説明

距離測定装置

【課題】対象物体との距離が遠くても測距精度が低下しない。
【解決手段】赤外LEDとイメージセンサ12とが基板上に設置されて、距離測定装置が構成されている。イメージセンサ12には、ピクセルアレイ20と、ピクセルアレイ20の各ピクセルからの受光信号を処理するDSP回路21と、DSP回路21による処理の際に用いる情報等を格納するメモリ22と、上記赤外LEDを駆動するドライバ回路23とが内蔵されている。DSP回路21は、対象物体で拡散反射されてピクセルアレイ20上に形成された光量分布24の直径を求め、メモリ22に格納されている対照値との比較により、対象物体までの距離を求める。したがって、対象物体の反射率が不均一であってもその影響を極小さくすることができ、対象物体までの距離をより正確に求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学方式によって対象物体との距離を測定する距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物体との距離を非接触方式で測定する距離測定装置(以下、測距センサと言う場合もある)が、種々の用途に用いられている。例えば、トイレに設置されて利用者の入出を検知したり、プロジェクタに搭載されて投影画面のフォーカスを合わせる際にスクリーンとレンズとの距離を測定したり、自動掃除機等のロボットに搭載されて障害物を事前に検知して回避行動を行なったりするのに用いられている。
【0003】
一般的に、非接触で距離を測定する方法には、下記に示す原理が用いられる。
(1) 超音波方式
(2) 静電容量方式
(3) 光学方式
【0004】
上記(1)の超音波方式は、測距センサに内蔵された発信機から超音波を発射し、対象物体に当たって反射して帰ってきた反射波を受信して超音波の往復に要した時間を測定し、既知の音速値を用いて上記対象物体までの距離を測るものである。この方式には、測距センサのサイズが大きくなるという欠点がある。
【0005】
上記(2)の静電容量方式は、測距センサの表面に対象物体が接近した時に誘起される電荷量を測定することによって、上記対象物体との距離を測定するものである。この方式には、測定範囲が数cm程度の近接領域に限定されるという欠点がある。
【0006】
また、上記(1)の超音波方式あるいは上記(2)の静電容量方式の測距センサを用いた製品はシステムが大きくなり、比較的高価である。そのため、一般の家電製品に搭載されることは少なく、主にFA(Factory Automation)用途等で使用されている。
【0007】
これに対して、上記(3)の光学方式は、測距センサのサイズが比較的小さいため小型の機器に搭載が容易である。そのため、上述したプロジェクタや自動掃除機、あるいは人体センサ等に、幅広くこの方式が採用されている。
【0008】
現在、主に使用されている光学式測距センサには、下記の2つの方式(原理)が使用されている。以下、夫々の方式に関してその原理と課題とについて詳細に説明する。
【0009】
(A) 「三角測量+PSD(位置検出素子:Position Sensitive Detector)」方式
図7に、「三角測量+PSD」方式による光学式測距センサの概略を示す。図7に示すように、光学系を備えたLED(発光ダイオード: Light Emitting Diode)でなる発光部1と、フォトダイオードで構成されたPSDでなる受光部2とが、一定の間隔を有して並んで配置されて本光学式測距センサは構成されている。そして、対象物体3,3'に照射されたLED1からの光線の対象物体3,3'からの反射光をPSD2で受光し、PSD2の受光領域上における受光位置がLED1から対象物体3,3'までの距離の変化に伴って受光領域上を動くことを利用して距離を算出するのである。尚、PSD2の受光領域上における受光位置は、PSD2に設けられた2つの出力端子からの出力電流の比によって判定される。
【0010】
上記PSD(フォトダイオード)2上における反射光の受光位置は、図7に示すように、対象物体3との距離が遠くなると発光部1の近くに、対象物体3'との距離が近くなると発光部1から遠くに移動する。その際に、発光部1から対象物体3,3'までの距離とPSD2上における受光位置(PSD2の出力値)とは、図8に示すように一対一の対応を有している。そのため、図8に示す関係を利用して、上記受光位置に基づいて対象物体3,3'までの距離を算出できるのである。
【0011】
(B) 時間検出方式
発光部と受光部とを備えており、対象物体に照射された上記発光部からの光線の上記対象物体からの反射光を、上記受光部で検知するという点では上記「三角測量+PSD」方式の場合と同様である。しかしながら、本時間検出方式は、発光時刻から反射光の受光時刻までの時間(つまり、光の往復時間)を測定することによって、光速度によって上記対象物体までの距離を算出するのである。
【0012】
尚、本時間検出方式においては、光の往復に要した時間を測定して上記対象物体までの距離を算出するために、上記「三角測量+PSD」方式の場合のような精度上の欠点はない。
【0013】
また、上記光学式測距センサにおける他の方式として、特開2005‐164513号公報(特許文献1)に開示されているカメラを用いて測定対象の実サイズを測定するサイズ測定装置を用いる方法が考えられる。
【0014】
上記特許文献1に開示されたサイズ測定装置を用いる方法では、実サイズが分かっている複数の物体に関して、実サイズと画像サイズ(表示画面上のサイズ)との比の値と、カメラ撮影部から物体までの距離との関係を、データベースとして予め備えておく。そして、上記カメラ撮影部によって撮影された撮影画像から、上記データベースに登録されている物体の何れかを測定対象として指定する。そして、CPU(中央処理装置)によって、撮影画像を解析することにより、上記指定された測定対象毎に上記画像サイズを算出する。さらに、上記指定された測定対象の実サイズ(上記データベースに登録)に基づいて実サイズと画像サイズとの比の値を算出し、この比の値に基づいて上記データベースを参照して、上記カメラ撮影部から測定対象までの距離を算出する。
【0015】
また、上記光学式測距センサにおける他の方式として、CCD(電荷結合素子:Charge Coupled Device)カメラを用いて対象物体までの距離を測定する測距装置が特開平04‐249711号公報(特許文献2)に開示されている。
【0016】
上記特許文献2に開示された測距装置では、レーザ管からのレーザビームに基づいて、レンズ,コリメータレンズおよびこれらの間に配置した遮光板により断面がリング状のレーザ平行ビームを作り、ハーフミラーによって2次元CCDカメラの光軸を中心としたリング状のレーザ平行ビームとする。そして、このレーザ平行ビームによって照らされた測定平面を上記2次元CCDカメラで撮像し、画像における上記レーザ平行ビームのリング半径に基づいて上記2次元CCDカメラから上記測定平面までの距離を算出するようにしている。
