説明

車両のベンチレーション構造

【課題】車種に応じてベンチレータの構成を最適化することより、コストの削減および軽量化を図ることが可能な車両のベンチレーション構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる車両のベンチレーション構造の構成は、リヤバンパ104内側の車体後部パネル102に設けられた換気口102aに装着され、換気口を通じて車室内の空気を排出するベンチレータ110を含む車両のベンチレーション構造であって、ベンチレータは、ベンチレータ外に生じる負圧の作用で開閉するベンチレータバルブ130が取り付けられ、換気口に装着されるベンチレータベース120と、ベンチレータベースに取り付けられ、ベンチレータベースに取り付けられる面と反対側の面に開口部150aを有する枠体形状のベンチレータダクト150と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両のベンチレーション構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室内の換気を促進するために、車両には換気装置であるベンチレータが設けられている。ベンチレータは、リヤバンパ内側の車体後部パネルに設けられた換気口に装着され、かかる換気口を通じて車室内の空気を車室外へ排出する。
【0003】
ベンチレータとしては、例えば特許文献1に、換気窓を有するベンチレータアウトレット部と、換気窓を覆い且つ空気圧の作用により換気窓を開放する薄膜のバルブ部と、バルブ部およびベンチレータアウトレット部を囲って車幅方向に排出口を有するダクト部とを備えた換気装置を装着した車両の換気構造が開示されている。特許文献1の換気構造によれば、雪道走行時等においても換気性能を好適に維持することができる。また特許文献1の換気構造によれば、雨天走行時や洗車時にリヤバンパ内に水が入ったとしても、その水の換気口内への浸入も確実に防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−81882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、特許文献1に記載の車両の換気構造に設けられるベンチレータによれば、雪道走行時に巻き上げられた雪等による換気性能への悪影響を極めて確実に防ぎ、且つ水の換気口への浸入も好適に防ぐことができる。しかしながら、すべての車種においてこのようなベンチレータが必要とは限らない。例えば、換気口がタイヤから相当に離れた位置に設けられていたり、巻き上げられた雪等を撥ね返すことができる部材がベンチレータの下方に設けられていたりする場合には、巻き上げられた雪等のベンチレータバルブへの付着や換気口内への入り込みは、特許文献1のベンチレータに依らずとも好適に防止可能である。また例えば、リヤバンパ内への水の浸入に対して対策がなされている車種であれば、特許文献1のような大きなダクト部は必要ではない。したがって、これらのような場合、ベンチレータには、雪等の巻き上げや水の浸入への十分な対策ではなく、そのコストの削減や軽量化が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、車種に応じてベンチレータの構成を最適化することより、コストの削減および軽量化を図ることが可能な車両のベンチレーション構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両のベンチレーション構造の代表的な構成は、リヤバンパ内側の車体後部パネルに設けられた換気口に装着され、換気口を通じて車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両のベンチレーション構造であって、ベンチレータは、ベンチレータ外に生じる負圧の作用で開閉するベンチレータバルブが取り付けられ、換気口に装着されるベンチレータベースと、ベンチレータベースに取り付けられ、ベンチレータベースに取り付けられる面と反対側の面に開口部を有する枠体形状のベンチレータダクトと、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ベンチレータの本体部は、ベンチレータバルブが取り付けられて換気口に装着されるベンチレータベースと、ベンチレータのダクト部分であるベンチレータダクトとの2部品から構成される。そして、ベンチレータダクトは、ベンチレータベースを介して換気口に取り付けられる。これにより、ベンチレータベースを共通化し、ベンチレータダクトのみを適宜変更することが可能となる。したがって、車種に応じてベンチレータの構成を最適化することができ、コストの削減および軽量化を図ることが可能となる。また、このような構成によれば、リヤバンパ内において雪等の巻き上げや水の浸入への十分な対策がなされている場合には、ダクトすなわちベンチレータダクトを設けないという選択をすることもでき、更なるコストの削減および軽量化を達成可能となる。更に、上記のようにベンチレータダクトを枠体形状という簡素化した形状にすることにより、ベンチレータダクトに要するコストの削減や軽量化を図ることができ、且つ金型の構造をも簡素化することができることからそれに要するコストをも削減することが可能となる。
