説明

足揉み装置を備えたマッサージ椅子

【課題】座部及び背もたれ部と座部の前部に設けられた足揉み装置とを有するマッサージ椅子において、構造の一層の簡潔化、軽量化、低コスト化などを一気に解決できるようにする。また足揉み装置を使用するに際し、使用者が足を前方へ投げ出すようなリラックスした姿勢を取れるようにする。
【解決手段】座部の下方に足揉み装置5と連接する進退機構15が設けられ、進退機構15が前方に進出動作すると、足揉み装置5は座部の前方で床面から宙に浮き上がり且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置Uに進み、進退機構15が後方に退行動作すると、足揉み装置5は座部の下方に形成された収納位置Pに収納される構成とした。さらに、足揉み装置5とこの足揉み装置5に連結し前後揺動させるリンク20との連結部には、リンク20と足揉み装置5との角度が所定角度θ以下にならないようにする回動角制限部材50が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足揉み装置を備えたマッサージ椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
足揉み装置が備えられたマッサージ椅子としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
このマッサージ椅子は、座部の後部に背もたれ部、前部に足揉み装置をそれぞれ有しており、背もたれ部には使用者の背部をマッサージするマッサージ機構が備えられ、足揉み装置には、使用者の下肢をマッサージする下肢マッサージ機構が内蔵されている。また、背もたれ部は前後にリクライニング可能とされ、足揉み装置は支持部材を介して座部の前方に揺動可能に設けられている。
【0003】
このようなマッサージ椅子は、マッサージを行うために利用されるだけでなく、単なる椅子として利用されることも多い。特に、この種のマッサージ椅子では、座部等に柔らかいクッションを内蔵している場合が多く、また、背もたれ部にリクライニング機能を有していることからソファとしての利用にも適したものとなっている。
しかしながら、特許文献1の足揉み装置については、その正面に保持溝を形成したものとなっているため、マッサージ機能を使わない場合でも保持溝に下肢を嵌め込まなければならず、これによって足の自由な動きが制限され、楽な体勢をとることが困難となっていた。また、椅子の見栄えを損ねる一因ともなっていた。
【0004】
そこで、このような不都合を回避すべく、特許文献2のような技術を本願出願人は既に開発している。
このマッサージ椅子は、足揉み装置を使用位置と座部の下方に位置する内蔵位置とに移動可能な押引機構を有しており、この押引機構は、マッサージ椅子の両側に設置されているガイドレール、ガイドレールに沿って出入りする押引ロッド、押引ロッドに連結されたキャリッジ板を有し、このキャリッジ板に足揉み装置がピン接続されている。
そのため、足揉み装置を使用位置に位置させた上で、足揉み装置の正面(マッサージ面)と後面(フットレスト面)とを回転切換自在としている。
【特許文献1】特開2002−238963号公報
【特許文献2】特開2007−75590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらガイドレールを採用した構成は、ガイドレールに滑らかな曲がりを形成させる点で高精度と慎重な加工が要求されるものであり、製作コストの抑制が難しいという一面を具備していた。
また、ガイドレールに対して摺動抵抗生が発生することに伴い、強力な駆動が必要であり、その反面で駆動音や振動を抑える工夫が必要であるといったことから、構造的、重量的にも負担が増えるなど、改善の余地が見られた。
なお、他のニーズとして、足揉み装置を使用するに際し、使用者が足を前方へ投げ出すようなリラックスした姿勢(なるべく膝を伸ばした姿勢)をとりたいというものがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、構造の一層の簡潔化、軽量化、低コスト化などを一気に解決できるようにしたマッサージ椅子を提供することを目的とする。加えて、本発明は、足揉み装置を使用するに際し、使用者が足を前方へ伸ばすようなリラックスした姿勢を取れるようにして、使用感を高められるようにしたマッサージ椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る足揉み装置を備えたマッサージ椅子は、座部と該座部の後部に設けられた背もたれ部と前記座部の前部に設置された足揉み装置とを有するマッサージ椅子において、前記座部の下方に足揉み装置と連接する進退機構が設けられ、前記進退機構が前方に進出動作すると、足揉み装置は座部の前方で床面の上方に浮き上がり且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置に進み、前記進退機構が後方に退行動作すると、足揉み装置は座部の下方に形成された収納位置に収納されることを特徴とする。
