説明

車両のフロントバンパー構造

【課題】ヘッドランプ、補助ランプ等の交換作業及び保守点検作業が容易に行え、また構造が簡単で、コストダウンを図ることができる車両のフロントバンパー構造を提供する。
【解決手段】車体フレーム17に、ヒンジ機構22を介して回動可能に設けられたランプブラケット30と、ランプブラケット30に装着されるヘッドランプ15及び補助ランプ16と、ヘッドランプ15及び補助ランプ16の車両前側で、ランプブラケット30に固定されると共に、ヘッドランプ15及び補助ランプ16と対向する部位に開口部を有するサイドバンパー13とを備え、ヘッドランプ15、補助ランプ16を有したランプブラケット30及びサイドバンパー13を車体の外方に回動可能にしたことを特徴とする車両のフロントバンパー構造にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、大型バス等の車両に採用され、ヘッドランプ、補助ランプ等が装着される車両のフロントバンパー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、大型バス等の車両におけるフロントバンパーにおいて、フロントバンパ本体がセンターバンパーとサイドバンパーとに3分割されているものが知られている。そして、センターバンパーにはライセンスプレートが装着され、サイドバンパーにはフォグランプ、ターンシグナルランプ等の補助ランプが装着されている。また、サイドバンパーの上部の車体フレームに対してヒンジ機構によって回動可能に設けられたランプブラケットを介してヘッドランプが装着されている。
【0003】
そして、前述のように構成されたフロントバンパー構造において、フォグランプ、ターンシグナルランプ等の補助ランプが切れた場合や保守点検時にはサイドバンパーの前側から補助ランプアッセンブリを取り外してランプ交換し、ヘッドランプが切れた場合や保守点検時には、車体フレームに設けられたランプブラケットをヒンジ機構を支点として車両前側に回動し、ランプブラケットの裏側からランプ交換している。
また、バス等の車両におけるヘッドランプ取付け構造において、車体フレームの前部における両サイドに設けられた横長凹所に車体フレームに対してヒンジ機構によって可動ブラケットを設け、この可動ブラケットにヘッドランプ、フォグランプ等の補助ランプを装着したものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
前記特許文献1のものは、車体フレームに回動可能に設けられた可動ブラケットに装着されたヘッドランプ、フォグランプ等の補助ランプの周囲が化粧板によって覆われている。さらに、この化粧板には締結具として複数本のボルトが貫通して設けられ、この2本のボルトによって可動ブラケットを車体フレームに締付け固定している。従って、ヘッドランプ、フォグランプ等のランプ交換の際や保守点検時には複数本のボルトを緩め、可動ブラケットをヒンジ機構を介して車両前側に回動して可動ブラケットの裏側からランプ交換作業を行い、交換後、可動ブラケットを車体フレーム側に押付けた状態で、複数本のボルトを車体フレームに締付けている。
【特許文献1】実用新案登録第2575389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、車体フレームに回動可能に設けられた可動ブラケットにヘッドランプ、フォグランプ等の補助ランプが装着されているため、可動ブラケットを車両前側に回動することにより、可動ブラケットの裏側から作業を行うことができる、しかし、可動ブラケットが化粧板を貫通する複数本の長いボルトによって車体フレームに取付けられているため、ボルトを車体フレームの奥方のねじ孔に位置決めして締付ける必要があり、締付け作業性が悪いという問題がある。
本発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ヘッドランプ、補助ランプ等の交換作業及び保守点検作業が容易に行え、また構造が簡単で、コストダウンを図ることができる車両のフロントバンパー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するために、車体フレームに、ヒンジ機構を介して回動可能に設けられたランプブラケットと、前記ランプブラケットに装着されるヘッドランプ及び補助ランプと、前記ヘッドランプ及び補助ランプの車両前側で、前記ランプブラケットに固定されると共に、前記ヘッドランプ及び補助ランプと対向する部位に開口部を有するサイドバンパーとを備え、前記ヘッドランプ、補助ランプを有した前記ランプブラケット及び前記サイドバンパーを車体の外方に回動可能にしたことを特徴とする車両のフロントバンパー構造にある。