【0009】
上記のベンチレータベースおよびベンチレータダクトのうち、いずれか一方は、他方と当接する側の端部近傍の外周面から突出した爪部を有し、他方は、一方と当接する側の端部近傍に爪部と係合する係合部を有するとよい。
【0010】
かかる構成によれば、爪部に係合部を係合するだけでベンチレータダクトをベンチレータベースに取り付けることができる。これにより、取付に要する部品が不要となり、且つ生産工程を簡略化することができる。したがって、更なるコストの削減および軽量化を図ることが可能となる。
【0011】
上記のベンチレータダクトの開口部の縁は、上方から下方にゆくにつれて換気口に向かって接近しているとよい。これにより、ベンチレータダクトの下面は上面に覆われた状態となり、ベンチレータダクトの上面は庇としての役割を担うこととなる。したがって、万が一、水がリヤバンパ内に浸入してベンチレータダクトの上面に伝ってきた場合であっても、水は上面の縁から下方に落下する。このため、ベンチレータダクト内への水の浸入を防ぎ、ひいては換気口内への浸水を防止することが可能となる。
【0012】
上記のベンチレータダクトの開口部の上縁には、下方に向かって突出したフランジが設けられているとよい。これにより、開口部の上縁における水捌けが更によくなるため、ベンチレータダクト内への水の浸入をより確実に防ぐことが可能となる。
【0013】
上記のベンチレータダクトの上面であって、幅方向の両側辺近傍には、上方に向かって突出しベンチレータダクトの奥行方向に延びるリブが設けられているとよい。これにより、ベンチレータダクトの上面に伝ってきた水は、リブにより堰き止められてベンチレータダクトの開口部の上縁に向かい、そこから下方に落下する。したがって、水が開口部の側縁を伝うことがなく、側縁からのベンチレータダクト内への水の浸入を好適に防止することができる。
【0014】
上記のリブは、ベンチレータダクトの上面からフランジの後面および後面の先まで回り込むように連続的に延びて設けられているとよい。これにより、リブにより開口部の上縁に流れてきた水がフランジにおいてベンチレータダクトの側縁側へ移動することを防ぐことができる。またリブがフランジの後面の先まで延びていることにより、リブを伝ってきた水が下方に落下し易くなるため、リブにおける水捌けの向上を図れる。
【0015】
上記のベンチレータダクトの下面とベンチレータベースの間には排水孔が形成されていて、ベンチレータベースには、ベンチレータダクトの先端と上下に重なり、少なくとも高さ方向においてベンチレータダクトとの間に隙間を有する突出部が形成されているとよい。
【0016】
かかる構成によれば、万が一ベンチレータダクト内に水が浸入した場合であっても、その水は排水孔から排出される。したがって、換気口内への水の浸入をより確実に防ぐことが可能となる。またベンチレータベースに形成された突出部がベンチレータダクトの先端と上下に重なっていることにより、下方からの排水孔への水の浸入も防ぐことができ、ベンチレータダクトへの浸水防止対策をより確実なものとすることができる。
【0017】
上記のベンチレータダクトの下面のベンチレータベース側には、突出部よりも後方側で下方に向かって傾斜した後に突出部と上下に重なるように延びる階段部が設けられていて、排水孔は、階段部の先端とベンチレータベースとの間に形成されているとよい。
【0018】
これにより、ベンチレータダクト内に水が浸入した場合、その水が階段部に沿って流れてダクト開口部外に導かれる。すなわち階段部により水の流路を形成することができるため、水の排出をより好適に促すことができる。
【0019】
上記の突出部は、ベンチレータダクトよりも前方側で下方に向かって傾斜した後にベンチレータダクトと上下に重なるように延びる階段形状であるとよい。このように、突出部すなわちベンチレータベースに階段形状を設けた場合であっても、上述したようにベンチレータダクトに階段部を設けた場合と同様の効果を得ることできる。
【0020】
上記の換気口からの距離は、全開時のベンチレータバルブの自由端、ベンチレータダクトの下面の端部、ベンチレータダクトの上面の端部の順、または全開時のベンチレータバルブの自由端およびベンチレータダクトの下面の端部、ベンチレータダクトの上面の端部の順に大きくなるとよい。
【0021】
