説明

距離測定装置およびこれを備えた光学干渉計、光学顕微鏡

【課題】光軸上に置かれた被測定物までの当該光軸に沿った距離を高精度に測定できる距離測定装置を提供すること。
【解決手段】距離測定装置は、レーザ干渉計1の測定光Lの光軸上において導電性の被測定物2に対向配置された透明電極44と、透明電極44および被測定物2の間の静電容量を検出する静電容量検出手段としての信号処理回路52とを備える。そして、距離測定装置は、検出した静電容量に基づいて透明電極44と被測定物2との間の光軸に沿った距離Dを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離を測定する距離測定装置に関し、詳しくは、光軸上に置かれた被測定物までの当該光軸に沿った距離を測定する距離測定装置に関し、および、これを備えた光学干渉計、光学顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノメートル単位の精度を要求される部品や、そのような高精度の部品を製造する製造装置の需要が産業界で高まってきており、この産業界の要請に応えるべく、部品の形状などをナノメートル単位の精度で測定できるレーザ干渉計や、可動部などをナノメートル単位の精度で位置決めできるレーザ干渉計を備えた製造装置などが用いられている。
【0003】
例えば、2次元方向に移動可能に設けられたステージの変位を測定するレーザ干渉計を備えた平面ステージ装置が知られている(特許文献1参照)。
通常、レーザ干渉計は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、測定光を被測定物(ステージの基準面など)に照射するとともに参照光を参照面に照射して、被測定物を反射した測定光と、参照面を反射した参照光とを重ね合わせ、光路差により発生する干渉縞を検出する。そして、被測定物の変位に応じて変化する干渉縞の位相に基づき、被測定物の変位が算出される。
例えば、測定光を被測定物に垂直に照射する場合、発生する干渉縞の縞間隔は、測定光の波長の半分となる。光源として波長が633nmである周波数安定化He−Neレーザ光源を用いた場合、干渉縞間隔は原理的に316.5nmとなるが、検出した干渉縞の信号を内挿手段(インターポレータ)にて317分割以上の内挿処理を実行することで、ステージなどの変位をナノメートル単位の精度で測定することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−25887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の平面ステージ装置のように、ステージの位置決めを行う際、装置の電源を落とす前と、装置の電源を再投入した後とで、ステージ位置の再現性を確保するためにステージ自体の原点位置を把握したい場合がある。
しかし、前述のレーザ干渉計では、測定光をステージに照射するセンサヘッドに対するステージの相対的な変位を測定できるが、ステージの絶対的な位置(原点位置など)を測定できない。
そのため、特許文献1の平面ステージ装置では、レーザ干渉計とは別に、ステージを検出する光学的なスイッチが設けられ、このスイッチにて検出されたステージ位置がレーザ干渉計による測定の原点として使用される。
【0006】
しかしながら、前述の平面ステージ装置では、光学的なスイッチが、レーザ干渉計の測定光との干渉を避けるため測定光の光軸上ではない位置に配設されていることから、スイッチによるステージ位置の原点位置には、アッベ誤差が含まれてしまう。このため、ステージを高精度に位置決めすることが難しい。
このような問題は、平面ステージ装置におけるステージの位置決めの際の原点位置の設定に限らず、レーザ干渉計を使用して被測定物である加工部品の表面形状を測定する際のセンサヘッドから測定箇所までの距離の測定や、光学顕微鏡を使用して被測定物を観察する際の測定箇所までの距離の測定などにおいても、同様に生じるものである。
すなわち、測定光または照明を被測定物に照射して、その反射光により被測定物の位置を測定、または、被測定物の表面形状を測定もしくは観察する際に、反射光の光軸に沿った被測定物までの距離を従来の方法で測定すると、測定値にアッベ誤差が含まれてしまうという共通した課題があった。
【0007】
