説明

車両のハンドルを調整する方法および装置

【課題】本発明は車両のハンドルを調整するための方法および装置に関する。
本発明の目的は、ステアリングのヒステリシス測定を「安定化」させるかまたは実行し、次いで、シンプルで迅速かつ効率的な方法にてハンドルを調整することによって、ステアリングのクリアランスのセンタにおいて、ハンドルの自動調整を可能にすることである。
【解決手段】この目的において、本発明は、ハンドルのクリアランスのセンタにおいて車両のハンドルを調整する方法に関し、その方法は以下の工程によって特徴付けられる。すなわち、ハンドルに回転を生じさせるために車輪が止められた場合に、車両の前輪が配置された車両のジオメトリテスト台のフローティングプレートが回転し、次いで、ハンドル角度が、始動されたハンドルの動作に従って決定され、そしてハンドルのクリアランスのセンタが調整される。本発明は、ハンドルの再現性のある回転が車両のジオメトリテスト台のフローティングプレートによって始動させることができ、迅速かつ容易に実行されるハンドルのクリアランスのセンタにおいて、ハンドルの自動調整を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のハンドルを調整する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的なシャシ・ジオメトリテスト装置において、整備士は、手動でハンドルをセンタリングすることができる。
これは、公知であるハンドルの「過渡振動」(ドイツ語:Einpendeln)によってなされる。すなわち、整備士は、可能な限り正確にハンドルをセンタリング(中心出し)するのに役立つステアリング動作を実行する。
しかしながら、この調整は主観的であり、整備士に一定量の経験を必要とするので、生産ラインの設定点は変動し易い。
ステアリング操作のヒステリシスの計測とそれに続く、ハンドルをヒステリシスの中央に調整することは、それに関連する諸問題を有しつつも、これまで、整備士によって、よくても手動により行われてきた。
【0003】
また、現在の技術水準では、開いた車両の窓/フロントガラスを通してハンドルを掴むロボットによって上述の調整を行うこともある。
しかしながら、この手順は多くの空間を必要とし、極めてコストがかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シンプル、迅速、かつコスト効率の良い方法にて、「過渡振動」によってハンドルを自動でセンタリングすること、またはステアリングのヒステリシスを測定してハンドルをセンタリングすることを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、以下の工程によって特徴付けられる車両のハンドルをセンタリングする方法による本発明に従って達成される。
その特徴は、ハンドルに回転を生じさせるために車輪が固定されている間に、車両の前輪に配置された、車両ジオメトリテスト装置の2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つを回転させる工程と、生じたハンドルの動きの関数としてハンドル角度を決定する工程と、ハンドルをセンタリングする工程とである。
【0006】
驚くべきことに、ハンドルを回転させることによってテスト装置のフローティングプレート上の車輪の回転を生じさせるだけでなく、車両ジオメトリテスト装置の2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つを介して、再現性のあるハンドルに回転を生じさせることもまた可能であること(逆もまた然り)を本発明は示した。
これによって、多くの追加的な装置(例えば上述のロボットなど)を用いることなく自動的にハンドルをセンタリングすることが可能である。
さらに、各車輪の空間における位置を記録することが可能であれば、キャスタの傾きおよびキングピン傾角もまた、これらの測定が実行される間に決定することができる。
【0007】
本発明の一実施形態は、ハンドルの自動化された過渡振動によってハンドルがセンタリングされることを含む。
【0008】
フローティングプレートを介してハンドルの過渡振動を生じさせることが可能となることが明らかとなった。
【0009】
本発明の別の実施形態は、ハンドルのヒステリシスを決定し、それに続いてハンドルをヒステリシスの中央に調整することによってハンドルがセンタリングされることを含む。
【0010】
同様に、本発明の範囲内において、この方法において、ハンドルのヒステリシスが決定でき、ハンドルはヒステリシスの中央に置かれる。
【0011】
本発明によれば、ハンドル角度は、ハンドルバランスまたは車両のステアリング角度センサを介して決定される。
【0012】
この目的のために適切なハンドルバランスは、公開された独国特許出願第DE 10 2005 042 446.5−21号明細書から公知である。
しかしながら、車両のステアリング角度センサを介してハンドル角度を決定することもまた可能である。
【0013】
本発明を以下に展開すると、少なくとも3つの異なるハンドルの位置を生じさせるために車輪が固定されている間に、車両の前輪が配置された、車両ジオメトリテスト装置の2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つを回転させ、当該車輪が回転している間に、各ハンドル位置において、1回転の測定(ドイツ語:Umschlagmessung)を実行する工程と、適切な数学的処理によって車両のキャスタの傾きを決定する工程とを含む。
【0014】
空間における車輪の位置を示し、この位置に対応する平坦な測定表面を形成するアダプタプレートを共に用いた本発明の方法を用いると、例えば、レーザ式三角測量センサを用いて車両のキャスタの傾きを主に決定することができる。
キャスタの傾きfは車両の縦断面(x,z平面)および垂直軸(z軸)における車輪のステアリング軸の突出によって形成される角度である(図1を参照)。
