説明

身体冷暖房装置

【課題】身体表面の近い所を通る太い血管の近傍の皮膚に当接面を当てることにより、血液の温度を上げ下げするペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置に関するものである。
【解決手段】一対の当接面と、水あるいはクーラントを循環させる循環部12−1〜12−3と、水あるいはクーラントを冷却または加熱する熱交換部11−1〜11−3と、一対のペルチェ素子15−1〜15−3に電力を供給する電源部とから少なくとも構成され、一対の当接面は、少なくとも一部がペルチェ素子から構成される熱伝導性の良い冷却面(発熱面)となっている。また、当接面は、身体表面、特に、首の周囲の半周以上の皮膚に当接させ、当接部は、身体表面に当接する面の反対側におけるペルチェ素子の発熱面(冷却面)に、水あるいはクーラントを循環させる循環部が設けられる。水あるいはクーラントは、循環中に熱交換部によって冷却または温められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子を用いて身体を冷暖房する身体冷暖房装置に関するものである。特に、本発明の身体冷暖房装置は、身体表面の近い所を通る太い血管の近傍の皮膚(たとえば、首の周り等)に複数個の伝熱板を可撓性を有するヒンジを介して当てることにより、血液の温度を下げる(上げる)身体冷暖房装置に関するものである。また、本発明は、首の周辺に長時間取り付けても、肩が凝らずに、仕事がし易い身体冷暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペルチェ素子を用いた冷暖房服は、たとえば、特開2004−263325号公報に記載されている。衣服用温度可変ユニット、および前記ユニットを備えた温度可変服は、たとえば、特開2008−031581号公報に記載されている。前記従来の冷暖房服は、ペルチェ素子の冷却面(発熱面)を身体に密着させることが難しく、効果的な冷暖房を行なうことができないという問題があった。
【0003】
また、前記冷暖房服は、直接肌に当てるものではなく、下着を介する場合、エネルギー効率が悪いという問題があった。また、前記冷暖房服は、ペルチェ素子を仮に身体に密着させることができたとしても、背中や腹部には太い血管がなく、皮膚表面温度を部分的に下げる(上げる)だけであり、身体全体の体温を短時間にコントロールすることが困難であった。
【0004】
首の周囲全体は、太い血管近傍を冷却する機能を損なうことなく、ひんやり感を瞬時に得ることができる。首の後ろ側には、体温調整を司る動静脈吻合血管(AVA)のスイッチがあると言われている(雑学読本 NHK ためしてガッテン 7 「冷え 血行を促進するスイッチを見つけた」参照)。前記首の後ろを冷暖房することは、前記動静脈吻合血管(AVA)を開閉し、血液循環による冷暖房効果を高めることができる。
【0005】
さらに、特願2009−187644号に記載されている身体冷暖房装置は、ペルチェ素子を使用したものである。図4は従来のペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置を説明するための図である。図4において、ペルチェ素子42から少なくとも一部が構成される熱伝導性の良い冷却面(発熱面)を有する熱伝導性金属シート41は、首49の表面に近い所を通る太い血管、たとえば、首の周りの皮膚に当接される。
【0006】
前記一対のペルチェ素子42の発熱面(冷却面)は、水あるいはクーラントを循環させる循環部(可撓性パイプ44)と、前記循環部に供給される水あるいはクーラントを冷却または加熱する熱交換部43と、前記ペルチェ素子42に電力を供給する電源部(電池)47と、冷却・制御部45とから少なくとも構成されている。前記電源部47および冷却・制御部45は、電源コード46により接続されていると同時に、たとえば、身体の腰に設けられたバンド48に取り付けておく。
【0007】
身体表面に近い所を通る太い血管は、たとえば、頸動脈、鎖骨下静脈血管、鎖骨下動脈血管、その他、腕、太股等にある動脈または静脈がある。前記熱伝導性金属シート41は、身体表面に当接する面の反対側におけるペルチェ素子42の発熱面(冷却面)が設けられる。前記冷却水あるいはクーラントは、循環中に熱交換部43によって冷却または温められる。また、前記電源部47は、前記ペルチェ素子42におけるペルチェ効果を発揮するために電力を前記冷却・制御部45の制御の基に供給する。
【0008】
