説明

車両の荷おろし装置

【課題】クレーンを用いることなく、トラック等の車両に積んだ大型重量荷物を荷おろしする。
【解決手段】車両Aの荷台A1の長手方向に向けて伸縮可能なアーム12と、このアーム12の先端部に連結され荷台A1の幅方向に押圧可能なジャッキ13と、このジャッキ13及びアーム12を駆動する油圧ポンプ11とで油圧ジャッキ機構部1を構成し、ジャッキ13の押し出し力により、スライド機構部2上の荷物B1(B2,B3)を移動(スライド)させて荷おろしする。
上記構成により、クレーン車を用いることなく、大型で重量の重い荷物でも、車両Aから容易にまた安全に荷おろしできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の車両に搭載して運搬した荷物を、荷台からおろすのに好適な車両の荷おろし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受配電設備や自家発電機器等の大型で重量の重い貨物(荷物)をトラック(貨物自動車)に載せて運搬し、輸送先の現場において、その大型で重量の重い貨物を荷台からおろすとき、多くの場合、クレーン付きのレッカー車あるいはクレーンを積んだユニック車が使用され、そのクレーンによる貨物を吊り上げによって荷おろしが行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ユニック車等のいわゆるクレーン車が、トラックの荷台から重量の重い大型貨物の荷おろしを行おうとする際には、転等防止のために、クレーン車には幅方向にアウトリガー(outrigger)が取り付けられる。
【0004】
また、クレーンによる荷おろしでは、クレーンによる貨物(荷物)吊り下げのために、ロープやワイヤによる荷物への玉掛け作業が作業員によって行われる。
【特許文献1】特開2002−332195号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、大型で重量の重い荷物(貨物)のトラック輸送では、搬送先におけるトラックからの荷おろしのために、クレーン車を別途手配するとともに、荷物をクレーンで吊り下げるために、作業員は玉掛け作業を行う必要があった。
【0006】
また、大型で重量の重い荷物のトラック(車両)からの荷おろしにクレーン車を使用するとき、現場において、クレーン車を荷物を積んだトラックにごく接近させて止めることができれば良いが、トラックを道路上に止めて荷おろしを行うような場合には、止めたトラックの近くにクレーン車がアウトリガーを設置できるだけの道路幅が得られない場合もある。
【0007】
つまり、荷物を搬入する建物等が狭い道路に面していて、トラックを建物に横付けできても、クレーン車をトラックから離れた位置に止めざるを得ない場合は、それだけより大型のクレーン車を手配せざるを得ないこととなる。
【0008】
いずれにしても、従来、大型で重量の重い荷物をトラックで運搬し、搬入(輸送)先で荷おろしを行うとき、クレーン車の手配とともに、作業員は高所での玉掛け作業が余儀なくされた。
【0009】
そこで本発明は、クレーン車を使用することなく、また荷物吊り下げのための玉掛け作業を必要とすることなく、大型で重量の重い荷物でも、トラックの荷台から容易に、また安全に荷おろしが可能な車両の荷おろし装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両の荷おろし装置は、車両の荷台に搭載され、車両の荷台の長手方向に向けて伸縮可能なアームと、このアームの先端部に連結され前記車両の荷台の幅方向に押し出し可能なジャッキと、このジャッキ及び前記アームを駆動する油圧ポンプとを備えた油圧ジャッキ機構部と、前記車両の荷台に設置され、前記ジャッキの押し出し力により、載置した荷物を前記荷台の幅方向に移動可能なスライド機構部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両の荷おろし装置は、油圧によるジャッキの押し出し力により、搭載した積荷を荷台の幅方向に移動可能な構成を備え、スライド移動により、荷台上の荷物の荷おろしを可能としたので、クレーン車の手配や作業員による玉掛け作業を必要とすることなく、重量の重い大型貨物(荷物)でも、安全かつ容易に荷おろしできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両の荷おろし装置の一実施例を図1ないし図9を参照して詳細説明する。
【0013】