【0008】
詳しくは、前記使用位置にある足揉み装置は、その背面が床面と対面し且つ底面が前方を向く状態となっており、前記収納位置にある足揉み装置は、その底面が前方を向くと共に座部の前端部と略面一となり下肢をマッサージする正面が上方を向く状態となっている。
前記進退機構は、収納位置にある足揉み装置の背面上部を座部の前端よりも前方へ前進させた後又は前進させる途中に上昇させることで足揉み装置を使用位置へ至らせる進出動作と、使用位置にある足揉み装置の正面上部が座部下方より低くなるまで前記背面上部を下降させた後に座部下方へ退行させることで足揉み装置を収納位置に戻す退行動作と、を行う構成にすることができる。
【0009】
具体的に、前記進退機構は、座部の下部に設けられる定置枢支部と足揉み装置の背面上部に設けられる移動枢支部との間に連結されて定置枢支部を支点に移動枢支部を前後揺動自在に保持するリンクと、このリンクに対して前後揺動の駆動力を付与する揺動駆動部と、足揉み装置の背面下端に設けられて床面上を移動自在に保持された転動輪と、を有しており、前記リンクが当該リンクの揺動域の後方側へ揺動すると足揉み装置が収納位置に移動し、前記リンクが当該リンクの揺動域の前方側へ揺動すると足揉み装置が使用位置に移動するように構成することが可能である。
【0010】
前記足揉み装置の移動枢支部と前記リンクとの連結部には、リンクと足揉み装置との角度が所定角度以下にならないようにする回動角制限部材が設けられており、前記所定角度を、前記足揉み装置の使用位置において当該足揉み装置が床面に非接触となるための角度に設定するとよい。
例えば、前記回動角制限部材は、足揉み装置の移動枢支部とリンクとを回動自在に連結している回動軸心に平行なピン部材であって、前記ピン部材はリンクと移動枢支部とで挟み込まれ可能なように、リンク及び/又は移動枢支部に配設されているとよい。
【0011】
この場合、前記リンクは、座部の左右方向中央部に設けられる定置枢支部と足揉み装置の左右方向中央部に設けられる移動枢支部とを連結する単一部材で形成されたものとするのが好適である。
また更に、前記リンクは、前記足揉み装置が収納位置に位置する際に、足揉み装置の正面上部から頂部に沿うような側面視C型にカーブする形状に形成されたものとするのが好ましい。
前記進退機構の揺動駆動部は、電動モータ駆動の伸縮機構を有したものとすることができる。
【0012】
前記進退機構は、使用位置にある足揉み装置を浮上状態のまま前方へ突出可能とする前方突出機構を有したものとすることができる。
具体的に、前記前方突出機構は、足揉み装置を前後方向にスライド自在とするスライド機構を前記リンクの前端部に有し、前記スライド機構には、足揉み装置を後方に付勢する付勢部材が備えられているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るマッサージ椅子によれば、構造の一層の簡潔化、軽量化、低コスト化などを一気に解決することができる。のみならず本発明に係るマッサージ椅子では、足揉み装置を使用するに際し、使用者が足を前方へ投げ出すようなリラックスした姿勢を取れるようにして、使用感を高められるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
図1〜図12は、本発明に係るマッサージ椅子1の一実施形態を示している。なお、図12が全体的な外観図であり、その他の図では説明の便宜上、必要に応じて構造の一部を省略して描いてある。
マッサージ椅子1は、座部2と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3とを有しており、座部2の前部には、この座部2に着座した使用者の下肢(特にふくらはぎ)を揉みマッサージする足揉み装置5が設けられている。
【0015】
図1及び図2に示すように、座部2の下部には、このマッサージ椅子1を床面Fへ設置するための脚フレーム6が設けられており、この脚フレーム6によって座部2が所定高さに支持されるようになっている。
また座部2の両側を挟むようにしてアームレスト7が設けられており(図12参照)、これらアームレスト7によって脚フレーム6が外から見えないように隠されている。
