説明

車両に搭載される情報処理装置及び運行管理サーバ

【課題】 本発明の課題は、車両に車両走行距離を取得するための特殊なセンサー等を備えることなく、車両の走行中に発生した不安全事象を検知することを目的とする。
【解決手段】 上記課題は、ブレーキランプの通電を監視するブレーキランプ通電監視装置から通知される、車両のブレーキ操作の開始を示すブレーキランプON及び該ブレーキ操作の終了を示すブレーキランプOFFのイベントに応じて、車両のブレーキ操作の開始時と終了時の各々に係り、該車両の位置を示す位置情報と、時刻とを含む運行実績データを記憶部に記録する運行実績記録処理部とを有することを特徴とする情報処理装置により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態に係るデータを記録して、走行中に発生した不安全事象を検知することに関する。
【背景技術】
【0002】
運輸業にとって事故は、サービス品質の確保に対する大きな脅威となる。そのため、各社が事故ゼロを目指した不断の努力を行っている。
【0003】
事故を削減する施策の一つとして、車載センサーにより車両の走行状態をモニターし、ヒヤリハットとも呼ばれる、事故には至らなかったが、その危険性があった事象である不安全事象の発生を記録しておくことが考えられる。
【0004】
このような観点において、車両などでブレーキが踏まれた際に、タイヤがロック状態ですべるスリップを起こしていたかどうかを判断するために、車両のデータを収集し、ABS(Antilock Brake System)から得られるスリップ率により示される道路の状態を記録することや、スリップ率が閾値を超えた場合に天候などの環境情報、走行場所、車両速度などの車両状態を記憶すること等により安全運転の支援を行うことなどが提案されている。また、車速、積載状況、路面状態などの走行状況に対応する安全な現速度範囲に基づいて記録条件を変化させること、GPS(Global Positioning System)によって得られる位置情報を短周期で取得することでその間の車両速度を算出することなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−65997号公報
【特許文献2】特開2009−29343号公報
【特許文献3】特開2009−098738号公報
【特許文献4】特開平7−246924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した車両に搭載されるABSは、急ブレーキが踏まれた際に、下記式(1)で求めたスリップ率が、
スリップ率 = (車両速度−車輪速度)/車両速度 (1)
一定の閾値を超えると、タイヤがロックしたスリップ状態になったと判断して、ブレーキを一時的に緩めて走行状態に戻してから再度ブレーキをかけるように車両の走行制御を行う。
【0007】
このスリップ率を算出するためには、車両速度と車輪速度の2つの値を計測する必要があるが、車両速度を正確に算出することは容易ではない。ABSでは車両に特殊なセンサーを設けることによって得られる車両速度を示す情報を用いてスリップ率を算出している。このように、ABSでは特殊なセンサーなどの費用が掛かるといった問題がある。
【0008】
また、GPSから得られる位置情報のみで車両速度を高精度で算出しようとすると、高度な補正処理を行う必要があると共に、短周期で位置情報を記録することが要求されるため高性能な装置を必要とするといった問題がある。
【0009】
よって、本発明の目的は、車両に車両走行距離を取得するための特殊なセンサー等を備えることなく、車両の走行中に発生した不安全事象を検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の情報処理装置は、ブレーキランプの通電を監視するブレーキランプ通電監視装置から通知される、車両のブレーキ操作の開始を示すブレーキランプON及び該ブレーキ操作の終了を示すブレーキランプOFFのイベントに応じて、車両のブレーキ操作の開始時と終了時の各々に係り、該車両の位置を示す位置情報と、時刻とを含む運行実績データを記憶部に記録する運行実績記録処理部とを有する。
【0011】
上記課題を解決するための手段として、コンピュータに車両の運行実績データを記録する上記情報処理装置として機能させるためのプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体、及び運行実績記録方法とすることもできる。
【0012】
また、開示の運行管理サーバは、車両の速度が減速開始した減速開始時刻と該速度の減速が終了した減速終了時刻の各々に係る該車両の位置を示す位置情報と時刻とを含む運行実績データと、該車両の車輪速度に係る車輪速度情報と該車輪速度情報を取得した時刻とを含むデジタコデータとを有する走行データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記走行データを参照して、該走行データの前記運行実績データに基づく前記車両の速度が減速開始した減速開始時刻から該速度の減速が終了した減速終了時刻までの減速期間において、該走行データの前記デジタコデータの前記車輪速度情報と、該減速開始時刻の位置情報及び該減速終了時刻の位置情報から得られる車両走行距離とから推定されるスリップ率に基づいて、該車両の走行方向の制御ができない不安全事象を検知する検知部とを有する。
【0013】
上記課題を解決するための手段として、コンピュータに車両の不安全事象を検知する上記運行管理サーバとして機能させるためのプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体、及び不安全事象検知方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
開示の技術では、車両に車両走行距離を取得するための特殊なセンサー等を備えることなく、該車両の走行中のブレーキ操作の開始と終了の際の位置情報を取得できることによって、該車両の走行方向の制御ができないような危険なスリップの発生を精度よく検知することができる。従って、運行管理側において、車両の走行中に発生した不安全事象を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スリップ率曲線を示すグラフである。
【図2】運行管理システムを示す図である。
【図3】運行管理サーバのハードウェア構成を示す図である。
【図4】車載情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【図5】運行管理システムにおける機能構成例を示す図である。
【図6】車載情報処理装置における処理概要を説明するためのフローチャート図である。
【図7】運行管理サーバにおける処理概要を説明するためのフローチャート図である。
【図8】車両側での運行実績記録処理を説明するためのフローチャート図である。
【図9】運行実績データの例を示す図である。
【図10】運行管理サーバ側での高スリップ状態検知処理を説明するためのフローチャート図である。
【図11】減速期間でデジタコデータから抽出したデータ例を示す図である。
【図12】減速期間の各時刻で高スリップ状態は発生していなかった場合の走行データ例を示す図である。
【図13】減速期間において高スリップ状態が発生した時刻があった場合の走行データ例を示す図である。
【図14】結果出力部による表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施例では、特殊なセンサーを必要とするABS(Antilock Brake System)などのシステムを車両に搭載することなく、ドライバーによってブレーキ操作がなされた際の位置情報を用いて車両速度を求め、車輪速度とによってスリップ率を算出し、車両の走行中の不安全事象を検知する。
【0017】
先ず、スリップ率について図1で詳述する。図1は、スリップ率曲線を示すグラフである。図1中、縦軸に減速度を示し、横軸にスリップ率を示す。
【0018】
スリップ率は、車輪の回転速度から算出される速度(車輪速度)と、実際の走行速度(車両速度)のズレの大きさを表す値であり、上述したように、式(1)で定義される。
【0019】
スリップ率 = (車両速度−車輪速度)/車両速度 (1)