本発明の目的は、光軸上に置かれた被測定物までの当該光軸に沿った距離を高精度に測定できる距離測定装置、および、これを備えた光学干渉計、光学顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の距離測定装置は、光軸上に置かれた導電性の被測定物までの当該光軸に沿った距離を測定する距離測定装置であって、前記被測定物に対して所定寸法だけ離れた前記光軸上の位置に設けられた透明電極と、前記透明電極と前記被測定物との間の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備え、検出した前記静電容量に基づいて前記透明電極と前記被測定物との間の前記光軸に沿った距離を算出することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、測定光または照明を被測定物に照射して、その反射光により被測定物の位置を測定、または、被測定物の表面形状を測定もしくは観察する際に、被測定物からの反射光の光軸上に透明電極が設けられるので、当該光軸に沿った被測定物までの距離を高精度に測定することができる。従来は、反射光との干渉を避けるため、光軸上ではない位置にスイッチを配設して、スイッチが検出する被測定物の位置を被測定物の原点位置として被測定物までの距離を測定していたが、スイッチが光軸上にないため、測定値にアッベ誤差が含まれてしまうという問題があった。これに対して本発明では、透明電極を光軸上に配設するので、透明電極と反射光との干渉が生じず、かつ、透明電極にて測定される被測定箇所を被測定物からの反射光の生じる位置に一致させることができる。従って、透明電極によって光軸に沿った距離を直接測定でき、アッベ誤差を含まない高精度な測定が可能となる。
【0010】
本発明の光学干渉計は、前記距離測定装置を備えたことを特徴とする。
ここで、光学干渉計としては、例えば、被測定物の表面を測定して、測定光の光軸に沿った被測定物の表面までの距離、または、被測定物の表面形状を測定する光学干渉計とすることができる。前者には、例えば所定方向に移動可能に設けられたステージの変位を測定する変位測定装置などが含まれ、後者には、例えば回路基板のパターンのような微細な凹凸などを有する表面性状を測定する表面性状測定装置などが含まれる。
【0011】
この構成によれば、被測定物を光学干渉計にて測定する際に、従来の光学干渉計では被測定物までの絶対的な距離を測定することができなかったが、光学干渉計の測定光の光軸上に配設された透明電極と、透明電極と被測定物との間の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えているので、被測定物までの絶対的な距離を高精度に測定することができる。
【0012】
本発明の光学顕微鏡は、前記距離測定装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、被測定物を光学顕微鏡にて測定する際に、光学顕微鏡の対物レンズの光軸上に配設された透明電極と、透明電極と被測定物との間の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えているので、被測定物を目視しながら、被測定物までの絶対的な距離を高精度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の光学干渉計としてのマイケルソン型のレーザ干渉計1の全体構成を示す模式図である。
レーザ干渉計1は、例えば、テーブル装置における移動自在に設けられたテーブルの変位を測定する変位測定装置として使用できる。なお、以降ではテーブルなどの被測定物2の変位を測定する場合について説明する。
【0014】
[レーザ干渉計の全体構成]
レーザ干渉計1は、レーザ光を発生する光源部3と、被測定物2に対向配置された測定部として、光源部3から供給されたレーザ光に基づいて被測定物2に測定光Lを照射し、被測定物2を反射した測定光Lを受光するセンサヘッド部4と、センサヘッド部4から出力される信号を処理する信号処理部5とを備えている。なお、被測定物2は、導電性の材料から形成されたものとする。
【0015】
光源部3は、レーザ光を発生するレーザ光源31と、レーザ光を集光するレンズ32と、集光されたレーザ光の偏波面を一定の方向に保ちながら伝搬する偏波面保存ファイバ33とを備える。この偏波面保存ファイバ33は、センサヘッド部4に接続されている。
【0016】
センサヘッド部4は、入射されたレーザ光を平行光Lにするコリメータレンズ41と、この平行光Lを測定光Lおよび参照光Lに分割する偏光ビームスプリッタ42と、分割された測定光Lの光軸上に配置される第1のλ/4板43および透明電極44と、分割された参照光Lの光軸上に配置される第2のλ/4板45および参照鏡46と、偏光ビームスプリッタ42に対して参照鏡46とは反対側に配置される偏光板47および位相検出部48とを備える。
【0017】
偏光ビームスプリッタ42で分割された測定光Lは、偏光ビームスプリッタ42を直進する。平行光Lおよび測定光Lの光軸に沿って、コリメータレンズ41、偏光ビームスプリッタ42、第1のλ/4板43、透明電極44が順番に直線状に配置される。ここで、第1のλ/4板43および透明電極44は測定光Lを透過する。また、透明電極44は、センサヘッド部4の外周に固定されており、かつ、被測定物2に対して距離Dの位置に対向配置されている。また、透明電極44および第1のλ/4板43は、被測定物2を反射した測定光Lを再び透過する。偏光ビームスプリッタ42は、被測定物2からの測定光Lを偏光板47に向かって反射するようになっている。