なお、以下の説明において、図1の左右方向を実際の装置での前後方向と呼び、図1の上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。図1の紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼ぶ。これらの方向は、マッサージ椅子1に座った使用者から見たものと一致する。
【0016】
座部2は使用者の臀部を下方から支持するに十分な広さを有している。背もたれ部3は、その下端部が座部2の後部又は脚フレーム6の後部に対して前後揺動自在な状態に枢支されている。この背もたれ部3は、脚フレーム6内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構(図示略)により、リクライニング可能となっている。
背もたれ部3の内部には、揉みや叩き、或いは振動などのマッサージ動作を行う背部用マッサージ機構(図示略)が上下移動自在に設けられている。
足揉み装置5は、正面視すれば略四角形状を呈し、側面視すれば丸みを帯びた三角形状を呈するような箱形に形成されている。足揉み装置5の正面には、使用者の下肢(左右の足)を嵌め入れ可能にする左右一対の保持溝10,10が形成されている。
【0017】
各保持溝10の内部対向面(嵌め入れられた片方の足を挟むようにする両側)には、下肢に対して揉みマッサージを行う下肢用マッサージ装置が内蔵されている。この下肢用マッサージ装置としては、足の長さ方向に長い板材を左右に揺動させることによって揉みを施す構成としたり、空気の給排によって膨張収縮する空気袋で揉みを施す構成としたりすることができる。
この足揉み装置5は、座部2の前方で床面Fから浮き上がり、且つ使用者の下肢をマッサージ可能な使用位置U(図2参照)と、座部2の下方に形成された収納位置P(図1参照)との間を移動可能になっている。
【0018】
すなわち、座部2の下方(脚フレーム6の内部)には進退機構15が設けられており、この進退機構15を介して、座部2側(脚フレーム6)と足揉み装置5とが連結される構成となっている。この進退機構15が前方へ向けて進出動作すると、足揉み装置5は使用位置Uに進み、その後に進退機構15が後方へ向けて退行動作すると、足揉み装置5は収納位置Pに収納されるものとなっている。
図6は足揉み装置5の収納状態(収納位置P)であり、図10は足揉み装置5の使用状態(使用位置U)であり、図7〜図9は収納状態と使用状態との切り替わりの様子(中途状態)を示している。これら図6〜図10から明かなように、進退機構15は、リンク20と、揺動駆動部21と、転動輪22とを有している。
【0019】
なお、座部2を支持している脚フレーム6には、このマッサージ椅子1の設置場所を全体として移動させる場合に、軽快な移動ができるようにするため、床面設置部分(足揉み装置5の底面)の後端に対して左右一対の移動用車輪23が設けられている。また、マッサージ椅子1の使用時など、移動させないときにおいてこれら移動用車輪23を床面Fから浮き上げ、設置安定性を保持させるために、床面設置部分の前後・左右の四箇所に着床部材24が設けられている。
着床部材24は、振動吸収性と床面Fに対する滑りにくさとを兼備する硬質ゴム等で形成するのが好適である。マッサージ椅子1の設置場所を移動させる場合には、左右の移動用車輪23だけを床面Fに押し付けるように椅子全体を後方へ傾け(椅子前部を浮かし)、これで全ての着床部材24が床面Fから離れるようにして移動用車輪23を転がしながら移動させればよい。
【0020】
一方、足揉み装置5は、底面支持枠26と背面支持枠27とが側面視L型を呈するように組まれた移動フレーム28により、装置全体に剛性が保たれるように支持されている。
リンク20は、座部2の下部(脚フレーム6内の上部側)に設けられる定置枢支部32と、足揉み装置5の背面上部(移動フレーム28における背面支持枠27の上部)に設けられる移動枢支部33との間に連結されている。
これら定置枢支部32や移動枢支部33は、軸心を左右方向へ向けた枢軸まわりでリンク20を相対回動自在に保持するようになったものである。そのため、座部2に対して足揉み装置5が動作するという観点で言えば、このリンク20は、定置枢支部32を支点として、移動枢支部33が前後方向に揺動自在となされたものである。
【0021】
図3〜図5に示すように、定置枢支部32は、座部2の左右方向中央部に設けられており、また移動枢支部33は、足揉み装置5の左右方向中央部に設けられている。従ってこれら定置枢支部32と移動枢支部33とを連結するリンク20としては、1本だけで形成されている。
