説明

身体固定補助装置

【課題】人体を固定して筋収縮状態を測定する身体固定補助装置において、筋収縮状態測定の再現性及び測定精度を高める。
【解決手段】身体固定補助装置1は、架台2と、架台2の上に乗った使用者の身体3を固定する足関節固定装置4と、足関節固定装置4などにより固定された使用者の身体3の筋放電量を計測する筋電位計測装置5と、足関節固定装置4による複数の身体固定状態において筋電位計測装置5により筋放電量を計測し、その計測値が略最小になったとき、筋肉が最も弛緩している状態であるとして、その状態の身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を記憶する記憶装置6とを備える。これにより、前回の筋放電量を最小とする身体固定状態に合わせて測定することができるので、筋収縮状態測定の再現性及び測定精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋断面撮影等の測定において、人体を固定するために用いられる身体固定補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運動効果を計測するためのひとつの方法として、筋肉の肥大を測定することが挙げられる。この筋肥大の測定は、人体を架台に固定して、筋断面撮影等により筋肉の断面積を測定することにより得られる。しかし、この筋断面積の測定においては、筋肥大の大きさが一般に数ヶ月で数%程度と極めて小さいため、その測定精度を高くすることが要求されるので、測定の誤差による影響を極力減らす必要がある。また、この筋断面積は、図8(a)、(b)に示すように、筋収縮がない筋肉の弛緩した状態の筋断面積M1に比較して、筋収縮がある状態の筋断面積M2の方が小さくなり、この筋収縮により筋断面積が異なるので、筋収縮状態により筋断面積測定結果が影響を受ける。例えば、大腿部の筋断面積を測定する際に、足関節の底屈/背屈角度や外転/内転角度が変化すると、大腿部には筋収縮が生じて形状変化が起こり、これにより大腿部の筋断面積が変化していた。また、筋収縮によって膝蓋骨などの位置や関節の隙間幅が変化するため、測定部位を正確に合わせられなかった。このため、筋収縮状態により、筋断面積の測定に差異が生じ、測定の再現性が低下し、筋肥大等を正確に測定することが困難であった。
【0003】
ところで、例えば、特許文献1に示されるように、刺激電流器と記録装置を有するケーシングと、ケーシングに挿入された回転台とから成り回転台に載置された足を載せるベースプレートと、足を固定する肢体保持体と、踵保持体代とを有した筋収縮を検査するための検査装置が知られている。しかしながら、この装置は、筋断面積の測定部位の筋収縮を少なくして測定するものでないので、筋断面積測定等において、測定毎に測定部位の筋収縮状態が異なる可能性があり、測定の再現性、測定精度において満足できないことがあった。
【0004】
また、特許文献2に示されるように、支持方向において伸縮自在に形成されたボディーサポート面、ボディーサポート面と共に、身体を取り囲んで真空チャンバーを形成する外部エレメントを備え、真空チャンバーと連通する吸引口を有し、身体を固定/加圧/型を成形する装置が知られている。
【0005】
また、特許文献3に示されるように、台座に固定され上下に延びるレールと、レールに沿って昇降変位される受け台と、受け代の設けられた背もたれ部と、背もたれ部の下に設けられた着座部と、着座部の受け台との上下位置を変化させる案内手段と、受け台を昇降する昇降手段とを備え、脳磁界測定を行うための人体測定ヘッドが知られている。
【0006】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に示した各装置においては、人体の脚部等の筋収縮状態を測定するために身体を固定するものでないので、筋断面積測定等において再現性良い測定を得ることができなかった。
【特許文献1】特公平7−87834号公報
【特許文献2】特表2001−510064号公報
