説明

車両の吸気構造

【課題】 エアクリーナ内によりきれいな空気を取入れつつ吸気ダクトを短くすることにある。
【解決手段】 車体フレーム11でエンジン22及びエアクリーナ35等の車体装備品を支持し、車体フレーム11に左右一対のシート51,52(手前側の符号51のみ示す。)を取付けることでキャビン65を設け、これらのシート51の下方にエンジン22を配置するとともに、エアクリーナ35をエンジン22の後方に配置し、このエアクリーナ35に外気を吸気する吸気ダクト36を備えた車両10において、吸気ダクト36を、エアクリーナ35からエンジン22に備えるシリンダ部22cを避けるように前方へ延ばし、前端部36aを左右一対のシート51,52の間のキャビン65側に開口させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の吸気構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の吸気構造として、運転座席の後方に設けたパイプ状のフレームを吸気ダクトとしてエアークリーナに接続したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公平7−7267号公報
【0003】
特許文献1の第3図には、運転座席6の後方に縦に延びる中空フレーム10を設け、この中空フレーム10の上部に空気取入口を形成し、中空フレーム10の下端を接続管28を介してエアークリーナ25に接続し、エアークリーナ25をエンジン8側に接続したことが記載されている。また、特許文献1の第6図には、2つの空気取入口32a,32aが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸気ダクトとしての中空フレーム10は高い位置まで延びるため、走行時に巻き上げられたダストを吸い込みにくくなるが、空気取入口32aからエアークリーナ25までの距離が長くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、エアクリーナ内によりきれいな空気を取入れつつ、吸気ダクトを短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームでエンジン及びエアクリーナ等の車体装備品を支持し、車体フレームに左右一対のシートを取付けることでキャビンスペースを設け、これらのシートの下方にエンジンを配置するとともに、エアクリーナをエンジンの後方に配置し、このエアクリーナに外気を吸気する吸気ダクトを備えた車両において、吸気ダクトを、エアクリーナからエンジンに備えるシリンダ部を避けるように延ばし、先端部を左右一対のシートの間のキャビンスペースに開口させたことを特徴とする。
【0007】
吸気ダクトの作用として、吸気ダクトの先端部をキャビンスペースに開口させることで、キャビンスペース内の空気が吸気ダクトの先端部から吸入されてエアクリーナ内に流れる。キャビンスペース内の空気はダストをほとんど含まずきれいであるから、エアクリーナのフィルタが目詰まりしにくい。また、吸気ダクトが、エンジン後方に配置したエアクリーナからキャビンスペースまで延びるから、従来のような縦に延びるフレームを利用した吸気ダクトよりも本発明の吸気ダクトの長さが短くなる。
【0008】
請求項2に係る発明は、吸気ダクトの先端部の端面及び先端部の下面を開口としたことを特徴とする。
吸気ダクトの開口の作用として、空気は先端部の端面の開口と先端部の下面の開口とからダクト内に吸入されるから、開口面積が大きくなり、吸気抵抗が小さくなる。例えば、先端部の端面の開口のみから空気を吸入した場合は、本発明に比べて、吸気抵抗が大きくなる。
【0009】
請求項3に係る発明は、吸気ダクトの前部を止水構造としたことを特徴とする。
吸気ダクトの止水構造の作用として、例えば、車両が水に漬かったときに、止水構造によって、吸気ダクトの前部で水が止まり、エアクリーナ側に水が浸入しにくくなる。
【0010】
請求項4に係る発明は、キャビンスペースにルーバーを設けたことを特徴とする。
ルーバーの作用として、キャビンスペースに開口させた吸気ダクトの先端部にルーバーを対向させて設けた場合、空気がキャビンスペースからルーバーを介して吸気ダクト内に流れやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、吸気ダクトを、エアクリーナからエンジンに備えるシリンダ部を避けるように延ばし、先端部を左右一対のシートの間のキャビンスペースに開口させたので、キャビンスペース内のきれいな空気をエアクリーナ内に吸入することができる。
【0012】
