説明

車両ボディ部品表面の手動研磨用アセンブリ

本発明は、研磨手段(30)と、この研磨手段(30)を支持するキャリッジ(32)と、被研磨面(14)に沿ってキャリッジ(32)を案内する手段(34)とを備える、自動車車両のボディ部品(12)の表面(14)の手動研磨用アセンブリ(10)において、アセンブリ(10)が、研磨対象のボディ部品(12)に対して位置を保持される支持案内要素(18)を備えており、支持案内要素(18)が少なくとも1つの案内面(20)を備え、この案内面(20)によりキャリッジ(32)の案内手段(34)の少なくとも1つの部分である第1部分が支えられることができるようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、車両ボディ部品表面の手動研磨用アセンブリに関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、
− シャフトによって回転駆動される研磨手段と、
− 該研磨手段を支持するキャリッジと、
− 被研磨面に沿ってキャリッジを案内する手段と
を備える、自動車車両のボディ部品表面の手動研磨用アセンブリに関する。
【0003】
自動車車両のボディの各種要素の組み立て後に、例えば車両の屋根とボディとの間などに、ボディの各種要素の溶接またはろう付けに関連する欠陥が生じることがある。
【0004】
このような欠陥が生じた場合の解決策の1つは、交換すべきボディ要素をはぎ取り、代わりの要素を接着によって取り付けるというものである。この解決策はサービス工場で一般に採られているものであるが、この解決策には、比較的長い接着剤の乾燥時間を必要とするという欠点がある。
【0005】
もう1つの解決策は、工場で新しい屋根を再溶接した上で、技能工の手を借りて車両の表面を手作業で研磨または研削することによって手直しするというものである。
【0006】
被研磨面は一定の基準を満たしていなければならない。被研磨面は、とりわけ、その凹凸が、例えば、長さ約0.5メートルにつき0.3ミリメートル未満というように、所定の値未満である表面状態を示すものでなければならない。
【0007】
このような精度基準を満たすためには、研磨は被研磨面に均一に圧力をかけながら行われなければならない。
【0008】
しかし、技能工でも、他のどのような者でも、そうした精度の基準を満たすことができるわけでないことは確かである。
【0009】
さらに、手作業による研磨では、技能工が被研磨面の厚さを減らしすぎてしまうおそれがある。
【0010】
文献US−A−6264534には、人の手による精度の欠点を免れることができる自動車用ロボット式研磨ツールが記載されている。しかし、このロボット式ツールは高価であり、修理工場にも、サービス工場にも、さらには生産工場内の手直し部門にも適さない。
【0011】
文献US−A−6478663に記載されている手動研磨用アセンブリも知られている。このアセンブリは、とりわけ、研磨ディスクを偏心させて回転駆動するシャフトを備え、さらに、研磨ディスクが被研磨面上を移動できるようにする案内手段を備える。
【0012】
このようなアセンブリの欠点は、案内手段が被研磨面のみで支えられるという点にある。
【0013】
第一に、この特徴は、被研磨面がアセンブリを受容できるのに十分な大きさをもつことを前提とする。
【0014】
第二に、この場合、被研磨面が、アセンブリの案内手段を支えるための唯一の基準となっている。
【0015】
そのため、被研磨面が変形している場合、および/または変形可能なものである場合には、研磨が正確でなくなるおそれがある。
【0016】
本発明は、とりわけそのコストによって、修理工場またはサービス工場における利用に適合し、部品、とりわけ自動車車両のボディ部品の正確な手動研磨を可能にする解決策を提案することを目的とする。
【0017】
このために、本発明は、前述のタイプの自動車車両のボディ部品表面の手動研磨用アセンブリにおいて、アセンブリが位置決め手段および位置保持手段により研磨対象のボディ部品に対して位置を保持される支持ガイドを備えており、この支持ガイドが少なくとも1つの案内面を備え、この案内面でキャリッジの案内手段の少なくとも1つの部分である第1部分が支えられることができることを特徴とする手動研磨用アセンブリを提案する。
【0018】
本発明のその他の特徴によれば、
− キャリッジの案内手段の第2部分が、被研磨面で支えられることができる。
− 研磨手段が、支持案内要素で支えられる案内手段の第1部分と、被研磨面で支えられることができる案内手段の第2部分との間に配置される。
− 支持案内要素の案内面が、被研磨面の平面にほぼ平行な方向に延びる。
− 研磨手段が、キャリッジの移動方向に沿って案内手段から等距離に配置される。
− キャリッジが、案内面と被研磨面とが同一平面でなくなった場合にそれを回復する目的で、支持案内要素の案内面に対して直角な軸方向に沿って調節可能な要素を備える。
