説明

踏み板支持構造及び階段の構築方法

【課題】木造建築物の構築現場において簡単に受け桁材を取り付けることができ、材料費を抑えることができる廻り階段部の踏み板支持構造を提供する。
【解決手段】階段の外回り縁に沿った壁体7に設けられた柱12,13,14又は間柱16に受け桁材22,23を取り付け、該受け桁材によって踏み板2,3,4の側縁部を支持する。受け桁材は、柱又は間柱に水平に取り付けられる第1の水平部22aと、該第1の水平部の一端からほぼ鉛直で上方に伸びた鉛直部22cと、該鉛直部の上端から第1の水平部が伸びる方向と逆の方向に伸びた第2の水平部22bとを有するものである。この受け桁材は、鉛直部の厚さ方向の一部が第1の水平部と連続した第1構成部材と、鉛直部の厚さ方向の前記第1構成部材に備えられている部分を除く部分が第2の水平部と連続した第2構成部材とが、鉛直部を重ね合わせて接合され、ほぼ均等な厚さの連続する部材となっている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造の建築物における階段の踏み板を支持する構造及び階段を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の下層階と上層階との間を昇降するために設けられる階段には、下層階から直線的に上層階へ向かう直階段の他、進む方向を90°又は180°変えながら上層階に至る階段が広く用いられている。方向を変えながら昇降する階段は、高さ方向の中程に、昇降する方向を変更する廻り階段部を設け、その上部及び下部に直階段部を設けるものが多い。このような階段の廻り階段部では、踏み板の奥行き方向の寸法が左右で相違し、奥行き寸法が小さくなった側端部は、一つの柱に高さを変えて段毎に支持部材が取り付けられ、これらの支持部材によって支持される。一方、奥行き寸法が大きくなった側端部は、壁体に取り付けられた受け桁材によって支持されるものが多い。つまり、廻り階段部の外回り縁に沿って壁体が設けられ、この壁体を構成する柱や間柱に受け桁材を介して支持されるものである。
【0003】
上記のような廻り階段部において踏み板を支持する構造は、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されているように、厚板からなる幅広の受け桁材を傾斜させて壁面に取り付け、これに踏み板を支持させるものが一般に採用されている。この受け桁材には、踏み板を支持する位置及び蹴上げ板を設ける位置に合わせて溝を切削しておく。そして、これらの溝に踏み板及び蹴込み板を嵌め入れて支持するものである。また、図8に示すように幅広の受け桁材101の上縁を踏み板102,103,104の位置に合わせて水平部分と鉛直部分とが交互となるように切り欠き、水平部の上に踏み板を支持するものも採用されている。上記受け桁材101は、廻り階段部の外回り縁に沿った位置に立設されている柱106に対して直接に、又は補助部材108を介して柱105,107にビス109等により固定されている。
【0004】
一方、廻り階段部の外回り縁では、踏み板の奥行き方向の寸法が大きくなるので、図9に示すように一段毎に水平方向の受け桁材111,112,113を柱114,115,116又は間柱117等に固定して踏み板118,119,120を支持するものも採用される。この構造では、廻り階段部で踏み板119,120の段鼻部119a,120aの位置が外回り縁で柱115と間柱117との間になり、受け桁材112,113の端部を柱又は間柱で支持できないことがある。このような場合には、柱115と間柱117の間の壁体内に下地材121,122を別途に架け渡し、この下地材121,122に受け桁材112,113の端部を支持させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−41607号公報
【特許文献2】特開平7−305472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の構造では、次のように解決が望まれる課題がある。
幅広の厚板からなる受け桁材を用いる構造では、受け桁材の部材寸法が大きく、材料費が嵩むことになる。また、廻り階段部の下側を収納スペースとして利用するときに、斜めに天井は取り付け難く、受け桁材の下端部の下側で水平に設けることになる。また、受け桁材の幅方向の寸法が大きく、収納スペースの高さが制限されてしまうことになる。
