説明

車両の乗員用除電装置

【課題】除電効率の良好な車両の乗員用除電装置を提供する。
【解決手段】乗員Pの降車を検出するイグニッションセンサ6等と、このイグニッションセンサ6等で、前記乗員Pの降車状態が検出されることにより、接続されたドアハンドル部24のイオン化針セット1d,1d等からイオンIが放出される制御が行われるイオン制御部2が設けられた車両20の乗員用除電装置である。
前記イオン化針セット1d,1dが設けられたドアハンドルイオン放出部25は、イオンIの放出方向が、前記乗員Pの降車時に、乗員Pの皮膚Sが露出している手Hの部分に向かうように、設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員用除電装置に関するもので、特に、車両への乗降を行う際に、乗員に帯電した静電気を除去する車両の乗員用除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の乗員用除電装置としては、例えば、図9及び図10に示すような車両に設けられたイオン発生装置の複数のイオン化針セット1a〜1cから、イオンが放出可能となるように構成されているものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
まず、従来の車両の乗員用除電装置の構成について、図9を用いて説明すると、この従来の乗員用除電装置では、車両に設けられたイオン発生装置1が、作動制御部2に接続されて、複数のイオン化針セット1a〜1cから、イオンが放出可能となるように構成されている。
【0004】
このイオン制御部2には、車両ドアのロックを検出するドアロックセンサ3と、外部ドアノブの操作状態を検出する外部ドアノブセンサ4と、内部ドアノブの操作状態を検出する内部ドアノブセンサ5と、イグニションキーの操作状態を検出するイグニションセンサ6と、車両の速度を検出する車速センサ7とが、接続されて設けられている。
【0005】
このうち、前記イオン化針セット1aは、図10(a)(b)に示すように、各運転席ドア10のアウタパネル10a内側で、外部ドアノブ部11の近傍に設けられている。
【0006】
そして、このイオン化針セット1aによって、外側に設けられた外部ドアノブ12の裏面側に、連通孔13を介してマイナスイオンが放出されるように構成されている。
【0007】
また、前記運転席ドア10の外部ドアノブ部11近傍には、前記イオン化針セット1bが設けられていて、窓枠16の後縁16a及び下縁16bに沿ってイオンが供給されるように構成されている。
【0008】
更に、図10(c)に示すように、ステアリング装置17近傍のイグニション部18には、イグニションキーの差込部19廻りに、イオンを供給する前記イオン化針セット1cが設けられている。
【0009】
次に、この従来の車両の乗員用除電装置の作用効果について説明する。
【0010】
この従来の車両の乗員用除電装置では、前記イオン発生装置1によって、乗員が、車両に乗車する際に、乗員が接触する可能性のある前記外部ドアノブ部11、窓枠部15及びイグニッション部18に設けられた前記イオン化針セット1a〜1cからイオンが、放出される。
【0011】
そして、これらの放出されたイオンによって、前記乗員に帯電した静電気が、中和される。
【0012】
このため、前記外部ドアノブ12等へ、乗員の手が、接触する際の静電気ショックが緩和される。
【特許文献1】特許公開2002−178859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、静電気は、車両から乗員が降車する時に、多く発生するものであるが、従来の装置によると、前記外部ドアノブ部11、窓枠部15及びイグニッション部18に設けられた前記イオン化針セット1a〜1cから、車外側に向けて放出されたイオンは、降車中の乗員に届きにくい。
【0014】
そこで、本発明の目的は、降車時の除電効率の良好な車両の乗員用除電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されたものは、乗員の降車を検出する降車検出手段と、該降車検出手段で、前記乗員の降車状態を検出することにより、接続されたイオン発生器からイオンを放出する制御を行うイオン制御部とを有する車両の乗員用除電装置であって、前記イオン発生器は、イオンの放出方向が、前記乗員の降車時に、該乗員の皮膚が露出している部分に向かうように、設置されている車両の乗員用除電装置を特長としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載されたものによれば、前記降車検出手段で、前記乗員の降車状態が検出されると、前記イオン制御部では、接続されたイオン発生器から、イオンが放出される。
