説明

車両シート用ヘッドレスト

本発明は、固定支持部(3)と、それに対して変位されて、レバーシステム(12、13)を介して支持部(3)に取り付けられる衝撃要素(5)とを含む車両シート用ヘッドレスト(1)に関する。本発明によると、レバーシステム(12、13)は、少なくとも部分的に連動せず、衝撃要素(5)と支持部(3)との間で異なる動作シーケンスが可能となるように供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に従って、固定支持部と、固定支持部に対して可動な衝撃要素とを有する車両シート用ヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイプのヘッドレストが、特許文献1から知られている。公知のヘッドレストは、固定支持部と、固定支持部に対して可動な衝撃要素とによって特徴づけられる。支持部及び衝撃要素は、四節回転機構を形成する上部及び下部レバーを介して互いに接続される。固定支持部に対する衝撃要素の動きは、レバーの旋回によって、従って四節回転機構が作動することによって起こる。公知のヘッドレストの場合、固定支持部に対する衝撃要素の旋回は、2つの異なる状況において起こる。第1に、衝撃要素を前方に引っ張ることによって、快適性を得るために頭とヘッドレストとの間を所望の距離に設定できる。このために、四節回転機構をロックし、このロックによって衝撃要素が設定されると、その位置に衝撃要素を保つロック装置が提供される。第2に、衝撃要素の動きは、衝突によって誘発されたときに起こる。この動作は、前述の四節回転機構を介しても起こる。快適性のための調節は手動で行われるのに対し、衝突時の調節は駆動機構の助けによって行われる。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102 02 598A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、固定支持部と、固定支持部に対して可動な衝撃要素とを有する車両シート用ヘッドレストであって、ヘッドレストがより簡単に、従ってよりコスト効率的な方法で製造されるヘッドレストを提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
従って、本発明による解決方法は、衝撃要素と支持部との間に備えられているレバーシステムが、少なくとも部分的に連動しないことによって特徴づけられる。先行技術との比較において、この特徴により、支持部と衝撃要素との間に異なる動作シーケンスを実行することが可能となる。このことは、固定支持部に対する衝撃要素の動作が起こる理由毎に応じて、異なる動作シーケンスを実現できるという利点をもたらす。作動理由毎に応じた動作シーケンスが独立していることによって、各動作シーケンスを別々に設定することが可能となり、従って各作動状況に理想的な動作シーケンスを提供することが可能となる。これに加えて、2つの異なるロックシステムを省略することができる。
【0007】
実施形態によれば、衝撃要素は、少なくとも1つの下部レバーと1つの上部レバーを介して支持部に取り付けられる。2つのレバーを介した接続は、事故の時に衝撃要素に作用する力を吸収するために、十分にしっかりと設計される単純なレバーシステムを構成する。
【0008】
低部及び上部にそれぞれレバー対を備え、その結果、可動衝撃要素の取り付けがより安定することが考えられる。レバー対の使用は、従って固定支持構成部品への衝撃要素のしっかりした、従って確実な取り付けを支持する。上部及び下部レバーは、固定支持部と可動衝撃要素の両方に、いずれの場合も旋回可能に取り付けられるので、いずれの場合も四節回転機構を形成する。
【0009】
実施形態によれば、四節回転機構のヒンジ点は変位可能に取り付けられる。四節回転機構のヒンジ点を変位可能に取り付けると、四節回転機構を分離することが可能となり、従って同じレバー配置によって異なる動作シーケンスを実現することが可能となる。変位可能に取り付けられた四節回転機構のヒンジ点がロックされると、動作シーケンスは四節回転機構におけるレバーの旋回を特徴とするので、固定支持部に対する衝撃要素の動作は、旋回動作と並進動作の組み合わせによって特徴づけられる。いずれの場合もレバーの配置に応じ、それによって衝撃要素は前方、すなわち、自動車乗員の頭の方向に変位され、下方又は上方にも変位される。変位可能に取り付けられた四節回転機構のヒンジ点のロックが解かれると、それとは異なる動作シーケンスが生じ、それは、ヒンジ点の周りで衝撃板とともに少なくとも1つのレバーが旋回することによって特徴づけられる。このタイプの動作によって、自動車乗員の頭に対する衝撃要素の距離と、衝撃要素の傾斜の両方を設定することが可能となる。
