説明

車両ボデーの脱脂洗浄装置及び脱脂洗浄方法

【課題】車両ボデーの急激な姿勢変化回数を削減することで車両ボデーへの負担を軽減するとともに、工程全長を短縮してイニシャルコスト、ランニングコストを低減することができる脱脂洗浄装置及び脱脂洗浄方法を提供する。
【解決手段】少なくとも前記袋構造部を含む車両ボデーの下部を浸漬させることができる深さを有するハーフディップ部と、前記車両ボデー全体を浸漬させることができる深さを有するフルディップ部とが連続して設けられた1つの洗浄槽とを設け、搬送手段により、前記洗浄槽のハーフディップ部に前記車両ボデーを部分的に入槽させ、前記袋構造部を含む車両ボデーの下部が洗浄液中に浸漬する深さで水平にして搬送し、前記袋構造部に空気が入るまで車両の前部を持ち上げ、前記車両ボデーを部分的に浸漬させたまま空気が入るまで車両ボデーの前部を下げながら後部を持ち上げ、続いて前記フルディップ部で車両ボデー全体を浸漬させてから水平にして搬送し、出槽させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボデーの表面に電着塗装を施す前に行われ、車両ボデーに付着した油分、鉄粉、塵などを洗浄して取り除く車両ボデーの脱脂洗浄装置及び脱脂洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両ボデーの下塗り塗装として一般的に電着塗装が用いられるが、電着塗装を施す前に車両ボデーに付着した油分、鉄粉、塵などを洗浄して除去する脱脂洗浄を行う必要がある。
【0003】
従来の脱脂洗浄工程について図7、8を用いて説明する。
図7は従来の脱脂洗浄工程の構成図である。
図7に示すように、サイドシル、サイドメンバーなどの袋構造部を有する車両ボデー108は、ハンガ106に搭載された状態で、搬送ライン104上を走行して図中に矢印で示した車体進行方向に搬送される。
車両ボデー108は、搬送されながら洗浄液が満たされた第1の洗浄槽101に車両ボデー108の前部を下方にして斜め向きに車両ボデー108全体が浸漬するまで入槽する。車両ボデー108は第1の洗浄槽101内で水平に向きを変えて搬送され、車両ボデー108の前部を上方にして斜め向きに出槽し、洗浄液が満たされた第2の洗浄槽102に車両ボデー108の前部を下方にして車両ボデー全体が浸漬するまで入槽する。そして、第2の洗浄槽102に入槽した車両ボデー108は、第2の洗浄槽102内で水平に向きを変えて搬送され、車両ボデー108の前部を上方にして斜め向きに出槽する。
【0004】
車両ボデー108の袋構造部は、1度液が内部に入ると新たな液に置き換わりにくく、従って内部のゴミが出にくく洗浄性が低いが、袋構造部中の液を1度空にしてからもう1度液に浸漬すると洗浄性が向上する。
そこで、図7に示したように第1の洗浄槽101に車両ボデー108を浸漬させ、1度洗浄槽から車両ボデー108を外部に出し、第2の洗浄槽102に車両ボデー108全体を浸漬することで、第1の洗浄槽101と第2の洗浄槽102との間で袋構造部中の液を1度空にできるので、袋構造部を有する車両ボデーであっても、袋構造部内部を含めて車両ボデー108全体を十分に洗浄することが可能である。
【0005】
別の従来の脱脂洗浄工程について図8を用いて説明する。図8は別の従来の脱脂洗浄工程の構成図であり、車両ボデー全体を洗浄槽に浸漬させるフルディップを2度行う図7の方式に対して図8の方式は車両ボデーの一部だけを浸漬させるハーフディップを行った後でフルディップを行う方式となっている。
図8に示すように、サイドシル、サイドメンバーなどの袋構造部を有する車両ボデー208は、ハンガ206に搭載された状態で、搬送ライン204上を図中に矢印で示した車体進行方向に搬送される。