【0017】
該イオンの放出方向は、前記イオン発生器が、前記乗員の降車時に、該乗員の皮膚が露出している部分に向けて設置されているので、放出されたイオンは、直接、近距離で、乗員の皮膚の露出している部分に向かい、当接する。
【0018】
ここで、例えば、乗員の皮膚が露出している部分とは、手又は顔等である。
【0019】
このため、降車時に効率良く、乗員の身体に付いた静電気が中和されて、除電されるため、前記車体等に、乗員の手が接触しても、静電気ショックを受ける虞が無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良の実施の形態の車両の乗員用除電装置を図面に基づいて説明する。なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0021】
図1乃至図8は、この発明の実施の形態の車両の乗員用除電装置を示すものである。
【0022】
まず、車両全体の構成を図3を用いて説明すると、この実施の形態の車両20の車体21内に設けられた乗員室22には、運転席シート32が設けられている。
【0023】
また、この運転席シート32の前方に位置するステアリング装置33近傍には、イグニッション部18の差し込み口19を有するキーシリンダ装置34が設けられている。
【0024】
そして、このキーシリンダ装置34に設けられたイグニションセンサ6によって、イグニッションキーの操作状態が検出されるように構成されている。
【0025】
この乗員室22の側面部を構成する車体の一部には、ドア開口部23が開口形成されていて、このドア開口部23には、車両ドアとしての運転席ドア40が、開閉塞可能に設けられている。
【0026】
この運転席ドア40は、前縁部10bに設けられたヒンジ部を回動中心として、揺動可能に軸支されることにより、後端部10eを円弧状に揺動させて、このドア開口部23を開閉塞可能とするように構成されている。
【0027】
この運転席ドア40には、図3中A部に示すように、内側面に設けられるドアハンドル部24には、イオン発生装置1に接続されたイオン発生器としてのイオン化針セット1d,1d…等を有するドアハンドルイオン放出部25が、設けられている。
【0028】
このうち、イオン化針セット1d,1dは、各々離し置きされた一対の電極から構成されていて、プラスイオンを放出する正電極と、マイナスイオンを放出する負電極とを有し、イオン発生装置1を介して電気的に接続されるイオン制御部2からの制御信号によって、イオンを針先端方向へ向けて放出及び停止可能となるように構成されている。
【0029】
このイオン化針セット1d,1dは、図5に示すように、運転席ドア40のインナトリム内側面に凹設されるドアハンドル部24の凹部24a底面近傍に形成されているドアハンドルイオン放出部25のドアハンドルイオン放出口25a,25a内に各々配置されている。
【0030】
このイオン化針セット1d,1dが発生させたイオンIは、これらのイオン放出口25a,25aを介して、前記ドアハンドル部24のドアハンドル本体26のうち、乗員が手で把持する把持部26a方向に向けられて放出されるように構成されている。
【0031】
そして、図5中(b)で示すように、これらのイオン化針セット1d,1dによって、放出されたイオンIが、降車時に前記ドアハンドル本体26の把持部26aを握った乗員の手Hの皮膚Sに、直接、当接するように、前記凹部24a底面の湾曲形状に沿って、一定角度、車両後方へ向けて、前記イオン放出口25a,25aの開口方向が傾斜させて設置されている。
【0032】
更に、図3中B部に示すように、運転席ドア40の内側面10cには、ドアグリップ部27が設けられている。
【0033】
このドアグリップ部27のグリップ部27a内側に位置する前記運転席ドア40の内側面10cには、図6に示すように、ドアグリップイオン放出部28のドアグリップイオン放出口28a,28aが開口形成されている。
【0034】