【0010】
変位可能に取り付けられたヒンジ点を、細長い穴に取り付けられるボルトとして設計できる。取り付けの際にヒンジ点をロックする可能性を実現するために、ボルトは細長い穴に押し込まれる。その結果、細長い穴はボルトに対する規定の摩擦値を上げる。細長い穴の中でヒンジ点を調節するためには、まず最小限の力を越えなければならない。この配置によって、簡単で、材料を節減できる方法で製造できるという利点がもたらされる。取り付けにおいてヒンジ点のロックが簡単に可能となる。
【0011】
異なる状況において衝撃要素を動かすために、異なる動作シーケンスを実現できる。例えば、衝撃要素は、正常位置から保護位置へ移動される。本発明の文脈内では、保護位置は、事故の際に自動車乗員を負傷しないように保護するために衝撃要素がとる位置のことを意味する。保護位置は、ここでは、保護位置によって事故の際に自動車乗員の頭が後ろに揺れないようして、負傷しないようにすることであると定義される。
【0012】
正常位置から保護位置への移動は、四節回転機構を介して起こり得る。四節回転機構を介する旋回によって、固定支持部に対する衝撃要素の、確実で、特に前もって定められる変位が可能であるという利点がもたらされる。
【0013】
別の実施形態によれば、衝撃要素は、快適性を得るためにその正常位置に調節される。この場合、調節は分離された四節回転機構を介して起こり得る。例えば、快適性調節は、変位可能に取り付けられた四節回転機構のヒンジ点の変位を介して起こり得る。この場合、請求項5と併せて記述された動作シーケンスが生じる。
【0014】
別の有利な改良は、従属請求項からさらに得られる。
【0015】
本発明は、図に示される、例示された実施形態を参照して下記に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1はヘッドレスト1を示す。ヘッドレスト1は、ヘッドレストロッド2を介してシートに留められる(図示せず)。ヘッドレスト1は、ヘッドレストロッド2に接続される支持部3を有する。支持部3は軸受点4を有する。さらに、衝撃要素5が設けられている。
【0017】
衝撃要素5は、支持体6と、接続ウェブ7を介して支持体6に接続されるクッション8とを含む。支持体6には、ヒンジ点のための軸受け9、11が同様に設けられている。衝撃要素5は、上部レバー12と下部レバー13を介して支持部3に接続されている。レバー12は、支持部3の上部軸受け4から衝撃要素5の上部軸受け9まで延びる。レバー13は、支持部3の下部軸受け4から衝撃要素5の下部軸受け11まで延びる。軸受けは、例えば、ボルトからなる回転継手を収容する。
【0018】
1つの上部レバー12と1つの下部レバー13のみをいずれの場合も図に示してある。しかしながら、上部及び低部にそれぞれレバー対が設けられることも考えられる。図示されるレバー12及び13のみを以下で説明する。
【0019】
衝撃要素5の下部軸受け11は、細長い穴の形状をしていることに特徴づけられる。この細長い穴には、下部レバー13の下部接合部を形成するボルト15を取り付ける。この細長い穴によって、軸受け11のボルト15を、すなわち衝撃要素5に対して変位させることが可能である。軸受け4及び9の残りのヒンジ点は定位置として設計される。ヒンジ点を形成するボルトは、変位可能には取り付けられない。
【0020】
以下に、本発明によるヘッドレストの機能をより詳細に説明する。
【0021】
固定支持部3と可動衝撃要素5を接続するレバーシステム12、13が本発明により連動しないおかげで、可動衝撃要素5は異なる動作シーケンスを実施できる。1つの動作シーケンスは、自動車乗員が快適性を得るためにヘッドレストを調節する場合に実施される。他の動作シーケンスは、事故の際に、ヘッドレスト1がその正常位置から保護位置へ移動される場合に実施される。
【0022】
快適性のための調節については、はじめに以下に説明する。自動車乗員が快適性を得るために衝撃要素5を調節したい場合、乗員は図1の矢印Aの方向に力を加えることで調節できる。このように力が加えられると、上部レバー12によって固定支持部3の上部ヒンジ点4の周りで衝撃要素5が回転される。このタイプの回転運動の最大調節距離は、細長い穴11の長さによって予め定められる。例示された実施形態においては、最大調節角度は図に示される角度αに一致する。快適性調節は、上部レバー12の回転軸4の周りでの旋回から生じる傾斜調節である。このために、細長い穴11は湾曲した設計であり、その半径は上部の回転軸4からの距離に一致する。ボルト15は、好ましくは細長い穴11に押し込まれ、その結果、細長い穴11の中で、ボルト15の動作に対して規定の摩擦値を上げるため、前記摩擦値によって任意の位置に衝撃要素5をロックすることができ、従って衝撃要素5を無限に可変に設定することができる。もちろん、下部レバー13に対する衝撃要素5のロックの、他の任意の形態も考えられる。細長い穴11は輪郭を付けた設計であってもよく、又はその壁は凹凸を付けた設計でもよいので、段階的な調節やラッチ調節が可能となる。快適性のための調節は、駆動機構、例えば電気モータの助けによって行われてもよい。