減速時のスリップ率Sは、0<S≦1の範囲を取る。車両速度と車輪速度とにズレを生じる原因は2つある。一つは、減速の際の制動力によってタイヤが変形したために生じるズレである。タイヤが変形すると、タイヤが1回転した際に進む距離も変化する。もう一つは、タイヤ接地面が路面に対して実際に滑っているために生じるズレである。
【0020】
前者は、タイヤの一般的な性質であり危険状態ではない。一方、後者は、容易にタイヤロックに至る状態であり危険である。車両が急ブレーキを掛けると、車輪は回転をしていなくても滑って車両が移動をして、ハンドル操作を行っても車両が向かう向き(走行方向)の制御ができなくなる危険な状態である。
【0021】
図1に示すグラフでは、スリップ率と減速度との関係を表すスリップ率曲線として、好条件下のスリップ率曲線1aと、悪条件下のスリップ率曲線1bとが例示されている。スリップ率は、タイヤの材質、空気圧、及び重量、路面状態、地形、天候などの走行環境で変化するが、好条件下のスリップ率曲線1aと悪条件下のスリップ率曲線1b共に、以下の2つの性質を保持する。
【0022】
・減速度が最大となるまでは、スリップ率と減速度はほぼ比例関係を示す。
【0023】
・減速度が最大となるときのスリップ率の値は大きく変わらず、具体的には0.2〜0.25の範囲に収まる。
【0024】
ABSでは、最大減速度付近1c(最大減速度時のスリップ率を含むスリップ率0.2〜0.25の範囲)を保つようにブレーキ力が制御される。スリップ率0.2〜0.25の範囲を最大減速度スリップ率Smaxとする。スリップ率が、この最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超える場合、タイヤ接地面と路面とが実際に滑っていることが大きく影響している状態であり、車両が危険な状態であることを表している。この状態を、以降、高スリップ状態と言うことにする。
【0025】
最大減速度スリップ率Smaxは、通常想定される走行環境下においては、凡そ一定であり、0.2〜0.25の範囲の値に収まる。つまり、路面状況等の走行環境に応じて閾値を変更する必要がない。本実施例において、スリップ率曲線1a、1b等のいずれにおいても、最大減速度となる最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超えるスリップ率が算出された場合に、高スリップ状態が発生したとして検知することを「ルール」とする。この「ルール」が、後述される減速期間の平均スリップ率、また、減速期間内の時刻毎のスリップ率との比較に適用される。
【0026】
高スリップ状態の発生は、物理的に危険な状態であり、客観的基準に基づく「不安全事象」であると定義付けできる。従って、本実施例において、高スリップ状態の発生を検知し、客観的基準に基づく不安全事象を検知する仕組みを以下に例示し、説明する。
【0027】
図2は、運行管理システムを示す図である。図2に例示される運行管理システム1000は、運行管理サーバ100と一以上の車両2とを有する。
【0028】
図2において、運行管理サーバ100は、車両2から収集した走行データ78を用いて、運行管理に係るデータを管理するためのコンピュータ装置である。車両2は、安全な運行の下に、運輸業などの所定の業務を行うために使用される車両であり、車載情報処理装置200を有する。車載情報処理装置200は、運行管理サーバ100へ提供する走行データ78を作成するためのコンピュータ装置である。
【0029】
走行データ78は、車両2にてSD(Secure Digital)カードなどに記憶され、運行管理サーバ100へ提供される。走行データ78の運行管理サーバ100への提供方法は、SDカードに限定されない。車両2と運行管理サーバ100とが通信することによって、走行データ78が運行管理サーバ100へ提供されるようにしてもよい。
【0030】
図3は、運行管理サーバのハードウェア構成を示す図である。図3において、運行管理サーバ100は、コンピュータによって制御される装置であり、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリユニット12と、表示ユニット13と、出力ユニット14と、入力ユニット15と、通信ユニット16と、記憶装置17と、ドライブ18とを有し 、システムバスB1に接続される。
【0031】
CPU11は、メモリユニット12に格納されたプログラムに従って運行管理サーバ100を制御するプロセッサである。メモリユニット12には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read-Only Memory)等が用いられ、CPU11にて実行されるプログラム、CPU11での処理に必要なデータ、CPU11での処理にて得られたデータ等を格納する。また、メモリユニット12の一部の領域が、CPU11での処理に利用されるワークエリアとして割り付けられている。
【0032】
表示ユニット13は、CPU11の制御のもとに必要な各種情報を表示する。出力ユニット14は、プリンタ等を有し、運行管理を行う管理者などの利用者からの指示に応じて各種情報を出力するために用いられる。入力ユニット15は、マウス、キーボード等を有し、利用者が、運行管理サーバ100が処理を行なうための必要な各種情報を入力するために用いられる。
【0033】
通信ユニット16は、インターネット、LAN(Local Area Network)等に接続し、外部装置との間の通信制御をするための装置である。運行管理サーバ100と車両2とが通信することによって、通信ユニット16を介して、車両2の走行データ78が運行管理サーバ100に提供されてもよい。
【0034】
記憶装置17には、例えば、ハードディスクユニットが用いられ、各種処理を実行するプログラム等のデータを格納する。
【0035】
運行管理サーバ100によって行われる処理を実現するプログラムは、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)等の記憶媒体19によって運行管理サーバ100に提供される。即ち、プログラムが保存された記憶媒体19がドライブ18にセットされると、ドライブ18が記憶媒体19からプログラムを読み出し、その読み出されたプログラムがシステムバスBを介して記憶装置17にインストールされる。そして、プログラムが起動されると、記憶装置17にインストールされたプログラムに従ってCPU11がその処理を開始する。尚、プログラムを格納する媒体としてCD−ROMに限定するものではなく、コンピュータが読み取り可能な媒体であればよい。コンピュータ読取可能な記憶媒体として、CD−ROMの他に、DVDディスク、USBメモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリであっても良い。
【0036】
運行管理サーバ100によって行われる処理を実現するプログラムは、通信ユニット16を介して外部装置から提供されてもよい。通信ユニット16による通信は無線又は有線に限定されるものではない。
【0037】
ドライブ18は、更に、SDカード20に対応したインターフェースを有するドライブであり、CPU11の制御の下、車両2の走行データ78が格納されたSDカード20から走行データ78が読み出され、記憶装置17に格納される。
【0038】
図4は、車載情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。図4に例示されるハードウェア構成は、本実施例に係る構成部のみを示すものであり、種々の実施の形態において他構成部を含んでもよい。
【0039】
図4において、車載情報処理装置200は、コンピュータによって制御される装置であり、CPU(Central Processing Unit)211と、メモリ212と、表示装置213と、入力装置215と、通信装置216と、SDカードI/F(インターフェース)218と、時刻計測装置219と、位置計測装置(GPS)221と、ブレーキランプ223に接続されるブレーキランプ通電監視装置222と、回転速度計(デジタコ)227とを有し、バスB2に接続される。
【0040】