車両ボデー208は、搬送されながら洗浄液が満たされた第1の洗浄槽201に車両の前部を下方にして斜め向きに入槽し水平に向きを変える。このとき前記袋構造部が洗浄液に浸漬するようにする。その後、車両ボデー208は第1の洗浄槽201内に下部だけだ浸漬した状態で水平に搬送されながら非浸漬部分をスプレー210から噴射された洗浄液で洗浄され、車両ボデー208の前部を上方にして斜め向きに出槽し、洗浄液が満たされた第2の洗浄槽202に車両ボデー208の前部を下方にして車両ボデー208全体が浸漬するまで入槽する。そして、第2の洗浄槽202に入槽した車両ボデー208は、第2の洗浄槽202内で水平に向きを変えて搬送され、車両ボデー208の前部を上方にして斜め向きに出槽する。
【0006】
図8に示したように第1の洗浄槽201に車両ボデー208の袋構造部を浸漬させ、1度洗浄槽から車両ボデー208を外部に出し、第2の洗浄槽202に車両ボデー208全体を浸漬することで、第1の洗浄槽201と第2の洗浄槽202との間で袋構造部中の液を1度空にできるので、袋構造部を有する車両ボデーであっても、袋構造部内部を含めて車両ボデー208全体を十分に洗浄することが可能である。
【0007】
このように、洗浄槽を2つ使用し、該2つの洗浄槽の間で1度車両ボデーを洗浄槽外に出すことで袋構造部の洗浄液を入れ替えて洗浄性を高めた技術は、上述の図7,8の例のほか例えば特許文献1などにも開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−306779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、洗浄槽を2つ使用し、前記2つの洗浄槽間で一旦車両ボデーを洗浄槽外に出して袋構造部内の洗浄液を1度空にすることで袋構造部の洗浄性を高めた従来の技術においては、車両ボデーを第1の洗浄槽に入槽させてから第2の洗浄槽から出槽させるまでの工程全長が長くなり、設備が大型化するとともに、設備を敷設するためのイニシャルコストや、洗浄液代や車両ボデーを搬送するために必要な諸経費などのランニングコストが高いという問題がある。
【0010】
さらに、脱脂工程においては、車両ボデーの急激な姿勢変化はボデーに大きな浮力が働くため、板厚の薄い外板を使用するとボデー外板に歪が発生する可能性もあり、従来例においては車両ボデーへの負担が大きい。
【0011】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、車両ボデーの急激な姿勢変化回数を削減することで車両ボデーへの負担を軽減するとともに、工程全長を短縮して設備の小型化を図りイニシャルコスト、ランニングコストを低減することができる脱脂洗浄装置及び脱脂洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明においては、袋構造部を有する車両ボデーを脱脂洗浄するための洗浄液を満たした洗浄槽と、該洗浄槽に前記車両ボデーを入槽させ、洗浄槽内で搬送し、出槽させる搬送手段とからなる脱脂洗浄装置において、前記洗浄槽は、少なくとも前記袋構造部を含む車両ボデーの下部を浸漬させることができる深さを有するハーフディップ部と、前記車両ボデー全体を浸漬させることができる深さを有するフルディップ部とが連続して設けられた1つの槽からなり、前記搬送手段により、前記洗浄槽のハーフディップ部に前記車両ボデーを部分的に入槽させ、前記袋構造部を含む車両ボデーの下部が洗浄液中に浸漬する深さで水平にして搬送し、前記袋構造部に空気が入るまで車両の前部を持ち上げ、続いて前記車両ボデーを部分的に浸漬させたまま車両ボデーの前部を下げながら後部を持ち上げ、前記フルディップ部で車両ボデー全体を浸漬させてから水平にして搬送し、出槽させるように構成したことを特徴とする。
前記袋構造部としては、例えば車両ボデーのサイドシル及びサイドメンバーの何れか一方又は両方を挙げることができる。
【0013】
