説明

路面切断用ブレードの給水構造

【課題】 路面切断用ブレードへの冷却水供給において、冷却水の供給位置をコントロールして切断面に集中させ、冷却水の跳ね返りや飛び散りをなくして、冷却水の損失を低減するとともに、ブレードの切断効率を向上させる。
【解決手段】 装置本体1のブレードハウジング3に路面切断用のブレード2を回転駆動可能に設けるとともにブレード2への冷却水供給機構を設けた路面切断装置におけるブレードの基板2bの回転軸取付部分に基板2bとともに回転するフランジ6を設け、このフランジ6の基端部に複数個の通水孔6aを放射状に形成し、前記フランジ6の円筒状部分の内部に嵌合する給水口付き蓋材8を回転阻止部材10を介してブレードハウジング3に取り付け、この蓋材の給水口8aから前記フランジ6の複数個の通水孔6aのうち特定の位置の通水孔のみに連通する切欠部7aを蓋材に形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地下埋設物の工事や道路舗装などの際に舗装路面を切断するための路面切断装置におけるブレードへの給水構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、下水道工事や地下ガス配管工事、道路補修などのために、舗装路面を線状に切断していく路面切断装置が実用されている。この路面切断装置は、装置本体に路面切断用のブレードを回転駆動可能に設け、ブレードを高速回転させて路面中に食い込ませながら切断していくというものがその基本的な構成である。
【0003】この路面切断装置には、切断加工の際のブレードの冷却に水を供給する湿式切断装置と、冷却水を使わない乾式切断装置とがある。湿式切断装置は、路面に流れ出る水や切粉の回収作業が厄介であるという欠点があるが、切断効率が良いという利点があるので、広く使用されている。
【0004】ところで、ブレードによる路面切断において、切断性能を左右する重要な要因として、ブレードの冷却、とくにブレード外周に配設されたセグメントチップと路面との接触によって発生する摩擦熱の冷却と、切粉の排出がある。このブレードの冷却と切粉の排出は、切断中のブレードに向けて冷却水を供給し、ブレードの基板とセグメントチップの冷却および切粉の排出を行うようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のブレードに対する冷却水の供給は、ブレード基板の回転軸取付部分に設けたフランジの開放された溝に冷却水を吹き付ける方法や、冷却水をブレード主軸の内部を通しフランジに形成された溝から供給する方法により行われている。しかしながら、このような方法では、切断位置にないブレード後方や上方にも冷却水が流れ出て、冷却水の損失が大きい。また、冷却水がフランジに当たって跳ね返ったり飛び散ったりして冷却水の損失が大きい。
【0006】本発明において解決すべき課題は、路面切断用ブレードへの冷却水供給において、冷却水の供給位置をコントロールして切断面に集中させ、冷却水の跳ね返りや飛び散りをなくして、冷却水の損失を低減するとともに、ブレードの切断効率を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、装置本体のブレードハウジングに路面切断用のブレードを回転駆動可能に設けるとともにブレードへの冷却水供給機構を設けた路面切断装置におけるブレードの給水構造であって、ブレードの基板の回転軸取付部分に基板とともに回転するフランジを設け、このフランジの基端部に複数個の通水孔を放射状に形成し、前記フランジの円筒状部分の内部に嵌合する給水口付き蓋材を回転阻止部材を介してブレードハウジングに取り付け、この蓋材の給水口から前記フランジの複数個の通水孔のうち特定の位置の通水孔のみに連通する切欠部を蓋材に形成したことを特徴とする。
【0008】このような給水構造とすることにより、ブレード基板のフランジの蓋材に設けられた給水口から給水される冷却水は、蓋材に形成された切欠部からフランジの基端部に形成された放射状の通水口のうち切断位置に通じる特定の通水口のみに供給され、切断位置以外の部分に不要な冷却水が流出することがなくなる。また、冷却水は蓋材の給水口からフランジ内部に給水されるので、従来のように冷却水がフランジから跳ね返ったり飛び散ったりすることはなく、冷却水の損失が防止される。さらに、冷却水の減少によって切断加工時に発生する汚泥の量も減少し、作業環境を良好にするとともに汚泥除去作業を軽減することができる。
【0009】前記蓋材は、回転阻止部材を介してブレードハウジングに取り付けているので、蓋材はブレードと共回りすることはなく、蓋材の内面側の周方向のうち、切断加工時の切断位置を指向する範囲に切欠部を形成すれば、ブレードが回転していても、蓋材の切欠部からフランジの通水口のうち切断位置に通じる特定の通水口のみに給水することができる。
【0010】さらに、前記蓋材を2個の円盤状部材を連結した構造とし、フランジの円筒状部分の内部に嵌合する内側円盤状部材に前記切欠部を形成し、外側円盤状部材に前記切欠部に通じる給水口を形成すれば、切欠部の機械加工が容易になるとともに、内側円盤状部材の非切欠部が、フランジの通水口のうち切断位置以外の通水口に冷却水が流出しないようにするためのシールの機能を果たすことになる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態における路面切断装置の概略を示す外観斜視図であり、図2はブレードハウジング内のブレードの取付構造を示す概略断面図である。
