説明

車両台車油量検査システム

【課題】検査精度を向上させ、作業員による検査効率を向上させるとともに、検査結果の保管スペースを減少させ、検査結果の検索を容易にする車両台車油量検査システムを提供する。
【解決手段】カメラ10により車両台車の各部に設けられた油面計の画像を取得し、取得した油面計の画像を画像処理することにより、車両台車各部の油量が所定の範囲にあるか否かを検査する。また、車両台車の各部に必要な油量が所定の範囲にあるか否かを検査員が油面計により検査した検査結果、処置結果及び処置理由を音声でマイク30入力し、入力された音声を音声認識処理することができる。油面検査結果、検査結果、処置結果及び処置理由を表示装置40に表示するとともに、データとして蓄積装置50に蓄積する。さらに、蓄積したデータをキーボード60から入力したキーワードを基に検索し、結果を表示装置40に表示するとともに、出力装置70に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の台車に必要な潤滑油や作動油の油量を検査するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の台車には、台車の車輪軸の潤滑に必要な潤滑油を蓄積しておく軸箱やギアケースあるいはブレーキを作動させるための油圧シリンダがあり、その軸箱内やギアケース内の潤滑油及び油圧シリンダ内の作動油の油量を所定量に保つことが必要である。
【0003】
そこで、従来、軸箱やギアケースあるいは油圧シリンダには、検査窓(油面計)が設けられており、油面が所定の範囲にあるか否かを検査員が目視し、油面が正常範囲内であることをチェックシートにレ点で記録していた。
【0004】
また、検査員が目視で油面計を検査するという負担を軽減するために、油面計の画像をカメラで取得し、その画像を画像処理することにより油量が適切であることを検査する油量検査システムがあった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許03453637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、カメラで取得した油面計の画像を画像処理して、油量が適切であることを検査するシステムでは、油面計の汚れや傷などが原因となって、検査結果に誤差が生じるという問題があった。
【0006】
また、上記のような、検査員が目視検査の結果をレ点により記録する方法では、検査員がチェックシートを持ち、検査時に検査結果を記入(例えば、レ点等のチェックマークを記入)していく必要があるため、検査員にとって不便であり、作業効率が悪くなるという問題があった。
【0007】
さらに、検査後は膨大な量のチェックシートを保管する必要があるため、大きな保管スペースが必要であり、検査結果を検索することも容易ではないという問題があった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、検査精度を向上させ、作業員による検査効率を向上させるとともに、検査結果の保管スペースを減少させ、検査結果の検索を容易にする車両台車油量検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる問題を解決するためになされた請求項1に記載の車両台車油量検査システム(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、撮像手段(10)、油面検査手段(20)、音声入力手段(30)、音声処理手段(20)、表示手段(40)及び蓄積手段(50)を備えている。
【0010】
撮像手段(10)は、車両台車の各部に設けられた油面計の画像を取得し、油面検査手段(20)は、撮像手段(10)で取得した油面計の画像を画像処理することにより、車両台車の各部の油量が所定の範囲にあるか否かを検査する。
【0011】
音声入力手段(30)は、検査員が、車両台車の各部に必要な油量が所定の範囲にあるか否かを検査した検査結果を音声で入力するためのものであり、音声処理手段(20)は、音声入力手段(30)を介して入力された検査結果を音声認識処理することにより、入力した検査結果が良好であるか否かを判定するとともに、入力した検査結果を表示可能データに変換する。
【0012】
表示手段(40)は、油面検査手段(20)により得られた油面検査結果及び音声処理手段(20)により得られた判定結果を表示し、蓄積手段(50)は、油面検査結果及び表示可能データに変換された判定結果をデータとして蓄積する。
【0013】