一方、踏み板毎に水平方向の受け桁材を設ける構造では、壁体内に水平方向の下地材を設けるための工程が必要となり、工数が多くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、木造建築物の構築現場において簡単に受け桁材を取り付けることができ、材料費を抑えることができる廻り階段部の踏み板支持構造及びこの支持構造を備える階段の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 木造建築物の壁体に沿って方向を変えながら複数の踏み板が設けられた階段の踏み板を支持する構造であって、 該階段の外回り縁に沿った壁体に設けられた柱又は間柱に受け桁材が支持され、該受け桁材に前記踏み板の側端部が支持されており、 前記受け桁材は、前記柱又は前記間柱に水平に取り付けられる第1の水平部と、該第1の水平部の一端からほぼ鉛直で上方に伸びた鉛直部と、該鉛直部の上端から前記第1の水平部が伸びる方向と逆の方向に伸びた第2の水平部とを有し、 該受け桁材は、前記鉛直部の厚さ方向の一部が前記第1の水平部と連続した第1の構成部材と、前記鉛直部の厚さ方向の前記第1の構成部材に備えられている部分を除く部分が前記第2の水平部と連続した第2の構成部材とを接合したものであり、前記第1の構成部材が有する前記鉛直部の一部と前記第2の構成部材が有する前記鉛直部の一部とを重ね合わせ、ほぼ均等な厚さの連続する部材となっていることを特徴とする踏み板支持構造を提供する。
【0009】
この踏み板支持構造では、受け桁材の水平方向の寸法を、柱と柱の間又は柱と間柱との間に架け渡される長さに設定し、柱又は間柱に両端を固定することができる。そして、この受け桁材で2つの踏み板を支持するとともに、2つの踏み板間の段差を柱と柱の間又は柱と間柱との間に設けることができる。また、階段を形成するときに柱又は間柱に対してビス、釘等を用いて簡単に取り付けることができ、建築物の構築現場における作業性が良好なものとなる。
さらに、第1の構成部材の鉛直部と第2の構成部材の鉛直部とを重ね合わせて接合することによって連続する受け桁材となっており、小さな部材の組み合わせで2つの水平部とこれらの間の鉛直部とが連続した受け桁材を得ることができる。したがって、材料費を少なく抑えることが可能となる。
なお、受け桁材を柱に固定するときには、柱の側面に沿って鉛直方向に補助部材を取り付け、この補助部材を介して受け桁材を取り付けることもできる。
【0010】
請求項2に係る発明は、 木造建築物の壁体に沿って方向を変えながら複数の踏み段が設けられた階段の構築方法であって、 前記壁体に設けられた柱又は間柱にほぼ水平に固定される第1の水平部分の一端に、該水平部分の厚さ方向の一部に相当する厚さの第1の鉛直部分がL字状に連続した第1の構成部材と、 前記第1の水平部分とほぼ同じ厚さを有する第2の水平部分の一端に、前記第1の鉛直部分と重ね合わせて前記第1の水平部分及び第2の水平部分とほぼ同じ厚さとなる第2の鉛直部分がL字状に連続した第2の構成部材と、を製作し、 前記階段の踏み板の奥行き及び踏み板の段差に応じて、前記第1の構成部材及び第2の構成部材のそれぞれの水平部分及び鉛直部分の端部を切断して長さを調整し、 前記第1の鉛直部分と前記第2の鉛直部分とを重ね合わせて前記第1の構成部材と前記第2の構成部材とを接合して、第1の踏み板を支持する第1の水平部と、第1の踏み板に隣接し所定の段差を有する第2の踏み板を支持する第2の水平部と、前記第1の水平部の端部と前記第2の水平部の端部とを鉛直方向に連結する鉛直部とが、ほぼ均等な厚さで連続する受け桁材とし、 該受け桁材を、該階段の外回り縁に沿った壁体に設けられた柱又は間柱に固定し、 該受け桁材の前記第1の水平部及び第2の水平部上に、前記踏み板の外回り縁側の端部を支持させて前記踏み板を設けることを特徴とする階段の構築方法を提供するものである。
【0011】
この階段の構築方法では、階段の踏み板の寸法及び段差の寸法(蹴上げ寸法)に対して鉛直部分と水平部分とが充分な長さとなるように寸法を設定して第1の構成部材と第2の構成部材とを予め形成しておくことができる。そして、建築物の規模や構造に応じて階段の踏み板の寸法及び段差の寸法が決定されると、この寸法に対応して第1の構成部材及び第2の構成部材の鉛直部分と水平部分とを切断し、これらを接合して2つの踏み板を支持する受け桁材とすることができる。
このような受け桁材は、建築物の構築現場において両端を柱又は間柱に容易に固定することができるとともに、柱と柱の間又は柱と間柱との間に段差を設けて踏み板を支持することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る踏み板支持構造では、柱と柱の間又は柱と間柱との間に連続した受け桁材で、段差を設けて配列される2つの踏み板を支持することができるとともに、踏み板の支持構造を形成する費用を少なく抑えることができる。
