超高速航空機及び関連する航空移動手段
本発明は、超高速航空機、及び、超高速航空機により提供される航空移動手段に関する。この飛行機は、ジェットエンジン(TB1、TB2)と、ラムジェットエンジン(ST1、ST2)と、クルーズフェイズにおいて基本抵抗を低減する流線型のロケットエンジンとで構成される、エンジンシステムにより推進される。この飛行機は、デルタ翼(A)の翼後縁の両外側端に移動可能なウィングレット(a1、a2)を備えたゴシックデルタ翼(A)を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速航空機、及び、本発明の航空機による、航空機を用いた航空移動手段に関する。
【背景技術】
【0002】
点から点への超高速輸送のテーマの研究が、近年、日本及び米国において行われている。これらの構想に続いて、EADS(European Aeronautic Defense and Space company)及びASTRIUM(EADSの部門会社)が、ASP(“ASTRIUM SPACE PLANE”)プログラムに沿って、点から点への超高速航空機のコンセプトスタディを行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現時点では、製造された点から点への超高速航空機は、コンコルド及びツポレフTu-144であり、これら双方は、超音速である。本発明により提案される超高速航空機は、これらの両航空機の性能を、大幅に改善することが可能である。
【0004】
特に、本発明により提案される超高速航空機は、ソニックブームも呼ばれる、音速の壁が破られる際に生じる騒音を、実質的に低減する。この騒音は、一つだけではないにせよ、コンコルドの大西洋航路以外の航路の開拓を妨げる、主要な制限であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、胴体と、該胴体の両側に配されたゴシックデルタ翼と、航空機を推進可能なエンジンのシステムと、を含む航空機に関する。この航空機は、
−胴体は、液体または溶けた雪(スラッシュ)状態の水素のタンクと、一つ以上の液体酸素のタンクとを含み、
−デルタ翼は、平らな上面と平らな下面とを有し、翼の付け根が、胴体の前方部分の拡大領域から実質的に始まり、
−フィンが、軸が胴体の軸に平行な円筒状の部位を用いて、デルタ翼の後縁の各外側端に取り付けられ、各フィンは、円筒状の部位に取り付けられ、円筒状の部位の両側の同一面にある、二つの実質的に同一な台形形状エレメントで構成され、各円筒状の部位は、円筒状の部位に取り付けられた台形形状エレメント双方が、ゴシックデルタ翼の面に平行な面に配置され、または、ゴシックデルタ翼に垂直な面に配置されるように、その軸回りに回転可能であり、
−エンジンのシステムが、胴体内に格納可能であり、胴体の前方部分に配置された、少なくとも一つのターボジェットと、少なくとも一つの固定構造のラムジェットと、胴体の後方部分に配置されるロケットエンジンと、を含み、胴体の後方部分に位置するドアが、ロケットエンジンを外部に露出するために開き、または、ロケットエンジンを外部から遮蔽するために閉じることが可能であること、
を特徴とする。
【0006】
本発明のさらなる特徴によれば、胴体は、客室区画を拡張する前方区画またはノーズと、後方区画と、で構成され、前方区画は、客室区画から連続して次第に広がる断面を有するとともに、後方区画は、航空機の後方に向かって連続して次第に狭まる断面を有する。
【0007】
本発明の他のさらなる特徴によれば、各液体酸素タンクの重心は、タンクが空であっても満タンであっても、航空機の重心にできるだけ近くに配置される。
【0008】
本発明の他のさらなる特徴によれば、ロケットエンジンは、単一のエンジン、または、一つ以上の補助エンジンを伴うメインエンジンで構成される。
【0009】
本発明の他のさらなる特徴によれば、航空機は、直線デルタ翼を基準に計算される、実質的に70°から75°の間の前縁曲線を有する。
【0010】
本発明は、本発明の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、航空機の離陸フェーズを含み、離陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法に関する。
−航空機の地上走行のステップ、その間、航空機は、ターボジェットにより推進されて、滑走路の配置点に達し、両フィンの両台形形状エレメント双方が、離陸に備えてゴシックデルタ翼に平行な面に位置づけられ、
−航空機の後方ドアを開き、または、開状態を確認するステップ、
−離陸ステップ、この間、航空機は、同時に、ターボジェットと、ロケットエンジンとにより推進され、航空機は、ロケットエンジンにより展開される非常に強力な推力の利用により、次第に略垂直な上昇飛行のフェーズに移行し、航空機は上昇飛行フェーズ中にマッハ1の速度に達してマッハ1を超え、ターボジェットが、マッハ1の速度に達する前に、停止されて、胴体内に引き込まれ、航空機の両フィンの両台形形状エレメント双方の位置が、航空機がマッハ1の速度に達し、及び/または、マッハ1の速度を超えた後に、ゴシックデルタ翼の面に垂直な面に移行する。
【0011】
本発明は、さらに、本発明の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、航空機がラムジェットの推力により推進され、両フィンの両台形形状エレメント双方の位置が、ゴシックデルタ翼に垂直な面に移行する、巡航飛行軌道からの航空機の着陸フェーズを含み、航空機の着陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法に関する。
−ラムジェットの停止、
−航空機を、遷移音速における略垂直な速度を低減して急峻な勾配の降下フェーズに移行する、スプリットフラップの段階的な展開、
−両フィンの両台形形状エレメント双方の位置を、航空機の速度がマッハ1の速度に達した後、及び/または、マッハ1の速度以下となった後に、ゴシックデルタ翼の面に水平な面に配置する、エレメントの位置の段階的な変更、
−航空機の速度がマッハ1以下になった後の、スプリットフラップの段階的な格納、及び、ターボジェットの展開及び点火、及び、
−標準的な航路への航空機の挿入。
【0012】
本発明の他のさらなる特徴によれば、巡航飛行が、
−実質的に30,000mから35,000mの間の、航空機の地上に対する高度、
−実質的に110kmmから175kmの間の、航空機のノーズの衝撃波の消散距離、
−実質的にマッハ4からマッハ4.5の間の、航空機の速度、及び、
−実質的に11°から15°の間の、マッハコーンの開口角α、
を特徴とする。
【0013】
本発明により提案される超高速航空機は、コンコルドの速度の2倍の速度、すなわち、マッハ4+を有し、巡航高度は、従来の民間航空機のものよりも、少なくとも20km高い。
【0014】
これらの一般的な性能特性に加えて、本発明の航空機は、2-3トンの相当物、すなわち、例えば20人の旅客を運搬可能であり、また、積載された酸素(液体酸素)および大気中の酸素双方と積載された水素との結合、未来の燃料、により提供される加速及び巡航フェーズでの推進力の結果として、環境アスペクトの点で、特に重要な利点を提供する。
【0015】
超高速航空機により想定されるアプリケーションは、2種類、すなわち、民間及び軍事である。
【0016】
民間アプリケーションの場合、想定される市場は、主に、大陸横断の日帰り旅行が必要な、出張及びVIP(Very Important Person)旅客のアプリケーションである。
【0017】
一方で、軍事アプリケーションは、例えば、戦略的偵察と、高付加価値製品、及び、重装備のエリート部隊の超高速運搬と、に関する。この航空機の軍事的な利用は、正確な攻撃と、例えばEMP(Electro Magnetic Pulse)とも呼ばれる高出力電磁パルスによる、好ましい高付加価値の目標の破壊とを可能とする。人工衛星と同様に、本発明の航空機は、従来の航空機の柔軟性と非予測可能性とを有しながら、従来の対空システムに対して、略全体的な難攻不落性を提供する。
【0018】
本発明の航空機の性能は、略9,000kmの距離(例えば、パリ−サンフランシスコまたは東京−ロサンゼルス)を3時間でカバーすることを可能とする。
【0019】
本発明の航空機の運行概念及び構造は、以下を可能とする。
・水素及び液体酸素の燃料補給が利用可能な下での、標準的な空港施設での出発及び到着の運行
・一般的な巡航航路との干渉の回避(現在の航空軌道より上の巡航高度)
・飛行高度が、適正な飛行に影響を与える気象現象が存在しない高度であることによる、略全天候での運行
・特別な運用を必要とするロケットエンジンシステムを除く、航空機全体での航空特性のメンテナンス。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して行われる好ましい実施形態の観点で、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による超高速航空機の下方からの図を示す。
【図2】本発明による超高速航空機の特有の部品の斜視図を示す。
【図3】本発明による超高速航空機の外形図を示す。
【図4】本発明による超高速航空機の上方からの半身図を示す。
【図5】本発明による超高速航空機の正面図を示す。
【図6】本発明による超高速航空機の縦方向断面図を示す。
