説明

車両の制動灯制御装置

【課題】後続車両に対して制動灯による警告を適切に行うことができる車両の制御灯制御装置の提供。
【解決手段】自車両前方の物標を検知する物標検知手段1と、物標検知手段1が物標を検知した場合において、所定の条件下で、自車両の制動手段5を作動させる走行制御手段2と、走行制御手段による制動手段の作動に伴って、制動灯6を点灯させる点灯制御手段3と、自車両の後続車両を検知する後続車両検知手段4とを備え、点灯制御手段3は、後続車両検知手段4が後続車両を検知した場合に、制動手段5の作動開始から制動灯6の点灯開始までの点灯開始時間差を、後続車両が検知されない場合の点灯開始時間差よりも短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動灯制御装置に係り、より詳細には、制動手段の作動時に制動灯の点灯を開始するタイミングを制御する車両の制動灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行安全性向上のために、自車両の前方の障害物を検知する種々の障害物検知装置が提案されている。そして、検知された障害物と自車両との衝突が予知された場合に、自動的に制動手段を作動させて、自車両を減速又は停止させたりして、乗員を衝突による衝撃から保護することが行われている。
【0003】
また、近年、設定された車間距離を保って自車両を先行車両に追従走行させる追従走行制御機能を有する走行制御装置が実用化されている。下記の特許文献1には、追従走行制御において、目標減速度が所定減速度以上となったときに、制動灯を点灯させて後方への警報を行う技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−030791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、後続車両の追突防止の観点からは、制動手段作動時にできるだけ早く、例えば、制動手段の作動開始と同時に、制動灯も点灯を開始することが望ましい。
しかし、制動手段の作動開始と同時に制動灯の点灯を開始すると、制動手段が僅かな時間作動した後に制動灯が解除され、また制動手段が作動して解除されるという繰り返しが起きると、制動灯が頻繁に点滅することとなる。制動灯の頻繁な点滅は、後続車両の運転者にとって目障りとなるだけでなく、バッテリーの消耗を促進してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、後続車両に対して制動灯による警告を適切に行うことができる車両の制御灯制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の車両の制動灯制御装置は、自車両前方の物標を検知する物標検知手段と、上記物標検知手段が物標を検知した場合において、所定の条件下で、自車両の制動手段を作動させる走行制御手段と、上記走行制御手段による上記制動手段の作動に伴って、制動灯を点灯させる点灯制御手段と、自車両の後続車両を検知する後続車両検知手段と、を備え、上記点灯制御手段は、上記後続車両検知手段が後続車両を検知した場合に、上記制動手段の作動開始から上記制動灯の点灯開始までの点灯開始時間差を、後続車両が非検知の場合の点灯開始時間差から変更することを特徴としている。
【0008】
このように、本発明によれば、後続車両の有無に応じて、制動手段の作動開始から制動灯の点灯開始までの点灯開始時間差を変更することにより、後続車両に対して制動灯による警告を適切に行うことができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、上記点灯制御手段は、上記後続車両検知手段が後続車両を検知した場合の上記点灯開始時間差を、後続車両が検知されない場合の点灯開始時間差よりも短縮する。
【0010】
これにより、後続車両がなく、追突のおそれがない場合には、点灯時間差を長くなる。その結果、制動灯の頻繁な点滅の発生が回避され、また、バッテリーの消耗が防止される。
【0011】
また、本発明において好ましくは、上記後続車両検知手段は、自車両から後続車両までの車間距離を検出し、上記点灯制御手段は、自車両から後続車両までの車間距離が短いほど、上記点灯開始時間差を連続的に又は段階的に短縮する。
【0012】
一般に、自車両から後続車両までの車間距離が短いほど、追突の危険性が高くなる傾向がある。そこで、かかる車間距離が短いほど、点灯開始時間差を連続的に又は段階的に短縮することにより、後続車両に対して制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、上記走行制御手段は、当該走行制御手段による上記制動手段の作動継続時間を予測して予測作動継続時間を求め、上記点灯制御手段は、上記予測作動継続時間が、上記点灯開始時間差よりも短い場合に、上記制動灯を非点灯とする。