前記ヒンジ機構は、好ましくは、前記ランプブラケット及び前記サイドバンパーを車両前方に移動させながら車体の外方に回動させることを特徴とする。
前記ヒンジ機構は、さらに好ましくは、前記車体フレーム側に固定される固定側ブラケットと前記ランプブラケット側の固定される可動側ブラケット及び前記固定側ブラケットと可動側ブラケットとを回動自在に連結するダブルリンクと、同ダブルリンクと当接して前記ランプブラケット及び前記サイドバンパーの車体の外方への回動量を規制するストッパとを備えていることを特徴とする。
前記ランプブラケットに第1の係合部材を設け、前記車体フレームに第2の係合部材を設け、前記ランプブラケットを前記車体フレームに格納したとき、前記第1の係合部材と第2の係合部材とが係合して前記ランプブラケットが前記車体フレームに仮固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ヘッドランプ、補助ランプを有したランプブラケット及びサイドバンパーを車体の外方に回動することにより、ヘッドランプ、補助ランプ等の交換作業及び保守点検作業が容易に行え、また構造が簡単で、コストダウンを図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は車両である大型バス10を示し、バス10の前部にはフロントバンパー11が設けられている。フロントバンパー11はセンターバンパー12と左右のサイドバンパー13とに3分割されている。センターバンパー12にはライセンスプレート14が装着され、サイドバンパー13には車両の前方を照明するヘッドランプ15及びフォグランプ等の補助ランプ16が装着されている。
【0008】
図2及び図3は前記サイドバンパー13の構造を示し、図2はサイドバンパー13をその裏側から見た分解斜視図であり、図3はサイドバンパー13を前側から見た正面図である。センターバンパー12側に位置する車体フレーム17にはヒンジブラケット18が設けられている。ヒンジブラケット18はボックス構造で、上下方向に突出する取付け片19が固定ねじ20によって車体フレーム17に固定されている。ヒンジブラケット18には車両の前後方向に延在し、上下に互いに対向するヒンジ取付け片21が設けられ、これらヒンジ取付け片21には同一構造のヒンジ機構22が上下対称的に設けられている。
【0009】
ヒンジ機構22は、図4(a)〜(d)に示すように、ヒンジブラケット18のヒンジ取付け片21に固定される固定側ブラケット23と、後述するランプブラケット30に固定される可動側ブラケット24及び固定側ブラケット23と可動側ブラケット24とを回動自在に連結する略平行するダブルリンク25,26とから構成されている。
【0010】
すなわち、固定側ブラケット23には離間する一対の枢支ピン25a,26aが設けられ、これら枢支ピン25a,26aにはダブルリンク25,26の一端部が回動自在に連結されている。可動側ブラケット24はL字形であり、可動側ブラケット24の固定側ブラケット23と平行する一方の面24aには離間する一対の枢支ピン25b,26bが設けられ、これら枢支ピン25b,26bにはダブルリンク25,26の他端部が回動自在に連結されている。可動側ブラケット24の一方の面24aに対して直角に延びる他方の面は長孔を有する取付け片24bとして形成されている。さらに、可動側ブラケット24に枢支された枢支ピン25bには図2に示すようにストッパピン27が突設され、このストッパピン27は一方のダブルリンク26の側部と当接してランプブラケット30の前方への回動量を規制するようになっている。
【0011】
なお、図4(a)(b)(d)は、車両左側の上側(図2における紙面上側)のヒンジ機構22を示し、図4(c)は、車両左側の下側(図2における紙面下側)のヒンジ機構22を示す。
【0012】
このように構成されたヒンジ機構22の固定側ブラケット23は複数の固定ねじ28によってヒンジブラケット18のヒンジ取付け片21に固定されている。そして、図2及び図3に示すように、上下に対称的に設けられたヒンジ機構22にはランプブラケット30が固定され、ランプブラケット30はヒンジ機構22を支点として回動するようになっている。
ランプブラケット30は、図2に示すように、下縁に横桟31aと、この横桟31aの両端部に上方に突出する一対の縦桟31b,31cに囲まれる開口部31dを有する骨組31が設けられている。この骨組31の上部にはヘッドランプ取付け部32が設けられている。ヘッドランプ取付け部32にはヘッドランプ15(図1参照)を装着するための開口部33が設けられ、この開口部33の周縁部には取付け孔34が設けられている。さらに、ランプブラケット30の骨組31の縦桟31bには上下に離間してブラケット35が溶接されている。このブラケット35は前記ヒンジ機構22の可動側ブラケット24に固定ねじ36によって固定されている。ランプブラケット30の周縁部には複数の取付け孔30aが設けられ、車体フレーム17に対して複数本の固定ねじ29によって固定されている。
