説明

車両ホイールの製造方法

【課題】 軽量の車両ホイールを安価に提供する。
【解決手段】
鋳造工程で用いられる鋳型は、上下に対向して配置された第1、第2型51,52と、複数に分割された横型53とを備え、横型の各々はその内周の全長にわたって突出した円弧状の鍔部53xを有している。鋳造工程では、型締め状態にある鋳型の成形用キャビティ55に溶湯を充填することにより、少なくともディスク10を有するプリフォーム1Aを鋳造し、この際、上記第1型51と横型53の鍔部53xとの間で、互いに周方向に離れて放射状に配置された第1スポーク部12aを成形し、上記第2型52と鍔部53xとの間で、互いに周方向に離れて放射状に配置された第2スポーク部12bを成形し、上記横型53の鍔部53xが成形用キャビティ55の一部を埋めることにより、上記プリフォーム1Aに円環状の鋳抜き空間を形成し、この鋳抜き空間を介して上記第1、第2スポーク部12a,12bを軸方向に離す。上記後工程では、上記鋳抜き空間の径方向外側の開口を塞ぐようにして、リムを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量の車両ホイールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された軽金属製車両ホイールのディスクは、中央のハブ取付部と、ハブ取付部から放射状に配置された複数の中空スポークとを有している。
【0003】
特許公報1の車両ホイールの中空スポークは、外見上は1本のスポークである。すなわち、各スポークは空洞を囲む周壁を有している。この周壁は、ホイール軸方向に対向する壁部分と、周方向に対向する側壁部分とを有している。スポークの空洞はこれら側壁部分により飾り穴から遮断されている。
【0004】
特許公報1の図3および段落0025には、上記車両ホイールの製造方法の一例が開示されている。詳述すると、最初に車両ホイールのプリフォームを鋳造する。このプリフォームはディスクとリム原形部とリムの第1フランジ部とを有する。リム原形部と第1フランジ部との間には環状のギャップが形成されている。このプリフォームのディスクは、最終製品に近い形状をなしており、上記ハブ取付部と複数の中空スポークとを有している。
【0005】
上記プリフォームに環状のビードシート部材を装填する。すなわち、ビードシート部材をリム原形部を通過させて上記ギャップを塞ぐように位置させ、その一端周縁を上記第1フランジ部に溶接し、他端周縁をリム原形部に溶接する。これにより、上記第1フランジ部に隣接する第1ビードシート部を得る。この第1ビードシート部により上記スポークの空洞が塞がれることになる。この溶接の後で、上記リム原形部を成形してリム他端側の第2フランジ部と第2ビードシート部を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−502525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の車両ホイールでは、スポークの空洞を囲う周壁のうち軸方向に対向する壁部分はスポークの断面二次モーメントに大きく寄与するものの、周方向に対向する側壁部分は大きく寄与しない。
そのため、特許文献1のスポーク構造は、高い強度を保持しつつ軽量化を図るための最善の構造ではない。
【0008】
特許文献1には図3に示すプリフォームの鋳造方法について詳細な記述はないが、スポークの空洞の形状から、消失型鋳造法を採用しているものと推測できる。しかし、この方法では生産効率が悪い。
スポークの空洞形状を工夫すれば、次の鋳造法を採用することも考えられる。すなわち、鋳型は下型と上型と複数に分割された横型を有しており、横型にはスポークに対応して放射状に入子が装備される。鋳造時に入子を下型と上型との間に配置し、鋳造後に入子を後退させる。これによりスポークに空洞を形成することができる。しかし、この鋳型構造は複雑であるとともに、入子の出し入れ作業を必要とするので生産性も低い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、鋳造工程と、後工程とを備えた車両ホイールの製造方法において、上記鋳造工程で用いられる鋳型は、上下に対向して配置された第1、第2型と、複数に分割された横型とを備え、上記横型の各々はその内周の全長にわたって突出した円弧状の鍔部を有し、上記鋳造工程では、型締め状態にある鋳型の成形用キャビティに溶湯を充填することにより、少なくともディスクを有するプリフォームを鋳造し、この際、上記第1型と横型の鍔部との間で、互いに周方向に離れて放射状に配置された第1スポーク部を成形し、上記第2型と鍔部との間で、互いに周方向に離れて放射状に配置された第2スポーク部を成形し、上記横型の鍔部が成形用キャビティの一部を埋めることにより、上記プリフォームに円環状の鋳抜き空間を形成し、この鋳抜き空間を介して上記第1、第2スポーク部を軸方向に離すようにし、上記後工程では、上記鋳抜き空間の径方向外側の開口を塞ぐようにして、リムを形成することを特徴とする。
