説明

車両乗入部又は横断歩道接続部用境界部材

【課題】
側溝の成形用型枠の変更や歩道側部の掘り下げを必要とせずに車両乗入部や横断歩道接続部における歩車道の区分け施工を安価なコストで的確に行えるようにした車両乗入部及び横断歩道接続部用境界部材を提供する。
【解決手段】
車道側部に側溝が設置されている道路構造の車両乗入部又は横断歩道接続部に使用される板状の境界部材であって、車両乗入部や横断歩道接続部において要求される歩道と車道の高低差に相応した厚さ寸法を有し、側溝の歩道側部の上面に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道の側方に歩道が設置されている道路構造において、車両乗入部や横断歩道接続部において歩車道区分けのために使用される境界部材に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、歩道は車道よりも5cm高く設置されており、歩道と車道を区分けするために車道側部上面に設置される境界部材の高さは、普通部分では15cm以上25cm以下とされ、車両乗入部では歩道と境界部材の間に勾配が生じないものとされているので、車両乗入部における境界部材の高さは5cmとされている。
また、従来から交差点等の横断歩道接続部では、車椅子使用者が少しでも昇り降りし易いようにする一方、視覚障害者が杖や足によって車道と歩道の境界を認識し易いようにするとの異なる二つの要請の折衷として、境界部材の高さは1cmから2cmが標準に設定されている。
【0003】
車両乗入部と横断歩道接続部以外の普通部分に設置される境界部材では高さが15cmから25cmの間のものであるから、コンクリートブロック製とすることができるのであるが、車両乗入部や横断歩道接続部に設置される境界部材の高さは1cmから5cmであるから、この厚さの単体をコンクリートブロックで作製したのでは破損する危険性が高い。
【0004】
この破損問題を回避するためには、前記普通部分に使用するコンクリートブロック製の境界部材を車道からの突出高さが1cmから5cmとなるように車道側部に埋設する必要がある。しかしながら、この埋設のために車道側部を所要深さに切り下げる作業は容易でなく、施工コストを上昇させるものであった。
【0005】
車道側部に排水用の側溝を設置してある場合には、図8に示したように側溝15の片側上面部16を1cmから5cmの所要の高さに嵩上げすることによって、側溝15と境界部材を一体成形する対応(特許文献1参照)、あるいは、図9に示したように側溝15の歩道側部上面からの突出高さが1cmから5cmとなるようにコンクリートブロック製の境界部材17を側溝の横に埋め込む対応(特許文献2、図2参照)が行われている。
【0006】
しかしながら、図8に示した一体成形による対応では、車両乗入部や横断歩道接続部用の側溝15を成形するために、それら以外の普通部分用の側溝の型枠とは別の型枠を製作保有する必要があり、また、側溝の全ての種類において同様の対応が必要であるため、型枠費の負担が過大となる難点がある。
図9の境界部材17を側溝15の真横に埋め込む対応では、側溝15自体は車両乗入部や横断歩道接続部と前記普通部分とで異なることがないので、型枠費の増大問題はないが、車道4の幅の確保を優先すれば、歩道3の幅が狭いものとなるだけでなく、車道4の排水を妨げる構造にもなる。また、歩道3の側部を境界部材の埋設分だけ掘り下げることが必要となり、施工性が良くない。
【0007】
図10に示したように側溝15の歩道側部の上面に切下げ肩部18を形成し、当該肩部18にコンクリートブロック製の境界部材17の一部を入り込ませる対応(特許文献3参照)をとれば、図8の対応よりも歩道幅の減少を抑制することができるが、この場合も歩道側部を境界部材17の埋設分だけ掘り下げることが必要となり、施工性が良くない。また、側溝15の成形に当っては切下げ肩部18の形成のために成形用型枠内に特別の仕切り枠板を取り付ける必要があり、作業が煩雑となる。
図8に示す対応、図9に示す対応、図10に示す対応のいずれを採用するにしても、車両乗入部や横断歩道接続部の移動や新設には大幅な改造工事が必要となる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−160905号公報
【特許文献2】特開2004−285819号公報
【特許文献3】特開2001−040753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、側溝の成形用型枠の変更や歩道側部の掘り下げを必要とせずに車両乗入部や横断歩道接続部における歩車道の区分け施工を安価なコストで的確に行えるようにした車両乗入部及び横断歩道接続部用境界部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の境界部材は、車道側部に側溝が設置されている道路構造の車両乗入部又は横断歩道接続部に使用される板状の境界部材であって、車両乗入部や横断歩道接続部において要求される歩道と車道の高低差に相応した厚さ寸法を有し、側溝の歩道側部の上面に装着されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の境界部材は、車両乗入部や横断歩道接続部において要求される歩道と車道の高低差に相応した厚さ寸法を有するため、車両の乗入に支障を与えることがないとともに、横断歩道接続部における車椅子使用者の歩道と車道間の昇り降りが容易になされ、視覚障害者の杖や足による車道と歩道の識別も容易になされるものである。
