説明

車両充電システム、及び車両充電方法

【課題】複数の電力供給部を用いて複数の車両の充電を同時に行う場合において、効率良く充電を行うこと。
【解決手段】充電スタンドX,Y,Zの優先順位を設定する。この優先順位は、優先順位の高い充電スタンドほど、当該充電スタンドから供給される電力量が大きくなることを示す。そして、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量を決定する場合、設定部16は、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量の合計が予め設定されるピーク電力量PP1以下で、かつ各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量が予め設定される最小電力量Pmin以上となるように決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される蓄電池を充電するための車両充電システム、及び車両充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載された蓄電池を充電するための車両充電システムとして、例えば特許文献1の充電装置が知られている。特許文献1の充電装置は、1台の充電装置に複数台の車両を接続し、同時に複数台の車両の充電を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−130593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の充電装置では、複数台の車両を同時に充電する場合、充電の優先順位にしたがって各車両に分配する電力量を決定している。このため、優先順位が低い車両については、分配される電力量が極端に小さくなり、充電効率が低下する可能性があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、複数の電力供給部を用いて複数の車両の充電を同時に行う場合において、効率良く充電を行うことができる車両充電システム、及び車両充電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載される蓄電池の充電を行う車両充電システムであって、前記車両に充電用の電力を供給するとともに、システム全体で複数有する電力供給部と、各電力供給部から供給する電力量の大小を規定する優先順位を設定する優先度設定部と、前記優先順位にしたがって各電力供給部が供給する電力量を決定する電力量決定部と、を備え、前記電力量決定部は、各電力供給部が供給する電力量の合計が予め設定される最大供給電力量以下で、かつ各電力供給部が供給する電力量が予め設定される最小電力量以上となるように各電力供給部の電力量を決定することを要旨とする。
【0007】
これによれば、複数の電力供給部で車両の充電を行う場合であっても、各電力供給部が供給する電力量は、予め設定される最小電力量以上となるように決定される。すなわち、優先順位が低い電力供給部に接続された車両であっても、最小電力量分の電力が供給されて充電が行われるので、当該車両に供給される電力量が極端に小さくなることがない。したがって、複数の電力供給部を用いて複数の車両の充電を同時に行う場合であっても、効率良く充電を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両充電システムにおいて、前記電力量決定部は、さらに、各電力供給部が供給する電力量が予め設定される最大電力量を超えないように各電力供給部の電力量を決定することを要旨とする。
【0009】
これによれば、複数の電力供給部で車両の充電を行う場合であっても、各電力供給部が供給する電力量は、予め設定される最大電力量を超えないように決定される。このため、優先順位が高い電力供給部に接続された車両に対して供給される電力量が極端に大きくなることがなく、他の電力供給部に接続された車両に対しても電力を確実に分配することができる。したがって、効率良く充電を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両充電システムにおいて、前記電力量決定部は、前記優先順位の最も低い電力供給部から順に電力量を決定することを要旨とする。
【0011】
これによれば、優先順位が低い電力供給部から供給する電力量を決定するので、その電力供給部が供給する電力量として最小電力量を確実に確保することができる。すなわち、各電力供給部の電力量を効率良く決定することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両充電システムにおいて、前記電力量決定部は、前記優先順位の最も高い電力供給部の電力量を前記最大電力量とした時に、システム全体として充電に使用可能な電力量に余剰分が生じる場合、他の電力供給部の電力量を再度決定することを要旨とする。
【0013】
これによれば、電力の余剰分が他の電力供給部に対して再分配されることになるので、優先順位が低い他の電力供給部の電力量を大きくすることができる。したがって、効率良く充電を行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両充電システムにおいて、各電力供給部が前記車両に供給した電力量を計測する電力計測部と、車両に搭載された蓄電池の電池容量を判別する電池容量判別部と、を備え、前記優先度設定部は、前記電力計測部の計測結果と前記電池容量判別部の判別結果をもとに、前記電池容量に対する前記蓄電池が前記電力供給部から供給された電力で充電された充電量の割合から前記優先順位を設定することを要旨とする。
【0015】
これによれば、電池容量に対する充電量の割合から優先順位を設定する。このため、満充電の状態になるまでに必要な充電量が多い車両ほど、供給する電力量が多くなる。例えば、現在の充電量のみに基づき優先順位を設定した場合は、各車両の充電量が同じであると、優先順位が同じとなってしまう。つまり、この場合は、電池容量に対して充電量の割合が高い車両と低い車両が同じ優先順位のもとで充電が行われることになる。しかし、本発明によれば、電池容量に対して充電量の割合が低い車両の優先順位を高めて充電することにより、複数の電力供給部を用いて複数の車両の充電を同時に行う場合であっても、効率良く充電を行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両充電システムにおいて、車種を判別する車種判別部を備え、前記電池容量判別部は、前記車種判別部が判別した車種をもとに電池容量を判別することを要旨とする。これによれば、車種判別を行って優先順位の設定に必要な情報を得ることから、車両毎に電池容量などが異なる場合であっても、正確に優先順位を設定することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、車両に充電用の電力を供給する複数の電力供給部を有する車両充電システムを用いて前記車両の蓄電池に充電を行う車両充電方法であって、各電力供給部から供給する電力量の大小を規定する優先順位を設定するとともに、前記優先順位にしたがって各電力供給部が供給する電力量を決定し、その決定した電力量で充電を行い、前記各電力供給部が供給する電力量を決定するに際しては、各電力供給部が供給する電力量の合計が予め設定される最大供給電力量以下で、かつ各電力供給部が供給する電力量が予め設定される最小電力量以上となるように決定することを要旨とする。