【0017】
上記測距装置では、上記レーザ平行ビームを作成するために構成が複雑になっている。しかしながら、発光部と受光部との光学系のサイズが全く同一ではない場合には、平行光である必要はない。
【0018】
また、上記光学式測距センサにおける他の方式として、上記特許文献2に開示された測距装置の欠点を補うために、対象物体をリモコンのような発光物体に限定した電子カメラシステムが特開2001‐346090号公報(特許文献3)に開示されている。
【0019】
上記特許文献3に開示された電子カメラシステムでは、リモコンの第1LEDおよび第2LEDが発光すると電子カメラの撮像素子によって撮像されて上記第1,第2LEDの発光色が検出され、上記発光色が検出された画素の位置が記憶される。そして、撮像画面上における上記第1,第2LEDの間隔と実際の間隔とに基づいて、上記電子カメラから上記リモコンまでの距離を算出するようにしている。
【0020】
このように、上記電子カメラシステムでは、対象物体を上記リモコンのような発光物体に限定することによって、既知の発光間隔を利用して距離を測定するのである。
【0021】
しかしながら、上記各従来の光学式測距センサにおいては、以下のような問題がある。
【0022】
(a) 「三角測量+PSD」方式
この方式は、三角測量と呼ばれる幾何学原理を用いたものであり、原理上は容易に距離を計測することができる。ところが、実際には、図8に示すように、対象物体3との距離が遠くなるに連れて、上記受光位置の移動量(つまり、上記出力端子からの出力電流値の変動量)が急激に小さくなるため精度が低下する。このようなことを避けるためには、発光部1と受光部2の間隔を広げることが有効である。しかしながら、その場合には、光学式測距センサおよびその搭載機器の大型化を招いてしまい、小型の光学式測距センサを作成することは非常に困難である。
【0023】
例えば、現行の数cmサイズの測距センサでは、100cm以上の距離を高精度で計測することはできず、精度は20%以上である。
【0024】
さらに、上記距離の算出には、PSD2の受光領域上における受光位置が、相対位置としてではなく正確な絶対位置として必要となる。そのため、本光学式測距センサの性能は組み立て精度に大きく依存し、本光学式測距センサを搭載する機器側で初期位置補正を行わない場合には正確な距離測定ができないという問題がある。
【0025】
また、上記PSD2の受光領域上における受光位置は、受光スポットの光量重心を求めることによって得られる。その結果、対象物体によっては照射光の反射率が不均一であるため、PSD2の受光領域上における受光位置が不正確になり、対象物体までの距離を正確に測定することができないという問題がある。
【0026】
(b) 時間検出方式
この方式は、出射光の往復に要した時間を測定して上記対象物体までの距離を算出するため、上記「三角測量+PSD」方式のような精度上の欠点はない。しかしながら、光速度は非常に大きいため出射光の往復に要する時間は非常に短く、高性能な受光部(受光素子)と高速な演算回路とが必要になる。このことは、高価な半導体プロセスを要求するため、光学式測距センサ自体が高価なものとなってしまうという問題がある。
【0027】
(c) 特許文献1に開示されたサイズ測定装置を用いる方法
このサイズ測定装置を用いる方法においては、実サイズが分かっている複数の物体に関する実サイズと画像サイズとの比の値と物体までの距離との関係を予め登録しておく必要があり、登録者に非常な負担を強いることになるという問題がある。さらに、上記実サイズと画像サイズとの比の値と物体までの距離との関係を登録しておくための膨大なデータベースと、撮影画像の解析および距離算出を行うための高性能のコンピュータとが必要になる。そのため、小型の光学式測距センサを実現することはできないという問題がある。
【0028】
(d) 特許文献2に開示された測距装置
この測距装置においては、レーザ管からのレーザビームに基づいて、レンズ,コリメータレンズ,遮光板およびハーフミラーにより2次元CCDカメラの光軸を中心としたリング状のレーザ平行ビームを作るため、複雑な構成の光学システムが必要となる。そして、このような大規模な光学システムでは、家電製品に搭載することが不可能であるという問題がある。
【0029】
(e) 特許文献3に開示された電子カメラシステム
この電子カメラシステムにおいては、対象物体をリモコンのような発光物体に限定している。そのために、対象物体には常に発光物体を搭載しておく必要があるという致命的な欠点があり、汎用性が全くないという問題がある。
【0030】
また、上記何れの光学式測距センサの場合においても、一つの発光部からの光で対象物体を照射し、この対象物体からの反射光に基づいて上記対象物体までの距離を算出するようにしている。ところが、その場合には、発光部からの光が、略真正面に存在している上記対象物体を正しくトラッキングしているかを判定することができないため、上記対象物体までの距離を正確に求めることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2005‐164513号公報
【特許文献2】特開平04‐249711号公報
【特許文献3】特開2001‐346090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
そこで、この発明の課題は、対象物体との距離をより正確に求めることができ、性能が組み立て精度に大きく依存することがなく、小型で安価な光学式の距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するため、この発明の距離測定装置は、
対象物体に向かって光を出射する光源を含む投光部と、
上記対象物体によって反射された上記光源からの光を検出するイメージセンサを含む受光部と
を備え、
上記イメージセンサは、
上記対象物体からの反射光が入射されると共に、光量分布に応じた画像データを出力するピクセルアレイと、
上記ピクセルアレイからの画像データに基づいて、上記対象物体からの反射光で形成される画像に関する特定の寸法を求めると共に、この求めた寸法に基づいて上記対象物体までの距離を求めるディジタル信号処理装置と、
上記投光部の上記光源を駆動して光を出射させる駆動回路と
を搭載している
ことを特徴としている。
【0034】
上記構成によれば、上記光量分布の画像に関する特定の寸法に基づいて、上記対象物体までの距離が求められる。したがって、「三角測量+PSD」方式のように受光領域上での受光位置を求める場合に比して、上記対象物体の反射率が不均一であってもその影響を極小さくすることができる。したがって、上記対象物体までの距離をより正確に求めることができる。