【0018】
透明電極44は、透明なガラス基板上に例えばインジウム錫酸化物の薄膜を成膜することにより製造された円盤状の電極であり、可視光に対して透明かつ導電性を有する電極である。この透明電極44は、測定光Lの光軸に直交する電極面を有する。透明電極44と被測定物2との間には、距離Dに応じた静電容量が生じるようになっている。なお、透明電極44は、信号処理部5と電気的に接続されている。
【0019】
一方、偏光ビームスプリッタ42で分割された参照光Lは、偏光ビームスプリッタ42で測定光Lに対して直角方向に反射される。この参照光Lの光軸に沿って、参照鏡46、第2のλ/4板45、偏光ビームスプリッタ42、偏光板47、位相検出部48が順番に直線状に配置されている。
第2のλ/4板45は、偏光ビームスプリッタ42からの参照光Lを透過し、さらに、参照鏡46を反射した参照光Lを再び透過する。偏光ビームスプリッタ42は、参照鏡46からの参照光Lを偏光板47に向かって直進させるようになっている。
【0020】
偏光板47は、測定光Lおよび参照光Lを透過し、互いに干渉させて干渉光Lを発生する。
位相検出部48は、干渉光Lを受光するとともに、被測定物2の変位に応じて変化するリサージュ信号S(90°位相差の2相正弦波信号)を信号処理部5に出力するようになっている。
【0021】
信号処理部5は、位相検出部48からのリサージュ信号Sが入力されるインターポレータ51と、透明電極44および被測定物2の間に発生する静電容量Cm(図2参照)を検出して原点信号Sを出力する信号処理回路52と、これらのリサージュ信号Sおよび原点信号Sが入力されるカウンタ53とを備える。
インターポレータ51は、リサージュ信号Sを内挿して、被測定物2の変位に応じて変化する90°位相差の2相矩形波信号Sをカウンタ53に出力する。
【0022】
[信号処理回路の構成]
図2は、静電容量検出手段としての信号処理回路52の構成を示すブロック図である。
信号処理回路52は、通常の静電容量変位計の信号処理回路にパルス状の原点信号Sを発生させる機能が追加された構成である。すなわち、信号処理回路52は、検出した静電容量Cmが設定された閾値を通過するとカウンタ53に向かって原点信号Sを出力する機能を有する。
具体的には、図2に示すように、信号処理回路52は、振幅Vが一定である正弦波状電圧を発生する正弦波信号発信器521と、正弦波信号発信器521および透明電極44の間に直列接続された静電容量Crのコンデンサ522と、検出した静電容量Cmおよびコンデンサ522の静電容量Crで分圧された電圧の振幅Vmを検出する振幅検出手段としてのRMS−DC変換回路523と、可変電圧Vrを発生する可変基準電圧源524と、振幅Vmおよび可変電圧Vrが印加され2つの値の一致、不一致を検出するコンパレータ525と、コンパレータ525の出力の変化を検出し、検出信号を原点信号Sとしてカウンタ53に出力する立上り立下り検出回路526とを備える。ここで、RMS−DC変換回路523には、市販のICチップ AD637(Analog Device社製)を採用できる。
【0023】
図1にてカウンタ53は、インターポレータ51からの2相矩形波信号Sをカウントするとともに、このカウント値を演算処理して被測定物2の変位を算出する。さらに、カウンタ53は、原点信号Sが入力されるタイミングでカウント値をリセットし、被測定物2の原点位置を検出するようになっている。
【0024】
なお、本実施形態において、レーザ干渉計1の測定光Lの光軸上に配置された透明電極44と、透明電極44および被測定物2の間の静電容量を検出する静電容量検出手段としての信号処理回路52とによって、被測定物2および透明電極44の間の測定光Lの光軸に沿った距離Dを測定する本発明の距離測定装置が構成される。
【0025】
[被測定物の変位の測定方法]
次に、レーザ干渉計1を用いた被測定物2の変位の測定方法を説明する。
図1にて、レーザ光源31から射出したレーザ光は、レンズ32、偏波面保存ファイバ33を介してセンサヘッド部4に入射する。センサヘッド部4に入射したレーザ光は、コリメータレンズ41によって平行光Lにされ、偏光ビームスプリッタ42に入射する。平行光Lは、偏光ビームスプリッタ42によって測定光Lおよび参照光Lに分割される。
【0026】
測定光Lは、第1のλ/4板43および透明電極44を透過して被測定物2を照射する。被測定物2で反射された測定光Lは、再び透明電極44および第1のλ/4板43を透過し、偏光ビームスプリッタ42で反射されて偏光板47に入射する。一方、参照光Lは、第2のλ/4板45を透過して参照鏡46に入射し、参照鏡46で反射される。反射された参照光Lは、再び第2のλ/4板45、偏光ビームスプリッタ42を透過して偏光板47に入射する。そして、偏光板47に入射した測定光Lおよび参照光Lは、偏光板47を透過することで干渉光Lとなる。干渉光Lは、位相検出部48で受光される。