【0010】
上記本発明方法によれば、横型に前進後退可能な入子を装備せずに横型の内周の全長にわたって鍔部を設け、この鍔部と第1、第2型が協働して、軸方向に離れた第1、第2スポーク部を成形するようにしたので、鋳型構造を簡単にすることができ、生産性を高めることができる。
また、第1、第2スポーク部が軸方向に離間し、両者の間には無駄な材料(スポーク部の強度に大きく寄与しない部分)が省かれており、そのため、高い強度を維持しつつ、スポークの材料を削減してさらなる軽量化を図ることができる。
【0011】
好ましくは、上記第1型は周方向に間隔をおいて配置された複数の第1凸部を有し、上記第2型も周方向に間隔をおいて配置された複数の第2凸部を有しており、上記鋳型の型締め状態において、上記第1、第2の凸部を上記横型の鍔部の上面と下面にそれぞれ当接させ、隣り合う第1凸部間において上記第1スポーク部を成形し、隣接する第2凸部間において上記第2スポーク部を成形する。
この構成によれば、横型の鍔部を例えば全周にわたって同一断面形状にする等により、簡単な形状にすることができる。
【0012】
好ましくは、上記第1型の第1凸部と上記第2型の第2凸部の周方向位置を一致させることにより、周方向位置が一致した上記第1スポーク部と第2スポーク部を成形し、上記第1、第2スポーク部間に上記鋳抜き空間の一部分としての小空間を形成し、各組の第1、第2スポーク部と隣り合う組の第1、第2スポーク部との間に、上記鋳抜き空間の他の部分を包含する飾り穴を形成する。
【0013】
好ましくは、上記鋳造工程において、上記第2型の外周と横型の内周との間で厚肉のリム原形部を成形し、上記横型の内周と上記第1型の成形面の周縁部の交差部に位置する空間で、上記リム原形部から離れて上記第1スポーク部に連なるリムの第1フランジ部を成形し、上記鋳抜き空間の径方向外側の開口として、上記リム原形部と上記第1フランジ部との間に環状のギャップを形成し、上記後工程は、ビードシート部材溶接工程と、スピニング加工工程を含み、上記ビードシート部材溶接工程では、環状のビードシート部材を、上記プリフォームのリム原形部を通過して上記ギャップを塞ぐ位置まで装填し、その一端周縁を上記第1フランジ部に溶接するとともに他端周縁を上記リム原形部に溶接し、これにより、上記ギャップを塞ぐとともに、上記第1フランジ部に隣接したリムの第1ビードシート部を提供し、次に、リム原形部にスピニング加工を施して、リムの他方の端部に第2フランジ部および第2ビードシート部を形成する。
この方法では、車両ホイールの意匠面には溶接が露出せず、良好な外観とすることができる。
【0014】
好ましくは、上記鋳造工程において、上記横型の内周と上記第1型の成形面の周縁部の交差部に位置する空間で、上記第1スポーク部に連なる上記リムの第1フランジ部を成形し、上記横型の内周と上記第2型の成形面の周縁部の交差部に位置する空間で、上記第2スポーク部に連なる環状支持部を成形し、上記鋳抜き空間の径方向外側の開口として、上記環状支持部と上記第1フランジ部との間に環状のギャップを形成し、上記後工程では、上記リムの一端側の第1ビードシート部とリムの他端側の第2フランジ部および第2ビードシート部を有する筒形状のリム本体を用い、上記リム本体の一端側の第1ビードシート部の周縁を上記プリフォームの第1フランジ部に溶接するとともに、上記リム本体の内周を上記環状支持部の周縁に溶接し、これにより、上記第1ビードシート部で上記ギャップを塞ぐ。
この方法では、車両ホイールの意匠面には溶接が露出せず、良好な外観とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両ホイールのスポークの強度を維持しつつより一層の軽量化を進めることができる。また、鋳型構造を簡単にして生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる車両ホイールを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図2】同車両ホイールの正面図である。
【図3】同車両ホイールの側面図である。
【図4】同車両ホイールのプリフォームを鋳造する鋳型の左半分を示す縦断面図であり、(A)はスポーク成形部で断面にしたものであり、(B)は飾り穴成形部で断面にしたものである。