【0035】
さらに、上記距離の算出には、上記ピクセルアレイ上における上記光量分布の位置を正確な絶対位置として検出する必要はなく、本距離測定装置の性能は組み立て精度に大きく依存することがない。
【0036】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される画像の大きさを、上記画像に関する特定の寸法として求める。
【0037】
この実施の形態によれば、画像の大きさを上記画像に関する特定の寸法として求めるので、容易に上記画像に関する特定の寸法を求めることができる。
【0038】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記投光部の光源から上記対象物体に向かって出射される光は光軸の垂直断面が略円形の光束を有しており、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される画像を含む最小直径を有する円を求め、この円の直径を上記画像の大きさとして求める。
【0039】
この実施の形態によれば、上記投光部の光源からの出射光の光軸の垂直断面を略円形とし、上記受光部の上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光の画像を含む最小直径を有する円の直径を上記画像の大きさとして求めるようにしている。したがって、上記対象物体として実サイズが分かっている物体を用いる必要が無く、上記受光部の上記ピクセルアレイ上に形成された画像が正しい円形でない場合であっても、容易に且つ安定して上記画像の大きさを求めることができる。
【0040】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記投光部は、上記受光部の一側に位置する第1投光部と上記受光部の他側に位置する第2投光部との2つの投光部を含み、
上記駆動回路は、上記第1投光部の光源と上記第2投光部の光源とが交互に光を出射するように上記両光源を駆動し、
上記ディジタル信号処理装置は、上記ピクセルアレイからの画像データに基づいて、上記対象物体からの反射光で交互に形成される2つの画像の間隔を、上記画像に関する特定の寸法として求める。
【0041】
この実施の形態によれば、上記2つの投光部の光源からの出射光によって、上記対象物体上に2つのスポットが形成される。したがって、この2つのスポットからの反射光によって形成される2つの画像夫々の受光量に基づいて、略真正面に存在している上記対象物体を正しくトラッキングしているか否かを判定することができる。その結果、上記対象物体までの距離をより正確に測定することができる。
【0042】
さらに、上記第1,第2投光部の光源が交互に光を出射し、上記ピクセルアレイ上には上記対象物体からの2つの反射光によって2つの画像が交互に形成される。したがって、各画像の位置を独立に特定することができ、上記ピクセルアレイ上の2つの画像が重なって分離できない場合にも対処することができる。
【0043】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される2つの画像の間隔を求める際の各画像の基準点を、上記夫々の画像の光量重心とする。
【0044】
この実施の形態によれば、上記ピクセルアレイ上に形成された2つの画像の間隔を、より正確に求めることができる。
【0045】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される2つの画像の間隔を求める際の各画像の基準点を、上記夫々の画像の面積重心とする。
【0046】
この実施の形態によれば、上記ピクセルアレイ上に形成された2つの画像の間隔を、より正確に求めることができる。
【0047】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記ディジタル信号処理装置は、上記ピクセルアレイからの画像データに基づいて、上記対象物体からの反射光で形成される2つの画像に関する受光量の積分値を比較し、両積分値の差が20%以上である場合は、一方の画像を形成する反射光と他方の画像を形成する反射光とは同一の対象物体からの反射光ではないと判定し、上記2つの画像の間隔の演算を中止する。
【0048】
この実施の形態によれば、上記ピクセルアレイ上に2つの画像を形成する反射光が、同一の対象物体からの反射光ではない場合の誤測定を、確実に防止することができる。
【0049】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記ディジタル信号処理装置は、上記第1投光部からの出射光に関する上記対象物体からの反射光で形成される第1画像の大きさに基づいて上記対象物体までの第1の距離を求めると共に、上記第2投光部からの出射光に関する上記対象物体からの反射光で形成される第2画像の大きさに基づいて上記対象物体までの第2の距離を求め、上記第1の距離の値と上記第2の距離の値と上記第1画像と上記第2画像との間隔に基づく第3の距離の値とを用いて、上記対象物体までの距離を求める。
【0050】
この実施の形態によれば、上記第1画像と上記第2画像との間隔に基づく上記対象物体までの第3の距離の値と、上記第1画像および上記第2画像の大きさに基づく上記対象物体までの2つの第1および第2の距離の値との、合計3つの距離の値を用いることによって、上記対象物体までの距離をさらに正確に求めることができる。
【0051】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記ディジタル信号処理装置は、上記第1の距離の値と上記第2の距離の値と上記第3の距離の値との算術平均値を、上記対象物体までの距離とする。
【0052】
この実施の形態によれば、上記第1画像および上記第2画像の大きさに基づく2つの上記第1および第2の距離の値と、上記第1画像と上記第2画像との間隔に基づく上記第3の距離の値との算術平均値を求めることにより、上記対象物体までのさらに正確な距離を簡単に得ることができる。
【0053】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記ディジタル信号処理装置は、上記第1の距離の値と上記第2の距離の値と上記第3の距離の値との中央値を、上記対象物体までの距離とする。
【0054】
この実施の形態によれば、上記第1画像および上記第2画像の大きさに基づく2つの上記第1および第2の距離の値と、上記第1画像と上記第2画像との間隔に基づく上記第3の距離の値との中央値を求めることにより、上記対象物体までのさらに正確な距離を簡単に得ることができる。
【0055】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記光源は、赤外発光ダイオードである。