図5から明かなように、本実施形態においてリンク20は、2本のリンク構成杆34を左右方向で所定間隔をおいて並行させ、互いに連結することにより剛性の高い枠形に形成させてある。リンク構成杆34としての本数は特に限定されるものではないが、これら全体を枠形に組んだ構造体として、1本のリンク20とおく。すなわち、リンク20は単一棒部材から成る。
【0022】
またリンク20は側面視C型にカーブする形状に形成されている。すなわち、足揉み装置5が座部2下方の収納位置Pとされている状態(図6の状態)で説明すると、リンク20は、定置枢支部32から一旦、後方へ延びるようになされ、その後、足揉み装置5の正面上部から頂部を経由して背面上部側へ回り込むように下方へUターンし、その後更に、前方へ延びるようになってから移動枢支部33へ至る形状となっている。
図6に示したように、定置枢支部32の軸心から床面Fまで最短距離で結んだ直線を最大半径Rとおく仮想円Dを考えるとき、リンク20は、定置枢支部32を中心に、この仮想円Dの範囲内に全て収まるような大きさで形成されたものとなっている。そのため、リンク20が定置枢支部32を中心に前後揺動しても、このリンク20は床面Fに接触することはない。
【0023】
このリンク20は、足揉み装置5が収納位置Pに位置するとき(図6)が可動揺動範囲の後側となり、足揉み装置5が使用位置Uに位置するとき(図10)が可動揺動範囲の前側となるようにして前後揺動する。なお、この可動揺動範囲とは、足揉み装置5が収納位置Pと使用位置Uとの間を移動するときにリンク20が揺動する領域を言う。
足揉み装置5の背面上部に設けられる移動枢支部33とリンク20との連結部には、回動角制限部材50が設けられている。
この回動角制限部材50は、リンク20が前方揺動することで移動枢支部33が上昇し、足揉み装置5の背面(足揉み装置5の背面支持枠27)とリンク20の前端部との角度θが所定値に達したときに、この角度θを維持させたまま、前記転動輪22(要するに足揉み装置5全体)を床面Fから浮き上がらせるようにするためのものである。
【0024】
ここにおいて、所定角度θとは、足揉み装置5の正面が、座部2の上面と略面一な水平状態(多少の段差は含む)となるか、又は前下がりの折曲状態で連なる形態が実現可能なものとする。
言い換えるならば、図9に示される如く、回動角制限部材50は、転動輪22を床面Fから浮き上がらせる瞬間に、移動枢支部33とリンク20とを回動自在に連結している回動軸心の直下位置より前方で足揉み装置5側へ係合して、移動枢支部33とリンク20とがそれ以上回動しないようにする。この回動角制限部材50は、移動枢支部33とリンク20とを回動自在に連結している回動軸心に平行なピン部材50としてある。つまり、このピン部材50が、背面支持枠27に設けられた当接部材50Aとリンク20とに挟まれることで、移動枢支部33とリンク20との回動状態が規制され、角度θが固定される。
【0025】
なお、本実施形態では、図5(B)から明かなように、リンク20を構成する2本のリンク構成杆34間に架設された1本のピン軸とした。しかしこれに限らず、各リンク構成杆34から互いに対向する状態で2本のピンを突設させるようにしてもよいし、またいずれか1本だけとしてもよい。リンク20側に当接部材50Aが設けられ、足揉み装置5の背面支持枠27側にピン部材50が設けられる構成であっても何ら問題はない。
揺動駆動部21は、リンク20に対して前後揺動の駆動力を付与するものであって、本実施形態では、電動モータ35を駆動源として伸縮動作する伸縮機構36を備えたものとしてある。伸縮機構36には、例えばスクリュウ軸(ボールネジ等)を用いた機構や、ラックとピニオンギヤとの組み合わせ機構などを採用可能である。
【0026】
定置枢支部32においてリンク20の後端を回動自在に保持する枢軸(リンク20と一体回動する)には、これと一体回動するようにブラケット部材38が設けられている。このブラケット部材38に対して伸縮機構36の前端部が相対回動自在に連結されている。また伸縮機構36の後端部は、脚フレーム6の縦杆部6aに対して回動自在に連結されている。
転動輪22は、足揉み装置5における背面下端、即ち、底面と背面とのコーナー部分(移動フレーム28における底面支持枠26と背面支持枠27との連結部)に設けられており、床面F上を移動自在に保持されている。
【0027】
この転動輪22の輪部外周面(タイヤ部分)は、振動吸収性と床面Fに対する滑りにくさとを兼備する硬質ゴム等で形成するのが好適である。
ところで、図11に示すように、本実施形態において進退機構15は、使用位置にある足揉み装置5を宙に浮かしたまま、更に前方へ突出させる前方突出機構60を有したものとしてある。この前方突出機構60は、使用位置にある足揉み装置5を常に後方へ向けて突出付勢させるガス圧シリンダ61を有している。