【特許文献3】特開平7−328081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、人体の脚部を含む筋肉の筋収縮状態を計測して、以前計測した筋収縮の状態を再現することができる身体固定補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、人体の脚部を含む筋肉の一定の収縮状態を再現するために用いられる身体固定補助装置であって、架台と、前記架台の上に乗った使用者の身体を固定する身体固定手段と、前記身体固定手段により固定された使用者の身体の筋放電量を計測する筋放電量計測手段と、前記身体固定手段による複数の身体固定状態において前記筋放電量計測手段により筋放電量を計測し、その計測値が略最小になったとき、筋肉が最も弛緩している状態であるとして、その状態の身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を記憶する記憶手段と、を備えたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の身体固定補助装置において、前記架台に対する身体の圧力分布を計測する感圧センサを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、使用者の身体、例えば脚部の足関節の状態を変化させながら筋収縮状態を筋放電量計測手段により計測することにより、以前計測した筋収縮の状態を再現することができ、筋収縮測定の再現性及び測定精度を高めることができる。また、本装置を使用して筋収縮状態を常に略同じ状態に固定した状態で筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、筋収縮による筋断面積の測定誤差を少なくでき、筋肥大等の測定精度を向上することが期待できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、使用者の架台に掛かる荷重の圧力分布が得られるので、身体の姿勢が前回と同じであるかどうかをより精度良く確認できる。これにより、身体の一部への荷重の偏りがあれば修正して前回の測定時の圧力分布と同等になるように身体固定状態を調整することが可能となる。これにより、筋収縮測定の再現性をさらに向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係る身体固定補助装置について図1、図2を参照して説明する。本実施形態に係る身体固定補助装置1は、筋肥大等を検査するために筋断面積を測定する筋断面撮影等において使用され、身体の脚部を含む筋肉の収縮状態を測定するときに、筋肉が最も弛緩している筋収縮最小の身体固定状態を再現するために用いられる装置である。
【0013】
図1は、本実施形態の身体固定補助装置1の構成を示す。身体固定補助装置1は、架台2と、足関節固定装置4(身体固定手段)と、筋電位計測装置5(筋放電量計測手段)と、記憶装置6(記憶手段)と、測定補助指示部7を備える。
【0014】
足関節固定装置4は、架台2の上に乗った使用者の身体3の足関節部31を固定する。筋電位計測装置5は、身体3の大腿部32に装着される測定用の電極パッド51a、52aをそれぞれ有する測定ケーブル51、52を備え、これら電極パッド51a、52aにおいてそれぞれ検出される筋電位から左右の大腿部32における筋放電量を計測する。記憶装置6(記憶手段)は、足関節固定装置4によって固定される足関節部31の固定状態において、筋電位計測装置5により筋放電量を計測し、その計測値が略最小になったとき、筋肉が最も弛緩している状態であるとして、その状態の身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を記憶する。測定補助指示部7は、架台2と平行に、かつ一端が足関節固定装置4に片持ちで支持され、測定する身体3の脚部が架台2に沿って真直ぐに載置されているかどうかを見る目安となり、点線で囲んだA部の測定対象筋の測定位置までの凡その距離を指示するための測定補助用指示棒である。この測定補助指示部7の他端には、大腿部32のA部の測定対象筋の周囲を巻くように帯部71を有し、この帯部71の周辺に電極パッド51a、52aが配設されている。
【0015】
図2(a)、(b)は、足関節固定装置4において、左右の足関節部31を別々に固定した場合と、左右一緒に固定した場合のそれぞれの固定状態を示す。図2(a)において、足関節固定装置4は、左右の脚部の足関節部31を固定するためのそれぞれの足関節固定台41と、これらの足関節固定台41に左右の足関節部31を固定するそれぞれの固定具42a、42bとを備えている。固定具42aは、足関節固定台41に乗せられた両足のそれぞれの足部の第一中足骨33付近を固定し、固定具42bは、それぞれのかかと内果34付近を固定する。また、足関節固定装置4は、少なくとも手動により足関節固定台41及び固定具42a、42bの両方又はいずれか一方を移動できるようになっており、足関節部31を足関節固定台41に固定した状態で動かすことができる。図2(b)においては、左右の足関節固定装置4を接近させ、足関節固定台41上の左右の足を接触させた状態で両足一緒に足の側面側及び上面側から第一中足骨33付近及びかかと内果34付近を固定具42c、42dでそれぞれ固定している。