【0056】
この実施の形態によれば、上記光源として赤外発光ダイオードを用いているので、上記光源からの出射光や上記対象物体からの反射光が人間の目に見えることが無い。したがって、上記出射光および上記反射光が目に見えることによる周囲の影響を無くすことができる。
【0057】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記イメージセンサは、相補型金属酸化膜半導体プロセスで作製されている。
【0058】
この実施の形態によれば、上記イメージセンサを相補型金属酸化膜半導体プロセスで作製しているので、上記ディジタル信号処理装置,上記駆動回路およびメモリ素子等を内蔵することが容易に可能になる。
【0059】
また、1実施の形態の距離測定装置では、
上記イメージセンサは、上記対象物体までの距離のキャリブレーションを行った結果の補正値を記録したメモリ素子を内蔵している。
【0060】
この実施の形態によれば、実際に上記対象物体までの距離を計測する際に、計測結果を上記メモリ素子に記録された補正値で補正することによって、より正確な上記距離を得ることができる。
【発明の効果】
【0061】
以上より明らかなように、この発明の距離測定装置は、対象物体によって反射された光源からの光によって、受光部のピクセルアレイ上に形成される光量分布の画像に関する特定の寸法に基づいて、上記対象物体までの距離を求めるので、「三角測量+PSD」方式のように受光領域上での受光位置を求める場合に比して、上記対象物体の反射率が不均一であってもその影響を極小さくすることができる。したがって、上記対象物体までの距離をより正確に求めることができる。
【0062】
さらに、上記距離の算出には、上記ピクセルアレイ上における上記光量分布の位置を正確な絶対位置として検出する必要がなく、本距離測定装置の性能が組み立て精度に大きく依存することはない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の距離測定装置における縦断面図である。
【図2】図1における発光側レンズを透過した赤外線の軌跡を示す概略図である。
【図3】図1におけるイメージセンサの概略構成を示す図である。
【図4】図1とは異なる距離測定装置における縦断面図である。
【図5】図4における第1,第2発光側レンズを透過した赤外線の軌跡を示す概略図である。
【図6】図4におけるイメージセンサの概略構成を示す図である。
【図7】「三角測量+PSD」方式による光学式測距センサの概略を示す図である。
【図8】図7における発光部から対象物体までの距離とPSDの出力値との対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0065】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の距離測定装置における縦断面図である。図1に示すように、本距離測定装置においては、赤外LED11と、DSP(Digital Signal Processor)回路およびドライバ回路を内蔵するイメージセンサ12とが、基板13上に設置されている。そして、基板13の表面における赤外LED11とイメージセンサ12との間には、赤外LED11から出射された赤外光が迷光となって直接イメージセンサ12に入射されるのを防止するために、迷光防止用の赤外遮光板14が配置されている。
【0066】
上記赤外LED11とイメージセンサ12とは、基板13上に設けられた配線パターン(図示せず)によって電気的に接続されている。さらに、イメージセンサ12は外部端子15に接続されており、イメージセンサ12が外部端子15を介して電源および外部回路と接続されて、本距離測定装置が使用される。
【0067】
そして、上記赤外LED11,イメージセンサ12,基板13および赤外遮光板14の全体が、金型成形によって、赤外線透過性黒樹脂16で封止されている。さらに、赤外線透過性黒樹脂16の上面はレンズ形状に成型されており、赤外LED11から出射された赤外線を対象物体に向けて集光する発光側レンズ17と上記対象物体からの反射光をイメージセンサ12の受光領域に向けて集光する受光側レンズ18とが形成されている。尚、発光側レンズ17および受光側レンズ18の焦点距離等は、個々に設定可能になっている。このような構成をとれば、必要最少限の部品数で距離測定装置を構成することができる。
【0068】
さらに、光学系の精度を上げたい場合には、複数のレンズを別途作成のうえ赤外線透過性黒樹脂16の内部や外部に組み込んでもよい。
【0069】
図2は、上記発光側レンズ17を透過した赤外線の軌跡を示す概略図である。図2において、イメージセンサ12に内蔵された上記ドライバ回路から供給された電力によって、赤外LED11が駆動される。そして、赤外LED11から出射された赤外線が発光側レンズ17を通して対象物体19上に収束され、対象物体19上に略円形のスポットが形成される。さらに、対象物体19上のスポット領域からの拡散反射によって周囲に放射された赤外光の一部が、受光側レンズ18を通してイメージセンサ12の上記受光領域上に結像する。
【0070】
図3に、上記イメージセンサ12の概略構成を示す。イメージセンサ12には、上記受光領域としての矩形のピクセルアレイ20と、ピクセルアレイ20の各ピクセルからの受光信号を処理するDSP回路21と、このDSP回路21による処理の際に用いる情報等を格納するメモリ22と、赤外LED11を駆動するドライバ回路23とが内蔵されている。
【0071】
上記イメージセンサ12の構成において、対象物体19で拡散反射された赤外光の一部が、受光側レンズ18を通してイメージセンサ12上のピクセルアレイ20上に結像すると、ピクセルアレイ20上に円形の光量分布24が形成される。ここで、ピクセルアレイ20は、例えば400ピクセル×400ピクセルで構成されている。そして、各ピクセル毎に光電変換が行われ、得られた画像データを表す受光信号がDSP回路21に送出されて演算され、円形の光量分布24の直径に相当するピクセル数が求められる。
【0072】
尚、上記ピクセルを複数のサブピクセルで構成し、サブピクセル処理を行うことによって、上記ピクセルよりも小さい解像度で、光量分布24の直径を精密に求めることが可能になる。
【0073】
こうして得られた光量分布24の直径の値は、本距離測定装置から対象物体19までの距離に応じて変化する。そこで、光量分布24の直径の値と本距離測定装置から対象物体19までの距離との対応関係を表す情報を対照値として予めメモリ22に格納しておく。そして、DSP回路21によって、上記得られた光量分布24の直径の値を、予めメモリ22に格納されている対照値と比較することにより、本距離測定装置から対象物体19までの距離を求めることができるのである。その際に、メモリ22に格納されている対照値を用いて内挿することによって、本距離測定装置から対象物体19までの距離の値をより詳細に求めることができる。
