説明

車両のリアカメラ装置

【課題】 新たな駆動装置を設けることなく、車両後方を撮像するカメラを格納した状態と露出した状態との切換を行い、カメラの汚れを防止することができるリアカメラ装置を提供する
【解決手段】 車両後方を撮像するリアカメラ13が、ワイパブレード2を駆動する駆動軸3に固定されたカバー部材4に覆われる位置に配置される。カバー部材4は切り欠き部4aを有し、ワイパブレード2が所定停止位置P1にあるときは、切り欠き部4aはリアカメラ13に対向しない位置に位置する。変速段が後退位置に設定されると、ワイパブレード2が所定停止位置P1とは異なる所定位置P2に移動し、同時に切り欠き部4aがリアカメラ13と対向する位置に移動する。これによりリアカメラ13による車両後方の撮像が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両の後方を撮像するカメラを備えたリアカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の後方を撮像するリアカメラは広く用いられている。このようなリアカメラは、通常は光学系が常に露出した状態となっているため、汚れが付きやすいという課題がある。このような課題を解決するために、特許文献1には車両後部に取り付けられる、社名や車種名を表示するためのエンブレムの裏側にリアカメラを配置して、必要なときのみエンブレムとともにリアカメラを駆動して撮像可能位置に移動させるようにしたリアカメラ装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−58543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された装置では、リアカメラを撮像可能な位置に移動させるための専用の駆動装置を必要とするため、コストを上昇させる要因となる。
【0005】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、新たな駆動装置を設けることなく、車両後方を撮像するカメラを格納した状態と露出した状態との切換を行い、カメラの汚れを防止することができるリアカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、車両に搭載され、該車両の後方を撮像するカメラ(13)と、該カメラ(13)で撮像した画像を表示する表示手段(17)とを有するリアカメラ装置において、前記車両の後部窓(10)近傍に位置するワイパ駆動軸(3)と、前記駆動軸(3)に連結されたワイパブレード(2)と、前記駆動軸(3)を覆いかつ前記ワイパブレード(2)とともに回動するカバー部材(4)と、前記車両のワイパスイッチ(14)がオンされたときに前記駆動軸(3)を駆動して前記ワイパブレード(2)を作動させ、前記ワイパスイッチ(14)がオフされたときに前記ワイパブレード(2)を所定停止位置(P1)に停止させるワイパ駆動手段と、前記車両の変速装置の変速段が後退位置にあることを検出する後退検出手段(12)とを有し、前記カメラ(13)は前記カバー部材(4)内に収容されるとともに、前記カバー部材(4)は切り欠き部(4a)を有し、前記ワイパ駆動手段は、前記変速段が前記後退位置にあるときに、前記ワイパブレード(2)を前記所定停止位置(P1)とは異なる所定位置(P2)へ駆動することにより、前記カメラ(13)が前記切り欠き部(4a)を介して前記車両後方を撮像可能とすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリアカメラ装置において、前記ワイパブレード(2)が前記所定停止位置(P1)にあるときに前記切り欠き部(4a)に対向する位置に、第2のカバー部材(5)を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、車両後方を撮像するカメラが、ワイパ駆動軸を覆うカバー部材内に収容されるので、ワイパブレードが所定停止位置にあるときはカメラがカバー部材により覆われた状態となる。一方、車両の変速装置の変速段が後退位置に操作されると、ワイパブレードが所定停止位置と異なる所定位置に移動し、それに伴ってカバー部材も移動することにより、カメラは切り欠き部を介して車両後方を撮像可能な状態となる。すなわち、ワイパブレードを駆動するワイパ駆動手段を用いて、カメラを格納した状態と露出した状態との切換を行うことができるので、新たに専用の駆動装置を設ける必要がなく、コスト上昇を抑制しつつカメラの汚れを防止できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ワイパブレードが所定停止位置にあるときに切り欠き部に対向する位置に、第2のカバー部材が設けられているので、変速段が後退位置以外にあり、かつワイパの非作動時においては、切り欠き部を介してカメラを収納している部分にほこりや異物が侵入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるリアカメラ装置の構成を示すブロック図、図2〜図4は、リアカメラの取り付け位置とワイパの作動状態を説明するための斜視図である。図3はカバー部材4を一点鎖線で示し、カバー部材4の内部を示す図であり、図4は対応する実際の斜視図を示す。