【図5】同鋳型の横型の鍔部と、上下型の凸部を示す平面図である。
【図6】(A)は上記プリフォームにビードシート部材を装填する直前の状態を示す縦断面図であり、(B)はビードシート部材をプリフォームに装填して溶接する直前の状態を示す銃断面図であり、(C)はビードシート部材をプリフォームに溶接した後で、プリフォームをスピニング加工してリムを最終形状またはそれに近い形状にした状態を示す縦断面図である。
【図7】完成された車両ホイールの要部を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係わる車両ホイールの製造方法を示す図4相当図である。
【図9】同第2実施形態に係わる車両ホイールを示す図7相当図である。
【図10】同第3実施形態に係わる車両ホイールを示す図4相当図であり、(A)は第1スポーク部を成形する箇所の断面図であり、(B)は第2スポーク部を成形する箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態に係わる車両ホイール(以下、単にホイールと称す)とその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
最初にホイール1の構造を図1〜図3を参照しながら説明する。図1、図2に示すように、ホイール1はアルミ合金製(軽合金製)であり、ディスク10とリム20とを一体に備えている。ディスク10は中央のハブ取付部11と、このハブ取付部11からリム20に向かって放射状に延びるとともに周方向に間隔をおいて配された複数例えば10本のスポーク12とを有している。周方向に隣接したスポーク12間には飾り穴13が形成されている。
【0018】
上記ハブ取付部11はその中心に形成されたハブ穴11aと、このハブ穴11aの周りに形成された複数のボルト穴11bと、各ボルト穴11bに連なるナット座11cを有しているが、周知構造であるので詳細な説明は省略する。
【0019】
上記リム20は略円筒形状をなし、図1、図3に示すように、一端側に第1フランジ部21とこれに隣接した第1ビードシート部22を有し、他端側に第2フランジ部23とこれに隣接した第2ビードシート部24を有しており、ビードシート部22,24間にはタイヤ装着作業のための小径のリムドロップ部25を有している。周知のように、タイヤの一対のビード部が上記ビードシート部22,24に乗り、フランジ部21,23によって脱落を防止されるようになっている。
【0020】
上記リム20の一端部は上記ディスク10の外周部、すなわちスポーク12のホイール径方向の端部と一体をなして連なっている。
【0021】
次に、本発明の特徴部を図面を参照しながら説明する。図1に示すように、各スポーク12は、そのホイール径方向外側の部分が2股をなしており、互いにホイール軸方向に離間した第1、第2の2本のスポーク部12a、12bを有している。各スポーク12の根元部12c(ホイール径方向内側の部分)は2股をなさず中実となっている。これらスポーク部12a、12b間の小空間12xは、ホイール周方向が開放されていて両側の飾り穴13に連なっている。換言すれば、隣り合う飾り穴13同士は小空間12xを介して連なっている。
上記飾り穴13は、隣り合う第1スポーク部12a間の空隙部と、隣り合う第2スポーク部12b間の空隙部とが重なることにより形成されている。
【0022】
上記飾り穴13およびスポーク12の小空間12xのホイール径方向外側は、上記第1ビードシート部22によって塞がれている。換言すれば、第1ビードシート部22の内周が上記飾り穴13および小空間12xに臨んでいる。
上記スポーク12の第1スポーク部12aは上記第1フランジ部21に連なり、第2スポーク部12bは上記第1ビードシート部22とリムドロップ部25との境の段差部に連なっている。
【0023】
次に、上記ホイール1の製造方法について、図4〜図6を参照しながら説明する。
まず、プリフォーム1A(ホイール本体)の鋳造工程について説明する。この工程で用いられる鋳型50は、図4に示すように、水平板形状のベース(図示しない)と、このベース上に固定された下型51(第1型)と、この下型51に対して昇降する上型52(第2型)と、複数分割例えば半割りされた横型53とを有している。横型53は、図4において左右に対峙し、左右方向に移動して接合,離反するようになっている。
【0024】
鋳型50の型締め時には、一対の横型53同士が所定の荷重をもって当たり、上型52が下降してこれら横型53の上面に当たることにより、下型51と上型52とで一対の横型53を所定の荷重をもって挟むようになっている。この型締め状態において、下型51と上型52と一対の横型53により、成形用キャビティ55が形成される。