【0014】
これにより、制動灯の頻繁な点滅の発生が回避され、また、バッテリーの消耗が防止される。
【0015】
また、本発明において好ましくは、上記点灯制御手段は、上記制動手段の作動終了時に後続車両が非検知の場合に、上記制動手段の作動終了から上記制動灯の点灯終了までの消灯時間差を、上記制動手段の作動終了時に後続車両が検知された場合の消灯時間差よりも短縮する。
【0016】
これにより、後続車が検知されない場合に、制動灯の点灯時間が短縮される。その結果、バッテリーの消耗の防止が図られる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、上記後続車両検知手段は、自車両に対する後続車両の相対速度を検出し、上記点灯制御手段は、上記後続車両が自車両に接近中である場合の上記点灯開始時間差を、上記後続車両が自車両に非接近中である場合の上記点灯開始時間差よりも短縮する。
【0018】
後続車両が自車両に接近中の場合、後続車両の車速は、自車両の車速よりも速い。この場合、自車両の制動手段が作動した場合、追突の危険性がより高いと考えられる。そこで、本発明のように、後続車両が自車両よりも速い場合に、遅い場合よりも、制動灯を早く点灯させれば、後続車両に対する制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、上記後続車両検知手段は、自車両から後続車両までの車間距離、及び自車両に対する後続車両の相対速度を検出し、上記車間距離及び相対速度と上記点灯開始時間差とを対応づけたマップデータを記憶した記憶部を有し、上記点灯制御手段は、上記後続車両検知手段が後続車両を検知した場合の点灯時間差を、上記マップデータにおける車間距離及び相対速度に対応する点灯開始時間差にする。
【0020】
これにより、自車両と後続車両との車間距離及び相対速度に基づいて、後続車両に対する制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【0021】
また、本発明において好ましくは、上記物標検知手段は、上記物標として、先行車両を検知し、上記走行制御手段は、自車両を上記先行車両に追従走行させ、上記所定条件として、自車両と上記先行車両との車間距離が所定距離以下となった場合に、上記制動手段を作動させる。
【0022】
これにより、追従走行制御中に、減速又は停止のために制動手段が作動した場合に、後続車両に対する制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【0023】
また、本発明において好ましくは、上記物標検知手段は、上記物標として、自車両前方の障害物を検知し、上記走行制御手段は、上記所定条件として、自車両と上記障害物との衝突を予知した場合に、上記制動手段を作動させる。
【0024】
これにより、自車両と前方障害物との衝突が予知されて制動手段が作動した場合に、後続車両に対する制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明の車両の制動灯制御装置によれば、後続車両に対して制動灯による警告を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両の制動灯制御装置の第1実施形態を説明する。
まず、図1のブロック図を参照して、実施形態の車両の制動灯制御装置の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態の車両の制動灯制御装置は、自車両前方の物標を検知する物標検知手段1と、上記物標検知手段が物標を検知した場合において、所定の条件下で、自車両の制動手段5を作動させる走行制御手段2と、上記走行制御手段による上記制動手段の作動に伴って、制動灯6を点灯させる点灯制御手段3と、自車両の後続車両を検知する後続車両検知手段4とを備えている。
【0027】
本実施形態では、物標検知手段1は、自車両の前方の障害物を検知するとともに、自車両の前方を走行する先行車両も検知可能である。物標検知手段1は、例えば、ミリ波レーダー装置で構成するとよい。ミリ波レーダー装置は、自車両の前方へ向けて電波を発し、反射波の強度が所定の閾値以上の場合に障害物や先行車両を検知する。また、送信波と受信波との時間差から、自車両から物標までの距離が求められる。さらに、送信波に対する受信波の波長シフトから、自車両と物標との相対速度が求められる。
なお、物標検知手段1は、ミリ波レーダ装置に限定されず、例えば、ステレオカメラ装置等の任意好適な装置を利用することができる。なお、障害物は、停止していてもよいし、移動していてもよい。
【0028】