【図7】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図8】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図9】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図10】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図11】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図12】図6に示す本発明による超高速航空機の詳細図を示す。
【図13】本発明による超高速航空機の後方斜視図を示す。
【図14A】ロケットエンジンを外部に露出可能であり、あるいはロケットエンジンを外部から遮蔽可能な、本発明による超高速航空機のドアの異なる位置に対する、部分的な背面図を示す。
【図14B】ロケットエンジンを外部に露出可能であり、あるいはロケットエンジンを外部から遮蔽可能な、本発明による超高速航空機のドアの異なる位置に対する、部分的な背面図を示す。
【図14C】ロケットエンジンを外部に露出可能であり、あるいはロケットエンジンを外部から遮蔽可能な、本発明による超高速航空機のドアの異なる位置に対する、部分的な背面図を示す。
【図15】本発明による超高速航空機の斜視図を示す。
【図16】本発明の超高速航空機のマッハ速度による圧力中心の変化を示す。
【図17】マッハ速度に依存する、本発明の超高速航空機の方向安定性の変化を示す。
【図18】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【図19】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【図20】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【図21】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
全ての図において、同じ符号は、同じ部品を指す。大きさlは、距離を表す。大きさΦは、直径を表す。大きさθは、角度を表す。大きさRは、曲率半径を表す。
【0023】
図1は、本発明による超高速航空機の例の下方からの図を示す。
【0024】
図1において、表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l1=52,995mm
l2=37,855mm
l3=36,524mm
l4=7,135mm
l5=4,394mm
l6=2,150mm
l7=3,000mm
l8=7,115mm
l9=8,929mm
【0025】
同様に、表示される直径Φは、非限定的な例として、以下の値を取る。
Φ1=3,500mm
Φ2=1,800mm
【0026】
図1の例による本発明の超高速航空機は、以下の全エレメントを含む。
−液体またはスラッシュ状態の水素を収容するタンクRv(図6及び図10参照)と、二つの液体酸素タンクRO1及びRO2とを含む、胴体F、ここで、タンクRv、RO1、及びRO2は、ロケットエンジンMfへの供給用であり、
−できる限り平坦な上面を有し、その後端の胴体の両側に、二つのリアフラップv1、v2を有する、ゴシックデルタ翼A、
−直線デルタ翼に対して計算される、好ましくは70°から75°の間の、航空機の前縁曲線θ3、
−例えば乗客を収容し、巡航飛行条件の間、風上に向くように、翼−胴体アセンブリから前方に位置する、キャビンP、これにより、航空機の全抵抗に対するこの部分の寄与を最小にすることを可能とするとともに、揚力を生じない、
−航空機の前方で、キャビンPの延長として作られる、CN区画を形成する、コックピットとノーズ、
−航空機に収容される、着陸ギアTRa、TRb、TRc、ここで、着陸ギアの動きは、できる限り簡易化されていることが望ましい、
−航空機の縦軸に対して対称に配置される、可動フィンa1、a2、ここで、各フィンは、デルタ翼の後縁の外側端に取り付けられている、
−航空機の軸に対して対称に配置される、二つのラムジェットST1、ST2、ここで、各ラムジェットは、巡航飛行フェーズに最適な固定構造を有する、
−キャビンPと胴体Fとの間の移行領域に配置され、非動作中に胴体内に収容可能な、二つのターボジェットTB1、TB2、
−胴体の後部に配置され、航空機の後部ドアPにより、外部に露出可能であり、または胴体内に収容可能な(図14A−図14C参照)、ロケットエンジンMf(図6、図14A、図14B参照)。
【0027】
上述した図1の例では、本発明の航空機は、二つのターボジェットと、二つのラムジェットとを有する。しかしながら、より一般的には、少なくとも一つのターボジェットと、少なくとも一つのラムジェットとを有する航空機にも関する。
【0028】
ラムジェットST1、ST2双方は、二次的な衝撃波により影響を受ける航空機の領域、または、主要な衝撃波により影響を受ける航空機の領域の、前方に配置される、空気流入口を有することが好ましく、従って、邪魔されることのない条件で、空気の流入を可能とする。
【0029】
胴体の前方部分の拡大は、二次的な斜め衝撃波を生じるのに有利であり、この衝撃波は、翼の下面と強く作用して、一般的に圧縮揚力と呼ばれる、圧縮による揚力を生じる。
【0030】
図2は、本発明の超高速航空輸送手段の可動フィンa1、a2を示している。一つの可動フィンは、デルタ翼の外縁の外側部に取り付けられる円筒状部品の両側に、同一平面内で配置される、実質的に同じ台形形状のエレメント二つで構成されている。円筒状部品の中心軸は、航空機の縦方向軸と平行である。円筒状部品は、回転可能であり、可動フィンを、亜音速で、水平位置に配置し、超音速で、垂直位置に配置する。利便性のため、可動フィンの両配置位置を、図2に同時に示している。
【0031】
図3は、フィンa1、a2が垂直(すなわち、航空機の軸に垂直)である場合の、本発明の超高速航空機の外形図を示す。図3において、表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l10=57,630mm
l11=42,995mm
l12=37,685mm
l13=21,995mm
l14=17,995mm
l15=17,950mm
l16=13,000mm
l17=6,780mm
l18=6,657mm
l19=7,400mm
l20=6,097mm
【0032】
同様に、表示される角度θ1、θ2は、非限定的な例として、以下の値を取る。
θ1=5°
θ2=58°
【0033】
図4は、本発明による超高速航空機の上方からの半身図を示す。表示されるフィンa1は、水平位置にある。符号B1、B2は、亜音速構造(フィンa1、a2が水平)及び超音速構造(フィンa1、a2が垂直)における航空機の基準領域の重心位置をそれぞれ示す。
【0034】
図4に表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l21=15,326mm
l22=27,878mm
l23=7,556mm
l24=35,009mm
l25=36,722mm
【0035】
角度θ3(航空機の前縁曲線)は、非限定的な例として、74°に等しい。
【0036】
図5は、本発明による超高速航空機の正面図を示す。
【0037】
この場合、距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l26=27,188mm
l27=19,788mm
l28=11,262mm
l29=6,578mm
l30=6,037mm
l31=7,900mm
l32=2,650mm
【0038】
また、半径R1は、2,797mmに等しく、角度θ4は、20°に等しい。
【0039】
図6は、本発明による超高速航空機の縦方向断面図を示す。
【0040】
図6に表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l33=5,495mm
l34=11,500mm
l35=4,200mm
l36=21,000mm
l37=10,800mm
l38=1,500mm
【0041】
半径R2は、445mmに等しい。
【0042】
図7、図8、図9、図10及び図11は、それぞれ、図6の本発明の超高速航空機の横断面図A−A(コックピット)、横断面図B−B(キャビン)、横断面図C−C(キャビン後方でターボジェット直前の胴体)、横断面図D−D(ターボジェット直後の胴体、符号TB1′、TB2′は胴体内に収容されたターボジェット、符号TB1、TB2は、胴体外に展開されたターボジェット)、及び、横断面図E−E(ランディングギアの領域の胴体)である。
【0043】
図8において、距離l39は、例えば630mmに等しく、距離l40は、例えば505mmに等しい。図9において、距離l41は、例えば、2,150mmに等しく、l42及びl43は、それぞれ例えば650mm及び600mmに等しい。図11において、距離l44は、例えば870mmに等しく、半径R4は、例えば1,550mmに等しい。
【0044】
図12は、図6の詳細図であり、すなわち、二つの酸素タンクうちの一方のRO1を背後に備える、水素タンクRvの縦方向断面図である。距離I45は、例えば18,805mmに等しく、距離l46は、例えば20,471mmに等しい。曲率半径R4及びR5は、それぞれ591mm及び1,839mmに等しい。
