説明

車両の負荷回路

【課題】バッテリ上がりを効率よく回避して、フロントガラス熱線を確実かつ適正に作動させる。
【解決手段】オルタネータ5ないしバッテリ6から電気負荷に電力を供給する車両の負荷回路である。フロントウインドガラスの熱線部材1への通電時には、例えば、リヤガラス熱線2やシートヒータ3等が起動されても、オルタネータ5の発電量が所定の発電量よりも大きい場合にはその通電を拒否し、所定の発電量以下の場合にはその通電量を制限した状態で通電する。通電時間の経過後には、その制限を解除する。外気温度を検知する外気温センサ9を設け、外気温度が所定の基準温度以下の場合に自動的に起動させるようにするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の負荷回路に関し、特にフロントウインドガラスに設けられる熱線部材を制御するための負荷回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リヤウインドガラスやフロントウインドガラスに熱線部材を埋設等して、その曇りや凍結を防ぐ技術(ガラス熱線)が知られている。その熱線部材が消費する電力は他のオーディオ等の電装品と比べて非常に大きいため、ガラス熱線を起動しても、通常はタイマ制御等によって数分で停止するように設定されている。
【0003】
従って、これらガラス熱線を長時間作動させる場合に、繰り返し起動スイッチを操作するのが煩わしく、例えば、起動スイッチの押し時間の違いにより、リヤウインドの熱線部材への通電をタイマーで制御するタイマ動作モードと、連続して通電する連続通電モードとを選択して使用できるようにした負荷回路が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−230614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両に装備された電装品(電気負荷)に電力を供給するオルタネータ(発電機)やバッテリの負担が増加しており、オルタネータの発電が間に合わずに、所謂バッテリ上がりを招くおそれが増えつつある。特に、先のガラス熱線やエアコン、デフロスタ、シートヒータ等の比較的大きな電力を消費する電気負荷が同じタイミングで起動されると、バッテリ上がりを招き易い。
【0005】
その際、シートヒータ等は主に快適性の向上を目的としているため、仮にバッテリが上がって作動できなくなってもさほど大きな支障はない。
【0006】
しかし、ガラス熱線の場合、視界を確保する上で重要な機能を果たしており、必要なときに作動しなくなると安全性に影響を及ぼすおそれがある。特に、フロントウインドガラスに設けられる熱線部材は走行方向の良好な視界を確保するため、なおさらである。
【0007】
また、その利便性も、先の特許文献1では、選択によって連続通電ができるようになってはいるものの、所定時間以上スイッチを押し続けるという面倒な操作が必要な上、連続通電モードを選択した場合にそのまま放置するとバッテリ上がりを招くため、適当なタイミングで停止させなければならないし、他の電気負荷の存在も想定されていないなど、改善の余地があった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリ上がりを効率よく回避して、フロントガラス熱線を必要なときに確実かつ適正に作動できる、安全で、しかも利便性に優れた車両の負荷回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、フロントウインドガラスの熱線部材(フロントガラス熱線)への通電時には、これを最優先させることとし、その他の電気負荷への通電は、発電機の発電量に応じて制御するようにした。
【0010】
すなわち、本発明は、エンジンにより駆動される発電機と、該発電機により充電されるバッテリとを備え、これら発電機ないしバッテリから電気負荷に電力を供給する車両の負荷回路である。そして、フロントウインドガラスに設けられる熱線部材と、上記熱線部材への通電時に、該熱線部材以外の他の電気負荷への通電状態を上記発電機の発電量に応じて制限する通電制御手段と、を備えることを特徴とするものである(請求項1)。
【0011】
かかる構成によれば、フロントガラス熱線を含む車両の電気負荷は、発電機ないしバッテリから電力の供給を受けるが、その際、バッテリは、発電機によりその充填状態に応じて充電される。