【0018】
これによれば、複数の電力供給部で車両の充電を行う場合であっても、各電力供給部が供給する電力量は、予め設定される最小電力量以上となるように決定される。すなわち、優先順位が低い電力供給部に接続された車両であっても、最小電力量分の電力が供給されて充電が行われるので、当該車両に供給される電力量が極端に小さくなることがない。したがって、複数の電力供給部を用いて複数の車両の充電を同時に行う場合であっても、効率良く充電を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の電力供給部を用いて複数の車両の充電を同時に行う場合において、効率良く充電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における車両充電システムの構成を示すブロック図。
【図2】各充電スタンドが供給する電力量の概要を説明する説明図。
【図3】車両充電システムの動作を説明するフローチャート。
【図4】(a)は、各電力供給部が供給する電力量を決定するための初期設定値の具体例を説明する説明図、(b),(c)は、各電力供給部が供給する電力量の計算例を説明する説明図。
【図5】第2の実施形態における車両充電システムの構成を示すブロック図。
【図6】車種別の最大充電電流値と電池容量を説明する説明図。
【図7】優先係数を算出する処理を示すフローチャート。
【図8】優先係数を算出する場合の具体例を示す模式図。
【図9】優先係数の計算例を説明する説明図。
【図10】別例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、車両充電システムKは、電力系統から送電される電力を受電する受電設備10と、受電設備10に接続されるとともに、車両の充電時に充電ケーブルを介して車両に接続される複数の充電スタンドX,Y,Zから構成されている。充電スタンドX,Y,Zは、受電設備10から供給される電力を、充電用の電力として充電対象の車両に供給する電力供給部となる。なお、本実施形態の車両充電システムKは3台の充電スタンドX,Y,Zを有し、同時に3台の車両A,B,Cを充電可能とされている。なお、1台の充電スタンドX,Y,Zには、1台の車両が接続される。また、各充電スタンドX,Y,Zは同一構成とされており、図1ではその詳細な構成を充電スタンドXのみで図示している。また、受電設備10には、その受電設備10から電力が供給される充電スタンドX,Y,Z以外の他の負荷設備も接続されている。負荷設備とは、車両充電システムKの設置箇所に配設されている照明器具などである。
【0022】
各充電スタンドX,Y,Zには、過電流が流れた場合に電流の流れを遮断する電力遮断部11と、車両に受電を行う際の充電電流指令値を指示する電力制御部12と、が設けられている。EVやPHVなどの車両Aには、当該車両の原動機となる図示しない電動機(モータ)への供給電力を蓄える蓄電池13と、蓄電池13への充電を制御する充電制御部14と、が搭載されている。各充電スタンドX,Y,Zの電力制御部12は、車両の充電制御部14に充電電流指令値を指示する。一方、充電電流指令値を入力した充電制御部14は、その充電電流指令値にしたがって充電制御を実行する。なお、図1に図示する車両B,Cについても、車両Aと同様に、蓄電池13と充電制御部14が搭載されている。
【0023】
また、車両充電システムKには、システム全体の使用電力量を計測する電力計測部15と、電力計測部15の計測結果及び設置者による各種の設定値をもとに各充電スタンドX,Y,Zに指示する充電電流指令値を決定する設定部16と、が接続されている。設定部16は、各充電スタンドX,Y,Zの電力制御部12に接続されているとともに、各充電スタンドX,Y,Zの電力制御部12に決定した充電電流指令値を指示する。
【0024】
設定部16には、設置者の入力操作により、ピーク電力量PP1、制御単位時間Tx、スタンド数N、最小電力量Pmin、及び最大電力量Pmaxが設定可能とされている。ピーク電力量PP1は、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量の合計となる最大供給電力量である。制御単位時間Txは、設定部16が各充電スタンドX,Y,Zに指示する充電電流指令値を決定するための時間、すなわち充電電流指令値を指示する時間である。スタンド数Nは、受電設備10に接続されている充電スタンドの数である。最小電力量Pminは、充電を行う際、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量の最小値である。最大電力量Pmaxは、充電を行う際、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量の最大値である。
【0025】
本実施形態の設定部16は、充電を行う際、以下に説明する3つの条件を満たすように、各充電スタンドX,Y,Zに指示する充電電流指令値を決定する。第1の条件は、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量の合計がピーク電力量PP1(最大供給電力量)を超えないようにすることである。第2の条件は、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量を、最小電力量Pmin以上とすることである。第3の条件は、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量が、最大電力量Pmaxを超えないようにすることである。
【0026】
図2は、本実施形態の車両充電システムKで3台の車両A,B,Cを充電する場合に、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量のイメージを図示している。