【0016】
図2(a)の構成において、足関節固定台41上に固定具42a、42bにより固定された左右の足関節部31は、その底屈・背屈角度および内転・外転角度への移動を拘束される。固定具42a、42bは、この足関節部31を拘束した状態で底屈・背屈角度の変動および内転・外転を行う。筋電位計測装置5は、足関節部31を足関節固定台41上に固定した状態で、測定対象部の筋肉である大腿部32に測定ケーブル51、52により電気信号を加え、筋放電値を確認しながら、足関節固定装置4において固定具42a、42bに拘束されて移動する足関節部31の底屈・背屈角度および内転・外転角度を変化させ、複数の固定状態において筋放電値の測定を行う。そして、筋放電値が略最小になったとき、筋肉が最も弛緩している状態であるとして、その状態における底屈・背屈角度および内転・外転角度の値を含む身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を筋収縮状態測定における最適設定条件として記憶装置6に記憶する。そして、この状態で足部の端点から測定部位までの距離を測定し、測定部位の位置を確定する。
【0017】
この最適設定条件より、大腿部32の筋肉が最も収縮していない一定の筋収縮状態となる身体固定状態を得ることができる。また、足関節固定台41上に足部の第一中足骨33付近とかかと内果34付近を接触させるように国定具42a、42bを取り付け、足関節部を架台に対して自然状態となる45度前後に固定することにより、常に同じ姿勢を取り易くすることができ、足関節部31の固定状態を安定させ測定精度をより高めることができる。さらに、記憶装置6で筋放電値が略最小となる身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を最適設定条件として記憶し、2回目以降の測定においては、この最適設定条件に身体固定状態及び筋放電量の測定値を合わせることができるので、筋収縮状態の測定の再現性及び測定精度を向上することができる。また、本装置1を使用して、最適設定条件で固定した状態で筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、筋断面積の測定精度を向上することが期待できる。また、図2(b)においては、両足を一緒に固定するので、足関節部31の固定状態を一度決定した場合は、その状態から動かないようにできるので、測定精度を上げることができる。
【0018】
このように、第1の実施形態の身体固定補助装置1によれば、筋放電量を測定しながら身体固定状態を変化させ、筋放電量の最小値に身体3を固定することにより、筋肉が最も弛緩している状態の身体固定状態を得ることができる。また、この筋肉が最も弛緩した状態の身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を最適設定条件として、記憶装置6に記憶することにより、以前計測したときの筋肉が最も弛緩した身体固定状態に身体3を合わせることができるので、筋収縮測定の再現性及び測定精度を高めることができる。例えば、最適設定条件では、筋収縮による膝蓋骨などの位置や関節の関節幅の変化を抑制することができるので、測定部位の身体固定状態を正確に合わすことができる。また、本装置1を使用して筋収縮状態を常に略同じ状態に固定した状態で筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、筋収縮による筋断面積の測定誤差を少なくでき、筋肥大等の測定精度を向上することが期待できる。
【0019】
次に、本発明の第2の実施形態に係る身体固定補助装置について図3、図4を参照して説明する。本実施形態における身体固定補助装置1は、前記第1の実施形態において、筋収縮の測定対象部位を腕の筋肉としたものである。
【0020】
図3に示すように、身体固定補助装置1は、架台2上に固定され腕関節部35を固定する腕関節固定装置8(身体固定手段)を備え、この腕関節固定装置8は、左右の腕関節部35の底屈角度・背屈角度を固定するそれぞれの腕関節固定台81を有する。この腕関節固定台81は、腕関節部35の底屈角度・背屈角度及び内転角・外転角への移動を拘束する固定具82a、82bを備えている。固定具82a、82bは、腕の手首付近と肘付近をそれぞれ固定する。