【0012】
すなわち、バッテリの残容量(蓄電量)がそれほど減少していなければ、発電機からバッテリへ供給される電力が少なくて発電機の発電量は相対的に小さくて済むが、バッテリの残容量が減少していれば、発電機からバッテリに供給される電力が多くなって相対的に発電機の発電量は大きくなる。
【0013】
そうして、通電制御手段により、フロントガラス熱線と他の電気負荷とが同じタイミングで通電される場合には、フロントガラス熱線への通電状態は確保しながら、その他の電気負荷への通電状態をその発電機の発電量に応じて制限する。そうすることで、過度な電力消費の発生を回避することができ、バッテリ上がりを防止して、フロントガラス熱線を確実かつ適正に作動させることができる。
【0014】
具体的には、発電機の発電量が所定の発電量よりも大きい場合、例えば、バッテリの残容量が減少していて発電機がフルに作動しており、フロントガラス熱線の通電時にこれに加えて他の電気負荷への通電を行うとバッテリ上がりを招くおそれがあるような場合には、他の電気負荷への通電を拒否するようにすればよい(請求項2)。そうすれば、電力消費を効果的に抑制することができ、バッテリの残容量が減少していても、フロントガラス熱線への通電を最優先に作動させることができる。
【0015】
一方、発電機の発電量が所定の発電量以下、例えば、バッテリの残容量も十分にあり、発電機が余力を残して作動しているような場合には、通電量を制限した状態で他の電気負荷を作動させることもできる(請求項3)。
【0016】
この場合は、先と異なり発電機やバッテリの電力供給能力の余力を利用して、他の電気負荷へ通電しながら、フロントガラス熱線への通電を最優先に作動させることができる。
【0017】
また別に、フロントガラス熱線が起動されると、これに通電する所定の通電時間をタイマ手段で計測するようにし、他の電気負荷への通電が制限されている場合には、通電時間が経過してフロントガラス熱線への通電が終了すると他の電気負荷への通電状態の制限を解除するようにしてもよい(請求項4)。
【0018】
そうすれば、まず、フロントガラス熱線が起動されると、タイマ手段によって、所定の通電時間の間はフロントガラス熱線への通電が優先され、その他の電気負荷の通電状態は制限される。そうして、フロントガラス熱線への通電が終了して、フロントガラスの視界が確保されれば、他の電気負荷への通電状態の制限が解除され、自動的に本来の状態で通電が再開される。尚、所定の通電時間は、視界が確保できるように予め任意に設定される。
【0019】
この場合、その他の電気負荷への通電状態の制限の解除は、フロントガラス熱線への通電が終了してから所定の待機時間(例えば、数msec)が経過した後に行うのが好ましい(請求項5)。
【0020】
そうすることで、フロントガラス熱線への通電を終了させる処理と、その他の電気負荷への通電状態の制限の解除、つまり、通電を復帰させる処理とが同時に行われるのを確実に阻止することができ、例えばフロントガラス熱線及びその他の電気負荷へ瞬間的に大電流が流れてヒューズ切れ等が発生するのを防止できる。
【0021】
また、フロントガラス熱線の起動のタイミングは外気の温度と密接に関連しているため(例えば、フロントガラスが凍結するのは、一般に外気の温度が氷点よりも低い場合である)、外気の温度を検知する外気温センサを設け、この外気温センサで検知された外気の温度が所定の基準温度以下の場合に、自動的にフロントガラス熱線を起動させるようしてもよい(請求項6)。
【0022】
そうすれば、フロントウインドウの曇りや凍結が生じ易い所定の基準温度を予め設定しておくことで、操作しなくても、外気の温度がその基準温度になれば、適正なタイミングで自動的にフロントガラス熱線を起動させることができる。
【0023】
ここでいうフロントガラス熱線は、フロントウインドガラスの少なくともワイパーによる払拭範囲の略全域にわたって設けるのが効果的である(請求項7)。
【0024】
この場合、比較的大きな通電量が必要になってバッテリ上がりを招き易いが、上記請求項1〜5の発明のように他の電気負荷の通電状態を制限することで、適正かつ確実に作動させることができ、視界の安全を確保できる。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように本発明によれば、フロントガラス熱線の作動時には、過度な電力消費を防止してバッテリ上がりを回避することができ、フロントガラス熱線を確実かつ適正に作動させて、フロントガラスの曇りや凍結を確実に除去することができる(請求項1)。