【0012】路面切断装置の本体1は、路面上を転動する4個の車輪1aを備え、本体1の後端側に設けたグリップ1bを作業者が握って押すことで路面上を移動させることができる。本体1には、進行方向の正面側から見て左側面の下端側に設けたブレードハウジング3内に一枚の切断用のブレード2を回転駆動可能に取り付けている。装置各部の操作はコントローラー付きの操作盤1dによって行う。
【0013】ブレード2は、ブレード基板2bの外周面にダイヤモンド砥粒などからなる多数のセグメントチップ2aを固着させたもので、本体1に内蔵したモータおよび減速機などを含む駆動装置1cに連接した支軸5をブレード基板2bの中央に連結することによって、所定の回転速度で回転駆動可能としたものである。ブレード2への冷却水の供給は、一端を供給源(図示せず)に接続するとともに他端を後述する給水機構に連結した給水管4によって行う。
【0014】図3はブレードへの給水構造を示す断面図であり、図4はブレード片面側からみた分解斜視図である。
【0015】図3および図4において、6はブレード基板2bの両面の中央部に取り付けたフランジであり、ブレード基板2bとともに回転する。フランジ6の円筒状部分の基端部には14個の通水口6aが放射状に形成されている。9はブレード6に対する蓋材であり、内側円盤状部材7と外側円盤状部材8の2個の円盤状部材を連結したものである。
【0016】蓋材9の内側円盤状部材7は、フランジ6の円筒状部分の内部に嵌合する寸法形状であり、その周方向の一部に切欠部7aを形成している。外側円盤状部材8は、フランジの外面を覆う寸法形状であり、内側円盤状部材7の切欠部7aに通じる給水口8aを形成している。内側円盤状部材7と外側円盤状部材8はビス9aによって連結し、回転阻止部材としてのボルト10を介してブレードハウジング3に固定することにより、蓋材9は回転しない状態でフランジ6に取り付けることができる。
【0017】図5は切断位置への集中給水の説明図であり、フランジの片面側について外側円盤状部材8を外した状態で示している。外側円盤状部材8の給水口8aからの冷却水は内側円盤状部材7の切欠部7aに供給され、この切欠部7aに連通した通水口6aのみを通じてブレード基板2bおよびセグメントチップ2aに冷却水が供給される。内側円盤状部材7の切欠部7aがない部分の周面はフランジ6の円筒時部分の内周面に密着しているので、この部分にある通水口から冷却水が流出することはない。
【0018】図6は蓋材の回転阻止機構の別の実施形態を示す図ある。外側円盤状部材8にピン8bを設け、ブレードハウジング3に回転阻止部材としての溝型部材11を取り付け、ブレードハウジング3を上方からスライドさせて外側円盤状部材8のピン8bを溝型部材11に嵌め込むことによって、蓋材9が回転しないようにすることができる。
【0019】
【発明の効果】基端部に複数個の通水孔を放射状に形成したフランジをブレードの基板に設けた前記フランジの円筒状部分の内部に嵌合する給水口付き蓋材を回転阻止部材を介してブレードハウジングに取り付け、この蓋材の給水口からフランジの複数個の通水孔のうち特定の位置の通水孔のみに連通する切欠部を蓋材に形成した給水構造とすることにより、蓋材の給水口からの冷却水は蓋材に形成された切欠部を通じてフランジに形成された放射状の通水口のうち切断位置に通じる特定の通水口のみに供給され、切断位置以外の部分に不要な冷却水が流出することがなくなる。また、冷却水は蓋材の給水口からフランジ内部に給水されるので、従来のように冷却水がフランジから跳ね返ったり飛び散ったりすることはなく、冷却水の損失が防止される。さらに、冷却水の減少によって切断加工時に発生する汚泥の量も減少し、作業環境を良好にするとともに汚泥除去作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態における路面切断装置の概略を示す外観斜視図である。
【図2】 ブレードハウジング内のブレードの取付構造を示す概略断面図である。
【図3】 ブレードへの給水構造を示す断面図である。
【図4】 ブレード片面側からみた給水構造の分解斜視図ある。
【図5】 切断位置への集中給水の説明図である。
【図6】 蓋材の回転阻止機構の別の実施形態を示す図ある。
【符号の説明】
1 本体
1a 車輪
1b グリップ
1c 駆動装置
1d 操作盤
2 ブレード
2a セグメントチップ
2b ブレード基板
3 ハウジング
4 給水管
5 支軸
6 フランジ
6a 通水口
7 内側円盤状部材
7a 切欠部
8 外側円盤状部材
8a 給水口
8b ピン
9 蓋材
9a ビス
10 ボルト
11 溝型部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 装置本体のブレードハウジングに路面切断用のブレードを回転駆動可能に設けるとともにブレードへの冷却水供給機構を設けた路面切断装置におけるブレードの給水構造であって、ブレードの基板の回転軸取付部分に基板とともに回転するフランジを設け、このフランジの基端部に複数個の通水孔を放射状に形成し、前記フランジの円筒状部分の内部に嵌合する給水口付き蓋材を回転阻止部材を介してブレードハウジングに取り付け、この蓋材の給水口から前記フランジの複数個の通水孔のうち特定の位置の通水孔のみに連通する切欠部を蓋材に形成した路面切断用ブレードの給水構造。
【請求項2】 前記蓋材を内側円盤状部材と外側円盤状部材の2個の円盤状部材を連結した構造とし、前記フランジの円筒状部分の内部に嵌合する内側円盤状部材に前記切欠部を形成し、外側円盤状部材に前記切欠部に通じる給水口を形成した請求項1記載の路面切断用ブレードの給水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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