具体的には、足揉み装置5の背面支持枠27がスライド外枠65とスライド内枠66とを互いにスライド自在に組み合わされた構成とされており、これら両枠65,66の枠内中央位置に対し、ガス圧シリンダ61が配置されるようになっている。なお、前述したピン部材50が当接する当接部材50Aは、背面支持枠27の上端部(スライド内枠66の上端部でリンク20に近い面)に設けられている。
【0028】
ガス圧シリンダ61は、伸長方向に付勢力を発するように構成されており、このガス圧シリンダ61の付勢力に抗するように、使用者の足等で足揉み装置5を前方に押し付け、両枠65,66を互いにスライドさせ背面支持枠27を伸長させることで、当該足揉み装置5を前方突出させる。逆に、ガス圧シリンダ61が伸長する際の付勢力で両枠65,66が互いに逆方向にスライドし、背面支持枠27の長さが縮まるようになっている。
ガス圧シリンダ61には、その伸縮量を一時的に固定できるような固定機能が備えられており、その固定機能を使うことで、スライド外枠65とスライド内枠66との位置関係、すなわち足揉み装置5の前方突出具合を任意の位置で停めることができる。
【0029】
ガス圧シリンダ61の固定機能の動作は、座部2の周辺などに設けられた操作ハンドルとこの操作ハンドルからガス圧シリンダ61へと繋がるワイヤ等により行われる。
次に、上記構成の進退機構15の動作を説明する。まず、図6に示すように足揉み装置5が座部2下方の収納位置Pにある状態とする。このとき足揉み装置5は、その底面が前方を向き、正面(使用者の下肢を嵌め入れる保持溝10,10が設けられた面)が上を向いており、また底面は座部2の前端部と略面一になっている。
揺動駆動部21の電動モータ35を作動させると、伸縮機構36が伸長動作を開始する。そのため、伸縮機構36の後端部が連結された脚フレーム6の縦杆部6aを支えとして、伸縮機構36の前端部(ブラケット部材38)で定置枢支部32の枢軸が回動を開始するようになる。
【0030】
これに伴い、リンク20は、定置枢支部32を支点として移動枢支部33が前方へ向けて揺動するようになり、その結果、図7に示すように足揉み装置5はその背面上部を前方へ前進させるようになる。この際、転動輪22が床面F上を転動するため、足揉み装置5はスムーズに移動することとなる。
リンク20が更に前方へ揺動することで、図8→図9に示すように足揉み装置5はその背面上部が上昇を開始する。そして足揉み装置5の背面上部が座部2の前端下部よりも前方へ出て、且つ図10に示すように、足揉み装置5がその全体として上昇するようになれば、この足揉み装置5は使用位置Uへ至ったことになる。
【0031】
これら一連の動作が進退機構15の進出動作である。使用位置Uに至った足揉み装置5は、その背面を床面Fと対面させつつ底面が前方を向き、且つ下肢をマッサージする正面(左右の保持溝10,10における溝底に相当)が座部2の上面と略面一な水平状態又は前下がりの折曲状態(図2参照)で連なりつつ上方を向く状態となっている。
使用者は、足揉み装置5に対して左右の保持溝10,10に片足ずつ差し入れた状態として下肢用のマッサージ機構を作動させれば、心地よくマッサージを受けることができる。また、このとき足揉み装置5が全体として上昇していることにより、使用者は足を前方へ投げ出すようなリラックスした姿勢を取れるようになり、膝を極度に曲げる必要がないので、使用感を高められるようになっている。
【0032】
なお、使用位置にある足揉み装置5が使用者の脚の長さに対して窮屈に感じた場合には、前方突出機構60により足揉み装置5を前方突出させればよい。足揉み装置5の使用後には、足揉み装置5を座部2へ近接させるようにする。
一方、この使用位置Uから揺動駆動部21の電動モータ35を上記と逆作動させると、伸縮機構36が収縮動作を開始する。そのため、伸縮機構36の後端部が連結された脚フレーム6の縦杆部6aを支えとして、伸縮機構36の前端部(ブラケット部材38)で定置枢支部32の枢軸が上記と逆回動を開始するようになる。
【0033】
これに伴い、リンク20は、定置枢支部32を支点として移動枢支部33が後方へ向けて揺動するようになり、その結果、図9→図8に示すように足揉み装置5はそのその全体として下降し、且つその正面上部を下方へ沈み込ませるようになる。図7に示すように、足揉み装置5の正面上部が座部2下方より低くなるまで背面上部が下降すると、足揉み装置5は座部2下方を後方へ向けて退行するようになる。この際、転動輪22が床面F上を転動するため、足揉み装置5はスムーズに移動することとなる。