また、本発明に係る階段の構築方法では、予め形成されている第1の構成部材と第2の構成部材を用い、その後に決定された階段の踏み板の寸法及び段差の寸法等に対応した受け桁材を形成することができる。そして、このような受け桁材は、柱又は間柱に容易に固定することができるとともに、柱と柱の間又は柱と間柱との間に段差を設けて2つの踏み板を連続して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態である踏み板支持構造が適用された階段の平面図及び断面図である。
【図2】図1に示す階段の断面図である。
【図3】図1に示す階段の受け桁材を形成するために用いられる第1の構成部材及び第2の構成部材の平面図及び正面図である。
【図4】図3に示す第1の構成部材と第2の構成部材とを接合して受け桁材とする方法を示す概略斜視図である。
【図5】受け桁材が柱及び間柱に支持された状態を示す概略斜視図である。
【図6】本発明に係る踏み板支持構造が適用された階段の他の例を示す平面図及び断面図である。
【図7】受け桁材を形成する第1の構成部材及び第2の構成部材の他の例を示す概略斜視図である。
【図8】従来の踏み板支持構造を用いた階段の平面図及び断面図である。
【図9】従来の踏み板支持構造を用いた階段の他の例を示す平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明の踏み板支持構造が適用された階段の平面図であり、図1(b)は図1(a)中に示すA−A線における立断面図である。また、図2は、図1(a)中に示すB−B線及びC−C線における立断面図である。
この階段は、木造建築物の下層階と上層階との間を昇降するために設けられ、下層階から第1の直階段部、廻り階段部及び第2の直階段部を経て上層階に至るものとなっている。
【0015】
廻り階段部は、5段分の踏み板1,2,3,4,5が配置されており、いずれもが奥行き方向の寸法が左右で異なっている。これにより第1の直階段部の上部から第2の直階段部の下部までに方向をほぼ180°変更するものとなっている。この廻り階段部は、3方が壁体6,7,8によって囲まれており、この廻り階段部の外回り縁つまり方向を変えるときの外側となる縁は、これらの壁体6,7,8に沿った位置に形成されている。上記壁体6,7,8は柱及び間柱、及びこれらに取り付けられた壁下地材26を含むものであり、第1の直階段部が廻り階段部に続く位置では、外回り縁に沿った壁体6内に第1の柱11が立設されている。また、廻り階段の外回り縁の2つの隅角部には第2の柱12及び第4の柱14が立設されている。第2の柱12から第4の柱14まではまっすぐに連続する壁体7となっており、これらの柱12,14の中間位置に第3の柱13が立設されている。また、廻り階段部から第2の直階段部に続く位置では外回り縁に沿った壁体8内に第5の柱15が立設されている。そして、これらの柱間には間柱16が設けられている。
【0016】
廻り階段部の上記踏み板1,2,3,4,5は、外回り縁に沿った端部が上記3つの壁体6,7,8の柱間に取り付けられた受け桁材21,22,23,24によって支持される。また、内回り縁に沿った端部は、方向が180°変換されるほぼ中心となる位置に立設された内側柱17に踏み板毎の支持部材18を取り付け、これらの支持部材18によって支持される。
【0017】
外回り縁に沿った端部を支持する受け桁材21,22,23,24は、図1(b)及び図2に示すように、端部が柱11,13,15に対して直接に、又は補助部材19を介して柱12,14に固定されるものである。受け部材21,22,23,24の固定には、ビス、釘又は周面に螺旋状の溝が多数設けられた釘(ラグスクリュー)等を用いることができる。また、間柱16と対向する位置でも同様にビス等を用いて間柱16に固定されている。これらの受け桁材21,22,23,24は、例えば図1(b)に示すように、段差(蹴上げ高さ)を設けて配置される2つの踏み板2,3の下側の踏み板2を支持する第1の水平部22aと、上側の踏み板3の端部を支持する第2の水平部22bと、第1の水平部22aと第2の水平部22bとを鉛直方向に連結する鉛直部22cとを有するものとなっている。鉛直部22cの長さは踏み板2,3間の段差に応じて定まるものであり、一つの階段では多くの場合段差は等しく、同じ階段で用いられる複数の受け桁材21,22,23,24では、一般に同じ長さとなっている。これに対し、第1の水平部21a,22a,23a,24a及び第2の水平部21b,22b,23b,24bの長さは、柱間毎に設けられる複数の受け桁材21,22,23,24でそれぞれ異なるものとなっており、第1の柱11と第2の柱12との間の第1の壁体6に取り付けられる受け桁材21では、下側の踏み板1を支持する第1の水平部21aが長く、上側の踏み板2を支持する第2の水平部21bが短くなっている。また、第4の柱14と第5の柱15との間の第3の壁体8に取り付けられた受け桁材24では、下側の踏み板4を支持する第1の水平部24aが短く、上側の踏み板5を支持する第2の水平部24bが長くなっている。
