説明

車両の後部荷室構造

【課題】消音器による排気音の低減機能を効果的に向上できるとともに、車両の後部に荷物の収容スペースを充分に確保できるようにする。
【解決手段】車体後部の床面を形成するリアフロアパネル4の下方に、後輪5を支持するサスペンション6が配設されるとともに、その後方に消音器7が配設され、かつ上記リアフロアパネル4の上方部が後部荷室3として利用可能に構成された車両の後部荷室構造であって、上記リアフロアパネル4には、後部荷室3に連通するサブトランク部27が上記サスペンション6との干渉を回避した位置に設置されるとともに、該サブトランク部27と上記消音器7とが車幅方向に並設され、かつ車両側面視で、該サブトランク部27の下面が上記消音器7の下辺部に対応する位置に配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部の荷室床面を形成するリアフロアパネルの上方部が荷室として利用可能に構成された車両の後部荷室構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、エンジンの排気装置において、限られたスペースの中で消音器(排気サイレンサ)の容量を可及的に大きくするとともに、消音器と排気管とを含めた排気装置の支持バランスおよび支持剛性を向上させることを目的として、車体下面視で車体後部のサイドフレームに重なって配設される上下方向に扁平な略直方体の消音器と、サイドフレームよりも車幅方向内側において消音器の前端面に連結される第1排気管と、サイドフレームの前後2個所に形成した開口部に、それぞれ挿入固定されるとともに、消音器の前端部および後端部を支持する第1,第2マウントラバーと、第1排気管を車体下部で支持する第3マウントラバーとを備え、第1〜第3マウントラバーを下面視で三角形状を形成するように配置したエンジンの排気装置が知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に示すように、部品点数の増加を伴うことなく終減速装置に床下の通過風を導入可能とすることを目的として、車体フロアに前後方向に延在するトンネル部の下側内方にプロペラシャフトおよび排気管を配置するとともに、プロペラシャフトの後端部に終減速装置を設け、かつ、この終減速装置の車体前方側でトンネル部の下端両側部に跨って車幅方向に補強部材を配置し、この補強部材に、車両走行時に発生する床下の通過風をトンネル部内に取り込んで終減速装置に導く第1導風部を形成することにより、この取込み風で終減速装置を積極的に冷却できるように構成した車体床下構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−325802号公報
【特許文献2】特開2005−170278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているように、車体下面視で車体後部のサイドフレームに重なるように略直方体の扁平な消音器を配設するとともに、該消音器の後端面における車幅方向外側位置にテールパイプを連結して車両の後方側に突設した場合には、車体後部の上下寸法および前後寸法が大きくなることを防止しつつ、限られたスペースに所定容量の消音器を配設できるという利点がある。しかし、上記特許文献1の図1に開示されているように、車体の下面視において、スペアタイヤパンの一側方部に消音器を配設した構造とした場合には、リアフロアパネル上に荷物を収納するためのスペースを充分に確保することが困難であるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2に係る車両床下構造のように、車体後部の左右に一対の消音器を配設した場合においても、車体後部の上下寸法および前後寸法が大きくなるのを抑制しつつ、限られたスペースに所定の容量を有する消音器を配設することが可能である。しかし、この構成においても、リアフロアパネル上に形成された後部荷室の容量を充分に確保することが困難であった。
【0007】
なお、車両の燃費および運動性能の向上させるためには、車体を極力小型化するとともに低床化を図ることが好ましいが、所定の容量を有する消音器を、燃料タンクや後輪用のサスペンションとともに、リアフロアパネルの下方に配設した構造とした場合には、車両の後部に荷物の収納スペースを充分に確保することが困難となり、この点を改善することが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、消音器による排気音の低減機能を効果的に向上できるとともに、車両の後部に荷物の収容スペースを充分に確保できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体後部の床面を形成するリアフロアパネルの下方に、後輪を支持するサスペンションが配設されるとともに、その後方に消音器が配設され、かつ上記リアフロアパネルの上方部が後部荷室として利用可能に構成された車両の後部荷室構造であって、上記リアフロアパネルには、後部荷室に連通するサブトランク部が上記サスペンションとの干渉を回避した位置に設置されるとともに、該サブトランク部と上記消音器とが車幅方向に並設され、かつ車両側面視で、該サブトランク部の下面が上記消音器の下辺部に対応する位置に配設されたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