図5(イ)は首の周りに取り付けられた熱伝導性金属シートと、ペルチェ素子と、熱交換部の構造を説明するための平面図、(ロ)はその断面図である。図5(イ)および(ロ)において、熱交換部である第1の水路51−1、第2の水路51−2、第3の水路51−3が第1の可撓性チューブ52−1、第2の可撓性可撓性チューブ52−2、第3の可撓性チューブ52−3、第4の可撓性チューブ52−4によって図示のごとく接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−263325号公報
【特許文献2】特開2008−031581号公報
【特許文献3】特願2009−187644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
身体冷暖房装置は、身体に携帯するものであるため、重量が軽いことが重要である。熱伝導性金属シートは、厚みが厚いほど、熱の伝導が良くなるが、厚みが0.3mmを超えると柔軟性に欠け、首の形状に合わせて成形する必要がある。しかし、首の断面形状は、個人差があり、オーダーメードが必要になるという欠点がある。柔軟性があり、熱伝導率のよい素材としては、グラファイトシートが知られている。前記グラファイトシートは、脆く、剥離し易く、特に、厚み方向の機械的強度が弱い。
【0011】
また、前記グラファイトシートは、脆く、剥離し易い性質があるため、ペルチェ素子と結合させる構造とした場合、機械的結合強度の不足と内部で破断するという問題があった。さらに、前記グラファイトシートは、熱伝導性金属シートと密着させる必要があるが、凹凸部のために、空気層が存在し、熱伝導性を悪くするとうい問題があった。
【0012】
前記熱伝導性金属シートは、首に接触しているため、首を前後に動かしたり、あるいは回すことが困難であるだけでなく、長時間装着することで、肩が凝るという問題を有した。また、前記身体冷暖房装置は、厚い熱伝導性金属シートを使用した場合、首に装着する際の柔軟性に問題があった。さらに、前記身体冷暖房装置は、熱伝導性金属シートの部分が嵩張り、保管する場所を取るという問題があった。
【0013】
さらに、前記リザーバータンクは、前記冷却水あるいはクーラントの漏洩を防止する必要があった。さらに、前記リザーバータンクは、大きさが大きく嵩張るため、身体冷暖房装置として身体に取り付けることとができなかった。前記リザーバータンクは、内部に気泡が入った場合、気泡の浮力よりも、流速の方が早くなり、流速に乗って気泡がポンプ側に入ってしまうという問題があった。前記問題を防止するために、従来のリザーブタンクは、出口付近に、気泡をブロックする遮蔽板を設けていた。しかし、前記遮蔽板は、効果に限界があり、流速を完全に殺して蛇行させるために、大きな筐体が必要であった。
【0014】
以上のような課題を解決するために、本発明は、複数個からなる熱伝導性金属シートの接続部を上下方向、左右方向、および捻じり方向に動かせるような構成とすることで、首の周囲における可動性を向上させ、長時間の装着においても、作業を快適に行うことができるペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置を提供することを目的とする。本発明は、冷却水あるいはクーラントを供給する可撓性チューブをコンパクトにすることで、小型で携帯に便利であり、装着が容易なペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置を提供することを目的とする。
【0015】
本発明は、ペルチェ素子の冷却面(発熱面)を備えた当接面が身体表面に近い所を通る太い血管の皮膚表面に当てることにより、血液を積極的に冷却させて体全体を効率的に冷却(発熱)する身体冷暖房装置を提供することを目的とする。本発明は、単なる冷暖房装置以外に、熱中症等のように早く体温を下げたい場合、あるいは溺れかかって体温が極端に下がった状態、または冬山における凍傷になりそうな状態で早く体温を上げたい場合、その他の医療上必要な場合に便利なペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(第1発明)
第1発明の身体冷暖房装置は、ペルチェ素子を首の近傍に装着して身体を冷暖房するものであり、身体表面に近い所を通る太い血管の近傍の皮膚に当接する熱伝導性の良い冷却面(発熱面)を備えた複数個の伝熱板と、前記伝熱板どうしを接続するとともに、前記接続された伝熱板の方向を少なくとも2方向に変えることができる可撓性連結部材と、前記伝熱板に設けられたペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の発熱面(冷却面)に設けられた第1の熱交換部と、前記第1の熱交換部を冷却または加熱する媒体を循環させる循環部と、前記第1の熱交換部によって熱交換された媒体を冷却または加熱する第2の熱交換部と、前記第2の熱交換部と前記ペルチェ素子に電力を供給する電源部とから少なくとも構成されている。