洗浄槽を1槽とすることで工程全長を短縮することができ設備を小型化することができるとともに、イニシャルコスト及びランニングコストの低減が可能となる。
また、洗浄槽の前半をハーフディップ部として噴霧手段を併用するとともに、後半をフルディップ部とすることで、車両ボデーの急激な姿勢変化回数を削減することができ、車両ボデーへの負担を軽減することができる。
さらに、前記ハーフディップ部とフルディップ部との間で、車両の前部及び後部を順次持ち上げ、袋構造部に空気を入れて、袋構造部中の液を入れ替えることが可能となり高い洗浄性を確保することができる。
【0014】
また、前記車両ボデーの前部の持ち上げ時に、前記袋構造部の体積の1/4〜1/2の空気が袋構造部内に入るように車両を持ち上げることを特徴とする。
前記袋構造部内へ入る空気量が袋構造部の体積の1/4未満である場合には、袋構造部内の洗浄液の入れ替えが十分に行われず、洗浄性の観点で十分とはいえない。
一方、前記袋構造部内へ入る空気量が袋構造部の体積の1/2より多い場合には、車両ボデーの前部及び後部の持ち上げ量を大きくせざるを得ず、従って車両ボデーに急激な姿勢変化をさせてしまうため、車両ボデーにかかる浮力に起因する設備事故やボデー外板の歪防止の観点で十分とはいえない。
前記袋構造部内へ入る空気量を、袋構造部の体積の1/4〜1/2とすると、高い洗浄性を確保でき、車両ボデーにかかる浮力に起因する設備事故やボデー外板歪も防止することができる。
【0015】
また、前記ハーフディップ部において、前記車両ボデーの非浸漬部分に洗浄液を噴霧する噴霧手段と、前記洗浄槽中の洗浄液の一部を抜き出すポンプと、前記ポンプによって抜き出された洗浄液中の異物を取り除くフィルタとを設け、前記フィルタによって異物を取り除かれた洗浄液を前記噴霧手段に供給することを特徴とする。
これにより洗浄液を、洗浄槽→ポンプ→フィルタ→噴霧手段→洗浄槽の順で循環利用することができるため、洗浄液に係るランニングコストを低減することができる。
【0016】
また、前記洗浄液の抜き出し部を、前記フルディップ部とハーフディップ部との境界に設けられていることを特徴とする。
前記フルディップ部とハーフディップ部とが連続して設けられる槽では、その槽の形状上、車両ボデーを脱脂洗浄することによって洗浄液中に存在している鉄粉等のゴミは、フルディップ部とハーフディップ部との境界に集まりやすい。そこで、フルディップ部とハーフディップ部との境界に洗浄液の抜き出し部を設けることで、洗浄液中のゴミが積極的に抜き出されて前記フィルタで除去されるため、洗浄槽内の洗浄液に早期にゴミが溜まることを防止でき、洗浄液の超寿命化が成される。
【0017】
また、課題を実現するための方法の発明として、袋構造部を有する車両ボデーを、脱脂洗浄用の洗浄液を満たした洗浄槽に入槽させ、洗浄槽内で搬送し、出槽させる脱脂洗浄方法において、前記車両ボデーを洗浄槽に部分的に入槽させ、前記袋構造部を含む車両ボデーの下部が洗浄液中に浸漬する深さで車両ボデーを水平にして搬送するとともに、前記袋構造部に空気が入るまで車両の前部を持ち上げ、その後に前記車両ボデーを部分的に浸漬させたまま車両ボデーの前部を下げながら後部を持ち上げ、前記車両ボデー全体を浸漬させてから水平にして搬送し、出槽させることを特徴とする。
【0018】
また、前記車両ボデーの前部の持ち上げ時、及び前記車両ボデーの後部の持ち上げ時に、前記袋構造部の体積の1/4〜1/2の空気が袋構造部内に入るように車両を持ち上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のごとく本発明によれば、車両ボデーの急激な姿勢変化回数を削減することで車両ボデーへの負担を軽減するとともに、工程全長を短縮して設備の小型化が図れ、イニシャルコスト、ランニングコストを低減することができる脱脂洗浄装置及び脱脂戦場方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1における脱脂洗浄工程の構成図である。