説明

車両の換気システム

【課題】設置高さがより低い、車両の換気システムを供給する。
【解決手段】第一の排気開口部20を含む第一の空気案内ダクト14と、該第一の空気案内ダクト14に対して平行に配置され且つ、第二の排気開口部22を含む第二の空気案内ダクト16と、空気案内ダクト14、16の下流に配置された偏向装置24とを有する車両の換気システム10において、偏向装置24は、流れ方向に向けて第一及び第二の排気開口部20、22に極く隣接しており、また、排気開口部20、22の全面積をカバーする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の排気開口部を有する第一の空気案内ダクトと、該第一の空気案内ダクトに対して平行に配置され且つ、第二の排気開口部を有する第二の空気案内ダクトと、空気案内ダクトの下流に配置された偏向装置とを含む車両の換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近代の車両の換気システムは、新気を車両の内部に供給することを許容する複数の空気案内ダクトを含む。空気の流れは、異なる空気案内ダクトにより異なる状態にて制御され、車両の内部の換気状態を車両の搭乗者の望みに合うように調節することができる。この目的のため、例えば、空気案内ダクトの1つは、貫通して流れる空気を渦巻き状にする渦巻き要素を含んでおり、その結果、空気の流れは、著しく遅くなり、流れ出る空気はより大きい出口角度にて分配される。車両の搭乗者に対する直接的な空気の流れはなく、このため、車両の内部の搭乗者の快適性は増す。他方、指向性換気を生じさせるため、空気の流れを伝達し且つ、その流れを特定の箇所に選択的に向ける案内手段を含む第二の空気案内ダクトを使用することができる。この型式の車両の換気システムは、例えば、ドイツ国特許第102008059 736 A1号公報に開示されている。選択的換気、いわゆるスポット換気のための空気案内ダクトは、この場合、車両の換気システム内に回動可能に取り付けた1対の管により構成されている。かかる車両の換気システムは設置高さ(installation depth)が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ国特許第102008059 736 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、設置高さがより低い、冒頭記載の車両の換気システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従い、この目的のため、第一の排気開口部を含む第一の空気案内ダクトと、該第一の空気案内ダクトに対して平行に配置され且つ、第二の排気開口部を含む第二の空気案内ダクトと、空気案内ダクトの下流に配置された偏向装置とを有する車両の換気システムが提供される。偏向装置は、流れ方向に向けて第一及び第二の空気案内ダクトに極く隣接しており、また、排出流開口部の全面積をカバーする。先行技術にて使用されている車の換気システムにおいて、長い管状の空気案内ダクトのため、偏向装置は、空気案内ダクトから特に、渦巻き要素から比較的離れた距離に配置されている。その結果の1つは、設置高さが極めて高くなることである。別の効果として、渦巻き状の空気の流れは、換気システムの内壁に衝突し、また、該内壁に対し傾くことである。このことは、渦巻き状の空気の流れがハウジングにより再度、整合され、このため、拡散器の効果を少なくとも部分的に失わせることを意味する。本発明に従った車両の換気システムにおいて、偏向装置は、第一の空気案内ダクト及び第二の空気案内ダクトの双方に極く隣接している。このことは、1つの効果として、設置高さが低いことを許容する。別の効果として、空気流れは、車両の換気システム内で偏向される前に、車両の換気システムから出ることができる。このようにして、渦巻き状となった空気流れは再度、伝達されないため、車両の換気システムの効果は、著しく改良される。更に、車両の内部のより広い面積にわたって空気流れを分配することが可能である。
【0006】
1つの好ましい実施の形態において、第一の空気案内ダクトは、第二の空気案内ダクト内に配置されて、車の換気システムをより小型の構造とすることを可能にする。第二の空気案内ダクトは、例えば、渦巻き状の空気の流れを生じさせ得るように環状の設計のものである。第一の空気案内ダクトは、環状の第二の空気案内ダクトの内部に配置されて、車両の換気システムの極めて小型の形態を許容する。
【0007】
第一及び第二の空気案内ダクトの少なくとも一方は、空気の流れを偏向させる偏向手段を含むことができる。空気案内ダクトから出る空気の流れは、これらの偏向手段を使用して制御し、空気の流れのより精密な調節を許容する。
【0008】