また、シート下方のエンジンの後方に配置したエアクリーナからキャビンスペースまで吸気ダクトを延ばすことで、従来に比べて吸気ダクトを短くすることができ、吸気抵抗を減らすことができて、エンジン性能を向上させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、吸気ダクトの先端部の端面及び先端部の下面を開口としたので、吸気ダクトの先端部の端面のみ開口させるのに比べて、吸気抵抗をより一層小さくすることができ、エンジン出力を一層向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、吸気ダクトの前部を止水構造としたので、車両が水に漬かった場合でも吸気ダクト内、エアクリーナ内に水が入りにくくすることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、キャビンスペースにルーバーを設けたので、ルーバーを介して吸気ダクトの先端部から空気を吸い込みやすくなり、吸気効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る吸気構造を採用した車両の側面図であり、車両10は、車体フレーム11(フロントフレーム12、センタフレーム13及びリヤフレーム14からなる。)と、左右の前輪18,18と、センタフレーム13に取付けたパワーユニット21(エンジン22及び変速機23からなる。)と、エンジン22へ空気及び燃料を供給するためにエンジン22の上部後部に接続した吸気装置26と、エンジン22の上部前部から後方へ延ばした排気装置27と、リヤフレーム14の上部に傾斜可能に取付けた荷台28と、左右の後輪31,31とを備える二人乗りの四輪駆動車である。
【0017】
吸気装置26は、エンジン22のシリンダヘッド22aの後部に接続したスロットルボディ(不図示)と、このスロットルボディに接続したエアクリーナ35と、このエアクリーナ35から前方に延ばした吸気ダクト36とを備える。
排気装置27は、シリンダヘッド22aの前部に接続するとともに後方に延ばした排気管37と、この排気管37の後端に接続したマフラ38とからなる。
【0018】
ここで、41はフロントカバー、42はラジエータ、43はハンドル、44はステアリングシャフト、46は前輪支持用アッパアーム、47は前輪支持用ロアアーム、51,52(手前側の符号51のみ示す。)はセンタフレーム13に取付けた左右のシート、53はエンジン22のクランクケース22bに取付けたエンジンオイル供給管、54はエンジンオイル供給管53の先端に取付けたキャップ、56はクランクケース22bの側部に設けたオイルレベルゲージ、57,57(手前側の符号57のみ示す。)はリヤフェンダ、58,58(手前側の符号58のみ示す。)はセンタフレーム13に立てた左右のロールバー、61,61(手前側の符号61のみ示す。)はフロントフレーム12とロールバー58,58とに渡したアッパフレーム、62は後輪支持用アッパアーム、63は後輪支持用ロアアーム、64,64(手前側の符号64のみ示す。)はリヤクッションユニット、65はアッパフレーム61より後方でロールバー58よりも前方の乗員の空間としてのキャビンである。
【0019】
図2は本発明に係る車両の平面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。)であり、車体フレーム11のセンタフレーム13及びリヤフレーム14に左右一対のメインフレーム71,71を設け、これらのメインフレーム71,71にシートフレーム部材72を取付け、このシートフレーム部材72に左右のシート51,52を取付け、左右のメインフレーム71,71間にパワーユニット21及び吸気装置26を配置し、左側のメインフレーム71の外側方にエンジン22のシリンダヘッド22a前部から延ばした排気管37の一部及びマフラ38を配置したことを示す。なお、75はバンパフレーム、76〜79は荷台28の枠部材である。
【0020】
吸気装置26を構成するスロットルボディ33は、エンジン22のシリンダヘッド22aの後部に接続したものであり、このスロットルボディ33の後端にコネクティングチューブ82を介してエアクリーナ35を取付ける。エアクリーナ35は左右のメインフレーム71,71間のほぼ中央に位置する。
【0021】
吸気ダクト36は、エアクリーナ35の前部で且つコネクティングチューブ82の右側から右側のメインフレーム71に近づくように屈曲して車体前方に延び、メインフレーム71に沿って前方に延び、更に、メインフレーム71から離れるように屈曲した後に前方に延びる。吸気ダクト36の前端部36aは、吸気口となる開口を備え、運転者用のシート51よりも同乗者用のシート52に寄った位置に有る。
【0022】