また、走行制御手段2は、追従走行制御を行うとともに、前方の障害物との衝突を予知した場合の衝突防止制御も行う。走行制御手段2は、追従走行制御として、自車両と先行車両との車間距離が所定距離以下となった場合に、制動手段(例えば、ブレーキアクチュエータ)5を作動させる、すなわち、運転者の操作によらずに自動ブレーキを作動させる。所定の車間距離は、例えば、自車両の車速に応じて任意好適な値を設定するのがよい。
【0029】
また、走行制御手段2は、前方の障害物との衝突防止のため、自車両と障害物との衝突を予知した場合にも、制動手段5を作動させる。衝突の予知は、従来公知の任意好適な方法により判断することができる。例えば、自車両から障害物までの距離と、自車両と障害物との相対速度差から求められた、自車両が障害物と衝突するまでの時間が所定の基準時間以内であることを条件として衝突すると判断してもよい。
【0030】
また、点灯制御手段3は、後続車両検知手段4が後続車両を検知した場合に、制動手段5の作動開始から制動灯6の点灯開始までの点灯開始時間差を、後続車両が非検知の場合の点灯開始時間差から変更する。点灯開始時間差の制御の詳細な内容については、後述の車両の制動等制御装置の動作例において説明する。
【0031】
なお、走行制御手段2及び点灯制御手段3の処理機能は、例えば、自車両に搭載されたECU(electric control unit:電子制御装置)等のコンピュータにおいて、所定のプログラムを実行することにより、或いは、ICチップ等により実現される。
【0032】
また、後続車両検知手段4は、自車両後方の後続車両を検知する。後続車両検知手段7も、物標検知手段1と同様に、例えば、ミリ波レーダー装置で構成するとよい。ミリ波レーダー装置は、自車両の後方へ向けて電波を発し、反射波の強度が所定の閾値以上の場合に後続車両を検知する。また、送信波と受信波との時間差から、自車両から後続車両までの距離が求められる。さらに、送信波に対する受信波の波長シフトから、自車両と後続車両との相対速度が求められる。かかる相対速度に基づいて、後続車両が自車両に接近中であるか否か、すなわち、後続車両の車速が自車両の車速よりも速いか否かが分かる。
なお、後続車両検知手段7も、ミリ波レーダ装置に限定されず、例えば、ステレオカメラ装置等の任意好適な装置を利用することができる。
【0033】
次に、図2のフローチャートを参照して、本実施形態の車両の制動灯制御装置の動作例について説明する。
ここでは、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)下での制動灯制御について説明する。ACC中、即ち、クルーズ走行中(S1において「Yes」)、走行制御手段2は、所定の条件下で、自車両の制動手段5を作動させる(S2で「Yes」)。具体的には、走行制御手段2は、追従走行制御中に、自車両と先行車両との車間距離が所定距離以下となった場合に、制動手段5を作動させる。また、走行制御手段2は、物標検知手段1が検知した障害物と自車両との衝突を予知した場合にも、制動装置5を作動させる。
【0034】
そして、点灯制御手段3は、後続車両検知手段4が後続車両を検知した場合に、制動手段5の作動開始から制動灯6の点灯開始までの点灯開始時間差を、後続車両が非検知の場合の点灯開始時間差から変更する。
【0035】
本実施形態では、点灯制御手段3は、後続車両検知手段4が後続車両を検知した場合(S3で「Yes」の場合)の点灯開始時間差を、後続車両が検知されない場合(S3で「No」の場合)の点灯開始時間差よりも短縮する。すなわち、後続車両がない場合には、点灯開始時間差を、基本時間差(ΔT)とし(S5)、一方、後続車両がある場合には、点灯開始時間差を基本時間差(ΔT)よりも時間(α)だけ短い(ΔT−α)に短縮する(S4)。
【0036】
ここで、図3のタイミングチャートを参照して、後続車両の有無と点灯開始時間差との関係について説明する。
図3の上段のタイミングチャートの太線Iは、制動手段5の作動開始タイミングを示し、中段のタイミングチャートの太線IIは、後続車両がない場合の点灯開始時間差(ΔT)を示し、下段のタイミングチャートの太線IIIは、後続車両がある場合の点灯開始時間差(ΔT−α)を示す。
【0037】
図3に示す例では、制動手段5は、時刻(T0)に、作動開始する。そして、後続車両がない場合には、制動手段5の作動開始時刻(T0)から、基本時間差の点灯開始時間差(ΔT)経過後の時刻(T2)に、制動灯6が点灯する。この基本時間差(ΔT)は、例えば、300ミリ秒である。
【0038】
これに対して、後続車両がある場合には、制動手段5の作動開始時刻(T0)から、短縮した点灯開始時間差(ΔT−α)経過後の時刻(T1)に、制動灯6が点灯する。短縮時間(α)を、例えば、100ミリ秒とすれば、点灯開始時間差(ΔT−α)は、200ミリ秒となる。