図2に図示する例では、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量の合計(積算電力量)がピーク電力量PP1となっている。そして、充電スタンドXが供給する電力量は、最小電力量Pminとされている一方で、充電スタンドZが供給する電力量は、最大電力量Pmaxとされている。なお、充電スタンドYが供給する電力量は、最小電力量Pminよりも大きい値であって、かつ最大電力量Pmaxよりも小さい値とされている。具体的に言えば、充電スタンドYが供給する電力量は、ピーク電力量PP1から、最小電力量Pminと最大電力量Pmaxの加算値を減算した電力量とされている。このように本実施形態の車両充電システムKでは、各充電スタンドX,Y,Zの電力量が最小電力量Pmin以上となるように決定される。
【0027】
以下、設定部16が、各充電スタンドX,Y,Zの電力量を決定する方法について、図3にしたがって説明する。なお、以下の説明では、設置者が、設定部16にピーク電力量PP1、制御単位時間Tx、スタンド数N、最小電力量Pmin、及び最大電力量Pmaxをそれぞれ設定しているものとする。また、以下の説明は、各充電スタンドX,Y,Zが同時に充電を行うものとする。また、本実施形態では、設定部16が以下に説明する処理を行うことにより、優先度設定部及び電力量決定部として機能する。
【0028】
設定部16は、最初に、各充電スタンドX,Y,Xの電力量の大小を規定する優先順位を決定し、その優先順位に対応する優先係数を設定する(ステップS11)。優先係数には、優先度の高い充電スタンドほど高い値が設定される。本実施形態の車両充電システムKでは、優先係数に高い値を設定した充電スタンドほど優先度が高く、供給する電力量が大きい充電スタンドとなる。優先係数は、設定部16に設定された制御単位時間Tx毎に再設定される。このため、例えば、現在の制御単位において充電スタンドXに最も高い優先係数が設定されている場合であっても、次の制御単位では、最も高い優先係数が設定される充電スタンドが変更されるときもあれば、維持されるときもある。また、優先順位は、予め定めた規定をもとに決定される。例えば、制御単位時間が到来した時点において充電対象となる各車両の充電量の多少により、少ない順に優先順位を高く決定しても良い。
【0029】
ステップS11で優先係数を設定した設定部16は、次に、優先順位が最も低い優先度低の充電スタンドの設定電力値P1を算出する(ステップS12)。この設定電力値P1は、優先度低の充電スタンドの電力量に相当する。設定部16は、各充電スタンドの優先係数の合算値から優先度低の充電スタンドに設定された優先係数の比率を算出し、その算出値とシステム全体において充電に使用可能な電力量(最大:ピーク電力量PP1)を乗算することで設定電力値P1を算出する。充電に使用可能な電力量は、電力計測部15の計測結果をもとに決定される。そして、設定部16は、ピーク電力量PP1の電力を使用できる場合、充電に使用可能な電力量をピーク電力量PP1として各充電スタンドX,Y,Zの電力量を決定する。
【0030】
次に、設定部16は、ステップS12で算出した設定電力値P1と最小電力量Pminを比較し、設定電力値P1が最小電力量Pmin未満の値か否かを判定する(ステップS13)。ステップS13の処理は、前述した第2の条件に適合するか否か、すなわち各充電スタンドX,Y,Zの電力量が最小電力量Pmin未満とならないようにするために行う。ステップS13の判定結果が肯定(設定電力値P1<最小電力量Pmin)の場合、設定部16は、最小電力量Pminを、設定電力値P1とするように変更する(ステップS14)。一方、ステップS13の判定結果が否定(設定電力値P1≧最小電力量Pmin)の場合、設定部16は、ステップS12の算出値を設定電力値P1とする(ステップS15)。
【0031】
ステップS14又はステップS15で設定電力値P1を決定した設定部16は、ステップS16からの処理により、優先度低よりも優先順位が高い優先度中の充電スタンドの設定電力値P2を算出する。設定電力値P2は、優先度中の充電スタンドの電力量に相当する。
【0032】
設定電力値P2を算出するにあたって設定部16は、最初に、ステップS12で使用したシステム全体において充電に使用可能な電力量から設定電力値P1分の電力量を減算することで、利用可能電力量PP2を算出する(ステップS16)。次に、設定部16は、優先度中の充電スタンドの設定電力値P2を算出する(ステップS17)。設定部16は、先に優先度低の充電スタンドの電力量を決定しているので、優先度中と優先度高の充電スタンドの優先係数の合算値から優先度中の充電スタンドに設定された優先係数の比率を算出し、その算出値と利用可能電力量PP2を乗算することで設定電力値P2を算出する。
【0033】
次に、設定部16は、ステップS17で算出した設定電力値P2と最小電力量Pminを比較し、設定電力値P2が最小電力量Pmin未満の値か否かを判定する(ステップS18)。ステップS18の処理は、ステップS13の処理と同様に、前述した第2の条件に適合するか否か、すなわち各充電スタンドX,Y,Zの電力量が最小電力量Pmin未満とならないようにするために行う。ステップS18の判定結果が肯定(設定電力値P2<最小電力量Pmin)の場合、設定部16は、最小電力量Pminを、設定電力値P2とするように変更する(ステップS19)。一方、ステップS18の判定結果が否定(設定電力値P2≧最小電力量Pmin)の場合、設定部16は、ステップS18の算出値を設定電力値P2とする(ステップS20)。
【0034】
ステップS19又はステップS20で設定電力値P2を決定した設定部16は、ステップS21からの処理により、優先順位が最も高い優先度高の充電スタンドの設定電力値P3を算出する。設定電力値P3は、優先度高の充電スタンドの電力量に相当する。
【0035】
設定部16は、優先度高の充電スタンドの設定電力値P3を算出する(ステップS21)。設定部16は、先に優先度低と優先度中の充電スタンドの電力量を決定しているので、システム全体において充電に使用可能な電力量(最大:ピーク電力量PP1)から、設定電力値P1と設定電力値P2の合算値分の電力量を減算することにより、設定電力値P3を算出する。
【0036】
次に、設定部16は、ステップS21で算出した設定電力値P3と最大電力量Pmaxを比較し、設定電力値P3が最大電力量Pmaxを超える値であるか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22の処理は、前述した第3の条件に適合するか否か、すなわち各充電スタンドX,Y,Zの電力量が最大電力量Pmaxを超える値とならないようにするために行う。ステップS22の判定結果が肯定(設定電力値P3>最大電力量Pmax)の場合、設定部16は、最大電力量Pmaxを、設定電力値P3とするように変更する(ステップS23)。一方、ステップS22の判定結果が否定(設定電力値P3≦最大電力量Pmax)の場合、設定部16は、ステップS21の算出値を設定電力値P3とする(ステップS24)。
【0037】
