説明

車両の物品収納部構造

【課題】自動車が急発進して加速した時に、物品収納部から物品が乗員側に飛び出してくるのを防止できるとともに、物品を乗員から見えなくして車内の外観を向上させることができる構造でありながら、部品点数を少なくすることができ、構造を簡素化でき、製作コストを低廉化できる車両の物品収納部構造を提供する。
【解決手段】センターコンソール部2に、前記センターコンソール部2の左右両側面に開口する物品収納部8を貫通形成してあり、前記物品収納部8を車両後方側から覆う前記センターコンソール部2の車両後方側を向く面を操作パネル面14に構成し、物品収納部8の底部15を下方に凹ませてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の物品収納部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のセンターコンソール部に物品収納部を設けてある車両の物品収納部構造として、従来、特許文献1に開示されているように、センターコンソール部の車両後方側を向く面に開口を形成し、前記開口の周部の裏側に、車両後方側に開口する物品収納ボックスを取り付け、物品収納ボックスの開口を開閉自在な蓋部材を設けた構造があった。
【特許文献1】特許第2780892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構造によれば、自動車が急発進して加速した時に、物品収納部から物品が乗員側に飛び出してくるのを蓋部材で防止でき、さらに、物品を蓋部材で乗員から見えなくして車内の外観を向上させることができるものの、蓋部材を設けたことで部品点数が増加し、構造が複雑化し、製作コストが高くなるという問題があった。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、自動車が急発進して加速した時に、物品収納部から物品が乗員側に飛び出してくるのを防止できるとともに、物品を乗員から見えなくして車内の外観を向上させることができる構造でありながら、部品点数を少なくすることができ、構造を簡素化でき、製作コストを低廉化できる車両の物品収納部構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴は、
センターコンソール部に、前記センターコンソール部の左右両側面のうち少なくとも一方の側面に開口する物品収納部を形成してある点にある。(請求項1)
【0005】
この構成によれば、センターコンソール部に、前記センターコンソール部の左右両側面のうち少なくとも一方の側面に開口する物品収納部を形成してあるから、物品収納部よりも車両後方側のセンターコンソール部分で物品収納部を車両後方側から覆うことができる。その結果、自動車が急発進して加速した時に、物品が乗員側に飛び出してくるのを防止でき、前記センターコンソール部分で物品収納部を隠すことができて車内の外観をよくすることができる。
そして、蓋部材を設けて物品を隠す場合に比べて部品点数を減らすことができ、構造を簡素化でき、製作コストを低廉化できる。しかも、収納した物品の取り出し時や収納時には蓋部材を開け閉めする必要がないことから使い勝手をよくすることができる。(請求項1)
【0006】
本発明において、
前記物品収納部は前記センターコンソール部を車幅方向に貫通して、前記センターコンソール部の左右両側面に開口していると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0007】
物品収納部をセンターコンソール部に車幅方向に沿うように貫通させたことにより、新聞や雑誌などのような乗員の足の邪魔にならない程度の長さの物品なら、これらの物品を車幅方向に沿うように物品収納部に差し込んで収納することができる。(請求項2)
【0008】
本発明において、
車両後方側を向く前記センターコンソール部の壁面の裏側に前記物品収納部を形成し、前記壁面を操作パネル面に構成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0009】
例えば、前記センターコンソール部の壁面に、物品収納部を隠す蓋部材を開閉自在に設けた構造では、前記壁面に操作パネル面を設けることが困難で、操作パネル面を操作しにくい別の箇所に設けなければならないが、本発明の構成によれば、蓋部材を設けることなく前記壁面を操作パネル面に構成してあるから、操作パネル面を、操作しにくい別の箇所に設けなくても済み、各種機器を操作しやすくすることができる。(請求項3)
【0010】
本発明において、