【0018】
上記のように柱11,12,13,14,15及び間柱16に取り付けられた受け桁材21,22,23,24の上に踏み板1,2,3,4,5の外回り縁に沿った端部が載せ掛けられ、支持される。第1の直階段に続く部分の踏み板1は第1の壁体6に取り付けられた受け桁材21の第1の水平部21aに支持されている。そして、隅角部を含む踏み板2は第1の壁体6に取り付けられた受け桁材21の第2の水平部21bに一部が載せ掛けられるとともに、第2の壁体7に取り付けられた受け桁材22の第1の水平部22aにも一部が載せ掛けられている。したがって、第1の壁体6に取り付けられた受け桁材21の第2の水平部21bと第2の壁体7に取り付けられた受け桁材22の第1の水平部22aとは同じ高さとなっている。また、第2の柱12と第3の柱13との間に架け渡された受け桁材22の第2の水平部22bは、第3の柱13と第4の柱14との間に架け渡された受け桁材23の第1の水平部23aと同じ高さとなるように端面を突き合わせて取り付けられている。そして、第2の壁体7に含まれる第3の柱13と側縁が対向するように設けられる踏み板3は、これらの二つの受け桁材22,23に跨って支持されている。また、第2の壁体7から第3の壁体8にかけても2つの踏み板4,5が同様に支持されている。
一方、これらの受け桁材の鉛直部21c,22c,23c,24cには蹴込み板9が取り付けられる。
【0019】
上記受け桁材21,22,23,24は、図3に示すような第1の構成部材31と第2の構成部材32とを接合することによって形成されるものである。第1の構成部材31は第1の水平部(例えば22a)となる水平部分31aとこの水平部分31aの一端と連続して受け桁材の鉛直部(例えば22c)を構成する鉛直部分31bとを有するものである。鉛直部分31bは水平部分31aの半分の厚さとなっており、所定の長さを有する水平部分31aの軸線と直角となる端面31cと連続している。そして、水平部分31aの軸線と直角方向に所定の長さを有し、形状がほぼL字状となっている。また、第2の構成部材32は第2の水平部(例えば22b)となる水平部分32aとこの水平部分32aの一端と連続して受け桁材の鉛直部(例えば22c)を構成する鉛直部分32bとを有するものである。第2の構成部材32の水平部分32aは、第1の構成部材の水平部分31aほぼ同じ厚さを有するものであり、第1の構成部材31と同様に所定の長さを有するものとなっている。第2の構成部材の鉛直部分32bは、第1の構成部材31と同様に、水平部分32aの半分の厚さとなっており、水平部分32aの軸線と直角となる端面に連続し、水平部分32aの軸線と直角方向に伸びて所定の長さを有するものとなっている。この第2の構成部材32の鉛直部分32bの伸長する方向は、図4に示すように第1の構成部材31の鉛直部分31bと重ね合わせて接合したときに、第1の構成部材31の水平部分31aと第2の構成部材32の水平部分32aとが鉛直部分31b,32bを介して段差を有し、ほぼ等厚の連続する受け桁材(例えば22)となるように設定されている。
【0020】
上記第1の構成部材31及び第2の構成部材32の水平部分31a,32a及び鉛直部分31b,32bの長さは、柱間に架け渡すように形成する受け桁材21,22,23,24の様々な寸法のいずれにも対応することができるように定められていることが望ましい。つまり図1(b)及び図2に示すように受け桁材には第1の水平部21a,22a,23a,24aが長いもの、第2の水平部21b,22b,23b,24bが長いもの等があり、これらのいずれをも形成することができるものが望ましい。また、鉛直部分31b,32bも、受け桁材の鉛直部21c,22c,23c,24cの長さが異なるものに対しても対応可能な長さとするのが望ましい。つまり、建築物の構造・用途等によって踏み板間の段差が変動しても対応する受け桁材を形成することができる長さに設定するものである。
【0021】