図1は、この実施例に係る車両の荷おろし装置は、トラック(車両)Aの荷台A1上に装着され、そのトラックAに搭載された受配電設備等の大型で重量の重い荷物(貨物)B1,B2,B3を荷おろしすべく、トラックを搬送先である建屋Cの荷おろし踊り場C1に横付けした状態を示した平面図である。
【0014】
すなわち、図1において、車両の荷おろし装置は、荷台A1上において、トラックAの運転台A2側近くに配置された油圧ジャッキ機構部1と、荷台A1上で荷物B1,B2,B3を載置して支持しつつ、以下詳細説明するように、油圧ジャッキ機構部1の駆動力により、荷物B1,B2,B3を順次、荷台A1の幅方向(矢印X方向)にスライドさせて、建屋Cの踊り場C1上に搬送移動可能なスライド機構部2とで構成されている。
【0015】
なお、通常、車両Aの荷台A1の左右と後方の各縁には、運搬中の荷物の脱落を防ぐための開閉枠が設けられているが、図1以下では説明の簡略化のため、図示を省略している。また、図1は、車両Aは荷物搬送移動先の建屋Cの踊り場C1に横付けされ、その踊り場C1には階段C2が設けられ、トラックAの荷台A1の高さとほぼ同じ高さの踊り場C1に搬送移動された荷物B1,B2,B3は、扉C3が開けられた入り口から建屋C内に運び込まれることを示したものである。
【0016】
図2は、図1に示した車両の荷おろし装置において、荷物B1をトラックAから荷おろしを行うべく、油圧ジャッキ機構部1を作動させ、スライド機構部2に載置された荷物B1をスライド移動させようとしている状態を示した要部拡大平面図である。
【0017】
図2に示したように、油圧ジャッキ機構部1は、油圧ポンプ11aを内蔵した本体11と、油圧ポンプ11aに駆動され、荷台A1の長手方向(図示、矢印Y方向)に向けてその長さ(全長)を伸縮可能なアーム12と、このアーム12の先端部に連結され、同様に油圧ポンプ11aの駆動力を受けて、荷台A1の幅方向(図示、矢印X方向)に押し出し可能なジャッキ13とから構成されている。なお、油圧ポンプ11aを内蔵した本体11には、油圧ポンプ11aのほかに、エンジン発電機、モータ、油圧計、油圧調整弁、油圧調整スイッチ、それにアーム12及びジャッキ13の回転あるいは伸縮操作用のスイッチ等を備えていて、作業員がアーム12及びジャッキ13を駆動操作できるように構成されている。
【0018】
アーム12は多段継手状に形成され、図2のX1−X1矢視断面図を図3に示したように、アーム12自体を駆動する圧油シリンダ部12aと、アーム12の先端部に取り付けられたジャッキ13を駆動する圧油シリンダ部12bの二重ないしは二層構造を有している。
【0019】
従って、アーム12は、油圧ポンプ11aからの圧油により長手方向(図示Y方向)に伸長可能であり、また先端部に取り付けられたジャッキ13は、油圧ポンプ11aからの圧油により、図示矢印X方向への押し出し駆動が可能であり、これらの動作はそれぞれ個別に適宜切替え選択可能に構成されている。
【0020】
一方、スライド機構部2は、車両Aの荷台A1に設置され、ジャッキ13の矢印X方向への押し出し駆動により、載置した各荷物B1,B2,B3を順次、踊り場C1上に搬送移動できるように構成されている。
【0021】
すなわち、図4は、図2に示した荷おろし装置を搭載した車両の下側面図であり、図2及び図4に示したように、ジャッキ13の押し出し駆動により、荷台A1上から矢印X方向に荷おろしされる荷物B1は、荷台A1上のスライド機構部2上に載置されている。
【0022】
荷台A1上に載置されたスライド機構部2は、荷台A1の幅方向(矢印X方向)に長いポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標)・Teflon、以下、テフロン(登録商標)と称する)製の一対の板材21,21が荷台A1の長手方向に間隔をなして載置され、このテフロン(登録商標)製の板材21,21上には、荷物B1を搭載した矩形状の一枚のスライド板22が差し渡されて載置されている。
【0023】
また、スライド板22は、図5に拡大して示したように、テフロン(登録商標)製の板材21に面接触するステンレス鋼製の板材22aと、このステンレス鋼製の板材22aの上で、荷物B1を載置する木製の板部材22bとの貼り合わせで構成されている。
【0024】
従って、図4に示したように、重量の重い荷物B1を載せたスライド板22は、底面において、ステンレス鋼製の板材22aが摩擦抵抗の小さいテフロン(登録商標)製の板材21に面接触しているので、油圧ポンプ11aの作動による、X方向に押し出し伸張したジャッキ13は荷物B1の左側面の押し込み操作により、荷物B1は上のスライド板22とともに容易にまた円滑にスライド(摺動)移動する。なお、板部材22bは合成樹脂板あるいは金属板であっても良い。