【0045】
図13は、本発明による超高速航空機の後方斜視図を示す。好ましくは二つの可動部P1、P2で形成される、ドアPは、ロケットエンジンMfを外部から遮蔽する。ロケットエンジンMfは、例えば、メインエンジンMpと、メインエンジンの両側に配置され、メインエンジンよりも胴体底部により近い、二つの補助エンジンMa1、Ma2とで構成される。
【0046】
図14A、図14B及び図14Cは、ドアPの可動部の異なる位置に対する、本発明による超高速航空機の部分的な背面図を示す。可動部P1及びP2それぞれは、それぞれの水平軸にヒンジで連結されている。図14Aは、ドアPが閉じ、その結果として、ロケットエンジンを外部から完全に遮蔽している場合(ロケットエンジンが動作していない場合)を示している。図14Bは、可動部P1が閉じ、可動部P2が開いている場合を示している。この場合、補助エンジンのみが、外部に露出され、メインエンジンの外部への露出は、部分的に遮られている(メインエンジンが動作せず、補助エンジンが動作する場合)。図14Cは、両可動部が開いている場合を示している。メインエンジンと補助エンジンとが、外部に露出されている(メインエンジンと補助エンジンとが動作する場合)。図15は、簡単な図面として、本発明による超高速航空機の斜視図を示す。
【0047】
当業者に公知であるように、航空機の飛行中、航空機の圧力中心及び重心は、融合する必要がある。コンコルドの場合における先行技術の解決策は、この条件を達成するために、航空機の速度によらずに、航空機の重心を移動することにあった。しかしながら、この解決策は、航空機に載せられたバラストを移動することができる場合にのみ可能である。これは、本発明の航空輸送の場合とは異なる。本発明の解決策は、図2を参照して上述した内容に従い、フィンの位置を変えることにより、超高速航空機の圧力中心を移動するものである。
【0048】
図16は、マッハの速度に従う、本発明の超高速航空機の、中心圧力CPの概略変化を表す。
【0049】
第一のゾーンZAでは、航空機の速度は、音速(マッハ1)以下であり、第二のゾーンZBでは、速度は音速を超える。第一の曲線C1は、リアフィンa1、a2がゾーンZAで水平であり、ゾーンZBで垂直である場合の、圧力中心CPの変化を表す。第二の曲線C2は、リアフィンがない場合の、圧力中心CPの変化を表す。曲線C1及びC2は、航空機の速度がマッハ1を超えると融合する(フィンはデルタ翼の垂直面にある)。曲線C1は、全速度域に亘り、圧力中心の変化を示さないことが好ましい。従って、本発明の航空機は、図に示すフィンに従うリアフィンを備えて選択され、航空機の速度に従うフィンの位置は、速度がマッハ1以下の場合は水平であり、マッハ1を超える場合は垂直である。
【0050】
図17は、マッハの速度に従う、本発明の超高速航空機の方向安定性の変化Stを表す。速度範囲は、ここでも、上に規定したゾーンZA及びZBの間で分割される。第一の曲線C3は、ゾーンZAでフィンが水平であり、ゾーンZBで垂直である場合の、方向安定性の変化を示し、第二の曲線C4は、フィンがない場合の、方向安定性の変化を示す。本発明による航空輸送手段の方向安定性は、本質的に優れており、また、リアフィンがなく、他の態様が全て等しい航空機に比べて、非常に有利であることが、明確に示されている。上述したフィンの配置は、基準(すなわち、航空機の重心位置)を超音速圧力中心と一致させることに関連する(図16のゾーンZBにおける曲線C1)。本発明のさらなる利点は、後部区画に中心のある航空機の製造を可能とすることである。
【0051】
図18から図21は、本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【0052】
図18は、本発明の航空機の出発フェーズの第一の例を示す。
【0053】
航空機は、従来の離陸シーケンスを遂行し、ターボジェットTB1、TB2で推進され、ロケットエンジンMfにより支援される。ロケットエンジンMfは、連続可変推力の単一ロケットエンジンであってもよく、または、例えば三つまたは四つの異なるエンジンで構成され、そのうちの一つがメインエンジンである、分割推力ロケットエンジンであってもよい。まず、航空機は、ターボジェットのみを用いて、停止位置から整列位置まで、地上走行する(図18の点p1参照)。ロケットエンジンの適正な動作の確認が行われた後、ブレーキが開放される。
【0054】
離陸は、ターボジェット/ロケットエンジンの構成で行われ(図18における点p1から点p3参照)、航空機の初期上昇速度は、350km/hのオーダーである(図18における点p1から点p2参照)。この後(図18における点p3参照)、メインロケットエンジンが点火されるか(分割エンジンの場合)、最大出力が展開され(単一のロケットエンジンの場合)、航空機の上昇が略垂直になる。ドアPは、ロケットエンジンの適正な動作に必要な異なる構成に従い開かれる(上述した図14B,図14C参照)。メインロケットエンジンが点火されない場合は、低温ロケット推進剤が、高度維飛行中に消費され、出発基地への帰還は、搭載された推進剤がほとんどない状態で行われ、このことは、ミッション中止時における着陸の安全性に大きく貢献する。航空機の上昇中、航空機はノイズの足跡ESを生じ、その大きさは時間変化し、限られた期間である。メインロケットエンジンが点火された後、または、可変推力ロケットエンジンに最大推力が適用された後、高推力上昇が始まる。遷音速飛行に入る直前に、ターボジェットは停止し、胴体内に収容される。実質的に1以上の推力対重量比が、確立される。この飛行フェーズ中、航空機は、ロケットエンジンによる、高高度(例えば、15,000mから20,000mの間)遷音速加速で、急峻な勾配(すなわち、略垂直)で上昇する(図18における点p4参照)。ロケットエンジンが可変推力の場合、正確な加速制御が行われることが好ましい。
【0055】
このタイプの軌道は、音速の壁が破られる際(マッハ1)に生じるソニックブームの地上への影響の低減に大きく役立つ。実際に、略垂直な軌道を考えると、衝撃波は地上に達さず、そのエネルギーは全水平放射方向で消散される。地上では、加速する航空機の垂直下方で、生じるノイズの足跡ESが、空港周辺に閉じ込められ、実質的に1分以下継続する。
【0056】
本発明の特有の実施形態においては、離陸フェーズ中、旅客と、場合によっては、乗員は、より一層の快適性のために、ハンモックに配置される。
【0057】
航空機が、非常に高い高度で、超音速に達した場合(図18における点p5参照)、軌道は、例えば弾道軌道を用いて、次第に曲がって、水平になり、ロケットエンジンが停止され、ドアPの完全な閉鎖により元の形に戻り、ラムジェットが点火される場合、航空機は、例えば30,000mから35,000mの間の高度で、巡航飛行軌道に入る(図18における点p6参照)。巡航飛行フェーズが始まる(図18における点p7参照)。
【0058】
図19は、本発明の航空機の離陸フェーズのバリエーションを示す。このバリエーションによれば、航空機は、目的地の方向への飛行の前に、地上に対して水平な面で、ループ飛行を行う。本バリエーションの目的は、ノイズの足跡を空港から遠ざけることにより、空港ゾーンにおけるノイズを低減することである。実際、垂直上昇フェーズを過ぎてから、航空機の軌道は曲がって、空港方向に戻ることで水平になり(図19における点p5a参照)、航空機は、前述した場合よりも空港に近い点で、巡航飛行軌道に入る(図19における点p6a参照)。
【0059】
図20は、巡航飛行軌道における本発明の航空機を、象徴的に示したものである。簡易化のため、本発明の航空機のノーズNのみが示されている。
【0060】
巡航飛行軌道では、飛行パラメータは、例えば、以下の通りである。
−例えば実質的に35,000mに等しい、地上に対する航空機の高度Z
−実質的に154kmに等しい、消散距離D
−マッハ4からマッハ4.5の間の、航空機の速度V
−実質的に12.8°に等しい、マッハコーンの開口角α。
【0061】
比較として、先行技術の場合には、コンコルドでは、上記パラメータの値は、以下の通りである。
−Z=20,000m
−D=35km
−V=マッハ2
−A=30°
【0062】
ラムジェットは、固定構造の装置であり、形状的な複雑さを大幅に簡易化し、質量を低減している。この飛行フェーズ中、ラムジェットの推力は、水素の供給率を変えることにより、要求に応じて(飛行コースにおける航空機の軽量化等)変化する。巡航飛行中、航空機は、非常に高い巡航高度と一定の機首方位に因り、非常に限られた環境的衝撃を生じる。要求に応じて、ソニックブームの低減の形状的解決法は、HISAC 2009会議で発表されたようなもの(Sukhoy及びDassaultによる形状デザイン参照)が、航空機のデザイン、例えば、顕著な翼表面上反角等、に取り入れられる。
【0063】
加速及び巡航飛行中に、航空機により放出されるガスに関しては、CO2は放出されず、水蒸気のみ、及び、場合によっては、気体水素を放出することが好ましい。巡航飛行中、航空機の適正な動作(照明、空調等)に必要な電気エネルギーは、公知の手段、例えば、バッテリー、燃料電池等、により提供される。
【0064】
目的の空港への接近の際、減速及び降下フェーズが始まる。図21は、減速及び降下フェーズの例を示している。
【0065】
