説明

路面状況検出装置および路面状況監視システム

【課題】導入コストを低減すると共に、車両側において路面状況を精度よく検出することができる路面状況検出装置および路面状況監視システムを提供すること。
【解決手段】タイヤに設けられたトランスポンダ3と、車両本体に設けられ、トランスポンダ3と通信可能なコントローラ4とを備えた路面状況監視システム1において、トランスポンダ3は、タイヤに固定され、路面上を走行するタイヤの振動を電気信号に変換する圧電素子13と、圧電素子13で変換された電気信号をコントローラ4に無線送信するアンテナ11とを備え、コントローラ4は、トランスポンダ3から受信した電気信号の周波数に基づいて路面状況情報を取得する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等が走行する路面の路面状況を検出する路面状況検出装置および路面状況監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車が走行する路面の路面状況を検出する路面状況検出装置として、路面に固定されて路面状況を検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この路面状況検出装置は、道路内部にマイクロフォンを設置し、マイクロフォンにより道路と自動車のタイヤとの接触音を電気信号に変換して検出し、この検出した電気信号から周波数スペクトルを抽出する。そして、抽出した周波数スペクトルを予め装置内に登録された複数種類の路面状況に対応する周波数スペクトルと比較することにより、路面状況を検出している。
【特許文献1】特開2002−256521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の路面状況検出装置においては、道路内部に固定された装置によって路面状況を検出するものであるため、局所的な情報しか得ることができず、全体的な情報を得るためには、全ての道路に設ける必要があり導入コストが増加するという問題があった。この場合、全体的な情報を得るために車両本体にマイクロフォンを設けて走行中に路面状況を検出する構成が考えられるが、道路内部に設ける構成と異なり空気中を伝搬する雑音により路面状況を正しく検出することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、導入コストを低減すると共に、車両側において路面状況を精度よく検出することができる路面状況検出装置および路面状況監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の路面状況検出装置は、タイヤに固定され、路面上を走行する前記タイヤの振動を電気信号に変換する圧電素子と、車両本体に設けられた車両側装置に対して、前記圧電素子で変換された電気信号を無線送信する通信部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の路面状況監視システムは、タイヤに設けられた路面状況検出装置と、車両本体に設けられ、前記路面状況検出装置と通信可能な車両側装置とを備えた路面状況監視システムにおいて、前記路面状況検出装置は、前記タイヤに固定され、路面上を走行する前記タイヤの振動を電気信号に変換する圧電素子と、前記圧電素子で変換された電気信号を前記車両側装置に無線送信する通信部とを備え、前記車両側装置は、前記路面状況検出装置から受信した電気信号の周波数に基づいて路面状況情報を取得することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、走行中に路面状況に応じてタイヤが加振されてタイヤが振動し、このタイヤの振動に応じた周期で圧電素子が振動して、路面状況情報を含んだ周期の電気信号が発生する。圧電素子で発生した電気信号は通信部により車両側装置に無線送信されるため、車両本体側の車両側装置において、この電気信号に基づいて路面状況情報を取得し、路面状況を監視することができる。したがって、道路に路面状況を検出する装置を設ける構成と比較して導入コストを低減することができる。
また、路面状況に応じて加振されたタイヤの振動を直に電気信号に変換しているため、路面とタイヤとの接触音を電気信号に変換して路面状況を検出する構成と比較して空気中を伝搬する雑音などが発生しないため、精度よく路面状況を検出することができる。
【0008】
また本発明は、上記路面状況検出装置において、前記通信部は、前記圧電素子で変換された電気信号の電力を利用して前記車両側装置に送信することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、電気信号の電力を利用して自立的に送信するので、搬送波を電気信号により変調するための変調用の回路が不要となり、より簡易な回路構成にすることができる。
【0010】