次に、設定部16は、設定電力値P3を最大電力量Pmaxに変更したか否かを判定する(ステップS25)。設定電力値P3を最大電力量Pmaxに変更した場合、システム全体において充電に使用可能な電力量(最大:ピーク電力量PP1)から、設定電力値P1〜P3の合算値分の電力量を減算すると、余剰電力が発生することになる。このため、ステップS25は、その余剰電力を、優先度高を除く他の充電スタンドに分配するために行う。そして、設定部16は、ステップS25の判定結果が肯定の場合、設定電力値P1,P2を再演算する(ステップS26)。一方、ステップS25の判定結果が否定の場合、各充電スタンドX,Y,Zの電力量の合計が、システム全体において充電に使用可能な電力量となっている。このため、設定部16は、ステップS24までの処理で算出した設定電力値P1〜P3を、当該制御単位時間において各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量として確定する。
【0038】
一方、ステップS26において設定部16は、システム全体において充電に使用可能な電力量から設定電力値P3を減算した残り電力量を、ステップS11で優先度低及び優先度中の充電スタンドに設定した優先係数にしたがって分配する。具体的に言えば、設定部16は、最初に、優先度低及び優先度中の充電スタンドの優先係数の合算値から優先度低の充電スタンドに設定された優先係数の比率を算出し、その算出値と残り電力量を乗算することで設定電力値P1を再演算する。次に、設定部16は、残り電力量から、再演算した設定電力値P1を減算することで、設定電力値P2を再演算する。そして、設定部16は、ステップS26で再演算した設定電力値P1,P2と設定電力値P3を、当該制御単位時間において各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量として確定する。なお、このときも、前述した第2の条件及び第3の条件を満たすように、設定電力値P1,P2を算出する。
【0039】
そして、車両充電システムKでは、各充電スタンドX,Y,Zから設定電力値P1〜P3に対応する電力量が各車両に供給されることにより、充電が実施される(ステップS27)。ステップS27の充電は、制御単位時間Txの間、継続して行われる。すなわち、設定部16は、制御単位時間Txが到来すると、再び、ステップS11からの処理を行い、設定電力値P1〜P3を再演算する。
【0040】
なお、設定部16は、設定電力値P1〜P3を決定すると、各充電スタンドX,Y,Zから設定電力値P1〜P3に応じた電力を供給させるためのそれぞれの充電電流指令値を算出し、各充電スタンドX,Y,Zの電力制御部12に指示する。充電電流指令値は、設定電力値P1〜P3と基準電圧値(例えば、200V)を用いて算出する。充電電流指令値は、各充電スタンドX,Y,Zの充電対象となる車両A〜Cの充電制御部14に指示される。そして、各充電制御部14は、充電電流指令値にしたがって充電制御を実行する。
【0041】
以下、本実施形態の車両充電システムKの作用を、図4に示す具体例にしたがって説明する。
図4(a)は、具体例を説明するためのピーク電力量PP1、制御単位時間Tx、スタンド数N、最小電力量Pmin、及び最大電力量Pmaxの各初期設定値を示す。これらの設定値は、車両充電システムKの設置者により、車両充電システムKの設定部16に入力される。
【0042】
車両充電システムKの設定部16は、充電スタンドX,Y,Zのそれぞれに車両A〜Cが接続されて同時に充電を行う場合、各充電スタンドX,Y,Zの優先係数を設定する。この具体例では、図4(b)に示すように、充電スタンドXの優先係数Kaを「0.2」、充電スタンドYの優先係数Kbを「0.5」、充電スタンドZの優先係数Kcを「1」とする。このような優先係数を設定した場合は、充電スタンドX<充電スタンドY<充電スタンドZの順に優先順位が高いことになる。
【0043】
そして、設定部16は、先に設定した優先係数にしたがって優先順位の低い充電スタンドから当該充電スタンドの設定電力値を決定する。最初に、設定部16は、優先度低の充電スタンドXの設定電力値P1を決定する。この具体例において設定電力値P1は、図4(b)に示す式1〜式3にしたがって決定される。具体的に言えば、設定部16は、図3のステップS12の処理において、式1及び式2により、設定電力値P1として「0.7kw」を算出する。式1は、各充電スタンドX,Y,Zの優先係数の合算値を算出する式である。式2は、式1の合算値に対する充電スタンドXの優先係数Kaの比率を、充電に使用可能な電力量(ピーク電力量PP1)に乗算する式である。
【0044】
そして、設定部16は、図3のステップS13の処理において式3により、算出した設定電力値P1と最小電力量Pminを比較する。この具体例では、設定電力値P1として「0.7kw」が算出されており、この値は最小電力量Pmin(1.2kw)よりも小さい。このため、設定部16は、図3のステップS14の処理において、充電スタンドXの設定電力値P1を、算出した「0.7kw」から最小電力量Pminの「1.2kw」に変更し、決定する。
【0045】
次に、設定部16は、充電スタンドXよりも優先順位が高い優先度中の充電スタンドYの設定電力値P2を決定する。この具体例において設定電力値P2は、図4(b)に示す式4〜式7にしたがって決定される。具体的に言えば、設定部16は、図3のステップS16の処理において、式4により、利用可能電力量PP2として「4.8kw」を算出する。式4は、充電に使用可能な電力量(ピーク電力量PP1)から、設定電力値P1分の電力量を減算する式である。次に、設定部16は、図3のステップS17の処理において、式5及び式6により、設定電力値P2として「1.6kw」を算出する。式5は、充電スタンドY,Zの優先係数の合算値を算出する式である。式6は、式5の合算値に対する充電スタンドYの優先係数Kbの比率を、利用可能電力量PP2に乗算する式である。
【0046】
そして、設定部16は、図3のステップS18の処理において式7により、算出した設定電力値P2と最小電力量Pminを比較する。この具体例では、設定電力値P2として「1.6kw」が算出されており、この値は最小電力量Pmin(1.2kw)よりも大きい。このため、設定部16は、図3のステップS20の処理において、充電スタンドYの設定電力値P2を、算出した「1.6kw」に決定する。
【0047】
次に、設定部16は、優先順位の最も高い優先度高の充電スタンドZの設定電力値P3を決定する。この具体例において設定電力値P3は、図4(b)に示す式8及び式9にしたがって決定される。具体的に言えば、設定部16は、図3のステップS21の処理において、式8により、設定電力値P3として「3.2kw」を算出する。式8は、ピーク電力量PP1から設定電力値P1と設定電力値P2の合算値分の電力量を減算する式である。