【0011】
本実施形態では、車両の後方を撮像するリアカメラ13は、当該車両の後部窓10の近傍に設けられ、後部窓10に付着した水滴を除去するためのリアワイパ1のカバー部材4に収容されて取り付けられている。リアワイパ1は、ワイパブレード2と、ワイパブレード2に連結され、ワイパブレード2を駆動する駆動軸3と、第1カバー部材4と、第2カバー部材5と、駆動軸3を回動させるモータ(図示せず)などからなるワイパ駆動機構16とを備えている。
【0012】
第1カバー部材4は駆動軸3に固定されており、駆動軸3の回動に伴って回動する。カバー部材4は切り欠き部(切り欠き窓)4aを有し、図3(a)に示すようにワイパブレード2が所定停止位置P1にあるときは、切り欠き部4aは第2カバー部材5に対向する位置に位置し、同図(b)に示すようにワイパブレード2が所定停止位置P1と異なる所定位置P2にあるときは、切り欠き部4aがリアカメラ13に対向する位置に位置するように構成されている。したがって、図3(b)に示す状態では、リアカメラ13による車両後方の撮像が可能である。
【0013】
本実施形態においてリアカメラ装置は、図1に示すように、制御装置11と、当該車両の変速機の変速段を検出するシフトポジションセンサ12と、リアカメラ13と、ワイパスイッチ14と、ディスプレイ17と、リレー15と、ワイパ駆動機構16とを備えている。
【0014】
シフトポジションセンサ12は選択されている変速段を示す信号を制御装置11に供給する。リアカメラ13は、上述した撮像可能な状態において車両後方を撮像し、得られた画像を示す画像信号を制御装置11に供給する。ワイパスイッチ14は、運転者の操作に応じてリアワイパの作動/停止を切り換える切換信号を制御装置11に供給する。
【0015】
ディスプレイ17は、変速段が後退位置にあるときにリアカメラ13により撮像された画像を表示し、変速段が後退位置にないときはナビゲーション装置(図示せず)から供給される画像を表示する。リレー15は、バッテリ18に接続されており、制御装置11から供給される制御信号に応じてオンオフ作動する。リレー15がオン作動すると、ワイパ駆動機構16に電源が供給される。
【0016】
制御装置11は、入力回路、CPU(中央演算処理装置)、メモリ、出力回路を備えた電子制御装置であり、入力される信号に応じてディスプレイ17の表示制御、リアワイパ1の作動制御、及びリアカメラ13の作動制御を行う。
【0017】
図5は、制御装置11のCPUで実行される制御処理のフローチャートである。この処理は所定時間(例えば30ミリ秒)毎に実行される。
ステップS11では、変速段が後退位置(R)にあるか否かを判別し、その答が否定(NO)であるときは、リレー15をオンする(ステップS12)。これにより、ワイパブレード2が所定停止位置P1にないときは所定停止位置P1まで移動して停止する。
【0018】
ステップS13では、移動完了フラグFWを「0」に設定し、次いでダウンカウントタイマtMRを所定時間TMRに設定してスタートさせる(ステップS14)。このときリアカメラ13により得られる画像はディスプレイ17に表示しないようにする(ステップS15)。
【0019】
ステップS11の答が肯定(YES)、すなわち変速段が後退位置にあるときは、移動完了フラグFWが「1」であるか否かを判別する。最初はこの答が否定(NO)であるので、ステップS17に進み、図6に示すワイパ駆動処理を実行する。
【0020】
図6のステップS21では、ワイパ駆動信号を出力し、ワイパ駆動機構16に供給する。ステップS22では、タイマtMRの値が「0」であるか否かを判別し、その答が否定(NO)である間は、リレー15のオン状態を継続する(ステップS22,S23)。そして、タイマtMRの値が「0」となると、リレー15をオフして(ステップS24)、処理を終了する。ワイパ駆動信号が出力され、かつリレー15がオン状態にあるとき、ワイパブレード2が回動して、所定停止位置P1から所定位置P2へ向かって移動する。所定時間TMRが経過してリレー15がオフされると、ワイパブレード2が所定位置P2に停止する。なお、所定時間TMRは、ワイパブレード2が所定停止位置P1から所定位置P2まで移動するのに要する時間に設定される。
【0021】
図5に戻り、ステップS18では、移動完了フラグFWを「1」に設定し、リアカメラ13により得られる画像をディスプレイ17に表示する(ステップS19)。移動完了フラグFWが「1」に設定されると、以後はステップS16からステップS19に進む処理を繰り返す。これにより、変速段が後退位置にある間、リアカメラ13により得られる画像がディスプレイ17に表示される。