また本発明は、上記路面状況検出装置において、前記通信部は、前記車両側装置から受信した搬送波を前記圧電素子で変換された電気信号で変調して送信することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、電気信号で変調した搬送波が車両側装置に送信されるため、電気信号を車両側装置に安定的に送信することができる。
【0012】
また本発明の路面状況検出装置は、タイヤに固定され、路面上を走行する前記タイヤの振動を電気信号に変換する圧電素子と、前記圧電素子に変換された電気信号の周波数を路面状況情報に変換する制御回路と、前記圧電素子で変換された電気信号を整流し蓄電する蓄電部とを備え、前記制御回路は前記蓄電部の電圧により動作することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、圧電素子から発生した電気信号が整流されて蓄電部に蓄電され、制御回路の電源電圧として利用されるので、バッテリを設けることなく路面状況検出装置において路面状況を算出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導入コストを低減すると共に、車両側において路面状況を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る路面状況監視システムの全体構成図である。図2は、圧電素子の固定状態を示す図である。なお、本実施の形態に係る路面状況監視システムにおいては、本発明を自動車に適用して説明するが、自動車に限定されるものではなく、飛行機、自動二輪車、電動式自転車等のタイヤにより路面上を走行するものであれば、どのようなものに適用してもよい。
【0016】
図1に示すように、路面状況監視システム1は、自動車のタイヤが走行する路面状況を検出して車両本体側で路面状況を監視するために用いられるものであり、タイヤ内に設けられた路面状況検出装置としてのトランスポンダ3と、車両本体に設けられ、トランスポンダ3に無線接続された車両側装置としてのコントローラ4とから構成されている。路面状況監視システム1は、トランスポンダ3にタイヤの振動に応じた周期で振動する圧電素子13を設け、この圧電素子13の振動により発生した電圧変化である電気信号に基づいて路面状況を監視している。
【0017】
コントローラ4は、タイヤの走行する路面状態を特定し、運転者に対する警告メッセージのために評価するものであり、アンテナ7から約2.4GHzの無変調の搬送波をトランスポンダ3に送信すると共に、無変調の搬送波を圧電素子13の電気信号で変調したものをトランスポンダ3から受信する。また、コントローラ4は、トランスポンダ3において変調された搬送波の変調成分を抽出し、抽出した変調成分に基づいてタイヤの路面状況情報を算出する。
【0018】
トランスポンダ3は、タイヤの振動を電気信号に変換して、この電気信号によりコントローラ4から送信された無変調の搬送波を変調してコントローラ4に返信するものであり、通信部としてのアンテナ11およびアンテナ11に接続されたFET12(Field Effect Transistor)を有している。FET12は、MOS形であり、ドレインにはアンテナ11の給電点が接続され、ゲートには圧電素子13の一方の電極が接続され、ソースには圧電素子13の他方の電極が接続されている。また、FET12のゲート・ソース間には、圧電素子13と並列にバイアス抵抗14が接続されている。
【0019】
FET12は、圧電素子13から出力される振動周期に応じて変化する電気信号がゲートに印加されてゲート・ソース間の抵抗が変化し、このFET12のゲート・ソース間の抵抗の変化によりコントローラ4から送信された無変調の搬送波が変調される。このように、圧電素子13から発生した電気信号で搬送波が変調される。
【0020】
図2に示すように、圧電素子13は、タイヤ21とホイール22とにより区画された空間に位置し、タイヤ21のトレッド面21aの裏側に台座24を介して固定されている。すなわち、圧電素子13は、自動車の走行中に路面状況に応じてタイヤ21が加振されて振動するため、このときのタイヤ21の固有振動の振動周期に合わせて振動する。
【0021】
また、圧電素子13は、バイモルフ型であり、弾性プレート16の両面を一対のピエゾプレート17a、17bにより両側から接合して構成されており、振動によりピエゾプレート17aと弾性プレート16との間、およびピエゾプレート17bと弾性プレート16との間にそれぞれに電圧を発生する。このとき、圧電素子13の振動の振動周期と電気信号の振動周期は一致している。
【0022】
したがって、このタイヤ21の固有振動の周波数(電気信号の周波数)を測定することで、路面状況を特定することが可能となる。図1において、FET12のソース・ドレイン間のインピーダンスRDSは、圧電素子13で発生する電圧をV(t)、ピンチオフ電圧をV、飽和ドレイン電流をIDSSとしてV(t)>Vのとき、
【数1】

で与えられる。
【0023】
