説明

車両の小物物品保持装置

【課題】 任意の小物物品を車室内で移動不能かつ操作可能に保持する車両用小物物品保持装置を提供する。
【解決手段】 インストルメントパネル11の表面11aに設けた小物物品保持部19に開口する真空パッド22の内部を真空ポンプ24で真空引きするので、単に置くだけでは移動したり落下したりする小物物品18を真空パッド22に吸着して確実に保持することができる。しかも真空パッド22で吸着するので小物物品18の形状や寸法の制限が小さくなり、多種の小物物品18を保持可能になって汎用性が高められる。また小物物品保持部19は上向きである必要はなく、横向きあるいは下向きであっても小物物品18を保持できるので、フロントガラスを遮らない位置に装着することが可能であるだけでなく、車室内のスペースを有効に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小物物品を車室内で移動しないように保持するための小物物品保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小銭、紙幣、通行券、メモ用紙等の小物物品を入れるトレー状の収納部と、この収納部を引き出し可能に収納する収納部とよりなる小物入れを、吸盤でフロントガラスの下部内面に固定するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また携帯電話を着脱自在に保持するホルダを、吸盤でフロントガラスの内面や内装材の内面に固定するものが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3005046号公報
【特許文献2】特許第3033707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1に記載されたものは、小物入れの取付位置がフロントガラス面に限定されるために運転者の視界が遮られる可能性があるだけでなく、携帯電話や携帯オーディオ機器等を小物入れに収納した状態で操作できないという問題があった。
【0006】
また上記特許文献2に記載されたものは、ホルダの形状によって保持できる小物物品の種類が限られてしまい、汎用性に乏しいという問題があった。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、任意の小物物品を車室内に移動不能かつ操作可能に保持する車両用小物物品保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車室の内装材の表面に設けた小物物品保持部に真空パッドを開口させ、前記吸引パッドの内部を負圧源で真空引きすることで、前記小物物品保持部に小物物品を保持可能にしたことを特徴とする車両用小物物品保持装置が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記小物物品保持部は、前記内装材の表面から車室側に突出可能であることを特徴とする車両用小物物品保持装置が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記小物物品保持部が車室側に突出したときのオンするスイッチを備え、前記スイッチのオンにより前記負圧源が作動することを特徴とする車両用小物物品保持装置が提案される。
【0011】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記内装材はインストルメントパネルであることを特徴とする車両用小物物品保持装置が提案される。
【0012】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記負圧源は、パンク修理後のタイヤに空気を供給する電動ポンプに兼用されることを特徴とする車両用小物物品保持装置が提案される。
【0013】
尚、実施の形態のインストルメントパネル11は本発明の内装材に対応し、実施の形態の真空ポンプ24は本発明の負圧源に対応し、実施の形態のリミットスイッチ25は本発明のスイッチに対応する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、車室の内装材の表面に設けた小物物品保持部に開口する真空パッドの内部を負圧源で真空引きするので、単に置くだけでは移動したり落下したりする小物物品を真空パッドに吸着して確実に保持することができる。しかも真空パッドで吸着するので小物物品の形状や寸法の制限が小さくなり、多種の小物物品を保持可能になって汎用性が高められる。また小物物品保持部は上向きである必要はなく、横向きあるいは下向きであっても小物物品を保持できるので、フロントガラスを遮らない位置に装着することが可能であるだけでなく、車室内のスペースを有効に利用することができる。
【0015】
また請求項2の構成によれば、小物物品保持部は内装材の表面から車室側に突出可能なので、小物物品保持部を使用しないときは内装材の内部に収納して美観を保つとともに邪魔にならないようにし、小物物品保持部を使用するときは内装材の表面から突出させて小物物品の着脱や操作を容易に行うことができる。
【0016】
また請求項3の構成によれば、小物物品保持部が車室側に突出したときにスイッチがオンして負圧源が作動するので、特別のスイッチ操作を行わなくても自動的に負圧源を作動させることが可能になって利便性が向上する。