【0022】
なお、ワイパスイッチ14がオンされたときは、制御装置11はリレー15をオンするとともにワイパ駆動信号を出力する一方、ワイパスイッチ14がオフされると、制御装置11はワイパ駆動信号の出力を停止する。したがって、ワイパブレード2は所定停止位置P1に達した時点で停止する。
【0023】
以上のように本実施形態では、ワイパブレード2が所定停止位置P1にあるときは、図3(a)及び図4(a)に示すように、第1カバー部材4によりリアカメラ13が覆われて汚れが付着することが防止される。そのとき切り欠き部4aは、第2カバー部材5に対向する位置にあるので、第2カバー部材5により、切り欠き部4aを介してほこりや異物が侵入することが防止される。
【0024】
変速段が後退位置に設定されると、ワイパブレード2が所定停止位置P1から所定位置P2へ移動して停止する。このときは、図3(b)及び図4(b)に示すように、切り欠き部4aはリアカメラ13に対向する位置にあるので、リアカメラ13は切り欠き部4aを介して車両後方の撮像が可能となる。したがって、ディスプレイ17に車両後方の画像が表示される。
【0025】
このように本実施形態では、ワイパブレード2を駆動するワイパ駆動機構16を用いて、リアカメラ13が第1カバー部材4に覆われた状態と切り欠き部4aを介して露出した状態との切換を行うことができるので、新たに専用の駆動装置を設ける必要がなく、コスト上昇を抑制しつつリアカメラ13の汚れを防止できる。
【0026】
本実施形態では、ディスプレイ17が表示手段に相当し、制御装置11、リレー15、及びワイパ駆動機構16がワイパ駆動手段を構成する。
【0027】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、ワイパブレード2が図2に示す位置にあるとき、リアカメラ13による撮像を可能としたが、図2に示す位置だけでなく、所定停止位置P1と異なる位置であればどの位置でもよい。また所定停止位置P1は、図3(a)に示す位置に限るものでないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態にかかるリアカメラ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】リアカメラの取り付け位置を説明するための斜視図である。
【図3】リアカメラの取り付け位置とワイパの作動状態を説明するための斜視図である。
【図4】リアカメラの取り付け位置とワイパの作動状態を説明するための斜視図である。
【図5】図1に示す制御装置で実行される制御処理のフローチャートである。
【図6】図5に示す処理で実行されるサブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 ワイパ装置
2 ワイパブレード
3 駆動軸
4 第1カバー部材
4a 切り欠き部
5 第2カバー部材
11 制御装置(ワイパ駆動手段)
13 リアカメラ
16 ワイパ駆動機構(ワイパ駆動手段)
17 ディスプレイ(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、該車両の後方を撮像するカメラと、該カメラで撮像した画像を表示する表示手段とを有するリアカメラ装置において、
前記車両の後部窓近傍に位置するワイパ駆動軸と、
前記駆動軸に連結されたワイパブレードと、
前記駆動軸を覆いかつ前記ワイパブレードとともに回動するカバー部材と、
前記車両のワイパスイッチがオンされたときに前記駆動軸を駆動して前記ワイパブレードを作動させ、前記ワイパスイッチがオフされたときに前記ワイパブレードを所定停止位置に停止させるワイパ駆動手段と、
前記車両の変速装置の変速段が後退位置にあることを検出する後退検出手段とを有し、
前記カメラは前記カバー部材内に収容されるとともに、前記カバー部材は切り欠き部を有し、前記ワイパ駆動手段は、前記変速段が前記後退位置にあるときに、前記ワイパブレードを前記所定停止位置とは異なる所定位置へ駆動することにより、前記カメラが前記切り欠き部を介して前記車両後方を撮像可能とすることを特徴とするリアカメラ装置。
【請求項2】
前記ワイパブレードが前記所定停止位置にあるときに前記切り欠き部に対向する位置に、第2のカバー部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のリアカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166648(P2009−166648A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6407(P2008−6407)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】