図1でみると、FET12はアンテナ11の負荷になっており、後方散乱断面積σは、アンテナ11のインピーダンスをR、搬送波の波長をλ、アンテナ11のゲインをGとすると、
【数2】

となる。
【0024】
この後方散乱断面積σを用いて、コントローラ4の受信電力Pは、トランスポンダ3の送信電力をP、コントローラ4のアンテナ7のゲインをG、トランスポンダ3のアンテナ11からの距離をdとすると、
【数3】

となり、圧電素子13で発生する電圧変化から、コントローラ4の受信電力が変化することがわかる。このことから、コントローラ4の受信電力の変調成分を抽出し、変調成分の周波数を測定することで、路面状況がわかることとなる。
【0025】
このような測定原理を用いた路面状況監視システム1において、コントローラ4からトランスポンダ3に送信された無変調の搬送波は、トランスポンダ3の圧電素子13で発生した電気信号により変調されてコントローラ4に送信される。コントローラ4で受信された変調後の搬送波は、図示しないフィルタにより変調成分が抽出される。
【0026】
抽出された変調成分は、圧電素子13の振動周波数を表している。制御部は、この抽出した圧電素子13の振動周波数と路面状況情報とを対応付けしたテーブルを参照して路面状況情報を算出している。なお、本実施の形態においては、圧電素子13の振動周波数と路面状況情報とを対応付けしたテーブルを参照する構成としたが、圧電素子13の振動周波数と路面状況情報とを対応付けしたマップや、プログラムに組み込まれた算出式により路面状況情報を算出してもよい。
【0027】
また、路面状況情報とは、乾燥路面、湿潤路面、凍結路面、積雪路面、凹凸路面等の具体的な路面状況を示す情報でもよいし、摩擦係数等の間接的に路面状況を示す情報であってもよい。
【0028】
以上のように、本実施の形態に係る路面状況監視システム1によれば、走行中に路面状況に応じてタイヤが加振されてタイヤが振動し、このタイヤの振動に応じた周期で圧電素子13が振動して、路面状況情報を含んだ周期の電気信号が発生する。圧電素子13で発生した電気信号はトランスポンダ3からコントローラ4に無線送信されるため、車両本体側のコントローラ4において、この電気信号に基づいて路面状況情報を取得し、路面状況を監視することができる。したがって、道路に路面状況を検出する装置を設ける構成と比較して導入コストを低減することが可能となる。
また、路面状況に応じて加振されたタイヤの振動を直に電気信号に変換しているため、路面とタイヤとの接触音を電気信号に変換して路面状況を検出する構成と比較して空気中を伝搬する雑音などが発生しないため、精度よく路面状況を検出することができる。
【0029】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る路面状況監視システムは、上述した第1の実施の形態に係る路面状況監視システムと搬送波を用いない点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。図3は、本発明の第2の実施の形態に係る路面状況監視システムの全体構成図である。
【0030】
図3に示すように、トランスポンダ33は、通信部としてアンテナ11およびアンテナ11に接続された圧電素子13を有している。圧電素子13は、一方の電極がアンテナ11の給電点に接続し、他方の電極がグランドに接地されている。この路面状況監視システム31においては、タイヤの振動周期に合わせた周期で圧電素子13が振動すると、アンテナ11から電気信号自体の電力を利用して当該電気信号の有する周波数の電波が放射される。コントローラ34で受信された電波は、図示しない制御部内で振動周波数が測定される。制御部は、圧電素子13の振動周波数とタイヤ内の路面状況情報とを対応付けしたテーブルを参照してタイヤの路面状況情報を算出する。
【0031】
以上のように、本実施の形態に係る路面状況監視システム31によれば、圧電素子13の出力する電気信号の電力を利用して自立的に電波を送信するのでトランスポンダ33に搬送波を圧電素子13の出力信号で変調するための変調用の回路が不要となり、より簡易な回路構成にすることが可能となる。
【0032】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本発明の第3の実施の形態に係る路面状況監視システムは、上述した第1の実施の形態に係る路面状況監視システムとトランスポンダにおいてタイヤ内の路面状況情報を算出する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。
【0033】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る路面状況監視システムの全体構成図である。図5は、電気信号および電源電圧の出力波形を示す図である。図6は、図5における電源電圧の増加サイクルの説明図である。なお、図5における波形W1は圧電素子の電気信号の振動波形、波形W2は電解コンデンサの電源電圧の波形、ラインL1は規定電圧をそれぞれ示している。図6における波形W3は圧電素子の電気信号の振動波形、波形W4は電解コンデンサの電源電圧の波形をそれぞれ示している。