上記構成によれば、換気口からベンチレータダクトの上面の端部までの距離は、換気口からベンチレータダクトの下面の端部までの距離よりも大きい。換言すれば、ベンチレータダクトの上面は下面よりも広い奥行きを有する。このため、上面の端部から落下した水が下面に至ることがない。したがって、ベンチレータダクト内への水の浸入を好適に防ぐことができる。また換気口からベンチレータダクトの上面の端部までの距離は、全開時のベンチレータバルブの自由端よりも大きい。したがって、ベンチレータバルブが全開になったとしても、上面の端部から落下した水はベンチレータバルブには接しない。このため、ベンチレータバルブへの水滴の付着が生じず、ベンチレータバルブを介した換気口への水の浸入も防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車種に応じてベンチレータの構成を最適化することより、コストの削減および軽量化を図ることが可能な車両のベンチレーション構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態にかかる車両のベンチレーション構造の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる車両の換気構造に設けられるベンチレータの外観図である。
【図3】図2に示すベンチレータの分解斜視図である。
【図4】図2に示すベンチレータの断面図である。
【図5】排水孔近傍におけるベンチレータベースおよびベンチレータダクトの他の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
(本実施形態の車両のベンチレーション構造)
図1は、本実施形態にかかる車両のベンチレーション構造の概略構成を示す図である。本実施形態にかかる車両のベンチレーション構造は、車室内の空気を排出する換気装置であるベンチレータを含んで構成される。図1に示すように、車体後部パネル102のリヤバンパ104が装着される部分、すなわちリヤバンパ104内側の車体後部パネル102には換気口102aが設けられている。ベンチレータ110はかかる換気口102aに装着され、換気口102aを通じて車室内の空気を車室外に排出する。
【0026】
図2は、本実施形態にかかる車両の換気構造に設けられるベンチレータ110の外観図であり、図2(a)はベンチレータ110の外観斜視図であり、図2(b)はベンチレータ110の側面図である。図3は、図2に示すベンチレータ110の分解斜視図であり、図3(a)はベンチレータ110を構成する部材をすべて分解した図であり、図3(b)はベンチレータ110を構成する部材の一部を分解した図である。図4は、図2に示す110の断面図であり、図4(a)は図2のA−A断面図であり、図4(b)は図2のB−B断面図である。
【0027】
図2および図3に示すように、ベンチレータ110の本体部は、ベンチレータベース120およびベンチレータダクト150の2部品で構成されている。ベンチレータベース120にはベンチレータダクト150が取り付けられていて、これをベンチレータベース120が支持している。このような構成により、ベンチレータ110全体が換気口102aに装着される。ベンチレータベース120には掛着部122が設けられていて、この掛着部122にベンチレータバルブ130を引っ掛けることにより、ベンチレータバルブ130がベンチレータベース120に支持される。
【0028】
ベンチレータベース120は、換気口102aに装着される側の外周面にそこから突出した爪部124を有する。爪部124を換気口102a近傍に設けられた溝(不図示)に嵌め合わせることで、ベンチレータベース120(ベンチレータ110)を換気口102aに装着可能である。更に本実施形態では、ベンチレータベース120は、ベンチレータダクト150と当接する側の端部近傍にベンチレータダクト150の爪部152と係合する係合部126を有する。
【0029】
また図3および図4(a)に示すように、本実施形態のベンチレータベース120には突出部128が形成されている。突出部128は、ベンチレータダクト150に形成される階段部158の先端と上下に重なり、高さ方向および前後方向においてベンチレータダクト150との間に隙間158aおよび158bを有する。
【0030】
図3に示すように、ベンチレータバルブ130は、換気口102aに面した状態となるようにベンチレータベース120に取り付けられ、ベンチレータ110外(リヤバンパ104内)に生じる負圧の作用で開閉する部材である。ベンチレータバルブ130には、ゴム等の高分子系樹脂材料を好適に用いることができる。これにより、ベンチレータバルブ130の軽量化を図れるため、開動作に要する力を低減し、開閉動作を円滑にすることが可能となる。
【0031】