このドアグリップイオン放出口28a,28aの内部には、前記イオン発生装置1に接続されたイオン化針セット1e,1eが、設置されている。
【0035】
そして、図6に示すように、このグリップ部27aを摘んだ乗員の手Hの皮膚S表面に向けて、前記イオン化針セット1e,1eが、イオンIを放出して、降車する乗員の除電が行われるように構成されている。
【0036】
更に、この運転席ドア40の上部には、図3に示すように、サッシュ部10dが形成されている。
【0037】
このサッシュ部10dは、図3中C部に示されるように、上部の後方角部の後端面10eに、サッシュ後方イオン放出部30のサッシュ後方イオン放出口30a,30aが開口形成されている。
【0038】
このサッシュ後方イオン放出口30a,30a内には、図1に示すように、サッシュ後方イオン化針セット1f,1fが設定されていて、前記イオン化針セット1f,1fが、発生させたイオンIが、運転席ドア40を開放した状態で、乗降する乗員Pの顔Fに向けて、放出される。
【0039】
そして、図1に示す様に、乗員Fが立位の状態で前記イオンが直接、当接するようにドアサッシュの上部後方角部に設置されていると共に、図3に示す様に、運転席ドア40を内側から開放する際に発生する負圧で、放出されたイオンが、乗員室22内方向に流れて、着座状態から降車しようとする乗員Pの顔Fの皮膚Sに正面から当接するように構成されている。
【0040】
更に、この実施の形態では、図2に示すように、前記イオン制御部2に、前記エンジンON又はOFF操作を行うイグニッションスイッチのON,OFF状態を検出するイグニッションセンサ6と共に、前記運転席ドア10の開閉塞状態を検出するドア開閉センサ9aと、車室内部のドアハンドル部24のドアハンドル本体26の操作状態を検出する内部ドアハンドルセンサ9bとが、電気的に接続されている。
【0041】
また、前記イオン制御部2には、イオン発生装置1を介して、前記各イオン化針セット1d,1d、1e,1e、及び1f,1fが、電気的に接続されている。
【0042】
すなわち、前記イグニッションスイッチのOFF操作に伴って、前記イグニッションセンサ6で、OFF動作が検出されると、前記イオン発生装置1に、前記イオン化針セット1d,1dからイオンを発生させるイオン発生信号が送出される。
【0043】
そして、このイオン発生装置1からは、前記運転席ドア10の内側面10cに位置するドアハンドル部24に設けられたイオン化針セット1d,1dに通電が行われて、このドアハンドル部24に向けて設けられたドアハンドルイオン放出口25a,25aからイオンが放出されるように構成されている。
【0044】
また、このイオン制御部2では、前記ドアハンドル部24のドアハンドル本体26の開放操作に伴って、前記内部ドアハンドルセンサ9bで、ドアハンドル本体26のドア開放動作が検出されると、前記イオン発生装置1に、前記イオン化針セット1e,1eからイオンを発生させるイオン発生信号が送出される。
【0045】
そして、このイオン発生装置1からは、前記ドアグリップ部27のイオン化針セット1e,1eに通電が行われて、前記ドアグリップ部27に設けられたドアグリップイオン放出口28a,28aからイオンが、放出されるように構成されている。
【0046】
更に、このイオン制御部2では、前記ドア開閉センサ9aにより、ドアの開放が検出された際には、前記イオン発生装置1に、前記イオン化針セット1f,1fからイオンを発生させるイオン発生信号が送出される。
【0047】
そして、このイオン発生装置1からは、前記ドアサッシュ部10dのイオン化針セット1f,1fに通電が行われて、ドアサッシュ部10dの上部の後端部10eに設けられたサッシュ後方イオン放出部30の放出口30a,30aから、イオンIが放出されるように構成されている。
【0048】
次に、この実施の形態の車両の乗員用除電装置の作用効果について、図7に示すフローチャートに沿って説明する。
【0049】
まず、Step1で、除電制御が開始されると、Step2では、前記イグニッションセンサ6が、イグニッションOFF状態を検出したか否かが、判断される。
【0050】
すなわち、イグニッションOFFを、前記イグニッションセンサ6が検出すると、Step3に進み、ドアハンドル部24にイオンの放出が開始される。
【0051】