【0026】
そして、発電機の発電量が所定の発電量より大きい場合には、他の電気負荷の通電を拒否するようにすることで、消費電力を効果的に抑制することができ、バッテリ上がりを回避しながらフロントガラス熱線を確実かつ適正に作動させることができる(請求項2)。その一方で、発電機の発電量が所定の発電量以下の場合には、他の電気負荷を作動させながら、フロントガラス熱線を確実かつ適正に作動させることができる(請求項3)。
【0027】
他の電気負荷への通電が制限されていても、フロントガラス熱線への通電が終了すれば、その制限を解除することで、フロントガラスの視界の確保を最優先にしながら、他の電気負荷を自動的に本来の通電状態に切り替えることができる(請求項4)。そして、その通電状態の制御の解除を所定の待機時間の経過後に行うようにすれば、ヒューズ切れ等のトラブルの発生を防止して、確実に切り替えることができる(請求項5)。
【0028】
外気温センサを利用して自動的にフロントガラス熱線を起動させることで、その起動操作が大幅に減少して利便性を向上させることができるとともに、フロントガラスの曇りや凍結を適正なタイミングで自動的に排除できるため、安全性を向上させることができる(請求項6)。
【0029】
特に、フロントガラス熱線が、フロントウインドガラスの少なくともワイパーによる払拭範囲の略全域にわたって設けらている場合には、視界の安全を確実に確保することができ、安全性をさらに向上させることができる(請求項7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
(負荷回路の構成)
図1に、本発明の車両の負荷回路の概略的な構成図を示す。この負荷回路は、車両に装備された電装品(電気負荷)の作動を制御する回路であり、本実施形態では、その電気負荷として、フロントガラス熱線1やリヤガラス熱線2、シートヒータ3が備えられている。また、ワイパーの駆動装置も備えられている。
【0032】
フロントガラス熱線1は、フロントガラスが曇りや凍結によって視界が不良になった場合に、加熱してその曇りや凍結を除去するためのものであり、走行方向の視界を確保する上で安全上重要な機能を果たしている。図示しないが、フロントガラス熱線1は、フロントウインドガラスの少なくともワイパによる払拭範囲の略全域に亘って貼設あるいは埋設された抵抗発熱体(熱線)で構成されている。
【0033】
リヤガラス熱線2もリヤウインドガラスに貼設等された熱線で構成されており、リヤガラスの略全域に亘って設けられている。一方、シートヒータ3は、着座した搭乗者を暖めるための公知の加熱装置であり、例えば、各座席の着座面に、貼設あるいは埋設された熱線等によって構成されている。
【0034】
電気負荷には、これら以外にも、例えば、比較的消費電力の小さいルームランプやカーオディオ等の他、比較的消費電力の大きいヘッドランプやデフォッガ、エアコン等も装備されているが、本発明では、主として比較的消費電力の大きい電気負荷(大電流負荷)が対象となるため、その代表として上記電気負荷を例示したものである。ちなみに、オーディオ等の消費電流が数A程度であるのに対し、フロントガラス熱線1の消費電流は約50Aである。
【0035】
その他にも、点火プラグやインジェクタ、制御用の各種電子機器のように車両の運転中は常時電力供給が必要とされるものもあるが、これらは、任意に選択して起動できるものではなく、本発明でいうところの電気負荷の対象外である。
【0036】
上記電気負荷は、オルタネータ5ないしバッテリ6から電力供給を受けて作動する(図1の矢印線a参照)。
【0037】
オルタネータ5は、エンジンの駆動によって発電する公知の3層交流発電機であり、整流器や電圧調整器が内蔵されており、発電された交流電流は直流電流に変換して出力される。
【0038】
バッテリ6は、公知の12V等の車両用の鉛蓄電池である。バッテリ6の端子の近傍には、バッテリ6の充放電電流が検知できる電流センサが接続されており(図示せず)、この電流センサの検出値に基づいて随時変化するバッテリ6の残容量やオルタネータ5の発電量を求めることができる。例えば、バッテリ6は、オルタネータ5からの電力供給によって充電されるが、その際の充電電流の制御は、この電流センサの検出値からバッテリ6の残容量を算出して行うことができる。