【0027】
位相検出部48において、被測定物2の変位に応じて変化するリサージュ信号Sが出力される。リサージュ信号Sはインターポレータ51で内挿されて、被測定物2の変位に応じて変化する90°位相差の2相矩形波信号Sとなる。この2相矩形波信号Sは、カウンタ53でカウントされる。カウント値は、被測定物2の変位に比例して変化するので、このカウンタ値を演算処理することで被測定物2の変位を算出できる。
【0028】
[被測定物の変位の測定方法]
次に、被測定物2の原点位置の検出方法を説明する。
図2にて、正弦波信号発信器521により振幅一定(V)の正弦波状電圧をコンデンサ522および透明電極44に印加する。透明電極44と被測定物2との間の静電容量Cmは、距離Dに応じて変化するので、静電容量Cmとコンデンサ522の静電容量Crとで分圧された電圧の振幅Vmも距離Dに応じて変化することになる。そして、分圧された電圧の振幅VmをRMS−DC変換回路523により検出する。
振幅Vmは以下の式(1)によって表される。
【0029】
【数1】

【0030】
ここで、εは空気の比誘電率、ε0は真空中の誘電率、Sは透明電極44における被測定物2と対向する部分の面積である。
距離Dと振幅Vmとの関係を図3に示す。図3にて、被測定物2が原点位置にある状態での距離をDとすると、距離Dに対応する振幅Vmの値は、一義的に決定される。
【0031】
さらに、コンパレータ525に振幅Vmと可変基準電圧源524を用いて発生させた可変電圧Vrとを印加する。ここで、可変電圧Vrが図3に示す距離Dに対応する振幅Vmの値となるように可変電圧Vrを設定することで、原点位置における距離Dに対応する電圧Vrを閾値としてコンパレータ525の出力を変化させることができる。つまり距離Dが任意の原点位置における距離Dより大きいときと小さいときでコンパレータ525の出力を変化させることができる。コンパレータ525の出力の変化は、立上り立下り検出回路526を用いて検出され、パルス状の原点信号Sが発生され、カウンタ53に印加される。カウンタ53は、原点信号Sが入力されると、そのタイミングでカウント値をリセットする。
以上のようにして、信号処理回路52は、透明電極44と被測定物2との距離Dが原点位置に対応する距離Dになった瞬間にパルス状の原点信号Sを発生し、被測定物2の原点位置を検出することができる。
【0032】
本実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)測定光Lを被測定物2に照射して、被測定物2を反射する測定光Lにより被測定物2の変位を測定する際に、被測定物2からの測定光Lの光軸上に透明電極44が設けられているので、測定光Lの光軸に沿った透明電極44から被測定物2までの距離Dを高精度に測定することができる。従来は、被測定物2からの測定光Lとの干渉を避けるため、測定光Lの光軸上ではない位置にスイッチを配設して、スイッチが検出する被測定物2の位置を原点位置として被測定物2までの絶対的な距離を測定していたが、スイッチが光軸上にないため、測定値にアッベ誤差が含まれてしまうという問題があった。これに対して本実施形態では、透明電極44を測定光Lの光軸上に配設するので、透明電極44と測定光Lとの干渉が生じず、かつ、透明電極44にて距離が測定される被測定物2の被測定箇所を測定光Lの反射する位置に一致させることができる。従って、透明電極44によって測定光Lの光軸に沿った距離Dを直接測定でき、被測定物2の原点位置を高精度に測定できる。
【0033】
(2)静電容量Cmを検出する信号処理回路52を備えているので、信号処理回路52を0〜10マイクロメートル程度の測定範囲に設定することにより、透明電極44および被測定物2の距離Dを10ナノメートル単位の精度で検出することができ、被測定物2の原点位置を10ナノメートル単位の精度で測定できる。
【0034】
(3)レーザ光源31として例えば波長633nmの周波数安定化He-Neレーザ光源を用いて、インターポレータ51にてリサージュ信号Sに対して317分割以上の内挿を行えば、被測定物2の変位をナノメートル単位の精度で測定できる。
【0035】
[本実施形態の変形例]
また、本実施形態のレーザ干渉計は、加工部品の表面性状を測定する表面性状測定装置として使用してもよい。例えば、レーザ干渉計を用いて回路基板の金属パターンのような微細な凹凸などを有する加工部品の表面形状の測定の際にも本実施形態のレーザ干渉計を適用できる。すなわち、レーザ干渉計のセンサヘッドから照射される測定光の光軸上に透明電極を配置して、表面形状を測定しながら、その被測定箇所までの距離を測定する。