【0039】
次に、走行制御手段2は、当該走行制御手段2による制動手段5の作動継続時間を予測して予測作動継続時間を求める。そして、点灯制御手段3は、予測作動継続時間が、点灯開始時間差よりも短い場合(S6で「Yes」の場合)に、制動灯6を非点灯とする(S7)。一方、点灯制御手段3は、予測作動継続時間が、点灯開始時間差以上の場合(S6で「No」の場合)に、制動灯6を点灯する(S8)。
【0040】
予測作動継続時間は、前方車両と自車両の所定の車間距離を確保するために自車両を所定の目標速度まで減速させる場合には、例えば、現在の自車両の車速、その車速と目標速度との速度差、及び制動手段5の性能に基づいて予測するとよい。また、予測には、車速及び速度差を含む種々のパラメータと予測制動継続時間とを対応づけたデータマップを経験的に予め作成しておき、かかるデータマップを参照して予測制動継続時間を求めるようにしてもよい。
【0041】
また、予測作動継続時間は、前方障害物と自車両との衝突を回避するために自車両を急停車させる場合には、現在の自車両の車速、前方障害物までの距離、及び制動手段5の性能に基づいて予測するとよい。かかる場合にも、車速及び前方障害物まで距離を含む種々のパラメータと予測制動継続時間とを対応づけたデータマップを経験的に予め作成しておき、そのデータマップを参照して予測制動継続時間を求めるようにしてもよい。
【0042】
ここで、図4のタイミングチャートを参照して、制動手段の予測作動継続時間と、制動灯の点灯の有無との関係を説明する。
図4(A)の上段のタイミングチャートの太線Iは、予測作動継続時間が点灯開始時間差よりも長い場合の、制動手段5の作動タイミングを示し、下段のタイミングチャートの太線IIは、制動灯6の点灯タイミングを示す。また、図4(B)の上段のタイミングチャートの太線IIIは、予測作動継続時間が点灯開始時間差よりも短い場合の、制動手段5の作動タイミングを示し、下段のタイミングチャートの太線IVは、制動灯6の点灯タイミングを示す。
【0043】
図4(A)に示す例では、制動手段5は時刻(T0)に作動を開始し、予測作動継続時間(ΔL)は、点灯開始時間差(ΔT)よりも長い。この場合、制動灯6は、制動手段5の作動開始時刻(T0)から点灯開始時間差(ΔT)経過後の時刻(T2)に、点灯を開始する。
【0044】
図4(B)に示す例では、制動手段5は時刻(T0)に作動を開始するが、予測作動継続時間(ΔL)は、点灯開始時間差(ΔT)よりも短い。この場合、制動手段5の作動は、制動手段5の作動開始時刻(T0)から点灯開始時間差(ΔT)経過前の時刻(T1)に終了する。その結果、制動灯6は、制動手段5の作動開始時刻(T0)から点灯開始時間差(ΔT)経過後の時刻(T2)になっても、点灯しない。
なお、時刻(T2)に制動灯を点灯させた場合を仮想線Vで便宜的に示す。
【0045】
続いて、制動灯6を点灯後、点灯制御手段3は、制動手段5の作動終了時に後続車両が非検知の場合(S9で「No」の場合)に、制動手段5の作動終了から制動灯6の点灯終了までの消灯時間差(ΔA−a)を、制動手段5の作動終了時に後続車両が検知された場合の消灯時間差(ΔA)(S10)よりも短縮する(S11)。
【0046】
ここで、図5のタイミングチャートを参照して、後続車両の有無と消灯時間差との関係について説明する。
図5の上段のタイミングチャートの太線Iは、制動手段5の作動開始タイミングを示し、中段のタイミングチャートの太線IIは、後続車両がない場合の消灯時間差(ΔA)を示し、下段のタイミングチャートの太線IIIは、後続車両がある場合の消灯時間差(ΔA−a)を示す。
【0047】
図5に示す例では、太線Iで示すように、制動手段5は、時刻(T0)に作動を開始し、時刻(T2)に作動を終了する。そして、太線IIで示すように、制動灯6は、制動手段5の作動開始時刻(T0)から点灯時間差(ΔT)経過後の時刻(T1)に点灯を開始する。さらに、制動灯6は、制動手段5の作動終了時(T2)に後続車両がない場合には、制動手段5の作動終了時刻(T2)から、基本時間差の消灯時間差(ΔA)経過後の時刻(T4)に消灯する。この基本時間差(ΔA)は、例えば、200ミリ秒である。
【0048】
これに対して、太線IIIで示すように、制動灯6は、制動手段5の作動終了時(T2)に後続車両がある場合には、制動手段5の作動終了時刻(T2)から短縮点灯開始時間差(ΔA−a)経過後の時刻(T3)に消灯する。短縮時間(a)を、例えば、100ミリ秒とすれば、短縮した消灯時間差(ΔA−a)は、100ミリ秒となる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の車両の制動灯制御装置の構成は、図1に示した第1実施形態のものと同じであるので、その説明を省略する。