目的の空港が見えた場合(例えば、空港から約750km)、ラムジェットは、航空機の軌道のある点で停止する(図21における点p8参照)。続いて、航空機は、降下を始める。そして、エアブレーキ(スプリットフラップ)の段階的な展開が、遷音速フェーズ中、航空機を、略垂直速度で、急峻な勾配で降下させる(図21における点p9参照)。急峻な勾配の降下は、エアブレーキを用いて、非常に高い迎え角、または、略ゼロの迎え角で、行われる。従って、収束衝撃音(前述したソニックブーム)は、地球表面から遠く離れて生じ、音波は略水平である。亜音速速度で飛行中は、予備供給源が関与し、エアブレーキは段階的に閉じる(図21における点p10参照)。そして、ターボジェットが、場合によっては、風車として知られる技術の相対風によりアシストされて、再起動のために展開される(図21における点p11参照)。要求に応じて、旅客、及び、場合によっては、乗員は、この全降下フェーズ中、より一層の快適性のために、ハンモックに配置される。
【0066】
着陸フェーズ中、航空機は、所与の時間に、例えば待機パターンで配置されることを含み、既存の航路に挿入される。そして、航空機の最終アプローチが、標準形態、すなわち、必要であればゴーアラウンドを可能とする、従来の民間航空機の速度と同程度の速度で行われる。着陸後、航空機は地上走行し、ターボジェットの推力の影響下でゆっくり止まる(図21における点p12参照)。
【0067】
着陸時の飛行高度の仮推定は、コンコルドに対するよりも低い値を有利にもたらす。
【0068】
航空機は、ターボジェットを用いて地上走行し、これは、従来の民間航空機と同様の移動性をもたらす。
【0069】
これらのフェーズ中、航空機は、民間航空における施行中の環境規制に従う。
【0070】
ターボジェットは、飛行のアプローチ、高度維持、ゴーアラウンド、及び着陸の間のみ用いられる。ターボジェットのこの利用は、標準的な使用に比べて、実質的に、ターボジェットのサイズ及び質量の低減に役立つ。本発明の航空機のターボジェットは、その結果、胴体内への格納が、容易であることが好ましい。
【0071】
特に好ましい方法では、ターボジェットとロケットエンジンとの組み合わせ利用は、航空機が既存の航路にある、巡航中、特に、アプローチ及び着陸フェーズにおける、抵抗の低減と組み合わせて、推力対質量比に関して、優れた妥協を提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速航空機、及び、本発明の航空機による、航空機を用いた航空移動手段に関する。
【背景技術】
【0002】
点から点への超高速輸送のテーマの研究が、近年、日本及び米国において行われている。これらの構想に続いて、EADS(European Aeronautic Defense and Space company)及びASTRIUM(EADSの部門会社)が、ASP(“ASTRIUM SPACE PLANE”)プログラムに沿って、点から点への超高速航空機のコンセプトスタディを行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現時点では、製造された点から点への超高速航空機は、コンコルド及びツポレフTu-144であり、これら双方は、超音速である。本発明により提案される超高速航空機は、これらの両航空機の性能を、大幅に改善することが可能である。
【0004】
特に、本発明により提案される超高速航空機は、ソニックブームも呼ばれる、音速の壁が破られる際に生じる騒音を、実質的に低減する。この騒音は、一つだけではないにせよ、コンコルドの大西洋航路以外の航路の開拓を妨げる、主要な制限であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、胴体と、該胴体の両側に配されたゴシックデルタ翼と、航空機を推進可能なエンジンのシステムと、を含む航空機に関する。この航空機は、
−胴体は、液体または溶けた雪(スラッシュ)状態の水素のタンクと、一つ以上の液体酸素のタンクとを含み、
−デルタ翼は、平らな上面と平らな下面とを有し、翼の付け根が、胴体の前方部分の拡大領域から実質的に始まり、
−フィンが、軸が胴体の軸に平行な円筒状の部位を用いて、デルタ翼の後縁の各外側端に取り付けられ、各フィンは、円筒状の部位に取り付けられ、円筒状の部位の両側の同一面にある、二つの実質的に同一な台形形状エレメントで構成され、各円筒状の部位は、円筒状の部位に取り付けられた台形形状エレメント双方が、ゴシックデルタ翼の面に平行な面に配置され、または、ゴシックデルタ翼に垂直な面に配置されるように、その軸回りに回転可能であり、
−エンジンのシステムが、胴体内に格納可能であり、胴体の前方部分に配置された、少なくとも一つのターボジェットと、少なくとも一つの固定構造のラムジェットと、胴体の後方部分に配置されるロケットエンジンと、を含み、胴体の後方部分に位置するドアが、ロケットエンジンを外部に露出するために開き、または、ロケットエンジンを外部から遮蔽するために閉じることが可能であること、
を特徴とする。
【0006】
本発明のさらなる特徴によれば、胴体は、客室区画を拡張する前方区画またはノーズと、後方区画と、で構成され、前方区画は、客室区画から連続して次第に広がる断面を有するとともに、後方区画は、航空機の後方に向かって連続して次第に狭まる断面を有する。
【0007】
本発明の他のさらなる特徴によれば、各液体酸素タンクの重心は、タンクが空であっても満タンであっても、航空機の重心にできるだけ近くに配置される。
【0008】
本発明の他のさらなる特徴によれば、ロケットエンジンは、単一のエンジン、または、一つ以上の補助エンジンを伴うメインエンジンで構成される。
【0009】
本発明の他のさらなる特徴によれば、航空機は、直線デルタ翼を基準に計算される、実質的に70°から75°の間の前縁曲線を有する。
【0010】
本発明は、本発明の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、航空機の離陸フェーズを含み、離陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法に関する。
−航空機の地上走行のステップ、その間、航空機は、ターボジェットにより推進されて、滑走路の配置点に達し、両フィンの両台形形状エレメント双方が、離陸に備えてゴシックデルタ翼に平行な面に位置づけられ、
−航空機の後方ドアを開き、または、開状態を確認するステップ、
−離陸ステップ、この間、航空機は、同時に、ターボジェットと、ロケットエンジンとにより推進され、航空機は、ロケットエンジンにより展開される非常に強力な推力の利用により、次第に略垂直な上昇飛行のフェーズに移行し、航空機は上昇飛行フェーズ中にマッハ1の速度に達してマッハ1を超え、ターボジェットが、マッハ1の速度に達する前に、停止されて、胴体内に引き込まれ、航空機の両フィンの両台形形状エレメント双方の位置が、航空機がマッハ1の速度に達し、及び/または、マッハ1の速度を超えた後に、ゴシックデルタ翼の面に垂直な面に移行する。
【0011】
本発明は、さらに、本発明の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、航空機がラムジェットの推力により推進され、両フィンの両台形形状エレメント双方の位置が、ゴシックデルタ翼に垂直な面に移行する、巡航飛行軌道からの航空機の着陸フェーズを含み、航空機の着陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法に関する。
−ラムジェットの停止、
−航空機を、遷移音速における略垂直な速度を低減して急峻な勾配の降下フェーズに移行する、スプリットフラップの段階的な展開、
−両フィンの両台形形状エレメント双方の位置を、航空機の速度がマッハ1の速度に達した後、及び/または、マッハ1の速度以下となった後に、ゴシックデルタ翼の面に水平な面に配置する、エレメントの位置の段階的な変更、
−航空機の速度がマッハ1以下になった後の、スプリットフラップの段階的な格納、及び、ターボジェットの展開及び点火、及び、
−標準的な航路への航空機の挿入。
【0012】
本発明の他のさらなる特徴によれば、巡航飛行が、
−実質的に30,000mから35,000mの間の、航空機の地上に対する高度、
−実質的に110kmmから175kmの間の、航空機のノーズの衝撃波の消散距離、
−実質的にマッハ4からマッハ4.5の間の、航空機の速度、及び、
−実質的に11°から15°の間の、マッハコーンの開口角α、
を特徴とする。
【0013】
本発明により提案される超高速航空機は、コンコルドの速度の2倍の速度、すなわち、マッハ4+を有し、巡航高度は、従来の民間航空機のものよりも、少なくとも20km高い。
【0014】
これらの一般的な性能特性に加えて、本発明の航空機は、2-3トンの相当物、すなわち、例えば20人の旅客を運搬可能であり、また、積載された酸素(液体酸素)および大気中の酸素双方と積載された水素との結合、未来の燃料、により提供される加速及び巡航フェーズでの推進力の結果として、環境アスペクトの点で、特に重要な利点を提供する。
【0015】
超高速航空機により想定されるアプリケーションは、2種類、すなわち、民間及び軍事である。
【0016】
民間アプリケーションの場合、想定される市場は、主に、大陸横断の日帰り旅行が必要な、出張及びVIP(Very Important Person)旅客のアプリケーションである。
【0017】