【0017】
また請求項4の構成によれば、小物物品保持部が設けられる内装材がインストルメントパネルであるので、運転者や同乗者が手の届きやすい位置に小物物品を保持することができる。
【0018】
また請求項5の構成によれば、真空パッドを真空引きする負圧源を、パンク修理後のタイヤに空気を供給する電動ポンプに兼用するので、特別の負圧源を設ける必要がなくなってコストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インストルメントパネルの正面図。
【図2】図1の2−2線拡大断面図(使用位置にある小物物品保持部を示す図)。
【図3】図2の3−3線矢視図。
【図4】前記図2に対応する図(収納位置にある小物物品保持部を示す図)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1に示すように、自動車の車室の前部に配置されたインストルメントパネル11の右側には、ステアリングホイール12の前方に位置するようにメータパネル13が配置され、中央部にはシフトレバー14およびオーディオ装置15の前方に位置するようにマルチインフォメーションディスプレイ16およびエアコン吹き出し口17が配置される。メータパネル13およびマルチインフォメーションディスプレイ16の間のインストルメントパネル11には、携帯電話等の小物物品18を保持可能な小物物品保持部19が設けられる。
【0022】
図2および図3から明らかなように、小物物品保持部19は、インストルメントパネル11に形成された凹部20に収納された直方体状の部材からなり、その表面19aがインストルメントパネル11の表面11aと面一になる収納位置(図4参照)と、その表面19aがインストルメントパネル11の表面11aから車室側に張り出す使用位置(図4参照)との間を移動し得るように、上下一対のプッシュオープン装置21,21を介して凹部20に支持される。
【0023】
プッシュオープン装置21,21は、自動車用の小物入れや灰皿の開閉機構に使用される周知の構造のものであり、収納位置にロックされた小物物品保持部19の表面19aを前方に押すと、ロックが外れてスプリングの弾発力で使用位置に突出し、使用位置にある小物物品保持部19の表面19aを前方に押すと、収納位置でロックが掛かるようになっており、ワンタッチの操作で収納位置および使用位置の間を移動させることができる。
【0024】
小物物品保持部19の内部には柔軟なゴム製の真空パッド22が収納されており、コーン状に拡開する真空パッド22の先端の吸着部22aは小物物品保持部19の表面19aから車室側に僅かに突出するように露出している。真空パッド22の基部22bは柔軟なホース23を介して車載の真空ポンプ24の吸入ポート24aに接続される。
【0025】
本実施の形態の真空ポンプ24は、パンク修理キットの電動ポンプを兼用したものである。即ち、スペアタイヤを装備していない自動車では、パンクしたタイヤを応急修理するために、パンクしたタイヤのバルブに接続するホースと、パンクしたタイヤにホースを介してパンク修理剤を供給するボンベと、修理したタイヤにホースを介して空気を供給する電動ポンプとを含むパンク修理キットを装備している。電動ポンプは可搬式のものであり、パンク修理に使用する場合には、車外に持ち出してシガレットライターに接続することで作動し、その吐出ポート24b(図2および図4参照)から吐出される空気を前記ホースを介してタイヤに供給するようになっている。
【0026】
この電動ポンプは、車載の状態では前記真空ポンプ24として機能するもので、パンク修理の際に使用する吐出ポート24bを使用せず、その吸入ポート24aがホース23を介して真空パッド22に接続される。
【0027】
またインストルメントパネル11の凹部20にはリミットスイッチ25が設けられており、このリミットスイッチ25は小物物品保持部19が使用位置に移動するとオンするよになっている。そしてリミットスイッチ25および真空ポンプ24は電子制御ユニット26に接続される。
【0028】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0029】
図4に示すように、小物物品保持部19が収納位置にあるとき、その表面19aはインストルメントパネル11の表面11aと面一になって段差が消滅することで、インストルメントパネル11の美観が維持されるだけでなく、小物物品保持部19が車室内に突出して邪魔になったり車室のスペースを圧迫したりすることが防止される。このとき、リミットスイッチ25はオフしているため、真空ポンプ24は不作動状態に維持されて電力の無駄な消費が回避される。
【0030】
例えば携帯電話のような小物物品18を小物物品保持部19に保持するには、乗員が手に持った小物物品18を小物物品保持部19の真空パッド22に当接させて押し込めば良い。すると、図2に示すように、プッシュオープン装置21,21によって、一旦押し込まれた小物物品保持部19はロックが外れて使用位置に向かって車室内に突出するとともに、リミットスイッチ25がオンして真空ポンプ24が作動し、ホース23を介して真空パッド22の内部が真空引きされる。その結果、小物物品18は真空パッド22に吸着して保持され、乗員が手を放しても、また車両が加減速や旋回を行ったり悪路走行したりする場合であっても、小物物品18は落下したり移動したりすることなく、小物物品保持部19に保持される。