− キャリッジの前記軸方向に沿って調節可能な要素が、支持案内要素で支えられる案内手段の第1部分と連動し、案内面に対して直角な軸方向に沿って研磨手段と被研磨面との間の距離を調節する働きをする。
− キャリッジの案内手段が、摺動および/または回転することができる案内要素を備える。
− キャリッジの案内手段が、回転することができ、それぞれの軸が平行である1組の前部案内要素と1組の後部案内要素とを備える。
【0019】
本発明のその他の利点および特徴は、発明の詳細な説明および添付の図面を通してよりよく理解されるであろう。
【0020】
非限定的なものとして行う以下の説明では、同一、同種または同様の構成部品を同じ参照番号で示す。
【0021】
発明の詳細な説明および特許請求の範囲においては、図中に表示されたL、V、Tの三軸によって示される長手方向、垂直方向および横方向を非限定的なものとして採用する。
【0022】
図1に、キャリッジ32によって支持された研磨手段30を備える手動研磨用アセンブリ10を示した。キャリッジ32は案内手段34を備えており、それによって、例えば技能工が、キャリッジ32を自動車車両のボディ部品12の被研磨面14に沿って移動させることができるようになっている。
【0023】
被研磨面14はほぼ平らであるか、または曲率半径を有し、ここでは図においてほぼ長手方向の水平面に沿って延びる研磨対象のろう付けまたは溶接のビード16を有する。
【0024】
本発明によれば、アセンブリ10は、案内面20を有する支持ガイド18を備え、この案内面でキャリッジ32の案内手段34の第1部分34a、34bが支えられる。
【0025】
支持ガイド18は、位置決め手段26a、26bおよび位置保持手段22によって車両のボディ12に対してその位置を保持される。
【0026】
支持ガイド18の位置決め手段26a、26bは、ボディ12の凸状に顕著に湾曲した面28aに対して直線的に接触する平らな第1の面26aを備える。位置決め手段26a、26bは、例えばボディの柱材の面のように、ほぼ平らな面28bで平らに支えられる平らな第2の面26bを備える。
【0027】
さらに、支持案内要素18は、周知のどんな固定手段からなるものでもよい、ボディ12への固定手段22を備える。
【0028】
ただし、好ましくは、固定は、ボディ12の面28bを貫くかまたは挟み込み、支持案内要素18に切られたねじ穴24にねじ込まれる、少なくとも2本のねじ22によって形成される。
【0029】
このような構成は、ボディ12に対する支持案内要素18の位置決めおよび位置保持を可能にするとともに、案内面20が被研磨面14の平面とほぼ平行な平面をなすことを可能にする。
【0030】
有利には、案内面20の剛性および非変形性が保証されるように、支持案内要素18は、鋼もしくはアルミニウムのような強度のある材料製か、または高密度樹脂製である。
【0031】
キャリッジ32の案内手段34は、ここでは、それぞれが横軸37の周りを自在に回転する4つの車輪34a、34b、34c、34dを備えるが、これらは玉軸受またはキャスタでもよい。有利には、横軸37はねじである。
【0032】
本発明の第1の実施形態によれば、案内面20および被研磨面14はほぼ平らである。
【0033】
この第1の実施形態によれば、1対の車輪34a、34bが支持案内要素18の案内面20で支えられ、もう1対の車輪34c、34dが被研磨面14で支えられる。
【0034】
したがって、キャリッジ32は、とりわけ図4に示されているように、案内面20で支えられる1対の左車輪34a、34bと、被研磨面14で支えられる1対の右車輪34c、34dとを備える。
【0035】
それだけに限定されるものではないが、キャリッジ32は単一の右車輪34dしか備えていなくてもよく、その場合、右車輪34dは長手方向に沿って2つの左車輪34a、34bからほぼ等距離に配置される。
【0036】
これら4つの車輪34a、34b、34c、34dのうち、2つの車輪34a、34cはキャリッジ32の前方に、また、2つの車輪34b、34dはキャリッジ32の後方に、平行な横方向の2本の軸B1、B2上にそれぞれ配置される。
【0037】
キャリッジ32は、逆「U」字形の全体形状をなす剛体構造である。キャリッジ32は左側板36aと右側板36bとを備え、各々に左車輪34a、34bの回転軸および右車輪34c、34dの回転軸37がそれぞれ配置される。
【0038】
2つの側板36a、36bは、案内面20に直角な長手方向平面内を延びて、案内面20と平行な上板38によって互いに連結される。
【0039】
有利には、左側板36aは、案内面20に直角な軸方向に沿って、上板38に対して調節可能な要素である。これにより、側板36aに固定された左車輪34a、34bの軸方向高さを変えることができ、図2で見て取れるように、案内面20と被研磨面14との間に遊び「j」がある場合にそれを補償することができる。