【0048】
そして、設定部16は、図3のステップS22の処理において式9により、算出した設定電力値P3と最大電力量Pmaxを比較する。この具体例では、設定電力値P3として「3.2kw」が算出されており、この値は最大電力量Pmax(4kw)よりも小さい。このため、設定部16は、図3のステップS24の処理において、充電スタンドZの設定電力値P3を、算出した「3.2kw」に決定する。
【0049】
このように各充電スタンドX,Y,Zの設定電力値P1〜P3を決定した設定部16は、設定電力値P1〜P3に相当する電力量を供給するための充電電流指令値を算出するとともに、各充電スタンドX,Y,Zの電力制御部12に充電電流指令値を送信する。充電電流指令値を受信した各電力制御部12は、車両A〜Cの充電制御部14に充電電流指令値を送信する。そして、各充電制御部14は、充電電流指令値にしたがって蓄電池13の充電制御を行う。
【0050】
本実施形態の車両充電システムKでは、前述のように複数台の充電スタンドX,Y,Zで充電を同時に行う場合、充電スタンドX,Y,Zの優先順位を決定し、その優先順位が高い充電スタンドほど供給する電力量が高くなるように制御を行う。そして、車両充電システムKは、優先順位にしたがって充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量を決定する場合であっても、最も優先順位が低い充電スタンドの電力量として最小電力量Pminを保証させるようになっている。すなわち、最小電力量Pminを保証することで、優先順位の低い充電スタンドで充電される車両の充電時間が極端に長くなることを抑制している。その結果、複数台の充電スタンドで充電を同時に行わせる場合であっても、車両充電システムK全体の充電効率の低下を抑制できる。
【0051】
なお、図4(c)は、最大電力量Pmaxを「3kw」とし、その他の初期設定値を図4(a)に示す値とした時の各充電スタンドX,Y,Zの設定電力値P1〜P3を決定する具体例を示す。この場合、優先度高の充電スタンドZの設定電力値P3は、先に説明したように式8及び式9をもとに「3.2kw」と算出されている。この算出された「3.2kw」は、図4(c)の条件に当てはめた場合、最大電力量Pmax(3kw)よりも大きい。このため、設定部16は、図3のステップS23の処理により、充電スタンドZの設定電力値P3を、算出した「3.2kw」から最大電力量Pmaxの「3kw」に変更し、決定する。そして、設定部16は、設定電力値P3を最大電力量Pmaxとしたことにより、図3のステップS26の処理により、設定電力値P1,P2を再演算する。
【0052】
設定部16は、最初に、優先度低の充電スタンドXの設定電力値P1を再演算する。この具体例において設定電力値P1は、図4(c)に示す式10〜式12にしたがって決定される。具体的に言えば、設定部16は、式10及び式11により、設定電力値P1として「0.85kw」を算出する。式10は、充電スタンドX,Yの優先係数の合算値を算出する式である。式11は、式10の合算値に対する充電スタンドXの優先係数Kaの比率を、充電に使用可能な電力量(ピーク電力量PP1)から設定電力値P3分の電力量を減算した電力量(具体例では3kw)を乗算する式である。
【0053】
そして、設定部16は、算出した設定電力値P1と最小電力量Pminを比較する。この具体例では、設定電力値P1として「0.85kw」が算出されており、この値は最小電力量Pmin(1.2kw)よりも小さい。このため、設定部16は、充電スタンドXの設定電力値P1を、算出した「0.85kw」から最小電力量Pminの「1.2kw」に変更し、決定する。
【0054】
次に、設定部16は、優先度中の充電スタンドYの設定電力値P2を決定する。この具体例において設定電力値P2は、図4(c)に示す式13及び式14にしたがって決定される。具体的に言えば、設定部16は、式13により、設定電力値P2として「1.8kw」を算出する。式13は、充電に使用可能な電力量(ピーク電力量PP1)から設定電力値P3分の電力量を減算した電力量(具体例では3kw)に対し、設定電力値P1分の電力量を減算する式である。そして、設定部16は、式14により、算出した設定電力値P2と最小電力量Pminを比較する。この具体例では、設定電力値P2として「1.8kw」が算出されており、この値は最小電力量Pmin(1.2kw)よりも大きい。このため、設定部16は、充電スタンドYの設定電力値P2を、算出した「1.8kw」に決定する。
【0055】
本実施形態の車両充電システムKでは、優先度高の充電スタンドの設定電力値P3が最大電力量Pmaxに抑えられた場合、充電に使用可能な電力量の余剰分を他の充電スタンドに分配する。具体的に言えば、図4(b)に示すように設定電力値P1,P2が決定される一方で、設定電力値P3が最大電力量Pmax(3kw)に抑えられた場合、充電に使用する電力量は、1.2kw+1.6kw+3kw=5.8kwとなる。そして、充電に使用可能なピーク電力量PP1は6kwのため、0.2kwが電力の余剰分となる。このため、余剰分は、図4(c)に示すように、充電スタンドX,Yに分配される。これにより、本実施形態の車両充電システムKは、最大電力量Pmaxを設定することにより、供給される電力量が特定の充電スタンドに極端に偏ることはない。そして、最大電力量Pmaxに抑えたことで発生した余剰分の電力を他の充電スタンドに分配することで、充電に使用可能な電力量の範囲内で、かつその電力を最大限に使用して各充電スタンドX,Y,Zによる充電を行わせることができる。その結果、複数台の充電スタンドで充電を同時に行わせる場合であっても、車両充電システムK全体の充電効率の低下を抑制できる。
【0056】
なお、図4は、全ての充電スタンドX,Y,Zを使用して充電を行う場合を説明したが、1台の充電スタンドを使用して充電を行う場合や2台の充電スタンドを使用して充電を行う場合は、以下に説明するように充電が行われる。具体的に言えば、1台の充電スタンドを使用して充電を行う場合は、最大電力量Pmaxを越えない設定電力値を用いて充電が行われる。また、2台の充電スタンドを使用して充電を行う場合は、優先係数にしたがって、図4を用いて説明した計算方法で充電スタンドの設定電力値がそれぞれ決定される。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)設定部16は、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量の合計が予め設定される最大供給電力量(ピーク電力量PP1)以下で、かつ各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量が予め設定される最小電力量Pmin以上となるように各充電スタンドX,Y,Zの電力量を決定する。このため、優先順位が低い充電スタンドに接続された車両であっても、最小電力量Pmin分の電力が供給されて充電が行われるので、当該車両に供給される電力量が極端に小さくなることがない。つまり、当該車両の充電時間が極端に長くなることがない。したがって、複数の充電スタンドX,Y,Zを用いて複数の車両の充電を同時に行う場合であっても、効率良く充電を行うことができる。