【0031】
このように、小物物品18は乗員が手を放しても小物物品保持部19に保持されたままになり、かつ小物物品保持部19は乗員の手が届き易いインストルメントパネル11に設けられているので、乗員は小物物品18の操作を容易に行うことができる。
【0032】
この状態から乗員が小物物品18を持って前方に押し込むと、プッシュオープン装置21,21によって小物物品保持部19が収納位置にロックされ、これと同時にリミットスイッチ25がオフして真空ポンプ24が停止することで、真空パッド22の吸着が解除されて小物物品18を取り外しが可能になる。
【0033】
以上のように、インストルメントパネル11の凹部20に設けた小物物品保持部19に開口する真空パッド22の内部を真空ポンプ24で真空引きするので、単に置くだけでは重力や車両の加速度運動で移動したり落下したりする小物物品18を真空パッド22に吸着して確実に保持することができる。しかも真空パッド22で吸着するので小物物品18の形状や寸法の制限が小さくなり、多種の小物物品18を保持可能になって汎用性が高められる。また小物物品保持部19は上向きである必要はなく、横向きあるいは下向きであっても小物物品18を保持できるので、小物物品18をフロントガラスを遮らない位置に装着することが可能であるだけでなく、乗員の操作し易い位置や車室内のスペースを有効に利用できる位置に装着することができる。
【0034】
また小物物品保持部19はインストルメントパネル11の表面11aから車室側に突出可能なので、小物物品保持部19を使用しないときはインストルメントパネル11の凹部20に収納して車室内の美観を保つとともに邪魔にならないようにし、小物物品保持部19を使用するときはインストルメントパネル11の表面11aから突出させて小物物品18の着脱や操作を容易に行うことができる。しかも小物物品保持部19が車室側に突出したときにリミットスイッチがオン25して真空ポンプ24が作動するので、特別のスイッチ操作を行わなくても自動的に真空ポンプ24を作動させることが可能になって利便性が向上する。
【0035】
また真空パッド22を真空引きする真空ポンプ24を、パンク修理後のタイヤに空気を供給する電動ポンプに兼用するので、特別の真空ポンプ24を設ける必要がなくなってコストダウンが可能になる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0037】
例えば、本発明の小物物品18は実施の形態の携帯電話に限定されるものではない。
【0038】
また実施の形態の真空ポンプ24は、パンク修理キットの電動ポンプに兼用されるものに限定されず、専用のものであっても良く、また本発明の負圧源は真空ポンプ24に限定されるものではない。
【0039】
また小物物品保持部19が設けられる場所はインストルメントパネル11に限定されず、車室の任意の内装材であれば良い。
【0040】
また小物物品保持部19を収納位置と使用位置との間で移動させる構造はプッシュオープン装置21に限定されるものではなく、小物物品保持部19は内装材に移動不能に固定されたものであっても良い。
【符号の説明】
【0041】
11 インストルメントパネル(内装材)
11a 表面
18 小物物品
19 小物物品保持部
22 真空パッド
24 真空ポンプ(負圧源)
25 リミットスイッチ(スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の内装材(11)の表面(11a)に設けた小物物品保持部(19)に真空パッド(22)を開口させ、前記吸引パッド(22)の内部を負圧源(24)で真空引きすることで、前記小物物品保持部(19)に小物物品(18)を保持可能にしたことを特徴とする車両用小物物品保持装置。
【請求項2】
前記小物物品保持部(19)は、前記内装材(11)の表面(11a)から車室側に突出可能であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用小物物品保持装置。
【請求項3】
前記小物物品保持部(19)が車室側に突出したときにオンするスイッチ(25)を備え、前記スイッチ(25)のオンにより前記負圧源(24)が作動することを特徴とする、請求項2に記載の車両用小物物品保持装置。
【請求項4】
前記内装材はインストルメントパネル(11)であることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用小物物品保持装置。
【請求項5】
前記負圧源(24)は、パンク修理後のタイヤに空気を供給する電動ポンプに兼用されることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用小物物品保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−1007(P2012−1007A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134730(P2010−134730)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】