図4には、横軸に時間軸(sec)を縦軸に、乗員Pの身体に帯電する電位(kV)を示し、横軸の0点を、イグニッションOFFの検出時点とするグラフが、この実施の形態のイオン発生装置1が有る場合が実線で、無い場合が一点鎖線で示されている。
【0052】
このため、ドアハンドル部24に向かう乗員Pの手Hの露出している部分に向けて、イオンIが、図5中(a)に示すように、放出されて、皮膚Sに正面から直接当接する。
【0053】
従って、図4中実線で示すように、この実施の形態では、前記運転席ドア10が、開放される前に、乗員Pの身体に帯電した静電気が減少を開始する。
【0054】
そして、図5中(b)に示すように、ドアハンドル本体26の把持部26aを握った乗員Pの手の皮膚には、放出されたイオンIが直接、近距離で当接する。
【0055】
このように、この実施の形態では、前記イグニッションセンサ6で、前記乗員Pの降車状態が検出されると、前記イオン制御部2では、接続されたイオン発生器1のうち、イオン化針セット1e,1eから、イオンIが放出される。
【0056】
このイオンIの放出方向は、前記イオン発生器1が、前記乗員Pの降車時に、乗員Pの皮膚が露出している部分に向けて設置されているので、放出されたイオンは、直接、近距離で、乗員Pの皮膚Sの露出している部分に向かい、当接する。
【0057】
この実施の形態では、前記ドアハンドル本体26の把持部26aを握る前から、前記ドアハンドル部26に設けられたドアハンドルイオン放出口25a,25aのイオン化針セット1e,1eから、イオンIを放出させることができる。
【0058】
このため、ドアハンドル本体26の開操作を行った際にイオンIの放出を開始するものに比して、イオンIを長時間、乗員Pの皮膚Sに当接させることができる。
【0059】
従って、効率良く、乗員Pの身体に付いた静電気が中和されて、除電されるため、降車時に、前記外部ドアノブ11やアウタパネル10a等に、乗員の手が接触しても、静電気ショックを受ける虞が無い。
【0060】
しかも、この実施の形態では、前記ドアハンドル部26に設けられたドアハンドルイオン放出口25a,25aが、運転席ドア40のインナトリム内側面に凹設されるドアハンドル部24の凹部24a底面近傍に形成されている。
【0061】
このため、図5中(b)に示すように、前記ドアハンドル本体26の把持部26aを握る乗員Pの手Hに、遮られて飛散する虞が少なくなり、更に、除電効率を向上させることができる。
【0062】
Step4では、前記ドアハンドル部24の内部ドアハンドルセンサ9bによって、ドアハンドル本体26が、開放方向に操作されて、開信号が出力されたか否かが判定される。
【0063】
そして、内部ドアハンドルセンサ9bが、開方向に操作された場合、前記ドアハンドル部24のドアハンドルイオン放出口25a,25aから放出されているイオンIが停止されると共に、Step6に進み、前記ドアグリップ部27のイオンIの放出が開始される。
【0064】
このため、ドアロックが開放されて、運転席ドア40のドアラッチが解除されて、開放される際に、予め、図6に示すように、イオン化針セット1e,1eからイオンIが放出される。
【0065】
従って、運転席ドア40を開放する動作を行う際に、運転者Pの手Hの皮膚Sに、直接イオンが当接するように、予め、イオンIを放出させることができる。
【0066】
このため、この実施の形態では、ドアグリップ部27を把持してから、イオンIの放出が開始されるものに比して、イオンIを長時間、乗員Pの皮膚Sに当接させることができる。
【0067】
次に、Step7では、前記ドア開閉センサ9aによって、前記運転席ドア40の開閉の有無が検出される。
【0068】
すなわち、前記ドア開閉センサ9aによって、運転席ドア40の開放が検出されると、次のStep8に進み、ドアグリップ部27のドアグリップイオン放出口28a,28aからのイオンの放出を停止させる。
【0069】
また、運転席ドア40が開放されないと、Step5に戻り、ドアグリップ部27のドアグリップイオン放出口28a,28aからのイオンIの放出が維持される。
【0070】
Step9では、前記運転席ドア40の開放に伴って、図3中C部に示されるドアサッシュ部10dの後方のサッシュ後方イオン放出部30の放出口30a,30aから、図1中に示されるように、イオンIが放出される。
【0071】