【0050】
次に、図6のフローチャートを参照して、第2実施形態の車両の制動灯制御装置の動作例について説明する。図2のフローチャートのステップS1〜S3の動作は、図2のに示した第1実施形態のステップS1〜S3の動作と同じであるので、その説明を省略する。
【0051】
第2実施形態では、後続車両がある場合、後続車両検知手段4は、自車両から後続車両までの車間距離を検出する。そして、点灯制御手段えは、自車両から後続車両までの車間距離が短いほど、点灯開始時間差を連続的に又は段階的に短縮する。
【0052】
本実施形態では、図7のグラフを参照して、自車両から後続車両までの車間距離に応じて、点灯開始時間差が段階的に短くなる例について説明する。
図7のグラフの横軸は、自車両から後続車両までの車間距離を示し、縦軸は、点灯開始時間差を示す。
【0053】
まず、自車両から後続車両までの車間距離が所定の第1車間距離(D1)以下の場合(S4で「Yes」の場合)、点灯制御手段3は、点灯開始時間差を、所定の基本時間差(ΔT)よりもαだけ短い(ΔT−α)に設定する(S5)。
【0054】
ここで、第1車間距離(D1)は、例えば、3mである。また、基本時間差(ΔT)を300ミリ秒、短縮時間(α)を200ミリ秒とすれば、設定された点灯開始時間差(ΔT−α)は、100ミリ秒となる。かかる場合、制動手段5の作動開始から(ΔT−α)=100ミリ秒後に、制動灯6が点灯する。
【0055】
また、自車両から後続車両までの車間距離が、第1車間距離(D1)を超え(S4で「No」)、かつ、所定の第2車間距離(D2)以下の場合(S6で「Yes」の場合)、点灯制御手段3は、点灯開始時間差を、所定の基本時間差(ΔT)よりもβだけ短い(ΔT−β)に設定する(S7)。
【0056】
ここで、第2車間距離(D2)は、例えば、5mである。また、基本時間差(ΔT)を300ミリ秒、短縮時間(β)を150ミリ秒とすれば、設定された点灯開始時間差(ΔT−β)は、150ミリ秒となる。かかる場合、制動手段5の作動開始から(ΔT−β)=150ミリ秒後に、制動灯6が点灯する。
【0057】
また、自車両から後続車両までの車間距離が、第1車間距離(D1)を超え(S4で「No」)、第2車間距離(D2)を超え(S6で「No」)、かつ、所定の第3車間距離(D3)以下の場合(S8で「Yes」の場合)、点灯制御手段3は、点灯開始時間差を、所定の基本時間差(ΔT)よりもθだけ短い(ΔT−θ)に設定する(S9)。
【0058】
ここで、所定の第3車間距離(D3)は、例えば、7mである。また、基本時間差(ΔT)を300ミリ秒、短縮時間(θ)を100ミリ秒とすれば、設定された点灯開始時間差(ΔT−θ)は、200ミリ秒となる。かかる場合、制動手段5の作動開始から(ΔT−θ)=200ミリ秒後に、制動灯6が点灯する。
【0059】
また、自車両から後続車両までの車間距離が、第1車間距離(D1)を超え(S4で「No」)、第2車間距離(D2)を超え(S6で「No」)、かつ、第3車間距離(D3)も超えている場合(S8で「No」の場合)、点灯制御手段3は、点灯開始時間差を、所定の基本時間差(ΔT)に設定する(S9)。基本時間差(ΔT)を300ミリ秒とすれば、制動手段5の作動開始から(ΔT)=300ミリ秒後に、制動灯6が点灯する。
【0060】
なお、図8のグラフの実線IIに示すように、点灯開始時間差は、自車両から後続車両までの車間距離に応じて連続的に短くなるように設定してもよい。図8のグラフの横軸は、自車両から後続車両までの車間距離を示し、縦軸は、点灯開始時間差を示す。
また、図8のグラフでは、実線IIを直線で示しているが、かかる実線IIは、曲線であってもよい。
【0061】
このように、自車両と後続車両との車間距離が短いほど、点灯開始時間差を連続的に又は段階的に短縮することにより、後続車両に対して制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【0062】
図6のフローチャートのステップS11〜S17は、図2に示した第1実施形態におけるステップS6〜S12にそれぞれ対応する。このため、これらのステップの詳細な説明を省略する。
【0063】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の車両の制動灯制御装置の構成は、図1に示した第1実施形態のものと同じであるので、その説明を省略する。
【0064】
次に、図9のフローチャートを参照して、第3実施形態の車両の制動灯制御装置の動作例について説明する。図9のフローチャートのステップS1〜S3の動作は、図2に示した第1実施形態のステップS1〜S3の動作と同じであるので、その説明を省略する。
【0065】