【0058】
(2)設定部16は、各充電スタンドX,Y,Zが供給する電力量が予め設定される最大電力量Pmaxを超えないように各充電スタンドX,Y,Zの電力量を決定する。このため、優先順位が高い充電スタンドに接続された車両に供給される電力量が極端に大きくなることがなく、他の充電スタンドに接続された車両に対しても電力を確実に分配することができる。したがって、効率良く充電を行うことができる。
【0059】
(3)設定部16は、優先順位が低い充電スタンドから順に電力量を決定する。このため、その充電スタンドの電力量として最小電力量Pmin以上の電力量を確実に確保することができる。その結果、各充電スタンドX,Y,Zの電力量を効率良く決定することができる。すなわち、優先順位が高い充電スタンドの電力量から決定した場合、優先順位が最も低い充電スタンドの電力量として最小電力量Pminを確保できない虞がある。この場合は、各充電スタンドX,Y,Zの電力量を再演算することになるが、優先順位が最も低い充電スタンドの電力量を最小電力量Pminとするために他の充電スタンドの電力量を如何なる値に設定すれば良いか想定し難く、演算処理が複雑化する虞がある。
【0060】
(4)各充電スタンドX,Y,Zの電力量を演算した結果、余剰分の電力が発生した場合は、優先順位が最も高い充電スタンド以外の充電スタンドに余剰分の電力を分配する。このため、優先順位が低い他の充電スタンドの電力量を大きくすることができる。したがって、効率良く充電を行うことができる。
【0061】
(5)制御単位時間Tx毎に優先係数を設定し、各充電スタンドX,Y,Zの電力量を演算することにより、各充電スタンドに接続された車両を効率良く又は平均的に充電することができる。すなわち、何れかの充電スタンドの充電時間が極端に短縮されるなどの事態が発生せず、利用者に不公平感を抱かせることを抑制できる。
【0062】
(第2の実施形態)
以下、本実施形態を具体化した第2の実施形態を図5〜図9にしたがって説明する。
なお、以下に説明する実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成については同一符号を付すなどしてその重複する説明を省略又は簡略する。
【0063】
本実施形態の車両充電システムKにおいて設定部16は、各充電スタンドX,Y,Zが充電対象とする車両の現在の充電量と、車両に搭載されている蓄電池13の電池容量をもとに優先係数を決定する。現在の充電量とは、充電開始してから車両の蓄電池13に実際に充電された量であり、充電開始時における充電状態(SOC)は考慮しない量である。また、電池容量とは、蓄電池13における満充電の量である。そして、本実施形態の設定部16は、前述のように優先係数を決定するために充電対象とする車両を判別する処理を行う。
【0064】
本実施形態の設定部16には、図5に示すように、設置者の入力操作により、車種毎の最大充電電流値と電池容量を事前に設定可能とされている。これらの車両判別情報は、車種毎に最大充電電流値と電池容量が対応付けられて設定部16に記憶される。最大充電電流値とは、車両の充電制御部14が蓄電池13を充電させる際に扱うことが可能な最大電流値であり、この値は充電制御部14を構成する電力変換器の変換能力によって決定される。つまり、車両毎に充電制御部14の構成(電力変換器の構成など)が異なることにより、充電時の電流特性から車種を特定することができる。図6は、車種毎に対応付けられた最大充電電流値と電池容量の一例を示す。
【0065】
以下、設定部16による優先係数の算出処理について図7にしたがって説明する。なお、図7の処理は、第1の実施形態で説明した図3の処理におけるステップS11で行う処理に相当する。本実施形態では、以下の処理を実行する設定部16が、電池容量判別部、及び車種判別部として機能する。
【0066】
設定部16は、各充電スタンドX,Y,Zが充電対象とする車両の電流特性から車種を判定する(ステップS30)。この判定において設定部16は、充電対象とする車両に流れる電流値と事前に設定してある最大充電電流値とを比較し、一致する車種を特定する。例えば、設定部16は、車両に流れる電流値が最大充電電流値D1と一致する場合に車種G1を特定するとともに、車両に流れる電流値が最大充電電流値D2と一致する場合に車種G2を特定する。また、設定部16は、車両に流れる電流値が最大充電電流値D3と一致する場合に車種G3を特定する。本実施形態において電力計測部15は、充電スタンドX,Y,Z毎に流れる電流値も計測する。そして、設定部16は、電力計測部15で計測した電流値を用いてステップS30の判定を行う。
【0067】
次に、設定部16は、ステップS30で特定した車種をもとに、事前に設定してある当該車種の電池容量を算出する(ステップS31)。例えば、設定部16は、車種G1の場合に電池容量E1を算出するとともに、車種G2の場合に電池容量E2を算出し、車種G3の場合に電池容量E3を算出する。
【0068】
次に、設定部16は、電力計測部15の計測結果をもとに各充電スタンドX,Y,Zへの供給電力量を算出し、その算出結果から各充電スタンドX,Y,Zが充電対象とする車両の現在の充電量を取得する(ステップS32)。次に、設定部16は、ステップS31で算出した電池容量とステップS32で取得した現在の充電量をもとに、優先係数を算出し、決定する(ステップS33)。そして、優先係数を算出した設定部16は、第1の実施形態で説明した図3の処理におけるステップS12からの処理を行い、各充電スタンドX,Y,Zの設定電力値を算出する。また、設定部16は、算出した設定電力値から充電電流指令値を算出し、各充電スタンドX,Y,Zの電力制御部12に指示する。
【0069】
以下、優先係数の決定方法について図8及び図9に示す具体例にしたがって説明する。
図8及び図9は、車種G1の車両Aと、車種G2の車両Bと、車種G3の車両Cの3台の車両A〜Cが、それぞれ充電スタンドX,Y,Zで充電される場合を例にしている。
【0070】