第一の空気案内ダクトは、例えば、実質的に平行に配置され且つ、第一の空気案内ダクトの長手方向軸線に対して調節可能である傾斜角度を有する複数の薄板を含むことができる。薄板は、偏向装置の反らせ方向に対し横方向に空気の流れの反らせが生じるよう配置されることが好ましい。このことは、反らせ角度を任意の方向に向けて極めて広く調節することを許容する。
【0009】
第二の空気案内ダクトの偏向手段は、例えば、第二の空気案内ダクトの長手方向軸線に対して傾斜した複数のベーンを含む。これらのベーンは、空気の流れの幅を広げることを可能にし、その結果、空気の流れの速度は遅くなる。このようにして不快であることが多々ある、空気の流れが車両の搭乗者に直接、当たることを防止することができる。
【0010】
ベーンは、例えば、第二の空気案内ダクトの長手方向軸線に対して可変の角度を有するものとし、又は湾曲した設計のものとすることができる。
車両の換気システムの反らせ装置は、実質的に平行に配置され且つ、調節可能な傾斜角度を有する複数の薄板を含むことが好ましい。
【0011】
車両の換気システムは、第一及び(又は)第二の空気案内ダクトの上流に配置されたブロック手段を更に含むことができ、該ブロック手段は、第一及び(又は)第二の空気案内ダクトのそれぞれ全体又は一部分を閉じることができ、このことは、空気の流れ又は部分的流れの体積を調節することを許容する。例えば、第二の空気案内ダクトが閉じられたとき、内部の指向性換気は、第一の空気案内ダクトを通ってのみ行われ、このため、空気の流れを精密に方向決めすることが可能である。他方、第二の空気案内ダクトが開き、第一の空気案内ダクトが閉じられたとき、空気の流れの渦巻きが生じ、このため、不快となることがある直接的な空気の流れが回避される。ブロック手段を部分的に閉じ又は開くことにより、車両の換気システムをこれら2つの状態の間にて所望通りに調節することができる。
【0012】
第一の空気案内ダクト及び第二の空気案内ダクトの断面は、車両内の設置状態に合うよう任意の所望の仕方にて調節することができる。例えば、第二の空気案内ダクトは実質的に矩形の断面を有するようにすることが考えられる。しかし、車両の換気システムは所望に応じて幾つかのその他の断面を有するようにすることも考えられる。
【0013】
1つの好ましい実施の形態において、第一の空気案内ダクトの断面積対第二の空気案内ダクトの断面積の比は1:1である。この互いに対する断面積の比は、第一及び第二の空気案内ダクトの空気の流れを理想的に調節することを許容する。第一の空気案内ダクトが第二の空気案内ダクトに比してより小さい場合、第二の空気案内ダクトが閉じた状態のとき空気の流れは過度に集中するであろう。第一の空気案内ダクトがより大きい場合、指向性換気の効果は十分でないであろう。
【0014】
更なる有利な効果及び特徴は、添付図面に関する以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従った車両の換気システムの斜視図を示す。
【図2】図1の車両の換気システムの第二の斜視図を示す。
【図3】図1の車両の換気システムの垂直断面図を示す。
【図4】図1の車両の換気システムの水平断面図を示す。
【図5】図1の車両の換気システムの分解図を示す。
【図6】第一の製造ステップにおける図3の車両の換気システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に示した車両の換気システム10は、この場合、矩形の断面を有するハウジング12を含む。第一の空気案内ダクト14及び第二の空気案内ダクト16がハウジング12内に提供されている。第一の空気案内ダクト14は、実質的に楕円形の断面を有し、また、ハウジング12内に配置した中間壁18により形成されている。この場合、第一の空気案内ダクトは第二の空気案内ダクト16内に配置されている。しかし、空気案内ダクト14、16を例えば横に並べて配置することも考えられる。第二の空気案内ダクト16は、中間壁18及びハウジング12により規定される。
【0017】
空気案内ダクト14、16の双方は、互いに実質的に平行に配置され、また、その各々は、車両の内部を向いた排出開口部20、22を有している。特に図1にて理解し得るように、第一の空気案内ダクト14の排気開口部20及び第二の空気案内ダクト16の排気開口部22は、実質的に同一面内に配置されている。
【0018】
排気開口部20、22の下流には、偏向装置24が配置されており、該偏向装置24は、空気案内ダクト14、16から出る空気を垂直に反らすことができる。偏向装置は、互いに連結し且つ、作動部材28により回動させることのできる複数の水平に配置した薄板26を含み、このため、空気案内ダクト14、16の長手方向軸線に対する薄板の傾斜角度を変化させることができる。
【0019】