また、この境界部材は車道側部に埋設されている側溝の歩道側上面部に装着して使用されるものであり、車両乗入部及び横断歩道接続部以外の普通部分と車両乗入部及び横断歩道接続部とで異なる断面形状の側溝を使用することがないため、側溝成形用の型枠費の増大を招くことがなく、また、歩道側部を掘り下げて施工する必要がないため、作業コストを低減することができる。
【実施例】
【0012】
板状の境界部材1は、鉄や鋳物、樹脂、プラスチック、ゴム、あるいはレジンコンクリートなどの適度な変形性能を有する材料で作製され、車両が載った場合でも破損しないように配慮する。金属系のものは、耐久性が高く十分な強度を有するので、錆の懸念を除けば十分に使用可能な材料である。また、側溝のコンクリートと比較して耐久性が劣ると思われるものでも、定期的な取替えをすることにより、機能が損なわれないように配慮する。
これらの材料は簡単に着色することができる素材であるから、車両乗入部2や横断歩道6の存在をより明確にするために境界部材1を色付きにすることもできる。
【0013】
境界部材1の厚さ寸法は、車両乗入部2に使用する場合には、歩道3と車道4の通常の高低差である5cm程度に設定し、図2ないし図4に示したように横断歩道接続部5に使用する場合には、歩道3と車道4の通常の高低差である1cmから2cm程度に設定する。
境界部材1の幅寸法は、車両乗入部及び横断歩道接続部以外の普通部分に設置される境界部材14の幅寸法と同様に設定してある。これによって、境界部材1と境界部材14が一本線として繋がり、歩道と車道を識別する区分け手段として機能する。
【0014】
境界部材1の側溝7への装着位置としては、図2に示したように側溝7の歩道側部の上面であって雨水流入孔8に近接した部位、図3に示したように側溝7の歩道側部の上面であって歩道3に近接した部位、あるいは、図4に示したように勾配可変型側溝7の歩道側部の上面であって雨水集結溝9に近接した部位などを選択することができる。
【0015】
境界部材1の側溝7への装着方法としては、図5に示したように側溝7の歩道側部の上面または境界部材1の下面に接着剤10を塗布して接着する方法、図6に示したように側溝7の歩道側部に埋設してあるナット型インサート11に境界部材1の透孔を通して締付用螺子部材12を捻じ込む方法、図7に示したようにL字型のプレート13の水平辺13aを境界部材1に接着や螺子などによって取り付け、プレート13の垂直辺13bを側溝7の側面に沿って差し込む方法などがある。
図示の実施例では、車椅子の昇り降りを楽にするために境界部材1の車道側の端部は丸められている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の境界部材を車両乗入部と交差点の横断歩道接続部に使用した実施例の模式的な斜視図である。
【図2】境界部材を側溝の雨水流入孔に近接した部位に装着した実施例を示す断面図である。
【図3】境界部材を側溝の歩道に近接した部位に装着した実施例を示す断面図である。
【図4】境界部材を勾配可変型側溝の雨水集結溝に近接した部位に装着した実施例を示す断面図である。
【図5】境界部材を接着剤で側溝に装着する実施例を示す断面図である。
【図6】境界部材を螺子部材で側溝に装着する実施例を示す断面図である。
【図7】境界部材をL字型のプレートによって側溝に装着する実施例を示す断面図である。
【図8】境界部材を側溝と一体成形することによって、歩道と車道を区分けした従来方法の断面図である。
【図9】コンクリートブロック製の境界部材を側溝の横に設置することによって、歩道と車道を区分けした従来方法の断面図である。
【図10】コンクリートブロック製の境界部材を側溝の切下げ肩部に入り込ませることによって、歩道と車道を区分けした従来方法の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 境界部材
2 車両乗入部
3 歩道
4 車道
5 横断歩道接続部
6 横断歩道
7 側溝
8 側溝の雨水流入孔
9 勾配可変型側溝の雨水集結溝
10 接着剤
11 ナット型インサート
12 螺子部材
13 L字型のプレート
14 普通部分のコンクリートブロック製の境界部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道側部に側溝が設置されている道路構造の車両乗入部又は横断歩道接続部に使用される板状の境界部材であって、車両乗入部や横断歩道接続部において要求される歩道と車道の高低差に相応した厚さ寸法を有し、側溝の歩道側部の上面に装着される車両乗入部又は横断歩道接続部用境界部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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