この放出されたイオンIは、運転席ドア40が開放された状態では、乗降する乗員Pの顔Fに向けて、放出される。
【0072】
そして、この実施の形態では、図1に示すように、乗員Fが立位の状態で前記イオンIが直接、当接するようにドアサッシュ10dの上部後方角部である後端部10eに、イオン化針セット1f,1fが設置されている。
【0073】
従って、図3に示すように、運転席ドア40を内側から開放する際に発生する負圧で、放出されたイオンIが、乗員室22内方向に流れて、着座状態から降車しようとする乗員Pの顔Fの皮膚Sに正面から当接する。
【0074】
例えば、前記内部ドアハンドルセンサ9bによる運転席ドア40の開放操作が行われる際に、予め前記イオン化針セット1f,1fからイオンIを発生させておけば、車体21の開口部23に近い位置からイオンIを放出させることができる。
【0075】
放出されたイオンIの方向は、降車しようとする乗員Pの露出した皮膚Sの一部である顔Fに直接、正面から当接する方向に流れる。
【0076】
このため、効率よく、運転席シート32に着座した状態から、降車する乗員Pの顔FにイオンIを当接させて、除電を行うことが出来る。
【0077】
そして、Step10では、運転席ドア40のドア開閉センサ9aが、ドア閉を検出すると、Step11に進み、ドアサッシュの後方のサッシュ後方イオン放出部30に設けられたイオン化針セット1f,1fからのイオンの発生を停止させると共に、Step12で、一連の制御を終了する。
【0078】
この実施の形態では、図4中実線で示す乗員Pの帯電電位が、降車時に、一点鎖線で示される除電装置が設けられていない車両の乗員の帯電電位に比して、低く抑えられていることが分かる。
【実施例1】
【0079】
図2及び図9は、この発明の実施の形態の実施例1の車両の乗員用除電装置の構成及び制御フローを示すものである。
【0080】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0081】
この実施例1のイオン制御部2には、図2中二点鎖線で示すように、タイマー2aが設けられている。
【0082】
このタイマー2aは、接続されるイオン制御部2によって、ドアハンドル部24に設けられたイオン化針1d,1d、ドアグリップ部27に設けられたイオン化針1e,1e又は、ドアサッシュ部10d上部に設けられたイオン化針セット1f,1fに通電が行われて、イオンIを発生させる際、イオンIの発生開始から、時間を計測して、一定時間経過後、各イオン放出口25a,28a,30aからの放出を、個別に停止させるように、各イオン化針セット1e〜1fへの通電を個別に停止可能とする構成としている。
【0083】
次に、この実施例1の車両の乗員用除電装置の作用効果について、説明する。
【0084】
この実施例1の車両の乗員用除電装置では、Step21で、除電制御が開始されると、Step22では、前記イグニッションセンサ6が、イグニッションOFF状態を検出したか否かが、判断される。
【0085】
イグニッションOFF状態の検出により、Step23では、前記タイマー2aによって、タイマカウントが開始されると、Step24では、前記イオン化針セット1d,1d及び1e,1eに通電が行われて、前記ドアハンドルイオン放出部25のドアハンドル放出口25a,25a及び前記ドアグリップイオン放出部28のドアグリップイオン放出口28a,28aから、イオンIの放出が開始される。
【0086】
Step25では、前記タイマー2aのカウント時間が一定時間を経過したか否かが判定される。ここで、イグニッションOFFからのタイマーのカウント時間としては、0.5秒乃至10秒の間、望ましくは1秒乃至5秒の間等、除電を充分に行える時間で、しかも、乗員が降車後に確実に停止することにより、消費電力を抑えられる時間に設定されている。
【0087】
前記タイマー2aのカウント時間が、一定時間以上となると、Step27に進み、前記イオン化針セット1d,1d及び1e,1eへの通電が停止されることにより、前記ドアハンドル部24及びドアグリップ部27からのイオンの放出が停止される。
【0088】
このため、この実施例1では、前記運転席ドア40が開放されなかった場合にも、前記ドアハンドル部24及びドアグリップ部27からのイオンIの放出が、一定時間後に確実に停止されて、消費電力の浪費を抑制することが出来る。
【0089】