【0040】
このために、左側板36aは上板38に対して摺動可能に連結される。
【0041】
この摺動可能な連結は、図4に示されるように、上板38の左側縁41から横方向に突き出した垂直方向に延びるスライダ46に沿って摺動することができる、左側板36a内に設けられる垂直溝44によって実現される。
【0042】
左側板36aは垂直方向に細長い2つの穴39を備え、これら細長い2つの穴39を上板38の左側縁41にねじ込まれる2本のねじ40が横方向に貫通することによって、左側板36aは上板38に対してその位置を保持される。
【0043】
キャリッジ32の上板38と右側板36bとの固定は、垂直な2本のねじ42によって行われる。
【0044】
それだけに限定されるものではないが、上板38と右側板36bとは互いに溶接され、ろう付けされ、または一体材料であることができる。
【0045】
キャリッジ32内に配置される研磨手段30は、原動機(図示せず)のような駆動手段を装備した本体44を備える。
【0046】
本体44は、案内面20にほぼ直角な軸Aの周りを回転駆動されるシャフト48の上端に接続される。シャフト48の下端は、案内面20と平行に延びる平面を有する研磨作用部47を備えるディスク46に接続される。
【0047】
研磨作用部47は、ここでは、右車輪34c、34dの被研磨面14に対する接点を含む平面に従って右車輪34c、34dと面一になり、そのため、ボディ12の被研磨面14の溶接ビード16を研磨することができる。
【0048】
研磨手段30の本体44は、ここでは、軸Aを有するほぼ円筒形であり、キャリッジ32の上板38の穴50中に軸Aを中心にして配置される。
【0049】
穴50は、本体44が研磨時に回転するのを防ぐために、本体44を締め付ける締付け手段を備えることができる。
【0050】
そのために、穴50には、外方に向けて突起部53内に開口する径方向の割れ目52が設けられる。ねじ54が突起部53を横方向に貫通し、このねじ54は、割れ目52の隙間を縮小または拡大することができ、したがって、穴50を本体44の周りに締め付け、または緩めることができる。このような構成により、それまでの研磨によって溶接ビード16の厚みが減るのに応じて研磨手段30の高さを調整することも可能になる。
【0051】
有利には、研磨手段30は取外し可能であり、現行技術で公知の電気式また空圧式の手動サンダ30とすることができる。同様に、上板38には様々な種類のサンダ30を装着することが可能である。
【0052】
図5aおよび5bに示した第1の実施形態の一変形形態によれば、被研磨面14は、縦軸方向に沿って凸状に顕著に湾曲した形状を有する。
【0053】
この場合、面20で支えられる左車輪34a、34bと、被研磨面14で支えられる右車輪34c、34dとが同様の曲線軌道をたどるように、案内面20は被研磨面14とほぼ同じ凸状に湾曲した形状をなす。
【0054】
さらに、図5aに示すように、被研磨面14の湾曲は、車輪34a、34b、34c、34dとディスク46の研磨作用部47との間に軸Aに沿って高低差「d1」を生じさせる。
【0055】
こうした高低差「d1」は、被研磨面14に対して研磨ディスク46による深すぎる研磨を生じかねないので、不都合である。
【0056】
この不都合を抑え、または防ぐために、図5aおよび5bに示されるように、間隔「e1」の車輪34a、34b、34c、34dをそれよりも小さな間隔「e2」まで長手方向に接近させることによって、高低差「d1」はより小さな高低差「d2」に縮小される。
【0057】
さらに、研磨手段30は、有利には、前方の車輪34a、34cと後方の車輪34b、34dとから長手方向に等距離に配置され、それによってシャフト48の回転軸Aが面14の研磨中の部分の法線とほぼ平行になる。
【0058】
本発明の第1の実施形態のもう1つの変形形態(図示せず)によれば、アセンブリ10は、案内面20に直角な軸方向に沿って研磨手段30を車輪34a、34b、34c、34dに対して調節する装置を備える。
【0059】
図6に示す第2の実施形態によれば、案内手段34は、支持案内要素18の案内面20でのみ支えられる。この実施形態は、キャリッジ32の案内手段34が単一の基準面20により支えられることを可能にし、それによって、被研磨面14の幾何形状に欠陥があっても、それに全くとらわれないことを可能にする。
【0060】
それだけに限定されるものではないが、案内手段34は、平行に配置されたシャフト上を自在に並進するプラットフォーム、案内面20上を摺動できるシュー、または回転および/もしくは摺動することができるその他のあらゆる要素を備えることができる。
【0061】
同様に、本発明によるアセンブリ10は、自動車車両のボディの様々な部分で使用することができる。
【0062】