【0025】
上記下型51の中央には湯道51cが形成されている。この湯道51cには、前述したベースを貫通する垂直導管(図示しない)の上端部が連なっている。上記ベースの下方にはアルミ合金(軽合金)の溶湯を蓄えたタンク(図示しない)が配置され、上記導管の下端部はこの溶湯に入り込んでいる。
【0026】
上記成形用キャビティ55は、大別すると、下型51と上型52の対向する成形面51a,52a間に形成されたディスク成形空間56と、上型52の外周の成形面52bと一対の横型53の内周の成形面53a間に形成された略筒状のリム原形部成形空間57とを有している。ディスク成形空間56は、最終形状のホイール1のディスク10とほぼ同形状をなしている。リム原形部成形空間57は、最終形状のホイール1のリム20と異なる形状であるとともに、それより厚くなっている。
【0027】
図4、図5に示すように、各横型53の内周の成形面53aからは、横型53の全長にわたって形成された円弧状をなす鍔部53xが径方向、内方向に突出している。鍔部53xは全長にわたって同一の扁平な断面形状をなし、抜き勾配を得るために先細をなしている。一対の横型53の鍔部53xは、型締め状態で互いにその両端面が当接して連続した円環形状をなし(図5参照)、下型51の成形面51aと上型52の成形面52aとの間に配置されている。
【0028】
図4(B),図5に示すように、下型51の成形面51aと上型52の成形面52aには、飾り穴成形用の凸部51x、52x(第1、第2の凸部)が周方向に間隔をおいて形成されている。これら凸部51x、52xは、飾り穴13に対応した平面形状を有し、上下方向から見た時に互いに重なっている。
【0029】
上記型締め状態において、凸部51x、52xのホイール径方向内側の部分が互いに接するようになっている。凸部51x、52xの径方向外側の部分は成形面51a、52aからの突出高さが減じられており、型締め状態において、凸部51x、52xの間に、上記鍔部53xの径方向内側の部分が入り込んでいる。換言すれば、上記凸部51x、52xの径方向外側の部分は、上記鍔部53xの径方向内側の部分の下面と上面にそれぞれ当接している。
【0030】
上記型締め状態におけるディスク成形空間56について詳述する。下型51の成形面51aの中央部と上型52の成形面52aの中央部とで、ハブ取付部成形空間56aが形成されている。対をなす凸部51x、52xとこれと隣り合う他の対の凸部51x、52xとの間と、成形面51a,52aとで,スポーク成形空間56b(図4(A)参照)が形成されている。
【0031】
また、上記型締め状態において、下型51の成形面51aの周縁部と横型53の成形面53aの最下端部と横型53の鍔部53xの根元部下面とで、環状の第1フランジ部成形空間58が形成されている。
【0032】
上記鋳型50を用いたプリフォーム1Aの低圧鋳造工程について説明する。上記タンクの内部空間にガス圧を供給することにより、タンク内の溶湯面を押し下げる。これにより、タンク内の溶湯は、導管を経、さらに湯道51cを経て成形用キャビティ55に充填される。溶湯がディスク成形空間56に充填されることによりディスク10が成形され、リム原形部成形空間57に充填されることにより短円筒形状のリム原形部20Aが成形され、第1フランジ部成形空間58に充填されることにより環状の第1フランジ部21が成形される。
【0033】
上記プリフォーム1Aのディスク10の形状について、図4、図6(A)を参照しながら詳しく説明する。上記ハブ取付部成形空間56aに溶湯が充填することにより、ハブ取付部11が成形され、上記スポーク成形空間56bに溶湯が充填することにより、スポーク12が成形される。
【0034】
上記スポーク12についてさらに詳しく説明する。図4(A)に示すように、隣り合う凸部51xのホイール径方向外側部分の側面と、下型51の成形面51aにおける凸部51x間の領域と、鍔部53xの下面とで画成された空間(第1スポーク部成形空間)により、第1スポーク部12aが成形される。
同様に、隣り合う凸部52xの径方向外側部分の側面と、上型52の成形面52aにおける凸部52x間の領域と、鍔部53xの上面とで画成された空間(第2スポーク部成形空間)により、第2スポーク部12bが成形される。
また、対をなす凸部51x,52xの径方向内側部分及びこれと隣り合う他の対の凸部51x,52xの径方向内側部分の側面と、下型51および上型52の成形面51a,52aとで画成された空間により、スポーク12の中実の根元部12cが成形される。
【0035】