第二の空気案内ダクト16は、この場合、半径方向に配置したベーン29により形成された、空気の流れ中に配置した複数の偏向装置を含み、これらのベーンは、空気案内ダクト16の長手方向軸線に対して傾斜している。第二の空気案内ダクト16を通って流れる空気は、これにより渦巻き状とされ、空気は、車両の換気システムの後方にて広い角度にわたって拡散される。空気の流れを拡散させることにより、1つの効果として、空気の流れの流速度が遅くなる。別の効果として、供給された新気は車両の内部の空気と一層良く混合する。その結果、間接的な換気となり、このことは、直接衝突する空気の流れよりも快適であることが多いことが分かっている。
【0020】
第一の空気案内ダクト14は、同様に、複数の偏向手段、この場合、複数の薄板30を含み、これらの薄板は、互いに平行に配置され且つ互いに連結され、また、反らせ装置24の薄板26に対し実質的に横方向に配置されている。空気案内ダクト14の長手方向軸線に対する薄板30の傾斜角度は、同様に、可変であり、このため流れ出る空気の方向は、図1に対して左方向又は右方向に反らすことができる。反らせ装置24の薄板26に関連して、貫通して流れる空気は、水平方向に且つ垂直方向に車両の内部で広い角度にて反らすことができる。第一の空気案内ダクト14内にて空気の流れは渦巻き状とならないため、個別の領域を選択的に換気することが可能である。
【0021】
図3及び図4にて理解し得るように、偏向装置24の作動部材28は、第一の空気案内ダクト14の薄板30と係合し、このため制御部材28により空気の流れを水平方向及び垂直方向双方へ調節することが可能である。しかし、第一の空気案内ダクト14の薄板30は、偏向装置と関係なく制御可能であるようにすることも考えられる。
【0022】
偏向装置24は、第一及び第二の空気案内ダクト14、16の直ぐ下流にて流れ方向に向けて且つ排気開口部20、22に極く隣接して配置されている。排気開口部20、22からの偏向装置24の薄板26の距離は、30mm以下、好ましくは、25mm以下であることが好ましい。
【0023】
第一及び第二の空気案内ダクト14、16から出る空気の流れは、このようにして直接、偏向し且つ車両の内部に案内することができる。偏向装置24が空気案内ダクト14、16から更に離れている場合、空気案内ダクト14、16の排気開口部20、22と偏向装置24との間にて空気の流れの幅は、既に広がっているであろう。更なる過程にて、渦巻き状の空気の流れは、再度、ハウジング12に対向して位置し、このため渦巻き状となった空気の流れは、再度方向決めされ且つ集中するであろう。偏向装置24の効果は減少するであろう、すなわち、既に渦巻き状となった空気の流れの更なる正号は、偏向装置24により再度、行なわれるであろう。
【0024】
第一の空気案内ダクト14及び第二の空気案内ダクト16を全体的に又は一部分、互いに別個に閉じるためのブロック手段は図示されていない。車両の換気システム10に対する空気の供給は、共用する風道を介して行なうことができる。貫通して流れる空気は、ブロック手段により、それぞれ第一及び第二の空気案内ダクト14、16に分割される。
【0025】
例えば、第一の空気案内ダクト14のブロック手段が閉じられたとき、空気は、第二の空気案内ダクト16を通ってのみ流れ、このため、空気の流れの全体が渦巻き状となる。他方、第二の空気案内ダクト16が閉じられ、第一の空気案内ダクト14が開いたとき、内部の指向性換気が行われる。ブロック手段を部分的に閉じ又は開くことにより、これら2つの状態の間にて空気の流れを、所望通りに調節することができる。例えば、第一の空気案内ダクト14及び第二の空気案内ダクト16の双方が完全に開き、このため2つの空気の流れの重ね合わせを実行することができるようにすることが考えられる。
【0026】
しかし、これと代替的に、第一の空気案内ダクト14及び第二の空気案内ダクト16が別個の空気供給分を有するようにすることも考えられる。
本発明による車両の換気システム10の分解図が図5及び図6に示されている。図示した実施の形態において、車両の換気システム10は、実質的に3つの予め組み立てた組立体を含む。第一の組立体は、この場合、車両の換気システムのハウジング12から成っており、該ハウジングは、第二の空気案内ダクト16を保持し、また、流れ方向に見たとき、空気案内ダクト14の前側部分を保持している。第一の空気案内ダクト14を取り囲む中間壁18は、この場合、ハウジング12と一体物して形成される。しかし、空気案内ダクト14は別個の構成要素であるようにすることも考えられる。
【0027】
第一の空気案内ダクト14の後方部分と、第一及び第二の空気案内ダクト14、16の偏向手段とを支持するフレーム34は、ハウジング12内に挿入される。このことは、偏向手段を顧客の要求に合うよう簡単に且つ個別の仕方にて適応させることを許容する。
【0028】
第三の組立体は、この場合、最後の加工ステップ(図6)にてハウジング12の前部に挿入される偏向手段24である。