【0039】
そのバッテリ6の充電は、バッテリ6とオルタネータ5とが各電気負荷に対して並列に接続されているため、各電気負荷への電力供給とともに行われる。
【0040】
具体的には、エンジンが運転されればオルタネータ5は発電が可能となる。そうして、例えば、満充電等の場合には、オルタネータ5で発電される電力は電気負荷へ供給されてバッテリ6へは殆ど供給されない(充電電流は殆ど流れない)。一方、バッテリ6の残容量が少ない場合には、オルタネータ5は、バッテリ6を充電しながら電気負荷へも電力を供給することとなる上(充電電流が流れる)、そのバッテリ6の残容量が少ないほど、流れる充電電流量も大きくなる。
【0041】
つまり、バッテリ6の残容量が少ない場合にはそれだけ、オルタネータ5の発電量が増えることになる。このオルタネータ5の発電量の変化は、ヒートコントローラ7によって先の電流センサ等のオルタネータ発電信号に基づいて判定される。
【0042】
ヒートコントローラ7は、各電気負荷を総合的に制御しており、これには、出力部としての上記各電気負荷の他、入力部としてのレインセンサー8や外気温センサー9、フロントガラス熱線スイッチ(SW)10、リヤガラス熱線SW11、シートヒータSW12などとともに、パワーコントロールモジュール14、ボディコントロールモジュール15が接続されている。
【0043】
ヒートコントローラ(HC)7は、タイマーやカウンタ機能を有する、CPUやROM等を実装した制御装置であり、例えば車両前方のインストルメントパネルの内部に搭載されている。そして、HC7には、フロントガラス熱線1を含む各電気負荷への通電の制御を行う各種制御プログラムが記憶されており、それに従って後述する制御処理が実行されるようになっている。
【0044】
図2に、HC7が備えるその制御プログラムの構成を表すブロック図を示す。図に示すように、HC7は、フロントガラス熱線1への通電時に他の電気負荷への通電状態を制限する通電制御部7aを有し、それには、通電拒否部7bや、通電量制限部7c、通電制限解除部7d、熱線自動起動部7e、ワイパー制御部7fが含まれている。尚、符号7gはタイマーである。
【0045】
その詳細は後述するが、通電拒否部7bは、他の電気負荷への通電を行わずにその作動を拒否する処理を行い、通電量制限部7cは、通電量を制限した状態で他の電気負荷に通電する処理を行い、通電制限解除部7dは、タイマー7gによるフロントガラス熱線1への通電が終了すると、制限されていた他の電気負荷への通電状態を復帰させる処理を行い、熱線自動起動部7eは、外気温センサー9を利用して自動的にフロントガラス熱線1を起動させる処理を行い、ワイパー制御部7fは、これらに連動してワイパーのオンオフ制御を行う。
【0046】
レインセンサー8は、雨滴を検知する光学反射検知式センサー等の公知のセンサーであり、例えば、フロントウインドの車幅方向中央上部のバックミラー近傍に設置されている。外気温センサー9は、車両外部の温度(外気温)を検知する公知の温度センサーであり、例えば、フロントバンパーの空気取入口の内側に設置されている。フロントガラス熱線SW10、リヤガラス熱線SW11、シートヒータSW12は、それぞれフロントガラス熱線1、リヤガラス熱線2、シートヒータ3を起動または停止するスイッチであり、例えば、車室内前方のインストルメントパネルの運転席側に配設されている。
【0047】
また、本実施形態のシートヒータSW12は、オンオフ時間の比率の変化で平均電流量を制御する公知のデューティ制御機能を備えており、これによってシートヒータ3に供給される電力量を調整して出力できるようになっている。尚、リヤガラス熱線2やその他の電気負荷もデューティー制御機能を備えて、その通電量が調整可能にしておくとよい。
【0048】
パワーコントロールモジュール(PCM)14は主として駆動系統を制御するための制御装置であり、また、ボディコントロールモジュール(BCM)15は車体系統を制御するための制御装置である。いずれもHC7と多重通信可能に接続されている。ここでは、PCM14を介して車速や、エンジンの始動、オルタネータ5の発電量等の情報がHC7との間で送受信され、BCM15を介してワイパーのオンオフ信号等の情報がHC7との間で送受信される。尚、BCM15には、ワイパーSW20やワイパーモータ21などが接続されているが、これらワイパー機構の詳細については後述する。