設定部16は、充電スタンドXで充電する車両Aの電池容量E1を「15kWh」とし、現在の充電量W1を「5kWh」とした時、図9に示す算出式から優先係数Kaを「3」と決定する。また、設定部16は、充電スタンドYで充電する車両Bの電池容量E2を「10kWh」とし、現在の充電量W2を「5kWh」とした時、図9に示す算出式から優先係数Kbを「2」と決定する。また、設定部16は、充電スタンドZで充電する車両Cの電池容量E3を「25kWh」とし、現在の充電量W3を「5kWh」とした時、図9に示す算出式から優先係数Kcを「5」とする。このように各充電スタンドX,Y,Zの優先係数を算出した場合、充電スタンドY<充電スタンドX<充電スタンドZの順に優先順位が高いことになる。そして、設定部16は、第1の実施形態で説明した図3の処理にしたがって、優先係数に基づく優先係数の低い充電スタンドから当該充電スタンドの設定電力値を決定する。
【0071】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(5)に加え、以下に示す効果を得ることができる。
(6)電池容量と現在の充電量の比で優先係数を決定する。このため、満充電の状態になるまでに必要な充電量が多い車両ほど、充電スタンドの設定電力値を高い値に設定し、供給する電力量を多くすることができる。現在の充電量のみに基づき優先係数を決定した場合は、例えば図8に例示するように各車両A〜Cの充電量が同じであると、その優先係数は同じとなってしまう。つまり、この場合は、電池容量に対して充電量の割合が高い車両と低い車両が同じ優先係数のもとで充電が行われることになる。しかし、本実施形態の優先係数の決定方法によれば、電池容量に対して充電量の割合が低い車両の優先順位を高めて充電することにより、複数の充電スタンドX,Y,Zを用いて複数の車両の充電を同時に行う場合であっても、効率良く充電を行うことができる。
【0072】
(7)車種判別を行って優先係数の算出に必要な情報を得ることから、車両毎に電池容量などが異なる場合であっても、正確な優先係数を算出することができる。そして、車種判別を行うための情報を予め設定しておき、これらの情報をもとに設定部16が自動判別することで、利用者に車種などを入力させるなどの工程を省くことができる。
【0073】
(8)設定部16が、充電時の電流特性から車種判別を行うので、簡単な構成で車種判別を行うことができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0074】
○ 設定部16は、受電設備10内に設けても良いし、充電スタンドX,Y,Zに設けても良い。
○ 受電設備10には、2台、又は3台以上の充電スタンドX,Y,Zを接続しても良い。この場合も、実施形態と同様の計算方法を用いて各充電スタンドの設定電力値を決定する。
【0075】
○ 優先係数を設定する場合の基準を変更しても良い。例えば、充電スタンドX,Y,Zに対して一義的に優先順位を設定しても良い。また、制御単位時間毎に、充電スタンドX→充電スタンドY→充電スタンドZ→充電スタンドX→・・・というように優先順位の最も高い充電スタンドを変更しても良い。また、利用者に充電可能時間を設定させ、その充電可能時間の短い充電スタンドから高い優先順位を設定しても良い。充電可能時間は、利用者が車両を充電スタンドに接続してから、当該車両を再び使用するまでの時間として設定される。また、充電スタンドX,Y,Zへの車両の接続順(充電の開始順)で優先順位を設定しても良い。
【0076】
○ 最大電力量Pmaxを設定せずに、ピーク電力量PP1と最小電力量Pminをもとに各充電スタンドX,Y,Zの設定電力値を決定しても良い。
○ 複数の充電スタンドX,Y,Zで充電を行う場合、設定部16は、何れかの充電スタンドX,Y,Zの充電が完了したタイミングで、優先係数を再設定し、設定電力値を再演算するようにしても良い。
【0077】
○ 優先度高の充電スタンドに接続された車両の最大充電電力量が要因となり、当該車両が、設定電力値P3に相当する充電電流指令値にしたがって充電を行うことができない場合、その車両に応じた設定電力値P3を再演算しても良い。そして、この場合は、電力の余剰分が発生することになるので、その余剰分を他の充電スタンドに接続された車両に供給される電力量として分配しても良い。
【0078】
○ 各充電スタンドX,Y,Zが車両に対して供給した供給電力量を計測する電力計測部15を、各充電スタンドX,Y,Zに設けても良い。そして、設定部16は、各充電スタンドX,Y,Zから供給電力量の計測結果を受信するようにしても良い。
【0079】
○ 車両充電システムKにおいて電圧値が一定となる場合や電圧値を一定とみなす場合には、電力計測部15を電流計測部に変更しても良い。この場合は、電流を計測することにより、その計測結果から供給される電力量を算出することができる。そして、設定部16は、電流計測部の計測結果をもとに、各充電スタンドX,Y,Zから供給される電力量の合計がピーク電力量PP1を越えないように充電電流指令値を決定する。
【0080】
○ 設定部16が指示する指令値は、実施形態のように充電電流指令値でも良いし、充電電流指令値に代えて電力指令値や電圧指令値でも良い。
○ 電力計測部15で電圧を計測し、その計測した電圧値と、設定部16が算出した設定電力値を用いて充電電流指令値を算出しても良い。
【0081】
○ 車両A〜Cと充電スタンドX,Y,Zとの情報の送受信を無線通信によって行っても良い。
○ 第2の実施形態において、電流特性として、最大充電電流値に代えて又は加えて、電流立ち上がり特性を設定部16に設定し、電流立ち上がり特性から車種を判別しても良い。電流立ち上がり特性とは、電流値が零の時から充電電流指令値に相当する電流値に到達するまでの特性である。
【0082】
○ 実施形態は、充電プラグを車両に機械的に接続して充電を行う車両充電システムに具体化したが、充電プラグを使用せずに、車両と充電装置(地上側設備)を電気的に接続して充電を行う非接触式の車両充電システムに具体化しても良い。図10に示すように、非接触式の車両充電システムでは、車両20側に取り付けられた受電側コイル21と、充電ステーションの床に埋設された地上側設備22の送電側コイル23と、を整合させるようにして車両20を停車させる。このとき、受電側コイル21と送電側コイル23は、離間して非接触の状態とされる。そして、非接触式の車両充電システムでは、送電側コイル23からの電力を受電側コイル21で受電することにより、車両20の蓄電池に充電が行われる。このような非接触式の車両充電システムの方式には、共鳴方式や電磁誘導方式がある。また、非接触式の車両充電システムでは、車両20に搭載される車両側コントローラ24と、地上側設備22に設置される電源側コントローラ25とが、無線にて通信できるようになっている。すなわち、充電開始/停止信号など、充電に必要な信号の送受信が、車両側コントローラ24と電源側コントローラ25との間で無線通信で行われる。なお、非接触式の車両充電システムにおいては、地上側設備22が実施形態において電力供給部となる充電スタンドX,Y,Zに相当し、受電設備10、電力計測部15及び設定部16は充電ステーション内に設けられている。
【0083】