第3実施形態では、後続車両がある場合、後続車両検知手段4は、自車両に対する後続車両の相対速度を検出する。そして、点灯制御手段3は、後続車両が自車両に接近中である場合(S4で「Yes」の場合)、点灯開始時間差(ΔT−α)(S5)を、後続車両が自車両に非接近中である場合(S4で「No」)の点灯開始時間差(ΔT)(S6)よりも短縮する。
【0066】
ここで、後続車両が非接近中である場合の点灯開始時間差(ΔT)は、例えば、300ミリ秒である。また、後続車両が接近中である場合の点灯開始時間差(ΔT−α)は、例えば、200ミリ秒である。
なお、後続車両が自車両に接近中とは、後続車両の車速が、自車両の車速よりも速い場合をいう。また、後続車両が自車両に非接近中とは、後続車両の車速が、自車両の車速以下である場合をいう。
【0067】
このように、後続車両が自車両よりも速い場合に、遅い場合よりも、制動灯を早く点灯させれば、後続車両に対する制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【0068】
図9のフローチャートのステップS7〜S13は、図2に示した第1実施形態におけるステップS6〜S12にそれぞれ対応する。このため、これらのステップの詳細な説明を省略する。
【0069】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
第4実施形態の車両の制動灯制御装置の構成は、図1に示した第1実施形態のものと同じであるので、その説明を省略する。
【0070】
次に、図10のフローチャートを参照して、第4実施形態の車両の制動灯制御装置の動作例について説明する。図10のフローチャートのステップS1〜S3の動作は、図2に示した第1実施形態のステップS1〜S3の動作と同じであるので、その説明を省略する。
【0071】
第4実施形態では、点灯制御手段3は、自車両から後続車両までの車間距離及び自車両に対する後続車両の相対速度と、点灯開始時間差とを対応づけたマップデータを記憶した記憶部(図示せず)を有する。
なお、本実施形態では、記憶部を点灯制御手段3の内部に設けているが、記憶部を点灯制御手段3の外部に設けてもよい。
【0072】
ここで、図11にマップデータの一例を模式的に示す。図11のマップデータの横軸は、自車両と後続車両との車間距離を示し、縦軸は、自車両と後続車両との相対速度を示す。図11のマップデータに示すように、車間距離が長く、かつ、後続車両が自車両よりも遅いほど、点灯開始時間差が長く、一方、車間距離が短く、かつ、後続車両が自車両よりも速いほど、点灯時間差が短くなっている。
【0073】
このように、自車両と後続車両との車間距離及び相対速度に基づいて、後続車両に対する制動灯による警告をより適切に行うことができる。
【0074】
図10のフローチャートのステップS7〜S13は、図2に示した第1実施形態におけるステップS6〜S12にそれぞれ対応する。このため、これらのステップの詳細な説明を省略する。
【0075】
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態の車両の制動灯制御装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態の車両の制動灯制御装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態における、制動手段の作動タイミングと、後続車両の有無による制動灯の点灯タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態における、制動手段の予測作動継続時間と、制動灯の点灯の有無との関係を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態における、制動手段の作動開始及び終了タイミングと、制動灯の点灯開始及び終了タイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態の車両の制動灯制御装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態における、自車両と後続車両との車間距離と点灯開始時間差との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態における、自車両と後続車両との車間距離と点灯開始時間差との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第3実施形態における、車両の制動灯制御装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の第4実施形態における、車両の制動灯制御装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第4実施形態における、自車両と後続車両との車間距離及び相対距離と、点灯開始時間差との関係を示すマップである。