そして図6に示すように、足揉み装置5が収納位置Pへ格納された状態に戻される。これら一連の動作が進退機構15の退行動作である。
【0034】
足揉み装置5が収納位置Pに収まると、その底面が前方を向くと共に座部2の前端部から突出しない状態となるので、マッサージ椅子1に座った「マッサージを受けない使用者」は楽な体勢を保持できると共に、マッサージ椅子1の見栄えもシンプルなものとなってスッキリとする。
なお、座部2の上面や足揉み装置5の保持溝10内等にリミットスイッチ等のセンサを設けておき、このセンサが使用者を検出しているとき、又は、マッサージ機構や下肢マッサージ機構が動作中の際に、進退機構15に上記の退行動作を行わせる操作があったときには、退行動作の実行が無視される構成とするのが好適である。このような構成を採り入れておけば、使用者の下肢を痛める等の不都合な状況を確実に防ぐことができる。
【0035】
また、前方突出機構60に関しても、足揉み装置5の背面支持枠27やガス圧シリンダ61等にリミットスイッチ等のセンサを設けておき、このセンサが足揉み装置5の前方突出状態を検出しているときに進退機構15に上記の退行動作を行わせる操作があったときには、退行動作の実行が無視される構成とするのが好適である。
ところで、本発明に係るマッサージ椅子1は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、定置枢支部32は、座部2の左右両側に一対(即ち2箇所)設けられたものとし、移動枢支部33についても、足揉み装置5の左右両側に一対(即ち2箇所)設けられたものとすることができる。この場合、左側の定置枢支部32と移動枢支部33、右側の定置枢支部32と移動枢支部33を、それぞれ連結するように、左右一対(即ち2本)のリンク20を用いるようにしてもよい。
【0036】
またリンク20は、側面視C型とすることが限定されるものではなく、一直線状のものとして形成することができる。
揺動駆動部21は、電動モータで歯車機構を動作させ、これでリンク20を前後揺動させるように構成させることもできる。
回動角制限部材50は、ピン状物に限定されず、またその取付位置、係合相手なども限定されるものではない。すなわち、リンク20が前方揺動する過程で足揉み装置5を所定角度θに維持させたまま、床面Fから浮き上がらせるための係合構造を構成するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、マッサージ椅子に取り付けられる足揉み装置に適用することが可能であり、ソファや車両の座席等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るマッサージ椅子の一実施形態を一部内部透視状態にして示した側面図である。
【図2】図1の状態から足揉み装置を使用位置へ動作させた状態にして示した側面図である。
【図3】図2のA矢視図(下から見た状態の斜視図)である。
【図4】図1のB−B線矢視図である。
【図5】(A)は図2に対応する斜視図であり(B)は回動角制限部材の近傍を拡大して示した斜視図である。
【図6】足揉み装置の収納状態を示した側面図である。
【図7】足揉み装置を収納状態と使用位置との間で動作させている状態であって且つ収納状態に近い状態として示した側面図である。
【図8】足揉み装置を収納状態と使用位置との間で動作させている状態であって且つ収納状態と使用状態との中間の状態として示した側面図である。
【図9】足揉み装置を収納状態と使用位置との間で動作させている状態であって且つ使用状態に近い状態として示した側面図である。
【図10】足揉み装置の使用状態を示した側面図である。
【図11】(A)は前方突出機構を斜視図であり(B)はその動作状況を説明した模式図である。
【図12】本発明に係るマッサージ椅子の一実施形態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 マッサージ椅子
2 座部
3 背もたれ部
5 足揉み装置
15 進退機構
20 リンク
22 転動輪
21 揺動駆動部
32 定置枢支部
33 移動枢支部
35 電動モータ
36 伸縮機構
50 回動角制限部材(ピン部材)
60 前方突出機構
61 ガス圧シリンダ
F 床面
P 収納位置
U 使用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と該座部の後部に設けられた背もたれ部と前記座部の前部に設置された足揉み装置とを有するマッサージ椅子において、
前記座部の下方に足揉み装置と連接する進退機構が設けられ、
