説明

踏切評価システム及び踏切評価方法並びにそのプログラム

【課題】踏切事故に影響を与えている踏切特徴変数を精度良く特定することのできる踏切評価システムを提供する。
【解決手段】踏切特徴変数とその情報量と、事故発生件数とを入力し、踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出する。踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析結果である踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい値を示す踏切特徴変数を踏切事故の要因として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切の特徴を示す複数の踏切特徴のうち、踏切事故の発生に強い影響を与える踏切特徴を特定する踏切評価システム及び踏切評価方法並びにそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
踏切事故の背景的要因を分析するにあたり、数量化理論I類(1類)で分析することによって、対象とする目的変数(踏切事故)に対して各説明変数(背景要因)がどの程度影響を与えているかを分析する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“踏切通行者のヒューマンファクタ”、「online」、「平成22年06月02日検索」、インターネット<URL:http://www.rtri.or.jp/infoce/rrr/2009/07/200907_04.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、どの踏切特徴変数<説明変数(背景要因)>が踏切事故に影響を与えているかに主眼を置いた技術であり、その変数のどの変域(情報量)が踏切事故に影響を与えているかを分析していない。例えば、踏切事故に影響を与えている踏切特徴変数が踏切長である場合、どの程度の長さの踏切長であるときに、踏切事故に影響を与えることとなるのかの分析をしていない。これにより、踏切事故に影響を与えている踏切特徴変数とその変域(情報量)を精度良く特定することはできていなかった。
【0005】
そこでこの発明は、踏切事故に影響を与えている踏切特徴変数とその変域(情報量)を精度良く特定することのできる踏切評価システム及び踏切評価方法並びにそのプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、異なる複数の踏切それぞれについての複数の踏切の特徴を示す踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数と、前記踏切それぞれにおける事故発生件数からなる目的変数と、を入力する入力部と、前記説明変数における前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割する変域分割部と、前記情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、前記事故発生件数からなる目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出する情報量基準算出部と、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の前記情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、前記複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析を行う多変量重回帰処理部と、前記多変量での重回帰分析の結果である前記踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい寄与度を示す前記踏切特徴変数を、前記踏切事故に起因する要因として出力する出力部と、を備えることを特徴とする踏切評価システム。
【0007】
また本発明は、上述の踏切評価システムにおいて、前記変域分割部は、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を異なる分割手法により分割することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述の踏切評価システムにおいて、前記多変量での重回帰分析の後、ステップワイズ法を用いて前記複数の踏切特徴変数のうち最良な踏切特徴変数の組合せを選択することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、踏切評価システムにおける踏切評価方法であって、前記踏切評価システムの入力部が、異なる複数の踏切それぞれについての複数の踏切の特徴を示す踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数と、前記踏切それぞれにおける事故発生件数からなる目的変数とを入力し、前記踏切評価システムの変域分割部が、前記説明変数における前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割し、前記踏切評価システムの情報量基準算出部が、前記情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、前記事故発生件数からなる目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出し、前記踏切評価システムの多変量重回帰処理部が、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の前記情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、前記複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析を行い、前記踏切評価システムの出力部が、前記多変量での重回帰分析の結果である前記踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい寄与度を示す前記踏切特徴変数を、前記踏切事故に起因する要因として出力することを特徴とする踏切評価方法。