また、ランプブラケット30の外側(車両前側)には前記サイドバンパー13が設けられている。サイドバンパー13の略中央部には補助ランプ16を装着する開口部37が設けられている。さらに、サイドバンパー13の裏面における四隅には金属片を山形状に屈曲して形成した取付け部材38が溶接されている。これら取付け部材38に対応する前記ランプブラケット30には取付け孔39が設けられている。そして、ランプブラケット30の取付け孔39側から固定ねじ40が挿通され、サイドバンパー13の取付け部材38にねじ止め固定されている。従って、ランプブラケット30の前側にサイドバンパー13が取付けられ、ランプブラケット30の開口部31dはサイドバンパー13によって覆われている。
サイドバンパー13の上縁部には切欠部41が設けられている。この切欠部41に対応する車体フレーム17にはブラケット42が設けられ、このブラケット42には化粧板43が後付けされるようになっている。さらに、ランプブラケット30の枢支側と反対側の裏面には裏面側に突出する第1の係合部材としてのストライカ44が固定されている。このストライカ44は、図5にも示すように、パイプ部材44aの両端部がブラケット44bによって固定されている。パイプ部材44aに対応する車体フレーム17には第2の係合部材としての板ばねからなる略U字状のキャッチャ45が固定されている。そして、サイドバンパー13とともにランプブラケット30をヒンジ機構22を支点として車体フレーム17側に押付けたとき、ストライカ44のパイプ部材44aがキャッチャ45に弾性係合して車体フレーム17に対してサイドバンパー13とともにランプブラケット30が仮固定されるようになっている。
前述のように構成されたフロントバンパー構造によれば、車体フレーム17にヒンジ機構22を介して回動可能に取り付けられたランプブラケット30にはサイドバンパー13が固定ねじ40によって固定される。そして、ランプブラケット30にはヘッドランプ15及び補助ランプ16が装着される。従って、ランプブラケット30とサイドバンパー13とは一体的で、ヒンジ機構22によって車体フレーム17に回動可能に取付けられている。従って、図6(a)(b)に示すように、ヘッドランプ15や補助ランプ16が切れて新しい物と交換する際や保守点検の際にはランプブラケット30とサイドバンパー13をヒンジ機構22を支点として車両前側に回動して作業を行うことができる。
【0013】
このとき、ヒンジ機構22は、固定側ブラケット23に対してダブルリンク25,26を介して可動側ブラケット24が回動自在に連結された構造であり、可動側ブラケット24にランプブラケット30とサイドバンパー13が回動可能に連結されている。従って、ランプブラケット30とサイドバンパー13が車体フレーム17に格納されている状態からランプブラケット30とサイドバンパー13をヒンジ機構22を支点として回動すると、ダブルリンク25,26の作用によってランプブラケット30とサイドバンパー13の車幅方向の外側が車両前方に移動しながら車体フレーム17の外方に回動する。従って、サイドバンパー13の回動支点側の端縁がセンターバンパー12の端縁等と干渉(こじれる)することない。
【0014】
ヒンジ機構22の動作をさらに詳述すると、可動側ブラケット24が、図4(d)の2点鎖線で示す位置にあるときには、ランプブラケット30に固定されたヘッドランプ15及びサイドバンパー13とが図6(b)の実線で示すように格納された状態のときを示し、この状態から図6(b)の2点鎖線で示す車両前方側にヘッドランプ15とサイドバンパー13とが移動したときには、可動側ブラケット24とダブルリンク25,26とが図4(a)に示す状態から図4(d)の実線で示す状態に移動する。
つまり、図4(d)に示すように、可動側ブラケット24とダブルリンク25,26とが矢印Aの方向(反時計方向)に移動するとともに、ダブルリンク25,26の揺動によって、可動側ブラケット24が矢印Bの方向(時計方向)に回動する。可動側ブラケット24が矢印Bの方向に回動するのは、車幅方向外方側のダブルリンク26に比べ車幅方向内方側のダブルリンク25が短くすることで、可動側ブラケット24は平行移動せずに図4(b)に示すリンク機構22は可動側ブラケット24を矢印Bの方向(時計方向)に回動する構成になっている。