後述される運行実績記録処理部230は、メモリ212に格納された対応するプログラムを実行するCPU211の制御の下に、メモリ212内の作業領域と、SDカードI/F218と、時刻計測装置219と、位置計測装置221と、ブレーキランプ223に接続されるブレーキランプ通電監視装置222とが用いられて実現される。
【0041】
また、後述されるデジタコ記録処理部250は、メモリ212に格納された対応するプログラムを実行するCPU211の制御の下に、メモリ212の作業領域と、SDカードI/F218と、時刻計測装置219と、回転速度計(デジタコ)227とが用いられて実現される。
【0042】
CPU211は、メモリ212に格納されたプログラムに従って車載情報処理装置200を制御するプロセッサである。メモリ212には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read-Only Memory)等が用いられ、CPU211にて実行されるプログラム、CPU211での処理に必要なデータ、CPU211での処理にて得られたデータ等を格納する。また、メモリ212の一部の領域が、CPU211での処理に利用される作業領域として割り付けられている。
【0043】
表示装置213は、CPU211の制御のもとに必要な各種情報を表示する。入力装置215は、種々の選択用のキーなどの操作部を有し、車両2のドライバーが、車載情報処理装置200が処理を行なうための必要な各種情報を入力するために用いられる。表示装置213は、タッチパネルなどであってもよく、表示装置213と入力装置215とは一体化した装置であってもよい。
【0044】
通信装置216は、無線通信などの通信制御を行う装置である。本実施例では、SDカード20を用いて運行管理サーバ100へ走行データ78を提供する構成で説明するが、運行管理サーバ100と通信して走行データ78を運行管理サーバ100へ転送するために用いてもよい。SDカードI/F218は、SDカード20と接続するためのインターフェース部であり、走行データ78を格納するために用いられる。走行データ78を格納するため記憶媒体は、SDカード20に限定されず、可搬型記憶媒体であればよい。時刻計測装置219は、現在時刻を計測する装置である。
【0045】
位置計測装置221は、GPS(Global Positioning System)であり、現在の位置情報を所定間隔(1分毎など)で取得するために用いられる。CPU211は、所定間隔(1分毎など)で位置計測装置(GPS)221から車両2の位置情報を取得し、また、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得して、時刻情報と位置情報とをSDカードI/F218を介してSDカード20に時系列に蓄積し格納する。その際には、位置計測に係るイベント内容を示すようにする。車両2のエンジンをかけた始動時には、位置計測の記録開始がイベントとなり、所定間隔での位置計測では定時記録がイベントとなる。
【0046】
ブレーキランプ通電監視装置222は、ブレーキランプ223に接続されており、ブレーキランプ223への通電を監視するために用いられ、走行中の車両2における減速操作の開始と終了とを検知する。ブレーキランプ通電監視装置222は、ブレーキランプ223への通電を監視して、ブレーキランプ223への通電を検知したときに減速操作の開始とし、通電されなくなったとときに減速操作の終了として検知する。即ち、ブレーキランプ通電監視装置222は、ブレーキランプ223がオフ状態からオン状態へ変化(通電開始)した場合、及び、オン状態からオフ状態へ変化(通電終了)した場合に、イベントをCPU211へ発行する。ブレーキランプ通電監視装置222は、減速開始前のポンピングブレーキを考慮し、ブレーキランプ223への通電開始からの時間が、予め設定しておいた閾値を超えた時点で減速操作開始としてもよい。
【0047】
また、別の方式において、ブレーキに加わる力を圧力センサーで測定し、その力が予め設定しておいた閾値を超えたときに減速開始と判定し、その力が閾値以下になったときに減速終了と判定することもできる。いずれの方式においても、ブレーキランプ通電監視装置222は、減速操作の開始又は終了を検知した場合は、CPU11にイベントを発行する。
【0048】
CPU211は、ブレーキランプ通電監視装置222からのイベントを受けて、位置計測装置(GPS)221から車両2の位置情報を取得し、また、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得して、現在時刻と位置情報とをSDカードI/F218を介してSDカード20に時系列に蓄積し格納する。その際には、ブレーキランプ通電に係るイベント内容を示すようにする。減速開始による位置情報の記録の場合はブレーキランプONがイベントとなり、減速終了による位置情報の記録の場合はブレーキランプOFFがイベントとなる。
【0049】
回転速度計(デジタコ)227は、デジタルタコメータであり、現在の車輪速度と減速度とを含む車輪速度情報を所定間隔(0.5秒毎など)で取得するために用いられる。車輪走行距離は、車輪速度と減速度とから算出される。CPU211は、所定間隔(0.5秒毎など)で回転速度計(デジタコ)227から車両2の車輪速度情報を取得し、また、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得して、時刻情報と車輪速度情報とをSDカードI/F218を介してSDカード20に時系列に蓄積し格納する。
【0050】
メモリ212又は/及びSDカード20が、本実施例に係る車載情報処理装置200の記憶部に相当する。
【0051】
本実施例では、車載情報処理装置200がブレーキランプ通電監視装置222を備えることによって、所定間隔で位置情報を取得することに加えて、ブレーキランプ223の点灯及び消灯を契機にして取得した位置情報に基づいて車両走行距離を算出でき、ブレーキランプ223が点灯してから消灯するまでの間の回転速度計(デジタコ)227による車輪速度情報に基づいて車輪走行距離を算出することができ、急ブレーキによるスリップが起こっていたかを判断することができる。
【0052】
図5は、運行管理システムにおける機能構成例を示す図である。図5に示される運行管理システム1000において、車載情報処理装置200は、運行実績記録処理部230とデジタコ記録処理部250とを有する。
【0053】
運行実績記録処理部230は、位置情報取得部31と、時刻情報取得部33と、データ作成部35と、データ記録部37とを有し、CPU211(図4)が夫々対応するプログラムを実行することによって実現される。
【0054】
位置情報取得部31は、所定間隔(1分毎など)又はブレーキランプ通電監視装置222からのイベントに応じて、位置計測装置(GPS)221から車両2の位置情報を取得する処理部である。
【0055】
時刻情報取得部33は、所定間隔(1分毎など)又はブレーキランプ通電監視装置222からのイベントに応じて、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得する処理部である。
【0056】
データ作成部35は、位置情報取得部31が取得した位置情報と、時刻情報取得部33が取得した時刻情報とを用いて、運行実績データ78aを作成する処理部である。
【0057】
データ記録部37は、データ作成部35によって作成された、時刻情報と位置情報とを含む運行実績データ78aをSDカードI/F218を介してSDカード20に時系列に蓄積し格納する。
【0058】
デジタコ記録処理部250は、車輪速度情報取得部51と、時刻情報取得部53と、データ作成部55と、データ記録部57とを有し、CPU211が夫々対応するプログラムを実行することによって実現される。
【0059】
車輪速度情報取得部51は、所定間隔(0.5秒毎など)のイベントに応じて、回転速度計(デジタコ)227から現在の車輪速度と減速度とを含む車輪速度情報を取得する処理部である。
【0060】
時刻情報取得部53は、所定間隔(0.5秒毎など)のイベントに応じて、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得する処理部である。
【0061】
データ作成部55は、車輪速度情報取得部51が取得した車輪速度情報と、時刻情報取得部53が取得した時刻情報とを用いて、デジタコデータ78bを作成する処理部である。
【0062】