【0049】
ところで、先にバッテリ6はオルタネータ5によって充電されることを説明したが、そのバッテリ6の充電は、鉛蓄電池の構造上、いったんバッテリ6の残容量が大きく減少すると充電に時間がかかるという特性がある。従って、バッテリ6の残容量が減少している場合に、例えば、フロントガラス熱線1やシートヒータ3などの大電流負荷が同じタイミングで作動されると、オルタネータ5の発電が間に合わずに、バッテリ6が上がって、フロントガラス熱線1等が作動しなくなるおそれがある。
【0050】
しかし、フロントガラス熱線1は、走行方向の良好な視野を確保するという、安全上も極めて重要な機能を果たしているため、これへの通電を最優先にして、効率よく他の電気負荷の通電状態を制限し、バッテリ上がりを回避できるようにしたものである(通電制御手段)。以下、その制御の流れについて説明する。
【0051】
(負荷回路の制御)
図3は、その図1に示した負荷回路の制御のフローチャートであり、本実施形態では、車両の運転を開始する段階の制御例を示している。以下、このフローチャートに沿って制御の構成を説明する。
【0052】
まず、車両のイグニッションスイッチがオンされると(ステップS1:IG−SW ON)、バッテリ6からの電力供給によってスタータ(図示せず)が起動され、エンジンの始動が行われる。エンジンが始動すると、それに伴ってオルタネータ5も駆動され、発電可能な状態となる。そうして車両の運転中は、バッテリ6ないしオルタネータ5から車両の各電気負荷に対して電力が供給されることとなる。
【0053】
その際、フロントウインドガラスが凍結や積雪によって視界が得られず、走行できない場合がある。その場合には、まず、フロントウインドの視界を確保するために、フロントガラス熱線SW10をオンにしてフロントガラス熱線1を起動する(ステップS2)。それと同時に熱線タイマー(タイマー)7gもスタートする。
【0054】
すなわち、HC7には、フロントガラス熱線1の通電時間を制御する熱線タイマー7gが備えられており、フロントガラス熱線SW10をオンにすることによって制御リレー1aの接点がオンにされてフロントガラス熱線1への通電が行われるとともに、熱線タイマー7gが作動して、例えば、5分等の予め設定された所定時間が経過すると、制御リレー1aの接点がオフにされてフロントガラス熱線1への通電が終了するようになっている。
【0055】
そして、そのフロントガラス熱線1の作動中に、他の大電流負荷(ここでは、シートヒータ3、リヤガラス熱線2とする)の負荷SW(シートヒータSW12、リヤガラス熱線SW11)が起動されると(ステップS3:負荷SW ON)、HC7によってそのときのオルタネータ5の発電量に基づいてシートヒータ3及びリヤガラス熱線2の通電の制限が行われる(ステップS4)。
【0056】
すなわち、電流センサの検出値等のオルタネータ発電信号がPCM14を介してHC7に定期的に送信されており(図1参照)、HC7は、それをモニターすることによって変化するオルタネータ5の発電量を必要に応じて知ることができる。
【0057】
そうして、その発電量が、所定の発電量と比較され、所定の発電量よりも大きい場合には(ステップS4で大)、HC7は、シートヒータSW12及びリヤガラス熱線SW11を起動するオン信号が入力されても、その作動は拒否して通電を行わない(ステップS5)。
【0058】
一方、その所定の発電量以下である場合には(ステップS4で小)、HC7は、例えば本来の通電量に対して50%の通電量で通電する等、バッテリ上がりを招くおそれのない範囲で通電量を制限して、シートヒータ3及びリヤガラス熱線2を作動させる(ステップS6)。
【0059】
このとき、例えば、デューティ制御機能を備えるシートヒータ3について通電量を制限して通電し、リヤガラス熱線2については通電を停止する等、その制限の内容は、対象となる電気負荷の能力に応じて適宜選択して適用すればよい。
【0060】