図1に示すリヤバンパ104内が負圧になると、その負圧の作用により、図4(a)に示すベンチレータバルブ130は、掛着部122を軸にしてベンチレータダクト150内部に(矢印130aの方向に)移動し、二点鎖線130bの位置に到達する。これによりベンチレータ110は開状態となり、車室内の空気がベンチレータ110内に流出し、ベンチレータダクト150の開口部150aを通じて車室外に排出される。このようにして車室内の換気が行われる。
【0032】
なお、本実施形態においては、ベンチレータバルブ130を、1行2列の計2枚設ける構成としたが、これに限定するものではなく、2行1列、または2列以上や2行以上すなわち車幅方向および車高方向に複数枚ずつ設けて6枚以上の構成としてもよい。またベンチレータバルブ130は必ずしも複数枚設けられなくてもよく、1枚で構成してもよい。ただし、本実施形態のように複数枚設ければ、ベンチレータバルブ130が柔軟で変形等が生じやすい場合であっても、1つのベンチレータバルブ130の変形が他のベンチレータバルブ130に影響しないため、全体の変形量を低減することができる。したがって、ベンチレータバルブ130がその機能を確実に発揮することができ、高い換気性能を確保することが可能となる。
【0033】
図1ないし図3に示すように、止水シール140は、ベンチレータベース120の換気口102a側の外周面に取り付けられて、換気口102aとベンチレータベース120との間からの水の浸入を防止する部材、すなわちパッキンである。止水シール140は弾性材料から構成される。かかる弾性材料としては例えばゴム系材料やシリコン樹脂系材料を好適に用いることができる。
【0034】
図3(a)に示す部材のうち、上述したベンチレータバルブ130をベンチレータベース120の掛着部122に引っ掛け、ベンチレータベース120の外周面に止水シール140を取り付ける。すると、ベンチレータベース120は図3(b)に示す状態となる。
【0035】
図2または図3に示すように、ベンチレータダクト150は、ベンチレータベース120に取り付けられる枠体形状の部材である。ベンチレータダクト150は、ベンチレータベース120に取り付けられる面と反対側の面に開口部150aを有する。開口部150aを通じて、ベンチレータバルブ130を介して換気口102aから排出された車室内の空気が車外に排出される。またベンチレータダクト150は、車両走行中に巻き上げられた雪や雨水等が換気口102a内に入り込むことを防止するという役割も担う。
【0036】
上記のように、本実施形態では、ベンチレータバルブ130や止水シール140といった付随的な部材を除く、ベンチレータ110の本体部を、ベンチレータベース120およびベンチレータダクト150の2部品から構成している。換言すれば、ベンチレータ110のうち、空気の排出を担うベンチレータダクト150を、換気口102aに装着されベンチレータ110全体を支持するベンチレータベース120とは別部材としている。このような構成により、異なる車種であってもベンチレータベース120を共通化し、ベンチレータダクト150のみを適宜変更することが可能となる。すなわち、車種に応じてベンチレータ110の構成を好適化して、コストの削減および軽量化を図ることが可能となる。
【0037】
またベンチレータダクト150は枠体形状という簡素化された形状であるため、ベンチレータダクト150に要するコストの削減や軽量化を図ることができる。これにより、金型の構造も簡素化できるため、金型に要するコストも削減可能となる。
【0038】
図2または図3に示すように、ベンチレータダクト150は、ベンチレータベース120と当接する側の端部近傍の外周面から突出した爪部152を有する。これにより、図3(b)に示すベンチレータベース120にベンチレータダクト150を軽く圧入するだけで係合部126が撓んで爪部152に係合される。そして、図2に示すように、ベンチレータダクト150をベンチレータベース120に取り付けてベンチレータ110を組立可能である。すなわち、本実施形態においては、ベンチレータベース120およびベンチレータダクト150(ベンチレータ110)はスナップフィットにより組み立てられる。したがって、ベンチレータベース120にベンチレータダクト150を取り付けるための部品が不要となり、生産工程を簡略化することができるため、更なるコストの削減および軽量化を図ることが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態では、ベンチレータベース120に係合部126を、ベンチレータダクト150に爪部152を設ける構成としたが、これに限定するものではなく、逆の構成としてもよい。更に、上記説明したスナップフィットによる組立もあくまで一例であり、ベンチレータダクト150とベンチレータベース120を螺子止め等することによりベンチレータ110を組み立ててもよい。
【0040】