このような構成の表面性状測定装置であれば、測定光を被測定物に照射して、その反射光により被測定物の表面形状を測定する際に、被測定物からの測定光の光軸上に透明電極が設けられるので、測定光の光軸に沿った被測定物までの距離を高精度に測定することができる。従って、透明電極にて測定される被測定物の被測定箇所と、レーザ干渉計による被測定物の被測定箇所とを一致させることができる。従って、レーザ干渉計によって測定される被測定箇所までの絶対的な距離を高精度に測定することができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る距離測定装置を備えた光学顕微鏡1Aについて図面に基づいて説明する。
図4は、光学顕微鏡1Aの全体構成を示す側面図である。図5は、図4に示す光学顕微鏡1Aの部分拡大図である。
光学顕微鏡1Aは、通常の光学顕微鏡において、対物レンズ61と試料2Aとの間に透明電極62を配置することで、対物レンズ61を通して観察される試料2Aの被測定箇所から透明電極62までの距離Dを(図5)を測定する機能を備えたものである。ここで、本発明の被測定物としての試料2Aは導電性の物質からなるものとする。
【0037】
図4にて光学顕微鏡1Aは、側面L字型に形成されたフレーム63と、このフレーム63の上部に昇降自在に支持された観察ヘッド64と、フレーム63の下部において対物レンズ61の光軸に直交する2方向に移動自在に支持され、かつ、試料2Aが載置可能とされるテーブル65とを備える。
観察ヘッド64には、対物レンズ61および接眼レンズ66を有する観察光学系が形成されている。また、フレーム63には、透明なガラス基板67に薄膜状に形成された透明電極62が、支持アーム68を介して観察ヘッド64の移動方向に沿って昇降自在に支持されている。また、透明電極62は、対物レンズ61の光軸上に配設されている。
図示を省略するが、透明電極62には前記実施形態と同様に、試料2Aとの間の静電容量を検出する静電容量検出手段としての信号処理回路が電気的に接続されている。
【0038】
このような本実施形態によれば、自然光あるいは照明を被測定物である試料2Aに照射して、その反射光により試料2Aの表面形状を観察する際、試料2Aの被測定箇所を接眼レンズ66にて目視しながら、対物レンズ61の光軸上に設けられた透明電極62によって被測定箇所までの距離を高精度に測定できる。また、テーブル65を操作して試料2Aの表面を走査させながら、被測定箇所までの距離を連続的に測定することもできる。
【0039】
[本発明の変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0040】
前記実施形態では、光学干渉計として、マイケルソン型のレーザ干渉計の場合を説明したが、これに限られない。すなわち、光学干渉計としては、被測定物に測定光を照射してその反射光と参照光との干渉縞から被測定物の位置または表面形状を測定するものであればよく、例えば、フィゾー型干渉計あるいは斜入射型干渉計などであってもよい。
本発明の距離測定装置は、レーザ干渉計や光学顕微鏡に限らず、例えば、測長器、ステージ装置、形状測定装置などにも適用できる。
【0041】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、レーザ干渉計、測長器、ステージ装置、表面形状測定装置などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学干渉計の全体構成を示す模式図。
【図2】前記光学干渉計における信号処理回路の構成を示すブロック図。
【図3】前記光学干渉計における透明電極および被測定物の距離と振幅との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光学顕微鏡の全体構成を示す側面図。
【図5】図4の光学顕微鏡の部分拡大図。
【符号の説明】
【0044】
1…レーザ干渉計(光学干渉計)
1A…光学顕微鏡
2…被測定物
2A…試料(被測定物)
44,62…透明電極
52…信号処理回路(静電容量検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸上に置かれた導電性の被測定物までの当該光軸に沿った距離を測定する距離測定装置であって、
前記被測定物に対して所定寸法だけ離れた前記光軸上の位置に設けられた透明電極と、
前記透明電極と前記被測定物との間の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備え、
検出した前記静電容量に基づいて前記透明電極と前記被測定物との間の前記光軸に沿った距離を算出することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の距離測定装置を備えたことを特徴とする光学干渉計。
【請求項3】
請求項1に記載の距離測定装置を備えたことを特徴とする光学顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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