このような車両台車油量検査システム(1)では、1つの油面計に対し、画像処理による油量の検査と検査員による検査(例えば目視検査)による判定とが行われる。つまり、1つの油面計が2つの検査方法により検査されることになるので、検査精度が向上する。
【0014】
また、検査結果が表示手段(40)に表示されるので、検査員が検査結果を確認することができる。したがって、画像処理による検査結果と目視検査結果とが異なっている場合には、表示された検査結果を見て、再度油面計の画像取得や目視検査を行うことができるので、検査結果に誤りがなくなる。
【0015】
また、検査結果が蓄積手段(50)に蓄積されるので、検査員が検査結果をチェックシートなどに記入する手間を削減することができるとともに、検査時に検査員がチェックシートを持っておく必要がないので、検査時の検査員の負担が減少し、作業効率が向上する。
【0016】
さらに、検査記録がデータ化されて蓄積されるため、ペーパレス化することができるとともに、蓄積されたデータを検索処理することによりデータを容易に検索することができる。
【0017】
なお、「車両台車の各部」とは、例えば、車両台車の軸箱、車両台車のギアケースあるいは車両台車のブレーキを作動させる油圧シリンダなど、車両台車において潤滑油や作動油が蓄積されている部分を意味している。
【0018】
さらに、検査結果に基づく処理結果や処理理由を表示したりデータとして蓄積するようにしてもよい。つまり、請求項2に記載のように、音声入力手段(30)は、さらに、油面検査手段による検査結果又は検査員による検査結果に基づく処理結果及び処理理由を音声入力するためのものであり、音声処理手段(20)は、さらに、油面検査手段による検査結果又は処理結果及び処理理由を表示可能データに変換し、表示手段(40)は、さらに、音声処理手段(20)で表示可能データに変換した処理結果及び処理理由を表示し、蓄積手段(50)は、さらに、音声処理手段(20)で表示可能データに変換した処理手段及び処理理由をデータとして蓄積するようにするとよい。
【0019】
このようにすると、油面検査手段及び検査員が行った検査結果だけでなく、その検査結果に基づく処理結果や処理理由が表示手段(40)に表示されたり、蓄積手段(50)に蓄積されるので、処理結果やその理由を処理の現場で確認したり、蓄積された処理結果や処理理由を検査後に確認することができるので、検査管理上有効である。
【0020】
ここで、「検査結果に基づく処理結果」とは、油面検査手段による検査の結果又は検査員が行った検査の結果(例えば、目視検査結果)、油量が不足していた場合に油を補充したり、油量が過剰であった場合には油を抜き取ったりするなど、検査結果に応じて行われる処理の内容を意味している。
【0021】
また、「処理理由」とは、油を補充した場合には「油量不足」であり、油を抜き取った場合には「油量過剰」であるなど、処理の内容を行った根拠となる理由を意味している。
【0022】
ところで、前述のように車両台車には種々の油面計が配置され、各車両は、通常2台の台車を有しており、1編成は多数の車両から構成されている(例えば、新幹線の場合1編成は16両である。)。したがって、蓄積手段(50)には膨大な量の検査結果が蓄積される。
【0023】
そこで、請求項3に記載のように、検索のためのキーワードを入力するための入力手段(60)と、入力手段(60)を介して入力されたキーワードに基づいて、蓄積手段(50)に蓄積された油面検査結果、判定結果(以下、油面検査結果と判定結果をまとめて単に「検査結果」とも呼ぶ。)、処理結果又は処理理由のうち少なくとも1つを検索し、検索結果を表示手段(40)に表示する検索手段(20)と、を備えるようにするとよい。
【0024】
このようにすると、蓄積手段(50)に蓄積された膨大な量の検査結果や処理結果あるいは処理理由のデータをキーワード検索し、表示手段(40)に表示することができるので、検査後に検査結果や処理結果あるいは処理理由を容易に確認することができる。つまり、検査後においても検査結果処理結果あるいは処理理由を容易に検索でき、有効に活用することができるので、検査後における作業効率が向上する。
【0025】
また、検査結果などを表示手段(40)に表示するだけでなく、帳票として残すことができるようになっているとさらに便利である。そこで、請求項4に記載のように、表示手段(40)で表示する油面検査結果、判定結果又は検索手段(20)で検索した検索結果のうち少なくとも1つを帳票として出力する出力手段(70)を備えるようにするとよい。
【0026】