前記物品収納部の底部を下方に凹ませてあると、筆記具・コイン・カード類などの小物を底部に収容することができて、物品収納部から前記小物が落下するのを防止することができる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記物品収納部の底部の底面を開口させて、カーペットで覆われたフロアのセンタートンネル部に前記底部を載置してあると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0012】
カーペットを物品収納部の底敷きとすることができ、物品収納部の底面に一般的に貼られる専用の滑り止めシートを省くことができて、滑り止めシートの貼着作業や滑り止めシートの材料コストを省くことができ、製作コストを低廉化することができる。(請求項5)
【0013】
本発明において、
前記物品収納部を車幅方向視で上窄まりの三角形状に形成してあると、物品収納部をコンパクトに形成することができて、センターコンソール部の強度が低下することを抑制することができる。(請求項6)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、
自動車が急発進して加速した時に、物品収納部から物品が乗員側に飛び出してくるのを防止できるとともに、物品を乗員から見えなくして車内の外観を向上させることができる構造でありながら、部品点数を少なくすることができ、構造を簡素化でき、製作コストを低廉化できる車両の物品収納部構造を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、いずれも樹脂材で成形された自動車のインストルメントパネル1とセンターコンソール部2とを示してある。図2にも示すように、センターコンソール部2は、インストルメントパネル1の車幅方向Wの中央部の下端部から下方に延びる上側コンソール部11と、この上側コンソール部11の下端部から車体のフロア7に沿って車両後方側に延びる下側コンソール部21とから成る。
【0016】
上側コンソール部11は、左右一対の側壁12と、両側壁12の車両後方側の端部同士を連結する縦壁13とを備え、下側コンソール部21は、左右一対の側壁22と、両側壁22の上端部同士を連結する上壁23とを備えている。そして、上側コンソール部11の左側の側壁12と下側コンソール部21の左側の側壁22とが連なり、上側コンソール部11の右側の側壁12と下側コンソール部21の右側の側壁22とが連なっている。上側コンソール部11の縦壁13と下側コンソール部21の上壁23とは円弧状に滑らかに連なっている。
【0017】
図1に示すように、運転者と助手席乗員との間の前方に位置するインストルメントパネル1のセンター部3は車両後方側に膨出している。このセンター部3に、空調の吹き出し口となるルーバー4と、ナビゲーションシステムやオーディオなどの電子機器類5と、エアコンの操作パネル面6とを設けてある。また、図2,図3に示すように、上側コンソール部11の縦壁13の車両後方側を向く壁面と、下側コンソール部21の上壁23の上面とを各種機器用の操作パネル面14に構成し、前記センター部3の操作パネル面6と上側コンソール部11の操作パネル面14とを連続させてある。
【0018】
前記インストルメントパネル1のセンター部3に配置する機器はITの発達や使い勝手の向上により年々増える傾向にあり、センター部3に物品収納部を設けることが困難になっている。そこで、センターコンソール部2に、上側コンソール部11の左右一対の側壁12の側面に開口する物品収納部8を貫通形成してある。
詳しくは、上側コンソール部11の縦壁13の車両後方側を向く壁面(車両後方側を向くセンターコンソール部の壁面に相当)の裏側に物品収納部8を形成してある。前記縦壁13の車両後方側を向く壁面は、上記のように各種機器用の操作パネル面14に構成されている。
【0019】
図2,図3に示すように、この物品収納部8を車幅方向視で上窄まりの三角形状に形成し、操作パネル面14側の物品収納部8の内壁8Nを、車幅方向視で前記操作パネル面14側に凸の緩やかな円弧状に形成してある。
【0020】
物品収納部8の底部15は、四角形の環状の外側底壁部16と、この外側底壁部16に対して下方に凹んだ内側底壁部17とを備えたトレイ状に形成されている。このように、物品収納部8の底部15を下方に凹ませてある。外側底壁部16の上面16Jは車幅方向視で上方に凸の緩やかな円弧状の面に形成されている。
【0021】
図3に示すように、内側底壁部17の底面17Tは水平面に形成されている。内側底壁部17の4個の周壁17Sは下窄まりに形成され、4個の周壁17Sのうち一対の周壁17Sが車幅方向Wに沿い、別の一対の周壁17Sが車両前後方向に沿っている。車幅方向Wに沿う一対の周壁17Sのうち、車両前方側Frの周壁17Sは車両後方側の周壁17Sよりも高さ寸法が高く設定されている。