一方で、軍事アプリケーションは、例えば、戦略的偵察と、高付加価値製品、及び、重装備のエリート部隊の超高速運搬と、に関する。この航空機の軍事的な利用は、正確な攻撃と、例えばEMP(Electro Magnetic Pulse)とも呼ばれる高出力電磁パルスによる、好ましい高付加価値の目標の破壊とを可能とする。人工衛星と同様に、本発明の航空機は、従来の航空機の柔軟性と非予測可能性とを有しながら、従来の対空システムに対して、略全体的な難攻不落性を提供する。
【0018】
本発明の航空機の性能は、略9,000kmの距離(例えば、パリ−サンフランシスコまたは東京−ロサンゼルス)を3時間でカバーすることを可能とする。
【0019】
本発明の航空機の運行概念及び構造は、以下を可能とする。
・水素及び液体酸素の燃料補給が利用可能な下での、標準的な空港施設での出発及び到着の運行
・一般的な巡航航路との干渉の回避(現在の航空軌道より上の巡航高度)
・飛行高度が、適正な飛行に影響を与える気象現象が存在しない高度であることによる、略全天候での運行
・特別な運用を必要とするロケットエンジンシステムを除く、航空機全体での航空特性のメンテナンス。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して行われる好ましい実施形態の観点で、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による超高速航空機の下方からの図を示す。
【図2】本発明による超高速航空機の特有の部品の斜視図を示す。
【図3】本発明による超高速航空機の外形図を示す。
【図4】本発明による超高速航空機の上方からの半身図を示す。
【図5】本発明による超高速航空機の正面図を示す。
【図6】本発明による超高速航空機の縦方向断面図を示す。
【図7】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図8】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図9】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図10】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図11】図6に示す本発明による超高速航空機の横方向断面図を示す。
【図12】図6に示す本発明による超高速航空機の詳細図を示す。
【図13】本発明による超高速航空機の後方斜視図を示す。
【図14A】ロケットエンジンを外部に露出可能であり、あるいはロケットエンジンを外部から遮蔽可能な、本発明による超高速航空機のドアの異なる位置に対する、部分的な背面図を示す。
【図14B】ロケットエンジンを外部に露出可能であり、あるいはロケットエンジンを外部から遮蔽可能な、本発明による超高速航空機のドアの異なる位置に対する、部分的な背面図を示す。
【図14C】ロケットエンジンを外部に露出可能であり、あるいはロケットエンジンを外部から遮蔽可能な、本発明による超高速航空機のドアの異なる位置に対する、部分的な背面図を示す。
【図15】本発明による超高速航空機の斜視図を示す。
【図16】本発明の超高速航空機のマッハ速度による圧力中心の変化を示す。
【図17】マッハ速度に依存する、本発明の超高速航空機の方向安定性の変化を示す。
【図18】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【図19】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【図20】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【図21】本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
全ての図において、同じ符号は、同じ部品を指す。大きさlは、距離を表す。大きさΦは、直径を表す。大きさθは、角度を表す。大きさRは、曲率半径を表す。
【0023】
図1は、本発明による超高速航空機の例の下方からの図を示す。
【0024】
図1において、表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l1=52,995mm
l2=37,855mm
l3=36,524mm
l4=7,135mm
l5=4,394mm
l6=2,150mm
l7=3,000mm
l8=7,115mm
l9=8,929mm
【0025】
同様に、表示される直径Φは、非限定的な例として、以下の値を取る。
Φ1=3,500mm
Φ2=1,800mm
【0026】
図1の例による本発明の超高速航空機は、以下の全エレメントを含む。
−液体またはスラッシュ状態の水素を収容するタンクRv(図6及び図10参照)と、二つの液体酸素タンクRO1及びRO2とを含む、胴体F、ここで、タンクRv、RO1、及びRO2は、ロケットエンジンMfへの供給用であり、
−できる限り平坦な上面を有し、その後端の胴体の両側に、二つのリアフラップv1、v2を有する、ゴシックデルタ翼A、
−直線デルタ翼に対して計算される、好ましくは70°から75°の間の、航空機の前縁曲線θ3、
−例えば乗客を収容し、巡航飛行条件の間、風上に向くように、翼−胴体アセンブリから前方に位置する、キャビンP、これにより、航空機の全抵抗に対するこの部分の寄与を最小にすることを可能とするとともに、揚力を生じない、
−航空機の前方で、キャビンPの延長として作られる、CN区画を形成する、コックピットとノーズ、
−航空機に収容される、着陸ギアTRa、TRb、TRc、ここで、着陸ギアの動きは、できる限り簡易化されていることが望ましい、
−航空機の縦軸に対して対称に配置される、可動フィンa1、a2、ここで、各フィンは、デルタ翼の後縁の外側端に取り付けられている、
−航空機の軸に対して対称に配置される、二つのラムジェットST1、ST2、ここで、各ラムジェットは、巡航飛行フェーズに最適な固定構造を有する、
−キャビンPと胴体Fとの間の移行領域に配置され、非動作中に胴体内に収容可能な、二つのターボジェットTB1、TB2、
−胴体の後部に配置され、航空機の後部ドアPにより、外部に露出可能であり、または胴体内に収容可能な(図14A−図14C参照)、ロケットエンジンMf(図6、図14A、図14B参照)。
【0027】
上述した図1の例では、本発明の航空機は、二つのターボジェットと、二つのラムジェットとを有する。しかしながら、より一般的には、少なくとも一つのターボジェットと、少なくとも一つのラムジェットとを有する航空機にも関する。
【0028】
ラムジェットST1、ST2双方は、二次的な衝撃波により影響を受ける航空機の領域、または、主要な衝撃波により影響を受ける航空機の領域の、前方に配置される、空気流入口を有することが好ましく、従って、邪魔されることのない条件で、空気の流入を可能とする。
【0029】
胴体の前方部分の拡大は、二次的な斜め衝撃波を生じるのに有利であり、この衝撃波は、翼の下面と強く作用して、一般的に圧縮揚力と呼ばれる、圧縮による揚力を生じる。
【0030】
図2は、本発明の超高速航空輸送手段の可動フィンa1、a2を示している。一つの可動フィンは、デルタ翼の外縁の外側部に取り付けられる円筒状部品の両側に、同一平面内で配置される、実質的に同じ台形形状のエレメント二つで構成されている。円筒状部品の中心軸は、航空機の縦方向軸と平行である。円筒状部品は、回転可能であり、可動フィンを、亜音速で、水平位置に配置し、超音速で、垂直位置に配置する。利便性のため、可動フィンの両配置位置を、図2に同時に示している。
【0031】
図3は、フィンa1、a2が垂直(すなわち、航空機の軸に垂直)である場合の、本発明の超高速航空機の外形図を示す。図3において、表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l10=57,630mm
l11=42,995mm
l12=37,685mm
l13=21,995mm
l14=17,995mm
l15=17,950mm
l16=13,000mm
l17=6,780mm
l18=6,657mm
l19=7,400mm
l20=6,097mm
【0032】
同様に、表示される角度θ1、θ2は、非限定的な例として、以下の値を取る。
θ1=5°
θ2=58°
【0033】
図4は、本発明による超高速航空機の上方からの半身図を示す。表示されるフィンa1は、水平位置にある。符号B1、B2は、亜音速構造(フィンa1、a2が水平)及び超音速構造(フィンa1、a2が垂直)における航空機の基準領域の重心位置をそれぞれ示す。
【0034】
図4に表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l21=15,326mm
l22=27,878mm
l23=7,556mm
l24=35,009mm
l25=36,722mm
【0035】
角度θ3(航空機の前縁曲線)は、非限定的な例として、74°に等しい。
【0036】
図5は、本発明による超高速航空機の正面図を示す。
【0037】
この場合、距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l26=27,188mm
l27=19,788mm
l28=11,262mm
l29=6,578mm
l30=6,037mm
l31=7,900mm
l32=2,650mm
【0038】
また、半径R1は、2,797mmに等しく、角度θ4は、20°に等しい。