尚、ここでいう所定の発電量とは、例えば、バッテリ6の残容量が減少していて、発電機からバッテリ6に比較的大きな充電電流が流れており、起動されたシートヒータ3等に通電するとフロントガラス熱線1の通電中にバッテリ上がりを招く可能性のある発電量とすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、所定の発電量は1つとしたが、例えば、通電量を制限した状態で通電するか否かを判定する所定の発電量は、その対象となる電気負荷の機能がある程度得られる状態で通電できる発電量の範囲に絞って両者を別々に設定してもよい。これら所定の発電量は、HC7に予め設定される。
【0062】
そうして、熱線タイマー7gが停止して通電時間が経過すると、フロントガラス熱線1への通電が終了し(ステップS7)、それにあわせてシートヒータ3やリヤガラス熱線2の通電状態の制限が解除され、本来の通電状態に復帰する。
【0063】
このとき、図4に示すように、シートヒータ3等の通電状態の制限の解除をフロントガラス熱線1の通電が終了してから数msec程度の所定の待機時間t1を経過した後に行う(ステップS8)。こうすることで、フロントガラス熱線1とシートヒータ3等との同時通電状態が生じて瞬時に大電流が流れてヒューズ切れ等のトラブルが発生することを確実に回避することができるからである。尚、図4は、シートヒータ3等の作動が拒否された場合におけるフロントガラス熱線1等のオンオフ状態の時間的変化を示している。
【0064】
このように、オルタネータ5の発電状況に応じて負荷回路の制御が行われるため、同じタイミングで他の電気負荷が起動されても、バッテリ上がりを効率よく回避して、フロントウインドの視界を確実に確保することができ、トラブルなく車両の運転を開始させることができる。
【0065】
その後も、車両の走行中に降雪や氷点以下での降雨等があると、フロントウインドの視界が不良になる場合がある。このとき、その都度フロントガラス熱線SW10を操作するのは煩わしいため、外気温センサー9等の利用によりフロントガラス熱線1が自動的に起動するようになっている。
【0066】
すなわち、HC7には熱線自動起動条件が設定されており、HC7に定期的に入力される外気温等の情報と比較してその熱線自動起動条件が満たされると自動的にフロントガラス熱線1が起動する(ステップS9)。
【0067】
その熱線自動起動条件とは、フロントウインドガラスが凍結等して視界不良となり易い条件であり、その条件としては、例えば、車両の外部の温度(外気温)が0℃以下(基準温度)であることや、車速が0Km/hを超えること(走行状態にある)、レインセンサー8がオンされたこと(雨滴が検知)などが挙げられる。なかでも、外気温が0℃以下、つまり氷点以下であることは、フロントガラスを加熱するフロントガラス熱線1の特性上、熱線自動起動条件に最適と考える。
【0068】
本実施形態では、上記全ての熱線自動起動条件が満たされた場合に(ステップS9でYES)、フロントガラス熱線1が最優先され、各電気負荷が確実かつ適正に作動するように自動制御されている。
【0069】
まず、バッテリ上がりを回避するために、HC7によってその時点の発電量が所定の発電量と比較され(ステップS10)、その発電量が所定の発電量よりも大きい場合(ステップS10で大)、シートヒータ3及びリヤガラス熱線2の通電が拒否され(ステップS11)、その発電量が所定の発電量以下の場合(ステップS10で小)、シートヒータ3及びリヤガラス熱線2が通電量を制限した状態で通電される(ステップS12)。尚、これらステップS10〜ステップS12の内容は先のステップS4〜ステップS6と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0070】
そして、シートヒータ3及びリヤガラス熱線2の通電状態が制限された後、フロントガラス熱線SW10が自動的に起動されるとともに、熱線タイマー7gがスタートして所定の通電時間、フロントガラス熱線1に通電される(ステップS13)。また、その際にも、所定の待機時間t2が経過した後にフロントガラス熱線1が起動されるようになっており、同時通電による大電流が発生しないように構成されている(図4参照)。
【0071】
尚、上記一連の処理のうち、主として、ステップS2〜ステップS13の処理が通電制御部7aの処理に相当し、ステップS4、S5及びステップS10,S11が通電拒否部7bの処理に相当し、ステップS4、S6及びステップS10、S12が通電量制限部7cの処理に相当し、ステップS7、S8が通電制限解除部7dの処理に相当し、ステップS9〜ステップS13が熱線自動起動部7eの処理に相当している。