【0010】
また本発明は、上述の踏切評価方法において、前記変域分割部は、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を異なる分割手法により分割することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述の踏切評価方法において、前記多変量での重回帰分析の後、ステップワイズ法を用いて前記複数の踏切特徴変数のうち最良な踏切特徴変数の組合せを選択することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、踏切評価システムのコンピュータを、異なる複数の踏切それぞれについての複数の踏切の特徴を示す踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数と、前記踏切それぞれにおける事故発生件数からなる目的変数と、を入力する入力手段、前記説明変数における前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割する変域分割手段、前記情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、前記事故発生件数からなる目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出する情報量基準算出手段、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の前記情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、前記複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析を行う多変量重回帰処理手段、前記多変量での重回帰分析の結果である前記踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい寄与度を示す前記踏切特徴変数を、前記踏切事故に起因する要因として出力する出力手段、として機能させることを特徴とするプログラムである。
【0013】
また本発明は、前記変域分割手段が、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を異なる分割手法により分割することを特徴とするプログラムである。
【0014】
また本発明は、前記多変量での重回帰分析の後、ステップワイズ法を用いて前記複数の踏切特徴変数のうち最良な踏切特徴変数の組合せを選択する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最も良いと評価される統計モデルによって、複数の踏切特徴変数と、当該踏切特徴変数における、ある情報量の変域ごとの踏切事故に対する寄与度が算出されるため、ユーザは、当該寄与度に基づいて、どの踏切特徴変数および当該踏切特徴変数における情報量の変域が、踏切の事故に寄与しているのかを精度良く把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】踏切評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】踏切評価システムの処理フローを示す図である。
【図3】解析対象記憶テーブルのデータ例を示す図である。
【図4】変域分割部の分割処理の概要を示す図である。
【図5】各踏切特徴変数の事故の発生に対する寄与度の一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態による踏切評価システムを図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による踏切評価システムの構成を示すブロック図である。
この図において、符号1は踏切評価システムである。

踏切評価システム1は、入力部11、変域分割部12、情報量基準算出部13、多変量重回帰処理部14、出力部15、制御部16を備えている。
ここで、入力部11は、異なる複数の踏切それぞれについての複数の踏切の特徴を示す踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数と、踏切それぞれにおける事故発生件数からなる目的変数とを入力する処理部である。
また変域分割部12は、説明変数における踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割する処理部である。
また情報量基準算出部13は、情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、事故発生件数からなる目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出する処理部である。
また多変量重回帰処理部14は、踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析を行う処理部である。
また出力部15は、多変量での重回帰分析の結果である踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい寄与度を示す踏切特徴変数を、踏切事故に起因する要因として出力する処理部である。
また制御部16は、他の処理部を制御する処理部である。