このようにすると、油面検査結果、判定結果又は検索結果のうち少なくとも1つを帳票として出力して残すことができるので、便利である。
【0027】
なお、出力手段(70)により出力される帳票としては、例えば、検査結果が合格である旨をレ点で示す、いわゆるチェックリストに油面計の画像を付加した形のものとすると、単に合格/不合格の検査結果だけでなく、画像が証拠として残るので、検査後に有効な資料となる。
【0028】
ところで、撮像手段(10)で油面計の画像を取得する場合、撮像手段(10)を油面計に接近させる、いわゆる接写状態で画像を取得することになる。その際、台車は車両の底部にあり、明るさが不足するため、油面計に照明を当てる必要がある。
【0029】
ところが、油面計の表面は、例えば、ガラスやアクリル製であるため、照明を当てると油面計の表面から照明が反射する。したがって、画像の一部に反射光が写り込むことがあり、画像処理に適した油面計画像を取得できない場合がある。
【0030】
そこで、請求項5に記載のように、撮像手段(10)のレンズ周辺に、入射光を屈折させて拡散させる拡散リング(12)を備えるようにすると、撮像手段(10)のレンズへの入射光が拡散リング(12)で拡散するので、油面計全体に均一かつ十分な照明を当てることができる。したがって、画像処理に適した均一な明るさを有する油面計画像を取得することができる。
【0031】
また、車両台車は車両の底部にあるので、作業場所が狭く、検査時の作業性が悪い。そのため、検査員が油面計を検査する場合には、撮像手段(10)を斜めから油面計に接近させる場合が多い。
【0032】
したがって、撮像手段(10)で油面計の画像を取得するためには、請求項6に記載のように、撮像手段(10)は、撮像手段(10)のボディ側面に、撮像した画像をボディ側面に対して傾斜させて表示するための表示部(14)を備えるようにするとよい。
【0033】
このようにすると、作業性が悪い場所であっても、検査員は、表示部(14)に表示される油面計の画像を見ながら油面計の画像を取得することができるので、画像処理に適した油面計画像を取得することができる。さらに、作業性が向上するので、検査員の負担を軽減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
(車両台車油量検査システム1の構成)
図1は、本発明が適用された車両台車油量検査システム1の概略の構成を示すブロック図であり、図2は、カメラ10の外観を示す外観図であり、図3は、マイク30の使用状態を示す図である。
【0035】
車両台車油量検査システム1は、図1に示すように、カメラ10、制御部20、マイク30、表示装置40、データ蓄積装置50、キーボード60及び出力装置70を備えている。
【0036】
カメラ10は、車両台車の各部に設けられた油面計の画像を取得するものであり、検査時に検査員が持ちやすいように、CCDカメラが図2に示すように略円筒形に形成されている。カメラ10は、制御部20とUSB接続されており、取得した画像は、USBケーブルを介して制御部20に伝送される。
【0037】
また、カメラ10は、図2に示すように、レンズの周辺に撮像対象物を照射する多数のLED16を有し、そのLED16の外周に、入射光を屈折させて拡散させるアクリル製の拡散リング12を備えている。
【0038】
さらに、カメラ10は、カメラ10のボディ側面に、撮像した画像をボディ側面に対して傾斜させて表示するための表示部14を備えている。この表示部14は、小型のLCDや有機ELなどから構成される。
【0039】
制御部20は、図示しないCPU、ROM、RAM及びI/Oを備えており、ROMに格納されたプログラムにより以下に示す(ア)〜(オ)の処理を実行する。
【0040】
(ア)カメラ10で取得した油面計の画像を画像処理することにより、車両台車各部の油量が所定の範囲にあるか否かを検査し、その結果(以下、この結果を「油面検査結果」とも呼ぶ。)を表示装置40に表示するとともにデータ蓄積装置50に蓄積する(以下、この処理を液面判定処理と呼ぶ。)。この液面判定処理の詳細については後述する。
【0041】
(イ)マイク30を介して入力された検査員の目視による検査結果を音声認識処理することにより、入力した検査結果が良好であるか否かを判定するとともに、その結果(以下、この結果を「判定結果」とも呼ぶ。)を表示可能データに変換し、表示装置40に表示する。また、表示可能データに変換した判定結果をデータ蓄積装置50に蓄積する。ここで用いられる音声認識処理は、公知の処理であるため、処理内容の説明は省略する。
【0042】