上記鋳造の際に、図4(B)に示すように、上記凸部51x,52xと、上記鍔部53xの一部(凸部51x,52xが当接する部分)が、成形用キャビティ55の一部を埋めることにより、上記飾り穴13が形成される。
また、上記鍔部53xの残りの部分(凸部51x,52xが当接しない部分)が成形用キャビティ55の一部を埋めることにより、上記第1スポーク部12aと第2スポーク部12bとの間の小空間12xが形成される。
【0036】
別の観点から説明すると、横型53の全周に形成された鍔部53xが成形用キャビティ55の一部を埋めることにより、図6に示すように、プリフォーム1Aに円環状の鋳抜き空間60が形成される。この鋳抜き空間60は、上記第1スポーク部12aと第2スポーク部12bとの間の小空間12xと、この小空間12xとホイール軸方向位置が一致する飾り穴13の一部を含む。これにより、図1に示すように、小空間12xが周方向に解放され、飾り穴13に連なる。
【0037】
上記鋳造の際に、上記鍔部53xの根元部が成形用キャビティ55の一部を埋めることにより、上記リム原形部20Aと第1フランジ部21との間に、環状のギャップG(上記鋳抜き空間60のホイール径方向外側の開口)が形成される。図6(A)参照。上記飾り穴13およびスポーク12の小空間12xの径方向外側はこのギャップGに連なっている。
【0038】
上記鋳造工程の後、上記プリフォーム1Aのバリ取りをし、ハブ穴11aやボルト穴11b等の穴開け加工を行う。図6(A)参照。
【0039】
次に、図6(A),(B)に示すようにして、環状のビードシート部材30をプリフォーム1Aに装填する。ここで、プリフォーム1Aのリム原形部20Aとビードシート部材30の形状、寸法について簡単に説明する。
リム原形部20Aは短円筒形状をなし、その外周面は全長にわたって径が等しい円筒面か、先に行くにしたがって径が小さくなるような緩やかなテーパをなしている。ビードシート部材30の内周面は全長にわたって径が等しい円筒面か、一端側(第1フランジ部21側)から他端側に向かって小径となるような緩やかなテーパをなしている。リム原形部20Aの根元側端部の外径と上記ビードシート部材30の上記他端側の内径は等しい。
【0040】
上記ビードシート部材30を上記リム原形部20Aを通過するように軸方向に横移動させ、上記ギャップGを塞ぐ位置まで装填する。図6(B)参照。この位置でビードシート部材30の一端が上記第1フランジ部21に当接し、他端がリム原形部20Aの外周に接している。
【0041】
次に、図6(C)、図7に示すように、上記ビードシート部材30を第1フランジ部21とリム原形部20Aに溶接することにより、上記第1フランジ部21に隣接する第1ビードシート部22が得られる。図7において溶接部を符号40で示す。
【0042】
次に、プリフォーム1Aをマンドレルに装着し、このマンドレルを回転駆動し、ローラをリム原形部20Aに押し当てながらマンドレルの外周形状に沿って移動させることにより、リム原形部20Aをスピニング(フローフォーミング)加工する。これにより、図6(C)、図7に示すように、第2フランジ部23と、第2フランジ部23に隣接する第2ビードシート部24と、ビードシート部22,24間のリムドロップ部25が得られる。第2フランジ部23および第2ビードシート部24の外径は、上記ビードシート部材30の内径より大きい。
【0043】
上記スピニング加工の後で、熱処理し、リム20に減肉を伴う切削加工を施し、さらに塗装を施すことにより、車両ホイール1の完成品を得る。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態をなす車両ホイールの製造方法について図8、図9を参照しながら説明する。本実施形態で用いられる鋳型50において、第1実施形態と共通する部分は同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
第2実施形態が上記第1実施形態と大きく異なるのは、鋳型50が型締め状態にある時、上型52の外周52bと横型53の内周53aとの間にリム原形部成形空間が形成されず、鋳造されるプリフォーム1B(ディスク本体)がリム原形部を有さない点である。その代わりに、鋳型50が型締め状態にある時、上記鍔部53xの根元部の上側において、上型52の外周52bの下端部と横型53の内周53aとの間に、上記第2スポーク部成形空間12bと連なる小さな断面積の環状支持部成形空間59が形成されており、この成形空間59で環状支持部15が成形される。この環状支持部15は第2スポーク部12bの端部(ディスク10の径方向外端部)に連なり、先端縁に向かって第1スポーク部12aから離れるように湾曲している。環状支持部15と第1フランジ部21との間にギャップG(鋳抜き空間60のホイール径方向外側の開口)が形成されている。