前記進退機構が前方に進出動作すると、足揉み装置は座部の前方で床面の上方に浮き上がり且つ使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置に進み、前記進退機構が後方に退行動作すると、足揉み装置は座部の下方に形成された収納位置に収納されることを特徴とする足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項2】
前記使用位置にある足揉み装置は、その背面が床面と対面し且つ底面が前方を向く状態となっており、
前記収納位置にある足揉み装置は、その底面が前方を向くと共に座部の前端部と略面一となり下肢をマッサージする正面が上方を向く状態となっていることを特徴とする請求項1に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項3】
前記進退機構は、収納位置にある足揉み装置の背面上部を座部の前端よりも前方へ前進させた後又は前進させる途中に上昇させることで足揉み装置を使用位置へ至らせる進出動作と、使用位置にある足揉み装置の正面上部が座部下方より低くなるまで前記背面上部を下降させた後に座部下方へ退行させることで足揉み装置を収納位置に戻す退行動作と、を行う構成になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項4】
前記進退機構は、座部の下部に設けられる定置枢支部と足揉み装置の背面上部に設けられる移動枢支部との間に連結されて定置枢支部を支点に移動枢支部を前後揺動自在に保持するリンクと、このリンクに対して前後揺動の駆動力を付与する揺動駆動部と、足揉み装置の背面下端に設けられて床面上を移動自在に保持された転動輪と、を有しており、
前記リンクが当該リンクの揺動域の後方側へ揺動すると足揉み装置が収納位置に移動し、前記リンクが当該リンクの揺動域の前方側へ揺動すると足揉み装置が使用位置に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項5】
前記足揉み装置の移動枢支部と前記リンクとの連結部には、リンクと足揉み装置との角度が所定角度以下にならないようにする回動角制限部材が設けられており、
前記所定角度を、前記足揉み装置の使用位置において当該足揉み装置が床面に非接触となるための角度に設定していることを特徴とする請求項4記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項6】
前記回動角制限部材は、足揉み装置の移動枢支部とリンクとを回動自在に連結している回動軸心に平行なピン部材であって、前記ピン部材はリンクと移動枢支部とで挟み込まれ可能なように、リンク及び/又は移動枢支部に配設されていることを特徴とする請求項5に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項7】
前記リンクは、座部の左右方向中央部に設けられる定置枢支部と足揉み装置の左右方向中央部に設けられる移動枢支部とを連結する単一部材で形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項8】
前記リンクは、前記足揉み装置が収納位置に位置する際に、足揉み装置の正面上部から頂部に沿うような側面視C型にカーブする形状に形成されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項9】
前記進退機構の揺動駆動部は、電動モータ駆動の伸縮機構を有していることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項10】
前記進退機構は、使用位置にある足揉み装置を浮上状態のまま前方へ突出可能とする前方突出機構を有していることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項11】
前記前方突出機構は、足揉み装置を前後方向にスライド自在とするスライド機構を前記リンクの前端部に有し、
前記スライド機構には、足揉み装置を後方に付勢する付勢部材が備えられていることを特徴とする請求項10に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−131248(P2010−131248A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311013(P2008−311013)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(508360604)エムテック株式会社 (7)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】