【0017】
(第2発明)
第2発明の身体冷暖房装置において、前記可撓性連結部材は、少なくとも一方が回動可能に固定され、他方が可動不能に固定されていることを特徴とする。
【0018】
(第3発明)
第3発明の身体冷暖房装置において、前記可撓性連結部材は、可撓性を有する軸状部材から構成され、上下方向、左右方向、および捻じれ方向に曲げることが可能であることを特徴とする。
【0019】
(第4発明)
第4発明の身体冷暖房装置において、前記伝熱板の上に設けられたペルチェ素子、第1の熱交換部、および循環部の横断面は、ほぼ蒲鉾型になっていることを特徴とする。
【0020】
(第5発明)
第5発明の身体冷暖房装置において、前記第2の熱交換部は、第1の熱交換部から循環部を介して送られて来た媒体を蓄えるリザーバータンクと、前記媒体を循環させて冷却または加熱するポンプとが一体に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、身体冷暖房装置における当接面を直接、身体表面に近い所を通る太い血管の近傍の皮膚に当接または装着することで、少ないエネルギーによって効率の良い冷暖房装置とすることができる。特に、前記身体冷暖房装置は、首周辺に装着した場合、自由に可動する範囲が広がったため、鉄工所、冷凍室等の内部で働く者にとって、長時間に渡っても快適な作業が容易にできるようになった。
【0022】
本発明によれば、身体冷暖房装置における当接面を直接、身体表面に近い所を通る太い血管の近傍の皮膚に当接または装着することで、血液を介して、体温を上げ下げできるため、熱中症等、緊急時における身体温度を改善することができる。また、前記身体冷暖房装置は、救急車に常時備えることにより、医療用として、使用できるものである。
【0023】
本発明によれば、水あるいはクーラントを循環させる循環部、第1の熱交換部、第2の熱交換部、電源部等をコンパクトにすることができるとともに、可撓性連結部材の部分を折ることができる構造にしてあるため、携帯に便利である。前記身体冷暖房装置は、可撓性連結部材の部分を上下方向、左右方向、捻じれ方向に曲げることができるため、首に対するフィット感が向上するとともに、首の動きに対する自由度を増すことができる。
【0024】
本発明によれば、循環部を合成樹脂製可撓性チューブとすることで弾性を持たせ、前記当接面を身体の必要箇所に容易に装着することができる。
【0025】
本発明によれば、ペルチェ素子および伝熱板を複数組として、可撓性連結部材で連結しているため、首の形状の異なる者、異なる作業、仕事中または休憩中によって形状を異なるようにでき、使い勝手が向上した。前記複数個の可撓性連結部材によって伝熱板を接続しているため、厚い伝熱板を使用することができるだけでなく、十分な熱伝導を確保できる。
【0026】
本発明によれば、頸動脈部分を冷暖房すると同時に、首の周囲全体の温度をコントロールすることができるため、血液の冷却(加熱)と冷房時の首の周囲のひんやり感、あるいは暖房時の動静脈吻合血管(AVA)の拡張という機能が得られる。
【0027】
本発明によれば、リザーバータンク、第2の熱交換部、および冷却水を循環させるポンプを一体構造としたため、全体をコンパクトになった以外に、短時間で確実に空気抜きを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例であり、ペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置を説明するための断面図である。(実施例1)
【図2】(イ)は本発明の実施例における伝熱板およびペルチェ素子等を説明するための平面図で、(ロ)は横断面図である。
【図3】本発明の実施例であり、リザーバータンク、第2の熱交換部、およびポンプを説明するための概念図である。
【図4】従来の身体冷暖房装置における伝熱板およびペルチェ素子等を説明するための平面図である。
【図5】従来の身体冷暖房装置を身体に装着した例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1発明)