データ記録部57は、データ作成部55によって作成された、時刻情報と位置情報とを含むデジタコデータ78bをSDカードI/F218を介してSDカード20に時系列に蓄積し格納する。
【0063】
データ記録部37及び57は、運行実績データ78a及びデジタコデータ78bをSDカード20に格納する代わりに、メモリ212内に格納し、運行管理サーバ100との通信によって、運行実績データ78a及びデジタコデータ78bを含む走行データ78を運行管理サーバ100へ提供するようにしてもよい。
【0064】
運行管理サーバ100は、データ入力部71と、走行データ処理部72と、結果出力部74と、高スリップ状態検知部73と、運行管理DB89とを有し、CPU11(図3)が夫々対応するプログラムを実行することによって実現される。運行管理DB89は記憶部80に格納される。記憶部80は、図3に示す記憶装置17及び/又はメモリユニット12を有する。
【0065】
データ入力部71は、車両2の車載情報処理装置で作成された運行実績データ78aとデジタコデータ78bとを含む走行データ78を入力する処理部である。データ入力部71は、SDカード20がドライブ18にセットされると、ドライブ18を介してSDカード20に格納された走行データ78を運行管理システム1000に入力する。又は、データ入力部71は、無線通信によって車載情報処理装置200から走行データ78を入力してもよい。入力された走行データ78は、記憶部80に格納されている運行管理DB79に追加される。
【0066】
走行データ処理部72は、記憶部80に格納されている運行管理DB79を参照して、車両2の走行データ78を処理し、車両2の走行したルートなどを生成する処理部である。
【0067】
結果出力部74は、走行データ処理部72又は高スリップ状態検知部73による処理結果を表示ユニット13に表示させる処理部である。
【0068】
高スリップ状態検知部73は、車両2から取得した走行データ78を用いて、車両2が減速を開始した減速開始時刻と、減速を終了した減速終了時刻との間で高スリップ状態の発生を検知する処理部である。高スリップ状態検知部73は、以下の手順に従って、高スリップ状態の発生を検知する。
【0069】
(手順A)
減速開始時刻と減速終了時刻との間の位置計測装置(GPS)221から得た位置情報に基づく実際の走行距離と、回転速度計(デジタコ)227から得た車輪走行距離とから平均スリップ率を算出し、最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」と比較することによって高スリップ状態が発生したか否かを判定する。
【0070】
手順Aで算出される平均スリップ率が小さいからといって、減速時間中に高スリップ状態が発生していないとは言えない。従って、本実施例では、減速時間中の高スリップ常態の発生を見逃すことなく検知するために、更に以下の手順B及び手順Cを行う。
【0071】
(手順B)
計測時刻毎のスリップ率はその時刻の減速度に比例するという仮定の下に、計測時刻毎のスリップ率を、その時刻の車輪速度、減速度、及び手順Aで算出した平均スリップ率を用いて算出する。上述した仮定は、即ち、「減速時間中に高スリップ状態が発生していない」という仮定と同値である。
【0072】
(手順C)
算出された計測時刻毎のスリップ率が仮定と矛盾するか否かを、最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」と比較することによって判定し、矛盾を生じている場合に、高スリップ状態が発生していると判定する。
【0073】
結果出力部74は、高スリップ状態検知部73によって判定された高スリップ状態が発生したとされる位置情報に基づいて、運行管理DBを参照することによって、表示ユニット13に高スリップ状態の発生を表した地図を表示させる。
【0074】
運行管理DB79は、道路地図に係る地図情報を格納77、車両2毎の走行データ78などを管理する。
【0075】
運行管理システム1000における全体処理フローについて図6及び図7で説明する。図6は、車載情報処理装置における処理概要を説明するためのフローチャート図である。図6(A)では、運行実績記録処理部230での処理概要が示されている。図6(A)を参照すると、運行実績記録処理部230において、位置情報取得部31は、所定間隔(1分毎など)、又は、ブレーキランプ通電監視装置222からのイベントに基づく減速開始時刻及び減速終了時刻で、位置計測装置(GPS)221から車両2の現在の位置を示す位置情報を取得する(ステップS11)。
【0076】
また、時刻情報取得部33は、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得する(ステップS12)。ステップS11とS12の順番は問わない。時刻情報を取得後に位置情報を取得してもよい。
【0077】
位置情報及び時刻情報を取得後、データ作成部35によって、運行実行データ78aが作成され(ステップS13)、データ記録部37によって運行実績データ78aが記憶される(ステップS14)。
【0078】
運行実績記録処理部230は、計測終了であるか否かを判断する(ステップS15)。計測終了の場合、運行実績記録処理部230は、ステップS11へ戻り、上述同様の処理を計測終了まで繰り返す。計測終了の場合、運行実績記録処理部230は、この処理を終了する。
【0079】
図6(B)では、デジタコ記録処理部250での処理概要が示されている。図6(B)を参照すると、デジタコ記録処理部250において、車輪速度情報取得部51は、所定間隔(0.5分毎など)で、現在の車輪速度と減速度と車輪速度情報を取得する(ステップS21)。
【0080】
また、時刻情報取得部53は、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得する(ステップS22)。ステップS21とS22の順番は問わない。時刻情報を取得後に位置情報を取得してもよい。
【0081】
車輪速度情報及び時刻情報を取得後、データ作成部55によって、デジタコデータ78bが作成され(ステップS23)、データ記録部57によってデジタコデータ78bが記憶される(ステップS24)。
【0082】
デジタコ記録処理部250は、計測終了であるか否かを判断する(ステップS25)。計測終了の場合、デジタコ記録処理部250は、ステップS21へ戻り、上述同様の処理を計測終了まで繰り返す。計測終了の場合、デジタコ記録処理部250は、この処理を終了する。
【0083】
図7は、運行管理サーバにおける処理概要を説明するためのフローチャート図である。図7を参照すると、運行管理サーバ100のデータ入力部71によって、走行データ78を記憶部80の運行管理DB79に追加する(ステップS31)。
【0084】
走行データ処理部72は、運行管理DB79を参照して、走行データ78の運行実績データ78aのうち所定間隔(1分毎)の位置情報と、デジタコデータ78bとを用いて、車両2の走行に係る所定処理を行い(ステップS32)、結果出力部74は、走行データ処理部72による処理結果を、表示ユニット13に表示する(ステップS34)。
【0085】
一方、高スリップ状態検知部73は、運行管理DB79を参照して、走行データ78の運行実績データ78aを用いて、高スリップ率状態を検知し(ステップS33)、結果出力部74は、高スリップ状態検知部73による処理結果を、表示ユニット13に表示する(ステップS34)。
【0086】
走行データ処理部72によるステップS32と、高スリップ状態検知部73によるステップS33の処理順は問わない。また、いずれか一方を、利用者の選択に応じて行うようにしてもよい。
【0087】
ステップS33での高スリップ状態検知部73による処理の概要を説明する。高スリップ状態検知部73は、車両2の走行データ78の運行実績データ78aから、減速開始時刻と減速終了時刻との間の減速期間毎に、減速開始時刻及び減速終了時刻の位置情報を取得する(ステップS33−1)。運行実績データ78aに含まれるイベント内容から減速開始時刻及び減速終了時刻のレコードを特定でき、夫々の位置情報を取得できる。
【0088】
高スリップ状態検知部73は、ステップS33−1において取得した減速開始時刻及び減速終了時刻の位置情報と、デジタコデータ78bとを用いて、上述した時刻毎のスリップ率はその時刻と減速度は比例するという仮定のもとでスリップ率を算出する(ステップS33−3)。