【0074】
以下、上記構成の距離測定装置による対象物体19までの距離算出の原理について説明する。
【0075】
本実施の形態における距離算出の原理は、カメラで物体を撮影した場合に撮像素子上の物体の大きさが被写体までの距離に依存することを利用するものである。例えば、人間の顔を撮影する場合、人物がカメラから離れるほど画面の中における顔のサイズ(つまり、画面に占める顔の割合)が変化する。すなわち、上記画面上の顔のサイズは人物までの距離が離れるにしたがって小さくなるので、上記画面上の顔のサイズと実際の顔のサイズとに基づいて、上記関係から人物までの距離を算出することができるのである。
【0076】
この場合、実際の顔のサイズとしては、既知である一般的な人間の顔の実際のサイズを用いることができる。ところが、本実施の形態の場合には、対象物体19が不特定であるため、対象物体19の実際のサイズから対象物体19までの距離を算出することができない。
【0077】
そこで、本実施の形態においては、上記対象物体19に対して光束の断面形状が円形である光線を照射する。その際に対象物体19にできる円形スポットのサイズは、予め発光部の光学系(レンズ径や放射角)によって決定できるため、そのスポットをある画角を有するイメージセンサ12で受光し、受光領域(ピクセルアレイ20)上でのサイズを測定することによって、対象物体19までの距離を算出することができるのである。
【0078】
例えば、発光部を構成する発光側レンズ17のレンズ径が1cmであり、照射角が3度である場合には、発光側レンズ17からLcm離れた位置に在る対象物体19上に形成されるスポット径Rは、
R=1+2*L*tan(1.5°)
となる。また、受光側レンズ18のレンズ径が1cmであり、画角が20度である場合には、受光側レンズ18からLcm離れた位置での撮影画像幅Wは、
W=1+2*L*tan(10°)
となる。
【0079】
ここで、W>Rであれば、上記ピクセルアレイ20上に、対象物体19上のスポットからの反射光に基づいて光量分布24が形成される。そして、この光量分布24の直径は距離Lに略反比例する。したがって、光量分布24の直径と距離Lとの関係式を求めれば、この関係式を用いることによって、光量分布24の直径が分かれば発光側レンズ17あるいは受光側レンズ18から対象物体19までの距離Lが分かることになる。
【0080】
そこで、上記関係式に基づいて、ピクセルアレイ20上に形成される円形の光量分布24の直径と発光側レンズ17あるいは受光側レンズ18から対象物体19までの距離Lとの対応値を幾つか算出してメモリ22に格納しておけば、実際にピクセルアレイ20上に形成された光量分布24の直径をDSP回路21によって測定することにより、この測定値を用いてメモリ22に格納されている2つの上記対応値を線形補完して、光量分布24の直径を呈する場合の発光側レンズ17あるいは受光側レンズ18から対象物体19までの距離Lを求めることができるのである。
【0081】
例えば、上記イメージセンサ12におけるピクセルアレイ20の解像度が水平方向に400ピクセルであると仮定すると、対象物体19が発光側レンズ17あるいは受光側レンズ18から50cmあるいは100cm離れた場合におけるピクセルアレイ20上の光量分布24の直径は、夫々、
50cmのとき、77.7ピクセル
100cmのとき、68.8ピクセル
となる。そこで、上記対応値(光量分布24の直径x,対象物体19の距離L)として、(77.7,50)および(68.8,100)をメモリ22に格納しておく。そして、DSP回路21によって測定された光量分布24の直径xが、77.7ピクセルと68.8ピクセルとの間にある場合には、
(L−50)/(100−50)=(x−68.8)/(77.7−68.8)
の関係が成立し、この式にDSP回路21で測定された直径x(ピクセル値)を代入することによって距離Lを求めることができるのである。
【0082】
ここで、上記メモリ22に格納しておく上記対応値のピクセル数は整数値になってはいないが、一般的なイメージセンサのサブピクセル技術を用いることによって、上述のような計算が可能である。
【0083】
尚、本実施の形態においては、上記対象物体19に対して照射する光として、赤外LED11からの赤外線を用いている。このように、人間の目には見えない赤外線を利用することが、周囲に影響を与えることがなく望ましい。
【0084】
また、上記受光側レンズ18によって受光された光はイメージセンサ12のピクセルアレイ20上に略円形に結像されて光量分布24が形成される。しかしながら、例えば対象物体19が均一な反射率を有していない等の対象物体19の状況によって、光量分布24の一部が欠けたり不明瞭な領域ができたりする場合がある。その場合には、本来ピクセルアレイ20上に形成される光量分布24の形状は円形であることが分かっているので、形成される光量分布24の領域総てを含む最小円の直径を最小二乗法等で算出することにより、本来の光量分布24の像が分かる。したがって、本来の光量分布24の直径から上記距離を求めることができるのである。
【0085】
上記従来の「三角測量+PSD」方式の場合には、PSDの受光領域上に形成された受光スポットの重心位置しか検知できないため、本実施の形態のごとくイメージセンサ12を用いる方式には性能的には及ばないのである。
【0086】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記赤外LED11から出射された赤外線によって対象物体19上に略円形のスポットが形成され、このスポット領域からの拡散反射によってイメージセンサ12のピクセルアレイ20上に略円形の光量分布24が形成される。そして、イメージセンサ12のDSP回路21によって光量分布24の直径が求められ、この光量分布24の直径に基づいて、対象物体19までの距離を求めるようにしている。
【0087】
したがって、「三角測量+PSD」方式のようにピクセルアレイ20上での光量分布24の位置を求める場合に比して、上記対象物体の反射率が不均一であってもその影響を極小さくすることができ、対象物体19までの距離をより正確に求めることができるのである。
【0088】
さらに、上記距離の算出には、ピクセルアレイ20上における光量分布24の位置を正確な絶対位置として検出する必要はない。したがって、本距離測定装置の測定性能は、組み立て精度に大きく依存することはない。
【0089】
・第2実施の形態