第1発明の身体冷暖房装置は、ペルチェ素子を首の近傍に装着して身体を冷暖房するものであり、首近傍に装着した際に、違和感を生じないようにしたものである。前記ペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置は、複数個の伝熱板と、前記複数個の伝熱板を互いに接続する可撓性連結部材と、前記各伝熱板に設けられたペルチェ素子と、前記ペルチェ素子を冷却または加熱する第1の熱交換部と、前記第1の熱交換部に冷媒等の媒体を循環させる循環部と、前記循環部を経た前記媒体を熱交換するための第2の熱交換部と、ペルチェ素子および第2の熱交換部に必要な動力を供給する電源部とから少なくとも構成されている。
【0030】
前記伝熱板は、身体表面に近い所を通る太い血管(たとえば、首の周りの血管)の近傍の皮膚に当接する熱伝導性の良い冷却面(発熱面)を有し、複数個から構成されている。前記複数個からなる伝熱板は、方向を少なくとも2方向に変えることができる可撓性連結部材によってそれぞれ接続されている。前記可撓性連結部材は、たとえば、可撓性を有する合成樹脂部材からなり、水平方向、上下方向、および捻じれ方向に曲げることが容易にできるものである。
【0031】
前記ペルチェ素子は、前記伝熱板上に直接設けられているとともに、上部に第1の熱交換部が設けられている。前記循環部は、前記第1の熱交換部を冷却または加熱する媒体を循環させる。また、電源部は、前記第2の熱交換部と前記ペルチェ素子に電力を供給する。第1の熱交換部は、伝熱板およびペルチェ素子と循環部との間の熱交換を行う。第2の熱交換部は、循環部で熱交換された熱を、さらに、強制的に冷却または加熱するものであり、電源装置の近傍、たとえば、腰に着けられたベルトに設けられる。
【0032】
前記身体冷暖房装置は、複数の伝熱板からなり、これらの伝熱板を可撓性を有する連結部材によって接続することにより、首の太さ、形状が異なっても、首にフィットして、前記首の表面近傍を通る太い血管を効率良く冷却することができる。また、前記可撓性連結部材は、たとえば、ポリプロピレン(PP)のような材質により、前記伝熱板をいろいろな方向に曲げることができるため、本発明のペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置を首の周辺に装着しても、首を自由に曲げ、各種作業を長時間連続して行うことが容易にできる。
【0033】
(第2発明)
第2発明の身体冷暖房装置において、可撓性連結部材は、合成樹脂部材から構成し、少なくとも一方が1軸で伝熱板に回動可能に固定され、他方が別の伝熱板に2軸で回動しないように固定されている。前記可撓性連結部材は、たとえば、可撓性を有する柔軟な合成樹脂製ヒンジから構成されている。前記合成樹脂製ヒンジは、連結部の中間に凹部を設けることにより、上下方向、左右方向、および捻じれ方向に可撓性を持たせることができる。
【0034】
(第3発明)
第3発明の身体冷暖房装置において、可撓性連結部材は、上下方向、左右方向、および捻じれ方向に可撓性を有する部材から構成されているため、首周りの異なる人、あるいは首をいろいろな方向に曲げることができるため、長時間装着しても、違和感あるいは疲労感がない。前記可撓性連結部材は、止める部分以外の断面をほぼ円形に近い形状とすることで、前記3方向に可撓性を持たせることが容易にできる。
【0035】
前記伝熱板との取り付けは、1軸または2軸にして可撓性を多くすることも可能である。前記可撓性連結部材は、両端が固定され、中央部で自由に各方向に回転できるにユニバーサルジョイントを設けることができる。前記ユニバーサルジョイントは、軽合金、アルミニウム、合成樹脂等を用いて軽く作製しておくことが望ましい。
【0036】
(第4発明)
第4発明の身体冷暖房装置は、横断面形状がほぼ蒲鉾型に形成されている。すなわち、前記伝熱板の上に設けられたペルチェ素子および第1の熱交換部は、側部に循環部を設けずに、第1熱交換部の真上に置くことができるため、横断面をほぼ蒲鉾型にすることができるとともに、断面積を小型化することができる。
【0037】
(第5発明)
第5発明の身体冷暖房装置は、前記各構成要件以外に、第2の熱交換部、リザーバータンク、ポンプが一体に構成されている。また、前記身体冷暖房装置は、前記構成以外に、電源および制御部を備えており、たとえば、身体の腰近傍に設けられかバンドに取り付けられる。前記第2の熱交換部は、前記第1の熱交換部から循環部を介して送られて来た媒体を冷却または加熱している。前記リザーバータンクは、前記第2の熱交換部を冷却または暖房する媒体を蓄えており、たとえば、循環部(チューブ)を通過して熱交換部を通過した後、前記リザーバータンクに入る。
【0038】