【0089】
そして、高スリップ状態検知部73は、上述した時刻毎のスリップ率はその時刻の減速度に比例するという仮定と矛盾するか否かを判断する(ステップS33−3)。仮定と矛盾していないと判断した場合、高スリップ状態検知部73は、高スリップ率状態は発生しなかったと判定する(ステップS33−4)。一方、仮定と矛盾すると判断した場合、高スリップ状態検知部73は、高スリップ率状態が発生したと判定する(ステップS33−5)。
【0090】
高スリップ率状態の発生有無の判定後、高スリップ状態検知部73は、全ての減速期間を処理したか否かを判断する(ステップS33−6)。全ての減速期間に対して処理が終了していない場合、高スリップ状態検知部73は、ステップS33−2へ戻り、上述同様の処理を繰り返す。一方、全ての減速期間に対して処理を終了している場合、高スリップ状態検知部73は、検知した高スリップ状態が発生した位置情報を示す処理結果を結果出力部74に通知する。
【0091】
次に、本実施例における高スリップ状態を検知することに係る処理部分について詳述する。先ず、車両2側の車載情報処理装置200の運行実績記録処理部230における運行実績記録処理について詳述する。
【0092】
図8は、車両側での運行実績記録処理を説明するためのフローチャート図である。図8を参照すると、運行実績記録処理部230は、イベントを受信すると、位置情報を取得する時刻か否かを判断する(ステップS41:定時記録処理)。受信したイベントが位置情報を取得する時刻であることを示さない場合、運行実績記録処理部230は、ステップS42へと進む。
【0093】
一方、受信したイベントが位置情報を取得する時刻であることを示す場合、運行実績記録処理部230において、位置情報取得部31は、位置計測装置(GPS)221から車両2の現在の位置を示す位置情報を取得し(ステップS41a)、時刻情報取得部33は、時刻計測装置219から現在時刻を示す時刻情報を取得する(ステップS41b)。ステップS41aとS41bの順番は問わない。時刻情報を取得後に位置情報を取得してもよい。位置情報及び時刻情報を取得後、データ作成部35によって、運行実行データ78aが作成され(ステップS41c)、データ記録部37によって運行実績データ78aが記憶される(ステップS41d)。その後、ステップS42へと進む。
【0094】
運行実績記録処理部230は、更に、受信したイベントが減速開始を通知するイベントであるか否かを判断する(ステップS42:減速開始時処理)。受信したイベントが減速開始を通知するイベントであることを示さない場合、運行実績記録処理部230は、ステップS42へと進む。
【0095】
一方、受信したイベントが減速開始を通知するイベントであることを示す場合、上述したステップS41a、S41b、S41c、及びS41dに相当する処理をステップS42a、S42b、S42c、及びS42dで行う。
【0096】
運行実績記録処理部230は、更に、受信したイベントが減速終了を通知するイベントであるか否かを判断する(ステップS43:減速終了時処理)。受信したイベントが減速終了を通知するイベントであることを示さない場合、運行実績記録処理部230は、ステップS42へと進む。
【0097】
一方、受信したイベントが減速終了を通知するイベントであることを示す場合、上述したステップS41a、S41b、S41c、及びS41dに相当する処理をステップS43a、S43b、S43c、及びS43dで行う。
【0098】
運行実績記録処理部230は、計測終了であるか否かを判断する(ステップS44)。計測終了の場合、運行実績記録処理部230は、ステップS41へ戻り、上述同様の処理を計測終了まで繰り返す。計測終了の場合、運行実績記録処理部230は、この処理を終了する。
【0099】
上述した処理によって、運行実績記録処理部230によって作成される運行実績データ78aの例を図9に示す。図9は、運行実績データの例を示す図である。図9において、運行実績データ78aは、時刻、イベント内容、位置情報(緯度)、位置情報(経度)などの項目を有する。運行実績データ78aは、時刻毎に、イベント内容及び位置情報を示すテーブルである。
【0100】
時刻は、位置情報を取得した時刻を示す。イベント内容は、位置情報の取得の契機を示す。イベント内容には、所定時間ごとの定時記録、ブレーキランプ223への通電開始(減速開始)を示すブレーキランプON、又は、ブレーキランプ223への通電終了(減速終了)を示すブレーキランプOFFなどが示される。
【0101】
図9に示すデータ例では、時刻「10:00:00.0」に「ブレーキランプON」のイベントに応じて取得した位置情報(緯度)「35°33′58.58″」及び位置情報(経度)「139°44′17.57″」が示され、時刻「10:00:10.0」に「ブレーキランプOFF」のイベントに応じて取得した位置情報(緯度)「35°34′02.32″」及び位置情報(経度)「139°44′16.24″」が示されている。この2つの時刻間が、高スリップ状態の発生を判定するための減速期間9aとなる。
【0102】
また、時刻「10:04:25.0」に「ブレーキランプON」のイベントに応じて取得した位置情報(緯度)「35°35′16.86″」及び位置情報(経度)「139°44′24.08″″」が示され、時刻「10:04:37.5」に「ブレーキランプOFF」のイベントに応じて取得した位置情報(緯度)「35°35′17.30」及び位置情報(経度)「139°44′26.03″」が示されている。この2つの時刻間が、高スリップ状態の発生を判定するための減速期間9bとなる。
【0103】
次に、運行管理サーバ100側での高スリップ状態検知部73による高スリップ状態検知処理を詳述する。図10は、運行管理サーバ側での高スリップ状態検知処理を説明するためのフローチャート図である。図10を参照すると、高スリップ状態検知部73は、車両2の運行実績データ78aから減速開始時(ブレーキランプON)及び減速終了時(ブレーキランプOFF)の位置情報を取得する(ステップS61)。
【0104】
そして、高スリップ状態検知部73は、減速開始時から減速終了時の間(減速期間)の車両走行距離を算出する(ステップS62)。高スリップ状態検知部73は、ステップS61で取得した減速開始時の位置情報と、減速終了時の位置情報と、地図情報78とを用いて、減速開始時から減速終了時までの車両2の走行区間を推定し、その走行区間の走行距離を算出することによって、車両走行距離を算出する。
【0105】
また、高スリップ状態検知部73は、減速開始の時刻と、減速終了時の時刻とから、デジタコデータ78bを参照することによって得られる車輪速度を用いて、減速開始時から減速終了時までの減速期間の時刻毎の車輪走行距離を算出する(ステップS63)。ステップS63での処理を、車両走行距離を算出するためのステップS61及びS62の前に行ってもよい。
【0106】
車輪走行距離は、回転速度計(デジタコ)227で計測された走行距離をそのまま用いることも可能であるが、法律上、走行距離は最低10mの精度で記録してあればよいため、本実施例でそのまま使用するには精度が粗すぎる可能性がある。従って、上述したように、車輪速度を用いて減速期間における車輪走行距離を算出することによって、十分な精度を得ることができる。
【0107】
車両走行距離及び車輪走行距離を算出後、高スリップ状態検知部73は、平均スリップ率を算出する(ステップS64)。高スリップ状態検知部73は、ステップS62で算出した車両走行距離と、ステップS63で算出した車輪走行距離により、以下の式(2)により、平均スリップ率を算出する。
【0108】
平均スリップ率 = (車両走行距離 − 車輪走行距離) / 車両走行距離 (2)
そして、高スリップ状態検知部73は、算出した平均スリップ率が図1に示す最大減速度付近1cにおける最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超過しているか否かを判断する(ステップS65)。最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」(図1)を超過している場合、高スリップ状態検知部73は、高スリップ率状態が発生したことを示す情報を位置情報と対応付けて、記憶部80の運行管理DB79に格納して(ステップS69)、この処理を終了する。