キャスタの傾きは、ステアリング軸が移動方向(x方向)とは逆の上方に傾斜している場合が正である。
【0015】
また、本発明を以下に展開すると、車両の垂直面外側の平坦な測定表面を形成するアダプタプレートを車両の車輪に取り付ける工程と、ハンドルに回転を生じさせるために車輪が固定されている間に、車両の前輪が配置された、車両ジオメトリテスト装置の2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つを回転させる工程と、適切な数学的処理によって車両のキャスタの傾きおよびキングピン傾角を決定する工程とを含む。
【0016】
キングピン傾角θは、車両の横断面(y,z平面)および垂直軸(z軸)における車両のステアリング軸の突出によって形成される角度である(図1を参照)。
キングピンの傾角は、ステアリング軸が車両の中央に向かって上方に傾斜している場合が正である。
【0017】
また、本発明の範囲は本発明の方法を実行する装置を含み、車両の前車軸の部分において、2つのフローティングプレートを有する、車両のジオメトリをテストする装置が提供されることに、本発明の方法を実行する装置は特徴付けられており、それぞれの車輪に適応する2つのフローティングプレートにおいては、両方のフローティングプレートを作用状態(functional state)へと「誘導(guide)」でき、その一方で2つのフローティングプレートのうちの1つのみを、フローティングプレート上に立つ車輪を回転させるために規定された方法により作用状態へと「操作(steer)」できる。
このように、車輪に適応するフローティングプレートを有する、車両のジオメトリをテストする装置が提供され、その手段は、2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つの規定された回転、好ましくは10度から45度の回転で提供される。
【0018】
相対的に低いコストにて達成可能である、フローティングプレートの回転可能性の改善により、ハンドルをセンタリングすることが可能となる。
【0019】
本発明によれば、操作され、誘導されたフローティングプレートの回転を測定する手段が提供される。
【0020】
また、操作され、誘導されたフローティングプレートの振動動作を実行する手段を提供することは得策である。
【0021】
これらの手段は、例えば、操作され、誘導されたフローティングプレート回転動作のための制御プログラムの形式であってもよい。
【0022】
さらに、ハンドルをセンタリングするための、および/またはキャスタを調整するための評価ユニットが提供されることもまた得策である。
【0023】
この評価ユニットによって、ハンドルを自動的にセンタリングすることが可能となる。
【0024】
また、本発明の範囲は本発明に係る装置を含み、アダプタプレートは車両の車輪の垂直面外側に提供されており、平坦な測定表面を形成する。
【0025】
これらのアダプタプレートを迅速に車輪に取り付け、かつ取り外すことができる。それらは、常に車輪の位置を示す平坦な測定表面を形成する。
この特殊な車輪位置は、アダプタプレートの測定表面上の複数位置での測定を介して、迅速および正確に決定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、図面を参照することで以下に詳細に説明する。
【0027】
図2は、第1に、ハンドル角度に対するフローティングプレートの回転(右の縦座標)の座標、および第2に、ハンドル角度に対する前車軸の移動方向(左の縦座標)のプロットを示す。
過渡振動の終端においてハンドルがセンタリングされることは明瞭である。
【0028】
図3は、キャスタの傾き(ここではおよそ±20度の範囲内)を決定するための、車輪上に迅速かつ簡素に搭載できるアダプタプレートを示す。
【0029】
図4は、アダプタプレート上のレーザ測定によって決定可能である、トーおよびキャンバの関数としてのキャスタの傾きおよびキングピンの傾角の決定を示す。
【0030】
車両の車輪の輪軸のジオメトリを測定または測定かつ調整するための、シャシテスト装置上に車両を配置する方法、および当該方法を実行するための装置は、独国特許出願第DE 100 16 366 C2号明細書から公知であり、シャシテスト装置上に車両を配置するために用いられる。
当該明細書に記載された、車輪に適応する手段はフローティングプレートおよびその輪軸の周りで車輪を回転させるローラからなる。
本発明において、フローティングプレートのみが重要であり、というのも、車輪が固定されている場合に、フローティングプレートのみが回転するからである。
フローティングプレートは3つの自由度を有する。すなわち、水平面における2つの移動xおよびy、ならびに垂直軸の周での回転である。
全ての自由度は測定作業(例えば10度または45度のフローティングプレート)に適合するように制限されている。
図5(移動方向の矢印)に示すように、車両の車輪を配置する装置は、基部3上のベアリング6、フリーローラ4、および駆動ローラ5の手段によって構成されるフローティングプレート2を有する。
さらに、電気サーボモータ7および固定手段8が提供される。
シャシ・ジオメトリテスト装置(図6)の4つ全てのフローティングプレート2は少なくとも以下の作用態様を有する。
1.固定(block)モード、すなわち、フローティングプレートは固定され、x方向に位置合わせされる。
2.誘導(guide)モード、すなわち、フローティングプレートは、前部における回転の可変の中心(例えばスロット)の周りを回転できる。
3.自由(free)モード、すなわち、フローティングプレートは、3つの自由度において、回転の中心なしに自由に移動できる。
4.制限(arrest)モード、すなわち、フローティングプレートは現状の位置に固定される。
【0031】
片側(左または右)において、フローティングプレートは、前方および後方において、さらなる第5の作用モードを有する。