○ 上記別例で記載した非接触式の充電システムにおいて、車両側コントローラ24と電源側コントローラ25の間の信号の送受信を、電力伝送に重畳させて行わせても良い。
次に、上記実施形態、及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0084】
(イ)前記電力供給部は、前記車両と接続されて該車両に充電用の電力を供給するとともに、システム全体で複数有することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両充電システム。
【0085】
(ロ)車両に搭載される蓄電池の充電を行う車両充電システムであって、前記車両に充電用の電力を供給するとともに、システム全体で複数有する電力供給部と、各電力供給部が前記車両に供給した電力量を計測する電力計測部と、車両に搭載された蓄電池の電池容量を判別する電池容量判別部と、各電力供給部から供給する電力量の大小を規定する優先順位を設定する優先度設定部と、を備え、前記優先度設定部は、前記電力計測部の計測結果と前記電池容量判別部の判別結果をもとに、前記電池容量に対する前記蓄電池が前記電力供給部から供給された電力で充電された充電量の割合から前記優先順位を設定することを特徴とする車両充電システム。
【0086】
(ハ)車種を判別する車種判別部を備え、前記電池容量判別部は、前記車種判別部が判別した車種をもとに電池容量を判別することを特徴とする前記技術的思想(ロ)に記載の車両充電システム。
【0087】
(ニ)前記優先順位にしたがって各電力供給部が供給する電力量を決定する電力量決定部を備え、前記優先度設定部は、前記割合が小さい順に高い優先順位を設定し、前記電力量決定部は、優先順位の高い順に電力量を大きくすることを特徴とする前記技術的思想(ロ)又は(ハ)に記載の車両充電システム。
【0088】
(ホ)前記電力量決定部は、各電力供給部が供給する電力量の合計が予め設定される最大供給電力量以下で、かつ各電力供給部が供給する電力量が予め設定される最小電力量以上となるように各電力供給部の電力量を決定することを特徴とする前記技術的思想(ロ)〜(ニ)のうち何れかに記載の車両充電システム。
【0089】
(ヘ)各電力供給部が前記車両に供給した電力量と車両に搭載された蓄電池の電池容量をもとに、前記電池容量に対する前記蓄電池が前記電力供給部から供給された電力で充電された充電量の割合から前記優先順位を設定することを特徴とする請求項7に記載の車両充電方法。
【0090】
(ト)車種をもとに電池容量を判別することを特徴とする前記技術的思想(ヘ)に記載の車両充電方法。
(チ)各電力供給部から電力が供給されることによって前記車両側に流れる電流量を計測する電流計測部と、車両に搭載された蓄電池の電池容量を判別する電池容量判別部と、各電力供給部から供給する電力量の大小を規定する優先順位を設定する優先度設定部と、を備え、前記優先度設定部は、前記電流計測部の計測結果と前記電池容量判別部の判別結果をもとに、前記電池容量に対する前記蓄電池が前記電力供給部から供給された電力で充電された充電量の割合から前記優先順位を設定することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両充電システム。
【符号の説明】
【0091】
13…蓄電池、15…電力計測部、16…設定部、A〜C…車両、K…車両充電システム、P1〜P3…設定電力値、PP1…ピーク電力量、Pmax…最大電力量、Pmin…最小電力量、X,Y,Z…充電スタンド、E1〜E3…電池容量、G1〜G3…車種、W1〜W3…充電量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蓄電池の充電を行う車両充電システムであって、
前記車両に充電用の電力を供給するとともに、システム全体で複数有する電力供給部と、
各電力供給部から供給する電力量の大小を規定する優先順位を設定する優先度設定部と、
前記優先順位にしたがって各電力供給部が供給する電力量を決定する電力量決定部と、を備え、
前記電力量決定部は、各電力供給部が供給する電力量の合計が予め設定される最大供給電力量以下で、かつ各電力供給部が供給する電力量が予め設定される最小電力量以上となるように各電力供給部の電力量を決定することを特徴とする車両充電システム。
【請求項2】
前記電力量決定部は、さらに、各電力供給部が供給する電力量が予め設定される最大電力量を超えないように各電力供給部の電力量を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両充電システム。
【請求項3】
前記電力量決定部は、前記優先順位の最も低い電力供給部から順に電力量を決定することを特徴とする請求項2に記載の車両充電システム。
【請求項4】
前記電力量決定部は、前記優先順位の最も高い電力供給部の電力量を前記最大電力量とした時に、システム全体として充電に使用可能な電力量に余剰分が生じる場合、他の電力供給部の電力量を再度決定することを特徴とする請求項3に記載の車両充電システム。
【請求項5】
各電力供給部が前記車両に供給した電力量を計測する電力計測部と、
車両に搭載された蓄電池の電池容量を判別する電池容量判別部と、を備え、
前記優先度設定部は、前記電力計測部の計測結果と前記電池容量判別部の判別結果をもとに、前記電池容量に対する前記蓄電池が前記電力供給部から供給された電力で充電された充電量の割合から前記優先順位を設定することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両充電システム。
【請求項6】
車種を判別する車種判別部を備え、
前記電池容量判別部は、前記車種判別部が判別した車種をもとに電池容量を判別することを特徴とする請求項5に記載の車両充電システム。
【請求項7】
車両に充電用の電力を供給する複数の電力供給部を有する車両充電システムを用いて前記車両の蓄電池に充電を行う車両充電方法であって、
各電力供給部から供給する電力量の大小を規定する優先順位を設定するとともに、前記優先順位にしたがって各電力供給部が供給する電力量を決定し、その決定した電力量で充電を行い、前記各電力供給部が供給する電力量を決定するに際しては、各電力供給部が供給する電力量の合計が予め設定される最大供給電力量以下で、かつ各電力供給部が供給する電力量が予め設定される最小電力量以上となるように決定することを特徴とする車両充電方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−85440(P2013−85440A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20163(P2012−20163)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】