そして、踏切評価システム1は、このような各処理部を備えることにより、踏切事故に影響を与えている踏切特徴変数とその変域(情報量)を精度良く特定する処理を行う。
【0018】
図2は踏切評価システムの処理フローを示す図である。
以下、踏切評価システムの処理フローの詳細について順を追って説明する。
まず、踏切評価システム1の入力部11は、踏切台帳データベースから、踏切の特徴を示す複数の踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数を、例えばある鉄道会社が有する鉄道路線に存在する複数の踏切それぞれについて(踏切を識別するためのIDとともに)入力する(ステップS101)。ここで踏切特徴変数は、踏切長、踏切勾配、踏切車道幅員、踏切歩道幅員、近接交差点有無、鉄道交通量、遮断時間、歩行者交通量、などの情報であり、たとえば、踏切長、踏切車道幅員、踏切歩道幅員であればその情報量は長さ、鉄道交通量であればその情報量は単位時間(1日)あたりの通過回数、歩行者交通量であればその情報量は単位時間(1日)あたりの踏切横断人数などである。そして入力部11は、この他、様々な踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数を踏切台帳データベースから入力する。
また入力部11は、ある鉄道会社が有する鉄道路線に存在する複数の踏切の踏切IDと、それら各踏切における目的変数となる事故件数(0件を含む)との組み合わせを入力する(ステップS102)。
すると、入力部11は、入力した踏切のIDに基づいて、当該踏切IDが示す踏切の複数の踏切特徴変数とそれらの各情報量と事故発生件数(0件を含む)との組み合わせ情報を生成し、当該踏切IDと当該踏切IDが示す踏切の複数の踏切特徴変数とそれらの各情報量と事故発生件数との組み合わせ情報を変域分割部12へ出力する。すると、変域分割部12は、踏切ID、複数の踏切特徴変数、それら変数それぞれの情報量、事故発生件数の組み合わせ情報に基づいて、踏切ID毎に各踏切特徴変数の情報量と事故発生件数を、解析対象記憶テーブルに格納する(図3)。なお解析対象記憶テーブルは、変域分割部12が内部に保持するメモリ等に格納される。
【0019】
次に、変域分割部12は、ある1つの踏切特徴変数(例えば踏切)の情報量(踏切長)の変域(例えば5m〜20m)における、異なる情報量(例えば異なる踏切長)ごとの事故発生件数を、解析対象記憶テーブル(図3)に記録されている情報から特定する(ステップS103)。例えば踏切特徴変数1についてその変数が踏切長であれば、踏切長が5mの踏切の数、6mの踏切の数、7mの踏切の数・・・・を特定し、また踏切長20mが最長であれば5m〜20mを、情報量(踏切長)の変域と特定する。そして、変域分割部12は、ある1つの踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割する(ステップS104)。
【0020】
図4は変域分割部の分割処理の概要を示す図である。
図4は、ある鉄道会社が有する鉄道路線において、事故の発生した踏切の踏切長(情報量)ごとの事故発生件数を示している。そして、図4においてa、b、cの3つの矢印は、変域分割部12が、踏切長の示す変域を3分割した場合の例を示している。
変域分割部12において、ある1つの踏切特徴変数の情報量が分布する変域が分割されると、次に、情報量基準算出部13が、その分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し(ステップS105)、当該ダミー変数と、このダミー変数に対応する説明変数(踏切特徴変数)に対応する、事故発生件数(目的変数)とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出する(ステップS106)。当該AICは、
【0021】
【数1】

【0022】
により表される。当該式(1)において、Kは統計モデルの自由パラメータの数を表し、Nはデータ数(踏切の数)を表す。また、対数尤度l(θ)は、
【0023】
【数2】

【0024】
により表すことができる。この式(2)のfにおいてx(踏切特徴変数の情報量)は、離散分布の場合は確率関数、連続分布の場合は確率密度関数を示す。またθは統計モデルを示す。
また、式(2)のとき、最大対数尤度は、
【0025】
【数3】

【0026】
である。
このような情報量基準算出部13の処理により、変域分割部12における1つの分割処理に基づいて1つのAICが算出される。
また、変域分割部12は、他の分割手法により繰り返しAICの算出を行うかを判定し(ステップS107)、踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置の変更や、分割数の数を2からnまで増加させて、分割処理を繰り返す。そして情報量基準算出部13は、その分割処理が行われるたびに、その分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数を用いた重回帰分析によってAIC(赤池の情報量基準)を算出する。そして、情報量基準算出部13は、算出したAICのうち、最良な値として、最も値の低いAICを、その踏切特徴変数のAICと決定する(ステップS108)。つまり、最も値の低いAICを特定することによって、最も良いと評価される統計モデルを選択する。そして、制御部16が、全ての踏切特徴変数についてAICを決定したかを判定し(ステップS109)、全ての踏切特徴変数についてAICが決定されていない場合には、変域分割部12と情報量基準算出部13を制御して、全ての踏切特徴変数についてAICが決定されるまで上述のステップS103〜ステップS107までの処理を繰り返す。
【0027】