図4は、本実施の形態の距離測定装置における縦断面図である。図4に示すように、本距離測定装置においては、第1赤外LED31と第2赤外LED32とを、上記DSP回路およびドライバ回路を内蔵するイメージセンサ33の両側に位置させて、イメージセンサ33と共に基板34上に設置している。そして、基板34の表面における第1赤外LED31とイメージセンサ33との間、および、第2赤外LED32とイメージセンサ33との間には、赤外LED31,32から出射された赤外光が迷光となって直接イメージセンサ33に入射されるのを防止するために、迷光防止用の赤外遮光板35,36が配置されている。
【0090】
上記第1実施の形態の場合と同様に、上記第1赤外LED31とイメージセンサ33および第2赤外LED32とイメージセンサ33とは、基板34上に設けられた配線パターン(図示せず)によって電気的に接続されている。さらに、イメージセンサ33は外部端子37に接続されており、イメージセンサ33が外部端子37を介して電源および外部回路と接続されて、本距離測定装置が使用される。
【0091】
そして、上記第1赤外LED31,第2赤外LED32,イメージセンサ33,基板34,赤外遮光板35および赤外遮光板36の全体が、金型成形によって、赤外線透過性黒樹脂38で封止されている。さらに、赤外線透過性黒樹脂38の上面はレンズ形状に成型されており、第1赤外LED31から出射された赤外線を対象物体に向けて集光する第1発光側レンズ39と、第2赤外LED32から出射された赤外線を上記対象物体に向けて集光する第2発光側レンズ40と、上記対象物体からの反射光をイメージセンサ32の受光領域に向けて集光する受光側レンズ41とが形成されている。尚、第1発光側レンズ39,第2発光側レンズ40および受光側レンズ41の焦点距離等は、個々に設定可能になっている。このような構成をとれば、必要最少限の部品数で距離測定装置を構成することができる。
【0092】
さらに、光学系の精度を上げたい場合には、複数のレンズを別途作成のうえ赤外線透過性黒樹脂38の内部や外部に組み込んでもよい。
【0093】
図5は、上記第1発光側レンズ39および第2発光側レンズ40を透過した赤外線の軌跡を示す概略図である。図5において、イメージセンサ33に内蔵された上記ドライバ回路から供給された電力によって、第1赤外LED31および第2赤外LED32が駆動されて赤外線が交互に出射される。そして、第1赤外LED31から出射された赤外線が第1発光側レンズ39を通して対象物体42上に収束される一方、第2赤外LED32から出射された赤外線が第2発光側レンズ40を通して対象物体42上に収束されて、対象物体42上に2つの略円形のスポットが形成される。さらに、対象物体42上の2つのスポット領域からの拡散反射によって周囲に放射された夫々の赤外光の一部が、受光側レンズ41を通してイメージセンサ33の上記受光領域上に時間差を有して結像する。
【0094】
図6に、上記イメージセンサ33の概略構成を示す。イメージセンサ33には、上記受光領域としての矩形のピクセルアレイ43と、ピクセルアレイ43の各ピクセルからの受光信号を処理するDSP回路44と、DSP回路44による処理の際に用いる情報等を格納するメモリ45と、第1赤外LED31および第2赤外LED32を駆動するドライバ回路46とが内蔵されている。
【0095】
上記イメージセンサ33の構成において、対象物体42で拡散反射された2つの赤外光の一部が、受光側レンズ41を通してイメージセンサ33のピクセルアレイ43上に結像すると、ピクセルアレイ43上には円形の2つの光量分布47,48が形成される。ここで、ピクセルアレイ43は、例えば400ピクセル×400ピクセルで構成されている。そして、各ピクセル毎に光電変換が行われ、得られた受光信号がDSP回路44に送出されて演算され、円形の2つの光量分布47,48夫々の光量重心(以下、単に重心と言う)に該当する2つのピクセル座標が得られ、2つのピクセル座標間の距離に相当するピクセル数が求められる。
【0096】
尚、上記ピクセルを複数のサブピクセルで構成し、サブピクセル処理を行うことによって、本来整数であるピクセル座標から、上記ピクセルよりも小さい解像度で、上記2つのピクセル座標間の距離を精密に求めることが可能になる。
【0097】
こうして得られた2つの光量分布47,48の重心間の距離の値は、本距離測定装置から対象物体42までの距離に応じて変化する。そこで、2つの光量分布47,48の重心間の距離の値と本距離測定装置から対象物体42までの距離との対応関係を表す情報を対照値として予めメモリ45に格納しておくことにより、上記得られた2つの光量分布47,48の重心間の距離の値を、DSP回路44によって、予めメモリ45に格納されている対照値と比較することにより、本距離測定装置から対象物体42までの距離を求めることができるのである。その際に、メモリ45に格納されている対照値を用いて内挿することによって、本距離測定装置から対象物体42までの距離の値をより詳細に求めることができる。
【0098】
以下、上記構成の距離測定装置による対象物体42までの距離算出の原理について説明する。
【0099】
上記第1実施の形態においては1つの発光部のみを用いているが、本実施の形態においては上記イメージセンサ33の両側に発光部を配置している。本実施の形態においても、上記第1実施の形態の場合と同様の原理で対象物体42までの距離を算出可能である。
【0100】
すなわち、2つのLED31,32から出射された赤外光線は対象物42上に2つのスポットを形成する。それらから得られた反射光はイメージセンサ33のピクセルアレイ43上に2つの光量分布47,48を形成する。このピクセルアレイ43内における2つの光量分布47,48の間隔は、発光側レンズ39,40および受光側レンズ41から対象物体42までの距離が離れるに従って小さくなる。そこで、2つの光量分布47,48の間隔を算出することによって、上記距離を測定することができるのである。
【0101】
その場合、特定の距離における2つの光量分布47,48の間隔は、本距離測定装置の光学設計時に予め設定することができる。また、ピクセルアレイ43上に形成された実際の2つの光量分布47,48の間隔を求めるには、夫々の光量分布の光量重心や面積重心を利用することができる。
【0102】
例えば、2つのLED31,32の間隔が2cmであり、基板34の上面に対して垂直方向に赤外光を出射するように設定されている場合には、第1,第2発光側レンズ39,40からLcm離れた位置に在る対象物体42上に形成される2つのスポットの間隔は、
D=2cm
となる。また、受光側レンズ41のレンズ径が1cmであり、画角が15度である場合には、受光側レンズ41からLcm離れた位置での2つの撮影画像の間隔Wは、
W=1+2*L*tan(7.5°)
となる。
【0103】