図1に示すように、脱脂洗浄工程には1つの洗浄槽2が設けられている。洗浄槽2は、被処理物である車両ボデー8の底部から袋構造部であるサイドシル20までの高さよりも大きな深さを有するハーフディップ部2aと、車両ボデー8全体を浸漬可能な深さを有するフルディップ2cと、前記ハーフディップ部2aとフルディップ部2cとの境界であり、ハーフディップ部2aの深さからフルディップ部2c深さまで深さが変化する境界部2bとから構成されている。また、洗浄槽2には洗浄液が満たされている。
【0022】
洗浄槽2の上方には搬送ライン4と、該搬送ライン4上を走行可能であり車両ボデー8を搭載するハンガ6とが設けられている。
【0023】
さらに、ハーフディップ部2aには、スプレー用配管10、スプレー用配管10に洗浄液を送液するポンプ44、スプレー用配管10とポンプ44との間に設けられてスプレー用配管10に送液される洗浄液中の異物を除去するフィルタ46が設けられている。
【0024】
以上のように構成された脱脂処理工程における脱脂洗浄の手順を図6を用いて説明する。
図6は実施例1に係る車両ボデーの脱脂洗浄の手順を示すフローチャートである。
【0025】
前工程で部品を組立てて作られた車両ボデー8は、プレス油や防錆油などの油類、鉄粉、塵などが付着しているため、これら油類、鉄粉、塵などを除去する必要がある。そこで、車両ボデー8は、搬送ライン4上を走行可能なハンガ6に搭載されて、これら油類、鉄粉、塵などを除去する脱脂洗浄工程に搬送され、脱脂洗浄を施される。
【0026】
脱脂洗浄が開始されると、ハンガ6は図1に矢印で示した車体進行方向に向かい搬送ライン4上を走行する。なお、以下の説明において、後述するステップS1からステップS6までの工程は全てハンガ6が搬送ライン4上を走行しながら行われるものである。
【0027】
車両ボデー8が洗浄槽2を構成するハーフディップ部2aの上流端部まで移動すると、ステップS1で、車両ボデー8をその前部を下方にして斜め向きにハーフディップ部2aに入槽させ、車両ボデー8のドアベルトライン付近より下方まで洗浄液内に浸漬する位置で車両を水平にする。
図2は、ハーフディップ部2aにおける車両ボデー8の浸漬状態を示す。図2に示したように、ハーフディップ部2aにおいては、Aの位置に示した袋構造部であるサイドシル20が洗浄液内に浸漬するように、即ち洗浄液面Bよりもサイドシル20を下方に位置させる。特に、洗浄液面がドアベルトライン付近となるようにすることが効率的に脱脂洗浄を行うためには好ましい。
【0028】
ステップS1で車両ボデー8の一部が洗浄液内に浸漬されると、ステップS2で車両ボデー8の洗浄液に浸漬していない部分(以下非浸漬部と称する)のスプレー洗浄を行う。
図1及び図3を用いて前記スプレー洗浄について説明する。
図3は、スプレー洗浄を行う際の車両ボデーの背面図である。
洗浄槽2内の洗浄液の一部は、フルディップ部2cの底面で且つハーフディップ部2aとの境界に設けたストレーナ42で異物の一部を除去し、ポンプ44によって送液される。ポンプ44によって送液された洗浄液は、フィルタ46でストレーナ42で除去し切れなかった異物を除去され、スプレー用配管10に供給される。スプレー用配管は車両ボデー8の進行方向に沿って複数本設けられており、そのそれぞれに複数のスプレーノズル12が設けられている。スプレー用配管10に供給された線浄水は、スプレーノズル12から車両ボデー8に噴射され、車体ボデー8の非浸漬部分を洗浄する。このようにして、洗浄液を洗浄槽2→ポンプ44→フィルタ46→スプレー用配管10→スプレーノズル12→非浸漬部の洗浄→洗浄槽2と循環して利用することで、洗浄液に係るランニングコストが低減できる。