次に、全ての踏切特徴変数についてAICが決定されると、制御部16が多変量重回帰処理部14に処理の開始を制御し、当該多変量重回帰処理部14が、処理を開始する。そして、多変量重回帰処理部14は、踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の情報量基準(AIC)のうち、最も値の低い(最良な)情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析(数量化理論I類)を行う(ステップS110)。この結果、多変量重回帰処理部14は、各踏切特徴変数それぞれの事故の発生に対する寄与度を算出する。そして、出力部15が、各踏切特徴変数それぞれの事故の発生に対する寄与度を出力する(ステップS111)。
【0028】
なお、複数の踏切特徴変数の情報量を任意の変域で分割し、ダミー変数に変換して、重回帰分析を行う場合、寄与度は次の2種類の定義が存在する。このとき、どちらの定義を採用するかは、活用目的等による。
(i)ダミー変数間の寄与度を比較する場合
寄与度は、重回帰分析の結果において、各ダミー変数のもつ偏回帰係数で定義される。
(ii)踏切特徴変数間の寄与度を比較する場合
寄与度は、踏切特徴変数ごとに定義される。多変量重回帰分析の結果において、一つの踏切特徴変数から分割されたダミー変数のもつ偏回帰係数のうち、最大値と最小値の差を各踏切特徴量の寄与度として定義する。ダミー変数を用いた重回帰分析手法の一つである数量化I類においてカテゴリーレンジと呼ばれているものと同一である。
【0029】
図5は各踏切特徴変数それぞれの事故の発生に対する寄与度の一覧を示す図である。
当該図においては、寄与度が高い順にソートして踏切特徴変数が出力されていることが分かる。そして、これにより、ユーザは、どの踏切特徴変数が、踏切の事故に寄与しているのかを、その数値の大きさに基づいて把握することが可能となる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述の処理によれば、最も良いと評価される統計モデルによって、複数の踏切特徴変数と、当該踏切特徴変数における、ある情報量の変域ごとの踏切事故に対する寄与度が算出されるため、ユーザは、当該寄与度に基づいて、どの踏切特徴変数および当該踏切特徴変数における情報量の変域が、踏切の事故に寄与しているのかを精度良く把握することができる。
【0031】
なお、上述の処理においては、情報量基準算出部13が情報量基準を算出するにあたり、赤池の情報量基準AICを算出しているが、これに代わり、情報量基準としてベイズ情報量基準(BIC)を用いるか、MDL(最小記述長)を用いるようにしてもよい。なお、ベイズ情報量基準(BIC)の算出式は、
【0032】
【数4】

【0033】
MDL(最長記述長)の算出式は、
【0034】
【数5】

【0035】
により表される。
また、上述の処理においては、変域分割部12が、踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置の変更や、分割数の数を2からnまで増加させて分割処理を繰り返し、複数の異なる分割に基づくダミー変数を用いて情報量基準算出部13が重回帰分析によって情報量基準を算出する例について説明している。しかしながら、分割手法として、例えば、踏切特徴変数の情報量が分布する変域を、他の分割方法を用いてさらに分割して、当該分割処理によってなされた分割に基づくダミー変数を用いて情報量基準算出部13が重回帰分析によって情報量基準を算出し、全ての算出された情報量基準のうち、最も低い値を示す情報量基準を、その踏切特徴変数のAICと決定するようにしてもよい。他の分割手法としては、変域の情報量が示す値1つずつでの分割(例えば、踏切長5m,6m,7m,8m,とそれぞれ1つの情報量ごとに分割する場合の分割手法)、変域の10分割、変域のパーセンタイル10分割、変域の標準偏差での9分割などである。
【0036】
またさらに、上述の処理においては、複数の踏切特徴変数のうちの、全ての踏切特徴変数それぞれについてのダミー変数を用いて、多変量での重回帰分析(数量化理論I類)を行っているが、最良な踏切特徴変数を選択して回帰式を求めるために、多変量での重回帰分析(数量化理論I類)を行った後に、Stepwize method<ステップワイズ法(逐次法)>を行い、これにより、複数の踏切特徴変数のうち多変量での重回帰分析を行う踏切特徴変数を選択するようにしてもよい。
このステップワイズ法において、変数の選択は重回帰分析におけるF値を基準とすることが多いが、AIC、BIC、MDLを変数選択基準値として使うことも可能である。ここで変数とは、複数のダミー変数から構成された踏切特徴変数として定義する場合と、各ダミー変数として定義する場合がある。どちらの定義を採用するかは、活用目的等による。
【0037】
なお、上述の踏切評価システムは内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0038】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
1・・・踏切評価システム
11・・・入力部
12・・・変域分割部
13・・・情報量基準算出部
14・・・多変量重回帰処理部
15・・・出力部
16・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の踏切それぞれについての複数の踏切の特徴を示す踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数と、前記踏切それぞれにおける事故発生件数からなる目的変数と、を入力する入力部と、
前記説明変数における前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割する変域分割部と、
前記情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、前記事故発生件数からなる目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出する情報量基準算出部と、
