材とを接続する前記第1の環状の空間に位置する第1の組のブリッジ部材と、中間段の環状素子と検出段の円形素子とを接続する前記第2の環状の空間に位置する第2の組のブリッジ部材とを含み、隣接するセンサー段の間の平面外の歪を制限し、それぞれのセンサー段の間の相互の回転によるストレス及び/又は緊張を調整する請求項12のセンサー。
【請求項14】
前記第1及び第2の組のブリッジ部材は、2つの等しくない寸法、広い寸法と狭い寸法からなる断面を有するI字形の梁からなり、広い寸法は共面のセンサー段の共通の平面を実質的に横切っており、狭い寸法は前記共通の平面方向にある請求項13のセンサー。
【請求項15】
前記第1の組のブリッジ部材は2つのブリッジ部材を含み、前記第2の組のブリッジ部材は4つのブリッジ部材を含む請求項14のセンサー。
【請求項1】
電磁放射を受信するアンテナ;
検出段と熱浴段、及び検出段と熱浴段との間に位置する中間段を含む複数のセンサー段;及び
アンテナにより受信された熱的放射を検出段に結合する多段階トランスの組立部品とを備えたボロメータ型の熱的放射センサー。
【請求項2】
検出段、熱浴段及び中間段は他の段から相互に分離しており、アンテナは、熱浴段の上部本体部分の外表面に位置するマイクロアンテナからなる請求項1のセンサー。
【請求項3】
多段階トランスの組立部品は、アンテナ近傍の熱浴段の前記上部本体部分の上に位置する第1トランス段の1次巻線と、中間段の上に位置する第1トランス段の2次巻線と、中間段の上に位置する第2トランス段の1次巻線と、検出段の上に位置する第2トランス段の2次巻線とを含む2段階のトランスの組立部品を備えた請求項2のセンサー。
【請求項4】
2段階のトランスの組立部品に結合された、少なくとも1つの容量素子を共振を与えるために付加的に含む請求項3のセンサー。
【請求項5】
前記少なくとも1つの容量素子は、アンテナと第1トランス段の1次巻線との間に直列に接続されたキャパシターからなる請求項4のセンサー。
【請求項6】
前記少なくとも1つの容量素子は、中間段に位置するトランス巻線の一つを交差して接続されたキャパシターからなる請求項4のセンサー。
【請求項7】
前記少なくとも1つの容量素子は、マイクロアンテナと第1トランス段の1次巻線との間で直列に接続されたキャパシターと、中間段に位置するトランス巻線の1つを交差して接続されたキャパシター素子とからなる請求項4のセンサー。
【請求項8】
第1及び第2の誘導素子を付加的に含み、第1トランス段の2次巻線は、前記第1及び第2の誘導素子によって第2トランス段の1次巻線の隣接する一対の端部にそれぞれ接続された一対の端部を含む請求項7のセンサー。
【請求項9】
熱浴段の上部本体部分は、アンテナに隣接する空洞を含み、中間段と検出段は前記空洞の中に配置される請求項8のセンサー。
【請求項10】
熱浴段の前記上部本体部分に位置する空洞は円形の空所からなり、中間段は、中央の円形開口を含むほぼ環状の素子からなり、検出段は環状の中間段素子の前記中央の円形開口に位置するほぼ円形の素子からなる請求項9のセンサー。
【請求項11】
中間段の環状の素子と、検出段の円形の素子は、熱浴段の上部本体部分にある空洞の前記円形の空所において相互に共面である請求項10のセンサー。
【請求項12】
第1の環状の空間が、熱浴段の上部本体部分と中間段の環状部材との間に位置し、第2の環状の空間が、中間段の中央の円形開口と検出段の円形の部材との間に位置する請求項11のセンサー。
【請求項13】
熱浴段の上部本体部分と中間段の環状部材とを接続する前記第1の環状の空間に位置する第1の組のブリッジ部材と、中間段の環状素子と検出段の円形素子とを接続する前記第2の環状の空間に位置する第2の組のブリッジ部材とを含み、隣接するセンサー段の間の平面外の歪を制限し、それぞれのセンサー段の間の相互の回転によるストレス及び/又は緊張を調整する請求項12のセンサー。
【請求項14】
前記第1及び第2の組のブリッジ部材は、2つの等しくない寸法、広い寸法と狭い寸法からなる断面を有するI字形の梁からなり、広い寸法は共面のセンサー段の共通の平面を実質的に横切っており、狭い寸法は前記共通の平面方向にある請求項13のセンサー。
【請求項15】
前記第1の組のブリッジ部材は2つのブリッジ部材を含み、前記第2の組のブリッジ部材は4つのブリッジ部材を含む請求項14のセンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−544977(P2009−544977A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521960(P2009−521960)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/074252
【国際公開番号】WO2008/130423
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/074252
【国際公開番号】WO2008/130423
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】
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