【0109】
一方、ステップS65にて、算出した平均スリップ率が最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超過していない場合、高スリップ状態検知部73は、減速期間(減速中)における各時刻の車輪速度の値及び減速度の値をデジタコデータ78bから取得する(ステップS66)。
【0110】
最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超過していない場合であっても、減速中の全ての時刻において高スリップ状態が発生していないとはいえない。そこで、まず、「減速中の各時刻におけるスリップ率はその時の減速度に比例する」という仮定を設ける。この仮定は、すなわち、「減速中に高スリップ状態は全く発生しない」ことと同値である。
【0111】
上記仮定下において各時刻のスリップ率と減速度の比例定数とを算出する(ステップS67)。この比例定数をα、減速中の時刻Tiにおける減速度をαiとすると、その時刻におけるスリップ率Siはαaiとなる。また、スリップ率Siと平均スリップ率Sの間には、時刻Tiにおける速度をviとすると以下の式(3)が成立する。
【0112】
S = ΣviSi/Σvi = αΣviai/Σvi (3)
上記式(3)に、ステップS64で算出した平均スリップ率S及び、減速期間においてデジタコデータ78bに記録されている速度vi及びその速度差に相当する減速度aiを代入することによりαを算出し、各時刻におけるスリップ率Siをαaiとして算出する。なお、各時刻における減速度aiは、上述したように車両走行距離と車輪走行距離との速度差で算出したが、加速度センサーを車両に設けることによって、前後方向の加速度を計測して記録した情報を用いることも可能である。
【0113】
高スリップ状態検知部73は、減速期間において、最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超過するスリップ率があったか否かを判断する(ステップS68)。最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超過するスリップ率があった場合、高スリップ状態検知部73は、高スリップ率状態が発生したことを示す情報を記憶部80の作業領域に出力して(ステップS69)、この処理を終了する。
【0114】
一方、ステップS68において、最大減速度スリップ率Smaxの上限「0.25」を超過するスリップ率がなかった場合、高スリップ状態検知部73は、この処理を終了する。
【0115】
上述したステップS61からS69までの処理が、各減速期間に対して行われる。図9に例示される運行実績データ78aの場合、減速期間9a、9b、・・・毎に上述した処理が実行される。
【0116】
本実施例において、ステップS67からS69までの処理によって、たとえ平均スリップ率が高スリップ状態を示さない場合であっても、減速期間の各時刻の極短い期間において高スリップ状態が発生したか否かを精度良く検知することができる。
【0117】
図11は、減速期間でデジタコデータから抽出したデータ例を示す図である。図11中、説明の便宜のため、時刻は、減速期間における減速開始時刻をゼロとして相対的な時刻を秒単位で例示している。また、図9に例示される運行実績データ78aにおいて減速期間が10秒間である場合を例として示している。
【0118】
図11に示すデータは、記憶部80に格納され、時刻毎に、デジタコデータ78bから取得した車輪速度と減速度とを含む車輪速度情報7と、図10のステップS63で算出された車輪走行距離とが対応付けられて記録されたデータ例を示している。
【0119】
時刻のうち、開始の時刻と、終了の時刻とは、位置情報を取得した時刻である。車輪速度及び減速度は、回転速度計(デジタコ)227によって計測された値を示す。車輪速度及び減速度は、車両2の車載情報処理装置200におけるデジタコ記録処理部250の車輪速度情報取得部51によって取得された車輪速度情報7に含まれる。
【0120】
図11に示すデータは、デジタコデータ78bのうち減速期間の時刻と、車輪速度と、減速度とを含んでいる。従って、デジタコデータ78bも同様に、時刻と、車輪速度と、減速度とを有する。
【0121】
このような図11に示すデータに、減速開始及び減速終了時の位置情報を付加することによって、減速期間における各時刻で高スリップ状態が発生していなかったか否かが判定される。図12を参照して、減速期間の各時刻で高スリップ状態は発生していなかった例を説明し、図13を参照して、減速期間において高スリップ状態が発生した時刻があった例を説明する。
【0122】
図12は、減速期間の各時刻で高スリップ状態は発生していなかった場合の走行データ例を示す図である。図12に示す走行データ8aは、図11に例示されるデータにおいて、運行実績データ78aから得られる、開始時刻と終了時刻に相当する減速開始時刻及び減速終了時刻の位置情報を付加した、減速期間の走行データである。
【0123】
開始時刻「0」に対応する位置情報(緯度,緯度)(x1,y1)は、図9に例示される減速期間におけるブレーキランプONのイベントで取得した位置情報である。また、終了時刻「10」に対応する位置情報(緯度,緯度)(x2,y2)は、図9に例示される減速期間におけるブレーキランプOFFのイベントで取得した位置情報である。
【0124】
走行データ8aに基づいて、高スリップ状態の発生を検知する方法について説明する。この例では、減速開始時刻及び減速終了時刻の位置情報(x1,y1)及び(x2,y2)により、実際の走行距離(車両走行距離)は45mと算出される(図10のステップS61及びS62)。また、各時刻の車輪走行距離が算出され減速期間の走行データ8aに記録される(図10のステップS63)。従って、平均スリップ率Sは、上式(2)により、
平均スリップ率S = (45−40)/45 ≒ 0.111
約0.111の値を得る(図10のステップS64)。
【0125】
この平均スリップ率Sは、最大減速度スリップ率「0.25」を超過していないため(ステップS65のNo)、各時刻のスリップ率の判定を行う(図10のステップS66からS69)。
【0126】
各時刻におけるスリップ率を減速度に比例すると仮定し、上式(3)を用いて、比例定数αを算出すると、
α = S/(Σv(t)a(t)/Σv(t))
≒ 0.11/((40*3+37*6+…+1*1)/(40+37+…+1))
≒ 0.021
約0.021の値を得る。
【0127】
算出した比例定数αを用いて各時刻のスリップ率を算出する。減速期間においてスリップ率が最大値をとるのは時刻t=5のときである。時刻t=5のときのスリップ率S(5)は、
S(5) ≒ 0.021*8 ≒ 0.17
である。従って、減速期間における最大スリップ率「0.17」は、安全走行における最大スリップ率Smaxの下限「0.2」(図1)以下であるので、高スリップ状態は発生していないと判定する。
【0128】
図13は、減速期間において高スリップ状態が発生した時刻があった場合の走行データ例を示す図である。図13に示す走行データ8bは、図11に例示されるデータにおいて、運行実績データ78aから得られる、開始時刻と終了時刻に相当する減速開始時刻及び減速終了時刻の位置情報を付加した、減速期間の走行データである。
【0129】
開始時刻「0」に対応する位置情報(緯度,緯度)(x3,y3)は、図9に例示される減速期間におけるブレーキランプONのイベントで取得した位置情報である。また、終了時刻「10」に対応する位置情報(緯度,緯度)(x4,y4)は、図9に例示される減速期間におけるブレーキランプOFFのイベントで取得した位置情報である。
【0130】
走行データ8bに基づいて、高スリップ状態の発生を検知する方法について説明する。この例では、減速開始時刻及び減速終了時刻の位置情報(x3,y3)及び(x4,y4)により、実際の走行距離(車両走行距離)は49mと算出される(図10のステップS61及びS62)。また、各時刻の車輪走行距離が算出され減速期間の走行データ8bに記録される(図10のステップS63)。従って、平均スリップ率Sは、上式(2)により、
平均スリップ率S = (49−40)/49 ≒ 0.184