上述したように、本実施形態のベンチレータダクト150は、形状が簡素化されたことでコストの削減に寄与することができるが、それでも、換気口102a内への水の浸入を防ぐ役割を担っていることには変わりがない。そして、換気口102a内への水の浸入を確実に防ぐためには、ベンチレータダクト150への水の浸入を防ぎ、万が一ベンチレータダクト150に水が浸入したとしてもそれを迅速に排出できる必要がある。そこで、本実施形態のベンチレータダクト150の形状には様々な工夫が施されている。
【0041】
詳細には、まず、ベンチレータダクト150の開口部150aの縁150bは、図2(b)に示すように上方から下方にゆくにつれて換気口102aに向かって(換気口102a側に)接近している。これにより、ベンチレータダクト150の下面150dは上面150cに覆われ、ベンチレータダクト150の上面150cは庇としての役割を担うこととなる。したがって、リヤバンパ104内に浸入した水が、図4(a)の矢印160に示すようにベンチレータダクト150の上面150cに伝ってその縁から下方に落下しても、下面150dに接することなくベンチレータダクト150外に更に落下していく。このため、ベンチレータダクト150内への水の浸入が防止され、ひいては換気口102a内への浸水を防止可能となる。
【0042】
なお、上記のように開口部150aの縁150bを下方にゆくにつれて換気口102aに向かって接近させたとき、換気口102aからの距離は、全開時のベンチレータバルブ130の自由端、ベンチレータダクト150の下面150dの端部、ベンチレータダクト150の上面150cの端部の順に大きくなる。あるいは、全開時のベンチレータバルブ130の自由端およびベンチレータダクト150の下面150dの端部、ベンチレータダクト150の上面150cの端部の順に大きくしてもよい。換言すれば、図4(a)に示すように、換気口102aからベンチレータダクト150の上面150cの端部までの距離をD1、換気口102aからベンチレータダクト150の下面150dの端部までの距離をD2、換気口102aから全開時のベンチレータバルブ130の自由端までの距離をD3としたときに、D1、D2およびD3が「D1>D2≧D3」の関係式を満たすとよい。
【0043】
上記の関係式のうち、「D1>D3」が満たされるとき、ベンチレータダクト150の上面150cの端部は、全開時のベンチレータバルブ130の自由端の外側に位置する。したがって、ベンチレータバルブ130が全開になったとしても(図4(a)の二点鎖線130bの位置)、上面150cの端部から落下した水はベンチレータバルブ130には接しないため、ベンチレータバルブ130に水滴は付着しない。このため、ベンチレータバルブ130を介した換気口102aへの水の浸入を防止することができる。また「D1>D2」が満たされるとき、ベンチレータダクト150の上面150cは下面150dよりも大きな寸法を有し、上面150cの端部は下面150dの端部の外側に位置する。したがって、上面150cの端部から落下した水が下面150dに至ることがなく、ベンチレータダクト150内への水の浸入を好適に防ぐことができる。更に、上記の「D2≧D3」が満たされるとき、開状態となったベンチレータバルブ130の下方にはベンチレータダクト150の下面150dが位置する。このため、ベンチレータバルブ130への下方からの水の付着や、ベンチレータバルブ130の全開時における換気口102aへの水の浸入を好適に防ぐことが可能となる。
【0044】
続いて、ベンチレータダクト150の開口部150aの上縁、すなわちベンチレータダクト150の上面150cの縁には、下方に向かって突出したフランジ154が設けられている。これにより、ベンチレータダクト150の上面を伝った水は、そのままフランジ154を伝ってその下方の端部(縁)に到達する。すると、水には重力が好適に作用し、フランジ154の端部から下方に落下する。このため、開口部150aの上縁における水捌けを向上させることが可能となる。
【0045】
更に、ベンチレータダクト150の上面150cには、幅方向の両側辺近傍に、上方に向かって突出しベンチレータダクト150の奥行方向に延びるリブ156が設けられている。これにより、図2(a)に示す矢印のようにベンチレータダクト150の上面150cに伝ってきた水は、リブ156により堰き止められてベンチレータダクト150の開口部150aの上縁(上面150cの縁)に向かう。そして、上面150cの縁からフランジ154を伝って下方に落下する。したがって、水が開口部150aの側縁を伝うことがないため、側縁からのベンチレータダクト150内への水の浸入を好適に防止することができる。
【0046】