また、上記第1の構成部材31と第2の構成部材32とは、受け桁材21,22,23,24の厚さに相当する厚さを備えた合板をL字状に切断し、鉛直部分31b,32bを半分の厚さに切削して形成することができる。また、受け桁材21,22,23,24の半分の厚さを有する合板を貼り合わせるものとし、水平部分31a,32aのみを構成する合板と水平部分31a,32aと鉛直部分31b,32bとが連続した形状の合板を貼り合わせて形成することもできる。
一方、上記第1の構成部材31及び第2の構成部材32に用いる材料は、上記合板以外に複数の木部材を貼り合わせた集成材、薄板を層状に貼り合わせた木部材等を用いることができるが、木目の方向によって受け桁材の一部例えば鉛直部21c,22c,23c,24cの曲げ強度が低下するようなことを回避できる材料を用いるのが望ましい。
【0022】
上記階段は、例えば次のように構築することができる。
上記階段の踏み板を支持する受け桁材21,22,23,24は、建築物の構築現場における施工に先立って、又は現場における施工と並行して製作することができる。受け桁材を製作するための第1の構成部材31及び第2の構成部材32は予め同じ寸法及び形状で多数が形成されているものを用いることができる。第1の構成部材31及び第2の構成部材32は、図4に示すように、水平部分31a,32aと鉛直部分31b,32bとの先端部を、製作しようとする受け桁材の寸法に応じて設定した切断線41,42,43,44で切断する。そして、鉛直部分31b,32bに接着剤を塗布して重ね合わせ、ビス等によって重ね合わせた鉛直部分を強固に接合する。このように水平部分31a,32a及び鉛直部分31b,32bを切断するものとし、その切断位置を適宜に設定することによって、図1(b)及び図2に示すように水平部分の長さが異なる様々な態様の受け桁材21,22,23,24を同じ構成部材を用いて製作することができる。
【0023】
このように製作した受け桁材21,22,23,24は建築物の構築現場に搬入し、図5に示すように、廻り階段部の三方を囲むように形成されている壁体の柱11、柱12に固着された補助部材19及び間柱16にビス等を用いて固定する。このとき、受け桁材21は、柱等の側面に直接に当接して固定してもよいが、図1(a)に示すように、壁面を形成する壁下地材26を先に柱及び間柱に取り付け、この壁下地材26を介して取り付けてもよい。
【0024】
一方、廻り階段部より下方にある第1の直階段部及び上方にある第2の直階段部には、例えば図5に示すように幅広の厚板の上縁に鉛直部と水平部と備えた受け桁材25を取り付ける。そして、内回り縁に沿って設けられた支持部材18と外回り縁に沿って取り付けられた受け桁材21,22,23,24,25との間に上層階側から順次に踏み板と蹴込み板を取り付け、階段を完成する。
【0025】
以上に説明した踏み板支持構造は、廻り階段部を含む他の形態の階段に適用することもできる。
図6に示す階段は、下層階から第1の直階段部、踊り場、廻り階段部及び第2の直階段部を経て上層階に至るようになっている。上記廻り階段部は、3つの踏み板51,52,53を経て方向をほぼ90°変更するものとなっている。また、踊り場は、第1の柱11、第2の柱12、第3の柱13及び廻り階段のほぼ中心に設けられた内側柱17とで囲まれた長方形の範囲となっており、水平に床板54が支持されている。
【0026】
この階段の廻り階段部では、踏み板52の段鼻部52aが外回り縁で柱14と間柱16との間に位置し、段鼻部付近で受け桁材63を柱又は間柱に支持させることができなくなっている。このように踏み板51,52,53が配置されるときにも、図4に示すように製作された受け桁材63を柱13と柱14との間に取り付けることにより、柱13と柱14との間で2つの踏み板51,52の外回り縁に沿った端部を支持することができるとともに、踏み板の支持構造を形成する費用を少なく抑えることができる。
このように踊り場の設置や、踏み板の数等は適宜に設定することができる。また、図1に示す階段及び図6に示す階段は、いずれも下層階から右回りで上層階に向かうものとなっているが、左回りで上層階に向かう階段であってもよい。
【0027】
なお、上記実施形態で用いた受け桁材を形成するための構成部材は、鉛直部分が水平部分の半分の厚さにとなっているが、このような形態に限定されるものではなく、例えば図7に示すように、一方の構成部材71の鉛直部分71bは水平部分71aの1/3の厚さを有し、他方の構成部材72は水平部分の1/3の厚さとなった2つの鉛直部分72bが間隔を開けて平行に2つ備えられているものとすることができる。平行となった2つの鉛直部分72bの間隔は、水平部分72aの厚さの1/3となっており、これらの間に接合するもう一方の構成部材71の鉛直部分71bを差し入れ、接着剤とビス等を用いて接合することができる。