第一の空気案内ダクト14の排気開口部20の面積は、実質的に、第二の空気案内ダクト16の排気開口部22の面積に相応する、すなわち排気開口部20、22の断面積の比は、1:1である。これにより空気の流れの理想的な分配を実現することができる。しかし、これらから逸脱して、車両の換気システム10を顧客の要求に合うよう調節するためその他の断面積の比とすることも考えられる。
【0029】
実質的に矩形のハウジング12の断面を有するここで示した実施の形態以外、異なるハウジングの形状とすることも考えられる。例えば、車の換気システムは、また、円形の又は楕円形の断面とすることもできる。
【符号の説明】
【0030】
10 車両の換気システム
12 矩形の断面を有するハウジング
14 第一の空気案内ダクト
16 第二の空気案内ダクト
18 ハウジング12内に配置した中間壁
20 排出開口部
22 排出開口部
24 偏向装置
26 薄板
28 作動部材/制御部材
29 半径方向に配置したベーン
30 複数の薄板
34 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の排気開口部(20)を含む第一の空気案内ダクト(14)と、
該第一の空気案内ダクト(14)に対して平行に配置され且つ、第二の排気開口部(22)を含む第二の空気案内ダクト(16)と、
空気案内ダクト(14、16)の下流に配置された偏向装置(24)とを備える車両の換気システム(10)において、
前記偏向装置(24)は、流れ方向に向けて前記第一及び第二の排気開口部(20、22)に極く隣接しており、また、前記排気開口部(20、22)の全面積をカバーすることを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の換気システムにおいて、
前記第一の空気案内ダクト(14)は、前記第二の空気案内ダクト(16)内に配置されることを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の換気システムにおいて、
前記第一及び第二の空気案内ダクト(14、16)の少なくとも一方は、空気の流れを偏向させる偏向手段を含むことを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の換気システムにおいて、
前記第一の空気案内ダクト(14)の前記偏向手段は、実質的に平行に配置され且つ、前記第一の空気案内ダクト(14)の長手方向軸線に対して調節可能である傾斜角度を有する複数の薄板(30)を含むことを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の車両の換気システムにおいて、
前記第二の空気案内ダクト(16)の前記偏向手段は、前記第二の空気案内ダクトの長手方向軸線に対して傾斜した複数のベーン(32)であることを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの項に記載の車両の換気システムにおいて、
前記偏向装置(24)は、実質的に平行に配置された複数の薄板(26)を含むことを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れかの項に記載の車両の換気システムにおいて、
前記第一及び第二の空気案内ダクト(14、16)の上流には、前記第一及び第二の空気案内ダクト(14、16)の全体又は一部をそれぞれ閉じることのできるそれぞれのブロック手段が配置されることを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項8】
請求項1から7の何れかの項に記載の車両の換気システムにおいて、
前記第一の空気案内ダクトの断面積対前記第二の空気案内ダクトの断面積の比は実質的に1:1であることを特徴とする、車両の換気システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れかの項に記載の車両の換気システムにおいて、前記第二の空気案内ダクトは実質的に矩形の断面を有することを特徴とする、車両の換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−136683(P2011−136683A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−249391(P2010−249391)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(597013146)ティーアールダブリュー・オートモーティブ・エレクトロニクス・アンド・コンポーネンツ・ゲーエムベーハー (51)
【住所又は居所原語表記】Industriestr.2−8,78315 Radolfzell,Germany
【Fターム(参考)】