【0039】
図6は、本発明による超高速航空機の縦方向断面図を示す。
【0040】
図6に表示される距離lは、非限定的な例として、以下の値を取る。
l33=5,495mm
l34=11,500mm
l35=4,200mm
l36=21,000mm
l37=10,800mm
l38=1,500mm
【0041】
半径R2は、445mmに等しい。
【0042】
図7、図8、図9、図10及び図11は、それぞれ、図6の本発明の超高速航空機の横断面図A−A(コックピット)、横断面図B−B(キャビン)、横断面図C−C(キャビン後方でターボジェット直前の胴体)、横断面図D−D(ターボジェット直後の胴体、符号TB1′、TB2′は胴体内に収容されたターボジェット、符号TB1、TB2は、胴体外に展開されたターボジェット)、及び、横断面図E−E(ランディングギアの領域の胴体)である。
【0043】
図8において、距離l39は、例えば630mmに等しく、距離l40は、例えば505mmに等しい。図9において、距離l41は、例えば、2,150mmに等しく、l42及びl43は、それぞれ例えば650mm及び600mmに等しい。図11において、距離l44は、例えば870mmに等しく、半径R4は、例えば1,550mmに等しい。
【0044】
図12は、図6の詳細図であり、すなわち、二つの酸素タンクうちの一方のRO1を背後に備える、水素タンクRvの縦方向断面図である。距離I45は、例えば18,805mmに等しく、距離l46は、例えば20,471mmに等しい。曲率半径R4及びR5は、それぞれ591mm及び1,839mmに等しい。
【0045】
図13は、本発明による超高速航空機の後方斜視図を示す。好ましくは二つの可動部P1、P2で形成される、ドアPは、ロケットエンジンMfを外部から遮蔽する。ロケットエンジンMfは、例えば、メインエンジンMpと、メインエンジンの両側に配置され、メインエンジンよりも胴体底部により近い、二つの補助エンジンMa1、Ma2とで構成される。
【0046】
図14A、図14B及び図14Cは、ドアPの可動部の異なる位置に対する、本発明による超高速航空機の部分的な背面図を示す。可動部P1及びP2それぞれは、それぞれの水平軸にヒンジで連結されている。図14Aは、ドアPが閉じ、その結果として、ロケットエンジンを外部から完全に遮蔽している場合(ロケットエンジンが動作していない場合)を示している。図14Bは、可動部P1が閉じ、可動部P2が開いている場合を示している。この場合、補助エンジンのみが、外部に露出され、メインエンジンの外部への露出は、部分的に遮られている(メインエンジンが動作せず、補助エンジンが動作する場合)。図14Cは、両可動部が開いている場合を示している。メインエンジンと補助エンジンとが、外部に露出されている(メインエンジンと補助エンジンとが動作する場合)。図15は、簡単な図面として、本発明による超高速航空機の斜視図を示す。
【0047】
当業者に公知であるように、航空機の飛行中、航空機の圧力中心及び重心は、融合する必要がある。コンコルドの場合における先行技術の解決策は、この条件を達成するために、航空機の速度によらずに、航空機の重心を移動することにあった。しかしながら、この解決策は、航空機に載せられたバラストを移動することができる場合にのみ可能である。これは、本発明の航空輸送の場合とは異なる。本発明の解決策は、図2を参照して上述した内容に従い、フィンの位置を変えることにより、超高速航空機の圧力中心を移動するものである。
【0048】
図16は、マッハの速度に従う、本発明の超高速航空機の、中心圧力CPの概略変化を表す。
【0049】
第一のゾーンZAでは、航空機の速度は、音速(マッハ1)以下であり、第二のゾーンZBでは、速度は音速を超える。第一の曲線C1は、リアフィンa1、a2がゾーンZAで水平であり、ゾーンZBで垂直である場合の、圧力中心CPの変化を表す。第二の曲線C2は、リアフィンがない場合の、圧力中心CPの変化を表す。曲線C1及びC2は、航空機の速度がマッハ1を超えると融合する(フィンはデルタ翼の垂直面にある)。曲線C1は、全速度域に亘り、圧力中心の変化を示さないことが好ましい。従って、本発明の航空機は、図に示すフィンに従うリアフィンを備えて選択され、航空機の速度に従うフィンの位置は、速度がマッハ1以下の場合は水平であり、マッハ1を超える場合は垂直である。
【0050】
図17は、マッハの速度に従う、本発明の超高速航空機の方向安定性の変化Stを表す。速度範囲は、ここでも、上に規定したゾーンZA及びZBの間で分割される。第一の曲線C3は、ゾーンZAでフィンが水平であり、ゾーンZBで垂直である場合の、方向安定性の変化を示し、第二の曲線C4は、フィンがない場合の、方向安定性の変化を示す。本発明による航空輸送手段の方向安定性は、本質的に優れており、また、リアフィンがなく、他の態様が全て等しい航空機に比べて、非常に有利であることが、明確に示されている。上述したフィンの配置は、基準(すなわち、航空機の重心位置)を超音速圧力中心と一致させることに関連する(図16のゾーンZBにおける曲線C1)。本発明のさらなる利点は、後部区画に中心のある航空機の製造を可能とすることである。
【0051】
図18から図21は、本発明の超高速航空機の異なるフライトフェーズを示す。
【0052】
図18は、本発明の航空機の出発フェーズの第一の例を示す。
【0053】
航空機は、従来の離陸シーケンスを遂行し、ターボジェットTB1、TB2で推進され、ロケットエンジンMfにより支援される。ロケットエンジンMfは、連続可変推力の単一ロケットエンジンであってもよく、または、例えば三つまたは四つの異なるエンジンで構成され、そのうちの一つがメインエンジンである、分割推力ロケットエンジンであってもよい。まず、航空機は、ターボジェットのみを用いて、停止位置から整列位置まで、地上走行する(図18の点p1参照)。ロケットエンジンの適正な動作の確認が行われた後、ブレーキが開放される。
【0054】
離陸は、ターボジェット/ロケットエンジンの構成で行われ(図18における点p1から点p3参照)、航空機の初期上昇速度は、350km/hのオーダーである(図18における点p1から点p2参照)。この後(図18における点p3参照)、メインロケットエンジンが点火されるか(分割エンジンの場合)、最大出力が展開され(単一のロケットエンジンの場合)、航空機の上昇が略垂直になる。ドアPは、ロケットエンジンの適正な動作に必要な異なる構成に従い開かれる(上述した図14B,図14C参照)。メインロケットエンジンが点火されない場合は、低温ロケット推進剤が、高度維飛行中に消費され、出発基地への帰還は、搭載された推進剤がほとんどない状態で行われ、このことは、ミッション中止時における着陸の安全性に大きく貢献する。航空機の上昇中、航空機はノイズの足跡ESを生じ、その大きさは時間変化し、限られた期間である。メインロケットエンジンが点火された後、または、可変推力ロケットエンジンに最大推力が適用された後、高推力上昇が始まる。遷音速飛行に入る直前に、ターボジェットは停止し、胴体内に収容される。実質的に1以上の推力対重量比が、確立される。この飛行フェーズ中、航空機は、ロケットエンジンによる、高高度(例えば、15,000mから20,000mの間)遷音速加速で、急峻な勾配(すなわち、略垂直)で上昇する(図18における点p4参照)。ロケットエンジンが可変推力の場合、正確な加速制御が行われることが好ましい。
【0055】
このタイプの軌道は、音速の壁が破られる際(マッハ1)に生じるソニックブームの地上への影響の低減に大きく役立つ。実際に、略垂直な軌道を考えると、衝撃波は地上に達さず、そのエネルギーは全水平放射方向で消散される。地上では、加速する航空機の垂直下方で、生じるノイズの足跡ESが、空港周辺に閉じ込められ、実質的に1分以下継続する。
【0056】
本発明の特有の実施形態においては、離陸フェーズ中、旅客と、場合によっては、乗員は、より一層の快適性のために、ハンモックに配置される。
【0057】
航空機が、非常に高い高度で、超音速に達した場合(図18における点p5参照)、軌道は、例えば弾道軌道を用いて、次第に曲がって、水平になり、ロケットエンジンが停止され、ドアPの完全な閉鎖により元の形に戻り、ラムジェットが点火される場合、航空機は、例えば30,000mから35,000mの間の高度で、巡航飛行軌道に入る(図18における点p6参照)。巡航飛行フェーズが始まる(図18における点p7参照)。
【0058】
図19は、本発明の航空機の離陸フェーズのバリエーションを示す。このバリエーションによれば、航空機は、目的地の方向への飛行の前に、地上に対して水平な面で、ループ飛行を行う。本バリエーションの目的は、ノイズの足跡を空港から遠ざけることにより、空港ゾーンにおけるノイズを低減することである。実際、垂直上昇フェーズを過ぎてから、航空機の軌道は曲がって、空港方向に戻ることで水平になり(図19における点p5a参照)、航空機は、前述した場合よりも空港に近い点で、巡航飛行軌道に入る(図19における点p6a参照)。
【0059】
図20は、巡航飛行軌道における本発明の航空機を、象徴的に示したものである。簡易化のため、本発明の航空機のノーズNのみが示されている。
【0060】
巡航飛行軌道では、飛行パラメータは、例えば、以下の通りである。
−例えば実質的に35,000mに等しい、地上に対する航空機の高度Z
−実質的に154kmに等しい、消散距離D
−マッハ4からマッハ4.5の間の、航空機の速度V