【0025】
踊り場C1上には、テフロン(登録商標)製の板材21,21と同じ高さ面を形成するテフロン(登録商標)製の受け板C1aが載置され、スライド板22とともにスライドしつつ荷おろしされる荷物B1は円滑に受け渡される。なお、符号C1bは、載置された受け板C1aの高さ位置と建屋Cの床面の高さ位置とをスロープ形成してつなぐための、同じくテフロン(登録商標)製のスロープ板を示したものである。
【0026】
また、図2及び図4に示したように、ジャッキ13の荷物B1に対する押し出し操作において、ジャッキ13ないしはアーム12の位置が安定し、荷物B1に対する押し出し操作が適正に行われるように、アーム振れ止め機構14が荷台A1上に据え付けられている。
【0027】
すなわち、アーム振れ止め機構14は、図6に示したように、車両Aの荷台A1上面で幅方向に長い板部材本体部14aと、この板部材本体部14aの一端部(図示左端部)に連結され、コ字状に形成されてジャッキ13を捕捉可能な捕捉部14bと、板部材本体部14aの他端部(図示右端部)に連結され車両Aの荷台A1の外側面に当接して、板部材本体部14aのジャッキ13方向(矢印Xの方向とは反対方向)への移動を阻止する係止部14cとで構成されている。板部材本体部14aは鋼板材からなり、捕捉部14bと捕捉部14bと係止部14cは溝形鋼材で構成されている。
【0028】
アーム振れ止め機構14の荷台A1上への据付では、図2及び図4に示したように、板部材本体部14aが、丁度、一対の板材21,21間に位置して並設されるように配置する。
【0029】
そこで、捕捉部14bと板部材本体部14aとは、板部材本体部14aに形成されたねじ穴14aaを介して、ねじ14dによりねじ止め固定される。また、係止部14cと板部材本体部14aとは溶接により固定されている。なお、板部材本体部14aのねじ穴14aaは、車両Aにおける幅の長さの違いに対応して、ジャッキ13位置を調整できるように、幅方向に複数設けられている。なお、板部材本体部14aは、スライド移動するスライド板22との接触や干渉が回避されれば良いので、板部材本体部14aの板厚は、スライド機構部2におけるテフロン(登録商標)製の板材21の板厚よりも小さければ良い。もっとも、スライド板22が一対の板材21,21に対応するように分割されて載置された構成では、板部材本体部14aの板厚は、スライド機構部2全体の高さ(厚さ)よりも薄ければ良い。
【0030】
なお、ジャッキ13の荷物B1に対する押し出し搬送に際し、予め車両A、とりわけ荷台A1の高さ位置が安定し、荷物B1等の荷おろしが円滑に行い得るように、図4に示したように、トラックAの荷台A1は、地面との間で尺角D(あるいは、ジャッキ自体)等により予め支持されている。なお図4おいて、符号A3は、トラック(車両)Aのタイヤを示したものである。
【0031】
上記のように、図2及び図4に示した状態において、油圧ポンプ11aの作動によるジャッキ13による押し出し操作により、スライド板22とともにX方向にスライドしつつ押し出された荷物B1は、図7の平面図、及び図7に示した構成の下側面図である図8に示したように、車両Aの荷台A1上の荷物B1は、建屋Cの踊り場C1上に円滑にまた容易に押し出され荷おろしが行われる。
【0032】
踊り場C1上に搬送された荷物B1は、いわゆるハンドリフターやチルローラーあるいはコロ引き等によりで建屋C内の据付場所等まで移動される。
【0033】
荷物B1の荷おろしが終了し、車両Aの荷台A1上で、次の荷物B2の荷おろしを行うときは、油圧ポンプ11aを一旦停止させ、ジャッキ13の収納、及びジャッキ13位置が次の荷物B2に対応して位置するように、アーム12を収縮させるとともに、尺角Dを一旦取り外し、荷物B2の位置が踊り場C1位置に対応する位置に車両Aを移動させて、尺角Dを取り付けた後、先の荷物B1におけると同様な荷おろし動作が繰り返し行なわれる。
【0034】
同様にして、引き続き荷物B3に対する荷おろし作業終了した後は、アーム12が車両Aの幅方向の軸である回動軸11bを中心に回動可能に構成されていることから、図9の下側面図に示したように、ジャッキ13及びアーム12双方を収納した状態で立設させるとともに、ジャッキ13及びアーム12を、図示しないが、車両Aの車体にバンド等で固定して安定させ、次の荷物の搬送に向けて移動することができる。