【符号の説明】
【0077】
1 物標検知手段
2 走行制御手段
3 点灯制御手段
4 後続車両検知手段
5 制動手段
6 制動灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の物標を検知する物標検知手段と、
上記物標検知手段が物標を検知した場合において、所定の条件下で、自車両の制動手段を作動させる走行制御手段と、
上記走行制御手段による上記制動手段の作動に伴って、制動灯を点灯させる点灯制御手段と、
自車両の後続車両を検知する後続車両検知手段と、を備え、
上記点灯制御手段は、上記後続車両検知手段が後続車両を検知した場合に、上記制動手段の作動開始から上記制動灯の点灯開始までの点灯開始時間差を、後続車両が非検知の場合の点灯開始時間差から変更する、
ことを特徴とする車両の制動灯制御装置。
【請求項2】
上記点灯制御手段は、上記後続車両検知手段が後続車両を検知した場合の上記点灯開始時間差を、後続車両が検知されない場合の点灯開始時間差よりも短縮する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の制動灯制御装置。
【請求項3】
上記後続車両検知手段は、自車両から後続車両までの車間距離を検出し、
上記点灯制御手段は、自車両から後続車両までの車間距離が短いほど、上記点灯開始時間差を連続的に又は段階的に短縮する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の制動灯制御装置。
【請求項4】
上記走行制御手段は、当該走行制御手段による上記制動手段の作動継続時間を予測して予測作動継続時間を求め、
上記点灯制御手段は、上記予測作動継続時間が、上記点灯開始時間差よりも短い場合に、上記制動灯を非点灯とする、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両の制動灯制御装置。
【請求項5】
上記点灯制御手段は、上記制動手段の作動終了時に後続車両が非検知の場合に、上記制動手段の作動終了から上記制動灯の点灯終了までの消灯時間差を、上記制動手段の作動終了時に後続車両が検知された場合の消灯時間差よりも短縮する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載に車両の制動灯制御装置。
【請求項6】
上記後続車両検知手段は、自車両に対する後続車両の相対速度を検出し、
上記点灯制御手段は、上記後続車両が自車両に接近中である場合の上記点灯開始時間差を、上記後続車両が自車両に非接近中である場合の上記点灯開始時間差よりも短縮する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両の制動灯制御装置。
【請求項7】
上記後続車両検知手段は、自車両から後続車両までの車間距離、及び自車両に対する後続車両の相対速度を検出し、
上記車間距離及び相対速度と上記点灯開始時間差とを対応づけたマップデータを記憶した記憶部を有し、
上記点灯制御手段は、上記後続車両検知手段が後続車両を検知した場合の点灯時間差を、上記マップデータにおける車間距離及び相対速度に対応する点灯開始時間差にする、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の車両の制動灯制御装置。
【請求項8】
上記物標検知手段は、上記物標として、先行車両を検知し、
上記走行制御手段は、自車両を上記先行車両に追従走行させ、上記所定条件として、自車両と上記先行車両との車間距離が所定距離以下となった場合に、上記制動手段を作動させる、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の車両の制動灯制御装置。
【請求項9】
上記物標検知手段は、上記物標として、自車両前方の障害物を検知し、
上記走行制御手段は、上記所定条件として、自車両と上記障害物との衝突を予知した場合に、上記制動手段を作動させる、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の車両の制動灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−30370(P2010−30370A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192706(P2008−192706)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】