【0072】
ところで、フロントウインドガラスを払拭するためのワイパーのワイパーブレード(図示しないが、フロントウインドガラスの外表面に密着するように装備されている)が、凍結によってフロントウインドガラスに固着する場合がある。その状態でワイパーを駆動させると、固着したワイパーブレードが破損するおそれがある。また、フロントウインドに大量の雪が積もっている場合にもワイパーを駆動させると、ワイパーモータに過剰な負荷がかかって故障を招くおそれがある。
【0073】
そこで、本実施形態では、更にこれらトラブルを回避するための制御手段が備えられている。
【0074】
すなわち、図1に示すように、BCM15には、ワイパー機構を構成するワイパーSW20やワイパーモータ21が接続されている。ワイパーSW20はワイパーを起動または停止操作するスイッチであり、ワイパーモータ21は、ワイパーを揺動駆動するモータである。
【0075】
そして、このワイパーSW20をオンにすると、BCM15を介してワイパーモータ21が駆動されてワイパーが揺動し、ワイパーSW20をオフにするとその駆動が停止するようになっているが、先に説明したように、HC7にはワイパー制御部7fが備えられており、このワイパーSW20のオンオフ操作がHC7によって制御されている。以下、このワイパー制御部7fの処理について、図5のフローチャートに沿って説明する。
【0076】
例えば、車両の運転を開始する際、フロントウインドガラスの視界を確保しようとして、ワイパーSW20がオンにされると(ステップS51)、そのオン信号がHC7に送信される。そうすると、HC7は、所定のワイパー不作動条件を満たすか否かを判定する(ステップS51)。
【0077】
ここでワイパー不作動条件とは、先に説明したような凍結や積雪によってワイパー機構が破損するトラブルを回避するための条件であり、本実施形態では、外気の温度が0℃(基準温度)以下であること、及び車速が0Km/hであること(車両が停止状態にある)をワイパー不作動条件としている。その理由は、ワイパーブレードが凍結等し易いのは外気温度が氷点以下の場合であり、車速が0Km/hとしたのは安全を考慮したためである。
【0078】
そして、このワイパー不作動条件が満たされる場合には(ステップS52でYES)、HC7によって、ワイパーSW20をオフにするワイパーSWオフ信号がBCM15に送信され、ワイパーSW20の起動操作にかかわらず、ワイパーモータ21の駆動が強制的に停止され、その状態が保持される。
【0079】
このワイパーの制御は、フロントガラス熱線1の通電制御と連動しており、この保持された強制停止状態は、フロントガラス熱線1の起動後に解除される。
【0080】
すなわち、熱線タイマー7gが停止してフロントガラス熱線1への通電が終了して所定の通電時間及び待機時間t1が経過すると(ステップS7,S8)、HC7によってワイパーの強制停止状態が解除されてワイパーモータ21が駆動し、ワイパーが作動する(ステップS54)。
【0081】
このときには、フロントガラス熱線1への通電によってフロントウインドガラスの凍結等が適正に除去されているため、ワイパーブレードを破損したり、ワイパーモータに過剰な負荷が加わるおそれがない。すなわち、ワイパーを適正に作動させることができ、フロントガラス熱線1の機能と相俟ってフロントウインドガラスの視界を良好に確保することができる。
【0082】
以上、説明したように、本発明の負荷回路によれば、バッテリ上がりが効率よく回避できるとともに、フロントガラス熱線1を確実かつ適正に作動させてフロントウインドガラスの視界を確実に確保することができる。
【0083】
なお、本発明にかかる車両の負荷回路は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0084】
例えば、イグニッションSWがオンされてエンジンが始動すれば、フロントガラス熱線SW10がオンにされなくとも、所定の熱線自動起動条件が満たされれば自動的に通電制御を行うようにしてあってもよい。
【0085】
上記実施形態では、通電拒否及び通電量制限を含む通電制御を示したが、もちろん、いずれか1つのみを含む通電制御の形態であってもよい。