前記リザーバータンク内に入った媒体は、水により冷却または加熱されるとともに、前記冷却水を複数からなる第2の熱交換部を通過し、外部の循環部(チューブ)に送り出される。前記第2の熱交換部は、ポンプが設けられており、前記媒体を強制的に冷却または暖房する。さらに、前記第2の熱交換部、リザーバータンク、ポンプは、一体にコンパクトに作られている。
【実施例1】
【0039】
図1は本発明の実施例であり、ペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置を説明するための断面図である。図2(イ)は本発明の実施例における伝熱板およびペルチェ素子等を説明するための平面図で、(ロ)は横断面図である。図1と図2(イ)および(ロ)において、前記ペルチェ素子を用いた身体冷暖房装置は、複数個の伝熱板10−1、10−2、10−3と、前記複数個の伝熱板10−1、10−2、10−3を互いに接続する可撓性連結部材13−1、13−2と、前記各伝熱板に設けられたペルチェ素子15−1、15−2、15−3と、前記ペルチェ素子15−1、15−2、15−3を冷却または加熱する第1の熱交換部11−1、11−2、11−3と、前記第1の熱交換部11−1、11−2、11−3に冷媒等の媒体を循環させる循環部(可撓性チューブ)12−1、12−2、12−3と、前記循環部(可撓性チューブ)12−1、12−2、12−3を経た前記媒体を熱交換するための第2の熱交換部(図3参照)33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6と、ペルチェ素子15−1、15−2、15−3および第2の熱交換部33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6に必要な動力を供給する電源部(図において省略)とから少なくとも構成されている。なお、図1の首の後ろに相当する部分における伝熱板10−2とペルチェ素子15−2との間には、必要に応じて、スペーサ14が設けられている。前記スペーサ14は、使用者の首近傍の形状に合わせておくことにより、使い勝手が良好になる。
【0040】
前記伝熱板10−1、10−2、10−3は、身体表面に近い所を通る太い血管(たとえば、首の周りの血管)の近傍の皮膚に当接する熱伝導性の良い冷却面(発熱面)を有し、複数個から構成されている。前記身体冷暖房装置の伝熱板10−1、10−2、10−3は、たとえば、銅またはアルミニウム等からなり、0.3mm程度の薄さに圧延し、高い柔軟性を有するとともに、高い熱伝導性を持たせる。前記伝熱板10−1、10−2、10−3は、高い柔軟性を有するため、前記可撓性連結部材13−1、13−2とともに、首の半周以上にフィットすることにより、携帯用の身体冷暖房装置として、冷暖房を効率良く行うことができる。前記伝熱板10−1、10−2、10−3は、可撓性連結部材で接続しているため、必要に応じて、厚さを厚くして、高い熱伝導性を持たせることもできる。
【0041】
前記複数個からなる伝熱板10−1、10−2、10−3は、方向を少なくとも2方向に変えることができる可撓性連結部材13−1、13−2によってそれぞれ接続されている。前記可撓性連結部材13−1、13−2は、たとえば、可撓性を有する合成樹脂部材からなり、水平方向、上下方向、および捻じれ方向に曲げることが容易にできるものである。前記可撓性連結部材13−1、13−2は、一方を回動できるように一個の鳩目16−3、他方を回動できないように固定した2個の鳩目16−1、16−2によって固定されている。
【0042】
前記ペルチェ素子15−1、15−2、15−3は、前記伝熱板10−1、10−2、10−3上に直接設けられているとともに、上部に第1の熱交換部11−1、11−2、11−3が設けられている。前記循環部12−1、12−2、12−3は、媒体を循環させて前記第1の熱交換部11−1、11−2、11−3を冷却または加熱する。前記第1の熱交換部11−1、11−2、11−3は、図2(イ)に示すような形状のものを使用することができる。また、電源装置(図示されていない)は、前記第2の熱交換部33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6と、前記ペルチェ素子15−1、15−2、15−3に電力を供給する。
【0043】
第1の熱交換部11−1、11−2、11−3は、伝熱板10−1、10−2、10−3およびペルチェ素子15−1、15−2、15−3と循環部12−1、12−2、12−3との間の熱交換を行う。第2の熱交換部33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6(図3参照)は、循環部12−1、12−2、12−3で熱交換された熱を、さらに、強制的に冷却または加熱するものであり、電源装置の近傍、たとえば、腰に着けられたベルトに設けられる。