【0028】
このような構成部材71,72は、水平部分71a,72aの1/3の厚さの合板を重ね合わせ、接着することによって形成することができる。つまり、水平部分71a,72aのみの大きさに切断した合板と水平部分71a,72aと鉛直部分71b,72bとが連続してL字状となった合板とを重ね合わせて接合することにより、1/3の厚さの鉛直部分71b,72bが水平部分と連続した構成部材71,72とすることができる。
この他、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で様々な形態で実施されたものを含むものである。
【符号の説明】
【0029】
1,2,3,4,5:踏み板, 6:第1の壁体, 7:第2の壁体、 8:第3の壁体, 9:蹴込み板,
11:第1の柱, 12:第2の柱, 13:第3の柱, 14:第4の柱, 15:第5の柱, 16:間柱, 17:内側柱, 18:支持部材, 19:補助部材,
21,22,23,24:受け桁材, 25:直階段部の受け桁材, 26:壁下地材,
31:第1の構成部材, 32:第2の構成部材,
41,42:構成部材の水平部分の切断線, 43,44:構成部材の鉛直部分の切断線,
51,52,53:踏み板, 54:踊り場の床板,
61,62:踊り場の受け桁材, 63,64:廻り階段部の受け桁材,
71:第1の構成部材, 72:第2の構成部材
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の壁体に沿って方向を変えながら複数の踏み板が設けられた階段の踏み板を支持する構造であって、
該階段の外回り縁に沿った壁体に設けられた柱又は間柱に受け桁材が支持され、該受け桁材に前記踏み板の側端部が支持されており、
前記受け桁材は、前記柱又は前記間柱に水平に取り付けられる第1の水平部と、該第1の水平部の一端からほぼ鉛直で上方に伸びた鉛直部と、該鉛直部の上端から前記第1の水平部が伸びる方向と逆の方向に伸びた第2の水平部とを有し、
該受け桁材は、前記鉛直部の厚さ方向の一部が前記第1の水平部と連続した第1の構成部材と、前記鉛直部の厚さ方向の前記第1の構成部材に備えられている部分を除く部分が前記第2の水平部と連続した第2の構成部材とを接合したものであり、前記第1の構成部材が有する前記鉛直部の一部と前記第2の構成部材が有する前記鉛直部の一部とを重ね合わせ、ほぼ均等な厚さの連続する部材となっていることを特徴とする踏み板支持構造。
【請求項2】
木造建築物の壁体に沿って方向を変えながら複数の踏み段が設けられた階段の構築方法であって、
前記壁体に設けられた柱又は間柱にほぼ水平に固定される第1の水平部分の一端に、該水平部分の厚さ方向の一部に相当する厚さの第1の鉛直部分がL字状に連続した第1の構成部材と、
前記第1の水平部分とほぼ同じ厚さを有する第2の水平部分の一端に、前記第1の鉛直部分と重ね合わせて前記第1の水平部分及び第2の水平部分とほぼ同じ厚さとなる第2の鉛直部分がL字状に連続した第2の構成部材と、を製作し、
前記階段の踏み板の奥行き及び踏み板の段差に応じて、前記第1の構成部材及び第2の構成部材のそれぞれの水平部分及び鉛直部分の端部を切断して長さを調整し、
前記第1の鉛直部分と前記第2の鉛直部分とを重ね合わせて前記第1の構成部材と前記第2の構成部材とを接合して、第1の踏み板を支持する第1の水平部と、第1の踏み板に隣接し所定の段差を有する第2の踏み板を支持する第2の水平部と、前記第1の水平部の端部と前記第2の水平部の端部とを鉛直方向に連結する鉛直部とが、ほぼ均等な厚さで連続する受け桁材とし、
該受け桁材を、該階段の外回り縁に沿った壁体に設けられた柱又は間柱に固定し、
該受け桁材の前記第1の水平部及び第2の水平部上に、前記踏み板の外回り縁側の端部を支持させて前記踏み板を設けることを特徴とする階段の構築方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−28977(P2013−28977A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166309(P2011−166309)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(501195625)住友林業クレスト株式会社 (43)
【Fターム(参考)】