洗浄液の抜き出し口であるストレーナ42の設置位置は、洗浄液が抜き出せる位置であればどこでもよいが、本実施例で配置したようにフルディップ部2cの底面で且つハーフディップ部2aとの境界に設けることが好ましい。これは、槽の形状上、車両ボデー8を脱脂洗浄することによって洗浄液中に存在している鉄粉等のゴミは、フルディップ部2cとハーフディップ部2aとの境界に集まりやすく、本実施例の位置で洗浄液を抜き出すことで、洗浄液中のゴミが積極的に抜き出されてフィルタ46で除去されるため、洗浄槽2内の洗浄液に早期にゴミが溜まることを防止でき、洗浄液の超寿命化が成されるためである。
なお、フィルタ46は2台並列に設置し、どちらか一方を使用し、他方を待機させて予備としておくと、使用中のフィルタに異物が溜まって交換する必要が生じた場合にも待機側のフィルタに切り替え、待機側のフィルタ使用中にフィルタを交換すればよいため運転を停止することがなく好適である。
【0029】
ステップS2でスプレー洗浄が終了すると、ステップS3で車両の前部を、袋構造部即ちサイドシル20の車両前側先端の1/3程度に空気が入るまで持ち上げる。
図4はサイドシル20の斜視図であり、図5は図4におけるC−C断面図である。図4に示したように、サイドシル20は外板22と内板24を張り合わせて構成されており、その長手方向先端部には開口26が設けられている。また、外板22及び内板24の互いに対向する短手方向端部にそれぞれ変形部30、34が設けられ開口部38が形成される。なお、開口部38は一定間隔で複数個設けられている。さらに、開口部38と反対側の短手方向端部にも同様に複数の開口部28が設けられている。
このような構成のサイドシル20においては、車両の前部が持ち上げられ、洗浄液面Dよりも高い位置となった部分に入っていた洗浄液は開口部26、28、38から排出され、空気と入れ替わる。
【0030】
ステップS3で車両ボデー8の前部の持ち上げが終了すると、ステップS4で車両ボデーの前部を下げながら車両の後部を、袋構造部即ちサイドシル20の車両後側端の1/3程度に空気が入るまで持ち上げる。
ステップS3及びステップS4によりサイドシル20内の液が入れ替わり、サイドシル20内の鉄粉などが排出されるので、高い洗浄性を確保することができる。なお、このとき車両ボデーは部分的に浸漬した状態が維持される。
また、ステップS3及びステップS4は境界部2b付近で行われる。
【0031】
ステップS4で車両ボデー8の後部の持ち上げが終了すると、ステップS5でステップS4の体制を維持したまま、即ち車両の後方が持ち上がって車両の前側が下方となった斜め向きの状態でフルディップ部2cに車両ボデー全体を沈め、その後車両ボデー8を水平にする。
【0032】
車両ボデー8がフルディップ部2c内で水平な状態となり、フルディップ部2cの下流端部付近まで車両ボデー8が移動すると、車両ボデー8の前側を上方とした斜め向きに洗浄槽2から出槽し、脱脂洗浄工程が終了する。
【0033】
以上のようにして脱脂洗浄を行うことにより、洗浄槽が1槽であるため脱脂洗浄工程の全長が従来より短縮化されるため、従来よりも設備設置のイニシャルコスト、設備稼働にかかるランニングコストを低減することができる。
また、車両ボデーの急激な姿勢変化回数も削減できるため、車両ボデーへの負担が軽減され外板の薄板化も容易になる。
さらに、車両の前側及び後側を順次持ち上げることで袋構造部即ちサイドシル内の洗浄液を入れ替えることができるため、鉄粉などがサイドシル内に残存せず高い洗浄性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
車両ボデーの急激な姿勢変化回数を削減することで車両ボデーへの負担を軽減するとともに、工程全長を短縮してイニシャルコスト、ランニングコストを低減することができる車両前処理脱脂装置及び車両前処理脱脂方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1における脱脂洗浄工程の構成図である。