本実施形態では、上記のリブ156は、ベンチレータダクト150の上面150cだけでなく、フランジ154の後面および後面の先まで回り込むように連続的に延びて設けられている(図4(b)参照)。これにより、開口部150aの上縁に流れてフランジ154に伝った水が、かかるフランジ154においてベンチレータダクト150の側縁側へ移動することを防止できる。またリブ156がフランジ154の後面の先まで延びているため、リブ156を伝ってきた水が下方に落下し易くなり、水捌けの向上を図れる。
【0047】
また図4(a)に示すように、ベンチレータダクト150の下面150dのベンチレータベース120側には階段部158が設けられている。階段部158は、ベンチレータベース120の突出部128よりも後方側で下方に向かって傾斜した後に突出部128と上下に重なるように延びている。上述したように、突出部128とベンチレータダクト150との間には、高さ方向および前後方向において隙間158aおよび158bが設けられているため水の流路が確保される。そして、階段部158の先端とベンチレータベース120との間には排水孔170が形成されている。このように排水孔170を形成することにより、万が一ベンチレータダクト150内に水が浸入した場合であっても、その水は排水孔170から迅速に排出されるため、換気口102a内への水の浸入をより確実に防ぐことが可能となる。
【0048】
また突出部128と階段部158の先端とが上下に重なっていることにより、下方からのベンチレータダクト150内への水の浸入も防ぐことができ、ベンチレータダクト150への浸水防止対策がより確実なものとなる。更に、ベンチレータダクト150内に水が浸入した場合、その水が階段部158に沿って流れて排水孔170に導かれるため、水の排出をより好適に促すことができる。
【0049】
なお、本実施形態ではベンチレータダクト150に階段部158を設ける例について説明したが、これに限定するものではない。排水孔170の近傍におけるベンチレータベース120およびベンチレータダクト150を他の形状としても上述した効果を得ることができる。
【0050】
図5は、排水孔近傍におけるベンチレータベース120およびベンチレータダクト150の他の形状を示す図である。図5(a)はベンチレータダクト150に階段部158を設けない場合の排水孔近傍を示す図であり、図5(b)はベンチレータベース120の側に階段部を設けた場合の排水孔近傍を示すである。
【0051】
図5(a)では、ベンチレータダクト150の下面150dのベンチレータベース120側は、階段部158が設けられることなく突出部128と上下に重なるように延び、ベンチレータベース120との間に排水孔170を形成している。このとき、突出部128とベンチレータダクト150の下面との間には高さ方向においてのみ隙間158aが形成される。このような形状によっても、ベンチレータダクト150内に浸入した水を排水孔170から好適に排出し、排水孔170への下方からの水の浸入も防ぐことができる。
【0052】
図5(b)では、ベンチレータベース120に設けられる突出部128aは、ベンチレータダクト150の下面150dよりも前方側で下方に向かって傾斜した後にベンチレータダクト150と上下に重なるように延びる階段形状を有する。そして、ベンチレータダクト150の下面150dは、図5(a)と同様に階段部158が設けられることなく突出部128aと上下に重なり、突出部128aとの間に排水孔170を形成している。この場合においても、突出部128aとベンチレータダクト150の下面との間には高さ方向においてのみ隙間158aが形成される。このような形状であっても、上述した効果を得ることが可能である。
【0053】
なお、図5(a)では下面150dの上に突出部128が重なる形状を、図5(b)では突出部128aの上に下面150dが重なる形状を例示したが、これらに限定するものではない。図5(a)および(b)のいずれにおいても、突出部128および128aと下面150dとの重ね順は逆としてもよい。
【0054】
上記説明したように、本実施形態にかかる車両のベンチレーション構造では、ベンチレータベース120とベンチレータダクト150とが別部材であり、ベンチレータダクト150はベンチレータベース120を介して換気口102aに取り付けられる。このため、ベンチレータベース120を共通化し、ベンチレータダクト150のみを適宜変更することが可能となる。したがって、車種に応じてベンチレータ110の構成を最適化し、コストの削減および軽量化を図ることができる。またベンチレータダクト150を枠体形状という簡素化した形状にすることにより、その削減や軽量化を図ることができ、ひいては金型の構造をも簡素化することができることからそれに要するコストをも削減することが可能となる。
【0055】