【0021】
筋電位計測装置5は、腕関節部35を腕関節固定台81に固定した状態で、腕関節部35の点線で囲んだB部の測定対象筋の周囲に電極パッド51aを配設し、この電極パッド51aにより検出された筋電位から計測される筋放電値を確認しながら、腕関節固定装置8により固定具82a、82bで拘束された腕関節部35の底屈・背屈角度および内転・外転角度を変化させ、複数の腕関節部35の腕固定状態において筋放電値の測定を行う。そして、筋放電値が略最小になったとき、筋肉が最も弛緩している状態であるとして、その状態での底屈・背屈角度および内転・外転角度の値を含む腕固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を筋収縮状態測定における最適設定条件として記憶装置6に記憶する。ここでは、固定具82a、82bにより左右の腕を接触させて一体にした状態で腕の側面及び上面を固定し、一度決定した固定状態から動かないようにしている。そして、この状態で腕関節部35の端点から測定部位までの距離を測定し、測定部位の位置を確定する。2回目以降の測定においては、この最適設定条件に腕固定状態及び筋放電量の測定値を合わせることができるので、腕の筋収縮測定の再現性及び測定精度を向上することができる。また、本装置1を使用して、最適設定条件に固定した状態で筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、腕の筋断面積の測定精度を向上することが期待できる。
【0022】
図4は、前記第2の実施形態の変形例を示し、架台2に身体3の全身を仰向けにした状態で右腕側の腕関節部35を腕関節固定台81に固定し、固定具82a、82b(図示なし)で拘束された腕関節部35の底屈・背屈角度および内転・外転角度を変化させて腕の筋放電値を測定するものである。この場合も、前記第2の実施形態と同様に、腕の筋収縮状態の測定の再現性を向上することができる。
【0023】
このように、第2の実施形態の身体固定補助装置1及びその変形例によれば、筋放電量を測定しながら腕関節部35の固定状態を変化させ、筋放電量が最小になるように身体3を固定することにより、筋肉が最も弛緩している状態の腕関節部35の固定状態を得ることができる。また、この筋肉が最も弛緩した状態の身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を最適設定条件として記憶装置6に記憶することにより、前回に計測したときの最適設定条件の身体固定状態に合わせて筋収縮状態を測定することができる。これにより、腕関節部35の筋収縮状態測定の再現性及び測定精度を高めることができる。また、本装置1を使用して、最適設定条件に固定した状態で筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、腕の筋断面積の測定誤差を少なくでき、筋肥大の測定精度を向上することが期待できる。
【0024】
次に、本発明の第3の実施形態に係る身体固定補助装置について図5、図6を参照して説明する。本実施形態に係る身体固定補助装置1は、前記第1の実施形態において、架台2に掛かる身体3の自重などの圧力分布を計測する感圧センサ9a、9b、9cを有するものである。なお、これらの図においては、身体固定補助装置1の形状を単純化して図示し、筋電位計測装置5、記憶装置6、及び測定補助指示部7は図示を省略している。
【0025】
身体固定補助装置1において、左右の足関節部31は、足関節固定装置4に固定され、底屈・背屈角度及び内転・外転角度への移動が拘束されている。身体3と架台2の間には、圧力を測定する圧力測定対象部位の足関節部31付近、膝関節部36付近、及び腰関節部37付近にそれぞれ感圧センサ9a、9b、9cが装着されている。これらの感圧センサ9a、9b、9cは、各圧力測定対象部位の周囲と架台2との接触面の圧力を計測することにより、身体3への荷重の掛かり方を測定し、筋肉の変形や筋収縮の状態を記憶する。そして、この測定結果を基に、例えば、身体3の一部において荷重に偏りがある場合は、この偏りによる身体3の変形を無くすように、身体固定状態を調整してこの荷重の偏りを低減し、略一定になるようにする。これにより、荷重の偏りによる身体3の不自然な変形を無くすことができ、筋収縮の偏りも低減できるので、筋放電値の最小値の測定精度を向上することができる。また、本装置1を使用して、身体への荷重の偏りを無くすようにした状態で筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、筋断面積の測定精度を向上することが期待できる。また、筋放電値の最小値時において、各感圧センサ9a、9b、9cで測定された各荷重の値を記憶装置6で記憶しておくことにより、次回の測定時に、前回の測定時の荷重状態を含めた身体固定状態を再現できているかどうかを確認でき、前回と同じ筋収縮の活動状態において計測することが可能になる。