【図2】ハーフディップ部における車両ボデーの浸漬状態を示す。
【図3】スプレー洗浄を行う際の車両ボデーの背面図である。
【図4】サイドシルの斜視図である。
【図5】図4におけるC−C断面図である。
【図6】実施例1に係る車両ボデーの脱脂洗浄の手順を示すフローチャートである。
【図7】従来の脱脂洗浄工程の構成図である。
【図8】別の従来の脱脂洗浄工程の構成図である。
【符号の説明】
【0036】
2 洗浄槽
2a ハーフディップ部
2c フルディップ部
8 車両ボデー
10 スプレー用配管
12 スプレーノズル
44 ポンプ
46 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋構造部を有する車両ボデーを脱脂洗浄するための洗浄液を満たした洗浄槽と、該洗浄槽に前記車両ボデーを入槽させ、洗浄槽内で搬送し、出槽させる搬送手段とからなる脱脂洗浄装置において、
前記洗浄槽は、少なくとも前記袋構造部を含む車両ボデーの下部を浸漬させることができる深さを有するハーフディップ部と、前記車両ボデー全体を浸漬させることができる深さを有するフルディップ部とが連続して設けられた1つの槽からなり、
前記搬送手段により、前記洗浄槽のハーフディップ部に前記車両ボデーを部分的に入槽させ、前記袋構造部を含む車両ボデーの下部が洗浄液中に浸漬する深さで水平にして搬送し、前記袋構造部に空気が入るまで車両の前部を持ち上げ、続いて前記車両ボデーを部分的に浸漬させたまま車両ボデーの前部を下げながら後部を持ち上げ、前記フルディップ部で車両ボデー全体を浸漬させてから水平にして搬送し、出槽させるように構成したことを特徴とする脱脂洗浄装置。
【請求項2】
前記車両ボデーの前部の持ち上げ時に、前記袋構造部の体積の1/4〜1/2の空気が袋構造部内に入るように車両を持ち上げることを特徴とする請求項1記載の脱脂洗浄装置。
【請求項3】
前記ハーフディップ部において、前記車両ボデーの非浸漬部分に洗浄液を噴霧する噴霧手段と、
前記洗浄槽中の洗浄液の一部を抜き出すポンプと、
前記ポンプによって抜き出された洗浄液中の異物を取り除くフィルタとを設け、
前記フィルタによって異物を取り除かれた洗浄液を前記噴霧手段に供給することを特徴とする請求項1又は2記載の脱脂洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液の抜き出し部を、前記フルディップ部とハーフディップ部との境界に設けられていることを特徴とする請求項3記載の脱脂洗浄装置。
【請求項5】
前記袋構造部が、車両ボデーのサイドシル及びサイドメンバーの何れか一方又は両方であることを特徴とする請求項1〜4何れか1に記載の脱脂洗浄装置。
【請求項6】
袋構造部を有する車両ボデーを、脱脂洗浄用の洗浄液を満たした洗浄槽に入槽させ、洗浄槽内で搬送し、出槽させる脱脂洗浄方法において、
前記車両ボデーを洗浄槽に部分的に入槽させ、前記袋構造部を含む車両ボデーの下部が洗浄液中に浸漬する深さで車両ボデーを水平にして搬送するとともに、前記袋構造部に空気が入るまで車両の前部を持ち上げ、その後に前記車両ボデーを部分的に浸漬させたまま車両ボデーの前部を下げながら後部を持ち上げ、前記車両ボデー全体を浸漬させてから水平にして搬送し、出槽させることを特徴とする脱脂洗浄方法。
【請求項7】
前記車両ボデーの前部の持ち上げ時、及び前記車両ボデーの後部の持ち上げ時に、前記袋構造部の体積の1/4〜1/2の空気が袋構造部内に入るように車両を持ち上げることを特徴とする請求項6記載の脱脂洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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