【0046】
図9に示すように、第2実施形態の製造方法ではリム本体20Bが用いられる。このリム本体20Bはアルミ合金製の帯板をロール成形し、その両端を溶接することにより得られるものであり、一端側の第1ビードシート部22と、他端側の第2フランジ部23および第2ビードシード部24と、リムドロップ部25を有している。
【0047】
上記リム本体20Bを、鋳造されたプリフォーム1Bに溶接する。詳述すると、リム本体20Bの第1ビードシート部22の周縁をプリフォーム1Bの第1フランジ部21に溶接し、リム本体20Bの内周(本実施形態ではリムドロップ部25の一端周縁部)をプリフォーム1Bの環状支持部15の周縁に溶接する。これにより、上記ギャップGを第1ビードシート部22で塞ぐ。
以後の処理は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0048】
次に、本発明の第3の実施形態をなす車両ホイールの製造方法について図10を参照しながら説明する。本実施形態で用いられる鋳型50において、第1実施形態と共通する部分は同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
第3実施形態が上記第1実施形態と大きく異なるのは、下型51の凸部51xと上型52の凸部52xが周方向にずれており、上下方向から見た時に完全に重ならない点である。
そのため、図10(A)に示す第1スポーク部成形空間56b’と図10(B)に示す第2スポーク部成形空間56b”は、周方向にずれている。
【0050】
上記鋳型50により製造されたプリフォーム1Cでは、第1スポーク部12aと第2スポーク部12bが周方向にずれており、第1スポーク部12a間に形成された空隙部と第2スポーク部12b間に形成された空隙部も周方向にずれている。なお、上記凸部51x、52xが上から見て互いに重なるように配置すれば、上記第1スポーク部12a間の空隙部と第2スポーク部12b間の空隙部もホイール軸方向から見て互いに重なる。
【0051】
上記第3実施形態でも、横型53の鍔部53xによって環状の鋳抜き空間が形成され、この鋳抜き空間を介して第1スポーク部12aと第2スポーク部12bがホイール軸方向に離れている。
他は第1実施形態と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
なお、第3実施形態の特徴は、第2実施形態にも適用可能である。
【0052】
本発明は、上記実施例に制約されず、種々の態様を採用することができる。例えば、上記第1、第2実施形態において、スポークは中実の根元部を有さなくてもよい。
上記第1実施形態では、下型51の中央に湯道18を有する鋳型50すなわちセンターゲート型の鋳型を用いたが、横型53に湯道を有するサイドゲート型の鋳型を用いてもよい。
鋳型において、上型を第1型とし、下型を第2型としてもよい。この場合、プリフォーム1Aは図4と上下逆の形で鋳造される。
【0053】
車両ホイールに係わる発明において、軸方向に離間した第1、第2スポーク部を有するのであれば、その製造方法は実施形態に制約されない。
第1実施形態の車両ホイールにおいて、ホイール本体に、これと別体をなすビードシート部材を溶接する構成であれば、ホイール本体およびビードシート部材の製造方法は実施形態に制約されない。
第2実施形態の車両ホイールにおいて、ディスクに、これと別体をなすリム本体を溶接する構成であれば、ホイール本体およびリム本体の製造方法は実施形態に制約されない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は乗用車等の車両ホイールに適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両ホイール
1A、1B、1C プリフォーム
10 ディスク
11 ハブ取付部
12 スポーク
12a 第1スポーク部
12b 第2スポーク部
12c 根元部
12x 小空間
13 飾り穴
15 環状支持部
20 リム
20A リム原形部
20B リム本体
21 第1フランジ部
22 第1ビードシート部
23 第2フランジ部
24 第2ビードシート部
25 リムドロップ部
30 ビードシート部材
50 鋳型
51 下型(第1型)
51x 第1凸部
52 上型(第2型)
52x 第2凸部
53 横型
53x 鍔部
55 成形用キャビティ
56 ディスク成形空間
56a ハブ取付部成形空間
56b スポーク成形空間
57 リム原形部成形空間
