説明

車両の燃料タンク取付構造

【課題】燃料タンクとタンクバンドとの擦れによる燃料タンクの塗膜の剥がれ、錆の発生、磨耗、タンクバンドの磨耗による締付力の低下等の発生を防ぐことができる車両の燃料タンク取付構造を提供すること。
【解決手段】燃料タンク1の底面に車両前後方向に沿って形成された凹ビード4にタンクバンド3を嵌め込み、該タンクバンド3の前後端を車体底部に取り付けることによって前記燃料タンク1をタンクバンド3によって車体に吊り下げ固定する車両の燃料タンク取付構造において、前記燃料タンク1の凹ビード4とこれに嵌め込まれる前記タンクバンド3の横断面形状を逆V字状とし、両者を密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクをタンクバンドによって車体に吊り下げ固定する車両の燃料タンク取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には燃料タンクの取付方式として、燃料タンクをタンクバンドによって車体に吊り下げ固定する方式を採用するものがある。斯かる取付方式の一例を図5〜図7に示す。
【0003】
即ち、図5は車体の燃料タンク取付部の底面図、図6は同車体の燃料タンク取付部の側面図、図7は図5のB−B線断面図であり、内部に燃料を収容した矩形ボックス状の燃料タンク101は、車体(フロアパネル)102の後部床面に沿って横方向(図5の上下方向)に配され、車両前後方向(図5及び図6の左右方向)に配された左右2本のタンクバンド103によって車体102に吊り下げ固定されている。
【0004】
ここで、燃料タンク101の底面の左右2箇所には、図7に示すように凹ビード104が車両前後方向に互いに平行に形成されており、各凹ビード104に平ベルトであるタンクバンド103が嵌め込まれている。そして、各タンクバンド103の前後端がボルト107によってフロントクロスメンバ105とリヤクロスメンバ106にそれぞれ取り付けられることによって、燃料タンク101が左右2本のタンクバンド103によって吊り下げられた状態で車体102の底面に取付支持される。
【0005】
上述のようにタンクバンド103を燃料タンク101の底面に形成された凹ビード104に嵌め込むことによって該タンクバンド103の位置決めがなされるが、図7に示すようにタンクバンド103の側面と凹ビード104の内端面との間に横方向の隙間δが不可避的に発生するため、振動や衝撃によって燃料タンク101が横方向に動き、該燃料タンク101とタンクバンド103が擦れてしまうことがある。燃料タンク101とタンクバンド103が擦れると、燃料タンク103の塗膜の剥がれ、錆の発生、磨耗、タンクバンド103の磨耗による締付力の低下等が発生する可能性がある。
【0006】
又、タンクバンド103の側面と凹ビード104の内端面との間に横方向の隙間δが発生すると、燃料タンク101を車体102に取り付ける際にタンクバンド103がずれるために燃料タンク101を位置決めしにくく、燃料タンク101が車体102に対して正規の位置からずれた状態で取り付けられる可能性がある。又、タンクバンド103の前後端をフロントクロスメンバ105とリヤクロスメンバ106に取り付ける際、該タンクバンド103の取付部とフロントクロスメンバ105とリヤクロスメンバ106の取付孔の位置が合わない等の組付上の問題が発生する可能性がある。
【0007】
車両の燃料タンク取付構造に関して、特許文献1には、燃料タンクの底部とタンクバンドとの間に、燃料タンクの車両前後方向の移動を規制するストッパ手段を形成する構成が提案されている。ここで、ストッパ手段として、燃料タンクの底部に車両前後方向に形成された凹ビードに幅広部を設ける一方、該凹ビード内に臨むタンクバンドを凹ビードの幅に対応する幅形状とする構成や、凹ビードの底部に、燃料タンク側に突出する係合凹部を設け、凹ビードに内に臨むタンクバンドに係合凸部を形成し、該係合凸部を前記燃料タンクの凹ビードに形成された係合凹部に嵌合させる構成等が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−027827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1において提案された燃料タンク取付構造は、燃料タンクの車両前後方向の移動を規制するものであって、振動や衝撃による燃料タンクの横方向の動きを規制することができず、燃料タンクの横方向の動きに伴うタンクバンドとの擦れによって発生する燃料タンクの塗膜の剥がれ、錆の発生、磨耗、タンクバンドの磨耗による締付力の低下等の問題を解決することは不可能である。