の後部荷室構造において、上記リアフロアパネルの下面には、車両の前後方向に延びるリアサイドフレームが車幅方向の左右両側方部にそれぞれ設けられ、該リアサイドフレーム間に、上記サブトランク部が配設されるとともに、該サブトランク部の左右両側方部に、上記消音器がそれぞれ配設されたものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の後部荷室構造において、上記リアフロアパネルの左右両側方部には、後輪を収容するホイールハウスが設けられるとともに、その後方側に上記消音器が配設されたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、上記リアフロアパネルの下方には、車両前部に配設されたエンジンと上記消音器とを連結する排気パイプが設けられるとともに、上記サブトランク部には、その下面の一部を上方に突出させた段部が形成され、上記排気パイプが、該段部の下方を通って上記消音器の車幅方向内側面に連結されるように配管されたものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、上記サブトランク部の下面が、消音器の下面よりも下方側に突出した位置に配設されたものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、上記サブトランク部の深さ寸法が、サブトランク部の前後長よりも大きい値に設定されたものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、上記サブトランク部の下面が、後輪の回転軸よりも少なくとも下方で、かつ上記サスペンションの下端よりも上方に配設されたものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、上方の後部荷室と連通するサブトランク部を、後輪用のサスペンションとの干渉を回避し得る位置で、上記消音器と車幅方向に並設するように配置し、かつ車両側面視で、該サブトランク部の下面を消音器の下辺部に対応する位置に配設したため、上記サブトランク部の容量を大きく設定して車両の後部に荷物を収容するための充分なスペースを確保することができる。しかも、上記サブトランク部の下方に消音器を配設した場合のように、サブトランク部の設置深さが制限されるという事態を生じることなく、消音器の容量を充分に確保することができ、これによって優れた排気音の低減機能が得られるという利点がある。
【0017】
請求項2に係る発明では、リアフロアパネルの下面に、車両の前後方向に延びるリアサイドフレームを車幅方向の左右両側方部にそれぞれ設け、該リアサイドフレーム間に、上記サブトランク部を配設するとともに、該サブトランク部の左右両側方部に、上記消音器をそれぞれ配設したため、サブトランクの容量を充分に確保しつつ、上記消音器の総容量を充分に確保することができる。したがって、上記サブトランク部の左右両側方部に設けられたスペースを充分に活用して排気の消音効果を効果的に向上させることができるとともに、上記サブトランク部の下方空間を有効に利用することにより、上記両消音器に対する排気パイプおよびテールパイプの取り回しを効率よく実現できる等の利点がある。
【0018】
請求項3に係る発明では、上記リアフロアパネルの左右両側方部に、後輪を収容するホイールハウスを設けるとともに、その後方側に上記消音器を配設したため、ホイールハウスの影響を受けることなく、リアフロアパネルの車幅方向中央部に配設されたサブトランク部の前後長を充分に確保することができるとともに、上記排気パイプをホイールハウスに干渉させることなく効率よく取り回して消音器に連結することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、上記リアフロアパネルの下方に、車両前部に配設されたエンジンと上記消音器とを連結する排気パイプを設けるとともに、上記サブトランク部に、その下面の一部を上方に突出させた段部を形成し、上記排気パイプを、該段部の下方を通って上記消音器の車幅方向内側面に連結するように配管したため、サブトランク部の下面よりも下方に排気パイプが突出するのを防止することにより、車両の空力特性を良好状態に維持しつつ、該排気パイプの端部を消音器に対して適正に連結できるとともに、サブトランク部の容量を効果的に増大できる等の利点がある。
【0020】
請求項5に係る発明では、上記サブトランク部の下面を、消音器の下面よりも下方側に突出した位置に配設したため、該消音器の容量如何に拘わらず、サブトランク部の容量を効果的に増大することができ、該サブトランク部内に上下寸法の大きい物品を格納可能であるという利点がある。
【0021】
請求項6に係る発明では、上記サブトランク部の深さ寸法を、サブトランク部の前後長よりも大きい値に設定したため、リヤオーバハング量が短く設定されることにより車体がコンパクトに形成された車両の後部荷室構造において、所定の容量を有するサブトランク部を、後輪用のサスペンションに干渉させることなく、車体後部のリアフロアパネルに設置することができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、上記サブトランク部の下面を、上記後輪の回転軸よりも少なくとも下方で、かつ上記サスペンションの下端よりも上方に配設したため、サブトランク部の下面がサスペンションの下端よりも下方に突出することに起因して車両の空力特性が悪化するという事態を生じることなく、サブトランク部の容量を充分に確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両の後部荷室構造を示す平面図である。