【0034】
図4に示すように、路面状況監視システム41は、トランスポンダ43において路面状況情報を算出し、これをパルス信号に変換して出力する制御回路46を設け、この制御回路46を圧電素子13から発生した電気を充電した直流電源で動作させることにより、路面状況を監視している。
【0035】
コントローラ44は、アンテナ7から約2.4GHzの無変調の搬送波をトランスポンダ43に送信すると共に、無変調の搬送波を制御回路46から出力されたパルス信号で変調したものをトランスポンダ43から受信する。また、コントローラ44は、トランスポンダ43で変調された搬送波から変調成分を抽出し、抽出した変調成分から路面状況情報を取得する。
【0036】
トランスポンダ43は、通信部としてアンテナ11およびアンテナ11に接続されたFET12を有している。FET12のドレインにはアンテナ11の給電点が接続され、ゲートには制御回路46が接続され、ソースにはバイアス抵抗14を介して制御回路46が接続されている。FET12は、制御回路46から出力されるパルス信号の周期に応じた電圧がゲートに印加されゲート・ソース間の抵抗が変化し、このFET12のゲート・ソース間の抵抗の変化によりコントローラ44から送信された無変調の搬送波が変調される。
【0037】
制御回路46には、圧電素子13から出力された電気信号の周波数を測定する周波数測定部47が接続されており、周波数測定部47には、オペアンプ51の出力端子が接続されている。オペアンプ51は、反転入力側の入力端子が電解コンデンサ52の一方の電極に接続され、非反転入力側の入力端子が電解コンデンサ52の他方の電極に接続されている。
【0038】
また、オペアンプ51の2つの入力端子間には、電解コンデンサ52と並列に圧電素子13の一対の電極がそれぞれ接続され、オペアンプ51の反転入力端子と圧電素子13の一方の電極との間には、直流カットのコンデンサ56が設けられ、オペアンプ51の非反転入力端子と圧電素子13の他方の電極との間には、直流カットのコンデンサ57が設けられている。圧電素子13と電解コンデンサ52との間には、4つの整流ダイオード54から構成された整流回路53が設けられている。
【0039】
そして、図5に示すように、タイヤの振動に応じた周期で圧電素子13が振動すると、電気信号W1が整流回路53を通じて電解コンデンサ52で蓄電される。蓄電により電解コンデンサ52の電源電圧W2が規定電圧L1に達すると、制御回路46、周波数測定部47、オペアンプ51の動作が開始される。より具体的には、図6に示すように、タイヤの回転に応じて圧電素子13が振動し、電源電圧W4は周期的に上昇する。
【0040】
また、図4に戻り、制御回路46には、記憶部48が接続されている。記憶部48は、制御回路46の制御プログラム、圧電素子13の振動周波数と路面状況情報とを対応付けしたテーブル等が記憶されており、これらは制御回路46に適宜読み出される。
【0041】
制御回路46は、電解コンデンサ52から供給される電源電圧が規定電圧に達すると動作し、記憶部48からテーブルを読み出し、周波数測定部47により測定された圧電素子13の振動周波数に基づいて路面状況情報を算出し、これをパルス信号に変換してFET12に出力する。FET12に出力されたパルス信号は、上記したように、搬送波の変調に利用される。なお、請求項に記載の蓄電部は本実施の形態に係る電解コンデンサ52と整流回路53とから構成されている。
【0042】
このような路面状況監視システム41において、コントローラ44からトランスポンダ43に送信された無変調の搬送波は、制御回路46から出力されたパルス信号により変調されてコントローラ44に送信される。コントローラ44は受信した変調後の搬送波からフィルタにより変調成分を抽出し、この抽出した変調成分から路面状況情報を生成する。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係る路面状況監視システム41によれば、圧電素子13から発生した電気信号が整流回路53で整流されて電解コンデンサ52に蓄電され、制御回路46の電源電圧として利用されるので、バッテリを設けることなくトランスポンダ43において制御回路46等を駆動して路面状況情報を算出することができる。
【0044】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本発明の第4の実施の形態に係る路面状況監視システムは、上述した第3の実施の形態に係る路面状況監視システムとトランスポンダに発振回路を設けた点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。図7は、本発明の第4の実施の形態に係る路面状況監視システムの全体構成図である。