【0086】
フロントガラス熱線1は、凍結によるワイパの固着防止用として、フロントウインド下部のワイパブレードの停止位置にのみ設けるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の車両の負荷回路を示す概略的な構成図である。
【図2】制御プログラムの構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図1の車両の負荷回路における制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】待機時間を説明するための図である。
【図5】ワイパー制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1 フロントガラス熱線
2 リヤガラス熱線
3 シートヒータ
7 ヒートコントローラ
7a 通電制御部(通電制御手段)
7b 通電拒否部(通電拒否手段)
7c 通電量制限部(通電量制限手段)
7d 通電制限解除部(通電制限解除手段)
7e 熱線自動起動部(熱線自動起動手段)
7g タイマー(タイマー手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される発電機と、該発電機により充電されるバッテリとを備え、これら発電機ないしバッテリから電気負荷に電力を供給する車両の負荷回路であって、
フロントウインドガラスに設けられる熱線部材と、
上記熱線部材への通電時に、該熱線部材以外の他の電気負荷への通電状態を上記発電機の発電量に応じて制限する通電制御手段と、を備えていることを特徴とする車両の負荷回路。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の負荷回路において、
上記通電制御手段が、発電機の発電量が所定の発電量よりも大きい場合に、上記他の電気負荷への通電を拒否する通電拒否手段を含んでいることを特徴とする車両の負荷回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の負荷回路において、
上記通電制御手段が、上記発電機の発電量が所定の発電量以下の場合に、通電量を制限した状態で上記他の電気負荷に通電する通電量制限手段を含んでいることを特徴とする車両の負荷回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の負荷回路において、
上記通電制御手段は、
上記熱線部材が起動されると、これに通電する所定の通電時間を計測するタイマ手段と、
他の電気負荷への通電が制限されている場合には、通電時間が経過して上記熱線部材への通電が終了すると、上記他の電気負荷への通電状態の制限を解除する通電制限解除手段とを含んでいることを特徴とする車両の負荷回路。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の負荷回路において、
上記電気負荷への通電状態の制限の解除が、上記熱線部材への通電が終了してから所定の待機時間を経過した後に行われることを特徴とする車両の負荷回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両の負荷回路において、
外気の温度を検知する外気温センサが設けられ、
上記通電制御手段は、外気温センサで検知された外気の温度が所定の基準温度以下の場合に、自動的に上記熱線部材を起動させる熱線自動起動手段を備えていることを特徴とする車両の負荷回路。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両の負荷回路において、
上記熱線部材が、フロントウインドガラスの少なくともワイパーによる払拭範囲の略全域にわたって設けられていることを特徴とする車両の負荷回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−46028(P2009−46028A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214445(P2007−214445)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】