なお、上述した実施形態においてはベンチレータ110にベンチレータダクト150を設ける構成について詳述したが、これに限定するものではない。例えば、リヤバンパ104内において雪等の巻き上げや水の浸入への十分な対策がなされている場合等には、ベンチレータダクト150を設けない構成とすることも可能であり、それにより更なるコストの削減および軽量化を達成可能となる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両のベンチレーション構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
102…車体後部パネル、102a…換気口、104…リヤバンパ、110…ベンチレータ、120…ベンチレータベース、122…掛着部、124…爪部、126…係合部、128…突出部、128a…突出部、130…ベンチレータバルブ、140…止水シール、150…ベンチレータダクト、150a…開口部、150b…縁、150c…上面、150d…下面、152…爪部、154…フランジ、156…リブ、158…階段部、158a…隙間、158b…隙間、170…排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤバンパ内側の車体後部パネルに設けられた換気口に装着され、該換気口を通じて車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両のベンチレーション構造であって、
前記ベンチレータは、
前記ベンチレータ外に生じる負圧の作用で開閉するベンチレータバルブが取り付けられ、前記換気口に装着されるベンチレータベースと、
前記ベンチレータベースに取り付けられ、該ベンチレータベースに取り付けられる面と反対側の面に開口部を有する枠体形状のベンチレータダクトと、
を備えることを特徴とする車両のベンチレーション構造。
【請求項2】
前記ベンチレータベースおよび前記ベンチレータダクトのうち、いずれか一方は、他方と当接する側の端部近傍の外周面から突出した爪部を有し、該他方は、該一方と当接する側の端部近傍に該爪部と係合する係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項3】
前記ベンチレータダクトの開口部の縁は、上方から下方にゆくにつれて該換気口に向かって接近していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項4】
前記ベンチレータダクトの開口部の上縁には、下方に向かって突出したフランジが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項5】
前記ベンチレータダクトの上面であって、幅方向の両側辺近傍には、上方に向かって突出し該ベンチレータダクトの奥行方向に延びるリブが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項6】
前記リブは、前記ベンチレータダクトの上面から前記フランジの後面および該後面の先まで回り込むように連続的に延びて設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項7】
前記ベンチレータダクトの下面と前記ベンチレータベースの間には排水孔が形成されていて、
前記ベンチレータベースには、前記ベンチレータダクトの先端と上下に重なり、少なくとも高さ方向において前記ベンチレータダクトとの間に隙間を有する突出部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項8】
前記ベンチレータダクトの下面の前記ベンチレータベース側には、前記突出部よりも後方側で下方に向かって傾斜した後に該突出部と上下に重なるように延びる階段部が設けられていて、
前記排水孔は、前記階段部の先端と前記ベンチレータベースとの間に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項9】
前記突出部は、前記ベンチレータダクトよりも前方側で下方に向かって傾斜した後に該ベンチレータダクトと上下に重なるように延びる階段形状であることを特徴とする請求項7に記載の車両のベンチレーション構造。
【請求項10】
前記換気口からの距離は、全開時の前記ベンチレータバルブの自由端、該ベンチレータダクトの下面の端部、該ベンチレータダクトの上面の端部の順、または全開時の該ベンチレータバルブの自由端および該ベンチレータダクトの下面の端部、該ベンチレータダクトの上面の端部の順に大きくなることを特徴とする請求項1に記載の車両のベンチレーション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−225053(P2011−225053A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95116(P2010−95116)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】