【0045】
図7に示すように、本実施の形態に係る路面状況監視システム61は、第3の実施の形態に係るトランスポンダ43のFET12およびバイアス抵抗14の代わりに発振回路66を設けた点で異なっている。発振回路66は、制御回路46から出力されたパルス信号の周期に応じて発振している。そして、コントローラ64は、図示しない制御部において受信した発振回路66の発振周波数から路面状況情報を生成する。
【0046】
以上のように、本実施の形態に係る路面状況監視システム61によれば、圧電素子13から発生した電気信号が整流回路53で整流されて電解コンデンサ52に蓄電され、制御回路46の電源電圧として利用されるので、バッテリを設けることなくトランスポンダ63において制御回路46等を駆動して路面状況情報を算出することができる。また、コントローラ64からトランスポンダ63に搬送波を送信するためのステップが不要となり、コントローラ64において路面状況情報を算出する手間を省けるので、測定時間の短縮化を図ることができると共に、コントローラ64を簡易な回路構成とすることが可能となる。
【0047】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本発明の第5の実施の形態に係る路面状況監視システムは、上述した第1の実施の形態に係る路面状況監視システムと路面状況を検出する構成をタイヤ内の空気圧を監視する既存のタイヤ空気圧監視システム(TPMS: Tire Pressure Monitoring System)に組み込んだ点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。図8は、本発明の第5の実施の形態に係る路面状況監視システムの全体構成図である。
【0048】
図8に示すように、路面状況監視システム71は、既存のTPMSに路面状況検出用の圧電素子13を設けて構成され、タイヤの振動に応じて周波数が変化する圧電素子13の電気信号に基づいて路面状況を監視している。TPMSは、既知の構成であるため、詳細については説明しないが、第1の水晶振動子76および第1の水晶振動子76に並列に接続され、空気内の圧力に応じて容量が可変する可変容量素子78によりタイヤ内の空気圧が検出され、この検出された空気圧が第2の水晶振動子77に検出されたタイヤ内の温度により補正される。
【0049】
コントローラ74は、搬送波の変調の有無を切り替えて、一定期間、第1の水晶振動子76、第2の水晶振動子77の共振周波数(励振信号)で変調した搬送波をトランスポンダ73に送信して第1の水晶振動子76および第2の水晶振動子77を励振させた後、変調を停止して無変調の搬送波をトランスポンダ73に送信する。
【0050】
一方、トランスポンダ73は、コントローラ74から励振信号で変調された搬送波が送信されると、ダイオード79により励振信号を検波し、この励振信号により第1の水晶振動子76および第2の水晶振動子77を励振させる。このとき、第1の水晶振動子76および第2の水晶振動子77は変調停止後も約1m秒以上振動し続ける。この状態で、コントローラ74から無変調の搬送波がトランスポンダ73に送信されると、無変調の搬送波が第1の水晶振動子76および第2の水晶振動子77の共振信号および圧電素子13の電気信号に応じてダイオード79によりそれぞれの周波数で変調されてコントローラ74に送信される。
【0051】
コントローラ74は、トランスポンダ73から第1の水晶振動子76および第2の水晶振動子77の共振周波数で変調された搬送波を受信すると共に、圧電素子13の電気信号で変調された搬送波を受信してそれぞれの変調成分を抽出する。このとき、図9に示すように、第1の水晶振動子76の共振信号は搬送波から±約11MHzに位置し、第2の水晶振動子77の共振信号は搬送波から±約10MHzに位置し、圧電素子13の電気信号は搬送波から±約100Hzに位置するため、変調後の搬送波から複数の変調成分が抽出可能となる。コントローラ74は、抽出した第1の水晶振動子76の共振周波数および第2の水晶振動子77の共振周波数からタイヤの空気圧情報を算出し、圧電素子13の振動周波数から路面状況情報を算出する。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る路面状況監視システム71によれば、既存のTPMSに圧電素子13を追加することにより路面状況監視システム71を構成することができるため、路面状況監視システム71の導入コストを低減することができる。
【0053】
なお、上記した各実施の形態においては、バイモルフ型の圧電素子13を用いた構成としたが、タイヤの振動に応じた周期で振動を電圧に変換する構成であれば、この構成に限定されず、例えば、モノモルフ型や積層型の圧電素子を用いた構成としてもよい。
【0054】