【0044】
前記可撓性連結部材13−1、13−2は、たとえば、ポリプロピレン(PP)のような材質で構成されるとともに、図2(イ)に示されるような形状をしている。前記可撓性連結部材13−1、13−2は、前記伝熱板10−1、10−2、10−3をいろいろな方向に曲げることができる。前記可撓性連結部材13−1、13−2は、材質あるいは形状を変えることにより、使用する者の使い勝手を良くすることができる。
【0045】
また、可撓性連結部材13−1、13−2は、他の合成樹脂部材から構成し、少なくとも一方が1軸で伝熱板10−1に回動可能に固定され、他方が別の伝熱板10−2に2軸で回動しないように固定されている。前記可撓性連結部材13−1、13−2は、たとえば、可撓性を有する柔軟な合成樹脂製ヒンジから構成されている。前記合成樹脂製ヒンジは、連結部の中間に凹部を設けることにより、上下方向、左右方向、および捻じれ方向に可撓性を持たせることができる。前記合成樹脂製ヒンジは、たとえば、鳩目16−1、16−2、16−3によって、一方を固定、他方を回動自在にすることにより、ヒンジを構成することができる。
【0046】
さらに、他の図示されていない可撓性連結部材は、上下方向、左右方向、および捻じれ方向に可撓性を有する部材から構成する。前記可撓性連結部材は、首周りの異なる人、あるいは首をいろいろな方向に曲げることができるため、長時間装着しても、違和感あるいは疲労感がない。前記可撓性連結部材は、止める部分以外の断面をほぼ円形に近い形状とすることで、前記3方向に可撓性を持たせることが容易にできる。
【0047】
図2(ロ)において、第1の熱交換部11−1、11−2、11−3の断面が示されている。前記横断面形状は、ほぼ蒲鉾型に形成されている。すなわち、前記伝熱板10−1、10−2、10−3の上に設けられたペルチェ素子15−1、15−2、15−3、および第1の熱交換部11−1、11−2、11−3は、側部に循環部(可撓性チューブ)12−1、12−2、12−3を設けずに、第1の熱交換部11−1、11−2、11−3の真上に置くことができるため、横断面をほぼ蒲鉾型にすることができるとともに、横断面積を小型化することができる。図2に示された部分は、必要に応じて、布製のカバーで覆うことができる。
【0048】
図3は本発明の実施例であり、リザーバータンク、第2の熱交換部、およびポンプを説明するための概念図である。リザーバータンク32は、複数本が連結された状態から構成された第2の熱交換部33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6、およびポンプ34が一体になっている。前記リザーバータンク32は、蓋31を備えており、水が減少した場合、前記蓋31を開けて補給することができる。前記第2の熱交換部33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6は、ポンプ31および連結部36−1、36−2、36−3によって連結されている。前記第2の熱交換部33−1は、前記連結部36−1を通り、第2の熱交換部33−2を介してリザーバータンク32に入る。
【0049】
前記リザーバータンク32に入った水は、第2の熱交換部33−3を通過してポンプ34により冷却(加熱)された後、第2の熱交換部33−4を通過して前記連結部36−2を介して、第2の熱交換部33−5、連結部36−3、第2の熱交換部33−6を介して外部に出て、その間に熱交換が行われる。また、前記第2の熱交換部33−2に入った空気は、縦型の直管となっているため、前記リザーバータンク32の上部に溜まり、ポンプ34に侵入しない。万一、空気がポンプ34に侵入し、前記ポンプ34が空転した場合であっても、前記ポンプ34を停止すると、気泡は、浮力でリザーバータンクに戻り、前記ポンプ34を再起動させることにより、再び水を循環させることができる。前記熱交換部は、銅またはアルミニウム等の伝熱性の良い部材によりフィンを取り付ける。また、前記フィンは、取り付け以外に押し出し加工により、簡単に作製することができる。また、前記フィンは、熱伝導性接着剤あるいはハンダ付け、または銀ペーストによって固定することもできる。
【0050】
前記身体冷暖房装置は、前記構成以外に、図4の従来例と同様に、電源装置および制御部を備えており、たとえば、身体の腰近傍に設けられるようになっている。前記第2の熱交換部は、前記第1の熱交換部から循環部を介して送られて来た媒体を冷却または加熱している。前記リザーバータンクは、前記第2の熱交換部を冷却する冷却水等を蓄えており、第2の熱交換部を介してポンプ34に接続されている。前記ポンプは、前記媒体を第2の熱交換部により熱交換し、前記循環部を介して循環させる。