ここで、W>Dであれば、上記ピクセルアレイ43上に、対象物体42上の2つのスポットからの反射光に基づいて光量分布47,48が形成される。そして、この2つの光量分布47,48の間隔は距離Lに略反比例する。したがって、2つの光量分布47,48の間隔と距離Lとの関係式を求めれば、この関係式を用いることによって、2つの光量分布47,48の間隔が分かれば発光側レンズ39,40あるいは受光側レンズ41から対象物体42までの距離Lが分かることになる。
【0104】
そこで、上記関係式に基づいて、ピクセルアレイ43上に形成される2つの光量分布47,48の間隔と発光側レンズ39,40あるいは受光側レンズ41から対象物体42までの距離Lとの対応値を幾つか算出してメモリ45に格納しておけば、実際にピクセルアレイ43上に形成された2つの光量分布47,48の間隔をDSP回路44によって測定することにより、この測定値を用いてメモリ45に格納されている2つの上記対応値を線形補完して、2つの光量分布47,48の間隔を呈する場合の発光側レンズ39,40あるいは受光側レンズ41から対象物体42までの距離Lを求めることができるのである。
【0105】
例えば、上記イメージセンサ33におけるピクセルアレイ43の解像度が水平方向に400ピクセルであると仮定すると、対象物体42が発光側レンズ39,40あるいは受光側レンズ41から50cmあるいは100cm離れた場合におけるピクセルアレイ43上の2つの光量分布47,48の間隔は、夫々、
50cmのとき、56.5ピクセル
100cmのとき、29.3ピクセル
となる。そこで、上記対応値(光量分布47,48間の間隔x,対象物体42の距離L)として、(56.5,50)および(29.3,100)をメモリ45に格納しておく。そして、DSP回路44によって測定された2つの光量分布47,48の間隔xが、56.5ピクセルと29.3ピクセルとの間にある場合には、
(L−50)/(100−50)=(x−29.3)/(56.5−29.3) …(10)
の関係が成立し、式(10)にDSP回路44で測定された間隔x(ピクセル値)を代入することによって距離Lを求めることができるのである。
【0106】
尚、上記イメージセンサ33におけるピクセルアレイ43上の2つの光量分布47,48が重なって分離できない場合にも対処するため、上述したように、第1赤外LED31および第2赤外LED32を交互に発光させて、光量分布47の重心と光量分布48の重心とを独立に測定するのである。
【0107】
また、上記イメージセンサ33におけるピクセルアレイ43上に形成される2つの光量分布47,48の夫々に、上記第1実施の形態における距離測定方法を適用することが可能である。そこで、光量分布47,48に上記第1実施の形態における距離測定方法を適用して、光量分布47の直径から得られる距離情報および光量分布48の直径から得られる距離情報を求め、本実施の形態によって光量分布47と光量分布48との間隔から得られる距離情報と合わせて3つの距離情報を用い、算術平均を行うことによってより正確な距離の値を得ることができる。あるいは、最大値と最小値との中央値をより正確な距離の値としてもよい。
【0108】
本実施の形態における距離測定装置自体のサイズは、上記第1実施の形態における距離測定装置の場合に比べて大きくなる。しかしながら、本実施の形態における距離測定装置によれば、2つの光量分布47,48の光量を比較することによって、2つのLED31,32から出射された赤外光線が対象物体42を正確に捉えているか否かを判定することができる。したがって、2つの光量分布47,48の光量が異なっている場合には、同一の対象物体42に光が照射されていないと判定して、エラー信号を出力することが可能になる。
【0109】
例えば、上記2つの光量分布47,48夫々における光量の積分値に20%以上の差があれば、第1発光側レンズ39および第2発光側レンズ40の略真正面に対象物体42が存在しない、つまりピクセルアレイ43上に2つの光量分布47,48を形成している反射光は同一の対象物体42からの反射光ではないと判断して計算を中止し、エラー信号を出力するのである。
【0110】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記イメージセンサ33の両側に位置する第1赤外LED31と第2赤外LED32とから交互に出射された赤外線によって対象物体42上に略円形の2つのスポットが形成され、この両スポット領域からの拡散反射によってイメージセンサ33のピクセルアレイ43上に略円形の2つの光量分布47,48が時間差を有して形成される。そして、イメージセンサ33のDSP回路44によって光量分布47,48の光量重心(面積重心)間の距離が求められ、この光量分布47,48間の距離に基づいて、対象物体42までの距離を求めるようにしている。
【0111】
したがって、「三角測量+PSD」方式の場合に比して、上記対象物体における反射率の不均一性の影響を極小さくすることができ、対象物体42までの距離をより正確に求めることができるのである。
【0112】
さらに、上記2つのLED31,32からの出射光によって、対象物体42上に略円形の2つのスポットが形成される。したがって、この2つのスポットからの反射光により形成される光量分布47,48夫々の光量に基づいて、略真正面に存在している対象物体42を正しくトラッキングしているか否かを判定することができる。
【0113】
さらに、上記距離の算出には、上記ピクセルアレイ43上における光量分布47,48の位置を正確な絶対位置として検出する必要はない。したがって、本距離測定装置の測定性能は、組み立て精度に大きく依存することはない。
【0114】
尚、上記イメージセンサにDSP回路やドライバ回路を内蔵させるためには半導体プロセスの整合性からCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサを用いることが最適である。
【0115】
また、上述したように、上記各実施の形態における距離測定装置においては、測定精度が発光部と受光部との間の組み立て精度に依存することはない。
【0116】
しかしながら、光学系のばらつきに起因して、光量分布(スポット)サイズばらつきや、2つの光量分布(スポット)間隔のばらつきが生ずるため、製造後にキャリブレーションを行なうことが望ましい。その場合、CMOSプロセスを用いている場合にはメモリ素子を内蔵することが容易であるため、補正データをメモリ素子に書き込んで利用することができる。すなわち、実際に対象物体19,42までの距離を測定する際に、測定結果を上記メモリ素子に記録された上記補正データで補正することによって、より正確な上記距離を得ることができるのである。
【0117】
尚、上記各実施の形態においては、1つの特定距離を算出する場合を例示するためにメモリ22,45には2つの対応値を格納している。しかしながら、言うまでもなく、実際には種々の距離を算出可能なように3以上の対応値を格納しておく。
【0118】