また、上記した各実施の形態においては、圧電素子13をタイヤ21のトレッド面21aの裏側に台座24を介して固定する構成としたが、タイヤの振動に応じた周期で振動する構成であれば、この構成に限定されず、例えば、タイヤ21に埋設された構成としてもよい。また、上記した実施例においては、路面状況検出装置から受信した電気信号の周波数に基づいて路面状況を判断したが、電気信号の周波数と振幅を受信してこれらから路面状況を判断することが可能であり、この場合は更に精密な路面状況を判断することが可能である。この変形例は圧電素子の振動周波数及び振幅と路面状況情報とを対応付けることにより可能となるが、これは上記実施例を応用することにより容易に実施可能である。
【0055】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、導入コストを低減すると共に、車両側において路面状況を精度よく検出することができるという効果を有し、特に自動車等が走行する路面の路面状況を検出する路面状況検出装置および路面状況監視システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る路面状況監視システムの第1の実施の形態を示す図であり、路面状況監視システムの全体構成図である。
【図2】本発明に係る路面状況監視システムの第1の実施の形態を示す図であり、圧電素子の固定状態を示す図である。
【図3】本発明に係る路面状況監視システムの第2の実施の形態を示す図であり、路面状況監視システムの全体構成図である。
【図4】本発明に係る路面状況監視システムの第3の実施の形態を示す図であり、路面状況監視システムの全体構成図である。
【図5】本発明に係る路面状況監視システムの第3の実施の形態を示す図であり、電気信号および電源電圧の出力波形を示す図である。
【図6】本発明に係る路面状況監視システムの第3の実施の形態を示す図であり、図5における電源電圧の増加サイクルの説明図である。
【図7】本発明に係る路面状況監視システムの第4の実施の形態を示す図であり、路面状況監視システムの全体構成図である。
【図8】本発明に係る路面状況監視システムの第5の実施の形態を示す図であり、路面状況監視システムの全体構成図である。
【図9】本発明に係る路面状況監視システムの第5の実施の形態を示す図であり、第1の水晶振動子の共振信号、第2の水晶振動子の共振信号および圧電素子の電気信号と搬送波との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1、31、41、61、71 路面状況監視システム
3、33、43、63、73 トランスポンダ(路面状況検出装置)
4、34、44、64、74 コントローラ(車両側装置)
11 アンテナ(通信部)
12 FET(通信部)
13 圧電素子
46 制御回路
47 周波数測定部
48 記憶部
51 オペアンプ
52 電解コンデンサ(蓄電部)
53 整流回路(蓄電部)
54 整流ダイオード
66 発振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤに固定され、路面上を走行する前記タイヤの振動を電気信号に変換する圧電素子と、
車両本体に設けられた車両側装置に対して、前記圧電素子で変換された電気信号を無線送信する通信部とを備えたことを特徴とする路面状況検出装置。
【請求項2】
前記通信部は、前記圧電素子で変換された電気信号の電力を利用して前記車両側装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の路面状況検出装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記車両側装置から受信した搬送波を前記圧電素子で変換された電気信号で変調して送信することを特徴とする請求項1に記載の路面状況検出装置。
【請求項4】
タイヤに固定され、路面上を走行する前記タイヤの振動を電気信号に変換する圧電素子と、
前記圧電素子に変換された電気信号の周波数を路面状況情報に変換する制御回路と、
前記圧電素子で変換された電気信号を整流し蓄電する蓄電部とを備え、
前記制御回路は前記蓄電部の電圧により動作することを特徴とする路面状況検出装置。
【請求項5】
タイヤに設けられた路面状況検出装置と、車両本体に設けられ、前記路面状況検出装置と通信可能な車両側装置とを備えた路面状況監視システムにおいて、
前記路面状況検出装置は、
前記タイヤに固定され、路面上を走行する前記タイヤの振動を電気信号に変換する圧電素子と、
前記圧電素子で変換された電気信号を前記車両側装置に無線送信する通信部とを備え、
前記車両側装置は、前記路面状況検出装置から受信した電気信号の周波数に基づいて路面状況情報を取得することを特徴とする路面状況監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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