(ウ)マイク30を介して入力された処理結果及び処理理由を表示可能データに変換し表示装置40に表示するとともに、表示可能データに変換した処理結果及び処理理由をデータとしてデータ蓄積装置50に蓄積する。
【0043】
ここで、「処理結果」とは、油面検査結果又は判定結果に基づいて、油量が不足していた場合に油を補充したり、油量が過剰であった場合には油を抜き取ったりするなど、検査結果に応じて行われる処理の内容を意味している。
【0044】
また、「処理理由」とは、油を補充した場合には「油量不足」であり、油を抜き取った場合には「油量過剰」であるなど、処理の内容を行った根拠となる理由を意味している。
【0045】
(エ)キーボード60を介して入力されたキーワードに基づいて、データ蓄積装置50に蓄積された油面検査結果、判定結果、処理結果又は処理理由のうち少なくとも1つを検索し、検索結果を表示装置40に表示する。この検索処理は、公知の処理であるため、処理内容の説明は省略する。
【0046】
(オ)表示装置40で表示する判定結果、(エ)で実行した検索結果又はデータ蓄積装置50に蓄積した判定結果のうち少なくとも1つを帳票として出力装置70で出力する(以下、この処理を帳票出力処理と呼ぶ。)。
【0047】
マイク30は、車両台車の各部に必要な油量が所定の範囲にあるか否かを検査員が油面計により検査した検査結果、制御部20による油面検査結果又は検査員による検査結果に基づく処理結果及び処理理由を音声入力したり、検査対象となる油面計(軸箱、ギアケース、増圧シリンダなど)の選択のための音声入力をしたりするための小型のマイクである。
【0048】
マイク30は、図3に示すように検査員の被るヘルメット32の側面に取り付けられたフレキシブルアーム34の先端に取り付けられている。したがって、使用時に検査員によりアームが自在に曲げられるので、検査員の口元に位置することができるようになっている。
【0049】
表示装置40は、油面検査結果、判定結果、処理結果あるいは処理理由などを表示する装置であり、LCDや有機ELなどのディスプレイである。
【0050】
データ蓄積装置50は、油面検査結果及び判定結果をデータとして蓄積するハードディスク装置などの大容量記憶装置である。
【0051】
キーボード60は、検索のためのキーワードを入力するための装置であり、出力装置70は、表示装置40で表示する油面検査結果、判定結果、制御部20で検索した検索結果のうち少なくとも1つを帳票として出力するプリンタである。
【0052】
(液面判定処置)
次に、制御部20で実行される液面判定処理について図4〜図12に基づき説明する。図4は、液面判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0053】
まず、S100においてマイク30から検査員の音声が取得される。この場合、検査員の音声は、検査対象となる油面計である「軸箱」、「ギアケース」、「増圧シリンダ」の何れかである。
【0054】
続くS110では、S100において取得された検査員の音声が何れの検査対象であるか、つまり、「軸箱」、「ギアケース」、「増圧シリンダ」の何れであるかが音声認識により識別されて選択される。
【0055】
そして、選択結果が「軸箱」の場合(S110:軸箱)、処理がS120へ移行され、選択結果が「ギアケース」の場合(S110:ギアケース)、処理がS180へ移行され、選択結果が「増圧シリンダ」の場合(S110:増圧シリンダ)、処理がS240へ移行される。
【0056】
S120では、カメラ10で撮像された油面計の画像が取得され、続くS130では、S120において取得された油面計の画像から画像処理により画像中央の検出マークが検出される。
【0057】
これは、図5(a)に示すように、予めROMやRAMに登録しておいた検出マーク画像を基に、油面計の画像内をサーチし、マーク検出領域(図5(a)中A1で示される四角内の領域)の検出マーク画像と同一のマーク画像(図5(a)中A2で示されるマーク)の箇所を検出することにより実行される。
【0058】
続くS140では、S130において検出された検出マークの位置を基に、図5(b)に示すように、検出マークの左右両側に潤滑油の液面検査領域(図5(b)中A3,A4で示される四角内の領域)が設定される。
【0059】
そして、液面検査領域A3,A4の設定後、図5(b)に示すように、当該領域の輝度値の投影分布情報を利用して、情報(輝度値)が急激に変化する箇所(図5(b)中A5で示される部分)が検出され、液面と判断される。
【0060】