【0026】
また、図6は、前記第3の実施形態の変形例を示し、感圧センサ9dを架台2の全体に取り付けたものである。これにより、全身の荷重面の圧力分布と位置を測定することができるので、前回と同じ身体固定状態であるかどうかをより詳細に確認することができる。
【0027】
このように、第3の実施形態及びその変形例によれば、架台2に掛かる使用者の荷重の圧力分布が得られるので、身体3の架台2上の身体固定状態が前回と同じであるかどうかをより精度良く確認できる。これにより、身体3の一部への荷重の偏りがあれば修正することができ、前回の測定時の圧力分布と同等になるように身体固定状態を調整することが可能となる。従って、筋収縮測定の再現性をさらに向上することができる。また、本装置1を使用して、筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、筋断面積の測定精度をさらに向上することが期待できる。
【0028】
次に、本発明の第4の実施形態に係る身体固定補助装置について図7を参照して説明する。本実施形態の身体固定補助装置1は、前記第1の実施形態において、膝関節固定装置11(身体固定手段)と、足関節固定装置4及び膝関節固定装置11の身体固定状態を計測する状態計測装置12(状態計測手段)と、足関節固定装置4及び膝関節固定装置11における身体固定状態を変える制御装置13(駆動制御手段)と、測定補助指示部7に一部が固定され膝関節部36を固定する固定具11aとをさらに備えている。足関節固定装置4は、制御装置13により制御されて足関節部31をその底屈・背屈方向及び回転方向等に動力源等で駆動する駆動部(駆動制御手段、図示なし)有し、膝関節固定装置11は、制御装置13により制御されて膝関節部36をその屈伸方向等に駆動する駆動部(駆動制御手段、図示なし)を有している。固定具11aは、膝関節部36をふらつかないように簡易固定するものである。
【0029】
状態計測装置12は、制御装置13による、足関節部31の底屈・背屈方向及び回転方向への移動後の固定状態、及び膝関節部36の屈伸方向に移動後の固定状態を計測するものである。また、この状態計測装置12は、それぞれの駆動部によって足関節部31及び膝関節部36が移動された量から各関節の角度や位置等の状態測定情報を得て、この状態測定情報を記憶装置6に記憶する。
【0030】
制御装置13は、筋電位計測装置5による筋放電量の計測結果と、記憶装置6に記憶されている状態測定情報による過去の筋放電量の計測結果とを比較し、今回の結果が過去の筋放電量の計測結果と異なる場合には、状態計測装置12で計測されたそれぞれの過去の計測状態と同じ状態になるように足関節固定装置4及び膝関節固定装置11の両方またはいずれか一方を駆動する。そして、筋放電量が過去の測定結果と同等になるように、それぞれの駆動部を制御してこれらの各固定装置4、11による足関節部31、膝関節部36の各関節を固定する角度、位置などを変化させて各固定状態を変化させ、それら各関節部31、36を以前の固定状態になるように設定する。また、各固定状態を変化させるための固定する角度の制御の方向は、足関節の底屈・背屈方向及び回転、足部の内転・外転など人体の関節の自由度に応じて変化させることができる。例えば、身体3の右半身の筋放電量が多い場合は、制御装置13が右足の関節を足関節固定装置4によって伸長・屈曲させることにより、筋放電量を少なくする方向に制御させることができる。
【0031】
すなわち、制御装置13は、最初に大腿部32の筋放電量を測定するときは、筋電位計測装置5で測定された筋放電量が最小になるように足関節固定装置4及び膝関節固定装置11の両方またはいずれか一方を制御して、最小値を求め、この状態に足関節部31、膝関節部36を固定して、このときの固定状態を状態計測装置12で計測してその状態計測情報を記憶装置6に記憶する。そして、2回目以降の測定では、制御装置13は最初の測定で得た状態計測情報の値になるように足関節固定装置4、膝関節固定装置11を制御する。これにより自動的に身体3の固定状態を前回の測定時と同じ状態に再現することができる。また、制御装置13は、2回目の測定において、最初から以前の固定状態に設定し、この状態から、さらに、足関節部31、膝関節部36の固定状態を変化させて筋放電量が最小となる状態を再測定して、この再測定して得た最小の筋放電量における測定状態を新しい固定状態とすることにより、より迅速に精度良く最も弛緩する筋収縮状態を得ることができる。