Step26では、前記内部ドアハンドルセンサ9bによって、前記ドアハンドル本体26が開方向に操作されたか否かが検出されて、判定される。
【0090】
内部ドアハンドルセンサ9bによる検出結果が、開操作であると、Step28に進みドアハンドル部24のドアハンドルイオン放出口25aから放出されているイオンIを停止させる。また、開操作が検出されないと、Step24に戻る。
【0091】
Step28では、ドアサッシュ後方へ向けてイオンの放出が開始される。この際、運転席ドア40が開放される際に、既に、予め、イオンIが放出されているので、開放動作に伴って、運転席シート32方向に、イオンIが流れて、運転者Pの顔Fの皮膚Sに、直接イオンを効率よく当接させることができる。
【0092】
Step29では、前記ドア開閉センサ9aにより、運転席ドア40の開閉塞が判定される。
【0093】
すなわち、前記運転席ドア40が、閉塞されるとStep30に進み、開放されたままであると、Step28に戻って、ドアサッシュ後方へのイオンIの放出が続けられる。
【0094】
このため、図1に示されるように、運転席ドア40が開放されている間は、長時間に渡り、イオンIを前記乗員Pの顔Fの皮膚Sに当接させることができるので、更に、除電効率を向上させることができる。
【0095】
Step30では、ドアサッシュ後方へのイオンの放出を停止させて、Step31で、一連の除電制御を終了する。
【0096】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0097】
即ち、前記実施の形態では、前記イグニッションスイッチのOFF操作に伴って、前記ドアハンドル部24に設けられたドアハンドルイオン放出口25a,25aからイオンIを放出すると共に、前記ドアハンドル部24の開放操作に伴って、前記ドアグリップ部27に設けられたドアグリップイオン放出口28a,28aからイオンIを放出し、更に、前記ドア開閉センサ9aにより、運転席ドア10の開放が検出された際に、ドアサッシュ部10dの上部に設けられたサッシュ後方イオン放出部30のサッシュ後方イオン放出口30a,30aから、イオンIが、順次放出されるように構成されているが、例えば、前記イグニッションスイッチのOFF操作に伴って、全てのイオン化針セット1e〜1fから、イオンIの放出を開始するように構成してもよく、特に、イオン放出のタイミング及びその順序が、前記実施の形態及び実施例1に限定されるものではない。
【0098】
また、前記実施の形態及び実施例1では、車両ドアとして、運転席ドア10を用いものを例示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、助手席ドアや、後部座席ドア、後部座席スライドドア等、車両20のどの部分の車両ドアであっても、良いことは当然であり、車両ドアの形状、数量及び材質が、限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態の車両の乗員用除電装置で、要部の構成を説明する車両の運転席ドアの模式的な斜視図である。
【図2】実施の形態の車両の乗員用除電装置で、除電装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】実施の形態の車両の乗員用除電装置で、車両のドア開口部に設けられる運転席ドアの内側面及び外側面の構成を説明する模式的な斜視図である。
【図4】実施の形態の車両の乗員用除電装置で、実線に示す本願発明の除電装置を用いた場合の除電された乗員の身体の帯電電位の様子を、一点鎖線に示す除電装置が用いられていない場合の乗員の帯電電位と比較したグラフ図である。
【図5】実施の形態の車両の乗員用除電装置で、内部のドアハンドル付近を車両内部から見た様子を説明し、(a)は、把持部を握る前の様子、(b)は、把持部を握って、ドアラッチを解除する動作の様子を説明する模式的な側面図である。
【図6】実施の形態の車両の乗員用除電装置で、内部のドアグリップ部付近を車両内部から見た様子を説明する模式的な側面図である。
【図7】実施の形態の車両の乗員用除電装置で、除電制御を説明するフローチャート図である。
【図8】実施の形態の実施例1の車両の乗員用除電装置で、除電制御を説明するフローチャート図である。
【図9】従来例の車両の乗員用除電装置で、構成を説明するブロック図である。