【0022】
上記の構造により、筆記具・コイン・カード類などの小物を内側底壁部17に収容することができて、物品収納部8から前記小物が落下するのを防止することができる。
また、車両後方側を向く上側コンソール部11の操作パネル面14で物品収納部8を車両後方側から覆うことができる。その結果、自動車が急発進して加速した時に、物品が乗員側に飛び出してくるのを防止でき、前記操作パネル面14で物品収納部8を隠すことができて車内の外観をよくすることができる。また、自動車が急停車して加速が発生した場合、物品収納部8が車両前方側Frから上側コンソール部11の車両前方側Frの部分で覆われているので、物品が車両前方側Frに飛び出すのを防止できる。
そして、蓋部材を設けて物品を隠す場合に比べて部品点数を減らすことができ、構造を簡素化でき、製作コストを低廉化できる。しかも、収納した物品の取り出し時や収納時には蓋部材を開閉する必要がないことから使い勝手をよくすることができる。
【0023】
さらに、物品収納部8をセンターコンソール部2に車幅方向Wに沿うように貫通させたことにより、新聞や雑誌などのような乗員の足の邪魔にならない程度の長さの物品なら、これらの物品を車幅方向Wに沿うように物品収納部8に差し込んで収納することができる。
【0024】
[別実施形態]
図4に示すように、物品収納部8の底部15の底面を開口させて、カーペット19で覆われたフロア7のセンタートンネル部18に前記底部15を載置してあってもよい。この構造では、前記内側底壁部17の底面を開口させて、内側底壁部17の周壁17Sの下端部をカーペット19に載置してある。
【0025】
この構造によれば、カーペット19を物品収納部8の底敷きとすることができ、物品収納部8の底面に一般的に貼られる専用の滑り止めシートを省くことができて、滑り止めシートの貼着作業や材料コストを省くことができ、製作コストを低廉化することができる。
【0026】
本発明は次の(1)や(2)の構造にも適用することができる。
(1) 前記物品収納部8がセンターコンソール部2の左側面又は右側面にのみ開口している構造
(2) 前記物品収納部8がセンターコンソール部2の左右両面に開口しているがセンターコンソール部2を貫通してはいない構造
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インストルメントパネル及びセンターコンソール部の斜視図
【図2】物品収納部の斜視図
【図3】物品収納部の縦断面図
【図4】別実施形態の物品収納部の縦断面図
【符号の説明】
【0028】
2 センターコンソール部
8 物品収納部
14 操作パネル面
15 物品収納部の底部
18 センタートンネル部
19 カーペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターコンソール部に、前記センターコンソール部の左右両側面のうち少なくとも一方の側面に開口する物品収納部を形成してある車両の物品収納部構造。
【請求項2】
前記物品収納部は前記センターコンソール部を車幅方向に貫通して、前記センターコンソール部の左右両側面に開口している請求項1記載の車両の物品収納部構造。
【請求項3】
車両後方側を向く前記センターコンソール部の壁面の裏側に前記物品収納部を形成し、前記壁面を操作パネル面に構成してある請求項1又は2記載の車両の物品収納部構造。
【請求項4】
前記物品収納部の底部を下方に凹ませてある請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両の物品収納部構造。
【請求項5】
前記物品収納部の底部の底面を開口させて、カーペットで覆われたフロアのセンタートンネル部に前記底部を載置してある請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両の物品収納部構造。
【請求項6】
前記物品収納部を車幅方向視で上窄まりの三角形状に形成してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の車両の物品収納部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−143309(P2010−143309A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320603(P2008−320603)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】