これによって、可動側ブラケット24の取付け片24bが車両前方側に傾いて、ヘッドランプ15とサイドバンパ13とが車両前方側に傾く。よって、図6(b)に示すように、ヒンジ機構22のダブルリンク25,26が車体の側方側に揺動しつつ可動側ブラケット24が回動することで、可動側ブラケット24に固定されたランプブラケット30とヘッドランプ15及びサイドバンパ13とが一体となって、車両の前方側に移動すると共に、車体の外方側に回動する。
ランプブラケット30とサイドバンパー13がヒンジ機構22を支点として所定位置まで外方に回動すると、ダブルリンク25の枢支ピン25bに突設されたストッパピン27がダブルリンク26の側面と当接してランプブラケット30とサイドバンパー13の回動量が規制される。従って、ヘッドランプ15や補助ランプ16が切れて新しい物と交換する際や保守点検の際にサイドバンパー13が不用意に回動し過ぎてセンターバンパー12に当接することはない。
【0015】
また、ランプブラケット30の枢支側と反対側の裏面にはストライカ44が固定され、このストライカ44に対応する車体フレーム17にはキャッチャ45が固定されている。従って、ランプ交換作業が終わった後、サイドバンパー13とともにランプブラケット30をヒンジ機構22を支点として車体フレーム17側に押付けたとき、ストライカ44がキャッチャ45に係合して車体フレーム17に対してサイドバンパー13とともにランプブラケット30が仮固定される。従って、ランプブラケット30とサイドバンパー13は重量があるが、ランプブラケット30とサイドバンパー13に一端側はヒンジ機構22で、他端側はストライカ44とキャッチャ45とで支持された状態となり、ランプブラケット30を車体フレーム17に固定ねじ29によって固定する際にも作業性を向上できる。
【0016】
そして、固定ねじ29は、ヘッドランプ15の周囲を覆う図示しない化粧板によって車両の外側からは隠れるようになっている。
【0017】
なお、この発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施形態を示し、大型バスの斜視図。
【図2】同実施形態のサイドバンパーを示し、サイドバンパーをその裏側から見た分解斜視図。
【図3】同実施形態を示し、サイドバンパーを前側から見た正面図。
【図4】同実施形態のヒンジ機構を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図、(d)は正面図。
【図5】同実施形態を示し、ストライカとキャッチャの横断平面図。
【図6】同実施形態を示し、(a)はサイドバンパーの概略的正面図、(b)は同じく概略的平面図。
【符号の説明】
【0019】
13…サイドバンパー、15…ヘッドランプ、16…補助ランプ、17…車体フレーム、22…ヒンジ機構、30…ランプブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに、ヒンジ機構を介して回動可能に設けられたランプブラケットと、
前記ランプブラケットに装着されるヘッドランプ及び補助ランプと、
前記ヘッドランプ及び補助ランプの車両前側で、前記ランプブラケットに固定されると共に、前記ヘッドランプ及び補助ランプと対向する部位に開口部を有するサイドバンパーとを備え、
前記ヘッドランプ、補助ランプを有した前記ランプブラケット及び前記サイドバンパーを車体の外方に回動可能にしたことを特徴とする車両のフロントバンパー構造。
【請求項2】
前記ヒンジ機構は、前記ランプブラケット及び前記サイドバンパーを車両前方に移動させながら車体の外方に回動させることを特徴とする請求項1記載の車両のフロントバンパー構造。
【請求項3】
前記ヒンジ機構は、前記車体フレーム側に固定される固定側ブラケットと前記ランプブラケット側の固定される可動側ブラケット及び前記固定側ブラケットと可動側ブラケットとを回動自在に連結するダブルリンクと、同ダブルリンクと当接して前記ランプブラケット及び前記サイドバンパーの車体の外方への回動量を規制するストッパとを備えていることを特徴とする請求項1記載の車両のフロントバンパー構造。
【請求項4】
前記ランプブラケットに第1の係合部材を設け、前記車体フレームに第2の係合部材を設け、前記ランプブラケットを前記車体フレームに格納したとき、前記第1の係合部材と第2の係合部材とが係合して前記ランプブラケットが前記車体フレームに仮固定されることを特徴とする請求項1記載の車両のフロントバンパー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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