【図10】従来例の車両の乗員用除電装置で、(a)は、車両用ドアのアウタパネルに設けられた外部ドアノブの縦断面図、(b)は、車両用ドアの側面図、(c)は、ステアリング装置斜視図である。
【符号の説明】
【0100】
1 イオン発生装置
1d,1d (ドアハンドル部)イオン化針セット(イオン発生器)
1e,1e (ドアグリップ部)イオン化針セット(イオン発生器)
1f,1f (ドアサッシュ後方)イオン化針セット(イオン発生器)
2 イオン制御部
2a タイマー
降車検出手段
6 イグニッションセンサ
9a ドア開閉センサ
9b 内部ドアハンドルセンサ
10d サッシュ部
10e 後端部(後方角部)
24 ドアハンドル部
25 ドアハンドルイオン放出部
25a ドアハンドルイオン放出口
27 ドアグリップ部
28 ドアグリップイオン放出部
28a ドアグリップイオン放出口
30 サッシュ後方イオン放出部
30a サッシュ後方イオン放出口
40 運転席ドア(車両ドア)
I イオン
P 乗員
H 手
S 皮膚
F 顔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の降車を検出する降車検出手段と、該降車検出手段で、前記乗員の降車状態を検出することにより、接続されたイオン発生器からイオンを放出する制御を行うイオン制御部とを有する車両の乗員用除電装置であって、
前記イオン発生器は、イオンの放出方向が、前記乗員の降車時に、該乗員の皮膚が露出している部分に向かうように、設置されていることを特長とする車両の乗員用除電装置。
【請求項2】
前記イオン発生器は、車両ドアの内側面に設けられたドアハンドル部を操作している乗員の手に、放出されたイオンが直接、当接するように設置されているドアハンドルイオン放出口を有することを特長とする請求項1記載の車両の乗員用除電装置。
【請求項3】
前記イオン発生器は、車両ドアを開放する際、着座状態から降車する乗員の顔に向けて、放出されたイオンが、当接するようにドアサッシュの上部後方角部に設置されているサッシュ後方イオン放出口を有することを特長とする請求項1又は2記載の車両の乗員用除電装置。
【請求項4】
前記車室内に設けられて、エンジンON又はOFF操作を行うイグニッションスイッチのON,OFF状態を検出するイグニッションセンサと、前記車両ドアの開閉塞状態を検出するドア開閉センサと、内部ドアハンドル部の操作状態を検出する内部ドアハンドルセンサとを、前記イオン制御部に接続すると共に、該イオン制御部では、接続されるイオン発生器のうち、前記イグニッションスイッチのOFF操作に伴って、前記内部ドアハンドル部に設けられたドアハンドルイオン放出口からイオンを放出すると共に、前記内部ドアハンドル部の開放操作に伴って、前記ドアグリップ部に設けられたドアグリップイオン放出口からイオンを放出し、更に、前記ドア開閉センサにより、ドアの開放を検出した際に、ドアサッシュ部上部に設けられたサッシュ後方イオン放出口から、イオンを放出することを特長とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の車両の乗員用除電装置。
【請求項5】
前記車室内に設けられて、エンジンON又はOFF操作を行うイグニッションスイッチのON,OFF状態を検出するイグニッションセンサと、前記車両ドアの開閉塞状態を検出するドア開閉センサと、内部ドアハンドルの操作状態を検出する内部ドアハンドルセンサとを、前記イオン制御部に接続すると共に、該イオン制御部では、接続されるイオン発生器から、少なくとも、ドアハンドル部又は、ドアグリップ部のうち少なくとも何れか一方と、ドアサッシュ部上部に設けられた各イオン放出口とを介して、イオンを放出すると共に、一定時間経過後、各イオン放出口からの放出を個別に停止するタイマーを設けたことを特長とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の車両の乗員用除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−308057(P2008−308057A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158319(P2007−158319)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】