排気装置27の排気管37は、シリンダヘッド22aの前部から一旦車体前方に延び、そして車体左方に延び、更に、メインフレーム71と交差した後に、メインフレーム71に沿って後方に延びてマフラ38に接続する。マフラ38もメインフレーム71に沿って後方に延びる。マフラ38の後端に設けたテールパイプ83は、マフラ38から後方斜め左方に延び、後端は後方に向く。
【0023】
エンジンオイル供給管53は、パワーユニット21の後部左隅部のクランクケース22bからほぼ車体前方に延び、次第に緩やかに左方へ屈曲してメインフレーム71を横切り、先端部53a及びキャップ54がメインフレーム71の外側方に位置するものである。
【0024】
シートフレーム部材72は、シート51,52を支持するためにメインフレーム71,71側に取付けたシート枠部材86,86と、これらのシート枠部材86,86を連結する連結フレーム87と、各シート枠部材86,86から側方に突出させた側部フレーム88とからなる。
【0025】
図3は本発明に係る車両の要部斜視図であり、パワーユニット21の上部の前方をフロント側パネル111で覆い、パワーユニット21の上部の両側方をサイド側パネル112,113で覆い、フロント側パネル111の下部に、乗員が足を載せるステップフロア114を連続させて設けたことを示す。なお、91,91はシートフレーム部材72(図2参照)を取付けるために左右のメインフレーム71,71(図2参照)のそれぞれの上部に取付けたアッパフレームである。
【0026】
フロント側パネル111は、上端に後方に延びる平板状の縁部111aを備え、前面に吸気ダクト36の先端部の開口に隣接する複数の通気穴111bを開けたものである。
即ち、吸気ダクト36は、先端部を複数の通気穴111bを介してキャビンス65に開口させたものである。
【0027】
サイド側パネル112,113は、それぞれ上端に車体内方に延びる平板状の縁部112a,113aを備え、これらの縁部112a,113aとフロント側パネル111の縁部111aとにパワーユニット21の上方を覆うインナカバー(不図示)を連続させて配置する。
【0028】
図4は本発明に係る車両の要部平面図であり、サイド側パネル112,113のそれぞれの外側方及び後方にサイドステップ115,116を設け、また、エアクリーナ35から車体前方へ吸気ダクト36をエンジン22の上方に突出するシリンダ部22cを避けるように延ばしたことを示す。
【0029】
シリンダ部22cは、クランクケース22bに取付けたシリンダブロック(不図示)と、このシリンダブロックの上部に取付けたシリンダヘッド22a(図3参照)と、シリンダヘッド22aの上部に取付けたヘッドカバー22dとを備える。
【0030】
図5(a),(b)は本発明に係る吸気ダクトの説明図である。
(a)は平面図であり、吸気ダクト36は、管部36Aと、吸気音を低減するために管部36Aの側面に設けたレゾネータ36Bとからなり、管部36Aの後部36cをエアクリーナ35(図2参照)に接続し、前部36dを止水構造とした部材である。
【0031】
(b)は側面図(一部断面図)であり、吸気ダクト36の前部36dは、止水構造として、下部に上方へ逆U字形状に突出する突出壁36fを備え、この突出壁36fの突出に伴って、上壁36gも上方へ湾曲させ、また、端面36hに加えて下面36jをも開口させ、開口部36m,36nを形成した部分である。
【0032】
以上に述べた吸気ダクト36の止水構造の作用を説明する。
図6(a),(b)は本発明に係る吸気ダクトの止水構造の作用を示す作用図である。
(a)において、吸気ダクト36は、前部36dに車両前方に開口する開口部36mと、下方に開口する開口部36nとを備えるから、空気は、矢印で示すように、開口部36m及び開口部36nから吸気ダクト36内に流入し、エアクリーナ側へ向かう。
従って、吸気口の開口面積が大きくなり、吸気抵抗が減少して、一度により多くの空気を吸入することができる。
【0033】
(b)において、吸気ダクト36は、前部36dに止水構造として上方へ突出する突出壁36fを備えるから、車両が浸水して吸気ダクト36の位置まで水120に浸かったとしても、突出壁36fで水120を堰き止めることができ、突出壁36fが無い場合に比べて水をエアクリーナ側に浸入しにくくすることができる。開口部36m,36nから水が入らないように開口部36m,36nに位置を高くする方法もあるが、本発明の止水構造は、吸気ダクト36の前部36dの上壁36gの近傍に障害物121がある場合に有効である。
【0034】
図7は本発明に係るフロント側パネルの別実施形態を示す要部斜視図であり、フロント側パネル111は、前面に吸気ダクト36の先端部の開口に隣接するルーバー111cを設けたものであり、このように、吸気ダクト36の先端部をルーバー111cを介してキャビン65(図2参照)に開口させることで、キャビン65内の空気をルーバー111cを介してスムーズに吸気ダクト36内に取り込むことができ、吸気抵抗を減らすことができて、吸気効率を高めることができる。