約0.184の値を得る(図10のステップS64)。
【0131】
この平均スリップ率Sは、最大減速度スリップ率「0.25」を超過していないため(ステップS65のNo)、各時刻のスリップ率の判定を行う(図10のステップS66からS69)。
【0132】
各時刻におけるスリップ率を減速度に比例すると仮定し、上式(3)を用いて、比例定数αを算出すると、
α = S/(Σv(t)a(t)/Σv(t))
≒ 0.184/((40*3+37*5+・・・+1*1)
/(40+37+・・・+1))
≒ 0.0367
約0.0367の値を得る。
【0133】
算出した比例定数αを用いて各時刻のスリップ率を算出する。減速期間においてスリップ率が最大値をとるのは時刻t=4のときである。時刻t=4のときのスリップ率S(4)は、
S(4) ≒ 0.0367*8 ≒ 0.294
である。従って、減速期間における最大スリップ率「0.294」は、安全走行における最大スリップ率Smaxの上限「0.25」(図1)を超過している、即ち、このスリップ率は各時刻におけるスリップ率は減速度に比例するという上述の仮定と矛盾するので、高スリップ状態が発生したと判定する。
【0134】
図11、図12、図13では、1秒毎の走行データを例示したが、0.5秒毎又は0.5秒間隔より短周期であっても同様の処理によって、高スリップ状態の発生を検知することができる。
【0135】
図14は、結果出力部による表示例を示す図である。図13において、結果出力部74は、高スリップ状態検知部73によって検知された高スリップ状態の発生箇所を、表示ユニット13に表示された地図上に黒丸「●」印で表示する。高スリップ状態の発生箇所の表示方法は黒丸「●」印に限定されない。このように、高スリップ状態の発生箇所が示されることによって、車両2の運行開始前に、ドライバーは予め認識しておくことができ、より安全な運行を行うことができる。
【0136】
このように高スリップ状態が発生した場所の情報を蓄積することで、タイヤがロックして滑りやすくなる場所を把握して、ドライバーへの注意喚起を行う事ができ、或いは、予め回避できるように走行ルートを変更するなどを行うことができる。
【0137】
上述したように、本実施例では、車両2にブレーキランプ通電監視装置222を備え、ブレーキランプ223への通電を監視して、減速開始時と減速終了時の位置情報を取得する構成により、車両走行距離を算出可能とする。従って、スリップ率を精度良く算出することができる。
【0138】
また、路面状況等の走行環境に依存しない最大減速度スリップ率Smaxを用いて、減速開始から減速終了までの減速期間の平均スリップ率、更に、減速期間内の各時刻のスリップ率が、高スリップ状態の発生を示すか否かを判定することによって、精度良く高スリップ状態を検知することが可能となる。
【0139】
車両速度と車輪速度とをリアルタイムで比較して算出したスリップ率が閾値を超過している場合に自動的に制動力を緩和するABSとの高スリップ状態を検知する点における本実施例との比較について述べる。
【0140】
ABSは、車種によってスリップ判定処理が異なり、統一的基準に基づいて検知することができない。大型車の場合、車輪の数(多軸車かどうか)や種類(牽引車かどうか)によって、ABS作動の閾値を普通車以上となるようにしておく必要がある。また、大型車の場合、制動装置は2系統以上(主ブレーキと補助ブレーキ)であり、夫々の作動トリガとなるスリップ率は異なっている。
【0141】
一方、本実施例では、実際の走行距離(車両走行距離)でスリップ率を算出することによって高スリップ状態を検知するため、統一的な基準に基づく検知が可能となっている。
【0142】
また、ABSは、通常、ブレーキペダルが踏まれていない場合には動作しない。一方、ブレーキペダルが踏まれていない場合でもスリップが発生する可能性がある。この場合、高スリップ状態を検知することができない。ブレーキペダル以外に排気ブレーキ、リターダー等の補助ブレーキを有する大型車は、補助ブレーキが強力であるため、その使用時における高スリップ状態を検知することができない。この高スリップ状態を検知できない可能性は、普通車よりも大きいと考えられる。
【0143】
一方、本実施例では、法律の改定により、大型車においては上述した補助ブレーキが作動する場合にはブレーキペダルが踏まれていなくともブレーキランプを点灯することが許可されたことにより、ABSでは検知できなかった補助ブレーキの使用による減速期間に、高スリップ状態が発生したか否かを検知することが可能となる。
【0144】
本実施例では、車両2のABSの搭載の有無に関わらず、車両2の運行管理側において、どの地点でスリップが発生したかを検知することができる。
【0145】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0146】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
ブレーキランプの通電を監視するブレーキランプ通電監視装置から通知される、車両のブレーキ操作の開始を示すブレーキランプON及び該ブレーキ操作の終了を示すブレーキランプOFFのイベントに応じて、車両のブレーキ操作の開始時と終了時の各々に係り、該車両の位置を示す位置情報と、時刻とを含む運行実績データを記憶部に記録する運行実績記録処理部と
を有することを特徴とする情報処理装置。
(付記2)
前記運行実績記録処理部は、
前記ブレーキランプON及び前記ブレーキランプOFFの各イベントに応じて、位置計測装置から該車両の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記各イベントに応じて、時刻計測装置から前記ブレーキ操作の開始時刻と終了時刻とを夫々取得する第1時刻取得部と、
前記イベントに応じた前記ブレーキ操作の開始時と終了時の各々で、前記位置情報取得部によって取得した前記位置情報と、前記第1時刻取得部によって取得した前記時刻とを含む前記運行実績データを作成する第1データ作成部と、
前記第1データ作成部によって作成された前記運行実績データを前記記憶部に記録するデータ記録部と
を有することを特徴とする付記1記載の情報処理装置。
(付記3)
所定時間毎に、回転速度計から前記車両の車輪速度に係る車輪速度情報と、時刻とを含むデジタコデータを前記記憶部に記録するデジタコ記録処理部を有することを特徴とする付記1又は2記載の情報処理装置。
(付記4)
前記デジタコ記録処理部は、
前記所定時間毎に、前記車輪速度情報を取得する車輪速度情報取得部と、
前記所定時間毎に、時刻計測装置から前記車輪情報を取得した時刻を取得する第2時刻取得部と、
前記車輪速度情報取得部によって取得した前記車輪情報と、前記第2時刻取得部によって取得した前記時刻とを含む前記デジタコデータを作成する第2データ作成部と、
前記第2データ作成部によって作成された前記運行実績データを前記記憶部に記録するデータ記録部と
を有することを特徴とする付記1記載の情報処理装置。
(付記5)
ブレーキランプの通電を監視するブレーキランプ通電監視装置から車両のブレーキ操作の開始を示すブレーキランプON及び該ブレーキ操作の終了を示すブレーキランプOFFのイベントを各々受信し、
前記受信したイベントに応じて、車両のブレーキ操作の開始時と終了時の各々に係り、該車両の位置を示す位置情報と、時刻とを含む運行実績データを記憶部に記録する、
運行実績記録処理をコンピュータに実行させるプログラム。
(付記6)
コンピュータによって実行される運行実績記録方法であって、
ブレーキランプの通電を監視するブレーキランプ通電監視装置から車両のブレーキ操作の開始を示すブレーキランプON及び該ブレーキ操作の終了を示すブレーキランプOFFのイベントを各々受信し、
前記受信したイベントに応じて、車両のブレーキ操作の開始時と終了時の各々に係り、該車両の位置を示す位置情報と、時刻とを含む運行実績データを記憶部に記録する
ことを特徴とする運行実績記録方法。
(付記7)