このとき、液面が傾いている場合でも、液面を水平に角度補正せずに液面と判断される。これは、実際に撮影した油面計の画像の液面が傾いているものが少なかったことに対し、角度補正の処理時間が大きいことによる。したがって、必要であれば、角度補正を行うこともできる。具体的な角度補正方法は、後述するS200において説明するギアケースの角度補正と同様にして行われる。
【0061】
続くS150では、S140において液面が検出されたか否かが判定される。つまり、油面計の表面は、ガラス製やアクリル製の窓(確認窓)となっているが、確認窓には、傷や油液汚れがあるため、S140において液面を検出できない場合がある。そこで、液面が検出されたか否かが判定されるのである。
【0062】
そして、液面が検出された場合(S150:Yes)、処理がS170へ移行され、液面が検出されなかった場合(S150:No)、処理がS160へ移行される。
【0063】
S160では、ハフ変換処理が行われる。ハフ変換処理とは、画像上に現れた情報点を最も多く通る直線を検出する処理のことをいう。
【0064】
具体的には、S120において取得された油面計の画像に対し図6(a)に示すようにエッジ強調処理が行われ、その画像に対して図6(b)に示すように二値化処理が行われる。
【0065】
そして、図6(b)に示す二値化画像において液面部分に情報点(エッジ)が集中していることを利用して、図6(c)に示すように直線が検出され、その直線が液面とされるのである。
【0066】
S170では、図7に示すように、以下の(1),(2)に示すようにして液面判定が行われる。
【0067】
(1)検出マークの左右両側の液面(図7中B1,B2で示される四角内の領域の液面)が基準範囲外(図7中B3,B5で示される領域):検査不合格
(2)検出マークの左右両側の液面が基準範囲内(図7中B4で示される領域)又は左右どちらかの液面が基準範囲内(図7中B4で示される領域):検査合格
次に、S110においてギアケースが選択された場合、S180において、カメラ10で撮像された油面計の画像が取得され、続くS190では、ギアケース窓が検出される。つまり、図8(a)及び図8(b)に示すように、窓下検出領域(図8(a)中C1で示される四角内の領域)及び窓左検出領域(図8(b)中C3で示される四角内の領域)において投影分布情報の情報変化点が検出される。
【0068】
そして、検出された情報変化点からギアケース窓の位置(図8(a)に破線C2で示す窓下位置及び図8(b)に破線C4で示す窓左位置)が検出される。
【0069】
続くS200において、ギアケース窓の角度補正が行われる。具体的には、S190において得られたギアケース窓検出画像の投影分布情報から対象形状と等価な楕円の近似が行われ、図9に示すようにギアケース窓の角度(θ)が検出される。
【0070】
検出された角度(θ)と基準角度45°との差を基にギアケース窓の画像を回転させ、ギアケース窓が基準角度45°となるよう角度補正が行われる(図9参照)。
【0071】
続くS210では、ギアケース窓の目盛が検出される。つまり、予めROMやRAMに登録しておいたギアケース窓の目盛画像を基に、図10(a)に示すように、S180で得られた窓下位置(図10(a)中破線C2で示される位置)、窓左位置(図10(a)中破線C4で示される位置)及び目盛検出領域(図10(a)中D1で示される四角内の領域)を基準位置として、S180において得られた油面計画像がサーチされ、図10(b)に示すように同一の目盛画像の箇所(図10(a)中D2で示される×マークの位置)が検出されるのである。
【0072】
続くS220では、S210において検出された目盛位置を基に、図11に示すように各種検査領域(図11中E1で示される四角内の輝度検査領域1、図11中E2で示される四角内の液面検査領域、図11中E3で示される四角内の輝度検査領域2)が設定される。
【0073】
続くS230では、液面判定が行われる。つまり、S220において設定された各種検査領域内で一定以上の数を有する最小輝度値が算出され、以下の(3)〜(6)に示す判定を実施することにより油面の判定が行われる。
【0074】
(3)液面検査領域内(E2)の最小輝度が判定輝度より小さく、かつ、輝度検査領域1内(E1)の最小輝度≧判定輝度:検査合格(図12(a)参照)
(4)液面検査領域内(E2)の最小輝度が判定輝度より小さく、かつ、輝度検査領域1内(E1)の最小輝度<判定輝度:検査不合格(図12(b)参照)
(5)液面検査領域内(E2)の最大輝度が判定輝度より大きく、かつ、輝度検査領域2内(E3)の最大輝度<判定輝度:検査合格(図12(c)参照)