最後に、研磨手段は、研磨ディスク、フライスまたは回転駆動されるその他のあらゆる切削要素を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態による手動研磨用アセンブリおよび自動車車両のボディの被研磨面を示す横断面による概略正面図である。
【図2】図1の縮尺を拡大した詳細正面図である。
【図3】図1の手動研磨用アセンブリを示す詳細側面図である。
【図4】図1の手動研磨用アセンブリを示す詳細上面図である。
【図5】a及びbは、湾曲面で支えられる案内手段の長手方向間隔による影響を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による手動研磨用アセンブリおよび自動車車両のボディの被研磨面を示す概略斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(48)によって回転駆動される研磨手段(30)と、
前記研磨手段(30)を支持するキャリッジ(32)と、
被研磨面(14)に沿ってキャリッジ(32)を案内する手段(34)と
を備える、自動車車両のボディ部品(12)の表面(14)の手動研磨用アセンブリ(10)において、
アセンブリ(10)が、位置決め手段(26a、26b)および位置保持手段(22)により研磨対象の前記ボディ部品(12)に対して位置を保持される支持ガイド(18)を備えており、前記支持ガイド(18)が少なくとも1つの案内面(20)を備え、前記案内面(20)により前記キャリッジ(32)の前記案内手段(34)の少なくとも1つの部分である第1部分(34a、34b)が支えられることができることを特徴とする手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項2】
前記キャリッジ(32)の前記案内手段(34)の第2部分(34c、34d)が、前記被研磨面(14)で支えられることができることを特徴とする請求項1に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項3】
前記研磨手段(30)が、前記支持ガイド(18)で支えられる前記案内手段(34)の前記第1部分(34a、34b)と、前記被研磨面(14)で支えられることができる前記案内手段(34)の前記第2部分(34c、34d)との間に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項4】
前記支持ガイド(18)の前記案内面(20)が、前記被研磨面(14)の平面にほぼ平行な方向に延びることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項5】
前記研磨手段(30)が、前記キャリッジ(32)の移動方向に沿って前記案内手段(34)から等距離に配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項6】
前記キャリッジ(32)が、前記支持ガイド(18)の前記案内面(20)に対して直角な軸方向に沿って調節可能な要素(36a)を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項7】
前記キャリッジ(32)の軸方向に沿って調節可能な前記要素(36a)が、前記支持ガイド(18)で支えられる前記案内手段(34)の前記第1部分(34a、34b)に固定されることを特徴とする請求項6に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項8】
前記キャリッジ(32)の前記案内手段(34)が、摺動および/または回転することができる案内要素(34a、34b、34c、34d)を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。
【請求項9】
前記キャリッジ(32)の前記案内手段(34)が、回転することができ、それぞれの軸(B1、B2)が平行である1組の前部案内要素(34a、34c)と1組の後部案内要素(34b、34d)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の手動研磨用アセンブリ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−517235(P2009−517235A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542799(P2008−542799)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050912
【国際公開番号】WO2007/063229
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】