【0023】
先行技術から知られるように、衝突の際には、ヒンジ点4の周りでレバー12、13が同時に旋回することによって衝撃要素5の変位が起こる。この場合、衝撃要素5は前方か上方に旋回する。旋回は、衝撃要素5のために設定された傾斜とは無関係に起こり得る。このような使用状況のために、一般的なロックは設けられる。使用される駆動機構は、例えば、プレストレスされたバネでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるヘッドレストの正常位置における断面図を示す。
【図2】図1による、快適性のために調節された正常位置における断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定支持部(3)と、該固定支持部に対して可動な衝撃要素(5)とを備え、前記衝撃要素(5)はレバーシステム(12、13)を介して前記支持部(3)に取り付けられる、車両シート用ヘッドレスト(1)であって、
前記レバーシステム(12、13)は少なくとも部分的に連動せず、衝撃要素(5)と支持部(3)との間の異なる動作シーケンスを可能とすることを特徴とするヘッドレスト(1)。
【請求項2】
前記衝撃要素(5)が、少なくとも1つの下部レバー(13)と1つの上部レバー(12)を介して前記支持部(3)に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記衝撃要素(5)が、少なくとも1つの下部レバー対(13)と1つの上部レバー対(12)を介して前記支持部(3)に取り付けられることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記上部レバー(12)及び下部レバー(13)が、いずれの場合も四節回転機構を形成することを特徴とする請求項2あるいは3に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記四節回転機構のヒンジ点(15)が変位可能に取り付けられることを特徴とする請求項4に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記ヒンジ点(15)がボルトとして設計されることを特徴とする請求項5に記載のヘッドレスト。
【請求項7】
前記ボルト(15)が細長い穴(11)に取り付けられることを特徴とする請求項6に記載のヘッドレスト。
【請求項8】
前記ボルト(15)が前記細長い穴(11)に押し込まれることを特徴とする請求項7に記載のヘッドレスト。
【請求項9】
前記衝撃要素(5)が正常位置から保護位置へ移動されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項10】
前記正常位置から前記保護位置への移動が、前記四節回転機構を介して起こることを特徴とする請求項9に記載のヘッドレスト。
【請求項11】
前記衝撃要素(5)が、快適性を得るためにその正常位置が調節されるように設計されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項12】
快適性調節が、変位可能に取り付けられた前記四節回転機構のヒンジ点(15)の変位を介して行われることを特徴とする請求項11に記載のヘッドレスト。
【請求項13】
前記快適性調節の間、前記衝撃要素(5)が少なくとも1つのレバーによって前記四節回転機構のヒンジ点(4)の周りで旋回されることを特徴とする請求項11あるいは12に記載のヘッドレスト。
【請求項14】
前記快適性調節の間、前記衝撃要素(5)が前記上部レバー(12)によって上部ヒンジ点(4)の周りで旋回されるとともに、前記ボルト(15)が前記細長い穴(11)の中で変位されることを特徴とする請求項13に記載のヘッドレスト。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−508976(P2007−508976A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534640(P2006−534640)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011095
【国際公開番号】WO2005/035304
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】