(6)液面検査領域内(E2)の最大輝度が判定輝度より大きく、かつ、輝度検査領域2内(E3)の最大輝度≧判定輝度:検査不合格(図12(d)参照)
次に、S110において増圧シリンダが選択された場合、処理がS240へ移行されカメラ10で撮像された油面計の画像が取得される。続くS250、S260、S270の処理は、それぞれ、S130、S140及びS170の処理と同じ内容の処理である。つまり、増圧シリンダが選択された場合には、ハフ変換は行われない。
【0075】
S280において、S170、S230又はS270で行われた液面判定の結果及びS100において取得された油面計の画像がデータ蓄積装置50に蓄積された後、処理がS100へ戻され、液面判定処理が繰り返される。
【0076】
(検査結果の出力)
次に、液面判定処理や音声認識処理により得られた油面計の検査結果(以下、「油面検査結果」及び「判定結果」をまとめて、単に「検査結果」とも呼ぶ。)、検査結果に基づく処理結果や処理理由あるいはデータ蓄積装置50に蓄積された検査結果データの検索結果を出力する場合の帳票について説明する。
【0077】
この帳票は、チェックシートと呼ばれるものであり、図13に示すように、車両台車の8個の軸箱、4個の歯車箱(ギアボックス)及び4個の増圧シリンダについて、カメラ10で取得した油面計の画像と油面の検査結果をレ点で示したものとなっている。
【0078】
図13において、例えば、軸箱(図13中左半面の図において、三重の楕円で表されているものが、軸箱の油面計を示しており、三重の楕円の中心の黒丸の部分が正常な油量の場合の油面の位置である。
【0079】
図13では、No.1〜No.8の8個の油面計すべてについて、上限と下限の間にレ点が記されており、油量が正常であることを示している。
【0080】
また、No.2の油面計には、「ヌキ」の記載があるが、これは、潤滑油を抜いたという処置結果を示している。
【0081】
さらに、No.5の油面形には、「キュ」に記載があるが、これは、潤滑油を給油したという処置結果を示しており、給油理由に「△」が記載されているが、これは、油面計を取替えた際に給油したという処置理由を示している。
【0082】
(車両台車油量検査システム1の特徴)
以上に説明した車両台車油量検査システム1では、カメラ10により取得された油面計の画像を画像処理することによって得られた車両各部の油量の検査結果(油面検査結果)と、検査員による油量の目視検査結果の処置、及び処置理由の音声入力により得られた検査結果(判定結果)とが表示装置40に表示されるとともに、データ蓄積装置50に蓄積される。
【0083】
したがって、1つの油面計に対し、画像処理による油量の検査と検査員による目視検査による判定とが行われる。つまり、1つの油面計が2つの検査方法により検査されることになるので、検査精度が向上する。
【0084】
また、油面検査結果、判定結果、処理結果あるいは処理理由が表示装置40に表示されるので、検査員が油面検査結果、判定結果、処理結果又は処理理由を確認することができる。したがって、画像処理による検査結果と目視検査結果とが異なっている場合には、表示された検査結果を見て、再度油面計の画像取得や目視検査を行うことができるので、検査結果に誤りがなくなる。
【0085】
また、油面検査結果、判定結果、処理結果あるいは処理理由がデータ蓄積装置50に蓄積されるので、検査員が検査結果をチェックシートなどに記入する手間を削減することができるとともに、検査時に検査員がチェックシートを持っておく必要がないので、検査時の検査員の負担が減少し、作業効率が向上する。
【0086】
さらに、検査記録がデータ化されて蓄積されるため、ペーパレス化することができるとともに、蓄積されたデータを検索処理することによりデータを容易に検索することができる。
【0087】
また、データ蓄積装置50に蓄積された膨大な量の油面検査結果、判定結果、処理結果又は処理理由のデータをキーワード検索し、表示装置40に表示することができるので、検査後に検査結果を容易に確認することができる。つまり、検査後においても油面検査結果、判定結果、処理結果又は処理理由を容易に検索でき、有効に活用することができるので、検査後における作業効率が向上する。
【0088】
また、油面検査結果、判定結果又は検索結果を帳票として出力して残すことができるので、便利である。
【0089】
なお、出力装置70により出力される帳票として、検査結果の合格をレ点で示す、いわゆるチェックリストに、油面計の画像を付加した形のものを出力しているので、単に合格/不合格の検査結果だけでなく、画像が証拠として残るので、検査後に有効な資料となる。
【0090】