【0032】
このように、第4の実施形態による身体固定補助装置によれば、自動的に筋収縮状態が最小となるように身体3を移動できるので、筋肉が最も弛緩している筋収縮状態の再現を効率良く迅速に行うことが可能となる。
【0033】
上述した各種の実施形態の身体固定補助装置1によれば、使用者の身体、例えば脚部の足関節の状態を変化させながら筋収縮状態を筋電位計測装置5により計測することにより、以前計測した筋収縮の状態を再現することができ、筋収縮測定の再現性及び測定精度を高めることができる。また、本装置1を使用して筋収縮状態を常に略同じ状態に固定した状態で筋断面撮像等による筋断面積測定を行えば、筋収縮による筋断面積の測定誤差を少なくでき、筋肥大等の測定精度を向上することが期待できる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、身体の移動を制御できる固定装置を足関節部及び膝関節部以外の他の身体部位に設けることにより、より詳細に固定状態を制御して、より精度の高い筋断面積の測定を行うことが可能となる。また、感圧センサ以外に視覚センサなど他のセンサを設けることにより、さらに測定精度を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る身体固定補助装置の構成図。
【図2】(a)は上記身体固定補助装置の足関節固定装置における左右の足関節部の固定状態を示す図、(b)は(a)において左右の足関節部を一体にして固定した状態を示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る身体固定補助装置における腕関節固定装置の構成図。
【図4】上記実施形態の変形例の構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る身体固定補助装置の構成図。
【図6】上記実施形態の変形例の構成図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る身体固定補助装置の構成図。
【図8】(a)は筋肉収縮がないときの筋断面積の概略図、(b)は筋肉収縮があるときの筋断面積の概略図。
【符号の説明】
【0036】
1 身体固定補助装置
2 架台
3 身体
4 足関節固定装置(身体固定手段)
5 筋電位計測装置(筋放電量計測手段)
6 記憶装置(記憶手段)
8 腕関節固定装置(身体固定手段)
9a、9b、9c、9d 感圧センサ
11 膝関節固定装置(身体固定手段)
11a 固定具(身体固定手段)
12 状態計測装置(状態計測手段)
13 制御装置(駆動制御手段)
41 足関節固定台(身体固定手段)
42a、42b、42c、42d 固定具(身体固定手段)
81 腕関節固定台(身体固定手段)
82a、82b 固定具(身体固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の脚部を含む筋肉の一定の収縮状態を再現するために用いられる身体固定補助装置であって、
架台と、
前記架台の上に乗った使用者の身体を固定する身体固定手段と、
前記身体固定手段により固定された使用者の身体の筋放電量を計測する筋放電量計測手段と、
前記身体固定手段による複数の身体固定状態において前記筋放電量計測手段により筋放電量を計測し、その計測値が略最小になったとき、筋肉が最も弛緩している状態であるとして、その状態の身体固定状態及びそのときの筋放電量の計測値を記憶する記憶手段と、
を備えたことを特徴とする身体固定補助装置。
【請求項2】
前記架台に対する身体の圧力分布を計測する感圧センサを有することを特徴とする請
求項1記載の身体固定補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−79670(P2008−79670A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260174(P2006−260174)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】