前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の前記情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、前記複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析を行う多変量重回帰処理部と、
前記多変量での重回帰分析の結果である前記踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい寄与度を示す前記踏切特徴変数を、前記踏切事故に起因する要因として出力する出力部と、
を備えることを特徴とする踏切評価システム。
【請求項2】
前記変域分割部は、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を異なる分割手法により分割する
ことを特徴とする請求項1に記載の踏切評価システム。
【請求項3】
前記多変量での重回帰分析の後、ステップワイズ法を用いて前記複数の踏切特徴変数のうち最良な踏切特徴変数の組合せを選択する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の踏切評価システム。
【請求項4】
踏切評価システムにおける踏切評価方法であって、
前記踏切評価システムの入力部が、異なる複数の踏切それぞれについての複数の踏切の特徴を示す踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数と、前記踏切それぞれにおける事故発生件数からなる目的変数とを入力し、
前記踏切評価システムの変域分割部が、前記説明変数における前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割し、
前記踏切評価システムの情報量基準算出部が、前記情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、前記事故発生件数からなる目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出し、
前記踏切評価システムの多変量重回帰処理部が、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の前記情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、前記複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析を行い、
前記踏切評価システムの出力部が、前記多変量での重回帰分析の結果である前記踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい寄与度を示す前記踏切特徴変数を、前記踏切事故に起因する要因として出力する
ことを特徴とする踏切評価方法。
【請求項5】
前記変域分割部は、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を異なる分割手法により分割する
ことを特徴とする請求項4に記載の踏切評価方法。
【請求項6】
前記多変量での重回帰分析の後、ステップワイズ法を用いて前記複数の踏切特徴変数のうち最良な踏切特徴変数の組合せを選択する
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の踏切評価方法。
【請求項7】
踏切評価システムのコンピュータを、
異なる複数の踏切それぞれについての複数の踏切の特徴を示す踏切特徴変数とその情報量からなる説明変数と、前記踏切それぞれにおける事故発生件数からなる目的変数と、を入力する入力手段、
前記説明変数における前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を分割する変域分割手段、
前記情報量が分布する変域の分割に基づいて、当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、当該ダミー変数と、前記事故発生件数からなる目的変数とを用いた重回帰分析によって情報量基準を算出する情報量基準算出手段、
前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域の分割位置を変更することで繰り返し算出して得られた複数の前記情報量基準のうち、最良な情報量基準を算出した分割位置による当該分割された各変域における各情報量をダミー変数へ変換し、前記複数の踏切特徴変数それぞれについての当該ダミー変数を用いた多変量での重回帰分析を行う多変量重回帰処理手段、
前記多変量での重回帰分析の結果である前記踏切事故に対する寄与度のうち値の大きい寄与度を示す前記踏切特徴変数を、前記踏切事故に起因する要因として出力する出力手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
前記変域分割手段が、前記踏切特徴変数の情報量が分布する変域を異なる分割手法により分割する
ことを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記多変量での重回帰分析の後、ステップワイズ法を用いて前記複数の踏切特徴変数のうち最良な踏切特徴変数の組合せを選択する処理を前記コンピュータに実行させる
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−140080(P2012−140080A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293762(P2010−293762)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】