58 第1フランジ部成形空間
59 環状支持部成形空間
60 鋳抜き空間
G ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造工程と、後工程とを備えた車両ホイールの製造方法において、
上記鋳造工程で用いられる鋳型は、上下に対向して配置された第1、第2型と、複数に分割された横型とを備え、上記横型の各々はその内周の全長にわたって突出した円弧状の鍔部を有し、
上記鋳造工程では、型締め状態にある鋳型の成形用キャビティに溶湯を充填することにより、少なくともディスクを有するプリフォームを鋳造し、この際、上記第1型と横型の鍔部との間で、互いに周方向に離れて放射状に配置された第1スポーク部を成形し、上記第2型と鍔部との間で、互いに周方向に離れて放射状に配置された第2スポーク部を成形し、上記横型の鍔部が成形用キャビティの一部を埋めることにより、上記プリフォームに円環状の鋳抜き空間を形成し、この鋳抜き空間を介して上記第1、第2スポーク部を軸方向に離すようにし、
上記後工程では、上記鋳抜き空間の径方向外側の開口を塞ぐようにして、リムを形成することを特徴とする車両ホイールの製造方法。
【請求項2】
上記第1型は周方向に間隔をおいて配置された複数の第1凸部を有し、上記第2型も周方向に間隔をおいて配置された複数の第2凸部を有しており、
上記鋳型の型締め状態において、上記第1、第2の凸部を上記横型の鍔部の上面と下面にそれぞれ当接させ、隣り合う第1凸部間において上記第1スポーク部を成形し、隣接する第2凸部間において上記第2スポーク部を成形することを特徴とする請求項1に記載の車両ホイールの製造方法。
【請求項3】
上記第1型の第1凸部と上記第2型の第2凸部の周方向位置を一致させることにより、周方向位置が一致した上記第1スポーク部と第2スポーク部を成形し、上記第1、第2スポーク部間に上記鋳抜き空間の一部分としての小空間を形成し、各組の第1、第2スポーク部と隣り合う組の第1、第2スポーク部との間に、上記鋳抜き空間の他の部分を包含する飾り穴を形成することを特徴とする請求項2に記載の車両ホイールの製造方法。
【請求項4】
上記鋳造工程において、上記第2型の外周と横型の内周との間で厚肉のリム原形部を成形し、上記横型の内周と上記第1型の成形面の周縁部の交差部に位置する空間で、上記リム原形部から離れて上記第1スポーク部に連なるリムの第1フランジ部を成形し、上記鋳抜き空間の径方向外側の開口として、上記リム原形部と上記第1フランジ部との間に環状のギャップを形成し、
上記後工程は、ビードシート部材溶接工程と、スピニング加工工程を含み、
上記ビードシート部材溶接工程では、環状のビードシート部材を、上記プリフォームのリム原形部を通過して上記ギャップを塞ぐ位置まで装填し、その一端周縁を上記第1フランジ部に溶接するとともに他端周縁を上記リム原形部に溶接し、これにより、上記ギャップを塞ぐとともに、上記第1フランジ部に隣接したリムの第1ビードシート部を提供し、
次に、リム原形部にスピニング加工を施して、リムの他方の端部に第2フランジ部および第2ビードシート部を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両ホイールの製造方法。
【請求項5】
上記鋳造工程において、上記横型の内周と上記第1型の成形面の周縁部の交差部に位置する空間で、上記第1スポーク部に連なる上記リムの第1フランジ部を成形し、上記横型の内周と上記第2型の成形面の周縁部の交差部に位置する空間で、上記第2スポーク部に連なる環状支持部を成形し、上記鋳抜き空間の径方向外側の開口として、上記環状支持部と上記第1フランジ部との間に環状のギャップを形成し、
上記後工程では、上記リムの一端側の第1ビードシート部とリムの他端側の第2フランジ部および第2ビードシート部を有する筒形状のリム本体を用い、上記リム本体の一端側の第1ビードシート部の周縁を上記プリフォームの第1フランジ部に溶接するとともに、上記リム本体の内周を上記環状支持部の周縁に溶接し、これにより、上記第1ビードシート部で上記ギャップを塞ぐことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両ホイールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−225132(P2011−225132A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97578(P2010−97578)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)