【0051】
たとえば、冷房時のペルチェ素子の表面温度と快適性は、実験により次の関係が得られた。
15℃〜20℃ 20℃〜25℃ 25℃以上
快適温度 使用場所に 効果無し
よっては物足りない
【0052】
前記実験において、伝熱板を使用した場合でも、頸動脈部分で熱交換できるのは一ヶ所に付き10wから20w程度で、それ以上の冷却を行なうと低温になり過ぎて痛みや凍傷の危険性を伴う。さらに、冷却には、ペルチェ素子の数を増やして頸動脈以外の鎖骨下、脇の下、足の付け根などの太い血管が皮膚表面近くにある部分を複数ヶ所冷却すると冷却能力を上げることができる。
【0053】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。たとえば、ペルチェ素子、可撓性チューブ、ポンプ、熱交換部等の材質は、公知または周知のものが使用できる。
【符号の説明】
【0054】
10−1、10−2、10−3・・・伝熱板
11−1、11−2、11−3・・・第1の熱交換部
12−1、12−2、12−3・・・循環部(可撓性チューブ)
13−1、13−2・・・可撓性連結部材
14・・・スペーサ
15−1、15−2、15−3・・・ペルチェ素子
16−1、16−2、16−3・・・鳩目
31・・・蓋
32・・・リザーバータンク
33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6・・・第2の熱交換部
34・・・ポンプ
35・・・水
36−1、36−2、36−3・・・連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を首の近傍に装着して身体を冷暖房する身体冷暖房装置において、
身体表面に近い所を通る太い血管の近傍の皮膚に当接する熱伝導性の良い冷却面(発熱面)を備えた複数個の伝熱板と、
前記伝熱板どうしを接続するとともに、前記接続された伝熱板の方向を少なくとも2方向に変えることができる可撓性連結部材と、
前記伝熱板に設けられたペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の発熱面(冷却面)に設けられた第1の熱交換部と、
前記第1の熱交換部を冷却または加熱する媒体を循環させる循環部と、
前記第1の熱交換部によって熱交換された媒体を冷却または加熱する第2の熱交換部と、
前記第2の熱交換部と前記ペルチェ素子に電力を供給する電源部と、
から少なくとも構成された身体冷暖房装置。
【請求項2】
前記可撓性連結部材は、少なくとも一方が回動可能に固定され、他方が可動不能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載された身体冷暖房装置。
【請求項3】
前記可撓性連結部材は、可撓性を有する軸状部材から構成され、上下方向、左右方向、および捻じれ方向に曲げることが可能であることを特徴とする請求項1に記載された身体冷暖房装置。
【請求項4】
前記伝熱板の上に設けられたペルチェ素子、第1の熱交換部、および循環部の横断面は、ほぼ蒲鉾型になっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された身体冷暖房装置。
【請求項5】
前記第2の熱交換部は、
第1の熱交換部から循環部を介して送られて来た媒体を蓄えるリザーバータンクと、
前記媒体を循環させて冷却または加熱するポンプと、
が一体に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された身体冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161446(P2012−161446A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23570(P2011−23570)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(501257118)特定非営利活動法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構 (6)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000130732)株式会社サンエス (8)
【Fターム(参考)】