5.操作(steer)モード、すなわち、フローティングプレートの後方に取り付けられたさらなるリニアアクチュエータ9(例えばサーボモータを用いた線形軌道)により、かつ移動距離を測定するための測定システム10を含んで、フローティングプレート2は規定された方法により回転できる。
【0032】
垂直軸の周りで前輪を回転させるための、後方左および右のフローティングプレートに対しては、固定モードまたは制限モードが、前方右のフローティングプレートに対しては誘導モードおよび操作モードが、前方左のフローティングプレートに対しては誘導モードが、作用モードとしてフローティングプレートに設定される。
ここで、前方車輪は、前方右のアクチュエータを介して、垂直軸の周りで回転できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】車両の横断面(y,z平面)および垂直軸(z軸)における車両のステアリング軸の突出によって形成される角度であるキングピン傾角θを示す図である。
【図2】振幅の減少と共に、フローティングプレートに生じた振動を示す図である。
【図3】アダプタプレートを示す図である。
【図4】キャスタの傾きおよびキングピン傾角の決定を示す図である。
【図5】車両の車輪を配置するための、本発明に係る装置を示す図である。
【図6】本発明に係るシャシ・ジオメトリテスト装置上の車両の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のハンドルをセンタリングする方法であって、
ハンドルに回転を生じさせるために車輪が固定されている間に、前記車両の前輪が配置された、車両ジオメトリテスト装置の2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つを回転させる工程と、
生じたハンドルの動きの関数としてハンドル角度を決定する工程と、
前記ハンドルをセンタリングする工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ハンドルは、前記ハンドルの自動化された過渡振動によってセンタリングされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハンドルは、前記ハンドルのヒステリシスを決定し、前記ハンドルをヒステリシスの中央に調整してセンタリングされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ハンドル角度は、ハンドルバランスまたは車両のステアリング角度センサを介して決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも3つの異なるハンドルの位置を生じさせるために前記車輪が固定されている間に、前記車両の前輪が配置された、前記車両ジオメトリテスト装置の2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つを回転させ、前記車輪が回転している間に、前記ハンドルの位置のそれぞれにおいて1回転の測定を実行する工程と、
適切な数学的処理により前記車両のキャスタの傾きを決定する工程とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記車両の垂直面外側の平坦な測定表面を形成するアダプタプレートを前記車両の車輪に取り付ける工程と、
前記ハンドルに回転を生じさせるために前記車輪が固定されている間に、前記車両の前輪が配置された、前記車両ジオメトリテスト装置の2つのフローティングプレートのうちの少なくとも1つを回転させる工程と、
放物線回帰処理によって前記車両のキャスタの傾きおよびキングピン傾角を決定する工程とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記車両の前車軸の部分において、2つのフローティングプレートを有する前記車両のジオメトリテスト装置が提供され、それぞれの車輪に適応する前記2つのフローティングプレートにおいて、両方のフローティングプレートを作用状態へと誘導でき、その一方で2つのフローティングプレートのうちの1つのみを、フローティングプレート上に立つ車輪を回転させるために規定された方法により作用状態へと操作できることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記操作され誘導されたフローティングプレートの回転を測定する手段が提供されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記操作され誘導されたフローティングプレートの振動動作を実行する手段が提供されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記ハンドルをセンタリングするための、および/またはキャスタの傾きを調整するための評価ユニットが提供されることを特徴とする、請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
アダプタプレートは前記車両の車輪の垂直面外側に提供され、平坦な測定表面を形成することを特徴とする、請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−541751(P2009−541751A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516885(P2009−516885)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001113
【国際公開番号】WO2008/000229
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509003047)デュール アセンブリ プロダクツ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】