また、カメラ10は、レンズ周辺に、入射光を屈折させて拡散させる拡散リング12を備えているので、カメラ10のレンズへの入射光が拡散リング12で拡散する。したがって、油面計全体に均一かつ十分な照明を当てることができるので、画像処理に適した均一な明るさの画像を取得することができる。
【0091】
また、カメラ10は、ボディ側面に、撮像した画像をボディ側面に対して傾斜させて表示するための表示部14を備えている。したがって、作業性が悪い場所であっても、検査員は、表示部14に表示される油面計の画像を見ながら油面計の画像を取得することができるので、画像処理に適した油面計画像を取得することができる。さらに、作業性が向上するので、検査員の負担を軽減することもできる。
[第2実施形態]
次に、第1実施形態の車両台車油量検査システム1において、制御部20、表示装置40及びデータ蓄積装置50の機能の一部を別置きしたものに分担させ、さらに、キーボード61と出力装置70を別置きにした車両台車油量検査システム2について説明する。
【0092】
車両台車油量検査システム2は、図14に示すように制御部20の一部の機能を有する制御部21、データ蓄積装置50の機能の一部を有するデータ蓄積装置51、表示装置40で表示する内容の一部を表示するための表示装置41及びキーボード60と同じ機能を有するキーボード61を備えている。また、出力装置70は、制御部20に代えて制御部21に接続されている。
【0093】
そして、制御部20と制御部21とは、USBケーブル23、HUB25及びクレードルと呼ばれる接続装置27によって電気的に接続される。
【0094】
制御部20では、第1実施形態における処理(ア)〜(オ)のうち、(ア)に示す液面判定処理及び(イ)に示す音声認識処理が行われ、処理結果がデータとしてUSBケーブル23、HUB25及び接続装置27を介して制御部21へ伝送される。
【0095】
制御部21では、第1実施形態における処理(ア)〜(オ)のうち、(エ)に示す検索処理及び(オ)に示す帳票出力処理が行われる。
【0096】
以上のような車両台車油量検査システム2では、制御部20を中心として構成される一群のシステムを図15(a)に示すようにコンパクトにまとめたものとし、検査員が持ち運びやすい形にすることができる。また、小型化することができるので、電力消費量を少なくすることもできる。
【0097】
また、得られたデータを蓄積したり、蓄積した検査結果のデータを検索したり、あるいは、検査結果を帳票として出力したりするというように、検査員が検査時に行う必要がない作業については、図15(b)に示すように、制御部21を中心として一群のシステムで実行する。
【0098】
このとき、制御部21は別置きにすることができるので、大きさや使用電力の制限を受けない高性能なものとすることができる。また、表示装置41も大型とすることができる。さらに、データ蓄積装置51も大容量の記憶装置とすることができる。また、キーボード61や出力装置70も大きさに制限を受けない使いやすいものとすることができるので、使いやすいシステムとすることができる。
【0099】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0100】
(1)上記実施形態では、油面計として軸箱の油面計について説明したが、油面計の窓が丸形で中央に検出マークがある油面計、例えば、ブレーキを作動させるための油圧シリンダの作動油の油面計であってもよい。
【0101】
(2)上記実施形態では、出力装置70は、プリンタであるとしたが、USBメモリやメモリーカードあるいはICタグなどの小型の記憶装置に検査結果などを出力する装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】車両台車油量検査システム1の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】カメラ10の外観を示す外観図である。
【図3】マイク30の使用状態を示す図である。
【図4】液面判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】検出マークを検出する処理の様子を示す図である。
【図6】ハフ変換の処理の様子を示す図である。
【図7】軸箱の油面計の液面の判定処理の様子を示す図である。
【図8】ギアケースの油面計のギアケース窓の位置を検出する様子を示す図である。
【図9】ギアケース窓の画像の角度補正の処理の様子を示す図である。
【図10】目盛画像の箇所を検出する処理の様子を示す図である。
【図11】ギアケースの油面計において、各種検査領域を設定する様子を示す図である。