−実質的に12.8°に等しい、マッハコーンの開口角α。
【0061】
比較として、先行技術の場合には、コンコルドでは、上記パラメータの値は、以下の通りである。
−Z=20,000m
−D=35km
−V=マッハ2
−A=30°
【0062】
ラムジェットは、固定構造の装置であり、形状的な複雑さを大幅に簡易化し、質量を低減している。この飛行フェーズ中、ラムジェットの推力は、水素の供給率を変えることにより、要求に応じて(飛行コースにおける航空機の軽量化等)変化する。巡航飛行中、航空機は、非常に高い巡航高度と一定の機首方位に因り、非常に限られた環境的衝撃を生じる。要求に応じて、ソニックブームの低減の形状的解決法は、HISAC 2009会議で発表されたようなもの(Sukhoy及びDassaultによる形状デザイン参照)が、航空機のデザイン、例えば、顕著な翼表面上反角等、に取り入れられる。
【0063】
加速及び巡航飛行中に、航空機により放出されるガスに関しては、CO2は放出されず、水蒸気のみ、及び、場合によっては、気体水素を放出することが好ましい。巡航飛行中、航空機の適正な動作(照明、空調等)に必要な電気エネルギーは、公知の手段、例えば、バッテリー、燃料電池等、により提供される。
【0064】
目的の空港への接近の際、減速及び降下フェーズが始まる。図21は、減速及び降下フェーズの例を示している。
【0065】
目的の空港が見えた場合(例えば、空港から約750km)、ラムジェットは、航空機の軌道のある点で停止する(図21における点p8参照)。続いて、航空機は、降下を始める。そして、エアブレーキ(スプリットフラップ)の段階的な展開が、遷音速フェーズ中、航空機を、略垂直速度で、急峻な勾配で降下させる(図21における点p9参照)。急峻な勾配の降下は、エアブレーキを用いて、非常に高い迎え角、または、略ゼロの迎え角で、行われる。従って、収束衝撃音(前述したソニックブーム)は、地球表面から遠く離れて生じ、音波は略水平である。亜音速速度で飛行中は、予備供給源が関与し、エアブレーキは段階的に閉じる(図21における点p10参照)。そして、ターボジェットが、場合によっては、風車として知られる技術の相対風によりアシストされて、再起動のために展開される(図21における点p11参照)。要求に応じて、旅客、及び、場合によっては、乗員は、この全降下フェーズ中、より一層の快適性のために、ハンモックに配置される。
【0066】
着陸フェーズ中、航空機は、所与の時間に、例えば待機パターンで配置されることを含み、既存の航路に挿入される。そして、航空機の最終アプローチが、標準形態、すなわち、必要であればゴーアラウンドを可能とする、従来の民間航空機の速度と同程度の速度で行われる。着陸後、航空機は地上走行し、ターボジェットの推力の影響下でゆっくり止まる(図21における点p12参照)。
【0067】
着陸時の飛行高度の仮推定は、コンコルドに対するよりも低い値を有利にもたらす。
【0068】
航空機は、ターボジェットを用いて地上走行し、これは、従来の民間航空機と同様の移動性をもたらす。
【0069】
これらのフェーズ中、航空機は、民間航空における施行中の環境規制に従う。
【0070】
ターボジェットは、飛行のアプローチ、高度維持、ゴーアラウンド、及び着陸の間のみ用いられる。ターボジェットのこの利用は、標準的な使用に比べて、実質的に、ターボジェットのサイズ及び質量の低減に役立つ。本発明の航空機のターボジェットは、その結果、胴体内への格納が、容易であることが好ましい。
【0071】
特に好ましい方法では、ターボジェットとロケットエンジンとの組み合わせ利用は、航空機が既存の航路にある、巡航中、特に、アプローチ及び着陸フェーズにおける、抵抗の低減と組み合わせて、推力対質量比に関して、優れた妥協を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体(F)と、該胴体の両側に配されたゴシックデルタ翼(A)と、航空機を推進可能なエンジンのシステム(TB1、TB2、ST1、ST2、Mf)と、を含む航空機であって、
−前記胴体は、液体またはスラッシュ状態の水素のタンク(Rv)と、一つ以上の液体酸素のタンク(RO1、RO2)とを含み、
−前記ゴシックデルタ翼(A)は、平らな上面と平らな下面とを有し、翼の付け根が、前記胴体の前方部分の拡大領域から実質的に始まり、
−フィン(a1、a2)が、軸が前記胴体の軸に平行な円筒状の部位を用いて、前記ゴシックデルタ翼の後縁の各外側端に取り付けられ、各フィンは、前記円筒状の部位に取り付けられ、前記円筒状の部位の両側の同一面にある、二つの実質的に同一な台形形状エレメントで構成され、各円筒状の部位は、該円筒状の部位に取り付けられた台形形状エレメント双方が、前記ゴシックデルタ翼の面に平行な面に配置され、または、前記ゴシックデルタ翼に垂直な面に配置されるように、その軸回りに回転可能であり、
−前記エンジンのシステムが、前記胴体の前方部分に配置され、前記胴体内に格納可能な、少なくとも一つのターボジェット(TB1、TB2)と、少なくとも一つの固定形状のラムジェット(ST1、ST2)と、前記胴体の後方部分に配置されるロケットエンジン(Mf)と、を含み、前記胴体の前記後方部分に位置するドア(P)が、前記ロケットエンジンを外部に露出するために開き、または、前記ロケットエンジンを外部から遮蔽するために閉じることが可能であること、
を特徴とする航空機。
【請求項2】
前記胴体(F)が、客室区画を拡張する前方区画またはノーズと、後方区画と、で構成され、該前方区画は、該客室区画から連続して次第に広がる断面を有するとともに、該後方区画は、該航空機の後方に向かって連続して次第に狭まる断面を有する、
請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
各液体酸素タンク(RO1、RO2)の重心が、タンクが空であっても満タンであっても、該航空機の重心にできるだけ近くに配置される、
請求項1または2に記載の航空機。
【請求項4】
前記ロケットエンジンが、単一のエンジン、または、一つ以上の補助エンジンを伴うメインエンジンで構成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項5】
二つのラムジェット(ST1、ST2)が、前記ゴシックデルタ翼の下の前記胴体の両側に配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項6】
該航空機が、直線デルタ翼を基準に計算される、実質的に70°から75°の間の前縁曲線を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項7】
前記ロケットエンジン(Mf)が、連続的な可変推力のエンジン、または分割推力エンジンである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、該航空機の離陸フェーズを含み、該離陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法。
−該航空機の地上走行のステップ、その間、該航空機は、前記ターボジェット(TB1、TB2)により推進されて、配置点(p1)に達し、両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方が、前記ゴシックデルタ翼に平行な面に位置づけられ、
−該航空機の前記後方に位置する前記ドア(P)を開き、または、開状態を確認するステップ、及び、
−離陸ステップ、この間、該航空機は、同時に、前記ターボジェット(TB1、TB2)と、前記ロケットエンジン(Mf)とにより推進され、該航空機は、前記ロケットエンジン(Mf)により展開される非常に強力な推力により、次第に略垂直な上昇飛行のフェーズに移行し、該航空機は該上昇飛行フェーズ中にマッハ1の速度に達してマッハ1を超え、前記ターボジェット(TB1、TB2)が、該マッハ1の速度に達する前に、停止されて、前記胴体(F)内に引き込まれ、該航空機の両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方の位置が、該航空機がマッハ1の速度に達し、及び/または、マッハ1の速度を超えた後に、前記ゴシックデルタ翼の面に垂直な面に移行する。
【請求項9】
該航空機が、地上に対する水平位置に次第に移行するステップを含むとともに、前記ロケットエンジンを停止して元に戻し、前記ラムジェットが点火されて、該航空機が、地上に対する前記水平位置に移行した後、巡航飛行フェーズに移行すること、
を特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該航空機が、前記巡航飛行フェーズに移行する前に、地上に対する水平面において、出発点に向かって戻るループ飛行を行う、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、該航空機が前記ラムジェットの推力により推進され、両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方の位置が、前記ゴシックデルタ翼に垂直な面に移行する、巡航飛行軌道からの該航空機の着陸フェーズを含み、該航空機の着陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法。
−ラムジェット(ST1、ST2)の停止、