【図2】排気系およびサスペンション等の配設構造を示す平面図である。
【図3】排気系およびサブトランク部の配設構造を示す側面断面図である。
【図4】排気系およびサブトランク部の配設構造を示す背面断面図である。
【図5】後輪用サスペンションの具体的構成を示す斜視図である。
【図6】後輪用サスペンションの具体的構成を示す平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両の後部荷室構造を示す平面図である。
【図8】上記第2実施形態における排気系およびサブトランク部等の配設構造を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図4は、本発明の第1実施形態に係る車両の後部荷室構造を示している。この車両は、車室1の床面を構成するフロアパネル2と、その後方に配設された後部荷室3の床面を形成するリアフロアパネル4とを有している。該リアフロアパネル4の下方左右には、後輪5用のサスペンション6が配設され、該サスペンション6の後方には、エンジンの排気音を低減する左右一対の消音器7と、各消音器7に連結された排気ガスの導出部となるテールパイプ8とがそれぞれ配設されている。
【0025】
上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、上方に膨出したフロアトンネル部9が車両の前後方向に延びるように設置され、該フロアトンネル部9内には、エンジンにより回転駆動されるプロペラシャフト10が配設されている。そして、該プロペラシャフト10と、その後端部に設けられたディファレンシャル11と、ドライブシャフト12とを有する駆動系を介して、左右の後輪5,5にエンジンの駆動力が伝達されるようになっている。
【0026】
上記フロアパネル2の後部左右には、斜め後方に向けて立ち上がるキックアップ部13が形成されている。また、上記リアフロアパネル4の左右両側方部には、その下面に沿って車両の前後方向に延びるようにリアサイドフレーム14が設置されている。さらに、上記リアフロアパネル4の前部左右には、後輪5を収容するホイールハウス15が形成されるとともに、その下方に後輪5を支持するサスペンション6が設置されている。
【0027】
上記後輪5用のサスペンション6は、例えば図5および図6に示すように、5本のIリンク16〜20により後輪5のホイールサポート21を車体に対してストローク可能に連結するとともに、緩衝装置24の上下反力を利用して各リンク16〜20の弾性ブッシュに付勢力(プリロード)を付与するように構成されたプリロード式のマルチリンク式サスペンションからなっている。
【0028】
上記各Iリンクは、仮想的にアッパアームを構成する車体前側および後側の2本のアッパリンク16,17と、仮想的にロアアームを構成する車体前側および後側の2本のロアリンク18,19と、該仮想のアッパアームおよびロアアームの配置により決まる仮想キングピン軸周りに後輪5が回動変位するのを規制するトーコントロールリンク20とからなっている。そして、上記アッパリンク16,17およびロアリンク18,19がそれぞれ車体側の端部を中心として上下に揺動することにより、上記ホイールサポート21および後輪5が所定の軌跡に沿って上下にストロークするように構成されている。
【0029】
上記緩衝装置24は、コイルばね22とダンパ23とが略同軸に配置された上下方向に長い円筒状をなし、その上端側に配設された円筒状ブラケット25が車体に取り付けられるとともに、上記ダンパ23の下端部がホイールサポート21の車体内方側に枢着されている。そして、自動車の車体後部の分担荷重および後輪5のストロークに対応するコイルばね22およびダンパ23の反力(緩衝装置の上下反力)が、ホイールサポート21に作用するようになっている。
【0030】
上記リアフロアパネル4には、下方に凹設された凹設部26が、上記リアサイドフレーム14,14間の略全域に亘る範囲に形成され、該凹設部26には、上記後部荷室3に連通するボックス状のサブトランク部27が設置されている。そして、該サブトランク部27の上面には、必要に応じて開閉リッド28が設置されることにより、後部荷室3の略全体に亘ってフラットな床面が形成され、かつ上記開閉リッド28を開放した状態で、サブトランク部27内に対する物品の出し入れを行い得るように構成されている。
【0031】
上記サブトランク部27は、その前後位置がリアフロアパネル4の左右両側方部に形成されたホイールハウス15の後方側に設定されることにより、後輪5用のサスペンション6との干渉を回避し得る位置に配設されている。また、上記サブトランク部27は、その車幅方向位置が左右のリアサイドフレーム14間に設定されることにより、上記サスペンション6よりも後方側に配設された消音器7と車幅方向に並設されるようになっている。さらに、該サブトランク部27の下面は、上記消音器7の下辺部、具体的には消音器7の下面よりもやや上方側部位に対応した位置に配設されている。
【0032】