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、燃料タンクとタンクバンドとの擦れによる燃料タンクの塗膜の剥がれ、錆の発生、磨耗、タンクバンドの磨耗による締付力の低下等の発生を防ぐことができる車両の燃料タンク取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、燃料タンクの底面に車両前後方向に沿って形成された凹ビードにタンクバンドを嵌め込み、該タンクバンドの前後端を車体底部に取り付けることによって前記燃料タンクをタンクバンドによって車体に吊り下げ固定する車両の燃料タンク取付構造において、前記燃料タンクの凹ビードとこれに嵌め込まれる前記タンクバンドの横断面形状を逆V字状とし、両者を密着させたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記燃料タンクの凹ビードとこれに嵌め込まれる前記タンクバンドを複数組設け、各組の凹ビードとタンクバンドを互いに非平行に配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記タンクバンドを弾性体と金属との二層構造として構成し、該タンクバンドの弾性体を前記燃料タンクの凹ビードに接触させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、燃料タンクの凹ビードとこれに嵌め込まれるタンクバンドの横断面形状を逆V字状として両者を密着させたため、タンクバンドと凹ビードとの間に横方向の隙間が発生せず、振動や衝撃による燃料タンクの横方向の動きが規制されて該燃料タンクとタンクバンドとの擦れが防がれる。このため、燃料タンクの塗膜の剥がれ、錆の発生、磨耗、タンクバンドの磨耗による締付力の低下等の発生が確実に防がれ、燃料タンクとタンクバンドの耐久性が高められる。
【0015】
又、燃料タンクの凹ビードとタンクバンドとの間に横方向の隙間が発生しないため、燃料タンクを車体に取り付ける際にタンクバンドがずれることがなく、燃料タンクを容易に位置決めして該燃料タンクを車体に対して正規の位置に取り付けることができる。そして、タンクバンドの前後端を車体に取り付ける際、該タンクバンドの取付部と車体側の取付孔の位置が一致するため、燃料タンクの組付性が高められる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、燃料タンクの凹ビードとこれに嵌め込まれるタンクバンドを複数組設け、各組の凹ビードとタンクバンドを互いに非平行に配置したため、燃料タンクの横方向のみならず車両前後方向の動きも規制され、該燃料タンクとタンクバンドの擦れが一層確実に防がれる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、弾性体と金属によって二層構造を成すタンクバンドの弾性体を金属製の燃料タンクの凹ビードに接触させたため、金属同士の接触に伴う燃料タンクの塗膜の剥がれや異音の発生等が防がれるとともに、タンクバンドの締付力が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る燃料タンク取付構造を示す車体の燃料タンク取付部の底面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る燃料タンク取付構造を示す車体の燃料タンク取付部の側面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る燃料タンク取付構造を示す車体の燃料タンク取付部の底面図である。
【図5】従来の燃料タンク取付構造を示す車体の燃料タンク取付部の底面図である。
【図6】従来の燃料タンク取付構造を示す車体の燃料タンク取付部の側面図である。
【図7】図5のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る燃料タンク取付構造を示す車体の燃料タンク取付部の底面図、図2は同車体の燃料タンク取付部の側面図、図3は図1のA−A線断面図であり、内部に燃料を収容した矩形ボックス状の燃料タンク1は、車体(フロアパネル)の後部底面に沿って横方向(図1の上下方向)に配され、車両前後方向(図1及び図2の左右方向)に互いに平行に配された左右2本のタンクバンド3によって車体2に吊り下げ固定されている。
【0021】
ここで、燃料タンク1の底面の左右2箇所には、図3に示すように横断面が逆V字状を成す凹ビード4が車両前後方向に沿って互いに平行に形成されている。つまり、燃料タンク1の底面に形成された凹ビード4は、基本的に左右の斜面で構成され、その断面形状が下方に開口するとともに、上方に行くほど幅が狭くなる逆V字状に形成されている。又、タンクバンド3は、燃料タンク1を下方から支持する支持部3aと、前後端が車体2のフロントクロスメンバ5とリヤクロスメンバ6にそれぞれ取り付けられる取付部3bとで構成されているが、図3に示すように支持部3aの横断面形状は燃料タンク1のビード4の横断面形状に合わせて逆V字状とされている。つまり、燃料タンク1の底面に形成された凹ビード4内に配置されるタンクバンド3の支持部3aは、その横断方向の中央で長手方向に沿った屈曲線(稜線)を有する形状であって、基本的に左右の斜面で構成された逆V字状に形成されている。
【0022】
而して、燃料タンク1の底面に形成された左右の各凹ビード4に左右の各タンクバンド3の支持部3aが図3に示すように嵌め込まれ、横断面形状が共に逆V字状を成す燃料タンク1の凹ビード4とタンクバンド3の支持部3aとが左右の2面(斜面)で密着している。詳細には、内部に燃料を収容した矩形ボックス状の燃料タンク1は、車体(フロアパネル)2の後部床面の下方に床面に沿ってその長手方向を横方向に配され、車両前後方向に配された左右2本のタンクバンド3によって車体2に吊り下げ固定される。そして、車両の床下には、燃料タンク1の車両前方側の床下にフロントクロスメンバ5が配置され、燃料タンク1の車両後方側の床下にリヤクロスメンバ6が配置され、各タンクバンド3の前後端部に形成された取付部3bをボルト7によってフロントクロスメンバ5の下面とリヤクロスメンバ6の下面にそれぞれ取り付けることによって、燃料タンク1が左右2本のタンクバンド3によって吊り下げられた状態で車体2の床面にパッドを介して押し付けられて取付支持される。