【0035】
以上の図1及び図3で示したように、本発明は第1に、車体フレーム11でエンジン22及びエアクリーナ35等の車体装備品を支持し、車体フレーム11に左右一対のシート51,52を取付けることでキャビン65を設け、これらのシート51,52の下方にエンジン22を配置するとともに、エアクリーナ35をエンジン22の後方に配置し、このエアクリーナ35に外気を吸気する吸気ダクト36を備えた車両10において、吸気ダクト36を、エアクリーナ35からエンジン22に備えるシリンダ部22cを避けるように延ばし、前端部36aを左右一対のシート51,52の間のキャビン65側に開口させたことを特徴とする。
【0036】
これにより、キャビン65内のきれいな空気をエアクリーナ35内に吸入することができる。
また、シート51,52下方のエンジン22の後方に配置したエアクリーナ35からキャビン65まで吸気ダクト36を延ばすことで、従来に比べて吸気ダクト36を短くすることができ、吸気抵抗を減らすことができて、エンジン性能を向上させることができる。
【0037】
本発明は第2に、図5(a),(b)に示したように、吸気ダクト36の先端部の端面36h及び先端部の下面36jを開口としたことを特徴とする。
これにより、吸気ダクト36の先端部の端面36hのみ開口させるのに比べて、吸気抵抗をより一層小さくすることができ、エンジン出力を一層向上させることができる。
【0038】
本発明は第3に、吸気ダクト36の前部36dを止水構造としたことを特徴とする。
吸気ダクト36の前部36dに止水構造として上方へ突出する突出壁36fを設けたので、車両が水に漬かった場合でも吸気ダクト36内、エアクリーナ35内に水が入りにくくすることができる。
【0039】
本発明は第4に、図1、図2及び図7に示したように、キャビン65に面するフロント側パネル111にルーバー111cを設けたことを特徴とする。
これにより、吸気ダクト36の前端部36aからルーバー111cを介して空気を吸い込みやすくなり、吸気効率を上げることができる。
【0040】
尚、本実施形態では、図5(b)に示したように、止水構造として、一つの突出壁36fを設けたが、これに限らず、複数の突出壁36fを設けてもよい。これにより、止水効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の吸気構造は、エンジンの後方にエアクリーナを配置した車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る吸気構造を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の平面図である。
【図3】本発明に係る車両の要部斜視図である。
【図4】本発明に係る車両の要部平面図である。
【図5】本発明に係る吸気ダクトの説明図である。
【図6】本発明に係る吸気ダクトの止水構造の作用を示す作用図である。
【図7】本発明に係るフロント側パネルの別実施形態を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10…車両、11…車体フレーム、22…エンジン、22c…シリンダ部、35…エアクリーナ、36…吸気ダクト、36a…吸気ダクトの先端部(前端部)、36d…吸気ダクトの前部、36h…吸気ダクトの端面、36j…吸気ダクトの下面、51,52…シート、65…キャビン、111c…ルーバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームでエンジン及びエアクリーナ等の車体装備品を支持し、車体フレームに左右一対のシートを取付けることでキャビンスペースを設け、これらのシートの下方に前記エンジンを配置するとともに、前記エアクリーナをエンジンの後方に配置し、このエアクリーナに外気を吸気する吸気ダクトを備えた車両において、
前記吸気ダクトは、前記エアクリーナから前記エンジンに備えるシリンダ部を避けるように前方に延び、先端部を前記左右一対のシートの間の前記キャビンスペースに開口させたことを特徴とする車両の吸気構造。
【請求項2】
前記吸気ダクトは、その先端部の端面及び先端部の下面を開口としたことを特徴とする請求項1記載の車両の吸気構造。
【請求項3】
前記吸気ダクトは、前部を止水構造としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の吸気構造。
【請求項4】
前記キャビンスペースにルーバーを設けたことを特徴とする請求項1記載の車両の吸気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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