上記消音器7は、フロアトンネル部9内に配設されて車両の前後方向に延びるように設置された上流側パイプ29と、その後端部に連設された左右一対の下流側パイプ30とを有する排気パイプ31を介して、車体の前方部に配設された図外のエンジンに連結されている。上記排気パイプ31の下流側パイプ30は、リアフロアパネル4に形成された凹設部26の下方を通り、かつ上記ドライブシャフト12等からなる駆動系およびサスペンション6の下方を通過して車幅方向の外方側に延びるように配管されるとともに、下流側パイプ30の下流端部が、上記消音器7の車幅方向内側面であってその下辺部前方に連結されている。
【0033】
上記消音器7の車幅方向内側面であってその下辺部後方には、テールパイプ8の上流端部が連結されている。該テールパイプ8は、上記凹設部26の下方を通って車幅方向に延びる上流側部32と、その車幅方向中央部側に位置する下流端部から上記凹設部26の下方を通って車両の後方側に延びる下流側部33とを有している。そして、上記凹設部26の車幅方向左右両側に配設された一対の消音器7に連結された両テールパイプ8の下流側部33が、それぞれ車幅方向中部付近から車両の後端面側に向けて突設されている。
【0034】
上記のように車体後部の床面を形成するリアフロアパネル4の下方に、後輪5を支持するサスペンション6が配設されるとともに、その後方に消音器7が配設され、かつ上記リアフロアパネル4の上方部が後部荷室3として利用可能に構成された車両の後部荷室構造において、上記リアフロアパネル4には、後部荷室3に連通するサブトランク部27を上記サスペンション6との干渉を回避した位置に設置するとともに、該サブトランク部27と上記消音器7とを車幅方向に並設し、かつ車両側面視で、該サブトランク部27の下面を上記消音器7の下辺部に対応する位置に配設したため、該消音器7による排気音の低減機能を効果的に向上させることができるとともに、車両の後部に荷物の収容スペースを充分に確保することができる。
【0035】
すなわち、上記第1実施形態では、上方の後部荷室3と連通するサブトランク部27を、後輪5用のサスペンション6との干渉を回避し得る位置で、上記リアサイドフレーム14,14間の略全域に亘る範囲に配設するとともに、該サブトランク部27の下面を、上記消音器7の下面よりもやや上方側部位に対応した位置に配設したため、上記サブトランク部27の容量を大きく設定して車両の後部に荷物を収容するための充分なスペースを確保することができる。しかも、上記サブトランク部27と消音器7とを車幅方向に並設したため、該サブトランク部27の下方に消音器7を配設した場合のように、サブトランク部27の設置深さが制限されるという事態を生じることなく、上記消音器7の容量も充分に確保することができ、これによって優れた排気音の低減機能が得られるという利点がある。
【0036】
また、上記第1実施形態では、リアフロアパネル4の下面に、車両の前後方向に延びるリアサイドフレーム14が車幅方向の左右両側方部にそれぞれ設けられた車体構造において、該リアサイドフレーム14間に、上記サブトランク部27を配設するとともに、該サブトランク部27の左右両側方部に、上記消音器7をそれぞれ配設したため、該サブトランク27の容量を充分に確保しつつ、該サブトランク部27の片側にのみ消音器7を配設した場合に比べて、消音器7の総容量を倍に設定することができる。したがって、上記サブトランク部27の左右両側方部に設けられたスペースを充分に活用して排気の消音効果を効果的に向上させることができるとともに、上記サブトランク部27の下方空間を有効に利用することにより、上記両消音器7に対する排気パイプ31およびテールパイプ8の取り回しを効率よく実現できる等の利点がある。
【0037】
さらに、上記第1実施形態では、リアフロアパネル4の左右両側方部に、後輪5を収容するホイールハウス15を設けるとともに、その後方側に上記消音器7を配設した構造としたため、上記ホイールハウス15の影響を受けることなく、リアフロアパネル4の車幅方向中央部に配設された上記サブトランク部27の前後長を充分に確保することができる。しかも、上記ホイールハウス15との干渉を回避しつつ、上記排気パイプ31およびテールパイプ8を効率よく取り回して消音器7に連結することができる。
【0038】
また、上記第1実施形態では、サブトランク部27の下方を通って車幅方向に延びる上流側部32と、その車幅方向中央部側に位置する下流端部からサブトランク部27の下方を通って車両の後方側に延びる下流側部33とにより上記テールパイプ8を構成したため、消音器7の後端面からテールパイプをストレートに車両の後方側に突設したものに比べ、上記テールパイプ8の全長を充分に大きくすることができ、これによって消音器7による排気音の低減機能を効果的に向上させることができる。
【0039】
さらに、上記テールパイプ8の下流側部33を消音器7の設置部よりも車幅方向の中央部側に位置させたため、車体の後部側方に他車が衝突する車両の後突事故が発生した場合においても、上記テールパイプ8の下流側部33に衝突荷重が入力されることはなく、その損傷を効果的に防止できるという利点がある。特に、上記第1実施形態に示すように、テールパイプ8の下流側部33を、車幅方向中央付近から車体後方側へと延びるよう設置した場合には、車体後面の車幅方向中央付近に他車が衝突した場合を除いて、車両の後突時に上記テールパイプ8が損傷するのを防止できるという利点がある。
【0040】