車両の速度が減速開始した減速開始時刻と該速度の減速が終了した減速終了時刻の各々に係る該車両の位置を示す位置情報と時刻とを含む運行実績データと、該車両の車輪速度に係る車輪速度情報と該車輪速度情報を取得した時刻とを含むデジタコデータとを有する走行データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記走行データを参照して、該走行データの前記運行実績データに基づく前記車両の速度が減速開始した減速開始時刻から該速度の減速が終了した減速終了時刻までの減速期間において、該走行データの前記デジタコデータの前記車輪速度情報と、該減速開始時刻の位置情報及び該減速終了時刻の位置情報から得られる車両走行距離とから推定されるスリップ率に基づいて、該車両の走行方向の制御ができない不安全事象を検知する検知部と
を有することを特徴とする運行管理サーバ。
(付記8)
記憶部に記憶された車両の速度が減速開始した減速開始時刻と該速度の減速が終了した減速終了時刻の各々に係る該車両の位置を示す位置情報と時刻とを含む運行実績データと、該車両の車輪速度に係る車輪速度情報と該車輪速度情報を取得した時刻とを含むデジタコデータとを有する走行データを参照することによって、該走行データの前記運行実績データから、前記車両の速度が減速開始した減速開始時刻の位置情報と、該速度の減速が終了した減速終了時刻の位置情報とを取得し、
前記記憶部に記憶された地図情報に基づいて、該減速開始時刻から該減速終了時刻までの減速期間における前記車両走行距離を算出し、
前記走行データのデジタコデータから、前記減速期間の車輪速度情報を用いて車輪走行距離を算出し、
前記車両走行距離と前記車輪走行距離とを用いて平均スリップ率を算出し、
前記平均スリップ率が所定スリップ率を超過している否かを判断することによって、前記車両の走行方向の制御ができない不安全事象となる高スリップ状態の発生を検知する、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
(付記9)
前記平均スリップ率が所定スリップ率を超過していない場合、前記走行データのデジタコデータから、前記減速期間における各時刻の前記車輪速度情報に含まれる車輪速度の値及び減速度の値を取得し、
スリップ率と前記減速度との比例関係を仮定することによって、前記減速期間における各時刻のスリップ率を算出し、
前記各時刻において、前記スリップ率が前記所定スリップ率を超過している否かを判断することによって、前記高スリップ状態の発生を検知する、
処理をコンピュータに実行させる付記8記載のプログラム。
(付記10)
前記所定スリップ率は、最大減速度時のスリップ率を含むスリップ率の所定範囲内の最大スリップ率であることを特徴とする付記9記載のプログラム。
(付記11)
コンピュータによって実行される不安全事象検知方法であって、
記憶部に記憶された車両の速度が減速開始した減速開始時刻と該速度の減速が終了した減速終了時刻の各々に係る該車両の位置を示す位置情報と時刻とを含む運行実績データと、該車両の車輪速度に係る車輪速度情報と該車輪速度情報を取得した時刻とを含むデジタコデータとを有する走行データを参照することによって、該走行データの前記運行実績データから、前記車両の速度が減速開始した減速開始時刻の位置情報と、該速度の減速が終了した減速終了時刻の位置情報とを取得し、
前記記憶部に記憶された地図情報に基づいて、該減速開始時刻から該減速終了時刻までの減速期間における車両走行距離を算出し、
前記走行データのデジタコデータから、前記減速期間の車輪速度情報を用いて車輪走行距離を算出し、
前記車両走行距離と前記車輪走行距離とを用いて平均スリップ率を算出し、
前記平均スリップ率が所定スリップ率を超過している否かを判断することによって、前記車両の走行方向の制御ができない不安全事象となる高スリップ状態の発生を検知する、
処理をコンピュータに実行させる不安全事象検知方法。
【符号の説明】
【0147】
1a 好条件下のスリップ曲線
1b 悪条件下のスリップ曲線
1c 最大減速度付記
2 車両
11 CPU
12 メモリユニット
13 表示ユニット
14 出力ユニット
15 入力ユニット
16 通信ユニット
17 記憶装置
18 ドライブ
19 記憶媒体
20 SDカード
31 位置情報取得部
33 時刻情報取得部
35 データ作成部
37 データ記録部
51 車輪速度情報取得部
53 時刻情報取得部
55 データ作成部
57 データ記録部
71 データ入力部
72 走行データ処理部
73 高スリップ状態検知部
74 結果出力部
78 走行データ
78a 運行実績データ
78b デジタコデータ
79 運行管理DB
100 運行管理サーバ
200 車載情報処理装置
211 CPU
212 メモリ
213 表示装置
215 入力装置
216 通信装置
218 SDカードI/F
219 時刻計測装置
221 位置計測装置(GPS)
222 ブレーキランプ通電監視装置
223 ブレーキランプ
227 回転速度計(デジタコ)
230 運行実績記録処理部
250 デジタコ記録処理部
1000 運行管理システム
Smax 最大減速度スリップ率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキランプの通電を監視するブレーキランプ通電監視装置から通知される、車両のブレーキ操作の開始を示すブレーキランプON及び該ブレーキ操作の終了を示すブレーキランプOFFのイベントに応じて、車両のブレーキ操作の開始時と終了時の各々に係り、該車両の位置を示す位置情報と、時刻とを含む運行実績データを記憶部に記録する運行実績記録処理部と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記運行実績記録処理部は、
前記ブレーキランプON及び前記ブレーキランプOFFの各イベントに応じて、位置計測装置から該車両の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記各イベントに応じて、時刻計測装置から前記ブレーキ操作の開始時刻と終了時刻とを夫々取得する第1時刻取得部と、
前記イベントに応じた前記ブレーキ操作の開始時と終了時の各々で、前記位置情報取得部によって取得した前記位置情報と、前記第1時刻取得部によって取得した前記時刻とを含む前記運行実績データを作成する第1データ作成部と、
前記第1データ作成部によって作成された前記運行実績データを前記記憶部に記録するデータ記録部と
を有することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
所定時間毎に、回転速度計から前記車両の車輪速度に係る車輪速度情報と、時刻とを含むデジタコデータを前記記憶部に記録するデジタコ記録処理部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記デジタコ記録処理部は、
前記所定時間毎に、前記車輪速度情報を取得する車輪速度情報取得部と、
前記所定時間毎に、時刻計測装置から前記車輪情報を取得した時刻を取得する第2時刻取得部と、
前記車輪速度情報取得部によって取得した前記車輪情報と、前記第2時刻取得部によって取得した前記時刻とを含む前記デジタコデータを作成する第2データ作成部と、
前記第2データ作成部によって作成された前記運行実績データを前記記憶部に記録するデータ記録部と
を有することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
車両の速度が減速開始した減速開始時刻と該速度の減速が終了した減速終了時刻の各々に係る該車両の位置を示す位置情報と時刻とを含む運行実績データと、該車両の車輪速度に係る車輪速度情報と該車輪速度情報を取得した時刻とを含むデジタコデータとを有する走行データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記走行データを参照して、該走行データの前記運行実績データに基づく前記車両の速度が減速開始した減速開始時刻から該速度の減速が終了した減速終了時刻までの減速期間において、該走行データの前記デジタコデータの前記車輪速度情報と、該減速開始時刻の位置情報及び該減速終了時刻の位置情報から得られる車両走行距離とから推定されるスリップ率に基づいて、該車両の走行方向の制御ができない不安全事象を検知する検知部と
を有することを特徴とする運行管理サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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