【0023】
ところで、本実施の形態では、図3に示すようにタンクバンド3は、ゴム等の弾性体から成る帯状の弾性パッド3Aと金属バンド3Bとを接合して二層構造として構成されており、該タンクバンド3の弾性パッド3Aが燃料タンク1の凹ビード4に接触している。
【0024】
以上のように、本実施の形態では、燃料タンク1の凹ビード4とこれに嵌め込まれるタンクバンド3の支持部3aの横断面形状を逆V字状として両者を異なる2面(斜面)で密着させたため、タンクバンド3と凹ビード4との間に横方向の隙間が発生せず、振動や衝撃による燃料タンク1の横方向の動きが規制されて該燃料タンク1とタンクバンド3との擦れが防がれる。このため、燃料タンク1の塗膜の剥がれ、錆の発生、磨耗、タンクバンド3の磨耗による締付力の低下等の発生が確実に防がれ、燃料タンク1とタンクバンド3の耐久性が高められる。
【0025】
又、燃料タンク1の凹ビード4とタンクバンド3との間に横方向の隙間が発生しないため、燃料タンク1をフロントクロスメンバ5とリヤクロスメンバ6に取り付ける際にタンクバンド3がずれることがなく、燃料タンク1を容易に位置決めして該燃料タンク1を車体2に対して正規の位置に取り付けることができる。そして、タンクバンド3の前後の取付部3bを車体2に取り付ける際、該タンクバンド3の取付部3bとフロントクロスメンバ5とリヤクロスメンバ6の不図示の各取付孔の位置が一致するため、燃料タンク1の組付性が高められる。
【0026】
更に、本実施の形態では、タンクバンド3を弾性パッド3Aと金属バンド3Bとを接合して二層構造として構成し、弾性パッド3Aを燃料タンク1の凹ビード4に接触させるようにしたため、金属同士の接触に伴う燃料タンク1の塗膜の剥がれや異音の発生等が防がれるとともに、タンクバンド3の締付力が高められて燃料タンク1が車体2に確実に固定される。
【0027】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図4に基づいていかに説明する。
【0028】
図4は本発明の実施の形態2に係る燃料タンク取付構造を示す車体の燃料タンク取付部の底面図であり、本図においては図1において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0029】
本実施の形態では、燃料タンク1の底面に形成された左右の凹ビード4とこれらに嵌め込まれる左右のタンクバンド3とを底面視ハの字状に互いに非平行に配置しており、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。詳細には、左右2本のタンクバンド3の前端部の取付部3b(フロントクロスメンバ5へのボルト7による取付部)の間隔と左右2本のタンクバンド3の後端部の取付部3b(リヤクロスメンバ6へのボルト7による取付部)の間隔を異ならせている。本実施の形態では、タンクバンド3の前端部の取付部3bの間隔が後端部の取付部3bの間隔よりも広く設定されている。尚、図2に示すように、フロントクロスメンバ5の下面の方がリヤクロスメンバ6の下面よりも低い位置に形成されている。
【0030】
而して、本実施の形態によれば、燃料タンク1の左右の凹ビード4と左右のタンクバンド3を互いに非平行に配置したため、燃料タンク1の横方向のみならず車両前後方向の動きも規制され、該燃料タンク1とタンクバンド3の擦れが一層確実に防がれて両者の耐久性が更に高められる。その他、本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0031】
1 燃料タンク
2 車体
3 タンクバンド
3A タンクバンドの弾性パッド
3B タンクバンドの金属バンド
3a タンクバンドの支持部
3b タンクバンドの取付部
4 凹ビード
5 フロントクロスメンバ
6 リヤクロスメンバ
7 ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの底面に車両前後方向に沿って形成された凹ビードにタンクバンドを嵌め込み、該タンクバンドの前後端を車体底部に取り付けることによって前記燃料タンクをタンクバンドによって車体に吊り下げ固定する車両の燃料タンク取付構造において、
前記燃料タンクの凹ビードとこれに嵌め込まれる前記タンクバンドの横断面形状を逆V字状とし、両者を密着させたことを特徴とする車両の燃料タンク取付構造。
【請求項2】
前記燃料タンクの凹ビードとこれに嵌め込まれる前記タンクバンドを複数組設け、各組の凹ビードとタンクバンドを互いに非平行に配置したことを特徴とする請求項1記載の車両の燃料タンク取付構造。
【請求項3】
前記タンクバンドを弾性体と金属との二層構造として構成し、該タンクバンドの弾性体を前記燃料タンクの凹ビードに接触させたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の燃料タンク取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18331(P2013−18331A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152491(P2011−152491)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】