図7および図8は、本発明に係る車両の後部荷室構造の第2実施形態を示している。該第2実施形態に係る車両の後部荷室構造では、上記サブトランク部27に、その下面の一部、具体的には車両の前方側部分を上方に突出させた段部34が形成され、該段部34の下方を通ってエンジンと消音器7とを連結する排気パイプ31を上記消音器7の車幅方向内側面に連結するように配管し、かつ該消音器7の後面にテールパイプ8を連結して後方に突出させるように構成している。
【0041】
上記のように構成した場合には、サブトランク部27の段部34に沿って排気パイプ31を配管することにより、サブトランク部27の下面よりも下方に排気パイプ31が突出するのを防止できるため、車両の空力特性を良好状態に維持しつつ、該排気パイプ31の端部を消音器7に対して適正に連結できるとともに、サブトランク部27の最下端面を上記第1実施形態よりも下方に位置させることにより、サブトランク部27の容量を効果的に増大できる等の利点がある。
【0042】
特に、上記第2実施形態では、図8に示すように、サブトランク部27の下面(最下端面)を、消音器7の下面よりも下方側に突出させた位置に配設したため、消音器7の容量の如何に拘わらず、サブトランク部27の容量を効果的に増大することができ、該サブトランク部27内に上下寸法の大きい物品を格納可能であるという利点がある。
【0043】
また、図8に示すように、上記サブトランク部27の深さ寸法Dを、サブトランクの前後長Lよりも大きい値に設定した場合には、リヤオーバハング量を短く設定することにより車体がコンパクトに形成された車両の後部荷室構造において、所定の容量を有するサブトランク部27を、後輪5用のサスペンション6に干渉させることなく、車体後部のリアフロアパネル4に設置することができる。
【0044】
さらに、上記第2実施形態では、サブトランク部27の下面(最下端面)を、後輪5の回転軸(ドライブシャフト12)よりも少なくとも下方で、かつ上記サスペンション6の下端、具体的にはサスペンション6の最下方に位置するロアアーム18の下端面よりも上方に配設した構造としたため、サブトランク部27の下面がサスペンション6の下端よりも下方に突出することに起因して車両の空力特性が悪化するという事態を生じることなく、サブトランク部27の容量を充分に確保できるという利点がある。
【符号の説明】
【0045】
3 後部荷室
4 リアフロアパネル
5 後輪
6 サスペンション
7 消音器
12 ドライブシャフト(回転軸)
14 リアサイドフレーム
15 ホイールハウス
27 サブトランク部
31 排気パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の床面を形成するリアフロアパネルの下方に、後輪を支持するサスペンションが配設されるとともに、その後方に消音器が配設され、かつ上記リアフロアパネルの上方部が後部荷室として利用可能に構成された車両の後部荷室構造であって、上記リアフロアパネルには、後部荷室に連通するサブトランク部が上記サスペンションとの干渉を回避した位置に設置されるとともに、該サブトランク部と上記消音器とが車幅方向に並設され、かつ車両側面視で、該サブトランク部の下面が上記消音器の下辺部に対応する位置に配設されたことを特徴とする車両の後部荷室構造。
【請求項2】
上記リアフロアパネルの下面には、車両の前後方向に延びるリアサイドフレームが車幅方向の左右両側方部にそれぞれ設けられ、該リアサイドフレーム間に、上記サブトランク部が配設されるとともに、該サブトランク部の左右両側方部に、上記消音器がそれぞれ配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項3】
上記リアフロアパネルの左右両側方部には、後輪を収容するホイールハウスが設けられるとともに、その後方側に上記消音器が配設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項4】
上記リアフロアパネルの下方には、車両前部に配設されたエンジンと上記消音器とを連結する排気パイプが設けられるとともに、上記サブトランク部には、その下面の一部を上方に突出させた段部が形成され、上記排気パイプが、該段部の下方を通って上記消音器の車幅方向内側面に連結されるように配管されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項5】
上記サブトランク部の下面が、消音器の下面よりも下方側に突出した位置に配設されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項6】
上記サブトランク部の深さ寸法が、サブトランク不部の前後長よりも大きい値に設定されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項7】
上記サブトランク部の下面が、後輪の回転軸よりも少なくとも下方で、かつ上記サスペンションの下端よりも上方に配設されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−234995(P2010−234995A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86224(P2009−86224)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】