【0035】
なお、図9に示したように、油圧ジャッキ機構部1の底部に車輪(キャスター)11cを取り付けたことによって、油圧ジャッキ機構部1を荷台A1上の適宜位置に容易に移動させることができる。
【0036】
また、車両(トラック)による荷物B1,B2,B3の輸送に際し、荷物B1〜B3が荷台A1上での移動を防ぐためには、荷崩れ防止用のラッシング(Lashing)を行うとともに、各荷物B1〜B3の底部と荷台A1との間に、歯止め用の襖(くさび)を差し込み、安定化・固定化を図るのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る車両の荷おろし装置の一実施例を搭載した車両の平面図である。
【図2】図1に示した車両の荷おろし装置が荷おろししようとしている状態を示した拡大平面図である。
【図3】図2のX1−X1矢視拡大断面図である。
【図4】図2の下側面図である。
【図5】図4に示したスライド板の拡大図である。
【図6】図4に示したアーム振れ止め機構の分解斜視図である。
【図7】図1に示した車両の荷おろし装置が荷おろしを行った状態を示した拡大平面図である。
【図8】図7の下側面図である。
【図9】図1に示した車両の荷おろし装置が荷おろしを完了した状態を示した下側面図である。
【符号の説明】
【0038】
A トラック(車両)
A1 荷台
B1,B2,B3 荷物(貨物)
C 建屋
C1 踊り場
C1a 受け板
D 尺角
1 油圧ジャッキ機構部
1a 車輪(キャスター)
11 油圧ポンプ
12 アーム
12a,12b 圧油シリンダ
13 ジャッキ
14 アーム振れ止め機構
14a 板部材本体部
14b 捕捉部
14c 係止部
2 スライド機構部
21 板材(テフロン(登録商標)製)
22 スライド板
22a 板材(ステンレス鋼製)
22b 板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台に搭載され、車両の荷台の長手方向に向けて伸縮可能なアームと、このアームの先端部に連結され前記車両の荷台の幅方向に押し出し可能なジャッキと、このジャッキ及び前記アームを駆動する油圧ポンプとを備えた油圧ジャッキ機構部と、
前記車両の荷台に設置され、前記ジャッキの押し出し力により、載置した荷物を前記荷台の幅方向に移動可能なスライド機構部と
を具備することを特徴とする車両の荷おろし装置。
【請求項2】
前記スライド機構部は、前記車両の荷台上に載置されたポリテトラフルオロエチレン製の板材と、このポリテトラフルオロエチレン製の板材上に載置され前記荷物を搭載可能なスライド板とで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の荷おろし装置。
【請求項3】
前記スライド板は、前記ポリテトラフルオロエチレン製の板材の上面に接するステンレス鋼製の板材と、このステンレス鋼製の板材上面に貼り合わされて前記荷物を載置可能な板部材とで構成されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の荷おろし装置。
【請求項4】
前記アームは、前記車両の幅方向の軸を回動軸として回動可能に構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の車両の荷おろし装置。
【請求項5】
前記油圧ジャッキ機構部は、底部に車輪を取り付けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の車両の荷おろし装置。
【請求項6】
前記車両の荷台上面で幅方向に長くかつ前記スライド機構部の高さよりも板厚の薄い板部材本体部と、この板部材本体部の一端部に連結固定され前記ジャッキを捕捉可能な捕捉部と、前記板部材本体部の他端部に連結され、前記車両の荷台に当接して、前記板部材本体部の前記ジャッキ方向への移動を阻止可能な係止部とを有するアーム振れ止め機構を具備することを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の車両の荷おろし装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−56001(P2008−56001A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233496(P2006−233496)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】