−該航空機を、遷移音速における略垂直な速度を低減して急峻な勾配の降下フェーズに移行する、スプリットフラップの段階的な展開、
−両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方の位置を、該航空機の速度がマッハ1の速度に達した後、及び/または、マッハ1の速度以下となった後に、前記ゴシックデルタ翼の面に水平な面に配置する、該エレメントの位置の変更、
−該航空機の速度がマッハ1以下になった後の、前記スプリットフラップの段階的な格納、及び、前記ターボジェットの展開、及び、
−標準的な航路への該航空機の挿入。
【請求項12】
急峻な勾配の前記降下フェーズが、非常に高い迎え角、または、略ゼロの迎え角で行われる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記巡航飛行が、
−実質的に30,000mから35,000mの間の、該航空機の地上に対する高度、
−実質的に110kmmから175kmの間の、該航空機のノーズの衝撃波の消散距離、
−マッハ4からマッハ4.5の間の、該航空機の速度、及び、
−実質的に11°から15°の間の、マッハコーンの開口角α、
を特徴とする、
請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
胴体(F)と、該胴体の両側に配されたゴシックデルタ翼(A)と、航空機を推進可能なエンジンのシステム(TB1、TB2、ST1、ST2、Mf)と、を含む航空機であって、
−前記胴体は、液体またはスラッシュ状態の水素のタンク(Rv)と、一つ以上の液体酸素のタンク(RO1、RO2)とを含み、
−前記ゴシックデルタ翼(A)は、平らな上面と平らな下面とを有し、翼の付け根が、前記胴体の前方部分の拡大領域から実質的に始まり、
−フィン(a1、a2)が、軸が前記胴体の軸に平行な円筒状の部位を用いて、前記ゴシックデルタ翼の後縁の各外側端に取り付けられ、各フィンは、前記円筒状の部位に取り付けられ、前記円筒状の部位の両側の同一面にある、二つの実質的に同一な台形形状エレメントで構成され、各円筒状の部位は、該円筒状の部位に取り付けられた台形形状エレメント双方が、前記ゴシックデルタ翼の面に平行な面に配置され、または、前記ゴシックデルタ翼に垂直な面に配置されるように、その軸回りに回転可能であり、
−前記エンジンのシステムが、前記胴体の前方部分に配置され、前記胴体内に格納可能な、少なくとも一つのターボジェット(TB1、TB2)と、少なくとも一つの固定形状のラムジェット(ST1、ST2)と、前記胴体の後方部分に配置されるロケットエンジン(Mf)と、を含み、前記胴体の前記後方部分に位置するドア(P)が、前記ロケットエンジンを外部に露出するために開き、または、前記ロケットエンジンを外部から遮蔽するために閉じることが可能であること、
を特徴とする航空機。
【請求項2】
前記胴体(F)が、客室区画を拡張する前方区画またはノーズと、後方区画と、で構成され、該前方区画は、該客室区画から連続して次第に広がる断面を有するとともに、該後方区画は、該航空機の後方に向かって連続して次第に狭まる断面を有する、
請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
各液体酸素タンク(RO1、RO2)の重心が、タンクが空であっても満タンであっても、該航空機の重心にできるだけ近くに配置される、
請求項1または2に記載の航空機。
【請求項4】
前記ロケットエンジンが、単一のエンジン、または、一つ以上の補助エンジンを伴うメインエンジンで構成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項5】
二つのラムジェット(ST1、ST2)が、前記ゴシックデルタ翼の下の前記胴体の両側に配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項6】
該航空機が、直線デルタ翼を基準に計算される、実質的に70°から75°の間の前縁曲線を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項7】
前記ロケットエンジン(Mf)が、連続的な可変推力のエンジン、または分割推力エンジンである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、該航空機の離陸フェーズを含み、該離陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法。
−該航空機の地上走行のステップ、その間、該航空機は、前記ターボジェット(TB1、TB2)により推進されて、配置点(p1)に達し、両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方が、前記ゴシックデルタ翼に平行な面に位置づけられ、
−該航空機の前記後方に位置する前記ドア(P)を開き、または、開状態を確認するステップ、及び、
−離陸ステップ、この間、該航空機は、同時に、前記ターボジェット(TB1、TB2)と、前記ロケットエンジン(Mf)とにより推進され、該航空機は、前記ロケットエンジン(Mf)により展開される非常に強力な推力により、次第に略垂直な上昇飛行のフェーズに移行し、該航空機は該上昇飛行フェーズ中にマッハ1の速度に達してマッハ1を超え、前記ターボジェット(TB1、TB2)が、該マッハ1の速度に達する前に、停止されて、前記胴体(F)内に引き込まれ、該航空機の両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方の位置が、該航空機がマッハ1の速度に達し、及び/または、マッハ1の速度を超えた後に、前記ゴシックデルタ翼の面に垂直な面に移行する。
【請求項9】
該航空機が、地上に対する水平位置に次第に移行するステップを含むとともに、前記ロケットエンジンを停止して元に戻し、前記ラムジェットが点火されて、該航空機が、地上に対する前記水平位置に移行した後、巡航飛行フェーズに移行すること、
を特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該航空機が、前記巡航飛行フェーズに移行する前に、地上に対する水平面において、出発点に向かって戻るループ飛行を行う、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機を用いた航空移動方法であって、該方法が、該航空機が前記ラムジェットの推力により推進され、両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方の位置が、前記ゴシックデルタ翼に垂直な面に移行する、巡航飛行軌道からの該航空機の着陸フェーズを含み、該航空機の着陸フェーズが、以下のステップを含むこと、を特徴とする方法。
−ラムジェット(ST1、ST2)の停止、
−該航空機を、遷移音速における略垂直な速度を低減して急峻な勾配の降下フェーズに移行する、スプリットフラップの段階的な展開、
−両フィン(a1、a2)の両台形形状エレメント双方の位置を、該航空機の速度がマッハ1の速度に達した後、及び/または、マッハ1の速度以下となった後に、前記ゴシックデルタ翼の面に水平な面に配置する、該エレメントの位置の変更、
−該航空機の速度がマッハ1以下になった後の、前記スプリットフラップの段階的な格納、及び、前記ターボジェットの展開、及び、
−標準的な航路への該航空機の挿入。
【請求項12】
急峻な勾配の前記降下フェーズが、非常に高い迎え角、または、略ゼロの迎え角で行われる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記巡航飛行が、
−実質的に30,000mから35,000mの間の、該航空機の地上に対する高度、
−実質的に110kmmから175kmの間の、該航空機のノーズの衝撃波の消散距離、
−マッハ4からマッハ4.5の間の、該航空機の速度、及び、
−実質的に11°から15°の間の、マッハコーンの開口角α、
を特徴とする、
請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2013−514938(P2013−514938A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545259(P2012−545259)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070189
【国際公開番号】WO2011/076706
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(507142074)
【出願人】(507183963)ヨーロピアン エアロノーティック ディフェンス アンド スペース カンパニー イーエイディーエス フランス (2)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070189
【国際公開番号】WO2011/076706
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(507142074)
【出願人】(507183963)ヨーロピアン エアロノーティック ディフェンス アンド スペース カンパニー イーエイディーエス フランス (2)
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