【図12】ギアケースの油面計の液面の判定処理の様子を示す図である。
【図13】出力される帳票(チェックシート)の例である。
【図14】車両台車油量検査システム2の概略の構成を示すブロック図である。
【図15】車両台車油量検査システム2の外観示す外観図である。
【符号の説明】
【0103】
1,2…車両台車油量検査システム、10…カメラ、12…拡散リング、14…表示部、20,21…制御部、23…USBケーブル、25…HUB、27…接続装置、30…マイク、32…ヘルメット、34…フレキシブルアーム、40,41…表示装置、50,51…データ蓄積装置、60,61…キーボード、70…出力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両台車の各部に設けられた油面計の画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段で取得した前記油面計の画像を画像処理することにより、前記車両台車の各部の油量が所定の範囲にあるか否かを検査する油面検査手段と、
検査員が、前記車両台車の各部に必要な油量が前記所定の範囲にあるか否かを検査した検査結果を音声で入力するための音声入力手段と、
前記音声入力手段を介して入力された前記検査結果を音声認識処理することにより、前記入力した検査結果が良好であるか否かを判定するとともに、前記入力した検査結果を表示可能データに変換する音声処理手段と、
前記油面検査手段により得られた油面検査結果及び前記音声処理手段により得られた判定結果を表示する表示手段と、
前記油面検査結果及び前記表示可能データに変換された判定結果をデータとして蓄積する蓄積手段と、
を備えたことを特徴とする車両台車油量検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両台車油量検査システムにおいて、
前記音声入力手段は、さらに、前記油面検査手段による検査結果又は検査員による前記検査結果に基づく処理結果及び処理理由を音声入力するためのものであり、
前記音声処理手段は、さらに、前記処理結果及び前記処理理由を表示可能データに変換し、
前記表示手段は、さらに、前記音声処理手段で表示可能データに変換した前記処理結果及び前記処理理由を表示し、
前記蓄積手段は、さらに、前記音声処理手段で表示可能データに変換した前記処理結果及び前記処理理由をデータとして蓄積することを特徴とする車両台車油量検査システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両台車油量検査システムにおいて、
検索のためのキーワードを入力するための入力手段と、
前記入力手段を介して入力されたキーワードに基づいて、前記蓄積手段に蓄積された前記油面検査結果、前記判定結果、前記処理結果又は前記処理理由のうち少なくとも1つを検索し、該検索結果を前記表示手段に表示する検索手段と、
を備えたことを特徴とする車両台車油量検査システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の車両台車油量検査システムにおいて、
前記表示手段で表示する前記油面検査結果、前記判定結果又は前記検索手段で検索した検索結果のうち少なくとも1つを帳票として出力する出力手段を備えたことを特徴とする車両台車油量検査システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の車両台車油量検査システムにおいて、
前記撮像手段は、
レンズ周辺に、入射光を屈折させて拡散させる拡散リングを備えたことを特徴とする車両台車油量検査システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両台車油量検査システムにおいて、
前記撮像手段は、
前記撮像手段のボディ側面に、撮像した画像を前記ボディ側面に対して傾斜させて表示するための表示部を備えたことを特徴とする車両台車油量検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図14】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−133774(P2010−133774A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308540(P2008−308540)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】