また、上記各実施の形態においては、光源としての赤外LED11,31,32と発光側レンズ17,39,40とを含んで上記投光部を構成している。また、イメージセンサ12,33と受光側レンズ18,41とを含んで上記受光部を構成している。しかしながら、この発明の光源は、赤外LEDに限定されるものではなく、赤外以外のLEDであっても差し支えなく、レーザ素子を用いても構わない。
【符号の説明】
【0119】
11,31,32…赤外LED、
12,33…イメージセンサ、
13,34…基板、
14,35,36…赤外遮光板、
15,37…外部端子、
16,38…赤外線透過性黒樹脂、
17,39,40…発光側レンズ、
18,41…受光側レンズ、
19,42…対象物体、
20,43…ピクセルアレイ、
21,44…DSP回路、
22,45…メモリ、
23,46…ドライバ回路、
24,47,48…光量分布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体に向かって光を出射する光源を含む投光部と、
上記対象物体によって反射された上記光源からの光を検出するイメージセンサを含む受光部と
を備え、
上記イメージセンサは、
上記対象物体からの反射光が入射されると共に、光量分布に応じた画像データを出力するピクセルアレイと、
上記ピクセルアレイからの画像データに基づいて、上記対象物体からの反射光で形成される画像に関する特定の寸法を求めると共に、この求めた寸法に基づいて上記対象物体までの距離を求めるディジタル信号処理装置と、
上記投光部の上記光源を駆動して光を出射させる駆動回路と
を搭載している
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の距離測定装置において、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される画像の大きさを、上記画像に関する特定の寸法として求める
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の距離測定装置において、
上記投光部の光源から上記対象物体に向かって出射される光は光軸の垂直断面が略円形の光束を有しており、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される画像を含む最小直径を有する円を求め、この円の直径を上記画像の大きさとして求める
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の距離測定装置において、
上記投光部は、上記受光部の一側に位置する第1投光部と上記受光部の他側に位置する第2投光部との2つの投光部を含み、
上記駆動回路は、上記第1投光部の光源と上記第2投光部の光源とが交互に光を出射するように上記両光源を駆動し、
上記ディジタル信号処理装置は、上記ピクセルアレイからの画像データに基づいて、上記対象物体からの反射光で交互に形成される2つの画像の間隔を、上記画像に関する特定の寸法として求める
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の距離測定装置において、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される2つの画像の間隔を求める際の各画像の基準点を、上記夫々の画像の光量重心とする
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
請求項4に記載の距離測定装置において、
上記ディジタル信号処理装置は、上記対象物体からの反射光で形成される2つの画像の間隔を求める際の各画像の基準点を、上記夫々の画像の面積重心とする
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6までの何れか一つに記載の距離測定装置において、
上記ディジタル信号処理装置は、上記ピクセルアレイからの画像データに基づいて、上記対象物体からの反射光で形成される2つの画像に関する受光量の積分値を比較し、両積分値の差が20%以上である場合は、一方の画像を形成する反射光と他方の画像を形成する反射光とは同一の対象物体からの反射光ではないと判定し、上記2つの画像の間隔の演算を中止する
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項8】
請求項4から請求項7までの何れか一つに記載の距離測定装置において、
上記ディジタル信号処理装置は、上記第1投光部からの出射光に関する上記対象物体からの反射光で形成される第1画像の大きさに基づいて上記対象物体までの第1の距離を求めると共に、上記第2投光部からの出射光に関する上記対象物体からの反射光で形成される第2画像の大きさに基づいて上記対象物体までの第2の距離を求め、上記第1の距離の値と上記第2の距離の値と上記第1画像と上記第2画像との間隔に基づく第3の距離の値とを用いて、上記対象物体までの距離を求める
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の距離測定装置において、
上記ディジタル信号処理装置は、上記第1の距離の値と上記第2の距離の値と上記第3の距離の値との算術平均値を、上記対象物体までの距離とする
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項10】
請求項8に記載の距離測定装置において、
上記ディジタル信号処理装置は、上記第1の距離の値と上記第2の距離の値と上記第3の距離の値との中央値を、上記対象物体までの距離とする
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までの何れか一つに記載の距離測定装置において、
上記光源は、赤外発光ダイオードである
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までの何れか一つに記載の距離測定装置において、
上記イメージセンサは、相補型金属酸化膜半導体プロセスで作製されている
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12までの何れか一つに記載の距離測定装置において、
上記イメージセンサは、上記対象物体までの距離のキャリブレーションを行った結果の補正値を記録したメモリ素子を内蔵している
ことを特徴とする距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42374(P2012−42374A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184828(P2010−184828)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】